JP2012153950A - 銅合金板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】銅合金板の酸化膜密着性を向上させる。
【解決手段】Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下でそれぞれ含有し、残部がCuと不可避不純物からなる圧延された銅合金板において、銅合金板の表面層の加工変質層の厚さが100nm以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、銅合金板およびその製造方法に関し、特に、電気・電子部品用銅合金板、例えばリードフレームに好適な銅合金板およびその製造方法に関する。
銅および銅合金は熱伝導性が非常に高いことからリードフレームやコネクタなどの電気・電子部品用材料として利用されている。近年、半導体装置のさらなる高集積化や小型化・薄型化に応じてリードフレームは薄肉化、狭ピン化、狭ピッチ化しており、リードフレーム材である銅合金には熱伝導性や高強度が要求されている。
リードフレーム材を用いて半導体パッケージを作製する一般的な工程は以下のようになる。まず、銅合金を所定の厚さに圧延したリードフレーム材に、スタンピング加工やエッチング処理を施して所定の形状に加工し、表面に各種メッキ処理を施す。さらに、パッケージ工程ではダイボンディングやワイヤボンディング、樹脂モールド、アウターリードへの半田外層メッキを実施する。
このように、リードフレーム材は、パッケージングされるまでに熱処理や表面処理など多くの処理を受けるため、導電性や強度などの一次特性だけでなく、スタンピング性、エッチング性、各種メッキ性、半田密着性、樹脂密着性、酸化膜密着性、ワイヤボンディング性などの二次特性も高く要求されることになる。現在、リードフレーム材としては、特性のバランス、コスト、入手性といった観点から、Cu−2.2wt%Fe−0.03wt%P−0.12wt%Znを標準化学組成とするCDA Alloy194やCu−0.1wt%Fe−0.03wt%Pを標準化学組成とするC19210といったCu−Fe−P系の銅合金が世界的に広く用いられている。
しかしながら、上記Cu−Fe−P系の銅合金をリードフレーム材として用いても、リードフレーム材とモールド樹脂との樹脂密着性に起因する界面剥離や、樹脂の吸湿した水分の界面への侵入によるチップの腐食または基板実装時の加熱の際の水分の膨れまでは十分に防止することは困難であった。
上記界面剥離や膨れなどはリードフレーム材である銅合金の樹脂密着性に起因しているが、この樹脂密着性には銅合金の酸化膜が大きな影響を及ぼしている。すなわち、銅合金は樹脂モールド工程に至るまでに様々な加熱工程を経ている。この加熱工程により、銅合金の表面には必然的に酸化膜が形成され、樹脂は酸化膜を介して銅合金と接着することになる。このため、酸化膜と銅合金との剥離が樹脂と銅合金との剥離へとつながり、銅合金の樹脂密着性を低下させることになる。したがって、銅合金の樹脂密着性は酸化膜密着性とほぼ同義であり、リードフレーム材に用いられる銅合金には、銅合金と酸化膜との密着性である酸化膜密着性が求められることになる。
酸化膜と銅合金との界面における剥離は、添加元素の濃化により引き起こされ、銅合金の組成によって酸化膜密着性が変化するといわれている。このことから、Cu−Fe−P系銅合金中の各組成を規定することによって、酸化膜密着性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、銅合金の組成が同じでもその表面状態により酸化膜密着性が変化することから、銅合金の表面粗さを規定することによって、酸化膜密着性を向上させることが提案され(例えば、特許文献2参照)、また、Cu−Fe−P系銅合金板の表面粗さ、中心線平均粗さや最大高さ、粗さ曲線などを規定することによって、酸化膜密着性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、
銅合金表層の結晶配向を制御することによって、酸化膜密着性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平2−122035号公報 特開平2−145734号公報 特許第4197718号公報 特開2001−244400号公報
しかしながら、上記特許文献1〜4では、リードフレーム材である銅合金と銅合金上の酸化膜との酸化膜密着性を十分に得ることができず、高温の加熱環境下における銅合金と酸化膜との界面剥離や膨れを防止することは困難であった。
本発明の目的は、酸化膜密着性に優れる銅合金板およびその製造方法を提供することにある。
