JP2011184775A - 高強度高耐熱性銅合金材 - Google Patents

高強度高耐熱性銅合金材 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強さが750MPa以上、硬さがHv220以上の高強度及び高耐熱性を両立し、酸化膜の密着性が優れた高強度高耐熱性銅合金材を提供する。
【解決手段】Ni:0.4〜1.0%、Fe及び/又はCo(以下、M):総量で0.03〜0.3%、P:0.05〜0.2%、Sn:0.1〜3%、Zn:0.05〜2.5%、Cr:0.0005〜0.05%を含有し、(Ni+M)/Pが4〜12、Ni/Mが3〜12であり、粒径が1〜20nmの微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下、Sn/(Ni+M+P+Sn)で0.01以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気・電子部品の素材、特に、QFP(Quad Flat Package)パッケージ又はQFN(Quad Flat no Lead Package)パッケージのリードフレーム用素材等の半導体装置用リードフレームの素材として好適であって、酸化膜の密着性が優れた高強度高耐熱性銅合金材に関する。
従来、高強度のリードフレーム用素材には、NiとSiを含有するCu−Ni−Si系銅合金からなる銅合金板が多く使用されている。また、このCu−Ni−Si銅合金の中で、例えば、Ni:2.2乃至4.2質量%、Si:0.25乃至1.2質量%、Mg::0.05乃至0.30質量を含有する銅合金(C70250銅合金)は、強度及び耐熱性が優れていることから、汎用合金として多用されている。
近年、半導体装置の大容量化、小型化及び高機能化に伴い、リードフレームの微細配線化が進んでおり、この微細配線化を容易にするため、リードフレームに用いられる銅合金板の板厚は、ますます薄くなっている。これに伴い、これらの半導体装置用リードフレームに使用される銅合金板には、より一層の高強度と高耐熱性が要求されている。銅合金板の高強度化は、薄板化に伴って低下するハンドリング性の確保及び最終的な構成部品としての強度の確保に必要である。また、耐熱性の向上は、リードフレームを成形するためのプレス打ち抜き加工後の歪み取り熱処理による軟化防止、及び半導体部品の組み立て工程において熱履歴を受けたときの軟化防止に必要である。これらは、リードフレームのみならず、他の電気・電子部品、例えば、コネクタ、端子、スイッチ、リレー等の導電性部品に使用される銅合金板にも該当する。また、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工において、スマットの発生がなく、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が優れていることも、銅合金板に要求される重要な因子として注目されている。
なお、半導体部品は熱硬化性樹脂によって半導体チップを封止するパッケージ化したものが低コストの観点から主流となっており、パッケージの信頼性を保持することが重要である。パッケージの信頼性はモールド樹脂とリードフレームの密着性に依存しており、半導体部品の組み立て工程中の熱履歴によって、リードフレームの表面に密着性が劣る酸化膜が形成されると、モールド樹脂とリードフレームとの密着性が低下し、プリント基板への実装時の熱でパッケージクラック及び剥離が発生して、パッケージの信頼性が低下する。よって、パッケージの信頼性を保持するためには、リードフレームにおける酸化膜の密着性を保持することが重要である。
このような背景から、Cu−Ni−Si系銅合金(C70250合金)からなる銅合金板は、強度及び耐熱性は優れているものの、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工において、スマットが発生し、エッチング加工面の平滑性が劣るという問題点を有している。
そこで、このようなエッチング加工面の平滑性を改善すべく、本願出願人は、Cu−Fe−P系銅合金をベースに、Niを添加したCu−Ni−Fe−P系銅合金からなり、その金属組織中にNi−Fe−P化合物を析出させた銅合金板を提案した(特許文献1)。
特開2001−335864号公報
しかしながら、この特許文献1に開示されたCu−Ni−Fe−P系銅合金板は、その所期の目的は達成したものの、引張強さが700MPa程度にとどまり、それ以上の高強度を得ることが難しく、近時のより一層のリードフレームの薄肉化に対応しにくいという問題点がある。また、この従来のCu−Ni−Fe−P系銅合金板は、仕上圧延(最終冷間圧延)を高加工率で行うことにより高強度化が可能ではあるが、このように無理に高強度化しても、耐熱性の低下をもたらし、実用に適さないものとなってしまう。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、引張強さが750MPa以上、硬さがHv220以上の高強度及び高耐熱性を両立することができ、プレス打ち抜き加工だけでなく、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工においても、スマットの発生がなく、エッチング加工面の平滑性が優れており、更に,パッケージの信頼性を保持するための酸化膜の密着性が優れた高強度高耐熱性銅合金材を提供することを目的とする。
本発明に係る高強度高耐熱性銅合金材は、Ni:0.4乃至1.0質量%、Fe及びCoからなる群から選択された少なくとも1種の元素M:総量で0.03乃至0.3質量%、P:0.05乃至0.2質量%、Sn:0.1乃至3質量%、Zn:0.05乃至2.5質量%、Cr:0.0005乃至0.05質量%を含有し、Ni及びMの含有量とPの含有量との比(Ni+M)/Pが4乃至12であり、NiとMとの比Ni/Mが3乃至12であり、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、
金属組織において、粒径が1乃至20nmの微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上であり、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下であり、
前記P化物析出粒子におけるSnの含有量が、EDX分析による質量%比:Sn/(Ni+M+P+Sn)で0.01以上であり、
圧延方向に平行の方向の引張試験における破断伸びが5%以上であることを特徴とする。
このEDX分析とは、エネルギ分散型蛍光X線分析である。
なお、本発明において、記号Mは、Fe及びCoからなる群から選択された少なくとも1種の元素を表すものであり、Fe及び/又はCoのことである。本発明は、このFe及び/又はCoを、総量(Fe及びCoの双方を含む場合は総量、単独の場合はその元素の含有量)で、0.03乃至0.3質量%含有する。また、本発明は、Ni、元素M、及びPの含有量を夫々Ni、M、Pとして、4≦(Ni+M)/P≦12、3≦Ni/M≦12の不等号を満たす。
