JP5668915B2 - リン成分が均一分散されかつ微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法およびめっき用含リン銅アノード材 - Google Patents
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しかし、この電気めっき用含リン銅アノード材を使用して半導体デバイス上に銅配線を形成すると、電気めっき中に含リン銅アノード表面に形成されたブラックフィルムが剥離してめっき浴中に浮遊し、この一部がカソード側のシリコンウエハー表面に形成された銅配線用薄膜にパーティクルとして付着し、めっき不良が発生しやすいという問題点があった。
また、電気めっき用高純度銅アノード材の組織微細化を図るための製造方法としては、例えば、特許文献3に示されるように、銅インゴットを300〜500℃で熱間鍛造した後、冷間加工し、次いで歪取焼鈍を行うことにより、平均結晶粒径10〜50μmの微細結晶組織からなる電気めっき用高純度アノードを得る加工方法も提案されている。
そこで、本発明は、電気銅めっきにおいて、不均一な溶解進行に伴うアノード表面の凹凸発生を抑制するとともに、ブラックフィルムの不均一生成とその脱落に起因するスラッジ発生の低減を可能とするめっき用含リン銅アノード材の製造方法を提供することを目的とし、さらに、この製造方法によって製造しためっき用含リン銅アノード材を提供することを目的とする。
つまり、上記特許文献2、3に示される製造方法によれば、比較的結晶粒径の小さな含リン銅アノード材、高純度銅アノード材が得られるが、その結晶粒径の分布を測定した場合、結晶粒径の分布幅が広く、結晶粒を均一に微細化することは困難であり、さらに、含リン銅アノード材においては、リン成分の均一分散が図られておらず、このようなリン成分のミクロ偏析によって、アノードの不均一溶解、凹凸発生、ブラックフィルムの不均一生成・脱落、スラッジ発生が大きな影響を受けることを見出したのである。
「(1) P:300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷することにより、アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とする、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
(2) P:300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷し、次いで、300〜500℃の温度範囲で歪取焼鈍を行うことにより、アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とする、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
(3) 前記圧伸鍛造は、前記含リン銅鋳塊を、その凝固方向に圧縮後、鋳塊の凝固方向に垂直な方向で、かつ、少なくとも2軸以上の多方向から鍛造しながら伸ばしていく鍛造である前記(1)または(2)に記載のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
(4) 前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の製造方法によって得られためっき用含リン銅アノード材であって、該アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とするリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材。」
を特徴とするものである。
まず、純度99.99重量%以上の電気銅を、例えば、高純度Arガスなどの高純度不活性ガス雰囲気、COガスを2〜3%含む窒素ガスなどの還元ガス雰囲気または真空雰囲気で、温度:1150〜1300℃で溶解して、酸素含有量10ppm以下、好ましくは、酸素含有量5ppm以下、さらに好ましくは酸素含有量2ppm以下に調整するとともに、リン含有量が300〜1000ppmとなるようにリンを添加した溶湯を作製し、この溶湯を、凝固させることにより、P:300〜1000ppm、酸素含有量:10ppm以下、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を製造する。
この発明では、例えば、一方向凝固により銅鋳塊を作製するが、これは、一方向凝固させることによりガス成分はインゴットの最上面に放出されていき、仮にトラップされたガスが存在していても表面研削などにより簡単に除去することができ、また通常の鋳造により得られたインゴットよりも引け巣やボイドの発生が少なく、歩留まりが向上するからである。
なお、銅鋳塊の製法は一方向凝固に限定されず、例えば半連続鋳造、連続鋳造などによっても、引け巣やボイドや割れといった鋳造欠陥が無いく、酸素を10ppm未満に抑えりん成分のバラツキを抑えた含りん銅鋳塊を得ることができる。
上記で得た一方向凝固組織を有するP:300〜1000ppm、酸素含有量:10ppm以下、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃(図1では800℃)に加熱して熱間鍛造を行う。
熱間鍛造工程では、例えば、含リン銅鋳塊の凝固方向に鍛造し、その厚さが1/2以下になったとき、鋳塊を横置きし、鋳塊を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで延伸する圧伸鍛造を行い、角柱状の熱間鍛造材とし、次いで、角柱状の熱間鍛造材を立て直して該角柱状の熱間鍛造材の軸方向から再度鍛造を行い、その厚さが1/2以下になったとき、再度熱間鍛造材を横置きし、熱間鍛造材を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで伸ばす圧伸鍛造を再度行い、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返すことにより、鋳塊の鋳造組織を破壊し、リン成分の偏析を解消し、結晶粒の粒成長を阻止する。
そして、熱間鍛造の終了後、該熱間鍛造材を水冷する。
図1においては、8角柱状の熱間鍛造材を得る方法を例示したが、これに限らず、例えば4角柱状の熱間鍛造材を得ることとしてもよい。
作製した含リン銅鋳塊では、その結晶粒径は、約1000〜200000μmという大きな結晶粒径であるが、上記熱間鍛造を行うことにより、鋳塊の鋳造組織は破壊され、その結晶粒径は、約20〜50μm程度にまで微細化され、リンのマクロ偏析が解消される。
このように、本発明における熱間鍛造工程は、初期温度600〜900℃の範囲、好ましくは600〜800℃の範囲、さらに好ましくは650〜750℃の範囲で、多軸で圧縮−延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返した後水冷する。
ここで、熱間鍛造の初期温度が600℃未満では、鋳造組織が残存し更にりん成分の偏析が残存してしまい、一方、900℃を超える初期温度で鍛造した場合には、鍛造時の発熱等により、鋳塊の溶融の危険や無駄なエネルギーを使用してしまうため、熱間鍛造の初期温度は600〜900℃とした。
また、鋳造組織の不均質性(結晶粒径)、リン成分の偏析を解消するためには、多方向から鍛造しながら伸ばしていく多軸圧伸鍛造が必要である。