本発明の一つの態様によれば、Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下でそれぞれ含有し、残部がCuと不可避不純物からなる圧延された銅合金板において、銅合金板の表面層の加工変質層の厚さが100nm以下である銅合金板が提供される。
上記銅合金板において、0.01質量%以上3.00質量%以下のZn、0.01質量%以上3.00質量%以下のSnの少なくとも一方を含むことが好ましい。
本発明の他の態様によれば、Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下でそれぞれ含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金の銅圧延材に対して仕上げ圧延する圧延工程を含む銅合金板の製造方法において、前記銅圧延材をバフ研磨するバフ研磨工程と、前記バフ研磨工程の後になされる、少なくとも50%以上の圧下率の圧延工程と、を有し、銅合金板の表面層における前記加工変質層の厚さを100nm以下にする銅合金板の製造方法が提供される。
上記銅合金板の製造方法において、前記バフ研磨工程の後に、前記銅圧延材を実体温度500℃以上、1分以上の焼鈍をする焼鈍工程をさらに設けることが好ましい。
本発明の別の態様によれば、Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下でそれぞれ含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金の銅圧延材を圧延して、仕上げ圧延された銅合金板を製造するに際して、前記銅圧延材の表面を研磨するバフ研磨工程を行わないことにより、銅合金板の表面における加工変質層の厚さを100nm以下にする銅合金板の製造方法が提供される。
本発明によれば、銅合金板の酸化膜密着性を向上することができる。
(a)は実施例1における断面BSE像、(b)は(a)の要部拡大図である。 (a)は実施例2における断面BSE像、(b)は(a)の要部拡大図である。 (a)は実施例3における断面BSE像、(b)は(a)の要部拡大図である。 (a)は比較例1における断面BSE像、(b)は(a)の要部拡大図である。 (a)は比較例2における断面BSE像、(b)は(a)の要部拡大図である。
上述したように、従来にあっては、銅合金板の酸化膜密着性を十分に得られなかったことから、本発明者らは銅合金板の酸化膜密着性に影響を及ぼす要因を鋭意研究した。その結果、本発明者らは、主にバフ研磨加工により生じる、銅合金板の表面の加工変質層が酸化膜密着性を低下させていること、および加工変質層の厚さによって銅合金板の酸化膜密着性が変化することを見出した。さらに、加工変質層の厚さを100nm以下にすると、酸化膜密着性を向上でき、そのためには、バフ研磨後に、高温焼鈍して加工変質層を再結晶させるか若しくは結晶性を回復させることにより加工変質層の厚さを低減すること、また少なくとも圧下率50%以上の圧延により加工変質層の厚さを薄くすることが有効であることを見出し、本発明を創作するに至った。
以下に、本発明の一実施形態に係る銅合金板およびその製造方法について説明する。
[銅合金板]
まず、本発明の一実施形態に係る銅合金板について説明する。なお、以下においてはリードフレーム用の銅合金板(銅合金条)として説明する。
[銅合金板の組成]
本実施形態における銅合金板は、リードフレーム材用などとして、一次特性だけでなく酸化膜密着性などの二次特性も必要である。このため、本実施形態における銅合金板はCu−Fe−P系銅合金板として、Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下、残部がCuと不可避不純物からなっている。そして、本発明においては、この基本組成に対して、Znを0.01質量%以上3.00質量%以下、Snを0.01質量%以上3.00質量%以下の少なくとも一方をさらに含むことが好ましい。
[Fe]
Feは、Fe単体若しくはFeとPの化合物を形成し、強度や耐熱性を向上させる。Fe含有量が少ないと銅合金中の析出量が不足し強度や耐熱性を十分に得られない。一方、Fe含有量が多いと導電率が低下するばかりかFeの粗大結晶の発生によりエッチング性やメッキ性が低下する。したがって、銅合金板中のFeの含有量は0.1質量%以上3.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上2.4質量%以下の範囲である。
[P]
Pは、脱酸剤として働く上に、Feと化合物を形成し強度を向上させる。Pの含有量が少ないと、Feとの化合物形成が妨げられ、十分な強度を得られない。Pの含有量が多いと、鋳造性や熱間加工性を低下させるとともに導電率も低下させる。したがって、Pの含有量は0.01質量%以上0.3質量%以下、好ましくは0.02質量%以上0.15質量%以下の範囲である。