更に、本発明の銅合金材は、銅合金板に限らず、銅合金ブロック等の種々の形状の銅合金素材として構成することができ、酸化膜との密着性が優れていることが必要な用途に使用することができる。
本発明においては、所定量のNiと、元素Mと、Pと、Snとを含有し、かつ、金属組織中に所定粒径のP化物析出粒子が所定個数以上生成され、そのP化物析出粒子のSn含有量が所定値以上であることによって、転位の移動及び消滅を抑制するP化物析出粒子のピニング力が高まり、銅合金板の強度及び耐熱性が向上する。また、銅合金板のエッチング加工において、P化物析出粒子がスマット発生要因となることが抑制されるため、エッチング加工面の平滑性が向上する。
更に、所定量のZnを含有することによって、銅合金の接合に使用するめっき及びはんだの熱剥離が抑制されると共に、母材の保護性が増大し、酸化膜の成長が抑制されるため、酸化膜の密着性が向上し、所定量のCrを含有することにより、銅合金板の製造の際、Crが鋳塊の結晶粒界に濃化し、熱間加工性が向上する。更に、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下であることによって、エッチング加工面の平滑性及びめっき性が向上する。
前記P化物析出粒子において、Snが検出されることから、本発明においては、前記P化物析出粒子のSn含有量を規定した。Snは、Ni−M−PからなるP化物に含有される場合と、前記P化物とマトリクス界面に濃縮している場合とがある。本発明においては、これらの場合を全て含むSnの含有量を規定する。
また、本発明における酸化膜の密着性が優れた高強度高耐熱性銅合金材は、前記銅合金材に、更に、Al及びMnからなる群から選択された少なくとも1種の元素を総量で0.0005乃至0.05質量%含有することができる。所定量のAl及び/又はMnを含有することによって、銅合金に不可避的不純物として混入されるS量が低減され、銅合金板の熱間加工性が向上する。
また、この高強度高耐熱性銅合金材は、アルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による表面のCu2pのピーク面積値に対するC1sのピーク面積値の比C1s/Cu2pが0.35以下であり、表面をEBSD分析で観察したときの観察面積に対する円相当径が0.5μm未満の微細結晶粒の面積比が0.90以下であることが好ましい。
この構成においては、表面のC及び結晶粒界の量を減少させることによって、C又は結晶粒界に起因する欠陥が酸化膜中に導入されることが抑制され、欠陥が少ない酸化膜が形成されることによって、酸化膜の密着性が向上する。また、欠陥が少ない酸化膜が形成されることによって、酸化膜による母材の保護性が向上し、酸化膜の成長が抑制されることも、酸化膜の密着性向上に寄与する。
更に、本発明の高強度高耐熱性銅合金材は、圧延方向に平行の方向の引張試験における破断伸びが5%以上であることが好ましい。
この構成によれば、適度な破断伸びを有することによって、リードフレーム用素材に必要とされる適度な曲げ加工性を保持できることから、電気・電子部品の素材、特に半導体装置用リードフレーム用素材として好適な銅合金板となる。
本発明に係る銅合金材によれば、強度(引張強さ及び硬さ)並びに耐熱性が高くなると共に、プレス打抜き加工だけでなく、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工においても、スマットの発生がなく、エッチング加工面の平滑性及びめっき性が優れている。また、本発明に係る銅合金材によれば、銅合金材の接合の際、めっき及びはんだの熱剥離が発生しない。更に、本発明に係る銅合金材によれば、銅合金材の製造の際の熱間加工性が向上する。更にまた、本発明の銅合金材は、酸化膜の密着性が優れたものである。
以下、本発明に係る酸化膜の密着性が優れた高強度高耐熱性銅合金板について、詳細に説明する。なお、以下の説明は、銅合金材が板状の素材の場合に限らず、ブロック状の素材等においても同様に該当する。
先ず、銅合金板における成分添加理由及び組成範囲の限定理由と、P化物析出粒子の個数及びSn含有量、粗大な晶、析出物粒子の個数の数値限定理由について説明する。
「Ni:0.4乃至1.0質量%」
Niは、合金組織中に微細なSnを含有するP化物析出粒子を析出させて、銅合金板の強度及び耐熱性を向上させるのに必要な元素である。Ni含有量が0.4質量%未満の場合は、Snを含有する微細なP化物析出粒子が不足する。このため、高強度化及び高耐熱性化の効果を有効に発揮させるためには、Niを0.4質量%以上含有することが必要である。但し、Niが1.0質量%を超えて過剰に含有されると、合金組織中に粗大な晶・析出物粒子が生成し、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下すると共に、熱間加工性も低下する。従って、Niの含有量は0.4乃至1.0質量%の範囲とする。また、この範囲の中でNiの好ましい範囲は0.5乃至0.9質量%である。
「Fe及びCoからなる群から選択された少なくとも1種の元素M:0.03乃至0.3質量%」
Fe及びCoのうちの1種以上を含有することによって、特に、銅合金板の耐熱性が向上し、リードフレーム打抜き後の熱処理や半導体組立工程における熱履歴による軟化の抑制に有効である。FeまたはCoはNiと同様に、合金組織中にSnを含有する微細なP化物析出粒子を析出させて、銅合金板の強度や耐熱性を向上させるのに必要な元素である。Fe及びCoのうちの1種以上の含有量が0.03質量%未満ではSnを含有する微細なP化物析出粒子が不足すると共に、P化物析出粒子がNiとPを主体とする析出粒子となり、高強度化及び高耐熱性化の効果を有効に発揮させることができないため、0.03質量%以上の含有が必要である。但し、0.3質量%を超えて過剰に含有させると、合金組織中に粗大な晶・析出物粒子が生成し、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下すると共に、熱間加工性も低下する。従って、銅合金板はFe及びCoのうちの1種以上の含有量を0.03〜0.3質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好まし範囲は0.05〜0.2質量%である。
「P:0.05乃至0.2質量%」
