以下、添付図面を参照して、本発明に係るレジスト組成物配置装置及びパターン形成体の製造方法について詳細に説明する。
図1は、インクジェット法を用いてレジスト組成物を離散的に配置するレジスト組成物配置装置としてのインクジェット塗布装置の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のインクジェット塗布装置10は、支持台12上に垂直に立てられた2本の支柱14、14の間に渡した梁16に沿って移動するヘッド保持移動手段18の下部先端に回転可能なステージを介して取り付けられたインクジェットヘッド20、同じくヘッド保持移動手段18に取り付けられたワークアライメント手段22、支持台12上に設けられ、その上に半導体等の基板であるワーク26を載置するワーク保持移動手段24、インクジェットヘッド20のノズル面を観察するノズル面観察手段28、吐出状態観察手段30(30a、30b)、及びインクジェットヘッド20のノズル面をメンテナンスするメンテナンス手段32等を含んで構成されている。
ヘッド保持移動手段18は、その先端部にインクジェットヘッド20を保持し、インクジェットヘッド20を、梁16に沿った方向(図の左右方向)に移動させる移動手段、インクジェットヘッド20からの吐出方向を中心とした回転移動をさせる回転ステージ、吐出方向(上下方向)に移動させる移動手段を備えている。インクジェットヘッド20を吐出方向(上下方向)に移動させることにより、インクジェットヘッド20から吐出されたレジスト組成物(以後、単にレジストという場合もある)がワーク26に着弾するまでの飛翔距離を調整することができる。また、梁16に沿った方向(図の左右方向)に移動させたり、回転移動させることによっても、ワーク26上に着弾するレジスト組成物の着弾間隔を調整することが可能である。
梁16に沿った方向への移動手段や吐出方向への移動手段のように直線的な動きをする場合の移動手段としては、リニアモータ等が好適に例示される。また正確な移動制御を行うために位置検出手段としてリニアエンコーダを備えている。また、回転手段としては、ステッピングモータ等を用いることができ、これにも位置検出手段としてエンコーダが設置されている。
インクジェットヘッド20は、ノズルからレジスト組成物を吐出するものである。インクジェットヘッド20の駆動方式は特に限定されるものではなく、ピエゾ方式、サーマル方式あるいは静電方式など様々な方式を採用することができる。しかし、ナノインプリント用のレジスト組成物を吐出する本実施形態の場合には、液滴量や吐出速度の調整が容易なピエゾ方式が好ましい。本実施形態では、ピエゾ方式を採用する。また、詳しくは後述するが、ピエゾ(圧電素子)アクチュエータを駆動する駆動波形(電圧波形)をレジスト組成物中のポリマー含有量に応じて様々に調整することにより、レジスト組成物の吐出速度、吐出体積及びワーク26上への着弾位置等が調整される。
また、インクジェットヘッド20に対してレジスト組成物を供給するレジスト供給系については後述する。
ワークアライメント手段22は、ワーク(基板)26の位置調整を行うために、その位置検出を行うものである。ワークアライメント手段22は、ワーク26のアライメントを検出するアライメントカメラ、及びダミーワークに対して位置検出のために着弾させたレジストの着弾位置を検出する着弾位置検出カメラ等を備えている。
ワーク保持移動手段24は、ワーク26を吸着、保持して移動するものであり、ワーク26を吸着する手段を備えている。吸着手段の吸着方法は特に限定されるものではなく、真空吸着でも静電吸着でも良い。また、ワーク保持移動手段24は、ワーク26を保持して第1の方向とそれに直交する第2の方向(x−y方向)に移動するリニアモータ等の移動手段と、位置検出手段としてリニアエンコーダを備えている。また、ワーク保持移動手段24は、ワーク26を保持して、インクジェットヘッド20の吐出方向と平行なワーク法線方向を中心に回転可能なステッピングモータ等の回転手段と、位置検出のためのエンコーダを備えている。
ノズル面観察手段28は、インクジェットヘッド20のノズル面を観察することでをメンテナンスが必要かどうか判断やヘッド交換の判断等に利用するものである。ノズル面観察手段28は、ノズル状態を観察するための光源及びレンズ、カメラを備えている。ノズル面を観察する場合には、ヘッド保持移動手段18によりインクジェットヘッド20をノズル面観察手段28の真上に移動させる。
吐出状態観察手段30(30a、30b)は、インクジェットヘッド20のノズルから吐出されたレジストの飛翔状態を観察するためのものである。吐出状態観察手段30は、飛翔状態を観察するための光源、レンズ及びカメラを備えている。
すなわち、吐出状態観察手段30は、発光手段(光源)30aが発光した検出光を受光手段(カメラ)30bで受光し、検出光の中を飛翔するレジスト組成物による光の変化を検出して吐出状態を観察し、吐出速度を計測する。吐出状態を観察する場合には、検出光の中をレジストが飛翔するように、吐出状態観察手段30またはインクジェットヘッド20を移動して観察する。
メンテナンス手段32は、インクジェットヘッド20の状態を良好に保つためのものである。そのため、メンテナンス手段32は、ノズル面に付着したレジスト等のクリーニングのためのワイパーやノズル内のレジストが乾燥するのを防止するためのキャップ等を備えている。また、キャップは、ノズルからレジストを吸引してインクジェットヘッド20内の気泡等の異物を除去するときのキャップとしても利用される。
図2に、ナノインプリントシステムの概略構成を示す。
図2に示すように、本実施形態のナノインプリントシステム1は、インクジェット塗布装置10、NIL装置40及び基板保管部42、44、基板載置部46とロードアンロード手段48a、48bを含んで構成される。
基板保管部42は、これからインクジェット塗布装置10でその表面にレジスト組成物が塗布されるワーク(基板)26(ここでは図示省略、図1参照)を保管するものであり、基板載置部46は、インクジェット塗布装置10でレジストが塗布されたワーク26を載置するものであり、基板保管部44は、NIL装置40によりナノインプリント処理が行われたワーク26を載置するものである。
ロードアンロード手段48a、48bは、それぞれ基板保管部42、基板載置部46、基板保管部44の間で基板26のやり取りを行うものである。
本実施形態におけるインプリント法は、インクジェット塗布装置10によりワーク26上に塗布されたレジスト組成物(レジスト層)に対して、その表面領域側からパターン形状を有するインプリント用モールド(図示省略)を押し当てた状態で加圧することにより、モールドのパターン形状を鋳型として転写したレジストパターンを形成するものである。
このインプリント用モールド(モールド構造体)としては、微細なパターン形状を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
レジスト層に形成されるレジストパターンは、このインプリント用モールドを鋳型として転写されたものであり、インプリント用モールド(モールド構造体)の微細なパターン形状と略同様のパターン形状からなる。
モールド構造体の凸部のピッチ間隔としては、30〜200nmが好ましい。また、凸部の幅としては、15〜60nmが好ましい。さらに凹部の幅としては、15〜100nmが好ましい。
凸部は、インプリント後のモールドの離型の容易さの観点から、基端側から尖状の先端側に向けて、テーパが付与されているのが好ましい。また、このテーパ角としては、70〜88°が好ましい。
なお、インプリント用モールドを押し当てた状態で加圧する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
インプリント用モールドを押し付け加圧した状態から剥離する際の、剥離時間としては、例えば2.5吋サイズの円盤内のパターンの場合は、一般に10〜15秒程度であるが、レジスト組成物を用いるインプリント方法によれば、1〜10秒で剥離不良を起こすことなく、剥離を行うことができ、生産性が向上する。
本実施形態のパターン形成体は、インプリント法によって形成されたレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより、パターン形状が形成される。パターン形成体としては、パターン形状が形成されているものであればよく、特に制限されるものではない。
また、パターン形成体の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、インプリント法によって形成されてレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより、形成されたパターン形状があればよく、エッチング対象層となる層については、種々の層を選択することができる。
また、パターン形成体の用途としては、半導体、デバイス、磁気記録媒体、光学フィルム、及びこれら各用途を目的としたインプリントプロセスに使用するインプリント用モールド等が挙げられる。
図3に、レジスト供給系の概略を示す。
図3に示すように、本実施形態のレジスト供給系は、レジスト組成物を貯蔵するレジスト供給タンク50からインクジェットヘッド20にレジスト組成物を供給するためのものであり、各部は管路(チューブ)で繋がれている。
レジスト供給タンク50は、インクジェットヘッド20にレジストを供給するための基タンクであり、加熱冷却手段(温調手段)52と温度センサ54が設置されている。また、レジスト供給タンク50の下流に、レジスト組成物を汲み上げインクジェットヘッド20に送液するためのポンプ56が設けられている。
また、レジスト供給タンク50とインクジェットヘッド20を繋ぐ管路の途中には、ポリマー(不純物)を取り除くフィルタ58及び気泡、溶存気体を除去するための脱気装置60が設けられている。フィルタ58は、特に限定されないが、超高分子量ポリエチレン(UPE)メンブレン、ナイロンメンブレンが利用される。フィルタ58のフィルタメッシュサイズはインクジェットヘッド20のノズル径と同等もしくはノズル径以下とすることが好ましい。また、脱気装置60には、液トラップ部62とポンプ64が接続されている。
