JP6302009B2 - 銅合金圧延材及びその製造方法並びに電気電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、銅合金圧延材及びその製造方法並びに電気電子部品に関する。
電気電子部品用材料として、電気伝導性及び熱伝導性に優れた銅合金材料が広く使用されている。近年、電気電子機器の小型化、軽量化、さらにこれに伴う高密度実装化の要求が高まり、これらに使用される銅合金材料にも種々の特性が求められており、めっき性や半田濡れ性などの表面特性も求められている。
ニッケルとケイ素を含有する銅合金であり、ニッケルとケイ素から構成されるNi−Si金属間化合物を熱処理により析出させて強化したコルソン合金と呼ばれるCu−Ni−Si系合金は、多くの析出型合金の中でもその強化する能力が非常に高い合金である。
Cu−Ni−Si系合金の製造時には、熱処理や溶体化処理によって酸化ケイ素化合物が表面近傍に生じるが、酸化ケイ素化合物が最終製品まで残存すると、めっき性や半田濡れ性が著しく劣化することとなる。そのため、表面近傍の酸化ケイ素化合物を除去する酸洗処理が施される。ところが、迅速且つ十分に酸化ケイ素化合物を除去するために、酸洗処理後にブラシやバフでCu−Ni−Si系合金の表面を研磨するため、表面に凹凸が生じ、粗度の大きい(粗い)表面となってしまう。表面の凹凸が大きいと、めっきを施した際にめっきに欠陥が発生し、めっきの外観、密着性、耐食性が劣化するおそれがある。
このような問題は、Cu−Ni−Si系合金、Cu−Co−Si系合金等のコルソン合金のみならず、クロム、ジルコニウム、チタン等の易酸化元素を含有する析出型合金であるCu−Cr系合金(クロム銅)、Cu−Zr系合金(ジルコニウム銅)、Cu−Ti系合金(チタン銅)等の合金も同様に有している。
電気電子部品用の銅合金材料には、その表面にしばしばめっきが施される。めっきを施すことにより、半田濡れ性、外観、電気接点の電気接続性、摺動性等を改善することができる。また、電気電子部品の加工時、実装時、使用時における酸化や腐食を抑制することができる。
近年、電気電子部品の加工、実装における熱負荷の増大や、使用環境温度の高温化が進み、電気電子部品に用いられる銅合金材料にかかる熱負荷も大きくなっており、銅合金材料の表面の酸化や腐食の度合いも大きくなっている。そのため、銅合金材料の表面に施されるめっきの欠陥をこれまで以上に減らし、それに伴うめっきの剥離や基材の酸化、腐食を抑制することが求められる。
コルソン合金や、クロム銅、ジルコニウム銅、チタン銅といった易酸化元素を含有する析出型銅合金は、前述の理由からめっき性が低下しやすく、めっきの欠陥の発生や、それに伴うめっきの剥離や基材の酸化、腐食が発生しやすい。これを防止するため、めっきを厚く付着させるという手法も取られるが、材料コストの増加、資源の浪費、曲げ加工性の低下等の様々な弊害が生じるおそれがある。
特許文献1に開示の技術は、圧延方向に直交する方向の表面粗さRa、Ry、表面粗さの凹凸成分を表す度数分布曲線におけるピーク位置を制御することで、Cu−Ni−Si系合金のめっき性を改善している。しかしながら、前述のような事情により、さらなるめっき性の向上が望まれている。
国際公開第2009/044822号
本発明は、めっき性に優れる銅合金圧延材及びその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、酸化や腐食が生じにくい電気電子部品を提供することを併せて課題とする。
本発明の一態様に係る銅合金圧延材は、圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpが1.2以上2.5以下であり、圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下であることを要旨とする。
また、本発明の他の態様に係る銅合金圧延材の製造方法は、銅合金で構成された素材を圧延して銅合金圧延材を製造する方法であって、得られる銅合金圧延材の表面が下記の4つの条件A、B、C、Dを全て満たすように、加工率20%以上で仕上げ圧延を行う仕上げ圧延工程を備えることを要旨とする。
(条件A)圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下である。
(条件B)圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpが1.2以上2.5以下である。
(条件C)圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下である。
(条件D)圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下である。
さらに、本発明の他の態様に係る電気電子部品は、上記一態様に係る銅合金圧延材を備えることを要旨とする。
本発明に係る銅合金圧延材はめっき性が優れている。また、本発明に係る銅合金圧延材の製造方法によれば、めっき性が優れた銅合金圧延材を製造することができる。さらに、本発明に係る電気電子部品は、酸化や腐食が生じにくい。
製造過程の銅合金圧延材の表面を拡大して示した図である。
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