Pは、脱酸作用を有する他、NiとM(Fe及び/又はCo)と結合して合金組織中にSnを含有する微細なP化物析出粒子を形成して、銅合金板の強度及び耐熱性を向上させるのに必要な元素である。P含有量が0.05質量%未満の場合は、Snを含有する微細なP化物析出粒子が不足するため、高強度化及び高耐熱性の効果を有効に発揮させることができない。このため、Pは、0.05質量%以上の含有が必要である。但し、Pを0.2質量%を超えて過剰に含有させると、合金組織中に粗大な晶・析出物粒子が生成し、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下すると共に、熱間加工性も低下する。また、Pが0.2質量%を超えて過剰に含有すると、Pの固溶量が増加して酸化膜の密着性が低下する。従って、Pの含有量は0.05乃至0.2質量%の範囲とする。また、この範囲の中で、Pの好ましい範囲は0.07乃至0.18質量%である。
「Sn:0.1〜3質量%」
Snの添加は、固溶状態で銅合金板の強度向上に寄与するが、更に本発明においては、Ni−M(Fe及び/又はCo)−Pを主体とする析出粒子をEDX分析すると、Snが検出される。Snが析出粒子の部分で検出される理由は明確ではないが、Ni−M(Fe及び/又はCo)−Pを主体とする析出粒子にSnが含有されて存在するために検出されるか、マトリックス中のSnが濃化した部分にNi−M(Fe及び/又はCo)−P粒子が優先的に析出して検出される等の機構が考えられる。いずれにしても、Snは、Ni−M(Fe及び/又はCo)−P粒子の析出を促進していることが考えられる。このような機構によって、本発明の銅合金板の強度及び耐熱性は、Snの固溶のみの効果に比べて、更に向上しているものと推定される。Sn含有量が0.1質量%未満の場合は、本発明のようにNi−M(Fe及び/又はCo)−Pを主体とし、かつSnを含有する微細な析出粒子は形成されない。このため、高強度化及び高耐熱性化の効果を有効に発揮させるには、Snは0.1質量%以上含有することが必要である。しかし、Snが3質量%を超えて過剰に含有されると、その効果が飽和する一方、銅合金板の製造の際の溶解鋳造時にSnの偏析及び粗大な晶・析出物粒子が多量に生成し、熱間加工性も低下する。また、銅合金板の導電性も低下し、酸化膜の密着性も低下する。従って、Snの含有量は0.1乃至3質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましいSnの範囲は0.2乃至2.5質量%である。
「Zn:0.05乃至2.5質量%」
Znは、銅合金板の接合に用いるSnめっき及びはんだの熱剥離を抑制し、耐熱剥離性を改善すると共に、酸化膜の密着性を向上するために必要な元素である。このような効果を有効に発揮させるには、Znは0.05質量%以上含有することが必要である。しかし、Znが2.5質量%を超えて過剰に含有されると、粗大な晶・析出物粒子が生成しやすくなると共に、酸化膜の密着性を向上させる効果も飽和する。従って、Znの含有量は0.05乃至2.5質量%の範囲とする。また、この範囲の中で、Znの好ましい範囲は0.1乃至2.5質量%である。
「Cr:0.0005乃至0.05質量%」
Crは、銅合金板の製造の際に、鋳塊の熱間加工性を向上させるために必要な元素である。Crは、鋳塊の結晶粒界に濃化して、熱間加工温度における粒界の強度を向上させ、熱間加工性の改善に寄与する。本発明に係る銅合金板では、高強度と高耐熱性を両立するために比較的高濃度のPとSnを含有することから、熱間加工が比較的難しい。このため、Crのような粒界強化効果を有し、熱間加工性を向上させる元素は、必須である。このような効果を有効に発揮させるには、Crは0.0005質量%以上含有することが必要である。
しかし、Crが0.05質量%を超えて過剰に含有されると、その添加効果が飽和するばかりでなく、合金組織中に粗大な晶・析出物粒子が生成しやすくなり、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下する。従って、Crの含有量は0.0005乃至0.05質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましいCrの範囲は0.001乃至003質量%である。
「4≦(Ni+M)/P≦12、かつ3≦Ni/M≦12」
NiとM(Fe及び/又はCo)とPとの質量%比の関係が4≦(Ni+M)/P≦12、かつ3≦Ni/M≦12を満足することにより、銅合金板の強度と耐熱性は大きく向上する。また、本発明の微細でSnを含有するP化物析出粒子を後述するように析出させるためには、上記2式が成立することが不可欠であり、この2式を満足しなければ、本発明の目的である高強度化と高耐熱性化の両立はできない。従って、Ni、M及びPの質量%比の関係は4≦(Ni+M)/P≦12、かつ3≦Ni/M≦12を満足するものである。また、この、範囲の中で好ましい範囲は、5≦(Ni+M)/P≦10、かつ4≦Ni/M≦10である。
「不可避的不純物」
本発明でいう不可避的不純物は、例えば、Si、Ti、Zr、Be、V、Nb、Mo、W、Mgなどの元素である。これらの元素が含有されると、粗大な晶・析出物粒子が生成し易くなる他、高強度と高耐熱性の両立を阻害する。従って、不可避的不純物は、総量で0.5質量%以下の極力少ない含有量にすることが好ましい。また、銅合金板に微量に含まれているB、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等の元素も不可避的不純物である。これらの元素が含有されると、粗大な晶・析出物粒子が生成し易くなる他、熱間加工性を低下させることから、総量で0.1質量%以下の極力少ない含有量に抑えることが好ましい。
「P化物析出粒子(粒径が1乃至20nm)の個数:300個/μm以上、P化物析出粒子のSn含有量:Sn/(Ni+M+P+Sn)比で0.01以上」
本発明でいうP化物析出粒子とは、銅合金組織を10万倍以上の透過型電子顕微鏡で観察することにより検出される粒子であって、粒径が1乃至20nmの析出粒子である。このP化物析出粒子の個数は300個/μm以上である。なお、これらのP化物析出粒子は、Ni−M(Fe及び/又はCo)−PからなるP化物を主体とするものであるが、その析出粒子におけるSn含有量は、EDX分析による質量%比:Sn/(Ni+M+P+Sn)で0.01以上である。
本発明において、析出粒子の粒径は、各析出粒子の最大直径(各析出粒子に外接する円の直径)である。同様に、析出粒子の個数は、10万倍以上の透過型電子顕微鏡での観察視野内の析出粒子数(粒径:1nm以上、20nm以下)を測定し、1μm当たりの測定個数として換算したものが、本発明でいう個数であり、少なくとも任意の3視野を観察し、その測定結果を平均化したものとする。
このようなSnを含有する微細なP化物析出粒子は、銅合金板の製造に際し、例えば、冷間圧延後の焼鈍の際に新たに生成する。即ち、このような微細な析出粒子は、焼鈍によって、母相から微細に析出した化合物相である。従って、鋳造時又は熱間圧延時に生成して銅合金組織に元々存在するような粗大な晶・析出物粒子ではない。このため、銅合金組織の10万倍以上の透過型電子顕微鏡による観察でなければ、このような微細な析出粒子は観察できない。
