JP5668915B2 - リン成分が均一分散されかつ微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法およびめっき用含リン銅アノード材 - Google Patents

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この発明は、めっき用アノード材として用いるのに好適な、リン成分が均一分散されかつ微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法およびその製造方法で製造しためっき用含リン銅アノード材に関する。
一般に、硫酸銅溶液中で銅を電気めっきするためのアノードとして、含リン銅アノードが使われることは知られており、この電気めっき用含リン銅アノード材の一つとしては、例えば、特許文献1に示されるように、リン:350〜700ppm、酸素:2〜5ppmを含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有する含リン銅アノード材が知られている。
しかし、この電気めっき用含リン銅アノード材を使用して半導体デバイス上に銅配線を形成すると、電気めっき中に含リン銅アノード表面に形成されたブラックフィルムが剥離してめっき浴中に浮遊し、この一部がカソード側のシリコンウエハー表面に形成された銅配線用薄膜にパーティクルとして付着し、めっき不良が発生しやすいという問題点があった。
そこで、例えば、特許文献2に示されるように、酸素含有量を0.1〜2ppm未満に低減した鋳塊を600℃に加熱し、たたいて伸ばしたのち伸びた方向から圧縮する鍛造を3回繰り返すことにより加工組織を有する鍛造体を作製し、この鍛造体を所定の寸法に切断した後、さらに圧下率50%の冷間圧延を施し、ついで、300〜500℃の範囲内の温度で所定時間保持することにより歪取り焼鈍を施し、再結晶後の平均結晶粒径を10〜50μmの範囲の微細組織とすることにより、ブラックフィルムの剥離防止、めっき不良の発生を低減した電気めっき用含リン銅アノード材が提案されている。
また、電気めっき用高純度銅アノード材の組織微細化を図るための製造方法としては、例えば、特許文献3に示されるように、銅インゴットを300〜500℃で熱間鍛造した後、冷間加工し、次いで歪取焼鈍を行うことにより、平均結晶粒径10〜50μmの微細結晶組織からなる電気めっき用高純度アノードを得る加工方法も提案されている。
特開平8−67932号公報 特開2002−275698号公報 特開2001−240949号公報
上記の先行技術に示されるように、含リン銅アノードを用いた硫酸銅溶液中での電気銅めっきにおいては、ブラックフィルムの脱落抑制が大きな課題ではあるが、電気めっき効率の向上、操業の低コスト化、設備保守作業の簡易化、さらには、被めっき製品の品質向上等を図るためには、含リン銅アノード材の均一溶解、スラッジ発生の低減等も強く求められている。
そこで、本発明は、電気銅めっきにおいて、不均一な溶解進行に伴うアノード表面の凹凸発生を抑制するとともに、ブラックフィルムの不均一生成とその脱落に起因するスラッジ発生の低減を可能とするめっき用含リン銅アノード材の製造方法を提供することを目的とし、さらに、この製造方法によって製造しためっき用含リン銅アノード材を提供することを目的とする。
本発明者等は、めっき用含リン銅アノード材の組織について鋭意研究したところ、めっき用含リン銅アノード材に含有されるリン成分の偏析が、不均一溶解、アノード表面の凹凸発生の一つの原因となり、また、その結果として、ブラックフィルムの不均一生成が生じ、その脱落によるスラッジ発生に大きな影響を及ぼすことを見出した。
つまり、上記特許文献2、3に示される製造方法によれば、比較的結晶粒径の小さな含リン銅アノード材、高純度銅アノード材が得られるが、その結晶粒径の分布を測定した場合、結晶粒径の分布幅が広く、結晶粒を均一に微細化することは困難であり、さらに、含リン銅アノード材においては、リン成分の均一分散が図られておらず、このようなリン成分のミクロ偏析によって、アノードの不均一溶解、凹凸発生、ブラックフィルムの不均一生成・脱落、スラッジ発生が大きな影響を受けることを見出したのである。
そこで、本発明者等は、平均結晶粒径が小さく、かつ、加工材全体にわたって微細均一な結晶組織を有し、さらに、リン成分が均一分散し結晶組織中にリンのミクロ偏析のない含リン銅アノード材を得るべく、銅鋳塊の加工法についてさらに検討を進めたところ、Cu純度99.99質量%以上、P:300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有する含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷し、あるいは、これに続けて、300〜500℃の温度範囲で歪取焼鈍を行うことにより、リン成分が均一分散され、かつ、微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材を製造し得ることを見出したのである。
