JP2010106355A - 高強度高耐熱性銅合金板 - Google Patents

高強度高耐熱性銅合金板 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強さ750MPa以上(硬さHv220以上)の高強度と高耐熱性を両立するとともに、エッチング加工面の平滑性に優れた銅合金板を提供する。
【解決手段】所定量のNi、FeおよびCoのうちの1種以上、P、Sn、ZnおよびCrを含有し、NiとFeおよびCoのうちの1種以上とPの質量%比の関係が4≦(Ni+Fe+Co)/P≦12、かつ3≦Ni/(Fe+Co)≦12を満足し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金板であって、銅合金板の合金組織において、粒径が1nm以上で20nm以下の微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下であり、P化物析出粒子におけるSn含有量が、EDX分析による質量%比:Sn/(Ni+Fe+Co+P+Sn)で0.01以上であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気・電子部品の素材、特に半導体装置用リードフレームの素材、例えばQFPパッケージやQFNパッケージのリードフレーム用素材として好適な銅合金板に関する。
従来、リードフレーム用素材、特に高強度のリードフレーム用素材には、NiとSiを含有するCu−Ni−Si系銅合金からなる銅合金板が多く用いられている。また、Cu−Ni−Si系銅合金、例えば、Ni:2.2〜4.2質量%、Si:0.25〜1.2質量%、Mg:0.05〜0.30質量%を含有する銅合金(C70250合金)は、強度および耐熱性に優れていることから、汎用合金として多く使用されている。
近年、半導体装置の大容量化、小型化及び高機能化に伴い、リードフレームの微細配線化が進んでおり、この微細配線化を容易にするため、リードフレームに用いられる銅合金板の板厚は、ますます薄板化が進められている。これに伴い、これらの半導体装置用リードフレームに用いられる銅合金板には、より一層の高強度化と高耐熱性が求められている。高強度化は、薄板化に伴って低下するハンドリング性の確保や最終的な構成部品としての強度の確保が目的であり、耐熱性は、リードフレームを成型するためのプレス打抜き加工後の歪取り熱処理による軟化防止、および半導体部品の組立工程における熱履歴での軟化防止を目的としている。これらは、リードフレームのみならず、他の電気・電子部品における、コネクタ、端子、スイッチ、リレーなどの導電性部品に用いられる銅合金板にも当てはまる。また、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工において、スマットの発生がなく、銅合金板のエッチング加工面の平滑性に優れることも重要な因子としてますます求められている。
以上のような背景から、前記のCu−Ni−Si系銅合金(C70250合金)からなる銅合金板は、強度と耐熱性には優れるものの、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工において、スマットが発生し、エッチング加工面の平滑性に劣るという問題を有している。
そこで、このようなエッチング加工面の平滑性の問題が解決された銅合金板として、Cu−Fe−P系銅合金をベースに、Niを添加したCu−Ni−Fe−P系銅合金からなり、その合金組織中にNi−Fe−P化合物を析出させた銅合金板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−335864号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたCu−Ni−Fe−P系銅合金からなる銅合金板では、引張強さ700MPa程度が最大であり、それ以上の高強度を得ることは困難であるという問題がある。また、仕上圧延(最終冷間圧延)を高加工率で行うことにより、無理に高強度化しても、耐熱性の低下を招く結果となり、実用に適さないものとなるという問題がある。
本発明はかかる問題を鑑みてなされたもので、引張強さ750MPa以上(硬さHv220以上)の高強度と高耐熱性を両立するとともに、プレス打抜き加工だけでなく、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工においても、スマットの発生がなく、エッチング加工面の平滑性に優れた銅合金板を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る高強度高耐熱性銅合金板は、質量%で、Ni:0.4〜1.0%、FeおよびCoのうちの1種以上:0.03〜0.3%、P:0.05〜0.2%、Sn:0.1〜3%、Zn:0.005〜1.5%、Cr:0.0005〜0.05%を含有し、NiとFeおよびCoのうちの1種以上とPの質量%比の関係が4≦(Ni+Fe+Co)/P≦12、かつ3≦Ni/(Fe+Co)≦12を満足し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金板であって、前記銅合金板の合金組織において、粒径が1nm以上で20nm以下の微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下であり、前記P化物析出粒子におけるSn含有量が、EDX分析による質量%比:Sn/(Ni+Fe+Co+P+Sn)で0.01以上であることを特徴とする。