[Zn]
本発明においては、Cu、Fe、P以外にZnをさらに含有させることが好ましい。Znは、脱酸剤として働く上に半田密着性や半田耐熱剥離性を向上させる。Znの含有量が少ないと十分な効果を得られず、Znの含有量が多いと導電率が低下する。したがって、Znの含有量は0.1質量%以上3.0質量%以下とすることが好ましい。
[Sn]
また、本発明においては、Cu、Fe、P以外にSnをさらに含有させることが好ましい。Snは銅合金中に固溶して強度と耐熱性を向上させる。しかも、Snは応力緩和特性を有するため、コネクタなどに用いられる場合に添加されることが好ましい。Snの含有量が少ないと十分な効果を得られず、Snの含有量が多いと導電率および鋳造性が低下する。したがって、Snの含有量は、0.1質量%以上3.0質量%以下とすることが好ましい。
[銅合金板の表面]
銅合金板の表面における断面構造は、一般的に表面側から加工変質層、加工組織層(塑性変形層)、再結晶組織層の順に積層された構造となっている。加工変質層は、銅合金板の最表面に存在する層であり、加工により材質的に変化して内部の加工組織層などとは異なった状態の表面層である。加工変質層には、結晶構造の破壊、乱れ、非晶質化などが起こっている。加工組織層(塑性変形層)は、加工変質層の下層にあり、冷間圧延などの塑性変形により結晶構造中に歪みの原因となる転位を含み、歪んだ結晶構造を有している。そして、加工組織層のアスペクト比は冷間圧延の圧下率に影響される。再結晶組織層は、加工組織層の下層にあり、高い温度で焼鈍されて再結晶することにより加工歪みがほとんどない結晶構造となっている。したがって、銅合金板の表層部は、内部ほど大きな結晶で結晶構造の歪みの原因である転位は少ないが、表面側に向かうに従い、微細な結晶となり、結晶構造の歪みも大きくなる。
[加工変質層]
加工変質層は銅合金板の最表面に位置するため、酸化により、まず加工変質層に酸化膜(CuOまたはCuO)が形成される。形成された酸化膜と銅合金との間には界面が形成され、加熱による剥離が生じる場合、この界面を境にして剥離する。
そして、本実施形態においては、加工変質層の厚さを100nm以下(加工変質層が実質的に存在しない場合も含む)としている。加工変質層が厚く、その厚さが100nmよりも大きくなると、銅合金板が半導体パッケージング工程などで加熱処理される加熱温度などによっても酸化膜の厚さ(通常100nmより大きい)は変わってくるが、酸化膜の界面は加工変質層中に位置する場合が多くなる。加工変質層は、結晶構造が破壊され、非晶質化されているため、構造の乱れが大きく脆い構造をしている。したがって、酸化膜の界面が加工変質層中にある場合、銅合金中の加工変質層と酸化膜との密着性は低く、界面において剥離が生じ易くなる。
一方、加工変質層の厚さを100nm以下にすると、通常100nmより大きな厚さを有する酸化膜の界面は、加工変質層よりも下層にある加工組織層中に位置することになる。加工組織層は、加工変質層と比較して脆くなく、安定した構造である。したがって、酸化膜の界面が加工変質層中にある場合に比べて、酸化膜密着性が高くなり、界面における剥離を抑制することができる。
このように、本発明においては、加工変質層の厚さを100nm以下として、銅合金板と酸化膜との界面を、加工変質層と比較して安定した結晶構造の中に配置することができるので、酸化膜密着性の低下を抑制することができる。
[銅合金板の製造方法]
本発明の一実施形態に係る銅合金板の製造方法について説明する。
[銅圧延材の形成工程]
まず、所定の質量%のCu、Fe、Pを溶解・調整した鋳塊を900℃以上の温度により均質化処理して、所定の組成のCu−Fe−P系の銅母材を形成する。この銅母材を熱間圧延することにより、銅母材の展延性を向上させ所定の厚さの銅圧延材を形成する。そして、銅圧延材の表面に生じた酸化スケールを面削することにより除去する。その後、銅圧延材を時効処理することにより、溶融したFeやFeとPとの化合物を析出させ、強度を増加させる。さらに、酸洗し、冷間圧延することにより、銅圧延材を所定の厚さまで圧延するとともに、銅圧延材に加工硬化を施し、さらに強度を増加させる。この銅圧延材の形成過程において、銅圧延材には、転位を含み歪んだ結晶構造の加工組織層が導入される。それと同時に、加工組織層の表面には、加工組織層よりも結晶性の乱れた加工変質層が薄い厚さで導入される。
本実施形態においては、上記工程で得られた銅圧延材に対して、圧延工程または焼鈍工程を行うことにより、加工変質層の厚さを100nm以下とすることを特徴とする。以下にその詳細を説明する。
[表面研磨工程]