また、脱気装置60とインクジェットヘッド20とを結ぶ管路Aにはサブタンク66が設けられるとともに、サブタンク66を迂回するもう一つの管路Bが設けられており、管路Bにはポンプ68が設置されている。また、管路A及び管路Bにはそれぞれ弁70及び72が設けられ、弁70及び72を開閉制御することにより管路Aと管路Bを切り換えることができるようになっている。通常の描画時には、弁70を開き弁72を閉じて管路Aからレジスト組成物を供給し、初期充填時やパージ時には、弁70を閉じ弁72を開いて管路Bを通すようにする。
サブタンク66内には膜67があり、膜67の上側の空間に弁74を介してポンプ76でエアーを供給・吸引して膜67上部空間の圧力を制御することにより膜67の下側のレジスト組成物の圧力を制御するようになっている。これにより、ノズル内のレジスト組成物のメニスカス圧力を調整することができる。また、サブタンク66には、レジスト組成物の圧力を検出するための圧力センサ80が設けられている。
このように、膜67を有し、弁74を介してポンプ76が設置されたサブタンク66は、ノズル内のレジスト組成物のメニスカス圧力を調整するメニスカス圧力調整手段の機能を有する。
さらに、サブタンク66には、加熱冷却手段(温調手段)78及び温度センサ82が設けられており、サブタンク66とレジスト供給タンク50とは、それぞれ独立して温度調整が可能なように構成されている。
また、インクジェットヘッド20にも、加熱冷却手段(温調手段)84及び温度センサ86が設けられており、ここでもレジストの温度制御が可能になっている。
インクジェットヘッド20に対して、ノズルの乾燥防止またはノズル近傍のレジスト粘度上昇を防止するための手段として、メンテナンス手段32のキャップ88が設けられている。キャップ88は、必要に応じて所定の退避位置からインクジェットヘッド20下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ88は、インクジェットヘッド20のノズル面を覆うことができるようになっている。また図示を省略するがメンテナンス手段32は、ノズル面を拭き取り清掃するクリーニングブレードを有している。
描画中または待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、そのノズル近傍のレジスト粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したレジストを排出すべく、キャップ88に向かって予備吐出が行われる。
また、万一フィルタ58や脱気装置60によって取り残した気泡がノズル内に混入したり、ノズル内のレジスト粘度の上昇があるレベルを超えたりすると予備吐出ではレジスト組成物を吐出できなくなるため、その場合には、インクジェットヘッド20のノズル面にキャップ88を当て、吸引ポンプ90でインクジェットヘッド20内のレジスト組成物を吸引し、吸引除去したレジスト組成物を回収タンク92に回収する。
また、弁70を閉じ弁72を開いて管路Bを通す状態にして、ポンプ68を稼働させてレジストをインクジェットヘッド20に強制的に送り、ノズルからインクを排出(パージ)することで気泡等を取り除くことも出来る。
ただし、このような吸引動作やパージ動作は、インクジェットヘッド20内のレジスト全体に対して行われるため、レジスト消費量が大きい。従って、粘度上昇が少ない場合は、なるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、キャップ88は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のレジスト受けとしても機能する。また、キャップ88の内側が仕切り壁によってノズル列に対応した複数の領域に分割され、これら仕切られた各領域を選択的に吸引できる構成とすることが好ましい。
図4に、ナノインプリントシステムの制御系のシステム構成を示す。
ナノインプリントシステムの制御系は、通信インターフェース(通信I/F)102、システムコントローラ104、画像メモリ106、プリント制御部108、ヘッドドライバ110、画像バッファメモリ112、レジスト供給制御部116、メンテナンス制御部118、観察制御部122、ロードアンロード制御部124、アライメント制御部126、モータ制御部130等を備えている。
通信インターフェース102は、ホストコンピュータ100から送られてくるレジスト情報を受信するインターフェース部である。通信インターフェース102には、USB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。
ホストコンピュータ100から送出されたレジスト情報は、通信インターフェース102を介してシステムコントローラ104に取り込まれ、一旦画像メモリ106に記憶される。画像メモリ106は、通信インターフェース102を介して入力されたレジスト情報(これにはレジストのポリマー含有量も含む)を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ104を通じて情報の読み書きが行われる。画像メモリ106は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ104は、通信インターフェース102、画像メモリ106、プリント制御部108、ヘッドドライバ110等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ104は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ100との間の通信制御、画像メモリ106の読み書き制御等を行うとともに、レジスト供給制御部116、メンテナンス制御部118、観察制御部122、ロードアンロード制御部124、アライメント制御部126、モータ制御部130等の各制御部を制御する制御信号を生成する。
プリント制御部108は、システムコントローラ104の制御に従い、画像メモリ106内のポリマー含有量を含むレジスト情報から印字(描画)制御用の信号(駆動波形)を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(駆動波形)をヘッドドライバ110に供給する制御部である。
プリント制御部108において所要の信号処理が施され、該レジスト情報に基づいてヘッドドライバ110を介してインクジェットヘッド20のレジスト組成物の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。詳しくは後述するが、レジスト組成物を吐出するための駆動波形をポリマー含有量に応じて変更(調整)する。これにより、ワーク26上に着弾するレジスト組成物の所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部108には画像バッファメモリ112が備えられており、プリント制御部108におけるレジスト情報処理時にレジスト情報やパラメータなどのデータが画像バッファメモリ112に一時的に格納される。なお、図4においては画像バッファメモリ112はプリント制御部108に付随する態様で示されているが、画像メモリ106と兼用してもよい。さらに、プリント制御部108とシステムコントローラ104とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ110は、プリント制御部108から与えられる駆動波形に基づいてインクジェットヘッド20を駆動し、インクジェットヘッド20からレジスト組成物を吐出する。ヘッドドライバ110には、ヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでもよい。
レジスト供給制御部116は、レジスト供給部114(図3に示すレジスト供給系)の主に各ポンプを駆動してレジスト供給タンク50からレジスト組成物をインクジェットヘッド20に送液する。
メンテナンス制御部118は、メンテナンス手段32を制御するものであり、メンテナンスが必要なときには、メンテナンス手段32のキャップをインクジェットヘッド20のノズル面に対向させて予備吐出やパージを行ったり、キャップをノズル面に当てて粘度が高くなったレジストを吸引して、メンテナンス動作を行う。
観察制御部122は、ノズル面観察手段28や吐出状態観察手段30(30a、30b)等の観察部120を制御する。ロードアンロード制御部124は、ロードアンロード部48(48a、48b)を制御する。アライメント制御部126は、アライメント部(ワークアライメント手段)22を制御し、ワークの位置調整を行う。モータ制御部130は、モータ部128を制御して、ヘッド保持移動手段18、ワーク保持移動手段24等を駆動する。
次に、本実施形態で用いるレジスト組成物(ナノインプリント用硬化性組成物)について説明する。
まずナノインプリント用硬化性組成物の第1の例について説明する。本実施形態のナノインプリント用硬化性組成物は、少なくとも、多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)と、光重合開始剤(B)と、を含む。通常、光ナノインプリント法に用いられる硬化性組成物は、重合性官能基を有する重合性単量体と、光照射によって前記重合性単量体の重合反応を開始させる光重合開始剤と、を含み、さらに必要に応じて、溶剤、界面活性剤または酸化防止剤等を含んで構成される。本実施形態のナノインプリント用硬化性組成物においては、重合性官能基を有する重合性単量体として少なくとも前記重合性単量体(Ax)を含む。本実施形態のナノインプリント用硬化性組成物は、多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)を含むことで、ナノインプリント法によってモールド剥離性、エッチング耐性および耐溶剤性に優れたパターンを形成することができる。