前記構成によれば、所定量のNi、FeおよびCoのうちの1種以上の元素、PおよびSnを含有し、かつ、合金組織中に所定粒径のP化物析出粒子が所定個数以上生成され、そのP化物析出粒子のSn含有量が所定値以上であることによって、転位の移動や消滅を抑制するP化物析出粒子のピニング力が高まり、銅合金板の強度および耐熱性が向上する。また、銅合金板のエッチング加工において、P化物析出粒子はスマット発生要因となることが抑制されるため、エッチング加工面の平滑性が向上する。また、所定量のZnを含有することによって、銅合金板の接合に用いるめっきやはんだの熱剥離が抑制され、所定量のCrを含有することによって、銅合金板の製造の際、Crが鋳塊の結晶粒界に濃化し、熱間加工性が向上する。さらに、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下であることによって、エッチング加工面の平滑性およびめっき性が向上する。
ここで、本発明では、前記P化物析出粒子において、Snが検出されることから、前記P化物析出粒子のSn含有量を規定した。Snは、Ni−(FeおよびCoのうちの1種以上)−PからなるP化物に含有される場合、あるいは、前記P化物とマトリックス界面に濃縮している場合等が考えられる。本発明においては、これらの場合をすべて含んだSn含有量を規定する。
また、本発明に係る高強度高耐熱性銅合金板は、前記銅合金板に、さらに、質量%で、AlおよびMnのうちの1種以上:0.0005〜0.05%を含有することを特徴とする。
前記構成によれば、所定量のAlおよびMnのうちの1種以上を含有することによって、銅合金に不可避的不純物として混入されるS量が低減され、銅合金板の熱間加工性が向上する。
本発明に係る銅合金板によれば、強度(引張強さおよび硬さ)および耐熱性が高くなるとともに、プレス打抜き加工だけでなく、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工においても、スマットの発生がなく、エッチング加工面の平滑性およびめっき性が優れる。また、本発明に係る銅合金板によれば、銅合金板の接合の際、めっきやはんだの熱剥離が発生しない。さらに、本発明に係る銅合金板によれば、銅合金板の製造の際、熱間加工性がよくなる。これにより、本発明に係る銅合金板は、リードフレーム用素材としての使用に限定されず、他の電気・電子部品用素材として汎用的に使用可能なものとなる。
<高強度高耐熱性銅合金板(以下、銅合金板と称す。)>
本発明に係る銅合金板は、質量%で、Ni:0.4〜1.0%、FeおよびCoのうちの1種以上:0.03〜0.3%、P:0.05〜0.2%、Sn:0.1〜3%、Zn:0.005〜1.5%、Cr:0.0005〜0.05%を含有し、NiとFeおよびCoのうちの1種以上とPの質量%比の関係が4≦(Ni+Fe+Co)/P≦12、かつ3≦Ni/(Fe+Co)≦12を満足し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、合金組織において、粒径が1nm以上で20nm以下の微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下であり、P化物析出粒子におけるSn含有量が、EDX分析による質量%比:Sn/(Ni+Fe+Co+P+Sn)で0.01以上である。
以下に、銅合金板における化学成分組成と、P化物析出粒子の個数およびSn含有量、粗大な晶・析出物粒子の個数の数値限定理由を説明する。
(Ni:0.4〜1.0質量%)
Niは、合金組織中に微細でSnを含有するP化物析出粒子を析出させて、銅合金板の強度や耐熱性を向上させるのに必要な元素である。0.4質量%未満の含有では、Snを含有する微細なP化物析出粒子が不足するため、高強度化および高耐熱性化の効果を有効に発揮させるには、0.4質量%以上の含有が必要である。但し、1.0質量%を超えて過剰に含有させると、合金組織中に粗大な晶・析出物粒子が生成し、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下するとともに、熱間加工性も低下する。したがって、Niの含有量は0.4〜1.0質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましい範囲は0.5〜0.9質量%である。
(FeおよびCoのうちの1種以上:0.03〜0.3質量%)
FeおよびCoのうちの1種以上を含有させることによって、特に、銅合金板の耐熱性が向上し、リードフレーム打抜き後の熱処理や半導体組立工程における熱履歴による軟化の抑制に有効である。FeまたはCoはNiと同様に、合金組織中にSnを含有する微細なP化物析出粒子を析出させて、銅合金板の強度や耐熱性を向上させるのに必要な元素である。FeおよびCoのうちの1種以上の含有量が0.03質量%未満ではSnを含有する微細なP化物析出粒子が不足するとともに、P化物析出粒子がNiとPを主体とする析出粒子となり、高強度化および高耐熱性化の効果を有効に発揮させることができないため、0.03質量%以上の含有が必要である。但し、0.3質量%を超えて過剰に含有させると、合金組織中に粗大な晶・析出物粒子が生成し、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下するとともに、熱間加工性も低下する。したがって、銅合金板は、FeおよびCoのうちの1種以上の含有量を0.03〜0.3質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましい範囲は0.05〜0.2質量%である。
