JP2008223106A - ベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半導体素子のワイヤボンディングの温度範囲における酸化物の生成自由エネルギーがCu元素より低い元素群を総質量で0.1mass%を超えて1mass%未満含む銅合金であって、前記銅合金の表層にある加工変質層の厚みが0.2μm以下であるベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
【選択図】なし
Description
ところが、めっき作業はリードフレームの微小箇所への作業となるため、非常に高い精度を必要とし、めっきの良否がダイボンディング及びワイヤボンディングに大きな影響を与えている。場合によっては半導体素子の不良率を高めてしまう原因ともなっている。
このような現状に対し、リードフレームへのめっきを省略し、リードフレームとボンディングワイヤとを直接接合する方法、即ちベアボンディングについて多くの提案がなされている(特許文献1乃至特許文献4を参照)。
本発明は、前記問題点を解決し、リードフレームのインナーリード部にめっきを施すことなくボンディングワイヤを直接接合するベアボンディング性に優れた銅合金を提供すると共に、このようなベアボンディング性に優れる銅合金の製造方法を提供することを目的としている。
「塑性変形層」は、結晶粒が微細結晶層より粗大であり、表層から離れる従い、銅合金内部の結晶粒の大きさに近づく結晶集合組織である。
前記塑性変形層および銅合金内部の結晶粒の大きさは、銅合金の組成、製造条件などにより様々に変化するために一概には限定されないが、例えば、塑性変形層の結晶粒の大きさは0.2〜3.0μm程度、銅合金内部の結晶粒の大きさは3.0μm〜10μm程度であり、前記加工変質層とは容易に識別することができる。
そのため、加工変質層の厚みは0.2μm以下が望ましく、0.05μm以下とすることがより好ましい。0.2μmを超えて加工変質層が厚くなるとワイヤボンディングの接続信頼性が低下してしまう。
一方、これらの元素の多くは銅合金の強度を向上する目的で含有されることが多く、含有量が極端に少ないと材料強度の低下を招き、リードフレーム用銅合金として不適になってしまうことから、前記元素の総質量は、0.1mass%を超えて含むことが好ましい。
これらの条件を満たす銅合金としては、Cu−Sn系、Cu−Cr−Sn系、Cu−Zr系、Cu−Cr−Zr系、Cu−Fe−P系などがある。
Crは銅中に析出することにより導電性を損なわずに強度を大きく高める働きをするもので、0.1mass%より少ないとその効果が小さく、0.4mass%を超えるとその効果が飽和すると共に酸化物が生成しやすくなりベアボンディング性に悪影響を及ぼすことから0.1mass%から0.4mass%としている。
Sn及びZnは銅に固溶する元素で、固溶硬化及び冷間加工により強度を高める働きをするが、0.4mass%を超えては導電性の著しい低下を招き、0.1mass%未満ではその効果が小さいことからSn、Zn共に0.1mass%から0.4mass%としている。
Siは、CrとCr−Si析出物を形成し、CrとCr−Siの複合析出により銅合金の強度を高める働きをする。0.01mass%未満ではその効果が見られず、0.3mass%を超えての含有では導電性を損なう。
Zrは、銅中に析出してその強度を高める働きをするもので、0.01mass%未満ではその効果が見られず、0.3mass%を超えるとその効果が飽和すると共に鋳造性を損なう。
Snが0.1mass%未満ではSn含有による強度向上の効果が少なく、0.8mass%を超える含有では、導電性が大きく低下するためである。
PはCu−Sn合金に含まれると、その強度を大きく向上させる働きを示すが、0.001mass%未満ではその効果がなく、0.1mass%を超えては鋳造性や熱間加工性などの製造性を大きく損なうものである。
更に必要に応じて、ZnをSn、P、Znの総量が1.0mass%を超えない範囲で含有しても良い。Znは、固溶硬化及び冷間加工により強度を高めると共に、Snを含む半田との接合性を良好にする働きを示す。
PはFeと析出物を形成し、強度を高める働きをするもので、0.001mass%未満ではその効果がなく、0.1mass%を超えては製造性を低下させてしまう。
更に必要に応じて0.1mass%から0.4mass%のZn、0.05mass%から0.4mass%のSnの一方若しくは両者を含有しても良い。Zn、Sn共に固溶してその強度を大きく向上させる働きを示し、ZnはSnを含む半田との接合性を良好にする働きを示す。
Crは、銅中に析出することにより導電性を損なわずに強度を大きく高める働きをするもので、0.1mass%より少ないとその効果が小さく、0.4mass%を超えるとその効果が飽和すると共に酸化物が生成しやすくなりベアボンディング性に悪影響を及ぼすことから0.1mass%から0.4mass%としている。
Zrも、Crと同様に銅中に析出することにより導電性を損なわずに強度を大きく高める働きをするもので、0.05mass%より少ないとその効果が小さく、0.4mass%を超えるとその効果が飽和すると共に、粗大晶出物の生成や酸化物が生成しやすくなりベアボンディング性に悪影響を及ぼすことから0.05mass%から0.4mass%としている。
これらのCu−Zr−Cr系合金は、更に必要に応じて、0.1mass%から0.4mass%のZnを含有する。Znの含有は、固溶硬化及び冷間加工により強度を高める働きをすると共に、Snを含む半田との接合性を良好にする。
