JP2011006747A - 電解コンデンサ用アルミニウム箔 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、粗面化処理を行ったときに、表面の無効溶解が抑えられ、十分な深さを有するピットを、高密度に効率よく形成することができ、静電容量および折曲強度が大きな電解コンデンサ用電極を低コストで供給することができる電解コンデンサ用アルミニウム箔を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔は、エッチング処理された後に電解コンデンサ用電極に供されるものであって、Alと不可避不純物からなるAl材を主体とし、質量比で、Si:5〜500ppm、Fe:5〜500ppm、Cu:5〜200ppm、Ni:20〜300ppmを含有するとともに、アノード分極曲線における電流密度が急増する電位が、200〜3500mVとされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、電解コンデンサの電極に用いられる電解コンデンサ用アルミニウム箔に関する。
アルミニウム電解コンデンサは、例えば、陽極酸化によりその表面に酸化アルミニウムの誘電体皮膜を形成した陽極用アルミニウム箔と、酸化処理を施していない陰極用アルミニウム箔とを、電解質を挟んで対向させた構成とされており、陽極用アルミニウム箔としては、純度99.99%程度の高純度アルミニウム箔が、また、陰極用アルミニウム箔としては、純度99.2〜99.8%程度の各種アルミニウム合金が使用されている。
そして、このようなアルミニウム電解コンデンサでは、一般に、各アルミニウム箔の表面を粗面化(エッチング)して実効的な表面積を拡大することにより、小型・軽量化を図りながら、各アルミニウム箔に大きな静電容量をもたせるようにしている。
すなわち、アルミニウム箔に酸溶液を用いてエッチング処理を行うと、アルミニウム箔の表面で、各立方晶の(100)面に対して垂直方向にエッチングが進行し、キャピラリー状のピットが多数形成される。そして、形成される各ピットの深さが深く、ピットの形成密度が高い程、アルミニウム箔は、実効的な表面積が拡大し、大きな静電容量を得ることができる。
ここで、アルミニウム箔、特に高純度アルミニウム箔は、実際には、酸溶液中で不動態化が進行し、化学溶解性が低い。このため、アルミニウム箔の粗面化処理は、電解エッチングと化学エッチングを併用し、強酸溶液を用いる電解エッチングによってピットを発生させる第1工程と、酸溶液を用いる化学エッチングまたは電解エッチングによってピットを径方向に拡大する第2工程との2段階で行われている。
しかしながら、従来、高純度アルミニウム箔に必要な数(密度)のピットを形成するには、電解エッチングにおいて40〜60C/cmの大電気量を供給しなければならず、これによるコスト高が問題となっている。
そこで、添加元素の種類および含有量、酸化皮膜の膜厚を規定するとともに、添加元素について厚さ方向に濃度勾配を生じさせることにより、特に表層部での化学的溶解性を増大させたアルミニウム箔が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このアルミニウム箔は、表層部での化学的溶解性が高いため、低電流条件での電解エッチングもしくは無電解エッチングを用いて、ピットを効率よく形成することができる。
特開2007−113085号公報
しかし、特許文献1に記載されたアルミニウム箔は、このように化学溶解性が高いことによって、低電流条件または無電解条件でピットが形成できる反面、これと同時に、ピット以外の領域の表面溶解(無効溶解)も進行し易い。このため、電解エッチングの電流が無効溶解に消費されてピットの成長に有効に寄与しなかったり、ピット以外の領域で、表面が後退することによって、ピットの深さが相対的に浅くなるなど、アルミニウム箔を十分に粗面化することができない問題がある。また、無効溶解の進行によってアルミニウム箔全体の厚さも薄くなるため、アルミニウム箔の折曲強度が不足してしまうという問題もある。