(P:0.05〜0.2質量%)
Pは、脱酸作用を有する他、NiとFeおよびCoのうちの1種以上と結合して合金組織中にSnを含有する微細なP化物析出粒子を形成して、銅合金板の強度や耐熱性を向上させるのに必要な元素である。0.05質量%未満の含有ではSnを含有する微細なP化物析出粒子が不足するため、高強度化および高耐熱性化の効果を有効に発揮させるには、0.05質量%以上の含有が必要である。但し、0.2質量%を超えて過剰に含有させると、合金組織中に粗大な晶・析出物粒子が生成し、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下するとともに、熱間加工性も低下する。したがって、Pの含有量は0.05〜0.2質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましい範囲は0.07〜0.18質量%である。
(Sn:0.1〜3質量%)
Snは、固溶状態で銅合金板の強度向上に寄与するが、さらに本発明においては、Ni−(FeおよびCoのうちの1種以上)−Pを主体とする析出粒子においてEDX分析でSnが検出される。Snが析出粒子の部分で検出される理由は明確ではないが、Ni−(FeおよびCoのうちの1種以上)−Pを主体とする析出粒子にSnが含有されて存在して検出される機構、マトリックス中のSnが濃化した部分にNi−(FeおよびCoのうちの1種以上)−P粒子が優先的に析出し、検出される機構等が考えられる。いずれにしても、Snは、Ni−(FeおよびCoのうちの1種以上)−P粒子の析出を促進していることが考えられる。このような機構によって、本発明の銅合金板の強度および耐熱性は、Snの固溶のみの効果に比べて、さらに向上しているものと推定される。0.1質量%未満の含有では、本発明のようにNi−(FeおよびCoのうちの1種以上)−Pを主体とし、かつSnを含有する微細な析出粒子は形成されず、高強度化および高耐熱性化の効果を有効に発揮させるには、0.1質量%以上の含有が必要である。しかし、3質量%を超えて過剰に含有すると、その効果が飽和する一方、銅合金板の製造の際の溶解鋳造時にSnの偏析や粗大な晶・析出物粒子が多量に生成し、熱間加工性も低下する。また、銅合金板の導電性も低下する。したがって、Snの含有量は0.1〜3質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましい範囲は0.2〜2.5質量%である。
(Zn:0.005〜1.5質量%)
Znは銅合金板の接合に用いる、Snめっきやはんだの熱剥離を抑制し、耐熱剥離性を改善するのに必要な元素である。この様な効果を有効に発揮させるには、0.005質量%以上含有することが必要である。しかし、1.5質量%を超えて過剰に含有すると、却って溶融Snやはんだの濡れ広がり性を劣化させる。したがってZnの含有量は0.005〜1.5質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましい範囲は0.01〜1.2質量%である。
(Cr:0.0005〜0.05質量%)
Crは、銅合金板の製造の際、鋳塊の熱間加工性を向上させるのに必要な元素である。Crは、鋳塊の結晶粒界に濃化して、熱間加工温度における粒界の強度を向上させ、熱間加工性の改善に寄与するものと推定される。本発明に係る銅合金板では、高強度と高耐熱性を両立するために比較的高濃度のPとSnを含有することから、熱間加工が比較的難しく、前記のような粒界強化効果を有するCrは必要な元素となる。この様な効果を有効に発揮させるには、0.0005質量%以上含有することが必要である。しかし、0.05質量%を超えて過剰に含有すると効果が飽和するばかりでなく、合金組織中に粗大な晶・析出物粒子が生成しやすくなり、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下する。したがってCrの含有量は0.0005〜0.05質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましい範囲は0.001〜0.03質量%である。
(4≦(Ni+Fe+Co)/P≦12、かつ3≦Ni/(Fe+Co)≦12)
NiとFeおよびCoのうちの1種以上とPの質量%比の関係が4≦(Ni+Fe+Co)/P≦12、かつ3≦Ni/(Fe+Co)≦12を満足することにより、銅合金板の強度と耐熱性は大きく向上する。また、本発明の微細でSnを含有するP化物析出粒子を後述の規定通り析出させるためには、この2式を満足することが不可欠であり、この2式を満足しなければ本発明の目的である高強度化と高耐熱性化の両立はできない。したがって、NiとFeおよびCoのうちの1種以上とPの質量%比の関係は4≦(Ni+Fe+Co)/P≦12、かつ3≦Ni/(Fe+Co)≦12を満足するものとする。また、この範囲の中で好ましい範囲は、5≦(Ni+Fe+Co)/P≦10、かつ4≦Ni/(Fe+Co)≦10である。