上記の冷間圧延された銅圧延材の表面にバフ研磨加工を行い、表面に形成された酸化膜や押込まれた銅粉を研磨することによって除去する。このバフ研磨工程により銅圧延材の極表面にエネルギーが集中するため、加工組織層の結晶構造が大きく歪み、加工変質層の厚さが増加する。
[冷間圧延工程]
続いて、バフ研磨工程により表面に加工変質層が生じた銅圧延材を少なくとも圧下率50%以上で冷間圧延する。圧下率とは、圧延される銅圧延材の厚さ減少率のことである。具体的には、圧延される前の銅圧延材の厚さをh、圧延後の銅圧延材の厚さをhとすると、この圧延工程における圧下率rは、r=(h−h)/hの式で表される。この工程により、銅圧延材とともに表面の加工変質層も圧延されるため、加工変質層は薄型化されまたは部分的に破断されることになる。この工程により加工変質層は少なくとも圧下率以上に薄く延ばされ、その厚さは縮小される。
[焼鈍工程]
上記冷間圧延工程の後、圧延された銅圧延材を実体温度(銅圧延材の温度)500℃以上で1分以上焼鈍する。銅合金板の再結晶温度である500℃以上の焼鈍を行うことにより加工変質層は再結晶または結晶性の回復により減少し、加工変質層の厚さは縮小する。ここで、再結晶とは、銅の粒界が歪みの原因である転位を吸収することにより歪みが小さくなり、安定した結晶構造に戻ることである。また、結晶性の回復とは、転位を吸収する再結晶とは異なり、転位が元に戻り、結晶構造の歪みが減少することである。なお、焼鈍時間は、1分以上であることが好ましい。1分よりも少ないと、十分に再結晶化することができず、加工変質層の厚さを効率的に縮小できないためである。
[仕上げ圧延工程]
焼鈍された銅圧延材を仕上げ圧延することにより所定の厚さおよび強度を有する銅合金板を形成する。なお、仕上げ圧延工程は、所望とする銅合金板の厚さや強度によって適宜設けられるため、必要のない場合は、上記冷間圧延工程が仕上げ圧延工程となる。
[歪除去焼鈍工程]
仕上げ圧延工程後の銅合金板を再結晶温度以下で焼鈍することにより、本実施形態に係
る銅合金板を得る。ここで得られる銅合金板の加工変質層の厚さは上記圧延工程と焼鈍工程により100nm以下となっている。この歪除去焼鈍工程により銅圧延材中に残留する転位が元に戻り結晶性が回復する。なお、歪除去焼鈍工程は、実体温度を300℃以上500℃以下、焼鈍時間を1分以上3分以下とすることが好ましい。これは再結晶を起こさず、銅合金板の強度を適切に調節するためである。
上記実施形態においては圧下率50%以上の冷間圧延工程の後に焼鈍工程を設けたが、焼鈍工程の後に圧下率50%以上の冷間圧延工程を設けても良い。また、銅合金板の強度の調整のために中間焼鈍工程を適宜設けても良い。
次に、本発明における銅合金板の加工変質層の厚さの測定方法について説明する。本発明においては、銅合金板の厚さ方向の断面における表面を、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)のBSE(Backscattered Electron)像を用いて5000倍以上で観察して、BSE像から加工変質層の厚さを計測する。銅合金板の表層部の組織はBSE像を用いて5000倍以上で観察すると鮮明に観察することができる。加工変質層の厚さは銅合金板上の複数箇所の厚さの平均値により計測した。なお、サンプルはイオン・ミリング装置により作製されたものを用いる。
次に、本発明の他の実施形態に係る銅合金板の製造方法について、上記実施形態に係る製造方法と異なる点について説明する。本実施形態においては、加工変質層の厚さを増加させる工程であるバフ研磨工程を行わない点が、上記実施形態と大きく異なる。
本実施形態においては、銅圧延材の表面にバフ研磨工程を行わないことにより、加工変質層の厚さの増加を抑制することができる。圧延などの塑性変形では、加工変質層の導入はバフ研磨と比較して少なく、最終的に形成される銅合金板における加工変質層の厚さを100nm以下(加工変質層が実質的に存在しない場合を含む)とすることが可能となる。
次に、実施例を用いて具体的に説明する。
まず、Cu−Fe−P系銅合金の組成として、2.2質量%のFe、0.03質量%のP、0.12質量%のZnを含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金を中周波誘導型坩堝で溶解・調整後、銅製鋳型で半連続鋳造し、断面サイズ180mm×500mmの矩形断面の鋳塊を鋳造する。次に、鋳塊を950℃で熱間圧延して、厚さ約18mmの銅圧延材を形成する。その後、銅圧延材の表面に形成された酸化スケールを面削する。そして、時効処理することにより、析出させ強度を増加させる。次に、表面を酸洗し、冷間圧延することにより、厚さ0.6mmの銅圧延材を得る。そして、得られた銅圧延材を表1の条件でそれぞれ圧延などを行って、実施例および比較例の銅合金板を得た。