(重合性単量体)
−重合性単量体(Ax)−
本実施形態における重合性単量体(Ax)は、重合性官能基を含む化合物である。前記重合性官能基としては、カチオン重合性官能基、ラジカル重合性官能基が挙げられ、ラジカル重合性官能基が好ましい。前記カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタン基が好ましい。また、前記ラジカル重合性官能基としては、エチレン性不飽和結合を有する官能基が挙げられ、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基が好ましい。本実施形態における重合性単量体(Ax)中に含まれる重合性官能基の数は、硬化性、粘度の観点から1〜4が好ましく、1〜2がさらに好ましい。
また、本実施形態における重合性単量体(Ax)は多環芳香族構造、即ち、少なくとも2以上の環構造が縮合している縮合多環式の芳香族構造を有する。したがって、前記多環芳香族構造には、ビスフェノール等の2以上の単独の芳香環が単結合や有機連結基で連結されている環集合構造は含まれない。また、本実施形態において「多環芳香族」とは、ナフタレン等の縮合している環が全て芳香環であるもののみではなく、芳香環と非芳香環とが縮合した、例えば、ベンゼンとシクロヘキサンとが融合した1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン構造等なども含まれる。また、本実施形態における多環芳香族構造は、2〜4の縮合環構造であることが好ましく、2〜3の縮合環構造であることがさらに好ましく、2つの縮合環構造であることが特に好ましい。ナノインプリント用硬化性組成物中に、多環芳香族構造を有する重合性単量体が含まれていない、即ち、ナノインプリント用硬化組成物中の全ての重合化合物が、1以下の環芳香族構造を有する化合物であると、ドライエッチング時においてパターンの劣化が大きく(すなわち、ドライエッチング耐性が低い)、また、パターン現像時における溶剤耐性も十分ではなく、さらにモールドとパターンとの剥離性も低くなってしまい、これらの性能を十分に高いレベルで同時に発揮することができない。本実施形態のナノインプリント用硬化性組成物は、特にナノメートルオーダーのパターンを形成する際であっても、モールドとの剥離性が良好である。
本実施形態における重合性単量体(Ax)の多環芳香族構造としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンなどの炭化水素系多環芳香族構造のほか、インドール、カルバゾール、キノリン、ベンソイソキノリンなどのヘテロ多環芳香族構造などが挙げられる。本実施形態における多環芳香族構造としては、炭化水素系多環芳香族構造が好ましく、さらに好ましくはナフタレン構造、アントラセン構造であり、特に好ましくはナフタレン構造である。
本実施形態における重合性単量体(Ax)の炭素数としては、粘度、耐溶剤性の観点から10〜30が好ましく、10〜20がさらに好ましく、11〜16が特に好ましい。また、重合性単量体(Ax)の分子量は、粘度、耐溶剤性の観点から150〜400が好ましく、150〜300がさらに好ましく、190〜300が特に好ましい。
多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)は、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
(式(I)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を示し、Xは、単結合または有機連結基を示し、Lは、置換基を有していてもよいm価の多環芳香族基を示し、mは1〜3の整数を示す。)
前記式(I)において、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を示す。前記置換基を有していてもよいアルキル基としては、硬化性の観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。前記アルキル基が有していてもよい置換基としては、好ましくはハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基が挙げられる。
R1および前記アルキル基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭
素、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
前記式(I)において、Xは単結合または有機連結基を示す。前記有機連結基としては、−O−、−C(=O)O−、−C(=O)NRx−(Rxは、水素原子または有機基を示し、前記有機基としては、アリール基、アルキル基が好ましい)、アルキレン基、およびこれらの複数が組み合わさった連結基が好ましく、−C(=O)O−、−C(=O)O−アルキレン−がさらに好ましい。
また、式(I)中、mは1〜3の整数を示し、粘度、硬化性の観点から、1または2が好ましい。mが2以上のとき、複数存在するX、R1は同一であってもよいし異なってい
てもよい。
前記式(I)において、Lは、置換基を有していてもよいm価の多環芳香族基を示す。該前記多環芳香族基は、上述の多環芳香族構造を有する基を意味し、ナフタレン構造を有する基であることが好ましい。前記Lの置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
本実施形態における多環芳香族構造を有する重合性単量体(Ax)としては、下記式(IA)で表される化合物であることがさらに好ましい。
(式(IA)中、R1は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基またはハロゲン原子を示し、Xは単結合または有機連結基を示し、mは1〜3の整数を示し、R2有機置換基を示し、nは0〜6の整数を示す。)
式(IA)中のR1、X、mは、上述の式(I)におけるものと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、mが2以上の時、複数存在するXおよびR1は同一でもよいし、異なっていてもよい。
式(IA)中、R2は有機置換基を示す。前記有機置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基が好ましい。
式(IA)中、nは0〜6の整数を示し、0〜3が好ましい。nが2以上の時、複数存在するR2は同一でもあってもよいし異なっていてもよい。前記式(IA)で表される化合物として、好ましくは、ナフタレン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル類またはナフタレン構造を有するアクリルアミド類であり、特に好ましくは式(IB)で表される化合物である。
前記式(IB)中、Yは単結合または鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基を示す。該アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、−(CH2CH2O)−が挙げられ、メチレン基が好ましい。前記Yとしては、エッチング耐性、耐溶剤性の観点から、単結合、メチレン基が好ましい。mが2以上の時、複数存在するYおよびR1は同一でもよいし、異なっていてもよい。
前記重合性単量体(Ax)としては、下記式(IC)または(ID)で表される化合物であることが、低粘度で他の成分との相溶性に優れ、且つ、モールド充填性が良好となる観点から、さらに好ましい。なお、モールド充填性が向上すると、ナノインプリント法によるパターン量産時においてモールド圧接圧力を高くしなくても速やかにモールドに硬化性組成物が充填され、モールド耐久性およびスループットの観点からより好ましいこととなる。
前記式(IB)中、R1は、上述の式(IA)におけるものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
以下に本実施形態における重合性単量体(Ax)の具体例(化合物(I−1)〜(I−29)を示す。
本実施形態の組成物に用いられる重合性単量体(Ax)は常法により合成可能である。例えば式(IB)の化合物は一般的なエステル化合物の合成法により合成可能である。具体的には下記Schme1に示すようなカルボン酸とアルコールを酸条件下反応させる方法、下記Scheme2に示すようなカルボン酸エステルとアルコールのエステル交換法、下記Scheme3に示すようなカルボン酸と脱離基(好ましくはハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基)を有する化合物を塩基性条件下で反応させる方法等により合成することができる。
本実施形態のナノインプリント用硬化性組成物中における重合性単量体の総含有量は、硬化性の観点から、溶剤を除く全成分中、50〜99.5質量%が好ましく、70〜99質量%がさらに好ましく、90〜99質量%が特に好ましい。本実施形態における重合性単量体(Ax)の含有量は、重合性単量体(Ax)が重合性官能基を1つ有する化合物である場合には、ドライエッチング耐性、耐溶剤性、パターン形成性の観点から、全重合性単量体中5〜100質量%が好ましく、より好ましくは20〜100質量%、さらに好ましくは30〜100質量%である。また、重合性単量体(Ax)が重合性官能基を2つ有する化合物である場合には、本実施形態における重合性単量体(Ax)の含有量は全重合性単量体中1〜70質量%が好ましく、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。また、重合性単量体(Ax)が重合性官能基を3つ以上有する化合物である場合には、本実施形態における重合性単量体(Ax)の含有量は、全重合性単量体中1〜70質量%が好ましく、より好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。即ち、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、特に重合性単量体(Ax)が2以上の重合性官能基を有する場合には、重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
