JP2011219586A - 多孔質ポリイミド膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜であって、前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜5μmの複数の細孔を有し、当該細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60%以上70%未満である、多孔質ポリイミド膜。
【選択図】図1
Description
[1]2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜であって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、
前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜5μmの複数の細孔を有し、当該細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、
総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60%以上70%未満である、多孔質ポリイミド膜。
[2]前記マクロボイド層は、前記表面層(a)側及び/又は前記表面層(b)側から観察して、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドを有している、[1]に記載の多孔質ポリイミド膜。
[3]前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)の厚さが略同一である、[1]又は[2]に記載の多孔質ポリイミド膜。
[4]ガーレー値が30秒以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[5]250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が5%以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[6]前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmのマクロボイドの断面積が膜断面積の50%以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[7]前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、前記マクロボイドの60%以上が、膜平面方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲内にある、[1]〜[6]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[8]ガラス転移温度が、240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がない、[1]〜[7]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなるポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなるポリアミック酸溶液(A)、及び前記ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部の、極性基を有する有機化合物(B)を含有するポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び
前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程
を含み、前記の極性基を有する有機化合物(B)が、前記ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる有機化合物である、多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[10]前記ポリアミック酸が、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物と、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンとから得られる、[9]に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[11]前記の極性基を有する有機化合物(B)が安息香酸である、[9]又は[10]に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[12]ポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程において、200℃以上の温度域での昇温速度が25℃/分未満である、[9]〜[11]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[13]前記の水を必須成分とする凝固溶媒が、水であるか、又は5質量%以上100質量%未満の水と0質量%を超え95質量%以下の有機極性溶媒との混合液である、[9]〜[12]のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
1)膜の断面構造は大部分が対称構造であり、各種平膜材料として使う場合に非常に利用しやすく、
2)大きな空孔率を得ることができ、例えば絶縁基板として用いると誘電率を低くすることができ、
3)両表面及び支持層ともに、一方の表面から他方の表面に至る連通孔を有するために、物質の充填や移動が容易であり、
4)マクロボイドを有するために物質の充填量を大きくすることができ、
5)両表面の平滑性に優れ、
6)両表面層と支持部とが大部分がラダー構造であるため、かさ密度に比して相対的に強度が高く、高空孔率にもかかわらず膜厚み方向への圧縮応力に対して耐力があり寸法安定性が高く、250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が小さい、などの優れた効果を有する。
また、本発明の多孔質ポリイミド膜の製造方法は、本発明の多孔質ポリイミド膜を簡便かつ効率的に製造することができる。
図1及び2に示すように、本発明の多孔質ポリイミド膜1は、2つの表面層2及び4(表面層(a)及び(b))と、当該表面層2及び4の間に挟まれたマクロボイド層3とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜である。
このように、本発明のポリイミド膜は、一方の表面から他方の表面に至る連通孔を有するために物質の充填や移動が容易であり、気体等の物質透過性に優れる。その一方で、膜表面に形成された細孔の平均孔径が小さいため所定のサイズの物質のみを通過させることができ、本発明のポリイミド膜はフィルタリング機能を有する。また、膜表面に形成された細孔の平均孔径が小さいため、本発明のポリイミド膜の膜表面は平滑性が優れる。