本実施形態の銅合金圧延材は、銅合金で構成された素材を圧延して成形された例えば板状の銅合金材料であり、その表面は下記の4つの条件A、B、C、Dを全て満たしている。
(条件A)圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下である。
(条件B)圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpが1.2以上2.5以下である。
(条件C)圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下である。
(条件D)圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下である。
なお、最大高さRz、最大山高さRp、最大谷深さRv、及び粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS B0601(2001)で規定されたものである。
このような本実施形態の銅合金圧延材は、上記のように表面粗さが制御された表面を有しているので、めっき性が優れている。よって、本実施形態の銅合金圧延材は、例えばリードフレーム、リレー、スイッチ、コネクタ、端子等の電気電子部品に好適に使用可能である。本実施形態の銅合金圧延材を備える電気電子部品は、使用されている銅合金圧延材のめっき性が優れているので、加工時、実装時、使用時等においてめっきの剥離が生じにくく、したがって基材(銅合金圧延材)の酸化、腐食が生じにくい。
ここで、本実施形態の銅合金圧延材の製造方法の一例について説明する。まず、溶解鋳造により、所望の合金組成を有する銅合金の鋳塊を作製する(溶解鋳造工程)。次に、得られた銅合金の鋳塊に均質化熱処理を施した後に(均質化熱処理工程)、熱間圧延を施して板状に成形する(熱間圧延工程)。得られた板状物の表面には、均質化熱処理工程から熱間圧延工程までで生じた厚い表面酸化膜が付着しているので、この表面酸化膜を切削加工により除去する(面削工程)。
そして、表面酸化膜を除去した板状物に冷間圧延を施して所望の板厚に加工した後に(冷間圧延工程)、時効熱処理を施して銅合金の母相中に微細な析出物を析出させる(時効熱処理工程)。冷間圧延工程の前、途中、又は後に、必要に応じて溶体化再結晶熱処理を実施してもよい(溶体化再結晶熱処理工程)。得られた板状物の表面には、時効熱処理や溶体化再結晶熱処理によって表面酸化膜が付着しているので、この表面酸化膜を除去する酸洗処理及び表面研磨が施される(酸洗工程)。この酸洗工程は、板状物の表面を酸で洗浄した後に(酸洗処理)、バフやブラシなどを用いて板状物の表面を研磨して(表面研磨)、表面酸化膜を除去する工程である。
次に、酸洗処理及び表面研磨により表面酸化膜を除去した板状物に仕上げ圧延を施すことにより、所望の板厚に加工するとともに、表面の性状(表面粗さ)が上記の4つの条件A、B、C、Dを全て満たすように加工して(仕上げ圧延工程)、本実施形態の銅合金圧延材を得る。仕上げ圧延工程の後には、歪みを除去するために焼鈍しを施してもよい(歪取り焼鈍工程)。
次に、上記した各工程について、さらに詳細に説明する。
溶解鋳造工程の内容は特に限定されるものではなく、一般的な方法を採用することができる。
均質化熱処理工程は、鋳造で生じた粗大な第2相を銅合金の母相中に固溶させるために実施するものである。粗大な第2相とは、銅合金の合金成分(添加元素)又は金属間化合物からなる晶出物や粗大析出物である。銅合金の母相中の粗大な第2相が減少することにより、良好なめっき性や半田濡れ性が得られやすくなる。また、合金成分の母相中への固溶量を増加させることにより、後の時効熱処理工程において微細な析出物の析出量が増加し、強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性等の材料特性が得られやすくなる。
均質化熱処理の条件は適宜設定すればよいが、例えば、850℃以上1050℃以下の温度で0.5時間以上10時間以下加熱すればよい。このような条件であれば、粗大な第2相が銅合金の母相中へ十分に固溶するため、良好なめっき性や半田濡れ性が得られやすいことに加えて、強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性等の材料特性が得られやすい。なお、温度が高すぎると鋳塊が溶解するおそれがあり、また、処理時間を長くしても均質化熱処理の効果がそれ以上が向上しない場合があるので、これらの点を考慮して均質化熱処理の条件を設定するとよい。
熱間圧延工程は、銅合金の鋳塊を圧延して板状に成形し、所定の板厚まで薄くする工程である。熱間圧延の条件は適宜設定すればよいが、例えば600℃以上1000℃以下の温度で実施すればよい。熱間圧延後は、得られた板状物を水冷等により急冷する。板状物の冷却が遅れると、冷却中に銅合金の母相中に粗大析出物が形成され、めっき性や半田濡れ性が低下するおそれがあるだけでなく、強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性等の材料特性が得にくくなる。
面削工程の条件は適宜設定すればよい。面削工程において厚い表面酸化膜を除去しきれない場合には、めっき性や半田濡れ性の低下につながるおそれがある。
