JP2007039804A - 電子機器用銅合金及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】銅合金の表層に存在する加工変質層の厚さを0.2μm以下、好ましくは、0.05μm以下にすることにより、めっき時の異常析出を防止してめっき性を向上させるものである。また、表層の加工変質層の厚さが0.2μm以下の銅合金上にめっきを施したものをリードフレーム、端子、コネクタ等の電子機器に適用することよりこれらの製品の品質向上に寄与する。
【選択図】なし
Description
また、近年ではエッチングやプレスによりリード加工した後にあらかじめリードフレーム全面にめっきを施すめっきリードフレームも使用されており、この場合にはパラジウムめっきやその下地となるニッケルめっきが施される。
本明細書及び請求の範囲において、「加工変質層」とは、前記様々な塑性加工の結果、銅合金の表層に生じる、ベイルビー層(上層)と微細結晶層(下層)とからなる不均一で微細な結晶組織(例えば、非晶質〜結晶粒径0.2μm未満)をいう。前記ベイルビー層は非晶質組織からなり、前記微細結晶層は極微細な結晶集合組織からなる。前記塑性変形層は結晶粒が微細結晶層より粗大であり(例えば、結晶粒径0.2〜3.0μm程度)、下部にいくに従い次第に銅合金内部の結晶粒の大きさ(例えば、結晶粒径3.0μm〜10.0μm程度)に近づいていく結晶集合組織からなる。
(1)表層の加工変質層の厚さが0.2μm以下であることを特徴とする電子機器用銅合金、
(2)前記銅合金上にめっきが施されることを特徴とする前記(1)に記載の電子機器用銅合金、
(3)前記銅合金上に銀めっきまたは銅めっきが施されることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の電子機器用銅合金、
(4)Crを0.05〜0.5質量%、Snを0.05〜2.0質量%、及びZnを0.05〜1.0質量%含み、さらに必要に応じて、0.01〜0.5質量%のSi及び0.01〜0.5質量%のZrのうち1種または2種を合計で0.01〜0.5質量%含み、残部が銅(Cu)及び不可避的不純物からなる(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金、
(5)Niを2.0〜4.0質量%、Siを0.4〜0.8質量%含み、さらに必要に応じて、0.05〜0.15質量%のMg、0.005〜0.1質量%のAg、0.005〜0.1質量%のMn、0.05〜2.0質量%のSn及び0.05〜1.0質量%のZnのうち1種または2種以上を合計で0.005〜2.0質量%含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金、
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金を用いたことを特徴とするリードフレーム、
(7)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金を用いたことを特徴とする端子、
(8)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金を用いたことを特徴とするコネクタ、
(9)加工変質層の厚さが0.2μm以下になるように、表層の加工変質層を除去すること特徴とする電子機器用銅合金の製造方法、
(10)前記加工変質層の除去を化学的な溶解処理により行うことを特徴とする、前記(9)に記載の電子機器用銅合金の製造方法、
(11)前記加工変質層の除去を電気化学的な溶解処理により行うことを特徴とする、前記(9)に記載の電子機器用銅合金の製造方法、
(12)前記加工変質層の除去を熱処理により行うことを特徴とする、前記(9)に記載の電子機器用銅合金の製造方法、
(13)前記電子機器用銅合金が、Crを0.05〜0.5質量%、Snを0.05〜2.0質量%、Znを0.05〜1.0質量%含み、さらに必要に応じて0.01〜0.5質量%のSi、0.01〜0.5質量%のZrのうち1種または2種を合計で0.01〜0.5質量%含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、表層の加工変質層の厚さが0.2μm以下であることを特徴とする(9)〜(12)のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金の製造方法、及び
(14)前記電子機器用銅合金が、Niを2.0〜4.0質量%、Siを0.4〜0.8質量%含み、さらに必要に応じて、0.05〜0.15質量%のMg、0.005〜0.1質量%のAg、0.005〜0.1質量%のMn、0.05〜2.0質量%のSn、0.05〜1.0質量%のZnのうち1種または2種以上を合計で0.005〜2.0質量%含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金であって、表層の加工変質層の厚さが0.2μm以下であることを特徴とする(9)〜(12)のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金の製造方法
を提供する。
スズ(Sn)、亜鉛(Zn)は銅中に固溶する添加元素であり、固溶強化及びその後の冷間加工において強度を著しく高める効果がある。0.05質量%より少ないとその効果が少なく、添加量が多いと導電性を損なう。電子機器に好ましい導電性を確保するために、Sn量は、0.05〜2.0質量%とするのが好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましく、0.2〜0.4質量%がさらに好ましい。また、同様な観点から、Zn量は、0.05〜1.0質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましく、0.15〜0.3質量%であることがさらに好ましい。
Zrは銅中で析出を起こして銅合金の強度を高める添加元素である。0.01質量%以下ではその効果が少なく、0.5質量%以上ではその効果が飽和してしまうため、0.01〜0.5質量%とすることが好ましい。0.05〜0.4質量%がより好ましく、0.1〜0.3質量%であることがさらに好ましい。
マグネシウム(Mg)は銅中に固溶または析出を起こして銅合金の強度を高める添加元素である。0.05質量%ではその効果が少なく、0.3質量%以上では鋳塊の熱間加工性を低下させる。好ましくは0.1〜0.2質量%、より好ましくは0.13〜0.17質量%が最適である。
銀(Ag)は銅中に固溶し銅合金の強度を高める添加元素である。0.005質量%以下ではその効果が少なく、0.2質量%以上ではその効果が飽和してコスト高になってしまう。好ましくは0.01〜0.1質量%、より好ましくは0.02〜0.05質量%とする。