(不可避的不純物)
本発明で言う不可避的不純物は、例えば、Si、Ti、Zr、Be、V、Nb、Mo、W、Mgなどの元素である。これらの元素が含有されると、粗大な晶・析出物粒子が生成し易くなる他、高強度と高耐熱性の両立を阻害する。従って、総量で0.5質量%以下の極力少ない含有量にすることが好ましい。また、銅合金中に微量に含まれているB、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等の元素も不可避的不純物である。これらの元素が含有されると、粗大な晶・析出物粒子が生成し易くなる他、熱間加工性を低下させることから、総量で0.1質量%以下の極力少ない含有量に抑えることが好ましい。
(P化物析出粒子)
本発明に言うP化物析出粒子とは、銅合金組織を10万倍以上の透過型電子顕微鏡で観察した際の、粒径が1nm以上で20nm以下の析出粒子で、その個数は300個/μm以上である。なお、これらの析出粒子はNi−(FeおよびCoのうちの1種以上)−PからなるP化物を主体とするものであるが、その析出粒子におけるSn含有量が、EDX分析による質量%比:Sn/(Ni+Fe+Co+P+Sn)で0.01以上であることを特徴とする。
本発明において、析出粒子の粒径は、各析出粒子の最大直径(各析出粒子に外接する円の直径)である。同様に、析出粒子の個数は、10万倍以上の透過型電子顕微鏡での観察視野内の析出粒子数(粒径:1nm以上、20nm以下)を測定し、1μm当たりの測定個数として換算したものが、本発明で言う個数であり、少なくとも任意の3視野を観察し、その測定結果を平均化したものとする。
このようなSnを含有する微細なP化物析出粒子は、銅合金板の製造に際し、例えば、冷間圧延後の焼鈍の際に新たに生成する。即ち、このような微細な析出粒子は、焼鈍によって、母相から微細に析出した化合物相である。したがって、鋳造時や熱間圧延時に生成して銅合金組織に元々存在するような、粗大な晶・析出物粒子ではない。このため、銅合金組織の10万倍以上の透過型電子顕微鏡による観察でなければ、このような微細な析出粒子は観察できない。
本発明では、このようなSnを含有する微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上であることと規定する。このようなSnを含有する微細なP化物析出粒子は、転位の移動や消滅を抑制するピニング力が、これよりも粗大な晶・析出物粒子よりも格段に大きい。このため、本発明銅合金において、粒径が20nm以下の微細なNi−(FeおよびCoのうちの1種以上)−P−Sn化合物を主体とする析出粒子をできるだけ多く銅合金組織内に存在させることで、上記ピニングが高まり、高強度化と高耐熱性化が図れる。
更に、このような粒径が20nm以下のSnを含有する微細なP化物析出粒子は、微細配線加工に好適な加工法であるエッチング加工において、スマットの発生要因となることもなく、エッチング加工面の平滑性を低下させることもない。これに対して、粗大な晶・析出物粒子は、高強度化と高耐熱性化への寄与が小さいだけでなく、エッチング加工におけるスマット発生要因や、エッチング加工面の平滑性を低下させる要因にもなり得る。
析出粒子の粒径が20nmを超える粗大な晶・析出物粒子は、上記した通り、ピンニング力が弱まる。したがって、本発明ではSnを含有する微細なP化物析出粒子の平均粒径の上限を20nmとする。一方、粒径が1nm未満の微細な析出物粒子は10万倍以上の透過型電子顕微鏡でも、検出、測定が困難であって、かつ、前記ピニングが逆に弱まる。したがって本発明では、規定する析出粒子の下限を1nmとする。
このようなSnを含有する微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm未満では、効果を発揮すべき粒子の数が不足し、引張強さ750MPa(硬さHv220)以上の高強度が得られないとともに、耐熱性も低下する。
また、微細でSnを含有するP化物析出粒子のSn含有量が質量%比で0.01未満では、引張強さ750MPa(硬さHv220)以上の高強度が得られないとともに、耐熱性も低下する。なお、析出粒子の組成分析(Sn含有量)はEDX分析にて行っており、各成分(Ni,Fe,Co,P,Sn)のピーク強度から質量%を算出する。各質量%はNi+Fe+Co+P+Snを100%として算出し、Snの質量%比は、この質量%からSn/(Ni+Fe+Co+P+Sn)の式で算出する。また、観察視野内の1nm以上、20nm以下の析出粒子のうち、少なくとも5個以上を分析し、その測定結果を平均化する。また、P化物析出粒子の代表的な組成は、EDX分析による質量%で、Ni:30〜70%、FeおよびCoのうちの1種以上:5〜60%、P:5〜35%、Sn:1〜30%程度の範囲からなるものである。
(粗大な晶・析出物粒子)