冷間圧延工程は、表面酸化膜を除去した板状物を圧延して、所定の板厚まで薄くする工程である。冷間圧延の条件は適宜設定すればよい。時効熱処理工程の前に冷間圧延工程を実施することにより、時効熱処理時に析出物の析出量が増えるとともに、銅合金の母相中で析出物が均一に析出しやすくなる。その結果、強度、導電率、曲げ加工性、耐応力緩和特性等の材料特性が得られやすくなる。
時効熱処理工程は、熱処理により銅合金の母相中に微細な析出物を析出させる工程である。熱処理の条件は適宜設定すればよいが、例えば、400℃以上600℃以下の温度で、0.5時間以上5時間以下実施することが好ましい。このような条件であれば、微細な析出物の析出量が十分となるとともに、析出物の粗大化や銅合金の母相中への固溶が起こりにくいため、強度、導電率、曲げ加工性、耐応力緩和特性等の材料特性が得られやすい。また、表面に形成される表面酸化膜が少なくなるため、後の酸洗工程において表面酸化膜を十分に除去することができ、良好なめっき性や半田濡れ性が得られやすい。
溶体化再結晶熱処理工程は、冷間圧延工程の前、途中、又は後に任意に実施してもよい工程である。溶体化再結晶熱処理により、熱間圧延後の冷却中に銅合金の母相中に形成された粗大析出物を、銅合金の母相中に固溶させ且つ銅合金の母相を再結晶組織とすることができる。これにより銅合金の母相中の粗大析出物が減少するので、良好なめっき性や半田濡れ性が得られやすい。また、後の時効熱処理による微細な析出物の析出量が増加するため、強度、導電率、曲げ加工性、耐応力緩和特性等の材料特性が得られやすくなる。さらに、銅合金の母相を再結晶組織とすることにより、曲げ加工性が得られやすくなり、銅合金圧延材の製造時に圧延等の加工がしやくなる。
溶体化再結晶熱処理の条件は適宜設定すればよいが、例えば、700℃以上1000℃以下の温度で、1秒以上60秒以下実施することが好ましい。このような条件であれば、粗大析出物が銅合金の母相中へ十分に固溶するとともに、再結晶が十分に進行する。また、表面に形成される表面酸化膜が少なくなるため、後の酸洗工程において表面酸化膜を十分に除去することができ、良好なめっき性や半田濡れ性が得られやすい。さらに、結晶粒が粗大化しにくいので、強度、曲げ加工性等の材料特性が得られやすく、銅合金圧延材の製造時に形状の維持が容易となる。
酸洗工程は、時効熱処理や溶体化再結晶熱処理で形成された表面酸化膜を除去するために実施する工程であり、板状物の表面を酸性の酸洗液(例えば塩酸、硫酸、硝酸)で洗浄した後に(酸洗処理)、バフやブラシなどを用いて板状物の表面を研磨して(表面研磨)、表面酸化膜を除去する工程である。表面酸化膜の除去が不十分であると、めっき性や半田濡れ性が低下するおそれがある。表面研磨を実施せずに酸洗処理のみで表面酸化膜を除去することも考えられるが、酸洗処理のみでは表面酸化膜の除去に時間を要するだけでなく、十分に除去できずに、めっき性や半田濡れ性が低下するおそれがある。
なお、酸洗工程の表面研磨においては、圧延方向に平行な方向に沿ってバフやブラシなどを相対移動させて板状物の表面を研磨するので、板状物の表面には、圧延方向に平行な方向に沿う筋状の凹凸がバフやブラシなどによって形成される。表面酸化膜を十分に除去するために表面研磨を行うと、この筋状の凹凸は大きく形成されやすい。また、バフやブラシなどによって形成される筋状の凹凸は、単純な形状の凹凸ではなく、図1に示すような「かえり」を有している。この「かえり」が存在すると、酸洗処理に使用した酸洗液や圧延に使用した圧延油等が表面に残存しやすい。板状物の表面に大きな凹凸が形成されていたり、酸洗液や圧延油等の残渣が存在すると、めっき性が低下するため、酸洗工程の後に凹凸を軽減する処理が必要である。
このような凹凸軽減処理としては、圧延処理や酸溶解処理が一般的だが、通常の圧延処理では圧延で発生するオイルピットによってめっき性が低下するおそれがあり、酸溶解処理では酸溶解により発生するスマット等の酸化物粒子がめっき性を低下させるおそれがある。そこで、本実施形態においては、適切な圧延条件で圧延を行う仕上げ圧延工程において凹凸軽減処理を行う。すなわち、オイルピットの発生を抑制しつつ仕上げ圧延を行って、筋状の凹凸や「かえり」を押し潰して軽減して表面の性状(表面粗さ)を制御し、めっき性を良好にする。
オイルピットの発生を抑制しつつ筋状の凹凸や「かえり」を軽減するためには、仕上げ圧延の条件を適切に設定する必要がある。例えば、仕上げ圧延の加工率を20%以上とすることが好ましく、30%以上80%以下とすることがより好ましく、40%以上60%以下とすることがさらに好ましい。加工率が上記の範囲内であれば、酸洗工程で生じた筋状の凹凸や「かえり」が仕上げ圧延によって十分に軽減され、表面の性状(表面粗さ)が上記の4つの条件A、B、C、Dを全て満たす銅合金圧延材が得られる。加工率を大きくするほど、酸洗工程で生じた筋状の凹凸や「かえり」は軽減されやすくなるが、曲げ加工性の低下などが起こりやすくなる。
なお、仕上げ圧延に用いる圧延ロールの表面粗さRa(JIS B0601(2001)で規定されたもの)は、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。圧延ロールの表面粗さRaが0.01μmより小さいと、圧延ロールの表面の凹凸に捕捉される圧延油の量が少なくなり、仕上げ圧延工程においてオイルピットが形成されやすくなる。一方、圧延ロールの表面粗さRaが1μmよりも大きいと、板状物に圧延ロールの表面の凹凸が転写されやすく、凹凸の大きい表面を有する銅合金圧延材が得られやすくなる。
