JP2011208224A - 電気銅めっき用高純度銅アノード、その製造方法および電気銅めっき方法 - Google Patents
電気銅めっき用高純度銅アノード、その製造方法および電気銅めっき方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】電気めっき用高純度銅に加工を施して加工歪みを与えた後、再結晶化熱処理を行うことにより、アノード表面の銅結晶粒の結晶粒界の単位全粒界長さLNと、特殊粒界の単位全特殊粒界長さLσNとの特殊粒界長比率LσN/LNが、0.35以上となる結晶粒界組織を有せしめ、電気銅めっき浴中のアノード側で発生するスライム等のパーティクルの発生を抑制することでめっき不良の低減を図る。
【選択図】 図1
Description
しかし、アノード溶解時に電極表面に銅粉や金属塩を主成分とするスライムが発生し、それらがアノード電極から剥離し、浴中に流出すると、カソード電極表面に付着し突起等のめっき不良が発生しやすいという問題点があった。
また、例えば、特許文献2に示されるように、高純度銅インゴットを、熱間鍛造−冷間加工ッ歪除去焼鈍することにより、結晶粒を微細化した純銅をアノードとして用いた電気銅めっきも知られている。
そこで、この発明では、ピロリン酸銅浴を用いた電気銅めっきに際し、電気銅めっき浴中のアノード側で発生するスライム等のパーティクルの発生を防止する電気銅めっき用高純度銅アノードとその製造方法、さらには、パーティクルの発生に起因するめっき不良を低減することができる高純度銅アノードを用いた電気銅めっき方法を提供することを目的とする。
従来のピロリン酸銅浴を用いた高純度銅アノードを用いた電気銅めっきにおいては、電解の進行とともに銅が溶解してゆくが、アノードにおける銅の溶解は不均一に進行し、特に、結晶粒界の選択的・優先的な溶解進行により、部分的な結晶粒の脱落等が発生し、これがスライム発生の一要因であることを見出した。
ここで、特殊粒界とは、「Trans.Met.Soc.AIME,185,501(1949)」に基づき定義されるΣ値で3≦Σ≦29に属する対応粒界であって、かつ、「Acta.Metallurgica.Vol.14,p.1479,(1966)」で述べられている当該対応粒界における固有対応部位格子方位欠陥Dqが、Dq≦15°/Σ1/2を満たす結晶粒界であるとして定義される。
「(1) 電気めっき用高純度銅アノードにおいて、
(a)走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、隣接する結晶粒相互の配向方位差が15ー以上の結晶粒の界面を結晶粒界とし、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、これを単位面積1mm2当たりに換算した単位全粒界長さLNを求め
(b)また、同じく走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、相互に隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσを測定し、これを単位面積1mm2当たりに換算して単位全特殊粒界長さLσNを求めた場合、
(c)上記測定した結晶粒界の単位全粒界長さLNと、同じく上記測定した特殊粒界の単位全特殊粒界長さLσNとの特殊粒界長比率LσN/LNが、
LσN/LN≧0.35
の関係を満足する結晶粒界組織を有することを特徴とする電気めっき用高純度銅アノード。
(2) 平均結晶粒径が3〜1000μmである前記(1)に記載の電気めっき用高純度銅アノード。
(3) 電気めっき用高純度銅に加工を施して加工歪みを与えた後、250〜900℃で再結晶化熱処理を行うことにより、特殊粒界長比率LσN/LNを0.35以上とすることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
(4) 加工は、冷間加工または熱間加工の内の少なくとも何れかにより行う前記(3)に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
(5) 冷間加工と再結晶化熱処理、あるいは、熱間加工と再結晶化熱処理、またはこれらを組み合わせた処理を、特殊粒界長比率LσN/LNが0.35以上となるまで繰り返し行う前記(3)または(4)に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
(6) 350〜900℃の温度範囲で圧下率5〜80%の熱間加工を施し、その後、3〜300秒間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行う前記(3)に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