本発明では、このようなSnを含有する微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上である。このようなSnを含有する微細なP化物析出粒子は、転位の移動及び消滅を抑制するピニング力が、これよりも粗大な晶・析出物粒子よりも格段に大きい。このため、本発明の銅合金板において、粒径が20nm以下の微細なNi−M(Fe及び/又はCo)−P−Sn化合物を主体とする析出粒子をできるだけ多く銅合金組織内に存在させることで、上記ピニング力が高まり、高強度化及び高耐熱性化を図ることができる。
更に、このような粒径が20nm以下のSnを含有する微細なP化物析出粒子は、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工において、スマットの発生要因となることもなく、エッチング加工面の平滑性を低下させることもない。これに対して、粗大な晶・析出物粒子は、高強度化及び高耐熱性化への寄与が小さいだけでなく、エッチング加工において、スマットの発生要因になると共に、エッチング加工面の平滑性を低下させる要因にもなる。
析出粒子の粒径が20nmを超える粗大な晶・析出物粒子は、上述のとおり、ピニング力が弱まる。従って、本発明では、Snを含有する微細なP化物析出粒子の平均粒径の上限を20nmとする。一方、粒径が1nm未満の微細な析出物は、10万倍以上の透過型電子顕微鏡でも、検出及び測定が困難であって、かつ、前記ピニング力が逆に弱まる。従って、本発明では、Snを含有するP化物析出粒子の個数は、粒径が1nm以上のP化物析出物について規定する。
このようなSnを含有する微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm未満では、効果を発揮すべき粒子の数が不足し、引張強さ750MPa(硬さHv220)以上の高強度が得られないと共に、耐熱性も低下する。
また、微細なSnを含有するP化物析出粒子のSn含有量が質量%比で0.01未満では、引張強さ750MPa(硬さHv220)以上の高強度が得られないと共に、耐熱性も低下する。なお、析出粒子の組成分析(Sn含有量)はEDX分析にて行っており、各成分(Ni、Fe、Co、P、Sn)のピーク強度から質量%を算出する。各質量%はNi+Fe+Co+P+Snを100%として算出し、Snの質量%比は、この質量%からSn/(Ni+Fe+Co+P+Sn)の式で算出する。また、観察視野内の1nm以上、20nm以下の析出粒子のうち、少なくとも5個以上を分析し、その測定結果を平均化する。また、P化物析出粒子の代表的な組成は、EDX分析による質量%で、Ni:30乃至70%、M(Fe及び/又はCo):5乃至60%、P:5乃至35%、Sn:1乃至30%程度の範囲からなるものである。
「粗大晶・析出物粒子(粒径が100nm以上)の個数:0.5個/μm以下」
本発明においては、粒径が1nm以上で20nm以下のSnを含有する微細なP化物析出粒子の量を規定しているが、この規定を満足すれば、晶・析出物粒子の粒径が20nmを超える粗大な晶・析出物粒子が適宜の量、銅合金組織中に存在することは許容される。しかしながら、銅合金組織を1万倍以上の走査型電子顕微鏡で観察した際に、粒径が100nmを超える晶・析出物粒子は、その個数が0.5個/μm以下とすることが必要である。粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μmを超えると、エッチング加工時のスマットの発生要因となると共に、エッチング加工面の平滑性の低下、及びめっき性の低下(突起の発生)等の問題を引き起こす要因となる。また、前述の微細なSnを含有するP化物析出粒子の生成も阻害される。
粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子は、銅合金板の製造に際し、鋳造時又は熱間圧延時に生成する。ここで、晶・析出物粒子とは、銅合金組織中に結晶相として分離する晶出物粒子、明瞭な結晶相を形成しない固体相として分離する析出物粒子、又は、これらの混合物をいう。なお、これらの粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子としては、P化物系(Ni−Fe−P系、Ni−Co−P系、Ni−P系など)及びNi−Sn系のものが存在する。
本発明において、粗大な晶・析出物粒子の粒径は、各晶・析出物粒子の最大直径(各晶・析出物粒子に外接する円の直径)である。同様に、粗大な晶・析出物粒子の個数は、1万倍以上の走査型電子顕微鏡での観察視野内の晶・析出物粒子数(粒径:100nmを超える)を測定し、1μm当たりの測定個数として換算したものである。この場合に、少なくとも任意の3視野を観察し、その測定結果を平均化したものを測定値とする。なお、観察は透過型電子顕微鏡でも可能であるが、粒径が大きいために走査型電子顕微鏡の方が容易である。
「圧延方向に平行方向の引張試験における破断伸び:5%以上」
本発明に係る銅合金板は、更に、圧延方向に平行方向の引張試験における破断伸びが5%以上である。これにより、適度な破断伸びを有することによって、リードフレーム用素材に必要とされる適度な曲げ加工性を保持できることから、電気・電子部品の素材、等に半導体装置用リードフレーム用素材として好適な銅合金板となる。これに対して、圧延方向に平行方向の引張試験における破断伸びが5%未満の場合には、リードフレーム用素材に必要とされる適度な曲げ加工性を保持できないことから、電気・電子部品の素材、特に半導体装置用リードフレーム用素材として好適な銅合金板を得ることはできない。よって、圧延方向に平行方向の引張試験における破断伸びは5%以上とする。なお、さらに望ましくは6%以上とする。
「Al及びMnからなる群から選択された少なくとも1種:総量で0.0005乃至0.05質量%」
Al及び/又はMnは、銅合金中に不純物として混入する元素であるが、熱間加工性を低下させるS量を低減するのに有効な元素である。よって、Al及び/又はMnを所定量以下であれば、含有しても良い。上述の効果を有効に発揮させるには、Al及び/又はMnを総量で0.0005質量%以上含有することが必要である。しかし、Al及び/又はMnが0.05質量%を超えて過剰に含有されると、効果が飽和するばかりでなく、粗大な晶・析出物粒子が生成しやすくなり、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下する。従って、銅合金板は、Al及び/又はMnの含有量を0.0005乃至0.05質量%の範囲とする。また、この範囲の中で、Al及び/又はMnの好ましい範囲は0.001乃至0.03質量%である。
「アルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による銅合金板表面のCu2pのピーク面積値に対するC1sのピーク面積値の比C1s/Cu2p:0.35以下」