本発明は、粗面化処理を行ったときに、表面の無効溶解が抑えられ、十分な深さを有するピットを、高密度に効率よく形成することができ、静電容量および折曲強度が大きな電解コンデンサ用電極を低コストで供給することができる電解コンデンサ用アルミニウム箔を提供することを目的とする。
本発明者が、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、アルミニウム箔に含有させる元素の種類およびその含有量を規定するとともに、アルミニウム箔の、アノード分極曲線における皮膜破壊電位(電流密度が急増する電位)を規定することにより、アルミニウム箔の粗面化処理において、Alマトリックスの溶解性を高めながら、その表面の無効溶解を効果的に抑えることができ、低電流条件もしくは無電解条件においても、十分な深さを有するピットを、高密度に形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、エッチングに供される電解コンデンサ用アルミニウム箔であって、質量比で、Si:5〜500ppm、Fe:5〜500ppm、Cu:5〜200ppm、Ni:20〜300ppmを含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム箔であって、アノード分極曲線における電流密度が急増する電位が、200〜3500mVであることを特徴とする。
また、本発明において、Zn、Ga、Sn、Mg、Pbから選ばれる元素のうち1種または2種以上を含有し、これら元素の含有量が合計で1〜200ppmであっても良い。
また、本発明において、少なくとも表面付近に、その平均粒径が0.1〜5μmのAl−Ni系金属間化合物が10〜10個/cmなる密度で分布していても良い。
本発明によれば、電解コンデンサ用アルミニウム箔は、Si、Fe、Cu、Niを所定の含有量で含んでおり、且つ、アノード分極曲線における皮膜破壊電位(電流密度が急増する電位)が所定範囲とされていることにより、立方晶率が高く、また、エッチング液に対して適度な溶解性を有する。このため、アルミニウム箔の粗面化処理において、ピットを高密度且つ均一に効率よく形成することができる。
特に、皮膜破壊電位が所定範囲とされていることにより、表面の無効溶解が効果的に抑えられ、ピット部分のみが優先的にエッチングされる。これにより、ピットを十分な深さで形成することができる。
このため、本発明のアルミニウム箔は、粗面化処理によって実効的な表面積を大きく拡大することができ、粗面化後に電解コンデンサの電極として組み込んだとき、大きな静電容量を得ることができる。
また、本発明のアルミニウム箔は、粗面化処理において、過溶解や表面の無効溶解が抑えられるため、処理後においても処理前の全厚をほぼ維持することができる。このため、電解コンデンサの電極として用いたとき、大きな折曲強度が得られ、優れた信頼性および取り扱い性を得ることができる。
さらに、このアルミニウム箔は、エッチング処理に対する溶解性が適度に高められているため、低電流条件での無電解エッチングもしくは無電解エッチングを用いた場合でも、十分な深さを有するピットを高密度に形成することができる。これにより、粗面化処理に要するコストを低減することができる。
図1は典型的なアノード分極曲線の一例を示すグラフである。
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。
<アルミニウム箔>
本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔は、エッチング処理によって粗面化された後、電解コンデンサ用電極に供されるものである。
この電解コンデンサ用アルミニウム箔は、質量比で、Si:5〜500ppm、Fe:5〜500ppm、Cu:5〜200ppm、Ni:20〜300ppmを含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム箔であって、アノード分極曲線における電流密度が急増する電位が200〜3500mVとされている。
まず、アルミニウム箔を構成する各成分およびその含有量について説明する。
Fe:5〜500ppm