更に必要に応じて、0.1mass%から0.4mass%のZnを含有する。Znの含有は、固溶硬化及び冷間加工により強度を高める働きをすると共に、Snを含む半田との接合性を良好にする。
しかしながら、板厚などの寸法精度を出すことが難しくなるため、仕上圧延の直前に加工変質層の制御、通常はその除去処理を行い、その後、できる限り加工変質層を形成しないように仕上圧延を行い所定の板厚にする方法が望ましい。
これらの方法の中で、前記スパッタリングなどの物理的処理の場合、適用できる寸法或いは処理時間の面で制約があるため、工業的な方法としては、化学的溶解処理、電気化学的溶解処理、及び熱処理による除去方法を採用するのが望ましい。
図1は、SIM観察による銅合金の断面写真である。図2は、加工変質層1及び塑性変形層2からなる銅合金の断面の模式説明図である。
図2から明らかなように、加工変質層1はベイルビー層1a(上層)と微細結晶層1b(下層)とからなり、ベイルビー層1aは非晶質組織であり、微細結晶層1bは極微細な結晶集合組織となっている。加工変質層1の更に下部に存在する塑性変形層2は結晶粒が微細結晶層より粗大であり、図1に示すように加工変質層1と塑性変形層2とは結晶組織が明瞭に異なるため、その境界部(破線部)は明瞭であり、両者は容易に識別することができる。
表1に示す成分組成を含み、残部Cu及び不可避的不純物からなる銅合金を、鋳造、熱間及び冷間による粗圧延、時効焼鈍、バフ研磨、化学的溶解処理、仕上圧延、低温焼鈍の順で行い、厚み0.15mmの銅合金条を作製する。
前記化学的溶解処理は、硫酸を100g/l、過酸化水素を15g/l含む室温と同温度の水溶液中に時間を変えて浸漬することで行い、最終的な加工変質層の厚みが、0.05、0.2、0.3、0.5、1.0μmとなるよう調整している。
表面粗さは、万能表面粗さ測定器を用いて測定し、酸化皮膜の厚みは、0.1N−KCl溶液中におけるカソード電解の還元電気量から算出している。
特に加工変質層の厚みが0.05μm以下である場合には、ワイヤ破断率が99.9%以上となり、特に優れているのがわかる。一方、比較例20aから比較例25b、比較例26b、比較例26b及び比較例27bでは、加工変質層の厚みが0.2μmより厚いためにワイヤ破断率が97%未満となり接続信頼性に劣っているのがわかる。又、比較例26a、比較例27a及び比較例28aでは、250℃における酸化物の生成自由エネルギーがCuより低い元素の総質量が1.0mass%よりも多いため、加工変質層が存在しない場合においてもワイヤ破断率は81%未満であり大きく接続信頼性に劣っているのが見られる。
次に、前記加工変質層厚みの制御を電気化学的溶解で行った他は、実施例1と同様の方法により試料を作製し、同じ条件でベアボンディングを行い、プルテストによりワイヤ破断率を求め、その結果を表4に記す。
ここで用いた電気化学的溶解処理は、リン酸を700g/l含む水溶液中において室温で電流密度10A/dm2の条件でアノード電解し、通電時間を変えることで最終的な加工変質層の厚みが0、0.05、0.2、0.3、0.5、1.0μmとなるよう調整している。
作製した試料の表面最大高さ(Rmax)は0.6〜1.0μm、中心線表面平均粗さ(Ra)は0.07〜0.12μm、酸化皮膜厚さは1〜5nmである。
特に加工変質層の厚みが0.05μm以下である場合においては、ワイヤ破断率が99.9%以上となり、特に接続信頼性に優れているのがわかる。一方、加工変質層の厚みが0.2μmより厚い比較例30aから比較例34b、比較例35b、比較例36b及び比較例37bでは、ワイヤ破断率が96%未満となり接続信頼性に劣っているのが見て取れる。
又、比較例35a、比較例36a及び比較例37aでは、合金中の250℃における酸化物の生成自由エネルギーがCuより低い元素の総質量が1.0mass%よりも多いため、加工変質層が存在しない場合においてもワイヤ破断率は82%未満を示し、その接続信頼性が大きく劣っているのがわかる。
前記加工変質層厚みの制御を熱処理を用いて行った以外は、先の実施例1と同様の条件で試料を作製し、表2に示す条件でベアボンディングを行い、プルテストにおけるワイヤ破断率を求め、その結果を表5に記す。
前記熱処理は、水素還元雰囲気の加熱炉において熱処理し、処理時間を変えることで最終的な加工変質層の厚みが、0、0.05、0.2、0.3、0.5、1.0μmとなるよう調整している。
作製した試料の表面最大高さ(Rmax)は0.6〜1.0μm、中心線表面平均粗さ(Ra)は0.07〜0.12μm、酸化皮膜厚みは1〜5nmである。
特に加工変質層の厚みが0.05μm以下の場合には、ワイヤ破断率が99.9%以上を示し、一段と優れる接続信頼性を示している。
一方、加工変質層の厚みが0.2μmより厚い比較例40aから比較例44b及び比較例45b、比較例46b、比較例47bにおいては、ワイヤ破断率が96%未満となり接続信頼性に劣っている。又、比較例45a、比較例46a及び比較例47aでは、合金中の250℃における酸化物の生成自由エネルギーがCuより低い元素の総質量が1.0mass%を超えているために、加工変質層が存在しない場合においても81%未満のワイヤ破断率を示し、接続信頼性が大きく劣っているのがわかる。
1a ベイルビー層
1b 微細結晶層
2 塑性変形層
Claims (19)