本発明に係る銅合金板は、更に、アルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による銅合金板表面のCu2pのピーク面積値に対するC1sのピーク面積値の比が0.35以下であり、かつ銅合金板表面をEBSD分析で観察した時の、観察面積に対する微細結晶粒(円相当径が0.5μm未満)の面積比が0.90以下であることが好ましい。
なお、アルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による表面のCu2pのピーク面積値に対するC1sのピーク面積値の比とは、いわば、アルカリ陰極電解洗浄を行った後の銅合金板表面における相対的なC量を意味する。更に、XPS分析とはX線光電子分光分析のことであり、ESCA分析ともいい、表面の極薄い層の組成及び状態分析を得意とする分析方法である。銅合金板の表面から検出されるCは、通常、種々の汚染物質(有機物、無機物)に由来すると共に、銅合金板の変色を防止するために処理された有機防錆膜(ベンゾトリアゾール他)などに由来する。これらの物質が表面に存在すると、すべて酸化膜の密着性に悪影響をおよぼす。これらの物質に起因する欠陥が酸化膜中に導入されることによって、欠陥の多い酸化膜が生成されるためと考えられる。
半導体装置のリードフレームに用いられる銅合金板は、電解洗浄などの前処理が行われた後に、部分的にめっき処理が行われて組立工程に供され、この組立工程における熱履歴によって生成された酸化膜の密着性がパッケージの信頼性を左右する。従って、酸化膜の密着性に影響をおよぼすCは、銅合金板に電解洗浄などの前処理が行われた後のCであり、これを捉えなければならない。よって、本発明においては、電解洗浄などの前処理として最も一般的に用いられているアルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による表面のCに着目した。なお、銅合金板の変色を防止するための有機防錆膜(ベンゾトリアゾール他)は、アルカリ陰極電解洗浄によって容易に除去されるため問題ない。
ここで、アルカリ陰極電解洗浄とは、アルカリ性の水溶液中で対象物を陰極側として電解を行い、対象物の表面から発生する水素ガスによる機械的撹拌作用によって洗浄力を高めた洗浄方法である。本方法に使用されるアルカリ性水溶液は、一般に、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ塩をベースに、界面活性剤又はキレート化合物等の有機物が添加されて構成されており、対象物を陰極にして電解が行われることから、銅合金板の表面は酸化及び溶解等が行われることはなく、素材そのものの表面は何らダメージを受けることはない。従って、アルカリ陰極電解洗浄では、通常の汚染物質及び有機防錆膜は容易に除去されるが、異常な汚染物質(付着力の強固な有機物(樹脂状)等)は除去できない。このようなアルカリ陰極電解洗浄で除去できない汚染物質等が銅合金板の表面に付着していると、酸化膜の密着性が大きく低下し、パッケージの信頼性が低下することになる。よって、アルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による表面のCu2pのピーク面積値に対するC1sのピーク面積値の比C1s/Cu2pは、より小さい方が望ましく、0.35以下とする。なお、C1s/Cu2pは、更に望ましくは、0.30以下とする。
「表面をEBSD分析で観察したときの観察面積に対する円相当径が0.5μm未満の微細結晶粒の面積比が0.90以下」
一方、銅合金板の表面をEBSD分析で観察したときの観察面積に対する微細結晶粒(円相当径が0.5μm未満)の面積比とは、いわば、銅合金板表面における微細結晶粒の占有割合を意味する。ここで、EBSD分析とは後方散乱電子回折分析のことであり、結晶粒の大きさ・分布・方位などの分析を得意とする分析方法である。また、ここでいう結晶粒とは、EBSD分析により隣接する測定点間の方位差が5°以上となる場合を粒界とみなし、この粒界で完全に囲まれた領域を結晶粒とした。
銅合金板表面の微細結晶粒の面積比が大きいということは、微細な結晶粒が多く存在し、多くの結晶粒界を有するということであり、それだけ多くの結晶粒界に起因する欠陥が酸化膜中に導入されることになり、酸化膜の密着性は低下することとなる。よって、銅合金板表面の微細結晶粒の面積比はより小さい方が望ましく、0.90以下とする。さらに望ましくは0.85以下とする。
「銅合金板の製造方法」
次に、本発明の銅合金板の製造方法について説明する。製造される銅合金板の合金組織を前述の組織とするために、従来公知の製造工程自体を大きく変えることは不要であり、常法と同じ工程で製造できる。即ち、前記成分組成に調整した銅合金溶湯を鋳造する。そして、鋳塊を面削した後、加熱又は均質化熱処理した後に、熱間圧延し、熱延後の銅合金板を水冷する。その後、冷間圧延、焼鈍、及び洗浄を数回繰り返し、更に仕上げ(最終)冷間圧延を行って、製品板厚の銅合金板とする。
なお、最終冷間圧延の後には低温焼鈍(歪取り焼鈍ともいう)を行うことが望ましい。半導体装置の小型化・高集積化によるリードフレームの微細配線化に伴い、板のフラットネスと内部応力低減に関する品質要求は益々高くなっており、低温焼鈍はこれらの品質向上に有効である。更に、低温焼鈍は素材の延性を回復するのに有効であり、圧延方向に平行方向の引張試験における破断伸びを5%以上に制御するために有効な手段となる。低温焼鈍は200乃至500℃程度の温度範囲と、1乃至300秒程度の時間範囲で、圧延方向に平行方向の引張試験における破断伸びが5%以上とするように行えばよい。
ここにおいて、前述の粒径が1nm以上20nm以下のSnを含有するP化物析出粒子の個数が300個/μm以上である形態となるよう制御するためには、製造にあたって下記の条件で焼鈍を行うことが有効である。なお、P化物析出粒子のSn含有量をEDX分析による質量%比で0.01以上となるように制御するためには、銅合金におけるNi、Fe及び/又はCo、P、並びにSnの含有量の調整によって行うことが有効である。
即ち、前述のとおり、本発明における微細でSnを含有するP化物析出粒子は、焼鈍によって新たに母相から微細に析出した化合物相である。このような微細でSnを含有するP化物析出粒子を析出させるために、前述の銅合金板の製造工程において、冷間圧延後に焼鈍を行う。
但し、1回の焼鈍だけで、このような微細でSnを含有するP化物析出粒子を多数析出することは難しく、焼鈍温度を高くすると、析出粒子の数の増加に伴って、析出粒子の成長及び粗大化を招く。そこで、焼鈍を複数回に分けて行うと共に、1回当たりの焼鈍温度を430℃以下に制御し、析出粒子の成長及び粗大化を制御し、上述の微細析出形態となるように制御することが好ましい。焼鈍時間は5分乃至20時間程度の範囲で行えばよい。