−他の重合性単量体−
上述のように本実施形態のナノインプリント用硬化性組成物は、さらに、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を目的に、重合性単量体として、さらに、重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体を含んでいてもよい。前記他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
これらの中で特に、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
本実施形態で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本実施形態に好適に用いられる。
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
本実施形態に好ましく使用することのできる前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
本実施形態で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。
ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本実施形態で用いる他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
本実施形態で用いる他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
上述の他の重合性単量体は、本発明における重合性単量体の含有量によってその好ましい含有量が変わるが、例えば、本発明の組成物中に含まれる全重合性単量体に対して0〜90質量%の範囲で含むことが好ましく、5〜80質量%の範囲で含むことがより好ましく、10〜50質量%の範囲で含むことがさらに好ましい。
次に、本実施形態における重合性単量体(Ax)および他の重合性単量体(以下、これらを併せて「重合性不飽和単量体」ということがある)の好ましいブレンド形態について説明する。
1官能の重合性不飽和単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本実施形態のナノインプリント硬化性組成物の粘度を低下させる効果を有し、重合性単量体の総量に対して、15質量%以上添加されることが好ましく、20〜80質量%がさらに好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
不飽和結合含有基を2個有する単量体(2官能重合性不飽和単量体)は、全重合性不飽和単量体の好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下の範囲で添加される。1官能および2官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の範囲で添加される。不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の割合は、全重合性不飽和単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは、60質量%以下の範囲で添加される。重合性不飽和結合含有基を3個以上有する重合性不飽和単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
本実施形態における重合性単量体(Ax)および他の重合性単量体の更に好ましいブレンド形態としては全重合性単量体中、1官能の重合性単量体(Ax)を20〜90質量%、重合性単量体(Ax)以外の1官能の重合性単量体を0〜50質量%、重合性単量体(Ax)以外の2及び/又は3官能の重合性単量体を10〜50質量%、4官能以上の重合性単量体を0〜30質量%含有する形態である。最も好ましいブレンド形態としては、1官能の重合性単量体(Ax)を40〜80質量%、重合性単量体(Ax)以外の1官能の重合性単量体を0〜40質量%、重合性単量体(Ax)以外の2及び/又は3官能の重合性単量体を20〜50質量%、4官能以上の重合性単量体を0〜10質量%含有する形態である。更に、上記ブレンド形態に加えて、重合性官能基としてアクリレート基を有する重合性単量体が全重合性単量体中90〜100質量%である形態である。これにより、光硬化性、モールド充填性、ドライエッチング耐性、モールド剥離性を高いレベルで両立することができる。
(光重合開始剤(B))
本実施形態のナノインプリント硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれる。本実施形態に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性単量体を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤、光照射により酸を発生するカチオン重合開始剤が好ましく、より好ましくはラジカル重合開始剤であるが、前記重合性単量体の重合性基の種類に応じて適宜決定される。即ち、本実施形態における光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合など)に応じて適切な活性種を発生させるものを用いる必要がある。また、本実施形態において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
本実施形態に用いられる光重合開始剤の含有量は、組成物に含まれる全重合性単量体に対して、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量が種々検討されてきたが、ナノインプリント用等の光ナノインプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤および/または光酸発生剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、これらがラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、本実施形態のナノインプリント硬化性組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
本実施形態で使用されるラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。光重合開始剤は例えば市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としてはCiba社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Irgacure(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、Irgacure(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)907(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Darocur(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)、Darocur(登録商標)1116、1398、1174および1020、CGI242(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、BASF社から入手可能なLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)、ESACUR日本シイベルヘグナー社から入手可能なESACURE 1001M(1−[4−ベンゾイルフェニルスルファニル]フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン−1−オン、N−1414旭電化社から入手可能なアデカオプトマー(登録商標)N−1414(カルバゾール・フェノン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1717(アクリジン系)、アデカオプトマー(登録商標)N−1606(トリアジン系)、三和ケミカル製のTFE−トリアジン(2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のTME−トリアジン(2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、三和ケミカル製のMP−トリアジン(2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−113(2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ミドリ化学製TAZ−108(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン)、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−フェニルベンゾフェノン、エチルミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、チオキサントンアンモニウム塩、ベンゾイン、4,4’−ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1,1−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンおよびジベンゾスベロン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、1,4−ベンゾイルベンゼン、ベンジル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン)、2−エチルアントラキノン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4‘,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2‘−ビイミダゾール、2,2−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、等が挙げられる。