マクロボイド31により、本発明のポリイミド膜は大きな空間を有し、空孔率が高い。そのため、例えば絶縁基板として用いた場合には誘電率を低くすることができ、また、物質をボイド中に充填する場合にはその充填量を大きくすることができる。
このように、本発明のポリイミド膜は、マクロボイド同士も連通しており、物質の充填や移動が容易であり、気体等の物質透過性に優れる。その一方で、隔膜に形成された細孔の平均孔径が小さいためマクロボイド中に物質を閉じ込めることができる。
特に図3及び4に示すように、本発明のポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、隔壁32並びに表面層2及び4はラダー形状に構成されている。すなわち、隔壁32は、ほぼ一定の間隔で、膜平面方向に対してほぼ垂直方向に形成されて表面層2及び4に結合している。
また、本発明のポリイミド膜の空孔率は60%以上70%未満であり、物質透過性、力学強度、及び膜の構造保持性の観点から、好ましくは60〜68%、より好ましくは62〜66%の範囲である。
また、通気性の観点から、本発明のポリイミド膜のガーレー値(0.879g/m2の圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)は、好ましくは30秒以下、より好ましくは25秒以下、更に好ましくは2秒以下であり、下限値は特に限定されないが、好ましくは測定限界以上である。ガーレー値は、JIS P8117に準拠して測定することができる。本発明のポリイミド膜は、通気性が非常に優れる。
また、本発明のポリイミド膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が、240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないことが好ましい。
(i)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
(ii)テトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
及び/又は、
(iii)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド。
本発明の多孔質ポリイミド膜の製造方法は、テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなるポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなるポリアミック酸溶液(A)、及び前記ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部の、極性基を有する有機化合物(B)又は側鎖に極性基を有する高分子化合物(C)を含有するポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程を含む。ここで、前記の極性基を有する有機化合物(B)は、前記ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる有機化合物である。
ポリアミック酸溶液を製造するときに、分子量を調整する目的で、任意の分子量調整成分を反応溶液に加えてもよい。
ポリアミック酸の対数粘度(30℃、濃度;0.5g/100mL、溶媒;NMP)は、本発明の多孔質ポリイミド膜が製造できる粘度であればよい。本発明の方法では、前記対数粘度が好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5〜7であるポリアミック酸を用いることが好ましい。
ポリアミック酸は、アミック酸の一部がイミド化していても、本発明に影響を及ぼさない範囲であればそれを用いることができる。
ポリアミック酸溶液(A)は、有機極性溶媒の存在下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させて得られる溶液であってもよく、ポリアミック酸を有機極性溶媒に溶解させて得られる溶液であってもよい。
極性基を有する有機化合物(B)及び極性基を有する高分子化合物(C)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させる有機化合物である。ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させることで、ポリイミド膜中に平均孔径が10〜500μmのマクロボイドを形成することができる。
ポリアミック酸溶液組成物において、極性基を有する有機化合物(B)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する場合、前記有機化合物(B)と前記高分子化合物(C)との合計の含有量は、マクロボイドの形成の観点から、ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。
(C1)水、凝固溶媒及び/又は有機極性溶媒に不溶又は難溶であること。
(C2)熱イミド化工程で分解されること。
(C3)ポリアミック酸溶液組成物中に極性基を有する高分子化合物(C)が均質で懸濁していること。
(C4)ポリアミック酸と相溶しないこと。
c1)ポリアミック酸中に前記高分子化合物(C)が非相溶物として残存する。この高分子化合物(C)の一部または全部は、凝固溶媒に浸漬又は接触させてポリアミック酸の多孔質膜を作製する際において凝固浴中に溶出し、更には加熱イミド化する工程で分解される。その結果、ポリイミド膜のマクロボイド層の隔壁並びに表面層(a)及び(b)において、除去された高分子化合物(C)が存在していた部分は細孔を形成し、ポリイミド膜の物質透過性が向上する。
及び/又は
c2)ポリアミック酸溶液組成物の凝固を促進するなど、凝固過程に影響を与えることにより、ポリイミド膜の物質透過性が向上する。
本発明の多孔質ポリイミドの製造方法では、まず、ポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延する。流延方法は特に限定されず、例えば、ポリアミック酸溶液組成物をドープ液として使用し、ブレードやTダイなどを用いてガラス板やステンレス板等の上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に流延することができる。また、連続の可動式のベルト上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に断続的又は連続的に流延して、連続的に個片又は長尺状の流延物を製造することができる。ベルトは、ポリアミック酸溶液組成物及び凝固溶液に影響を受けないものであればよく、ステンレスなどの金属製、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂製を用いることができる。また、Tダイからフィルム状に成形したポリアミック酸溶液組成物をそのまま凝固浴に投入することもできる。また、必要に応じて流延物の片面又は両面を、水蒸気などを含むガス(空気、不活性ガスなど)と接触させてもよい。