本発明においては、粒径が1nm以上で20nm以下のSnを含有する微細なP化物析出粒子の量を規定しているが、この規定を満足すれば、本発明の目的を阻害しない範囲で、晶・析出物粒子の粒径が20nmを超える粗大な晶・析出物粒子が適宜の量、銅合金組織中に存在することは許容する。しかしながら、銅合金組織を1万倍以上の走査型電子顕微鏡で観察した際に粒径が100nmを超える晶・析出物粒子は、その個数が0.5個/μm以下である。粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μmを超えると、エッチング加工時のスマットの発生要因となるとともに、エッチング加工面の平滑性の低下、およびめっき性の低下(突起の発生)等の問題を引き起こす要因となる。また、前記した微細なSnを含有するP化物析出粒子の生成も阻害される。
粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子は、銅合金板の製造に際し、鋳造時や熱間圧延時に生成する。ここで、晶・析出物粒子とは、銅合金組織中に結晶相として分離する晶出物粒子、明瞭な結晶相を形成しない固体相として分離する析出物粒子、または、これらの混合物をいう。なお、これらの粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子としては、P化物系(Ni−Fe−P系,Ni−Co−P系,Ni−P系など)やNi−Sn系のものが存在する。
本発明において、粗大な晶・析出物粒子の粒径は、各晶・析出物粒子の最大直径(各晶・析出物粒子に外接する円の直径)である。同様に、粗大な晶・析出物粒子の個数は、1万倍以上の走査型電子顕微鏡での観察視野内の晶・析出物粒子数(粒径:100nmを超える)を測定し、1μm当たりの測定個数として換算したものが、本発明で言う個数であり、少なくとも任意の3視野を観察し、その測定結果を平均化したものとする。なお、観察は透過型電子顕微鏡でも可能であるが、粒径が大きいため走査型電子顕微鏡の方が容易であり、適する。
本発明に係る銅合金板は、さらに、質量%で、AlおよびMnのうちの1種以上:0.0005〜0.05%を含有することができる。
(AlおよびMnのうちの1種以上:0.0005〜0.05質量%)
AlまたはMnは、銅合金中に不可避不純物として混入し熱間加工性を低下させるS量を低減するのに有効な元素である。この様な効果を有効に発揮させるには、AlおよびMnのうちの1種以上の含有量が0.0005質量%以上であることが必要である。しかし、0.05質量%を超えて過剰に含有すると効果が飽和するばかりでなく、粗大な晶・析出物粒子が生成しやすくなり、銅合金板のエッチング加工面の平滑性が低下する。したがって、銅合金板は、AlおよびMnのうちの1種以上の含有量を0.0005〜0.05質量%の範囲とする。また、この範囲の中で好ましい範囲は0.001〜0.03質量%である。
<銅合金板の製造方法>
次に、前記銅合金板の製造方法について説明する。製造される銅合金板の合金組織を前記の規定組織とするために、従来公知の製造工程自体を大きく変えることは不要で、常法と同じ工程で製造できる。即ち、前記成分組成に調整した銅合金溶湯を鋳造する。そして、鋳塊を面削後、加熱または均質化熱処理した後に熱間圧延し、熱延後の板を水冷する。その後、冷間圧延、焼鈍、洗浄を何回か繰り返し、更に仕上げ(最終)冷間圧延を行って製品板厚の銅合金板とする。
なお、最終冷間圧延の後には歪取り焼鈍を行うことが好ましい。半導体装置の小型化・高集積化によるリードフレームの微細配線化に伴い、板のフラットネスと内部応力低減に関する品質要求は益々高くなっており、歪取り焼鈍はこれらの品質向上に有効である。歪取り焼鈍は200〜500℃程度の温度範囲と1〜300秒程度の時間範囲で行えばよい。
ここにおいて、前記した、粒径が1nm以上で20nm以下のSnを含有するP化物析出粒子の個数が300個/μm以上である析出形態となるよう制御するには、製造にあたって下記の条件で焼鈍を行うことが有効である。なお、P化物析出粒子のSn含有量をEDX分析による質量%比で0.01以上となるように制御するには、銅合金におけるNi、FeおよびCoのうちの1種以上、P、Sn含有量の調整によって行うことが有効である。
即ち、前記した通り、本発明における微細でSnを含有するP化物析出粒子は、焼鈍によって新たに母相から微細に析出した化合物相である。このような微細でSnを含有するP化物析出粒子を析出させるために、前記の銅合金板の製造工程において、冷間圧延後に焼鈍を行う。
但し、1回の焼鈍だけで、このような微細でSnを含有するP化物析出粒子を多数析出することは難しく、焼鈍温度を高くすると、析出粒子の数の増加に伴って、析出粒子の成長、粗大化を招く。そこで、焼鈍を複数回に分けて行うとともに、1回当たりの焼鈍温度を430℃以下に制御し、析出粒子の成長、粗大化を抑制し、上記の微細析出形態となるよう制御することが好ましい。焼鈍時間は5分〜20時間程度の範囲で行えばよい。
更に、これら焼鈍と焼鈍との間に冷間圧延すると、冷間圧延によって格子欠陥が増加して、後の焼鈍での析出核となるため、上記した微細析出形態が得られやすい。
したがって、これらの条件を加味すると、前記した銅合金板の製造工程において、熱間圧延後から仕上げ(最終)冷間圧延までに、冷延と焼鈍を2回ずつ繰り返して行なうような工程が、前記した微細でSnを含有するP化物析出粒子の析出形態が得られやすい点で好ましい。また、鋳造条件および熱間圧延条件を制御して、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数を0.5個/μm以下にすることによって、微細でSnを含有するP化物析出粒子の生成を促進することが好ましい。
粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数を0.5個/μm以下に制御する鋳造条件および熱間圧延条件としては、鋳造時の冷却速度を速くする(粗大な晶出物を抑制するための凝固時の冷却速度、および粗大な析出物を抑制するための凝固後500℃までの冷却速度を、ともに0.1℃/秒以上、好ましくは0.5℃/秒以上とする。例えば水冷)とともに、熱間圧延の加熱温度や終了温度を高くし(加熱温度:850℃以上、終了温度:650℃以上)、熱間圧延後の冷却速度も速くする(熱間圧延終了後300℃までの冷却速度を1℃/秒以上、好ましくは5℃/秒以上とする。例えば水冷)ことが有効である。鋳造時の冷却速度が遅過ぎると粗大な晶・析出物粒子が多数生成する。また、熱間圧延の加熱温度が低い場合には、鋳造時に生成した粗大な晶・析出物粒子が十分に固溶せず、熱間圧延の終了温度も低下するため、粗大な晶・析出物粒子が多数生成する。また、熱間圧延後の冷却速度が遅い場合も粗大な晶・析出物粒子が多数生成する。
また、微細なSnを含有するP化物析出粒子の個数測定および組成分析、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数測定は、最終冷間圧延前の最終焼鈍後に行うのが望ましい。最終冷間圧延後でも可能ではあるが、転位が微細なSnを含有するP化物析出粒子および粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の観察の妨げとなる場合がある。
次に、本発明の実施例について説明する。
銅合金板の製造方法としては、表1に示す化学成分の銅合金を高周波炉において溶製した後、黒鉛製のブック鋳型、および400℃に加熱した耐火物製のブック鋳型に傾注式で鋳込み、厚さが70mm、幅が200mm、長さが500mmの鋳塊を得た。両鋳型とも、鋳型内で鋳塊が凝固後、700〜800℃の温度より水冷した。なお、黒鉛製鋳型は十分な熱容量と熱伝導率を持っており、デンドライトアームスペーシングの2次枝間隔より求めた凝固時の冷却速度は1℃/秒以上であった。一方、耐火物製鋳型は加熱されており、また熱伝導率が小さいため凝固時の冷却速度は0.1℃/秒未満であった。なお、表1に示す銅合金は、不可避的不純物として、Si、Ti、Zr、Be、V、Nb、Mo、W、Mgなどの元素を総量で0.01質量%以下、B、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等の元素を総量で0.005質量%以下含んでいた。そして、各鋳塊の上部(鋳造終了端に近い部分)より、厚さ70mm、幅80mm、長さ200mmのブロックを切出し、圧延面を面削して加熱し、900℃に到達後0.5〜1時間保持後、厚さが16mmになるまで熱間圧延し、700℃以上の温度で水冷した。なお、一部の例については、熱間圧延条件(加熱温度、終了温度、冷却方法)を変更して行った。この圧延板表面を面削して酸化スケールを除去した後、冷間圧延と焼鈍とを2回繰り返して行い(冷間圧延回数は焼鈍回数と同じ)、その後最終の冷間圧延を行って厚さが0.2mmの銅合金板を得た。表1には、各例とも繰り返しの焼鈍の内、高い方の焼鈍温度を最高焼鈍温度として記載している。そして、最終冷間圧延後、歪取り焼鈍を行った。
このようにして得た銅合金板に対して、各例とも、銅合金板から試料を切り出し、組織観察によるSnを含有するP化物析出粒子(以下、微細析出粒子と称す。)の個数測定および組成分析(Sn含有量)、引張試験、硬さ測定、導電率測定、耐熱性測定、エッチング加工性(エッチング性)、はんだ濡れ性、はんだの耐熱剥離性および熱間加工性の評価を行なった。これらの結果を表2、表3に各々示す。なお、一部の例については、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子(以下、粗大晶・析出物粒子と称す。)の個数測定、Agめっき性の評価も行った。その結果を、表4に各々示す。
微細析出粒子の観察は、前記した測定方法により、銅合金組織を30万倍の透過型電子顕微鏡で観察した際の、粒径が1nm以上で20nm以下の析出粒子の個数を測定し、個/μmとして算出した。また、微細析出粒子の組成分析(Sn含有量)はEDX分析(ビーム径:1nm)にて質量%(Ni+Fe+Co+P+Sn=100%とする)を測定し、質量%比として算出した。
引張試験は、圧延方向に平行に切り出したJIS5号試験片を作製して行なった。硬さ試験は、マイクロビッカース硬度計にて、4.9Nの荷重を加えて行なった。引張強さ:750MPa以上、硬さ:220Hv以上で良好とした。
導電率は、ミーリングにより、幅10mm×長さ300mmの短冊状の試験片を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して平均断面積法により算出した。導電率:25%以上で良好とした。
耐熱性は、450℃×1分加熱後の硬さを上記硬さ試験で測定し、硬さ保持率(%)=(加熱後の硬さ/加熱前の硬さ)×100で評価した。硬さ保持率:90%以上で良好とした。
エッチング加工性(エッチング性)は、塩化第2鉄水溶液(比重1.5)を用いて、液温:45℃,スプレー圧1.5kgf/mmでエッチング加工を行い後、エッチング抜き面(エッチング加工面)を走査型電子顕微鏡にて観察し、平滑性を3段階で評価した(A:良好、B:肌荒れ発生、C:肌荒れ大)。