次に、実施例で得られた銅合金板の評価方法について説明する。本発明においては、加工変質層の厚さ以外に、導電率測定、ビッカーズ硬さ測定、引張試験、そして酸化膜密着性により銅合金板を評価した。導電率はケルビン・ブリッジを用いた直流4端子法により測定され、ビッカーズ硬さ測定ではビッカーズ硬さ試験機により500gで実施した。そして、酸化膜密着性は、20mm×40mmの試験片を切り出し、電解脱脂、酸洗後、大気雰囲気中で200〜400℃の温度で1時間加熱して、冷却後ピーリングテープで酸化膜を剥離することによって剥離した時の温度(全面剥離温度)を測定した。実施例で得られた銅合金板の加工変質層の厚さ、導電率、硬さ、引張強さ、そして酸化膜密着性のそれぞれの測定結果を表2、表3に示す。
実施例1の銅合金板は、表2に示すように、硬さ・引張強さがわずかに劣るものの、加工変質層の厚さは100nm以下で実質的に存在しないような状態であって、表3に示すように全面剥離温度が325℃と最も高く、高温における酸化膜密着性に優れている。なお、一般的にパッケージ工程では様々な加熱処理が施されるため、全面剥離温度は少なく
とも250℃以上あると好ましい。実施例1の断面BSE像を示す図1(a)および図1(a)の要部拡大図である図1(b)に示すように、銅合金板の表面には加工変質層がほとんど存在しないばかりか、再結晶により、安定した結晶構造となっている。すなわち、酸化膜が形成されても、酸化膜と銅合金との界面が結晶構造の安定したところ(再結晶組織層)に形成されるため、加熱による界面構造の変化が少なく、酸化膜密着性の低下を抑制できる。
実施例2および実施例3の銅合金板は、表2に示すように、バフ研磨工程をされるものの、バフ研磨工程後に所定の圧下率の圧延工程または焼鈍工程を設けるため、表面の加工変質層の厚さは100nm以下で、実質的に存在しないような状態となっている。表3に示すように、実施例2では全面剥離温度が325℃、実施例3では全面剥離温度が300℃となっている。図2(a)、(b)、図3(a)、(b)に示すように、実施例2および実施例3は結晶構造がわずかに歪んでおり、加熱により結晶性が回復する(転位が元に戻る)ため、実施例1と比較して、全面剥離温度が低下したものと考えられる。
比較例1および比較例2では、加工変質層の厚さがそれぞれ約1μm、約1μmとなっており、その酸化膜密着性は、それぞれ250℃、225℃となっている。この加工変質層の厚さの一部が酸化膜となっても、酸化膜の界面は、図4または図5に示すように、結晶構造が破壊され、乱され非晶質化した加工変質層となる。したがって、加熱により再結晶や結晶性の回復が大きく生じるため、加熱による酸化膜密着性の低下が著しく観察される。

Claims (5)

  1. Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下でそれぞれ含有し、残部がCuと不可避不純物からなる圧延された銅合金板において、
    銅合金板の表面層の加工変質層の厚さが100nm以下であることを特徴とする銅合金板。
  2. 請求項1に記載の銅合金板において、0.01質量%以上3.00質量%以下のZn、0.01質量%以上3.00質量%以下のSnの少なくとも一方を含むことを特徴とする銅合金板。
  3. Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下でそれぞれ含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金の銅圧延材に対して仕上げ圧延する圧延工程を含む銅合金板の製造方法において、
    前記銅圧延材をバフ研磨するバフ研磨工程と、
    前記バフ研磨工程の後になされる、少なくとも50%以上の圧下率の圧延工程と、を有し、
    銅合金板の表面層における加工変質層の厚さを100nm以下にすることを特徴とする銅合金板の製造方法。
  4. 請求項3に記載の銅合金板の製造方法において、前記バフ研磨工程の後に、前記銅圧延材を実体温度500℃以上、1分以上の焼鈍をする焼鈍工程をさらに設けることを特徴とする銅合金板の製造方法。
  5. Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下でそれぞれ含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金の銅圧延材を圧延して、仕上げ圧延された銅合金板を製造するに際して、前記銅圧延材の表面を研磨するバフ研磨工程を行わないことにより、銅合金板の表面における加工変質層の厚さを100nm以下にすることを特徴とする銅合金板の製造方法。
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