次に、流延物を、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸を析出させて多孔質化を行うことで、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する。得られたポリアミック酸の多孔質膜は、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行う。
次に、得られたポリアミック酸の多孔質膜をイミド化して多孔質ポリイミド膜を製造する。イミド化としては、熱イミド化処理、化学イミド化処理等を挙げることができるが、本発明では熱イミド化処理が行われる。
熱イミド化処理は、例えば、ポリアミック酸の多孔質膜を、ピン、チャック若しくはピンチロールなどを用いて熱収縮により平滑性が損なわれないように支持体に固定し、大気中にて加熱することにより行うことができる。反応条件は、例えば280〜600℃、好ましくは350〜550℃の加熱温度で、2〜120分間、好ましくは3〜90分間、さらに好ましくは5〜60分の加熱時間から適宜選択して行うことが好ましい。
また、ポリイミドは他のプラスチックに比べて耐熱性に優れるため、本発明の多孔質ポリイミド膜は250℃以上の使用温度領域でも使用することができる。具体例としては、携帯電話のマイク等の音響部品の保護膜が挙げられ、ハンダ加工時に熱履歴をかけても破壊されない。また、耐熱フィルタとしても利用することができる。従来用いられているアラミド不織布からなる耐熱フィルタは、使用により熱劣化し、中に含まれているバインダーが炭化して粉塵の発生源となりうるが、本発明の多孔質ポリイミド膜を用いた耐熱フィルタではそのような問題が生じることはない。また、車体塗装ブース内の熱風循環ラインに用の防塵耐熱フィルタにも用いることができる。
1)膜厚
膜厚みの測定は、接触式の厚み計で行った。
ガーレー値(0.879g/m2の圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)の測定は、JIS P8117に準拠して行った。
寸法安定性の測定は、200℃で2時間の条件で、ASTM D1204に準拠して行った。
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から下式(1)に従って孔の形状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めた。
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積から孔の形状が真円であるとした際の直径を計算し、その最大値を最大孔径とした。
所定の大きさに切り取った多孔質フィルムの膜厚及び質量を測定し、目付質量から空孔率を下式(2)によって求めた。
固体粘弾性アナライザーを用いて、引張モード、周波数10Hz、ひずみ2%、窒素ガス雰囲気の条件で動的粘弾性測定を行い、その温度分散プロファイルにおいて損失正接が極大値を示す温度をガラス転移温度とした。
溶液粘度の測定は、E型回転粘度計で行った。以下に測定手順を示す。
(i)製造例で調製したポリアミック酸溶液を密閉容器に入れ、30℃の恒温槽に10時間保持した。
(ii)E型粘度計(東京計器製、高粘度用(EHD型)円錐平板型回転式、コーンローター:1°34’)を用い、(i)で準備したポリアミック酸溶液を測定溶液として、温度30±0.1℃の条件で測定した。3回測定を行い、平均値を採用した。測定点に5%以上のばらつきがあった場合は、さらに2回の測定を行い5点の平均値を採用した。
測定する膜を3cm角の正方形に切り出し、格子状に9点にマジックで目印を付け接触式の厚み計で膜厚みを測定した。次に、平行度±10μm未満、温度分布±1℃の圧縮盤である高精度ホットプレスを用いて、測定対象膜を250℃、15分、0.5MPaの条件で圧縮した。続いて、膜を室温のSUS板の上に30分間静置した後に、接触式の膜厚み計で目印部分の膜厚みを測定した。9点での圧縮前後の膜厚みの変化率を下式(3)によって求めた。9点の平均値を膜厚み変化率とした。
(ポリアミック酸溶液組成物Aの調製)
500mlのセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒として用いて、酸無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、モル比がほぼ1、ポリマー濃度が8質量%になる量を測り取って投入した。その後、撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。23時間後、安息香酸をポリアミック酸100質量部に対して30質量部の量を、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸をポリアミック酸100質量部に対して1質量部の量をそれぞれフラスコ内に添加し、撹拌操作を継続した。30時間後に撹拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(濾紙:アドバンテック東洋(株)製:粘稠液用濾紙No.60)でろ過して、ポリアミック酸溶液組成物Aを得た。溶液組成物Aは粘稠な懸濁液体で、粘度は540ポアズ(54Pa・s)(25℃)であった。
(ポリアミック酸溶液組成物Cの調製)
安息香酸を添加しなかったこと以外は製造例1と同様にして、ポリアミック酸溶液組成物Cを得た。溶液組成物Cは粘稠な懸濁液体であった。
室温下で、卓上の自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、製造例1で調製したポリアミック酸溶液組成物Aを厚さ約150μmで、均一に流延塗布した。その後、90秒間、温度23℃、湿度40%の大気中に放置し、その後、凝固浴(水75質量部/NMP25質量部、室温)中に基板全体を投入した。投入後、8分間静置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取りだし、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、ポリアミック酸膜を得た。このポリアミック酸膜を温度23℃、湿度40%の大気中で乾燥させた後、10cm角のピンテンターに張りつけて電気炉内にセットした。約10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱し、その後20℃/分の昇温速度で380℃まで加熱し、そのまま3分間保持する温度プロファイルで熱処理を行い、多孔質ポリイミド膜を得た。