はんだ濡れ性は、短冊状の試験片に非活性フラックスを塗布し、245℃に保持したはんだ浴(Sn−40%Pb)に5秒間浸漬後、濡れ面積の比率で評価した(A:全面濡れ、B:ピンホール発生、C:濡れ面積95%未満)。
はんだの耐熱剥離性は、短冊状の試験片に弱活性フラックスを塗布し、245℃に保持したはんだ浴(Sn−40%Pb)に5秒間浸漬後、150℃のオーブンで1000hr加熱した。この試験片に180°曲げ戻し加工を加え、加工部のはんだが剥離するか否かを観察した(A:剥離なし、B:微少剥離、C:全面剥離)。
熱間加工性は、実施例の板材を製作する際の熱間圧延工程後の材料の外観にて評価した(A:良好、B:耳割れ発生、C:耳割れ大)。
粗大晶・析出物粒子の観察は、前記した測定方法により、銅合金組織を1万倍の走査型電子顕微鏡で観察した際の、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数を測定し、個/μmとして算出した。
Agめっき性は、シアン系Agめっき液から厚さ1μmのAgめっきを行い、突起(局所的にAgめっき厚さが厚くなり、突起状となったもの)の個数を30倍の実体顕微鏡で測定して個/cmを算出し、3段階で評価した。A:良好(0.5個/cm未満),B:やや不良(0.5〜5個/cm),C:不良(5個/cm以上)。
Figure 2010106355
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表1〜表4に示す通り、実施例(No.1〜19)は、特許請求の範囲に規定された銅合金組成範囲を有し、AlまたはMnも各々選択的に所定範囲で含んでいる。そして、製造方法における鋳造、熱間圧延および焼鈍も好ましい条件内で製造されている。また、銅合金組織を30万倍の透過型電子顕微鏡で観察した際の、粒径が1nm以上で20nm以下の微細でSnを含有するP化物析出粒子(微細析出粒子)の個数は300個/μm以上、そのSn含有量(質量%比)も0.01以上であった。さらに、銅合金組織を1万倍の走査型電子顕微鏡で観察した際の、粒径が100nmを超える粗大晶・析出物粒子の個数は0.5個/μm以下であった。
この結果、実施例(No.1〜19)の銅合金板は、引張強さで750MPa以上、硬さでHv220以上の特性を有しており、導電率は25%IACS以上であった。さらに、耐熱性は硬さ保持率で90%以上であり、高強度と高耐熱性を両立するとともに、エッチング性、はんだ濡れ性、はんだ耐熱剥離性および熱間加工性は良好であった。なお、実施例(No.2)の銅合金板は、Agめっき性についても良好であった。
これに対して、比較例(No.20)は、P量が下限を下回り、(Ni+Fe+Co)/Pが上限を上回っている。よって、焼鈍は好ましい条件内で行なっているものの、微細析出粒子の個数が下限の300個/μmを下回り、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)が低かった。
比較例(No.21)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さ、耐熱性ともに良好であるが、P量が上限を上回り、(Ni+Fe+Co)/Pが下限を下回っているため、粗大な晶・析出物粒子が生成し、エッチング性、はんだの耐熱剥離性および熱間加工性が低下した。
比較例(No.22)は、Ni量、(Ni+Fe+Co)/PおよびNi/(Fe+Co)が下限を下回っている。このため、微細析出粒子の個数が下限の300個/μmを下回り、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)が低かった。
比較例(No.23)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さ、耐熱性ともに良好であるが、Ni量が上限を上回っているため、粗大な晶・析出物粒子が生成し、エッチング性が低下した。
比較例(No.24)は、Fe量が0.01%と下限を下回り、Ni/(Fe+Co)が上限を上回っている。このため、微細析出粒子の個数が下限の300個/μmを下回り、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)が低かった。
比較例(No.25)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さは良好であるが、Fe量が上限を上回り、Ni/(Fe+Co)が下限を下回っているため、微細析出粒子の組成が適正な範囲からはずれ、耐熱性(硬さ保持率)が低いとともに、粗大な晶・析出物粒子が生成し、エッチング性、はんだ濡れ性・熱間加工性が低下した。
比較例(No.26〜29)は、Ni,Fe,P量は本発明範囲を満足し、微細析出粒子の個数も本発明範囲を満足し、引張強さ、硬さは良好であるが、(Ni+Fe+Co)/Pまたは/およびNi/(Fe+Co)が特許請求の範囲からはずれているため、微細析出粒子の組成が適正な範囲からはずれ、耐熱性(硬さ保持率)が低かった。
比較例(No.30)は、Co量が下限を下回り、Ni/(Fe+Co)が上限を上回っている。このため、微細析出粒子の個数が下限の300個/μmを下回り、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)が低かった。