そして、上記で製造した本発明のめっき用含リン銅アノード材は、リン成分が均一分散され、かつ、平均結晶粒度5〜30μmの微細組織を有し、さらに、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満である微細で均一な結晶組織を有し、この含リン銅アノードを用いて、硫酸銅溶液中で半導体デバイス上に電気銅めっきを行ったところ、不均一な溶解進行に伴うアノード表面の凹凸発生、ブラックフィルムの脱落、スラッジ発生が低減され、めっき不良のない銅薄膜を形成することができた。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) :300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷することにより、アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とする、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
(2) :300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷し、次いで、300〜500℃の温度範囲で歪取焼鈍を行うことにより、アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とする、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
(3) 前記圧伸鍛造は、前記含リン銅鋳塊を、その凝固方向に圧縮後、鋳塊の凝固方向に垂直な方向で、かつ、少なくとも2軸以上の多方向から鍛造しながら伸ばしていく鍛造である前記(1)または(2)に記載のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
(4) 前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の製造方法によって得られためっき用含リン銅アノード材であって、該アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とするリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材。」
を特徴とするものである。
つぎに、この発明のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法について、詳細に説明する。
まず、この発明の電気めっき用含リン銅アノード材に含まれるリンの含有量が300質量ppm(以下、単にppmで示す)未満では電気めっき中に銅粉末が発生するので好ましくなく、一方、1000ppmを越えて含有すると導電率が低くなり、電気エネルギー損失が大きくなるので好ましくない。更にスラッジ発生によりウエハー側にパーティクルが付着するので好ましくない。したがって、この発明の電気めっき用含リン銅アノードに含まれるリンの量を300〜1000ppmに定めた。
この発明の電気めっき用含リン銅アノード材に含まれる酸素は、リン成分と結合してリンのミクロ偏析を助長するので少ないほど好ましく、また、酸素含有量が10ppmを超えると、使用液中に存在する添加剤がアノード中の酸素により消費され、めっき性が低下するので好ましくない。更に酸素を10ppm未満に抑えることで添加するりん成分の鋳塊内でのバラツキを抑えることも可能になる。したがってこの発明の電気めっき用含リン銅アノード材に含まれる酸素量は10ppm以下に定めた。
電気めっき用含リン銅アノードにおける結晶組織および結晶粒度も、電気めっき中に形成されるブラックフィルムの剥離に大きく影響を及ぼし、粒径は微細であると同時に、均一な粒径であることが望ましい。具体的には、平均結晶粒径が30μm以下、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることが必要である。高純度銅加工材全体にわたって均一結晶組織であると同時に微細結晶組織を有する高純度銅加工材が得られるが、平均結晶粒径が30μmを超える場合には、含リン銅アノード材の表面に形成されたブラックフィルムが剥がれやすくなり、また、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合が、全結晶粒面積の10%以上となった場合にも、結晶粒組織の均一性が不十分となり含リン銅アノード材の表面に形成されたブラックフィルムが剥がれやすくなる。したがって、本発明では、平均結晶粒径は30μm以下、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満と定めた。
次に、この発明の電気めっき用含リン銅アノードの製造方法について説明する。
まず、純度99.99重量%以上の電気銅を、例えば、高純度Arガスなどの高純度不活性ガス雰囲気、COガスを2〜3%含む窒素ガスなどの還元ガス雰囲気または真空雰囲気で、温度:1150〜1300℃で溶解して、酸素含有量10ppm以下、好ましくは、酸素含有量5ppm以下、さらに好ましくは酸素含有量2ppm以下に調整するとともに、リン含有量が300〜1000ppmとなるようにリンを添加した溶湯を作製し、この溶湯を、凝固させることにより、:300〜1000ppm、酸素含有量:10ppm以下、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を製造する。
この発明では、例えば、一方向凝固により銅鋳塊を作製するが、これは、一方向凝固させることによりガス成分はインゴットの最上面に放出されていき、仮にトラップされたガスが存在していても表面研削などにより簡単に除去することができ、また通常の鋳造により得られたインゴットよりも引け巣やボイドの発生が少なく、歩留まりが向上するからである。