Feは、Alと結合してAl−Fe系金属間化合物を生成する。このAl−Fe系金属間化合物の析出により、アルミニウム素材の作製工程や加工工程において、再結晶粒の粗大化が抑制されるとともに立方晶粒の優先成長が促進される。このため、このアルミニウム箔は高い立方晶率を有する。
アルミニウム箔は、立方晶率が高いことにより、粗面化処理を行ったときに、各立方晶の(100)面に対して略垂直方向に成長した腐食孔(ピット)が高密度に形成される。また、このとき、Al−Fe系金属間化合物がカソードサイトとなってAlマトリックスと局部電池反応を生じる。これにより、Alマトリックスの溶解が助長され、ピットの形成が促進される。
Fe含有量が5ppm未満の場合には、上述したFeの効果が十分に得られない。また、アルミニウム箔のFe含有量を5ppm未満に抑えるためには、高度な精製技術が必要となり、アルミニウム箔の製造コストの増大に繋がる。
一方、Fe含有量が500ppmを超えると、Al−Fe系金属間化合物の析出が過剰となり、立方晶粒の優先成長が逆に抑制されてしまう。これにより、アルミニウム箔は立方晶率が低いものとなり、粗面化処理で形成されるピットの密度が低くなる。また、粗面化処理において、Feが関与する局部電池反応の作用が大きくなり過ぎてしまい、アルミニウム箔が過溶解状態となる。その結果、各ピットが径方向に広がり過ぎて結合したり、表面の無効溶解が進行することによってピットが浅くなったりし、アルミニウム箔の実効的な表面積を十分に拡大することができず、静電容量が低下する。なお、Fe含有量のより望ましい範囲は7〜100ppmである。
Si:5〜500ppm
Siは、Al−Fe系金属間化合物の析出を促進する。これにより、Siを含まない場合に比べてAl−Fe系金属間化合物が効率よく析出し、この金属間化合物による効果、すなわち、アルミニウム箔の立方晶率を高める効果と局部電池反応による溶解促進効果を大きく得ることができる。その結果、アルミニウム箔の粗面化処理において、より高い密度で効率よくピットを形成することができる。
Si含有量が5ppm未満の場合には、Siの効果が十分に得られない。また、アルミニウム箔のSi含有量を5ppm未満に抑えるためには、高度な精製技術が必要となり、アルミニウム箔の製造コストの増大に繋がる。
一方、Si含有量が500ppmを超えると、Al−Fe系金属間化合物の析出量が過剰となり、析出が進行しすぎて過溶解となる不都合が生じ、エッチング形態が不均一になり、静電容量の低下となる。なお、Si含有量のより望ましい範囲は7〜100ppmである。
Cu:5〜200ppm
Cuは、Alマトリックスのエッチング処理に対する溶解性を高めるとともに、その溶解が均一に進行するように作用する。これにより、粗面化処理において、ピットの形成が促進され、また、形成されるピットの分布および形状を均一なものとすることができる。
Cu含有量が5ppm未満の場合には、その作用効果が十分に得られない。また、Cu含有量が200ppmを超えると、Alマトリックスのエッチング処理に対する溶解性が高くなり過ぎ、粗面化処理において、アルミニウム箔が過溶解状態となる。その結果、各ピットが径方向に広がり過ぎて結合したり、表面の無効溶解が進行することによってピットが浅くなったりし、アルミニウム箔の実効的な表面積を十分に拡大することができず、静電容量の低下に繋がる。なお、Cu含有量のより望ましい範囲は7〜50ppmである。
Ni:20〜300ppm
Niは、Alと結合してAl−Ni系金属間化合物を生成する。このAl−Ni系金属間化合物の析出粒は、粗面化処理を行ったとき、カソードサイトとなってAlマトリックスと局部電池反応を生じる。これにより、Alマトリックスの溶解が助長され、ピットの形成が促進される。
Niの含有量が20ppm未満の場合には、Al−Ni系金属間化合物の析出量が少なくなり、その分散が不均一となる。粗面化処理を行ったとき、Al−Ni系金属間化合物の析出粒の周囲でのみ局所的にAlマトリックスの溶解性が高くなるため、分散が不均一になると、形成されるピットの分布および形状が不均一になる。また、Niの含有量が300ppmを超えると、Al−Ni系金属間化合物の量が過剰となり、Niが関与する局部電池反応の作用が大きくなり過ぎてしまう。その結果、アルミニウム箔が過溶解状態となり、各ピットが径方向に広がり過ぎて結合したり、表面の無効溶解が進行することによってピットが浅くなったりし、アルミニウム箔の実効的な表面積を十分に拡大することができない。なお、Ni含有量のより望ましい範囲は30〜150ppmである。