また、仕上げ圧延に用いる圧延ロールの直径は、30mm以上300mm以下としてもよい。圧延ロールの直径が30mmよりも小さいと、1パス当りの加工率が小さくなり、仕上げ圧延に要する時間が長くなるため、銅合金圧延材の生産性が低下する。一方、圧延ロールの直径が300mmよりも大きいと、仕上げ圧延時に巻き込まれる圧延油が多くなり、オイルピットが深くなりやすい。
次に、上記の4つの条件A、B、C、Dについて説明する。
銅合金圧延材の表面の圧延方向に直交する方向の最大高さRzは、0.1μm以上3μm以下とする。圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm未満であると、酸洗工程で生じた筋状の凹凸や「かえり」は軽減されているものの、発生したオイルピットが多いおそれがある。一方、圧延方向に直交する方向の最大高さRzが3μm超過であると、酸洗工程で生じた筋状の凹凸や「かえり」の軽減が不十分であり、めっき性が低くなるおそれがある。
銅合金圧延材の表面の圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpは、筋状の凹凸や「かえり」の軽減の程度の指標となる数値である。圧延方向に直交する方向のRv/Rpが1.2以上2.5以下であれば、筋状の凹凸や「かえり」は軽減されており、めっき性が優れている。圧延方向に直交する方向のRv/Rpが1.2未満であると、筋状の凹凸や「かえり」の軽減が不十分で、めっき性が低い場合がある。一方、圧延方向に直交する方向のRv/Rpが2.5超過であると、筋状の凹凸や「かえり」は軽減されているものの、発生したオイルピットが多いおそれがある。
銅合金圧延材の表面の圧延方向に平行な方向の最大高さRzは、0.1μm以上3μm以下とする。圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm未満であると、オイルピットの発生量は少ないものの、酸洗工程で生じた筋状の凹凸や「かえり」の軽減が不十分であるおそれがある。一方、圧延方向に平行な方向の最大高さRzが3μm超過であると、仕上げ圧延で発生したオイルピットが深く、めっき性が低くなるおそれがある。
銅合金圧延材の表面の圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmは、オイルピットの発生量の指標となる数値である。圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下であれば、オイルピットの発生量が少なく、めっき性が優れている。圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm未満であると、オイルピットの発生量が多く、めっき性が低くなるおそれがある。一方、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.08mm超過であると、オイルピットの発生量は少ないものの、酸洗工程で生じた筋状の凹凸や「かえり」の軽減が不十分であるおそれがある。
歪取り焼鈍工程は、仕上げ圧延工程の後に任意に実施してもよい工程である。歪取り焼鈍により、銅合金圧延材の曲げ加工性、ばね性、耐応力緩和特性等が向上する。歪取り焼鈍の条件は適宜設定すればよいが、例えば、バッチ熱処理式の焼鈍の場合であれば、250℃以上400℃以下の温度で0.5時間以上10時間以下実施すればよく、走間熱処理式の焼鈍の場合であれば、300℃以上600℃以下の温度で1秒以上60秒以下実施すればよい。歪取り焼鈍の条件が上記の範囲内であれば、強度の低下と表面に形成される酸化物の増加とを抑えつつ歪取り焼鈍を行うことができる。
次に、銅合金の合金組成について説明する。銅合金の種類は特に限定されるものではないが、使用可能な銅合金としては、例えば、ニッケル及びコバルトの少なくとも一方とケイ素とを含有する銅合金(Cu−Ni−Si系合金、Cu−Co−Si系合金など)や、クロム、ジルコニウム、及びチタンのうち少なくとも一つを含有する銅合金(Cu−Cr系合金(クロム銅)、Cu−Zr系合金(ジルコニウム銅)、Cu−Ti系合金(チタン銅)など)があげられる。
ニッケル及びコバルトの少なくとも一方とケイ素とを含有する銅合金としては、例えば、ニッケル1質量%以上5質量%以下及びコバルト0.5質量%以上2.5質量%以下の少なくとも一方と、ケイ素0.1質量%以上1.5質量%以下と、を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金があげられる。ここで、不可避的不純物とは、溶解鋳造時に原料や鋳造炉の炉壁等から意図せず混入する微量元素を意味する。
この銅合金は、他の合金成分を含有してもよく、例えばマグネシウム、錫、亜鉛、マンガン、及びクロムのうち少なくとも一つをさらに含有してもよい。このような銅合金としては、例えば、ニッケル1質量%以上5質量%以下及びコバルト0.5質量%以上2.5質量%以下の少なくとも一方と、ケイ素0.1質量%以上1.5質量%以下と、を含有するとともに、マグネシウム0質量%超過0.5質量%以下、錫0質量%超過1質量%以下、亜鉛0質量%超過1.5質量%以下、マンガン0質量%超過0.5質量%以下、及びクロム0質量%超過1質量%以下のうち少なくとも一つをさらに含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金があげられる。