なお、銅鋳塊の製法は一方向凝固に限定されず、例えば半連続鋳造、連続鋳造などによっても、引け巣やボイドや割れといった鋳造欠陥が無いく、酸素を10ppm未満に抑えりん成分のバラツキを抑えた含りん銅鋳塊を得ることができる。
図1は、この発明のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法における熱間鍛造工程の一例を説明するための概略説明図である。
上記で得た一方向凝固組織を有する:300〜1000ppm、酸素含有量:10ppm以下、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃(図1では800℃)に加熱して熱間鍛造を行う。
熱間鍛造工程では、例えば、含リン銅鋳塊の凝固方向に鍛造し、その厚さが1/2以下になったとき、鋳塊を横置きし、鋳塊を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで延伸する圧伸鍛造を行い、角柱状の熱間鍛造材とし、次いで、角柱状の熱間鍛造材を立て直して該角柱状の熱間鍛造材の軸方向から再度鍛造を行い、その厚さが1/2以下になったとき、再度熱間鍛造材を横置きし、熱間鍛造材を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで伸ばす圧伸鍛造を再度行い、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返すことにより、鋳塊の鋳造組織を破壊し、リン成分の偏析を解消し、結晶粒の粒成長を阻止する。
そして、熱間鍛造の終了後、該熱間鍛造材を水冷する。
図1においては、8角柱状の熱間鍛造材を得る方法を例示したが、これに限らず、例えば4角柱状の熱間鍛造材を得ることとしてもよい。
作製した含リン銅鋳塊では、その結晶粒径は、約1000〜200000μmという大きな結晶粒径であるが、上記熱間鍛造を行うことにより、鋳塊の鋳造組織は破壊され、その結晶粒径は、約20〜50μm程度にまで微細化され、リンのマクロ偏析が解消される。
このように、本発明における熱間鍛造工程は、初期温度600〜900℃の範囲、好ましくは600〜800℃の範囲、さらに好ましくは650〜750℃の範囲で、多軸で圧縮−延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返した後水冷する。
ここで、熱間鍛造の初期温度が600℃未満では、鋳造組織が残存し更にりん成分の偏析が残存してしまい、一方、900℃を超える初期温度で鍛造した場合には、鍛造時の発熱等により、鋳塊の溶融の危険や無駄なエネルギーを使用してしまうため、熱間鍛造の初期温度は600〜900℃とした。
また、鋳造組織の不均質性(結晶粒径)、リン成分の偏析を解消するためには、多方向から鍛造しながら伸ばしていく多軸圧伸鍛造が必要である。
さらに、熱間鍛造終了後、熱間鍛造材を水冷するのは、特に、熱間鍛造材内部の残熱によって、破壊した鋳造組織の結晶粒が成長し粗大化するのを防止するためである。
図2は、この発明のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法における温間鍛造工程の一例を説明するための概略説明図である。
上記の熱間鍛造で作製した角柱状の熱間鍛造材に対して、鍛造初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を施した後水冷する。
例えば、400℃に加熱した角柱状の熱間鍛造材に対し、まず、その軸方向に温間鍛造し、その厚さが1/2以下になったとき、温間鍛造材を横置きし、該温間鍛造材を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで延伸する多軸圧伸鍛造を行い、次いで、角柱状の温間鍛造材を立て直して該角柱状の温間鍛造材の軸方向から再度鍛造を行い、その厚さが1/2以下になったとき、再度温間鍛造材を横置きし、温間鍛造材を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで伸ばす多軸圧伸鍛造を再度行い、これを繰り返し行い、角柱状の温間鍛造材の角がある程度落ちてきた時点でタップ鍛造を行うことによって円柱状の温間鍛造材を作製し、次いで、この温間鍛造材を水冷する。
上記温間加工の初期温度が550℃を超えると、加工中の組織粗大化が生じる恐れがあることから、温間加工の初期温度は、550℃以下とする。
また、上記温間加工に引き続き冷間加工を行っても良く、また、温間加工を行わずに、冷間加工を行うことができる。
冷間加工は、水冷後の熱間鍛造材あるいは水冷後の温間加工材に対して、例えば、少なくとも50%以上の総圧下率となるように、ある角度で回転させながら(即ちクロスさせながら)冷間圧延を行う。総圧下率が50%未満では歪付与量が少なく、静的再結晶が不足する可能性があり、また、組織の均一性を高めるためにクロスさせながら冷間圧延を行い、冷間圧延終了後に水冷する。
上記温間加工、冷間加工によって、平均結晶粒度5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であるり、全体にわたって、均一粒径の結晶粒の組織が形成されるとともに、リン成分の偏析も解消され、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材を得ることができる。
上記で得られためっき用含リン銅アノード材に対して、300〜500℃の温度範囲で歪取焼鈍を行うこともできる。焼鈍温度が300℃未満では、加工組織が残り、一方、焼鈍温度が500℃を超えると結晶粒の粗大化がはじまり、本発明の目的とする微細均一な結晶組織が得られなくなることから、歪取焼鈍温度は300〜500℃とする。