Al−Ni系金属間化合物の析出粒の平均粒径は0.1〜5μmであるのが望ましく、0.3〜3μmであるのがより望ましい。また、この析出粒の密度は、少なくとも表面付近において10〜10個/cmであるのが望ましく、10〜10個/cmであるのがより望ましい。
Al−Ni系金属間化合物の析出粒の粒径または密度が前記範囲より小さい場合には、粗面化処理を行ったとき、Niが関与する局部電池反応の作用が小さくなり、ピットの形成を十分に促進することができない。
また、Al−Ni系金属間化合物の析出粒の粒径または密度が前記範囲より大きい場合には、粗面化処理を行ったとき、Al−Ni系金属間化合物が関与する局部電池反応の作用が大きくなり過ぎてしまう。その結果、アルミニウム箔が過溶解状態となり、各ピットが径方向に広がり過ぎて結合したり、表面の無効溶解が進行することによってピットの深さが浅くなったりし、アルミニウム箔の実効的な表面積を十分に拡大することができない。
このアルミニウム箔のAlの純度は、99.7%以上であるのが望ましい。純度が99.7%未満の場合には、立方晶率が低くなり、その結晶方位が不均一になる可能性がある。その結果、粗面化処理によって形成されるピットの密度が低くなるとともに、ピットの分布や成長方向が不均一になる可能性がある。
また、以上のようなアルミニウム箔は、必要に応じて、この他の添加元素を含んでいてもよい。
この他の添加元素としては、Zn、Ga、Sn、Mg、Pb等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて添加することができる。
これらの添加元素は、Alマトリックスの電位を低下させる作用を有し、これによってAlマトリックスとAl−Ni系金属間化合物との電位差が高くなる。その結果、粗面化処理において、Al−Ni系金属間化合物が関与する局部電池反応の作用が大きくなり、ピットの形成がより促進される。
本発明のアルミニウム箔における、これら添加元素(Zn、Ga、Sn、Mg、Pb)の含有量は、合計1〜200ppmであるのが望ましく、2〜50ppmであるのがより望ましい。
これら添加元素の総量が1ppm未満の場合には、その効果が十分に得られない。また、これら添加元素の総量が200ppmを超えると、粗面化処理において、Al−Ni系金属間化合物が関与する局部電池反応の作用が大きくなり過ぎてしまう。その結果、アルミニウム箔が過溶解状態となり、アルミニウム箔の実効的な表面積を十分に拡大することができない場合がある。
このアルミニウム箔の表面近傍は、アルミニウムが酸化されて形成された酸化皮膜によって構成されている。この酸化皮膜は、エッチング処理に対するバリヤー性を有し、アルミニウム箔の表面溶解を制御する機能を有する。
本発明では、この酸化皮膜のバリヤー性の指標として、アノード分極曲線において電流密度が急増する電位を用い、この電位を200〜3500mVの範囲に規定する。
ここで、「アノード分極曲線」とは、アノード分極測定法で測定される電位vs電流密度の関係図であり、アノード分極測定法については金属表面技術(佐藤忍ら、32、40(1981))に詳細に記載されている。測定条件は以下の通りにすることができる。
電解液:0.5Mホウ酸と0.05M四ホウ酸ナトリウム混合溶液
電解液の温度:22℃±2℃
電解液のpH:7.0
掃引速度:700mV/min
アルミニウム箔試料についてアノード分極測定を行うと、電位の変化に従って電流密度が増大し、ある電流値で電流密度が急増する。この電流密度の急増は、主に、アルミニウム箔の表面付近に形成された酸化皮膜が破壊することに由来している。ここでは、この電流密度が急増する電位を「皮膜破壊電位」と言う。
図1に典型的なアノード分極曲線を示すが、電流密度の急増する領域に沿って接線を引いてこの接線が電位を示す横軸に交差する場合の電位を皮膜破壊電位(電流密度急増電位)とする。