なお、本実施形態において「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
本実施形態で使用される光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、光硬化性組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させるなどの問題を生じる。
本実施形態のナノインプリント硬化性組成物は、重合性単量体(A)がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤(B)が光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であるラジカル重合性組成物であることが好ましい。
(その他成分)
本実施形態のナノインプリント硬化性組成物は、上述の重合性単量体(本実施形態のナノインプリント硬化性組成物に含有される重合性単量体)および光重合開始剤(B)の他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。本発明のナノインプリント硬化性組成物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素・シリコーン系界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
次に、ナノインプリント用硬化性組成物の第2の例について説明する。
本実施形態の第2の例のインプリント用硬化性組成物は、一種以上の重合性単量体と、光重合開始剤とを含有するインプリント用硬化性組成物であって、前記インプリント用硬化性組成物が、前記重合性単量体として、少なくとも一種の下記一般式(I)で表される重合性単量体(Ax)を含有し、かつ、下記(A)および(B)うち少なくとも一方の条件を満たす。
(A)下記一般式(I)で表される重合性単量体(Ax)を全重合性単量体に対し、45質量%以上含有する。
(B)25℃において固体である重合性単量体と25℃における粘度が70mPa・s以上である重合性単量体との合計含有量が、前記インプリント用硬化性組成物に含まれる全重合性単量体の50質量%未満である。
本実施形態の組成物は前記(A)または(B)のいずれかの条件を満たしていればよいが、(A)および(B)両方の条件を満たしているとさらに高アスペクトパターン形成性が向上し好ましい。
なお、通常、光インプリント法に用いられる硬化性組成物は、重合性官能基を有する重合性単量体と、光照射によって前記重合性単量体の重合反応を開始させる光重合開始剤とを含み、さらに必要に応じて、溶剤、界面活性剤または酸化防止剤等を含んで構成される。また、重合性単量体として、(メタ)アクリレートを用いる場合、メタアクリレートよりも、アクリレートの方が好ましい。
以下、本実施形態の組成物について順に説明する。
(重合性単量体)
−重合性単量体(Ax)−
前記重合性単量体(Ax)は、下記一般式(I)で表される。
[式中、Arは置換基を有していてもよい2価または3価の芳香族基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは2または3を表す。]
一般式(I)中、前記Arとしては、n=2のときは2価の芳香族基(すなわちアリーレン基)を表し、n=3のときは3価の芳香族基を表す。前記アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
前記Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。前記Xとしては、単結合またはアルキレン基であることが特に好ましい。
前記R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。前記R1が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、特に制限はないが、例えば水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができる。
前記nは2または3であり、好ましくは2である。
前記重合性単量体(Ax)が下記一般式(I−a)または(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
[式中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合または炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。]
前記一般式(I−a)中、前記X1は、単結合またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。
前記X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
前記R1は一般式(I)におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記重合性単量体(Ax)は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。
前記重合性単量体(Ax)は25℃における粘度が70mPa・s未満であることがパターン形成性の観点から好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることが特に好ましい。
好ましい重合性単量体(Ax)の具体例を示す。R1は一般式(I)におけるR1と同義であり、水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R1としては硬化性の観点から、水素原子が好ましい。なお、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
これらの中でも、下記に示す化合物が25℃において液体であり、かつ、低粘度で、さらに良好な硬化性を示し、特に好ましい。
本実施形態のインプリント用硬化性組成物中は、下記(A)および(B)うち少なくとも一方の条件を満たす。
(A)下記一般式(I)で表される重合性単量体(Ax)を全重合性単量体に対し、45質量%以上含有する。
(B)25℃において固体である重合性単量体と25℃における粘度が70mPa・s以上である重合性単量体との合計含有量が、前記インプリント用硬化性組成物に含まれる全重合性単量体の50質量%未満である。
本実施形態のインプリント用硬化性組成物が前記(A)の条件を満たす場合における前記重合性単量体(Ax)の含有量は、経時安定性を改善する観点から、全重合性単量体に対し、45質量%以上であり、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。前記重合性単量体(Ax)が25℃において液体であり、且つ、前記(A)の条件を満たす含有量であるとき、経時安定性、ドライエッチング耐性に加えて、パターン形成性も良好となり、特に好ましい。
前記重合性単量体(Ax)が25℃において固体または25℃における粘度が70mPa・s以上であり、且つ、前記(A)の条件を満たす含有量であるとき、前記重合性単量体(Ax)の含有量は保存安定性改良の観点から、全重合性単量体に対して45〜70質量%であることが好ましく、50質量%を超えて70質量%以下であることがより好ましく、55〜65質量%であることが特に好ましい。
本実施形態のインプリント用硬化性組成物が前記(A)の条件を満たす場合、さらに前記条件(B)を満たすことも好ましい。
本実施形態のインプリント用硬化性組成物が前記(B)の条件を満たす場合における前記重合性単量体(Ax)の含有量は、25℃において固体である重合性単量体と25℃における粘度が70mPa・s以上である重合性単量体との合計含有量が、前記インプリント用硬化性組成物に含まれる全重合性単量体の50質量%未満であれば特に制限はない。硬化性、組成物粘度の観点から、前記重合性単量体(Ax)の含有量は溶剤を除く全成分中、1〜100質量%が好ましく、10〜100質量%がさらに好ましく、20〜100質量%が特に好ましい。
また、本実施形態の組成物が前記(B)の条件を満たす場合、前記重合性単量体(Ax)が重合性官能基を2つ有する化合物であるときには、前記重合性単量体(Ax)の含有量は全重合性単量体中1〜100質量%が好ましく、より好ましくは20〜100質量%、さらに好ましくは50質量%を超えて100質量%以下である。