- 半導体素子のワイヤボンディングの温度範囲における酸化物の生成自由エネルギーがCu元素より低い元素群を総質量で0.1mass%を超えて1mass%未満含む銅合金であって、前記銅合金の表層にある加工変質層の厚みが0.2μm以下であるベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- 前記温度範囲が、150℃から300℃である請求項1記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- Crを0.1mass%から0.4mass%、Snを0.1mass%から0.4mass%、Znを0.1mass%から0.4mass%を含み、残部Cu及び不可避的不純物とからなる請求項1又は請求項2記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- Crを0.1mass%から0.4mass%、Snを0.1mass%から0.4mass%、Znを0.1mass%から0.4mass%含み、更に必要に応じて0.01mass%から0.3mass%のSi及び0.01mass%から0.3mass%のZrのうち1種又は2種を合計で0.05mass%から0.5mass%を含み、残部Cu及び不可避的不純物とからなる請求項1又は請求項2記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- Snを0.1mass%から0.8mass%含み、更に必要に応じて0.001mass%から0.1mass%のPを含み、残部Cu及び不可避的不純物とからなる請求項1又は請求項2記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- Feを0.03mass%から0.8mass%、Pを0.001mass%から0.1mass%含み、更に必要に応じて0.1mass%から0.4mass%のZnを含み、残部Cu及び不可避的不純物とからなる請求項1又は請求項2記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- Feを0.03mass%から0.8mass%、Snを0.05mass%から0.4mass%、Pを0.001mass%から0.1mass%含み、更に必要に応じて0.1mass%から0.4mass%のZnを含み、残部Cu及び不可避的不純物とからなる請求項1又は請求項2記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- Crを0.1mass%から0.4mass%、Zrを0.05mass%から0.4mass%含み、更に必要に応じて0.1mass%から0.4mass%のZnを含み、残部Cu及び不可避的不純物とからなる請求項1又は請求項2記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- Crを0.1mass%から0.4mass%、Zrを0.05mass%から0.4mass%、Siを0.01mass%から0.3mass%含み、更に必要に応じて0.1mass%から0.4mass%のZnを含み、残部Cu及び不可避的不純物とからなる請求項1又は請求項2記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- Zrを0.1mass%を超えて0.4mass%以下含み、更に必要に応じて0.1mass%から0.4mass%のZnを含み、残部Cu及び不可避的不純物とからなる請求項1又は請求項2記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金。
- 前記請求項1から請求項10記載のいずれか1項に記載のリードフレーム用銅合金からなる条材を成形して形成されるベアボンディング用リードフレーム。
- 加工変質層厚み制御により表層にある加工変質層の厚みを0.2μm以下とするベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金の製造方法。
- 加工変質層厚み制御により表層にある加工変質層の厚みを0.2μm以下とする請求項1乃至請求項10記載のいずれか1項に記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層厚み制御が少なくとも化学的溶解処理を含む方法である請求項12又は請求項13記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層厚み制御が少なくとも電気化学的溶解処理を含む方法である請求項12又は請求項13記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層厚み制御が少なくとも非酸化性雰囲気下での熱処理を含む方法である請求項12又は請求項13記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層厚み制御が化学的溶解処理の後に冷間加工を施す方法である請求項12又は請求項13記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層厚み制御が電気化学的溶解処理の後に冷間加工を施す方法である請求項12又は請求項13記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金の製造方法。
- 前記加工変質層厚み制御が非酸化性雰囲気下での熱処理の後に冷間加工を施す方法である請求項12又は請求項13記載のベアボンディング性に優れるリードフレーム用銅合金の製造方法。
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