(7) 圧下率5〜80%の冷間加工を施し、その後、250〜900℃の温度範囲に加熱し、5分〜5時間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行う前記(3)に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
(8) 前記(1)または(2)に記載の電気めっき用高純度銅アノードを用いた電気銅めっき方法。」
を特徴とするものである。
図1(a)〜(d)の模式図に示すように、電解が開始された初期状態(a)では、アノード表面に大きな変化は生じないが、電解開始後、一定の時間経過した(b)では、アノード表面の結晶粒は、粒内に比べ化学的に不安定な粒界から選択的な溶解が開始し、さらに電解が進行した時点(c)では、粒界が選択的に溶解される結果、形状因子による電流密度の不均一化が生じ、そのため、さらに加速度的に粒界が選択溶解を起こすようになり、さらに電解が進行した時点(d)では、粒界の溶解が進むため、未溶解の結晶粒が剥離・剥落を生じるようになり、アノードスライムの発生原因となり、また、これがめっき不良発生原因ともなる。また、未溶解の結晶粒が剥離・剥落したアノード部分には新生面が生成し、電圧変動が発生するようになり、安定した電解操業を行うことが次第に困難となる。
ここで、単位全結晶粒界長さLNは、走査型電子顕微鏡を用いてアノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、得られた後方散乱電子回折パターンから求めた結晶の配向データを基に隣接する結晶粒相互の配向方位差が15°以上の結晶粒の界面を結晶粒界として、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、これを測定面積で除算し、単位面積1mm2当たりの単位粒界長さに換算することによって求めることができる。
特殊粒界長比率LσN/LNが、LσN/LN<0.35では、電解時の結晶粒界の選択溶解を抑えることができず、アノードスライムの発生低減、スライム起因のめっき欠陥の発生低減を図ることができないので、特殊粒界長比率LσN/LNを、LσN/LN≧0.35と定めた。
また、本発明の高純度銅アノードの平均結晶粒径(双晶も結晶粒としてカウント)は、3〜1000μmであることが望ましく、平均結晶粒径がこの範囲から外れるとアノードスライムがより多く発生する。
具体的な製造例としては、例えば、
(イ)400〜900℃の温度範囲で、電気めっき用高純度銅に圧下率5〜80%の熱間加工を施した後、3〜300秒間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行うことによって、LσN/LN≧0.35の関係を満足する結晶粒界組織を有する電気めっき用の高純度銅アノードの製造方法、
また、他の製造例としては、
(ロ)圧下率5〜80%の冷間加工を施した後、350〜900℃の温度範囲に加熱し、5分〜5時間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行うことによって、LσN/LN≧0.35の関係を満足する結晶粒界組織を有する電気めっき用の高純度銅アノードの製造方法、
を挙げることができる。
上記(イ)、(ロ)の特定の圧下率の熱間加工、冷間加工により歪みを与えた後、所定の温度範囲で、歪みを付与せず静的に保持した状態で再結晶させることによって、特殊粒界の形成が促進され、単位全特殊粒界長さLσNの比率を高め、特殊粒界長比率LσN/LNの値を0.35以上とすることができる。
また、上記の熱間加工、冷間加工および熱処理を、何度か繰り返し行うことによりLσN/LN≧0.35となる結晶粒界組織を得ることも何ら差し支えない。
具体的には、電界放出型走査電子顕微鏡を用いたEBSD測定装置(HITACHI社製 S4300−SE,EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)によって、結晶粒界、特殊粒界を特定し、その長さを算出することにより行うことができる。
また、高純度銅アノードの平均結晶粒径(双晶も結晶粒としてカウントする)の測定は、上記EBSD測定装置と解析ソフトによって得られた結果から結晶粒界を決定し、観察エリア内の結晶粒子数を算出し、エリア面積を結晶粒子数で割って結晶粒子面積を算出し、それを円換算することにより平均結晶粒径(直径)を求めることができる。