また、本実施形態の組成物が前記(B)の条件を満たす場合、前記重合性単量体(Ax)が重合性官能基を3つ有する化合物であるときには、前記重合性単量体(Ax)の含有量は全重合性単量体中1〜80質量%が好ましく、より好ましくは1〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%である。
本実施形態のインプリント用硬化性組成物においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて重合性単量体(Ax)と、重合性単量体(Ax)とは異なる前記第1の例で説明した他の重合性単量体とを併用することが好ましい。
上述のように本実施形態のインプリント用硬化性組成物は、さらに、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を目的に、重合性単量体として、さらに、重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体を含んでいてもよい。
なお、他の重合性単量体の含有量としては、25℃において固体である重合性単量体と25℃における粘度が70mPa・s以上である重合性単量体との合計含有量が、前記インプリント用硬化性組成物に含まれる全重合性単量体の50質量%未満であれば特に制限はない。本発明における重合性単量体(Ax)の含有量や条件(A)と(B)のいずれを満たすかによって他の重合性単量体の好ましい含有量も変わるが、例えば、本発明の全重合性単量体中に0〜90質量%含んでいてもよく、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは20〜80質量%の範囲で含むことがより好ましい。
次に、ナノインプリント用硬化性組成物の第3の例、特に重合性単量体について説明する。
(A)重合性単量体
(A)重合性単量体は、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基を少なくとも2つ含有し、かつ、該含フッ素基の少なくとも2つは、炭素数2以上の連結基により隔てられている化合物である。
フロロアルキル基としては、炭素数が2以上のフロロアルキル基であることが好ましく、4以上のフロロアルキル基であることがより好ましく、上限値としては特に定めるものではないが、20以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。最も好ましくは炭素数4〜6のフロロアルキル基である。また、フロロアルキル基の少なくとも2つは、トリフロロメチル基構造を含有することが好ましい。トリフロロメチル基構造を複数有することで、少ない添加量(例えば、10質量%以下)でも本願発明の効果が発現するため、他の成分との相溶性が向上し、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが向上する。
同様の観点から、(A)重合性単量体中にトリフロロメチル基構造を3つ以上含有する化合物も好ましい。より好ましくはトリフロロメチル基構造を3〜9個、さらに好ましくは4〜6個含有する化合物である。トリフロロメチル基構造を3つ以上含有する化合物としては1つの含フッ素基に2つ以上のトリフロロメチル基を有する分岐のフロロアルキル基、例えば−CH(CF3)2基、−C(CF3)3、−CCH3(CF3)2CH3基、などのフロロアルキル基を有する化合物が好ましい。
フロロアルキルエーテル基としては、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF3)CF2O)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
(A)重合性単量体が有する全フッ素原子の数は6〜60個が好ましく、より好ましくは9〜40個、さらに好ましくは12〜40個である。
(A)重合性単量体は、下記に定義するフッ素含有率で、30〜60%が好ましく、より好ましくは35〜55%であり、さらに好ましくは35〜50%である。フッ素含有率を適性範囲とすることでモールド汚れを低減でき且つ、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが向上する。フッ素含有率は下記式で表される。
(A)重合性単量体が有する含フッ素基のうち少なくとも2つは炭素数2以上の連結基により隔てられている。すなわち、(A)重合性単量体が含フッ素基を2つ有する場合は、その2つの含フッ素基は炭素数2以上の連結基で隔てられている。(A)重合性単量体が含フッ素基を3つ以上有する場合は、このうち少なくとも2つが炭素数2以上の連結基で隔てられており、残りの含フッ素基はどのような結合形態を有していても良い。炭素数2以上の連結基はフッ素原子で置換されていない炭素原子を少なくとも2つ有する連結基である。
炭素数2以上の連結基中に含まれる官能基としては、アルキレン基、エステル基、スルフィド基およびアリーレン基が例示され、少なくとも、エステル基および/またはスルフィド基を有することがより好ましい。
炭素数2以上の連結基は、アルキレン基、エステル基、スルフィド基、アリーレン基およびこれらの組み合わせが好ましい。
これらの基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していても良い。
(A)重合性単量体の好ましい一例として、下記一般式(I)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。このような部分構造を有する化合物を採用することにより、パターン形成性に優れ、かつ、組成物の経時安定性が良好となる。
一般式(I)中、nは1〜8の整数を表し、好ましくは4〜6の整数である。
(A)重合性単量体の好ましい他の一例として、下記一般式(II)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。もちろん、一般式(I)で表される部分構造と、一般式(II)で表される部分構造の両方を有していても良い。
一般式(II)中、R2およびR3は、それぞれ炭素数1〜8のアルキレン基を表し、それぞれ、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。アルキレン基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していてもよい。
m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m1およびm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表し、好ましくは1または2である。nは1〜8の整数を表し、4〜6の整数が好ましい。m3が2以上のとき、それぞれの、−CnF2n+1は同一であっても良いし異なっていてもよい。
(A)重合性単量体として好ましくは下記一般式(III)で表される重合性単量体である。
(一般式(III)中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、Aは(a1+a2)価の連結基を表し、a1は1〜6の整数を表す。a2は2〜6の整数を表し、R2およびR3はそれぞれ炭素数1〜8のアルキレン基を表す。m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m1およびm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表す。m4およびm5は、それぞれ、0または1を表し、m4およびm5の少なくとも一方は1であり、m1およびm2の両方が1のとき、m4は1である。nは1〜8の整数を表す。)
R1は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
Aは(a1+a2)価の連結基であり、好ましくはアルキレン基および/またはアリーレン基を有する連結基であり、さらにヘテロ原子を含む連結基を含有していても良い。ヘテロ原子を有する連結基としては−O−、−C(=O)O−、−S−、−C(=O)−が挙げられる。これらの基は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していても良いが、有していない方が好ましい。Aは、炭素数2〜50であることが好ましく、炭素数4〜15であることがより好ましい。
R2、R3、m1、m2、m3およびnは、一般式(II)と同義であり、好ましい範囲も同義である。
a1は1〜6の整数であり、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1または2である。
a2は2〜6の整数であり、好ましくは2または3、さらに好ましくは2である。
a1が2以上のとき、それぞれのAは同一であってもよいし、異なっていても良い。
a2が2以上のとき、それぞれのR2、R3、m1、m2、m3、m4、m5およびnは同一であっても良いし、異なっていても良い。
本実施形態で用いる(A)重合性単量体の分子量は、好ましくは500〜2000である。また、本実施形態で用いる(A)重合性単量体の粘度は、好ましくは600〜1500であり、より好ましくは600〜1200である。
以下に、本実施形態の硬化性組成物で用いられる(A)重合性単量体の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記式中におけるR1はそれぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子およびシアノ基のいずれかである。
本実施形態の硬化性組成物中における(A)重合性単量体の含有量は、特に制限はないが、硬化性、組成物粘度の観点から、全重合性単量体中、0.1〜100質量%が好ましく、0.2〜50質量%がより好ましく、0.5〜20質量%がさらに好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