上記の製造方法によって、:300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅アノードであって、該アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とするリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材が得られる。
この発明のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法により製造したアノード材を用いて、硫酸銅溶液中で銅を電気めっきした場合には、不均一な溶解進行に伴うアノード表面の凹凸発生、ブラックフィルムの脱落、スラッジ発生が低減され、めっき不良のない銅薄膜を形成することができる。
この発明のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法における熱間鍛造工程の一例を説明するための概略説明図である。 この発明のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法における温間加工(温間鍛造)工程の一例を説明するための概略説明図である。
つぎに、この発明について、実施例により具体的に説明する。
純度99.99重量%以上の電気銅を、COガスを2〜3%含む窒素ガスなどの還元ガス雰囲気で、温度:1150〜1300℃で溶解して、酸素含有量10ppm以下に調整し、所定量のリン含有量となるようにリンを添加して溶湯を作製し、この溶湯を、一方向凝固させることにより、:300〜1000ppm、酸素含有量:10ppm以下であり、残部銅及び不可避不純物よりなる鋳塊サイズΦ200mm×700mmLの含リン銅鋳塊1〜10を製造した。この含リン銅鋳塊内部には引け巣やボイド等の鋳造欠陥がなく、健全な鋳造組織を有していた。
(A)上記含リン銅鋳塊1〜10を表1に示す温度に保持し、図1に示されるように、含リン銅鋳塊の凝固方向に対してまず熱間鍛造し、その厚さが1/2以下になった時点で横置きし、鋳塊を回しながらその周方向から叩いて、横置きした当初の2倍以上の長さまで伸ばす多軸圧伸鍛造を1回あるいは2回行なった。
上記多軸圧伸鍛造を行った熱間鍛造材を急水冷した。
(B)次いで、上記熱間鍛造材を表1に示す温度に加熱し、図2に示されるような温間加工(多軸圧伸鍛造)および/または冷間加工を行った。
温間加工材および/または冷間加工について、その直径が150mmになった時点で加工を終了し、急水冷した。
(C)上記温間加工材および/または冷間加工を、表1に示す温度条件で歪取焼鈍を行った後、急水冷した。
上記歪取焼鈍を行った焼鈍材を、面削し洗浄した後、リン偏析の有無、平均結晶粒径、結晶粒径のバラツキ(=平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合)を測定した。この測定値を表2に示す。
上記(A)〜(C)の各工程により、表2に示される本発明のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材(実施例という)1〜10を製造した。
また、上記実施例1〜10について、リン偏析の有無、平均結晶粒径および結晶粒径のバラツキを以下の方法により測定した。
(リン偏析の有無の測定)
X線マイクロアナライザ:EPMA(日本電子製 JXA8600を用いてPのマッピング分析を行うことによりPの偏析の有無を確認した。試料は研磨を行い、1mm角の領域を分析した。EPMA分析条件は、加速電圧:15kV、照射電流:50nA、ビーム径:1μm、積算時間:50msecで、Pの特性X線強度を測定した。
(平均結晶粒径の測定)
電解放出型走査電子顕微鏡を用いたEBSD測定装置(HITACHI社製 S4300−SE,EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)によって、結晶粒界を特定した。
測定条件は、
測定範囲:680×1020μm / 測定ステップ:2.0μm / 取込時間:20msec./point
とした。
まず、走査型電子顕微鏡を用いて、試料表面の測定範囲内の個々の測定点(ピクセル)に電子線を照射し、後方散乱電子線解析法による方位解析により、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点を結晶粒界とした。
得られた結晶粒界から、観察エリア内の結晶粒子数を算出し、観察エリア内の結晶粒界の全長を結晶粒子数で割って結晶粒子面積を算出し、それを円換算することにより、平均結晶粒とした。(Number Fraction)
(結晶粒径のバラツキ測定)
上記測定により、粒径分布図を作成しここからばらつきを算出した。
比較のため、上記で作製したCu純度99.99質量%以上、P:300〜1000ppm、酸素含有量:10ppm以下の含リン銅鋳塊に対して、表3に示す条件(少なくとも一つの条件は本発明範囲外の条件である)で、熱間鍛造、温間加工、冷間加工、歪取焼鈍を行い、表4に示す比較例のめっき用含リン銅アノード材(比較例という)1〜11を製造した。
上記で製造した比較例1〜11についても、本発明と同様にして、リン偏析の有無、平均結晶粒径、結晶粒径のバラツキ(=平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合)を測定した。
この測定値を表4に示す。