また、クロム、ジルコニウム、及びチタンのうち少なくとも一つを含有する銅合金としては、例えば、クロム0.05質量%以上1質量%以下、ジルコニウム0.01質量%以上0.2質量%以下、及びチタン0.01質量%以上3.5質量%以下のうち少なくとも一つを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金があげられる。
この銅合金は、他の合金成分を含有してもよく、例えばケイ素、マグネシウム、錫、亜鉛、マンガン、鉄、銀、コバルト、及びニッケルのうち少なくとも一つをさらに含有してもよい。このような銅合金としては、例えば、クロム0.05質量%以上1質量%以下、ジルコニウム0.01質量%以上0.2質量%以下、及びチタン0.01質量%以上3.5質量%以下のうち少なくとも一つを含有するとともに、ケイ素0質量%超過0.1質量%以下、マグネシウム0質量%超過0.5質量%以下、錫0質量%超過1質量%以下、亜鉛0質量%超過1.5質量%以下、マンガン0質量%超過0.5質量%以下、鉄0質量%超過0.5質量%以下、銀0質量%超過1質量%以下、コバルト0質量%超過2質量%以下、及びニッケル0質量%超過1質量%以下のうち少なくとも一つをさらに含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金があげられる。
(1)ニッケル及びコバルトの少なくとも一方とケイ素とを含有する銅合金について
〔ニッケルについて〕
ニッケル(Ni)は、ケイ素とNi−Si系化合物を形成し、強度を向上させる元素である。ニッケルの含有量は1質量%以上5質量%以下が好ましく、1質量%以上であれば強度が十分に向上し、5質量%以下であれば導電率と製造性が良好である。
〔コバルトについて〕
コバルト(Co)は、ケイ素とCo−Si系化合物を形成し、強度を向上させる元素である。コバルトの含有量は0.5質量%以上2.5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上であれば強度が十分に向上し、2.5質量%以下であれば導電率と製造性が良好である。
〔ケイ素について〕
ケイ素(Si)は、ニッケル、コバルトや他の合金成分とSi系化合物を形成し、強度を向上させる元素である。ケイ素の含有量は0.1質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上であれば強度が十分に向上し、1.5質量%以下であれば導電率と製造性が良好である。また、熱処理による酸化物の形成が抑えられ、めっき性や半田濡れ性が良好となる。
〔マグネシウムについて〕
マグネシウム(Mg)は、強度、耐熱性、耐応力緩和特性の向上等に寄与する元素である。マグネシウムは添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過0.5質量%以下が好ましい。0.5質量%以下であれば導電率と製造性が良好である。また、熱処理による酸化物の形成が抑えられ、めっき性や半田濡れ性が良好となる。
〔錫について〕
錫(Sn)は、強度、耐熱性、耐応力緩和特性の向上等に寄与する元素である。錫は添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過1質量%以下が好ましい。1質量%以下であれば導電率と製造性が良好である。
〔亜鉛について〕
亜鉛(Zn)は、強度、半田濡れ性の向上等に寄与する元素である。亜鉛は添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過1.5質量%以下が好ましい。1.5質量%以下であれば導電率が良好である。
〔マンガンについて〕
マンガン(Mn)は、熱間加工性の向上等に寄与する元素である。マンガンは添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過0.5質量%以下が好ましい。0.5質量%以下であれば導電率が良好である。
〔クロムについて〕
クロム(Cr)は、強度、耐熱性、耐応力緩和特性の向上等に寄与する元素である。クロムは添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過1.5質量%以下が好ましい。1.5質量%以下であれば、熱処理による酸化物の形成が抑えられ、めっき性や半田濡れ性が良好となる。また、製造性が良好である。
(2)クロム、ジルコニウム、及びチタンのうち少なくとも一つを含有する銅合金について
〔クロムについて〕
クロムは、高導電率を維持したまま強度、耐熱性、耐応力緩和特性の向上等に寄与する元素である。クロムの含有量は0.05質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1.5質量%以下であれば、熱処理による酸化物の形成が抑えられ、めっき性や半田濡れ性が良好となる。また、製造性が良好である。
〔ジルコニウムについて〕