更に、これらの焼鈍と焼鈍との間に冷間圧延すると、冷間圧延によって格子欠陥が増加して、後の焼鈍での析出核となるため、上記した微細析出形態が得られやすい。
従って、これらの条件を勘案すると、前述の銅合金板の製造工程において、熱間圧延後から仕上げ(最終)冷間圧延までに、冷間と焼鈍を2回ずつ繰り返して行なうような工程が、前述の微細でSnを含有するP化物析出粒子の析出形態が得られやすい点で好ましい。また、鋳造条件及び熱間圧延条件を制御して、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数を0.5個/μm以下にすることによって、微細でSnを含有するP化物析出粒子の生成を促進することが好ましい。
粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数を0.5個/μm以下に制御する鋳造条件及び熱間圧延条件としては、鋳造時の冷却速度を速くすると共に、熱間圧延の加熱温度及び終了温度を高くし、熱間圧延後の冷却速度も速くすることが有効である。鋳造時の冷却速度を速くするという条件は、粗大な晶出物を抑制するための凝固時の冷却速度及び粗大な析出物を抑制するための凝固後500℃までの冷却速度を、共に0.1℃/秒以上、好ましくは0.5℃/秒以上とすることである。このためには、例えば水冷で冷却することが好ましい。また、熱間圧延の加熱温度及び終了温度を高くするという条件は、加熱温度を850℃以上、終了温度を650℃以上とすることである。熱間圧延後の冷却速度を速くするという条件は、熱間圧延終了後300℃までの冷却速度を1℃/秒以上、好ましくは5℃/秒以上とすることである。このためには、例えば水冷を行う。鋳造時の冷却速度が遅過ぎると、粗大な晶・析出物粒子が多数生成する。また、熱間圧延の加熱温度が低い場合には、鋳造時に生成した粗大な晶・析出物粒子が十分に固溶せず、熱間圧延の終了温度も低下するため、粗大な晶・析出物粒子が多数生成する。また、熱間圧延後の冷却速度が遅い場合も、粗大な晶・析出物粒子が多数生成する。
なお、前述のアルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による銅合金板表面のCu2pのピーク面積値に対するC1sのピーク面積値の比が0.35以下であり、かつ銅合金板表面をEBSD分析で観察したときの観察面積に対する微細結晶粒(円相当径が0.5μm未満)の面積比が0.90以下であるためには、下記のような工程を実施すればよい。
まず、アルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による銅合金板表面のCu2pのピーク面積値に対するC1sのピーク面積値の比が0.35以下であるためには、焼鈍前後の洗浄処理を行うことが重要である。一般的に、焼鈍後には、焼鈍で生成した酸化膜及び圧延油に起因する油分残渣を除去するために、各種洗浄処理(酸洗浄・研磨など)が行われるが、焼鈍後のみの洗浄では特に油分残渣などのCの洗浄を効果的に行うことが難しく、洗浄時間を長くとる必要がある等のロスが生じる。従って、Cの原因となるような油分残渣などの洗浄を効果的に行うには、更に、焼鈍前にも洗浄処理を行うことが有効であり、特に最終工程である低温焼鈍前には洗浄処理を行うことが必須であり、さらに低温焼鈍後には酸洗浄などによる酸化膜の除去処理を行うことが有効である。このような焼鈍前の洗浄処理としては、溶剤洗浄・アルカリ洗浄・アルカリ電解洗浄等、種々の洗浄処理があり、必要に応じて適切な洗浄方法を用いると良い。
次に、銅合金板表面をEBSD分析で観察したときの観察面積に対する微細結晶粒(円相当径が0.5μm未満)の面積比が0.90以下であるためには、焼鈍後に機械的研磨を行わないか、又は、機械的研磨の番手を大きくすることによって、研磨剤の粒度を小さくし、表層の結晶粒をできるだけ大きく保つようにすることが重要である。更に、機械的研磨を行っても、その後、化学的溶解処理及び電気化学的溶解処理等によって、機械的研磨で生成した微細結晶層を除去することも有効な手段である。従来、焼鈍後には機械的研磨が多く行われている。焼鈍で生成する酸化膜は強固であり、酸洗浄だけでは除去し難いためである。よって、機械的研磨を行わないか、又は、機械的研磨の負荷を小さくして微細結晶粒の面積比を小さく維持するためには、焼鈍雰囲気を十分に管理し、強固な酸化膜が生成しないようにすることが重要である。具体的には、焼鈍雰囲気は還元雰囲気(H及びCOなどの還元成分を含有する雰囲気)とし、酸化性成分(O及びHO等)はできるだけ低い濃度に管理して、強固な酸化膜を生成しないようにすることが重要である。特に、最終工程である低温焼鈍工程では、焼鈍雰囲気を十分に管理し、強固な酸化膜を生成しないように制御することによって、酸洗浄のみで酸化膜を除去可能とし、機械的研磨を行わずに表面調整を行うことが好ましい。
次に、本発明の効果を実証するための実施例及び比較例の試験結果について説明する。銅合金板の製造方法としては、下記表1に示す組成を有する銅合金溶湯を高周波炉において溶製した後、黒鉛製のブック鋳型に傾注式で鋳込み、厚さが50mm、幅が200mm、長さが200mmの鋳塊を得た。鋳型内で鋳塊が凝固した後、700乃至800℃の温度より水冷した。なお、黒鉛製鋳型は十分な熱容量と熱伝導率を持っており、デンドライトアームスペーシングの2次枝間隔より求めた凝固時の冷却速度は1℃/秒以上であった。なお、表1に示す銅合金は、不可避的不純物として、Si,Ti、Zr、Be、V、Nb、Mo、W、Mg等の元素を総量で0.01質量%以下、B、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等の元素を総量で0.005質量%以下含んでいた。なお、表1において、本発明の請求項1から外れる組成又は成分比に下線を付した。
そして、各鋳塊から、厚さが50mm、幅が180mm、長さが80mmのブロックを切り出し、圧延面を面削して加熱し、900℃に到達した後、0.5乃至1時間保持した後、厚さが16mmになるまで、熱間圧延し、700℃以上の温度から水冷した。この圧延板の表面を面削して酸化スケールを除去した後、冷間圧延と焼鈍とを各2回繰り返して行い(冷間圧延回数は焼鈍回数と同一)、その後、最終の冷間圧延を行って厚さが0.2mmの銅合金板を得た。このとき、焼鈍温度は430℃以下に制御し、焼鈍時間は5分乃至20時間程度の範囲で行い、析出粒子の成長及び粗大化を抑制し、微細析出形態となるように制御した。そして、最終冷間圧延後には、低温焼鈍を行った。最終冷間圧延の加工率は50%とした。低温焼鈍は200乃至500℃程度の温度範囲と、1乃至300秒程度の時間範囲で、圧延方向に平行の方向の引張試験における破断伸びが5%以上とするように行った。
Figure 2011184775