マンガン(Mn)は鋳塊の熱間加工性を良好にする添加元素である。0.005質量%以下ではその効果が少なく、0.2質量%以上では導電性を損なう。好ましくは0.01〜0.15質量%、より好ましくは0.07〜0.12質量%とする。
Sn、Znは銅中に固溶する元素であり、固溶強化及びその後の冷間加工において強度を著しく高める効果がある。0.01質量%以下ではその効果が少なく、添加量が多いと銅合金の導電性を損なう。電子機器に望ましい導電性を確保するために、Sn量は、0.05〜2.0質量%が好ましく、0.05〜1.0質量%がより好ましく、0.1〜0.2質量%であることがさらに好ましい。また、同様な観点から、Zn量は、0.05〜1.0質量%が好ましく、0.1〜0.7質量%がより好ましい。
図1は、SIM観察による銅合金の断面図写真である。
図2は、加工変質層1及び塑性変形層2からなる銅合金の断面図である。
図2から明らかなように、前記加工変質層1はベイルビー層3(上層)と微細結晶層4(下層)とからなり、前記ベイルビー層3は非晶質組織からなり、前記微細結晶層4は極微細な結晶集合組織からなる。加工変質層1の更に下部に存在する塑性変形層2は結晶粒が微細結晶層より粗大であり、図1に示すように加工変質層1(破線で囲まれる部分)は塑性変形層2と結晶組織が明瞭に異なるため、両者は容易に識別することができる。
実施例1の評価結果を表2に示す。
実施例2の評価結果を表3に示す。
なお、加工変質層の厚さが0.4μmの元材に対して、加工変質層の厚さを0、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3μmとするための熱処理温度を、それぞれ600、585、565、540、500、450℃とした。
実施例3の評価結果を表4に示す。
また、銅合金の合金系が異なるものや加工変質層の除去方法が異なるものにおいても、加工変質層の厚さが同じ場合には同様の効果が得られており、いずれの場合においても加工変質層を0.2μm以下とすることにより優れた銀めっき性が得られた。
これに対して、比較例では銅合金表層の不均一で微細な加工変質層が十分に除去されずに残っていたため、前記加工変質層に起因した異常析出は起こり銀めっき性が低下した。
実施例4の評価結果を表5に示す。
実施例5の評価結果を表6に示す。
なお、加工変質層の厚さが0.4μmの元材に対して、加工変質層の厚さを0、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3μmとするための熱処理温度を、それぞれ600、585、565、540、500、450℃とした。
実施例6の評価結果を表7に示す。
また、銅合金の合金系が異なるものや加工変質層の除去方法が異なるものにおいても、加工変質層の厚さが同じ場合には同様の効果が得られており、いずれの場合においても加工変質層を0.2μm以下とすることにより優れた銅めっき性が得られた。
これに対して、比較例では銅合金表層の不均一で微細な加工変質層が十分に除去されずに残っていたため、前記加工変質層に起因した異常析出が起こり、銅めっき性が低下した。
2 塑性変形層
Claims (14)
- 表層の加工変質層の厚さが0.2μm以下であることを特徴とする電子機器用銅合金。
- 前記銅合金上にめっきが施されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用銅合金。
- 前記銅合金上に銀めっきまたは銅めっきが施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器用銅合金。
- Crを0.05〜0.5質量%、Snを0.05〜2.0質量%、及びZnを0.05〜1.0質量%含み、さらに必要に応じて、0.01〜0.5質量%のSi及び0.01〜0.5質量%のZrのうち1種または2種を合計で0.01〜0.5質量%含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金。
- Niを2.0〜4.0質量%、Siを0.4〜0.8質量%含み、さらに必要に応じて、0.05〜0.15質量%のMg、0.005〜0.1質量%のAg、0.005〜0.1質量%のMn、0.05〜2.0質量%のSn及び0.05〜1.0質量%のZnのうち1種または2種以上を合計で0.005〜2.0質量%含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金を用いたことを特徴とするリードフレーム。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金を用いたことを特徴とする端子。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金を用いたことを特徴とするコネクタ。
- 加工変質層の厚さが0.2μm以下になるように、表層の加工変質層を除去することを特徴とする電子機器用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層の除去を化学的な溶解処理により行うことを特徴とする請求項9に記載の電子機器用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層の除去を電気化学的な溶解処理により行うことを特徴とする請求項9に記載の電子機器用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層の除去を熱処理により行うことを特徴とする請求項9に記載の電子機器用銅合金の製造方法。
- 前記電子機器用銅合金が、Crを0.05〜0.5質量%、Snを0.05〜2.0質量%、Znを0.05〜1.0質量%含み、さらに必要に応じて0.01〜0.5質量%のSi、0.01〜0.5質量%のZrのうち1種または2種を合計で0.01〜0.5質量%含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる、請求項9〜12のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金の製造方法。
- 前記電子機器用銅合金が、Niを2.0〜4.0質量%、Siを0.4〜0.8質量%含み、さらに必要に応じて、0.05〜0.15質量%のMg、0.005〜0.1質量%のAg、0.005〜0.1質量%のMn、0.05〜2.0質量%のSn、0.05〜1.0質量%のZnのうち1種または2種以上を合計で0.005〜2.0質量%含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる、請求項9〜12のいずれか1項に記載の電子機器用銅合金の製造方法。
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