ジルコニウム(Zr)は、高導電率を維持したまま強度、耐熱性、耐応力緩和特性の向上等に寄与する元素である。ジルコニウムの含有量は0.01質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.2質量%以下であれば、熱処理による酸化物の形成が抑えられ、めっき性や半田濡れ性が良好となる。また、製造性が良好である。
〔チタンについて〕
チタン(Ti)は、強度、耐熱性、耐応力緩和特性の向上等に寄与する元素である。チタンの含有量は0.01質量%以上3.5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上3.5質量%以下であれば、熱処理による酸化物の形成が抑えられ、めっき性や半田濡れ性が良好となる。また、製造性が良好である。
〔ケイ素について〕
ケイ素は、クロム、ジルコニウム、チタンや他の合金成分とSi系化合物を形成し、強度を向上させる元素である。ケイ素は添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過0.1質量%未満が好ましい。0.1質量%未満であれば強度が良好である。
〔マグネシウムについて〕
マグネシウムは、強度、耐熱性、耐応力緩和特性の向上等に寄与する元素である。マグネシウムは添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過0.5質量%以下が好ましい。0.5質量%以下であれば導電率と製造性が良好である。また、熱処理による酸化物の形成が抑えられ、めっき性や半田濡れ性が良好となる。
〔錫について〕
錫は、強度、耐熱性、耐応力緩和特性の向上等に寄与する元素である。錫は添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過1質量%以下が好ましい。1質量%以下であれば導電率と製造性が良好である。
〔亜鉛について〕
亜鉛は、強度、半田濡れ性の向上等に寄与する元素である。亜鉛は添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過1.5質量%以下が好ましい。1.5質量%以下であれば導電率が良好である。
〔マンガンについて〕
マンガンは、熱間加工性の向上等に寄与する元素である。マンガンは添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過0.5質量%以下が好ましい。0.5質量%以下であれば導電率が良好である。
〔鉄について〕
鉄(Fe)は、強度、耐熱性の向上等に寄与する元素である。鉄は添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過0.5質量%以下が好ましい。0.5質量%以下であれば導電率が良好である。
〔銀について〕
銀(Ag)は、強度、耐熱性の向上等に寄与する元素である。銀は添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過1質量%以下が好ましい。1質量%以下であれば導電率が良好である。
〔コバルトについて〕
コバルトは、強度を向上させる元素である。コバルトは添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過2質量%以下が好ましい。2質量%以下であれば導電率が良好である。
〔ニッケルについて〕
ニッケルは、強度の向上等に寄与する元素である。ニッケルは添加しなくてもよいが、添加する場合は0質量%超過1質量%以下が好ましい。1質量%以下であれば導電率が良好である。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
表1、2に示す合金組成を有する銅合金の鋳塊を作製し、上記実施形態の銅合金圧延材の製造方法と同様の方法によって銅合金圧延材を製造した。すなわち、鋳塊を850〜1050℃、0.5〜10時間の条件で均質化熱処理した後に、熱間圧延を施して板状に成形し、水冷した。その後、面削工程により板状物の表面酸化膜を除去して冷間圧延を施し、さらに700〜1000℃、1〜60秒間の条件で溶体化再結晶熱処理を施した。
続いて、さらに冷間圧延を施した後に、400〜600℃、0.5〜5時間の条件で時効熱処理を施した。時効熱処理の後に、酸洗処理とバフによる表面研磨とを施して板状物の表面酸化膜を除去した。そして、20〜80%の加工率で仕上げ圧延を施した。仕上げ圧延には、表面粗さRaが0.01〜1μmで、直径が30〜300mmの圧延ロールを使用した。仕上げ圧延が終了したら、300〜600℃、1〜60秒間の条件で歪取り焼鈍を施して、銅合金圧延材を得た。
このようにして得られた実施例1〜42及び比較例1〜14の銅合金圧延材の評価を行った。評価項目は表面粗さ及びめっき性である。各評価方法について以下に説明する。
(表面粗さの測定方法について)
JIS B0601(2001)に準拠して、銅合金圧延材の圧延方向に直交する方向の最大高さRz、最大山高さRp、及び最大谷深さRv、並びに、圧延方向に平行な方向の最大高さRz及び粗さ曲線要素の平均長さRSmを、株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定機サーフコーダSE3500を用いて測定した。測定条件は、測定距離4mm、カットオフ値0.8mm(JIS B0601(2001)に準拠)、走査速度0.1mm/s、プローブ径2μmとした。測定はそれぞれ3回行い、それらの平均値を算出してそれぞれの測定値とした。