本実施形態の硬化性組成物においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて(A)重合性単量体と、(A)重合性単量体以外の重合性単量とを併用することが好ましい。他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましく、前述した第1例において説明したものと同様である。
上述の他の重合性単量体の含有量としては、本発明における(A)重合性単量体の含有量によって他の重合性単量体の好ましい含有量も変わるが、例えば、本発明の全重合性単量体中に0〜99.9質量%含んでいてもよく、好ましくは50〜99.8質量%、さらに好ましくは80〜99.5質量%の範囲で含むことがより好ましい。
次に、本実施形態における(A)重合性単量体および他の重合性単量体の好ましいブレンド形態について説明する。
1官能の重合性単量体は、通常、反応性希釈剤として用いられ、本発明の硬化性組成物の粘度を低下させる効果を有し、重合性単量体の総量に対して、15質量%以上添加されることが好ましく、20〜90質量%がさらに好ましく、25〜85質量%がより好ましく、30〜80質量%が特に好ましい。
重合性反応基を2個有する単量体(2官能重合性単量体)は、全重合性単量体の好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下の範囲で添加される。
1官能および2官能重合性単量体の割合は、全重合性単量体の、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30〜100質量%、特に好ましくは50〜90質量%の範囲で添加される。
不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性単量体の割合は、全重合性単量体の、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは、40質量%以下の範囲で添加される。重合性反応基を3個以上有する重合性単量体の割合を80質量%以下とすることにより、組成物の粘度を下げられるため好ましい。
以下、本発明に係るレジスト組成物配置装置(インクジェット塗布装置)の作用についてフローチャートに沿って説明する。
図5及び図6は、インクジェット塗布装置10の動作を示すフローチャートである。
まず、図5のステップS100において、レジスト供給タンク50にレジスト組成物を供給する。このとき、予めレジスト中のポリマー含有量は測定されてわかっている。
ポリマー含有量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフ法、紫外−可視吸光光度法、液体クロマトグラフ法、蛍光分析法あるいは化学ルミネセンス法等の既知の方法によって行うことができる。また、簡易には、吐出させる前に吐出するレジスト液の一部を取り出してメタノール等の溶媒と混合させ、その際の濁度やレジストのフィルタ透過容易性によって評価することができる。
ポリマー含有量を含むレジスト情報は、自動的に読み取られて、あるいはオペレータによってホストコンピュータ100に入力される。
ステップS102において、ホストコンピュータ100に入力されたポリマー含有量を含むレジスト情報は通信インターフェース102、システムコントローラ104を介して画像メモリ106に記憶される。
次にステップS104において、インクジェット塗布装置10の各部の温度制御を開始する。すなわち、レジスト供給タンク50の加熱冷却手段52、サブタンク66の加熱冷却手段78及びインクジェットヘッド20の加熱冷却手段84を制御して各部の温調が行われる。
このとき、温度が上昇するとレジスト組成物中にポリマーのような不純物が発生するので、レジストを溜めているところのレジスト供給タンク50では温度を下げる一方、レジストを吐出する近くになるインクジェットヘッド20においては、温度を上げるように制御を行う。サブタンク66の温度は、塗布量に応じて適宜設定する。時間あたりの塗布量が少ないときはサブタンクにレジストが長く留まるためヘッドと比較して温度を下げることが好ましい。一方時間あたりの塗布量が多いときは、ヘッドにおけるレジスト温度の安定性の観点からヘッドと同じ温度に制御することが好ましい。
次に、ステップS106において、メンテナンスを行う。特に最初は、初期充填を行ったり、しばらく休止した後に描画を行う場合には、粘度の上昇したレジストの予備吐出などが行われるが、最初は特に必要がなければこのメンテナンス動作は不要である。
次にステップS108において、負圧調整を行う。これは、図3に示すように、ポンプ76によりサブタンク66内の膜67より上部の空間の圧力を制御することによってインクジェットヘッド20のノズル内のレジストの負圧が調整される。このように、サブタンク66内の圧力を制御することにより、ノズル内のレジストのメニスカス圧力が調整されることになる。
次に、ステップS110において、駆動波形の調整(波形調整)が行われる。波形はステップS102で記憶されたポリマー含有量を用いてプリント制御部108において設定されるが、ここではその波形の再調整が行われる。ここでは、ポリマー含有量に応じた適切な速度となるように波形が調整される。
ここで、少しフローチャートを離れて、レジストを吐出する際の駆動信号の波形について説明する。
本実施形態においては、インクジェットヘッド20のレジスト吐出方式は前述したようにピエゾ方式である。すなわち、図示は省略するがノズルに連通する圧力室の内壁の一部を形成する振動板を、圧電素子(アクチュエータ)の変形により変形させて、圧力室の体積を増減させ、圧力室の体積が増加するときにレジストを圧力室内に充填し、圧力室の体積が減少するときに圧力室内のレジストをノズルから吐出させるものである。また圧電素子で圧力室を形成して圧電素子に電圧をかけることで圧電素子の剪断効果を利用して変形させて、圧力室の体積を増減させ、圧力室の体積が増加するときにレジストを圧力室内に充填し、圧力室の体積が減少するときに圧力室内のレジストをノズルから吐出させるものでもよく、このほかピエゾ方式のタイプは何れでもよい。
図7に、このアクチュエータに印加される駆動信号の駆動波形(電圧波形)を示す。
図7に示す波形は、圧力室の体積を増加させるようにアクチュエータを変形させる第1の引き駆動波形要素302と、第1の引き駆動波形要素302によって増加した圧力室の体積を保持する第1の引き保持波形要素304と、圧力室の体積を減少させるようにアクチュエータを駆動する押し駆動波形要素306と、押し駆動波形要素306によって減少した圧力室の体積を保持する押し保持波形要素308と、再び圧力室の体積を増加させるようにアクチュエータを駆動する第2の引き駆動波形要素310とから構成されている。
この駆動波形は、最初に引いて(第1の引き駆動波形要素302)、その後押して(押し駆動波形要素306)、さらに引く(第2の引き駆動波形要素310)波形要素を含んで構成されており、1回目の引き動作(プル動作)と、これに続く1回の押し動作(プッシュ動作)の後に、さらに2回目の引き動作(プル動作)を組み合わせたプルプッシュプル(pull-push-pull)駆動によって圧力室内のレジストをノズルから吐出するようにしている。
これにノズル内のレジストの状態を対応させて説明する。図8に、プルプッシュプル(pull-push-pull)駆動波形に対応したノズル内のレジストの状態を模式的に示す。
図8(a)は、第1の引き駆動波形要素302に対応する状態である。アクチュエータの駆動により圧力室の体積が増加するとノズル200内のレジスト202は内側(圧力室側)に引き戻され、ノズル200内のレジスト202の液面(メニスカス)202aは凹む。そして第1の引き保持波形要素304によってこの状態が保持される。
次に、図8(b)は、押し駆動波形要素306に対応する状態である。アクチュエータの駆動により圧力室の体積が減少しノズル200内のレジスト202が押し出されて液柱202bを形成している。押し保持波形要素308によっても略この状態が続き、液柱202bが伸びていく。このとき、図8(a)におけるレジスト202メニスカスの凹み量が大きいと、この液柱202bは細長くなる。
次に、図8(c)は、第2の引き駆動波形要素310に対応する状態である。アクチュエータの駆動により再び圧力室の体積が減少し、ノズル200から外へ押し出されていたレジスト202がノズル200側に引き戻され、液柱202bの一部が引きちぎれて液滴204となって飛翔して行き、残りの液柱202bはノズル200内に引き戻される。
なお、このとき図7の波形において、第1の引き駆動波形要素302の先端と押し駆動波形要素306の先端との間隔T1の方が、押し駆動波形要素306の後端と第2の引き駆動波形要素310の先端との間隔(押し保持波形要素308の幅)T2よりも大きくないと(すなわち、T2<T1でないと)液柱202bを引きちぎる効果はない。
また、レジスト中のポリマーが多いと液柱が長く伸びてミストが発生しやすくなってしまう。そこでポリマーが多い程、液柱を引き込むタイミングを早くして、液柱を早めに引きちぎる必要がある。そのため、ポリマー含有量が多いほどT2を小さくすることが好ましい。
吐出する液体(レジスト)の粘度が高い場合、通常の引き押し(プルプッシュ)波形では粘度が高いことにより圧力の減衰効果で引きちぎる負圧がほとんどなくなってしまうが、このような波形にすることで引きちぎりの負圧が発生することとなり、粘度が高くても液柱の短い液滴吐出を行うことができる。
図9に波形の例を示す。図9(a)の波形は、最初の引き部分(V1)を小さくした駆動波形の例である。また図9(b)は最初の引き部分を無くした駆動波形の例である。