ここで、焼鈍は、2回の焼鈍及び低温焼鈍と共に、N+10%H雰囲気(露点:−20℃以下、O濃度:50ppm以下)中で行い、焼鈍前後の洗浄処理は次のようにして行った。2回の焼鈍に関しては、焼鈍前に溶剤洗浄(ヘキサンによる超音波洗浄:20kHz)を行い、焼鈍後には酸洗浄(10%硫酸)し、その後に、機械的研磨(600番耐水研磨紙)を行った。低温焼鈍に関しては、焼鈍前に溶剤洗浄(ヘキサンによる超音波洗浄:20kHz)を行い、焼鈍後には酸洗浄(10%硫酸)のみとし、機械的研磨は行わなかった。
このようにして得た銅合金板に対して、各実施例及び比較例においては、銅合金板から試料を切り出し、組織観察及び表面分析を行い、Snを含有するP化物析出粒子(以下、微細析出粒子という)の個数を測定し、組成分析(Sn含有量)を行った。また、粗大な晶・析出物粒子(以下、粗大晶・析出物粒子という)の個数を測定し、銅合金板の表面のアルカリ陰極電解洗浄後のXPS分析によるC1s/Cu2p(以下、相対的C量という)を測定し、銅合金板表面のEBSD分析による観察面積に対する微細結晶粒(円相当径が0.5μm未満)の面積比(以下、微細結晶粒の面積比という)を測定し、更に、引張試験による破断伸び及び引張強さを測定し、硬さを測定し、導電率、耐熱性を測定し、エッチング加工性(エッチング性)、及び酸化膜の密着保持温度を評価した。これらの結果を、表2及び表3に示す。なお、表2において、請求項1の範囲から外れる項目について、下線を付して示した。また、表3においては、特性が不足するものを下線で示した。
Figure 2011184775
微細析出粒子の観察は、前述の測定方法により、銅合金組織を30万倍の透過型電子顕微鏡で観察した際の粒径が1nm以上20nm以下の析出粒子の個数を測定し、個/μmとして算出した。また、微細析出粒子の組成分析(Sn含有量)は、EDX分析(ビーム径:1nm)にて質量%(Ni+M+P+Sn=100%とする)を測定し、質量%比として算出した。
粗大晶・析出物粒子の観察は、前述の測定方法により、銅合金組織を1万倍の走査型電子顕微鏡で観察した際の粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数を測定し、個/μmとして算出した。
相対的なC量の測定は、前述の測定方法により、銅合金板表面にアルカリ陰極電解洗浄を行った後、XPS分析により、表面のCu2pのピーク面積値とC1sのピーク面積値を測定し、C1s/Cu2pとして算出した。ここで、アルカリ陰極電解洗浄は、水酸化ナトリウムを主成分(40%)とし、その他リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、界面活性剤を含有する代表的な市販のアルカリ陰極電解洗浄用薬剤を50g/Lの濃度で溶解した水溶液中において、液温:60℃、陰極電流密度:5A/dm、時間:30秒の条件で行った。
微細結晶粒の面積比は、前述の測定方法により、銅合金板表面をEBSD分析で観察した際の観察面積と微細結晶粒(円相当径が0.5μm未満)の占有面積を測定し、微細結晶粒の面積比として算出した。
引張試験においては、圧延方向に平行に切り出したJIS5号試験片を作製し、破断伸びと引張強さを測定した。硬さ試験は、マイクロビッカース硬度計により、4.9Nの荷重を印加して行った。引張強さが750MPa以上、硬さが220Hv以上を良好とした。
導電率は、ミーリングにより、幅が10mm、長さが300mmの短冊状の試験片を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して平均断面積法により算出した。導電率が25%以上の場合を良好とした。
耐熱性は450℃に1分加熱した後の硬さを上記硬さ試験で測定し、硬さ保持率(%)=(加熱後の硬さ/加熱前の硬さ)×100で評価した。硬さ保持率が90%以上の場合を良好とした。
エッチング加工性(エッチング性)は、塩化第2鉄水溶液(比重1.4)を使用して、液温:45℃、スプレー圧:1.5kgf/mmでエッチング加工を行い、エッチング抜き面(エッチング加工面)を走査型電子顕微鏡にて観察し、平滑性を、A:良好、B:肌荒れ発生、C:肌荒れ大の3段階で評価した。
酸化膜密着保持温度は,銅合金板表面にアルカリ陰極電解洗浄を行い、更に、水洗→酸洗浄(10%硫酸)→水洗→乾燥を行った後、大気中にて所定の温度で10分間加熱し、その後、テープによるピーリング試験で評価した。アルカリ陰極電解洗浄は、水酸化ナトリウムを主成分(40%)とし、その他、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、界面活性剤を含有する代表的な市販のアルカリ陰極電解洗浄用薬剤を50g/Lの濃度で溶解した水溶液中において、液温が60℃、陰極電流密度が5A/dm、時間が30秒の条件で、行った。テープによるピーリング試験は市販のテープ(住友スリーエム社製メンディングテープ)を貼り付け、引き剥がす方法で行った。このとき、加熱温度は10℃刻みで変化させ、酸化膜の剥離が生じない最高の温度を酸化膜密着保持温度として評価した。
表1に示すように、実施例1〜8は、請求項1の組成範囲を満たし、実施例9,10は、更に、請求項2の組成範囲を満たす。そして、表2に示すように、実施例1〜10は、請求項1に規定の母材組織及び請求項3に規定の表面性状を満足する。よって、表3に示すように、実施例1〜10の銅合金板は、引張強さが750MPa以上、硬さがHv220以上の機械的特性を有しており、導電率が25%IACS以上であった。更に、耐熱性は硬さ保持率が90%以上であり、高強度と高耐熱性を両立することができた。また、エッチング加工性も良好であり、酸化膜密着保持温度も240℃以上で良好であった。
これに対し、比較例11は、Ni含有量、(Ni+M)/P及びNi/M比が下限値を下回っており、このため、微細析出粒子の個数が下限値の300個/μmを下回り、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)が低かった。また、(Ni+M)/Pが下限値を下回ることにより、Pの固溶量が増加しているため、酸化膜の密着保持温度が低くなった。
比較例12は、微細析出粒子の個数は請求項1を満足し、引張強さ、硬さ、耐熱性はいずれも良好であるが、Ni含有量が上限値を超えているために、粗大な晶・析出物粒子が増加し、エッチング性が低下した。
比較例13は、Fe含有量が0.02質量%と下限値を下回り、Ni/Mが上限値を超えているため、微細析出粒子の個数が下限値の300個/μmを下回り、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)が低かった。
比較例14は、微細析出粒子の個数は請求項1を満足し、引張強さ、硬さは良好であるが、Fe含有量が上限値を超え、Ni/Mが下限値を下回っているため、耐熱性(硬さ保持率)が低いと共に,粗大な晶・析出物粒子が生成し、エッチング性が低下した。