(めっき性の評価方法について)
銅合金圧延材に厚さ0.5μmの銅ストライクめっき膜を成膜して、銅ストライクめっきのめっき性を評価した。また、銅合金圧延材に厚さ0.5μmの銅ストライクめっき膜を成膜した後に、銅ストライクめっき膜の上に厚さ1μmの銀めっき膜を成膜して、銀めっきのめっき性を評価した。
銅ストライクめっきにより、基材である銅合金圧延材と銀めっき膜との密着性が向上し、高温環境下においても銀めっき膜の剥離を抑制することができる。ただし、銅ストライクめっき膜は厚さが薄く、基材の表面が粗い場合や酸化物粒子が存在する場合には欠陥が発生しやすい。銅ストライクめっき膜に欠陥が発生すると、その上に付着された銀めっき膜に欠陥が少なかったとしても、高温環境下において銀めっき膜の剥離が発生する場合がある。そのため、近年の高温環境に耐えるためには、銅ストライクめっき膜の欠陥を無くし且つ銀めっき膜の欠陥を無くすことが重要である。
以下に、銅ストライクめっきと銀めっきの方法を説明する。まず、めっきを施す前に銅合金圧延材に前処理を施した。前処理の内容は、温度60℃、濃度10質量%の水酸化ナトリウム水溶液中で銅合金圧延材に対して電流密度2.5A/dmで30秒間カソード電解脱脂を行い、その後に濃度10質量%の硫酸水溶液中で30秒間酸洗処理を行うというものである。
次に、前処理を施した銅合金圧延材に対して、銅ストライクめっきのみ又は銅ストライクめっき及び銀めっきを施した。めっきは、銅合金圧延材の表面のうち縦30mm、横50mmの矩形の領域に対して施した。銅ストライクめっきは、シアン化銅(I)を65g/L、シアン化カリウムを85g/L、炭酸カリウムを7.5g/L含有するめっき液中において、温度45℃、電流密度1.5A/dmの条件で行った。銀めっきは、シアン化銀カリウムを55g/L、シアン化カリウムを75g/L、水酸化カリウムを10g/L、炭酸カリウムを25g/L含有するめっき液中において、室温、電流密度1.0A/dmの条件で行った。
めっき終了後、めっき膜の表面を光学顕微鏡で50倍に拡大して観察し、めっき膜の表面の不具合の有無を確認した。具体的には、めっき膜の表面から一辺10mmの正方形の領域を任意に3ヶ所選び(ただし、銅合金圧延材の周縁部から5mmの部分が含まれないように、前記領域を選ぶ)、直径5μm以上のめっきコブの個数とめっきが付いていない箇所(以下、これらを欠陥と言う)の個数を数え、前記領域3ヶ所で見つかった欠陥の個数を合計した。
そして、欠陥の合計個数が5個以下であった場合は、めっき性は特に良好と評価し、表1、2においては「○」印で示した。また、欠陥の合計個数が6個以上20個以下であった場合は、めっき性は良好と評価し、表1、2においては「△」印で示した。さらに、欠陥の合計個数が21個以上であった場合は、めっき性は不良と評価し、表1、2においては「×」印で示した。
表1は、銅合金圧延材が、ニッケル及びコバルトの少なくとも一方とケイ素とを含有する銅合金で構成されている場合の評価結果であり、表2は、銅合金圧延材が、クロム、ジルコニウム、及びチタンのうち少なくとも一つを含有する銅合金で構成されている場合の評価結果である。
実施例1〜18及び実施例19〜42は、銅合金圧延材の表面の性状が本発明の要件を満たしているため、めっき性が良好であった。特に、実施例1〜15及び実施例19〜38は、銅合金の合金組成の要件も満たしているため、表面の酸化物量が少なく、めっき性が特に良好であった。
これに対して、比較例1及び比較例8は、仕上げ圧延に用いる圧延ロールの表面粗さRaが0.005μmと小さいため、オイルピットが多く発生した。そのため、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが小、Rv/Rpが大となり、めっき性が不良となった。
比較例2及び比較例9は、仕上げ圧延に用いる圧延ロールの表面粗さRaが2μmと大きいため、圧延ロールの表面の凹凸が銅合金圧延材に転写されて、銅合金圧延材の表面が粗くなった。そのため、圧延方向に直交する方向の最大高さRzが大となり、めっき性が不良となった。
比較例3及び比較例10は、仕上げ圧延に用いる圧延ロールの直径が400mmと大きいため、オイルピットが多く発生し、また深さが大きかった。そのため、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが小、圧延方向に平行な方向の最大高さRzが大となり、めっき性が不良となった。
比較例4及び比較例11は、仕上げ圧延の加工率が15%と小さいため、酸洗工程で生じた筋状の凹凸や「かえり」の軽減が不十分であった。そのため、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが大、圧延方向に直交する方向の最大高さRzが大、Rv/Rpが小となり、めっき性が不良となった。
比較例5及び比較例12は、仕上げ圧延及び歪取り焼鈍を行わなかったため、酸洗工程で生じた筋状の凹凸や「かえり」により、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが大、圧延方向に直交する方向の最大高さRzが大、Rv/Rpが小となり、めっき性が不良となった。