皮膜破壊電位は、この酸化皮膜のバリヤー性(耐エッチング性)の指標となる。すなわち、アルミニウム箔は、この皮膜破壊電位が大きいもの程、酸化皮膜のバリヤー性が高く、表面の無効溶解が生じ難いことを意味する。
そして、皮膜破壊電位が200mV未満である場合には、酸化皮膜のバリヤー性が小さいため、粗面化処理を行ったとき、表面の無効溶解が十分に抑制されない。このため、ピットが深さ方向に成長しても、それと同時に、ピット以外の領域も溶解して表面が後退するため、ピットを深さ方向に効率よく伸長することができない。
また、皮膜破壊電位が3500mVを超える場合には、酸化皮膜のバリヤー性が大き過ぎ、保護皮膜的な作用が強くなり、例えば、局所にのみピットが形成され、その他の領域にはピットがほとんど形成されないというようにピット分布が不均一になる。
これに対して、皮膜破壊電位が200〜3500mVのアルミニウム箔は、酸化皮膜が適度なバリヤー性を有しており、粗面化処理において、その表面の無効溶解が効果的に抑えられ、ピット部分のみが優先的にエッチングされる。これにより、ピットを十分な深さで形成することができる。
以上のように構成されたアルミニウム箔は、Si、Fe、Cu、Niを所定の含有量で含んでおり、且つ、アノード分極曲線における皮膜破壊電位が所定範囲とされていることにより、立方晶率が高く、エッチング液に対して適度な溶解性を有する。このため、アルミニウム箔の粗面化処理において、ピットを高密度且つ均一に効率よく形成することができる。特に、皮膜破壊電位が所定範囲とされていることにより、表面の無効溶解が効果的に抑えられ、ピット部分のみが優先的にエッチングされる。これにより、ピットを十分な深さで形成することができる。
このため、このアルミニウム箔は、粗面化処理によって実効的な表面積を大きく拡大することができ、粗面化後に電解コンデンサの電極として組み込んだとき、大きな静電容量を得ることができる。
また、本発明のアルミニウム箔は、粗面化処理において、過溶解や表面の無効溶解が抑えられるため、処理後においても処理前の全厚をほぼ維持することができる。このため、電解コンデンサの電極として用いたとき、大きな折曲強度が得られ、優れた信頼性および取り扱い性を得ることができる。
さらに、本発明のアルミニウム箔は、エッチング処理に対する溶解性が適度に高められているため、低電流条件での無電解エッチングもしくは無電解エッチングを用いた場合でも、十分な深さを有するピットを高密度に形成することができる。これにより、粗面化処理に要するコストを低減することができる。
<アルミニウム箔の製造方法>
次に、アルミニウム箔の製造方法の一例について説明する。
まず、アルミニウム箔素材を用意する。アルミニウム箔素材は、所定の組成範囲に調整された数mm〜10mm厚の板材であり、例えば、半連続鋳造によって得たスラブを熱間圧延した板材であってもよく、連続鋳造によって得られた板材であってもよい。ここでスラブには、550〜610℃の均質化処理を2〜24時間程度行ってもよい。
次に、このアルミニウム箔素材に冷間圧延を行うことにより、厚さが数10μmから120μm程度のアルミニウム圧延材を得る。
なお、冷間圧延の途中あるいは終了後に適宜脱脂を行ってもよく、また、冷間圧延の途中で適宜中間焼鈍を行っても差し支えない。
次に、得られたアルミニウム圧延材に熱処理(第1熱処理)を行い、アルミニウム箔を得る。
この熱処理では、Alの立方晶が成長するとともに添加元素が表層部に移行して濃縮される。
熱処理における加熱温度は450〜600℃であるのが望ましく、処理時間は2〜24時間程度であるのが望ましい。
また、処理雰囲気は、H等の還元性ガス雰囲気、Ar、N等の不活性ガス雰囲気、還元ガスと不活性ガスとの混合ガスを主体とし、微量の酸素を含有する混合ガス雰囲気等が挙げられ、このうち微量の酸素を含有する混合雰囲気で焼純熱処理を行うと、アルミニウム箔の表面付近に酸化皮膜を形成することができる。
以上のようにしてアルミニウム箔は得られるが、この後、必要に応じて、酸化雰囲気下、250〜500℃の熱処理(第2熱処理)を行うようにしてもよい。
酸化雰囲気としては、酸素ガスと不活性ガスよりなる酸素含有雰囲気、酸化性ガスを含有する酸化雰囲気等が挙げられる。