本表1における冷間伸線加工とは、断面形状φ60mmのワイヤー状サンプルを引き抜き加工によりφ30mmの断面形状にするプロセス、ボール成型加工とは、長さ47mmに切断した断面積φ30mmの円筒状サンプルを型鍛造により、直径約40mmの球体に成型するプロセスである。
なお、表1中の実施例としては、熱間加工−熱処理,冷間加工−熱処理あるいはこれらを所要回数繰り返し行う場合に、同一条件での繰り返しのみを挙げているが、必ずしも同一条件で繰り返す必要はなく、特許請求の範囲の各請求項で規定された条件の範囲内であれば、異なる条件(加工温度、加工法,加工率,保持温度,保持時間)での繰り返しを行うことは勿論可能である。
表3に、LN,LσN及び特殊粒界長比率LσN/LNを示す。
上記EBSD測定装置と解析ソフトによって得た結果から求めた平均結晶粒径の値も表3に示す。
また、図2〜図7に、それぞれ、本発明アノード3,5,8,10,13,20のEBSD解析結果を示す。
また、上記で製造した比較例アノードについても、本発明と同様にして、単位全粒界長さLN、単位全特殊粒界長さLσN、特殊粒界長比率LσN/LNおよび平均結晶粒径を求めた。
この値を表4に示す。
また、図8、図9には、それぞれ、比較例アノード1, 4のEBSD解析結果を示す。
めっき液: ピロリン酸銅80g/L、ピロリン酸カリウム400g/L、pH8.5(pHはアンモニアで調整)
めっき条件:液温 50℃、
カソード電流密度 3 A/dm2、
めっき時間 20 分/枚、
また、めっき後のプリント基板のスルーホール内面を、光学顕微鏡で観察し、スルーホール内面に形成されている高さ3μm以上の突起を欠陥とみなして、突起欠陥数をカウントした。
これらの測定結果を表5、表6に示す。
しかるに、特殊粒界長比率LσN/LNが0.35未満である比較例アノードでは、アノードスライム発生量が多いばかりか、スライム起因のめっき欠陥が多発していることが分かる。
Claims (8)
- 電気めっき用高純度銅アノードにおいて、
(a)走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、隣接する結晶粒相互の配向方位差が15°以上の結晶粒の界面を結晶粒界とし、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、これを単位面積1mm2当たりに換算した単位全粒界長さLNを求め
(b)また、同じく走査型電子顕微鏡を用いて、アノード表面の個々の結晶粒に電子線を照射し、相互に隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσを測定し、これを単位面積1mm2当たりに換算して単位全特殊粒界長さLσNを求めた場合、
(c)上記測定した結晶粒界の単位全粒界長さLNと、同じく上記測定した特殊粒界の単位全特殊粒界長さLσNとの特殊粒界長比率LσN/LNが、
LσN/LN≧0.35
の関係を満足する結晶粒界組織を有することを特徴とする電気めっき用高純度銅アノード。 - 平均結晶粒径が3〜1000μmである請求項1に記載の電気めっき用高純度銅アノード。
- 電気めっき用高純度銅に加工を施して加工歪みを与えた後、250〜900℃で再結晶化熱処理を行うことにより、特殊粒界長比率LσN/LNを0.35以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
- 加工は、冷間加工または熱間加工の内の少なくとも何れかにより行う請求項3に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
- 冷間加工と再結晶化熱処理、あるいは、熱間加工と再結晶化熱処理、またはこれらを組み合わせた処理を、特殊粒界長比率LσN/LNが0.35以上となるまで繰り返し行う請求項3または4に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
- 350〜900℃の温度範囲で圧下率5〜80%の熱間加工を施し、その後、3〜300秒間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行う請求項3に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
- 圧下率5〜80%の冷間加工を施し、その後、250〜900℃の温度範囲に加熱し、5分〜5時間、上記加工歪みを与えずに静的に保持し、再結晶化熱処理を行う請求項3に記載の電気めっき用高純度銅アノードの製造方法。
- 請求項1または2に記載の電気めっき用高純度銅アノードを用いた電気銅めっき方法。
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