比較例6及び比較例13は、歪取り焼鈍工程の後に凹凸軽減処理として酸溶解処理を実施したため、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが大、Rv/Rpが小となるとともに、スマットが発生し、銅ストライクめっきのめっき性が不良となった。
比較例7及び比較例14は、特許文献1に開示の技術と同様のものであり、時効熱処理後の酸洗工程において硫酸水溶液を用いた酸洗処理のみを実施し表面研磨は実施しないというものである。また、加工率20%の仕上げ圧延と、400℃で15秒間という条件の歪取り焼鈍を実施したものである。そのため、Rv/Rpが小となり、また、表面の酸化物が十分に除去されず、銅ストライクめっきのめっき性が不良となった。

Claims (6)

  1. ニッケル1質量%以上5質量%以下及びコバルト0.5質量%以上2.5質量%以下の少なくとも一方と、ケイ素0.1質量%以上1.5質量%以下と、を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で構成され
    圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpが1.2以上2.5以下であり、圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下である銅合金圧延材。
  2. ニッケル1質量%以上5質量%以下及びコバルト0.5質量%以上2.5質量%以下の少なくとも一方と、ケイ素0.1質量%以上1.5質量%以下と、を含有するとともに、マグネシウム0質量%超過0.5質量%以下、錫0質量%超過1質量%以下、亜鉛0質量%超過1.5質量%以下、マンガン0質量%超過0.5質量%以下、及びクロム0質量%超過1.5質量%以下のうち少なくとも一つをさらに含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で構成され
    圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpが1.2以上2.5以下であり、圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下である銅合金圧延材。
  3. クロム0.05質量%以上1.5質量%以下、ジルコニウム0.01質量%以上0.2質量%以下、及びチタン0.01質量%以上3.5質量%以下のうち少なくとも一つを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で構成され
    圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpが1.2以上2.5以下であり、圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下である銅合金圧延材。
  4. クロム0.05質量%以上1.5質量%以下、ジルコニウム0.01質量%以上0.2質量%以下、及びチタン0.01質量%以上3.5質量%以下のうち少なくとも一つを含有するとともに、ケイ素0質量%超過0.1質量%未満、マグネシウム0質量%超過0.5質量%以下、錫0質量%超過1質量%以下、亜鉛0質量%超過1.5質量%以下、マンガン0質量%超過0.5質量%以下、鉄0質量%超過0.5質量%以下、銀0質量%超過1質量%以下、コバルト0質量%超過2質量%以下、及びニッケル0質量%超過1質量%以下のうち少なくとも一つをさらに含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で構成され
    圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpが1.2以上2.5以下であり、圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下であり、圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下である銅合金圧延材。
  5. 銅合金で構成された素材を圧延して請求項1〜4のいずれか一項に記載の銅合金圧延材を製造する方法であって、得られる銅合金圧延材の表面が下記の4つの条件A、B、C、Dを全て満たすように、加工率20%以上で仕上げ圧延を行う仕上げ圧延工程を備える銅合金圧延材の製造方法。
    (条件A)圧延方向に直交する方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下である。
    (条件B)圧延方向に直交する方向の最大山高さRpに対する最大谷深さRvの比率Rv/Rpが1.2以上2.5以下である。
    (条件C)圧延方向に平行な方向の最大高さRzが0.1μm以上3μm以下である。
    (条件D)圧延方向に平行な方向の粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.02mm以上0.08mm以下である。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の銅合金圧延材を備える電気電子部品。
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