比較例(No.31)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さは良好であるが、Co量が上限を上回り、Ni/(Fe+Co)が下限を下回っているため、微細析出粒子の組成が適正な範囲からはずれ、耐熱性(硬さ保持率)が低いとともに、粗大な晶・析出物粒子が生成し、エッチング性、はんだ濡れ性、熱間加工性が低下した。
比較例(No.32)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さは良好であるが、Fe量とCo量の合計が上限を上回り、Ni/(Fe+Co)が下限を下回っているため、微細析出粒子の組成が適正な範囲からはずれ、耐熱性(硬さ保持率)が低いとともに、粗大な晶・析出物粒子が生成し、エッチング性、はんだ濡れ性、熱間加工性が低下した。
比較例(No.33)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足しているが、Sn量が下限を下回っているため、引張強さ、硬さが不足していた。なお、微細析出粒子のSn含有量も表3に示す通り、下限を下回っていた。
比較例(No.34)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さは良好であるが、Sn量が上限を上回っているため、粗大な晶・析出物粒子が生成して、耐熱性(硬さ保持率)、エッチング性が低下するとともに、導電率、熱間加工性も大きく低下した。
比較例(No.35)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)は良好であるが、Zn量が下限を下回っているため、はんだの耐熱剥離性が低下した。
比較例(No.36)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)は良好であるが、Zn量が上限を上回っているため、はんだ濡れ性が低下した。
比較例(No.37)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)は良好であるが、Cr量が下限を下回っているため、熱間加工性が低下した。
比較例(No.38)は、微細析出粒子の個数は特許請求の範囲を満足し、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)は良好であるが、Cr量が上限を上回っているため、粗大な晶・析出物粒子が生成してエッチング性が低下した。
比較例(No.39)は、銅合金の組成は特許請求の範囲を満足するが、最高焼鈍温度が好ましい上限を超えて高すぎ、微細析出粒子の個数が下限の300個/μmを下回っていた。このため、引張強さ、硬さ、耐熱性(硬さ保持率)が著しく低かった。
比較例(No.40)は、熱間圧延の加熱温度・終了温度が低いために、粒径が100nmを超える粗大晶・析出物粒子が多数生成し、エッチング性やAgめっき性が低下するとともに、粗大晶・析出物粒子の生成によって、微細析出粒子の個数が300個/μmを下回ったため、引張強さと耐熱性も低下した。
比較例(No.41)は、熱間圧延後の冷却方法が空冷であるため、冷却速度が遅く、粒径が100nmを超える粗大晶・析出物粒子が多数生成し、比較例(No.40)と同様にエッチング性やAgめっき性が低下するとともに、粗大晶・析出物粒子の生成によって、微細析出粒子の個数が300個/μmを下回ったため、引張強さと耐熱性も低下した。
比較例(No.42)は、加熱した耐火物製ブック鋳型に鋳造したため、凝固時の冷却速度が遅く、粗大な晶出物が大量に晶出した。そのため、熱間圧延時の加熱によっても前記晶出物が消失せず、粒径が100nmを超える粗大晶・析出物粒子が多数生成し、比較例(No.40)と同様にエッチング性やAgめっき性が低下するとともに、粗大晶・析出物粒子の生成によって、微細析出粒子の個数が300個/μmを下回ったため、引張強さと耐熱性も低下した。

Claims (2)

  1. 質量%で、Ni:0.4〜1.0%、FeおよびCoのうちの1種以上:0.03〜0.3%、P:0.05〜0.2%、Sn:0.1〜3%、Zn:0.005〜1.5%、Cr:0.0005〜0.05%を含有し、NiとFeおよびCoのうちの1種以上とPの質量%比の関係が4≦(Ni+Fe+Co)/P≦12、かつ3≦Ni/(Fe+Co)≦12を満足し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金板であって、
    前記銅合金板の合金組織において、粒径が1nm以上で20nm以下の微細なP化物析出粒子の個数が300個/μm以上、粒径が100nmを超える粗大な晶・析出物粒子の個数が0.5個/μm以下であり、
    前記P化物析出粒子におけるSn含有量が、EDX分析による質量%比:Sn/(Ni+Fe+Co+P+Sn)で0.01以上であることを特徴とする高強度高耐熱性銅合金板。
  2. 前記銅合金板は、さらに、質量%で、AlおよびMnのうちの1種以上:0.0005〜0.05%を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度高耐熱性銅合金板。
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