比較のため、上記で作製した:300〜1000ppm、酸素含有量:10ppm以下、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊に対して、表3に示す条件(少なくとも一つの条件は本発明範囲外の条件である)で、熱間鍛造、温間加工、冷間加工、歪取焼鈍を行い、表4に示す比較例のめっき用含リン銅アノード材(比較例という)1〜11を製造した。
上記で製造した比較例1〜11についても、本発明と同様にして、リン偏析の有無、平均結晶粒径、結晶粒径のバラツキ(=平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合)を測定した。
この測定値を表4に示す。
Figure 0005668915
Figure 0005668915
Figure 0005668915
次に、上記の実施例1〜10、比較例1〜11の含リン銅アノード材を面削した後、さらに2000#まで研磨し、引き続いて脱脂することにより表1に示される成分組成を有する本発明の含リン銅アノード(本発明アノードという)1〜10および比較例の含リン銅アノード(比較例アノードという)1〜11を作製した。
次に、めっき浴として、CuSO:75g/l,HSO:180g/l,塩素イオン 50ppmを含有し、浴温度:22℃に保持された液量300mlのメッキ浴を用意し、さらに、カソード電極としては、ハルセル試験用銅板を使用した。
前記めっき浴を透明な容器に充填し、アノードとして前記本発明アノード1〜10、比較例アノード1〜11をめっき浴に浸漬し、さらに前記カソードをアノードから25mm離して浸漬し、静止めっき浴(バブリング無し)中で電流密度:2A/dmの直流電流を15時間通電し、電気銅めっき試験を実施した。
ブラックフィルムの脱落の有無、スラッジ発生量、アノードの凹凸状態を調査した。
上記電気銅めっき試験の期間中に、透明な容器の外側からアノードのブラックフィルムの生成状況を目視により観察し、安定的にブラックフィルムの脱落がないものを◎、部分的に生成および脱落を繰り返しているものを△、大部分脱落し銅粉が発生するものを×として表5に示した。
さらに、電気めっき試験終了後、スラッジ量を測定し、更にアノードを純水で洗浄後、アノードの表面凹凸を確認し、その結果を、同じく表5に示した。
なお、アノードの表面凹凸の有無は、アノード表面の500×710μmの領域について、キーエンス製レーザ顕微鏡VK−9700を用いてその表面粗さを測定し、Ra80μm未満の場合を「アノード表面凹凸無」、一方、表面粗さRaが80μm以上の場合を「アノード表面凹凸有り」として判定した。
Figure 0005668915
表5に示される結果から、本発明アノード1〜10を使用して電気銅めっきによれば、アノードが均一に溶解した結果、ブラックフィルムの脱落は防止され、その結果、スラッジの発生も少なく、また、表面凹凸は小さないものであった。
これに対して、比較例アノード1〜11では、アノードの不均一溶解の進行によりアノード表面に凹凸が形成されブラックフィルムの脱落が生じ、スラッジの発生量は多くことが判明した。
以上のとおり、この発明の、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法により得られためっき用含リン銅アノード材によれば、不均一な溶解進行に伴うアノード表面の凹凸発生をの防止、ブラックフィルムの脱落抑制とともに、スラッジ発生の低減をも可能とし、めっき不良のない製品を製造し得ることから、工業的な有用性が極めて高いといえる。

Claims (4)

  1. :300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷することにより、アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とする、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
  2. :300〜1000質量ppm、酸素含有量:10質量ppm以下を含有し、残部銅及び不可避不純物よりなる含リン銅鋳塊を、初期温度600〜900℃で、多軸で圧縮―延伸を繰り返す圧伸鍛造を少なくとも1回以上繰り返し行った後水冷し、次いで、初期温度550℃以下で温間加工または冷間加工を行った後水冷し、次いで、300〜500℃の温度範囲で歪取焼鈍を行うことにより、アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とする、リン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
  3. 前記圧伸鍛造は、前記含リン銅鋳塊を、その凝固方向に圧縮後、鋳塊の凝固方向に垂直な方向で、かつ、少なくとも2軸以上の多方向から鍛造しながら伸ばしていく鍛造である請求項1または2に記載のリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法によって得られためっき用含リン銅アノード材であって、該アノード材の平均結晶粒度は5〜30μmの微細組織を有し、かつ、個々の結晶粒についてその粒径分布を測定した場合に、平均結晶粒径の3倍を超える粒径の結晶粒が占める面積割合は、全結晶粒面積の10%未満であることを特徴とするリン成分が均一分散され微細均一な結晶組織を有するめっき用含リン銅アノード材。
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