比較例15は、P含有量が下限値を下回り、(Ni+M)/Pが上限値を超えているため、微細析出粒子の個数が下限値を下回り、引張強さ、硬さ及び耐熱性がいずれも低かった。
比較例16は、微細析出粒子の個数は請求項1を満足し、引張強さ、硬さ及び耐熱性がいずれも良好であるが、P含有量が上限値を超え、(Ni+M)/Pが下限値を下回っているため、粗大な晶・析出物粒子が生成し、エッチング性が低下した。また、P含有量が上限値を超え、(Ni+M)/Pが下限値を下回っているため、Pの固溶量が増加し、酸化膜密着保持温度も低かった。
比較例17は、微細析出粒子の個数は請求項1を満足するが、Sn含有量が下限値を下回っているため、微細析出粒子のSn含有量も下限値を下回っており、引張強さ及び硬さが不足していた。
比較例18は、微細析出粒子の個数は請求項1を満足し、引張強さ及び硬さは良好であるが、Sn含有量が上限値を超えているため、粗大な晶・析出物粒子が生成して、耐熱性(硬さ保持率)、エッチング性が低下すると共に、導電率も大きく低下した。また、Sn含有量が上限値を上回っているため、酸化膜密着保持温度も低かった。
比較例19は、微細析出粒子の個数は請求項1を満足し,引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)は良好であるが、Zn含有量が下限値を下回っているため、酸化膜密着保持温度が低下した。
比較例20は、微細析出粒子の個数は請求項1を満足し、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)は良好であるが、Zn含有量が上限値を超えているため、粗大な晶・析出物粒子が生成し、エッチング性が低下した。また、この比較例20は、実施例7,8との比較から、酸化膜密着保持温度の向上効果が飽和していることがわかる。
Figure 2011184775
次に、表面性状と、酸化膜密着保持温度との関係に関する試験結果について説明する。この実施例2においては、表1の実施例2の鋳塊から、実施例1と同様の方法及び条件により、厚さが0.2mmの銅合金板を得た。従って、組成、成分比、母材組織、並びに引張強さ、破断伸び、硬さ、導電率、耐熱性、エッチング加工性という特性は、表3の実施例2と同等であった。
但し、焼鈍は2回の焼鈍及び低温焼鈍と共に、N+10%H雰囲気(露点:−20℃以下、O濃度:50ppm以下)中で行い、焼鈍前後の洗浄処理を変化させることによって、銅合金板の表面性状(相対的C量、微細結晶粒の面積比)を変化させ、酸化膜密着保持温度の評価を行った。この場合に、2回の焼鈍前後の洗浄処理は、同一方法及び条件で行った。
これらの処理条件を表4及び表5に示す。但し、表4及び表5において、アルカリ浸漬洗浄、アルカリ陰極電解洗浄は、夫々、水酸化ナトリウムを主成分とし、その他のりん酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、界面活性剤を含有する代表的な市販のアルカリ浸漬洗浄溶薬剤及びアルカリ陰極電解洗浄用薬剤を使用した。また、2回の焼鈍の後処理の中で一部行っている化学的溶解処理は、硫酸と過酸化水素を主成分とする代表的な市販の水溶液を使用した。また、得られた表面性状及び特性を表6に示す。なお、表6において、請求項3から外れる項目について下線を付して示し、また特性が不足するものを下線で示した。
Figure 2011184775
Figure 2011184775
Figure 2011184775
表4及び表5に示すように、実施例1〜10は、2回の焼鈍及び低温焼鈍とともに、夫々の焼鈍前後で適切な洗浄処理が行われているため、銅合金板の表面にアルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による表面のC1s/Cu2p(相対的C量)が0.35以下で良好であると共に、銅合金板表面のEBSD分析による観察面積に対する微細結晶粒(円相当径が0.5μm未満)の面積比も0.90以下で良好となっている。
この結果、実施例1〜10の銅合金板の酸化膜密着保持温度は、240℃以上で良好であった。また、相対的C量と微細結晶粒の面積比が、夫々小さくなるほど、酸化膜密着保持温度が向上する(高くなる)傾向にあることが認められる。
これに対し、比較例11〜13は、2回の焼鈍及び低温焼鈍のいずれも、焼鈍前の洗浄処理をエタノールによる浸漬洗浄のみとしていることから、相対的C量が上限値を上回り、酸化膜密着保持温度が低いものであった。
また、比較例14〜16は、低温焼鈍後に研磨を行うことにより、微細結晶粒の面積比が0.90以上と大きくなり、このため、酸化膜密着保持温度が低下した。
本発明に係る銅合金材は、優れた酸化膜密着性を有し、また、本発明に係る銅合金板によれば、リードフレーム用素材に必要とされる適度な曲げ加工性を有する。これにより、本発明に係る銅合金材は、リードフレーム用素材としての使用に限定されず、他の電気・電子部品用素材全般に、好適に使用することができる。

Claims (3)

  1. Ni:0.4乃至1.0質量%、Fe及びCoからなる群から選択された少なくとも1種の元素M:総量で0.03乃至0.3質量%、P:0.05乃至0.2質量%、Sn:0.1乃至3質量%、Zn:0.05乃至2.5質量%、Cr:0.0005乃至0.05質量%を含有し、Ni及びMの含有量とPの含有量との比(Ni+M)/Pが4乃至12であり、NiとMとの比Ni/Mが3乃至12であり、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成を有し、
    金属組織において、粒径が1乃至20nmの微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上であり、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下であり、
    前記P化物析出粒子におけるSnの含有量が、EDX分析による質量%比:Sn/(Ni+M+P+Sn)で0.01以上であり、
    圧延方向に平行の方向の引張試験における破断伸びが5%以上であることを特徴とする高強度高耐熱性銅合金材。
  2. 更に、Al及びMnからなる群から選択された少なくとも1種の元素を総量で0.0005乃至0.05質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度高耐熱性銅合金材。
  3. アルカリ陰極電解洗浄を行った後のXPS分析による表面のCu2pのピーク面積値に対するC1sのピーク面積値の比C1s/Cu2pが0.35以下であり、表面をEBSD分析で観察したときの観察面積に対する円相当径が0.5μm未満の微細結晶粒の面積比が0.90以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度高耐熱性銅合金材。
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