さらに、熱間鍛造終了後、熱間鍛造材を水冷するのは、特に、熱間鍛造材内部の残熱によって、破壊した鋳造組織の結晶粒が成長し粗大化するのを防止するためである。
上記の熱間鍛造で作製した角柱状の熱間鍛造材に対して、鍛造初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を施した後水冷する。
例えば、400℃に加熱した角柱状の熱間鍛造材に対し、まず、その軸方向に温間鍛造し、その厚さが1/2以下になったとき、温間鍛造材を横置きし、該温間鍛造材を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで延伸する多軸圧伸鍛造を行い、次いで、角柱状の温間鍛造材を立て直して該角柱状の温間鍛造材の軸方向から再度鍛造を行い、その厚さが1/2以下になったとき、再度温間鍛造材を横置きし、温間鍛造材を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで伸ばす多軸圧伸鍛造を再度行い、これを繰り返し行い、角柱状の温間鍛造材の角がある程度落ちてきた時点でタップ鍛造を行うことによって円柱状の温間鍛造材を作製し、次いで、この温間鍛造材を水冷する。
上記温間加工の初期温度が550℃を超えると、加工中の組織粗大化が生じる恐れがあることから、温間加工の初期温度は、550℃以下とする。
また、上記温間加工に引き続き冷間加工を行っても良く、また、温間加工を行わずに、冷間加工を行うことができる。
冷間加工は、水冷後の熱間鍛造材あるいは水冷後の温間加工材に対して、例えば、少なくとも50%以上の総圧下率となるように、ある角度で回転させながら(即ちクロスさせながら)冷間圧延を行う。総圧下率が50%未満では歪付与量が少なく、静的再結晶が不足する可能性があり、また、組織の均一性を高めるためにクロスさせながら冷間圧延を行い、冷間圧延終了後に水冷する。
上記温間加工、冷間加工によって、平均結晶粒度5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であるり、全体にわたって、均一粒径の結晶粒の組織が形成されるとともに、リン成分の偏析も解消され、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材を得ることができる。
上記多軸圧伸鍛造を行った熱間鍛造材を急水冷した。
温間加工材および/または冷間加工について、その直径が150mmになった時点で加工を終了し、急水冷した。
上記歪取焼鈍を行った焼鈍材を、面削し洗浄した後、リン偏析の有無、平均結晶粒径、結晶粒径のバラツキ(=平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合)を測定した。この測定値を表2に示す。
上記(A)〜(C)の各工程により、表2に示される本発明のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材(実施例という)1〜10を製造した。
(リン偏析の有無の測定)
X線マイクロアナライザ:EPMA(日本電子製 JXA8600を用いてPのマッピング分析を行うことによりPの偏析の有無を確認した。試料は研磨を行い、1mm角の領域を分析した。EPMA分析条件は、加速電圧:15kV、照射電流:50nA、ビーム径:1μm、積算時間:50msecで、Pの特性X線強度を測定した。
(平均結晶粒径の測定)
電解放出型走査電子顕微鏡を用いたEBSD測定装置(HITACHI社製 S4300−SE,EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)によって、結晶粒界を特定した。
測定条件は、
測定範囲:680×1020μm / 測定ステップ:2.0μm / 取込時間:20msec./point
とした。
まず、走査型電子顕微鏡を用いて、試料表面の測定範囲内の個々の測定点(ピクセル)に電子線を照射し、後方散乱電子線解析法による方位解析により、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点を結晶粒界とした。
得られた結晶粒界から、観察エリア内の結晶粒子数を算出し、観察エリア内の結晶粒界の全長を結晶粒子数で割って結晶粒子面積を算出し、それを円換算することにより、平均結晶粒とした。(Number Fraction)
(結晶粒径のバラツキ測定)
上記測定により、粒径分布図を作成しここからばらつきを算出した。
上記で製造した比較例1〜11についても、本発明と同様にして、リン偏析の有無、平均結晶粒径、結晶粒径のバラツキ(=平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合)を測定した。
この測定値を表4に示す。
上記で製造した比較例1〜11についても、本発明と同様にして、リン偏析の有無、平均結晶粒径、結晶粒径のバラツキ(=平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合)を測定した。
この測定値を表4に示す。
ブラックフィルムの脱落の有無、スラッジ発生量、アノードの凹凸状態を調査した。
さらに、電気めっき試験終了後、スラッジ量を測定し、更にアノードを純水で洗浄後、アノードの表面凹凸を確認し、その結果を、同じく表5に示した。
なお、アノードの表面凹凸の有無は、アノード表面の500×710μmの領域について、キーエンス製レーザ顕微鏡VK−9700を用いてその表面粗さを測定し、Ra80μm未満の場合を「アノード表面凹凸無」、一方、表面粗さRaが80μm以上の場合を「アノード表面凹凸有り」として判定した。
これに対して、比較例アノード1〜11では、アノードの不均一溶解の進行によりアノード表面に凹凸が形成されブラックフィルムの脱落が生じ、スラッジの発生量は多くことが判明した。
Claims (4)
- P:300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷することにより、アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とする、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
- P:300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷し、次いで、300〜500℃の温度範囲で歪取焼鈍を行うことにより、アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とする、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
- 前記圧伸鍛造は、前記含リン銅鋳塊を、その凝固方向に圧縮後、鋳塊の凝固方向に垂直な方向で、かつ、少なくとも2軸以上の多方向から鍛造しながら伸ばしていく鍛造である請求項1または2に記載のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法によって得られためっき用含リン銅アノード材であって、該アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とするリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材。
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