得られた多孔質ポリイミド膜は、膜厚みが26μm、空孔率が65%、ガーレー値が24秒であった。結果を表1に示す。
・横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比がL/d=0.5〜3の範囲に入るボイドの数が70%以上であることを確認できた。
・膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドを多数有し、その断面積が総断面積の70%以上であることを確認できた。
多孔質ポリイミド膜のガラス転移温度は、約280℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率は、1%以下であった。
ポリアミック酸溶液組成物Aをポリアミック酸溶液組成物Cに変更したこと以外は実施例1と同様にして、多孔質ポリイミド膜を得た。得られた多孔質ポリイミド膜は、膜厚みが24μm、空孔率が55%、ガーレー値が75秒であった。結果を表1に示す。
これに対し、実施例1の多孔質ポリイミド膜は、2つの表面層及びそれに挟まれたマクロボイド層という三層構造からなり、表面層に、平均孔径0.01〜5μmであり互いに連通する複数の細孔を有しており、ガーレー値が低く、物質透過性に優れる。
市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)不織布、及びメンブレンフィルタ(ミリポア社製、商品名:OMNIPORE、フィルタタイプ:10μmJC)について、250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率を測定した。膜厚み変化率はそれぞれ、52%、78%であった。
2 表面層(a)
25 細孔
3 マクロボイド層
31 マクロボイド
32 隔壁(支持部)
35 細孔
4 表面層(b)
45 細孔
Claims (13)
- 2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造の多孔質ポリイミド膜であって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、
前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜5μmの複数の細孔を有し、当該細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、
総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60%以上70%未満である、多孔質ポリイミド膜。 - 前記マクロボイド層は、前記表面層(a)側及び/又は前記表面層(b)側から観察して、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドを有している、請求項1に記載の多孔質ポリイミド膜。
- 前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)の厚さが略同一である、請求項1又は2に記載の多孔質ポリイミド膜。
- ガーレー値が30秒以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
- 250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が5%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
- 前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmのマクロボイドの断面積が膜断面積の50%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
- 前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、前記マクロボイドの60%以上が、膜平面方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)が0.5〜3の範囲内にある、請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
- ガラス転移温度が、240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がない、請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法であって、
テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなるポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなるポリアミック酸溶液(A)、及び前記ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部の、極性基を有する有機化合物(B)を含有するポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び
前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程
を含み、前記の極性基を有する有機化合物(B)が、前記ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる有機化合物である、多孔質ポリイミド膜の製造方法。 - 前記ポリアミック酸が、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物と、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンとから得られる、請求項9に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記の極性基を有する有機化合物(B)が安息香酸である、請求項9又は10に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- ポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程において、200℃以上の温度域での昇温速度が25℃/分未満である、請求項9〜11のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記の水を必須成分とする凝固溶媒が、水であるか、又は5質量%以上100質量%未満の水と0質量%を超え95質量%以下の有機極性溶媒との混合液である、請求項9〜12のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
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