駆動波形の最初の引きが大きいと、その波形で液体を吐出させた際の液柱の幅が引いた分だけ細くなる。この傾向は、粘度が大きい程顕著であり、粘度が高い場合には、最初の引き部が大きい波形で吐出させると、液柱がかなり細くなることから、ミストが発生しやすくなる。
このため、ミストを発生し難くするためには液柱の太さをより太くした方が良いため、図9(a)に示す波形の例のように波形の最初の引き部を小さくするか、あるいは図9(b)に示す波形の例のように最初の引き部を全く無くすことがよいと考えられる。
また、上述したようにポリマーが多いと液柱が細長く伸びるので、最初の引き込みを少なくするように波形を設定することが好ましい。
図10から図12にその他の波形の例を示す。
これらの例は、いずれも、第1の引き駆動波形要素302の先端と押し駆動波形要素306の先端との間隔T1よりも、押し駆動波形要素306の後端と第2の引き駆動波形要素310の先端との間隔T2を小さくする(T2<T1)とともに、押し保持波形要素の後、第2の引き駆動波形要素とそれを保持する期間をT1の2倍として、電圧値を様々に変化させたものである。
図13に他の波形の例を示す。これは、第1の引き駆動波形要素302の大きさ(電位差)V1と、押し駆動波形要素306の大きさ(電位差)V2の大きさを、図7に示す例とは大きく変えたものである。
図7に示す例では、このV1とV2は略同じ大きさであったが、図13に示す例では、V1よりV2の方がかなり大きくなっている。図7に示す波形は、小さな液滴を吐出するのに向いており、それに対して図13に示す波形は、比較的大きな液滴を吐出するのを目的としている。
図13の波形に対応するノズル内のレジストの状態を図14に示す。図14(a)は、第1の引き駆動波形要素302に対応するノズル200内のレジスト202の状態を示す。図13に示すように、この場合には、第1の引き駆動波形要素302の大きさV1はそれほど大きくないので、図14(a)におけるノズル200内のレジスト202の引き込み量はそれほど大きくなく、レジスト202の液面202aの凹み量はそれほど大きくない。
また、図14(b)は、押し駆動波形要素306に対応するノズル200内のレジスト202の状態を示すものである。レジスト202が押し出されて液柱202bが形成されている。図7及び図8において説明したように、前記凹み量が大きいと、押し出されたレジスト202が形成する液柱202bは細長くなる。この例では、凹み量が小さいので液柱202bは太く短くなる。従って、図13の波形は比較的大きな液滴の吐出に向いている。このとき、レジストの粘度や吐出したい液滴の大きさにもよるが、図13に示すように、大体V1は、V2の半分以下ぐらいにするのが良い。
図15及び図16に、このようにして設定した波形の例を示す。図15に示す波形は、押し出す前に小さな引き込み波形要素を有しているが、図16に示す波形は、最初の引き込み部を有していない。
本実施形態においては、ポリマー含有量に応じて吐出速度を変えるようにしているが、そのため、予め実際に実験をして、各ポリマー含有量に対する目標速度等のテーブルが作成されている。
図17に、吐出速度と吐出体積との関係を示す。これは富士フイルムダイマティックス社製DMP−2831を利用して吐出速度と吐出体積との関係を求めたものである。
吐出速度は、飛翔状態をカメラで観察することで算出し、体積は一定量吐出したレジストの重量を測定し、吐出滴数及びレジスト密度から換算したものである。
また、図18に、ポリマー含有量、吐出速度等の対応を表すテーブルを示す。図18のテーブルは、ポリマー含有量に対する吐出速度、図7に示す押し駆動波形要素306の後端と第2の引き駆動波形要素310の先端との間隔T2、図9(a)または図13に示す波形の最初の引き部分の大きさ(電圧差)V1の対応関係を示すものであり、実験によって求められた最適な対応関係を示すものである。
図18において、ポリマー含有量が、少→中→多、となるのに対して、吐出速度は、v1>v2>v3、となるように、ポリマー含有量が多くなるほど吐出速度は遅くする。また、このとき、押し駆動波形要素306の後端と第2の引き駆動波形要素310の先端との間隔T2については、ポリマー含有量が、少→中→多、となるのに対して、a1>a2>a3、となるように、ポリマー含有量が多い程T2は小さくする。さらに、波形の最初の引き部分の大きさV1についても、b1>b2>b3、のように、ポリマー含有量が多い程、V1も小さくなるようにする。
また、吐出速度によって吐出体積が決まり、吐出体積に応じて最適な着弾間隔が決められる。図19に、吐出速度、吐出体積、着弾間隔の対応テーブルを示す。
図19において、吐出速度、v1>v2>v3、に対して、吐出体積は、c1>c2>c3、また、着弾間隔は、d1>d2>d3、となっている。
このように、図18及び図19のテーブルを参照して、ポリマー含有量から吐出速度が決まり、吐出速度から吐出体積が決まり、吐出体積から着弾間隔が決まる。
結果として、本実施形態では、ポリマー含有量が多くなるほど、吐出速度は遅く、吐出体積は小さくなるので、着弾間隔は小さくするようにしている。
再び図5のフローチャートに戻り、引き続きインクジェット塗布装置10の動作について説明する。
ステップS112において、キャップあるいはダミーワーク(ダミー基板)に対して吐出を行い吐出状態観察手段30によって吐出状態を観察し、観察結果に応じて吐出調整を行う。
すなわち、吐出状態観察手段30によって計測した吐出速度が、前述した図18及び図19のテーブルから求めた、ポリマー含有量に対応する吐出速度及び着弾間隔となるように駆動波形を調整する。
次のステップS114において、吐出観察で算出した吐出速度がOKか否か判断し、OK(Yes)なら次のステップS116へ進み、Noの場合はステップS106に戻りメンテナンス動作を行う。
ステップS116において、上で算出した吐出速度に応じて飛翔距離(TD)を調整する。これは、吐出速度によって着弾位置ずれが変化するためである。すなわち吐出速度が遅い場合には着弾までの飛翔時間が長くなり外乱等による飛翔曲がりの影響を受けやすく着弾ずれが大きくなる。そこで飛翔距離を短くして着弾ずれが小さくなるように調整する。
飛翔距離の調整は、前述したように、ヘッド保持移動手段18によりインクジェットヘッド20を上下に移動して行う。
次に、ステップS118において、基板描画条件を設定し、ステップS120において、ダミーワークに対して打滴し、ステップS122において、ワークアライメント手段22により、ダミーワークへの打滴結果を観察する。
ステップS124において、観察したワークへの打滴結果の形状及び位置がOKか否か判断する。
ステップS124において形状及び位置がNoの場合には、ステップS126でメンテナンスを行い、調整して再度ステップS120においてダミーワークに打滴する。
一方、ステップS124において形状及び位置がOK(Yes)の場合には、次のステップS128ヘ進み、ワーク(基板)26をロードし、ステップS130でアライメントを行う。
次に図6のステップS132へ進み、ワーク26に対して描画を行い、予め設定されたデータに従って所定の位置にレジストを塗布(配置)する。
ここで、ワーク26への描画は、インクジェットヘッド20及びワーク26を相対的に走査して行われる。その走査方法は、特に限定されるものではなく、様々な走査パターンが適用可能である。
例えば、インクジェットヘッド20がワーク26の幅のラインヘッドの場合には、インクジェットヘッド20を固定し、ワーク26を所定の方向(一軸)に走査してもよいし、またあるいは同じくインクジェットヘッド20を固定して、ワーク26をXY方向に走査しても良い。
また、インクジェットヘッド20がワーク26の幅のラインヘッドの場合に、上記とは逆に、ワーク26を固定しておき、これに対してインクジェットヘッド20を所定の方向(一軸)に走査してもよいし、インクジェットヘッド20をXY方向に走査しても良い。
また、特にインクジェットヘッド20がワーク26の幅を有していない場合には、ワーク26を固定して、インクジェットヘッド20をXY方向に走査しても良い。またさらには、インクジェットヘッド20及びワーク26の両方を共に走査するようにしても良い。
このように、走査方法としては、ヘッドを走査しても良いし、ワークを走査しても良いし、その両方を走査しても良い。また、インクジェットヘッド20も、ライン型ヘッドでもシリアル型ヘッドでも良い。
描画が済んだら次のステップS134において、インクジェットヘッド20を待機位置へ移動し、ステップS136でワーク26をアンロードし、次のNIL装置へ搬送する。
そして、ステップS138において、ワーク26の処理が最後か否か判断する。ステップS138の判断でNoの場合、すなわちまだ最後でない場合には、ステップS140で次のワーク26に対する描画条件に変更があるか否か判断し、変更がある場合には図5のステップS118に戻り、変更がない場合には図5のステップS120に戻り、それぞれ処理を続ける。
一方、ステップS138の判断でYesの場合、すなわちでワーク26の処理はもう最後であると判断した場合には、次のステップS142でインクジェットヘッド20を保管位置へ移動し、ステップS144において、インクジェットヘッド20のノズル面にキャップを行い、続けてステップS146において温度制御を終了し、インクジェット塗布装置10の全ての動作を終了する。
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、吐出における液柱長が短くなり、ミストの発生を抑制することができる。また、着弾位置のばらつきを向上させて、インプリント後転写形状を安定させ、さらに残渣厚ばらつきも低減させることができる。
また、本実施形態においては、吐出速度が低下しても飛翔距離を短くすることにより、着弾位置ばらつきを向上させることができ、インプリント後の転写形状を安定させることが可能となる。
以上、本発明のレジスト組成物配置装置及びパターン形成体の製造方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。