この酸化処理を行うことにより、アルミニウム箔の表面に酸化皮膜が形成され、その処理条件(加熱温度、処理時間、雰囲気の酸素濃度および酸化性ガスの種類等)を調整することにより、形成される酸化皮膜のバリア性(皮膜破壊電位)を比較的精度よく制御することができる。これにより、所定の皮膜破壊電位を有するアルミニウム箔を容易に得ることができる。
<アルミニウム箔の粗面化処理>
次に、アルミニウム箔の粗面化処理の一例について説明する。
アルミニウム箔の粗面化処理は、前処理工程、エッチングピット発生工程、エッチングピット孔径拡大工程とによって行うことができる。
前処理工程では、アルミニウム箔を、5%水酸化ナトリウム溶液(温度40℃)に60秒程度浸漬する。
次に、エッチングピット発生工程を行う。この工程では、アルミニウム箔を、3M硫酸と1M塩酸との混合溶液(温度75℃)に60秒浸漬する(1段目のエッチング)。これにより、アルミニウム箔の表面に、各立方晶の(100)面に対して略垂直方向に伸びる腐食孔(ピット)が発生する。
このとき、このアルミニウム箔は、立方晶率が高く、また、適度な化学的溶解性を有していることにより、ピットが高密度且つ均一に効率よく形成される。さらに、表面の酸化皮膜のバリヤー性が制御されていることにより、表面の無効溶解が効果的に抑えられ、ピットの深さが効率よく深くなる。
次に、エッチングピット孔径拡大工程を行う。この工程では、アルミニウム箔を、2M塩酸(温度80℃)に180秒浸漬する(2段目のエッチング)。これにより、アルミニウム箔に形成されたピットの孔径が拡大する。
この工程でも、前工程と同様に、アルミニウム箔が適度な化学溶解性を有していることにより、ピットの孔径が均一に効率よく拡大する。さらに、表面の酸化皮膜のバリヤー性が制御されていることにより、表面の無効溶解が効果的に抑えられ、ピットの深さが効率よく深くなる。
以上の工程により、アルミニウム箔の表面に、十分な深さを有するピットが高密度且つ均一に形成され、アルミニウム箔の実効的な表面積が拡大する。
ここで、この粗面化処理は、いずれの工程も無電解エッチングであるため、電力消費量の問題がなく、低いコストで行うことができる。
このように粗面化処理が施されたアルミニウム箔(エッチング箔)は、電解コンデンサの電極として用いられる。
電解コンデンサとしては、低圧用コンデンサ、中圧用コンデンサ、高圧用コンデンサのいずれでもよく、また、このエッチング箔は、陽極および陰極の、いずれとして用いても差し支えないが、中高圧電解コンデンサの陽極として使用するのが好適である。これにより、容量の大きな中高圧電解コンデンサを低コストで提供することができる。
なお、アルミニウム箔を陽極として用いる場合、アルミニウム箔は、粗面化処理の後、その表面に酸化層(誘電体層)を形成する化成処理が施される。
以上、本発明の電解コンデンサ用アルミニウム箔の実施形態について説明したが、前記電解コンデンサ用アルミニウム箔を構成する各部、製造方法および粗面化処理の各工程および各条件は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
以下に、本発明の具体的実施例について説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<アルミニウム箔の製造>
(実施例1)
まず、半連続鋳造法により、各元素を表1に示す含有量で含むスラブを作製した。
次に、このスラブに570℃の均質化処理を6時間行った後、加工率95〜99%の熱間圧延を行い、厚さ10mmのアルミニウム板材を得た。
次に、加工率95%以上の冷間圧延を行い、箔厚115μmのアルミニウム圧延材を得た。
次に、このアルミニウム圧延材に、水素雰囲気中、550℃×6hで焼鈍(第1熱処理)を行い、アルミニウム箔を得た。
続いて、アルミニウム箔に、酸素ガスと窒素ガスとの混合雰囲気中、250℃×4hの加熱処理(第2熱処理)を行った。
(実施例2〜実施例19)
スラブにおける各元素の含有量を表1に示すように変更し、アルミニウム箔に第2熱処理を行う際の条件を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム箔を得た。
(比較例1〜比較例8)
スラブに含まれる各元素の含有量を表1に示すように変更し、アルミニウム箔に第2熱処理を行う際の条件を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてアルミニウム箔を得た。
(比較例9)
スラブに含まれる各元素の含有量を表1に示すように変更し、アルミニウム箔に第2熱処理を行わない以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム箔を得た。
各実施例および各比較例で作製した各アルミニウム箔について、所定の方法によってアノード分極曲線を測定し、皮膜破壊電位を調べた。その結果を表2示す。
<アルミニウム箔の粗面化処理>
次に、各実施例および各比較例で作製したアルミニウム箔に、粗面化処理を行った。
粗面化処理は、5%水酸化ナトリウム溶液(温度40℃)に60秒浸漬する前処理工程、3M硫酸と1M塩酸との混合溶液(温度75℃)に60秒浸漬するエッチングピット発生工程、2M塩酸(温度80℃)に180秒浸漬するエッチングピット孔径拡大工程とによって行った。
そして、粗面化処理を施した各アルミニウム箔(各エッチング箔)について、折曲強度を評価した。
折曲強度は、EIAJ RC2364A「アルミニウム電解コンデンサ用電極箔の試験方法」に準拠し、実施例17を100とした時の相対値として評価した。
<静電容量の評価>
次に、各エッチング箔に、400Vで化成処理を行うことで酸化皮膜(誘電体層)を形成し、複数の電解コンデンサ用電極を得た。
そして、各電解コンデンサ用電極を、陽極として電解コンデンサに組み込み、EIAJ法に準拠して静電容量を測定した。そして、各電解コンデンサ用電極の静電容量を、実施例17の電解コンデンサ用電極の静電容量を100としたときの相対値として評価した。その結果を表2に示す。
Figure 2011006747
Figure 2011006747
表2に示すように、各実施例で作製したアルミニウム箔は、粗面化処理後の粗面化の程度および折曲強度が大きく、また、これらアルミニウム箔から得られた各電極は、大きな静電容量を有していた。特に、所定の添加元素を含有するアルミニウム箔(実施例1〜実施例16、18、19)は、これを含有していないアルミニウム箔(実施例17)に比べて粗面化の程度が大きく、電極として大きな静電容量が得られた。
これに対して、Si、Fe、Cu、Niのいずれかの添加量が所定範囲より少ないアルミニウム箔(比較例1、2、3、4)は粗面化の程度が小さく、また、Si、Fe、Cu、Niのいずれかの添加量が所定範囲より多いアルミニウム箔(比較例5、6、7、8)は、粗面化処理において過溶解状態となったり、表面の無効溶解が進行したりし、粗面化の程度および折曲強度が小さい。このため、これらアルミニウム箔から得られた電極は、各実施例のアルミニウム箔から得られた電極に比べて静電容量が小さい値であった。

Claims (3)

  1. エッチングに供される電解コンデンサ用アルミニウム箔であって、質量比で、Si:5〜500ppm、Fe:5〜500ppm、Cu:5〜200ppm、Ni:20〜300ppmを含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム箔であって、アノード分極曲線における電流密度が急増する電位が、200〜3500mVであることを特徴とする電解コンデンサ用アルミニウム箔。
  2. Zn、Ga、Sn、Mg、Pbから選ばれる元素のうち1種または2種以上を含有し、これら元素の含有量が、合計で1〜200ppmであることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔。
  3. 表面に、平均粒径が0.1〜5μmのAl−Ni系金属間化合物が10〜10個/cmなる密度で分布していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解コンデンサ用アルミニウム箔。


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