JP4567906B2 - 電子・電気部品用銅合金板または条およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LSI、IC、トランジスターなどの電子電気部品に用いる電子・電気部品用銅合金板または条およびその製造方法に係り、特に、肉厚が0.25mm以下の電子電気部品である例えばリードフレーム用として好適であり、さらに詳しくはスタンピング加工性やスティフネス特性に優れた電子・電気部品用銅合金板または条およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、銅および銅合金は、引張り強さ、伸び等の機械的性質、導電率、熱伝導率等の物理的性質、プレス加工性、エッチング性等の成形性、および、めっき性、ボンディング性、耐食性等の二次特性に優れることから、トランジスター、IC、LSI用のリードフレーム材として多用されている。
また、熱放散性や導電率を重視する用途には、C102(無酸素銅)、C19210(Cu-0.1Fe-0.03P)、C151(Cu-0.02Zr)等が用いられている。
【0003】
さらに、強度と導電率の必要な用途には、C194(Cu-2.3Fe-0.03P-0.15Zn)、Cu-Ni-Si系(Cu-3.2Ni-0.7Si-0.2Zn等)等が用いられている。
そして、より高強度を要する用途には、Cu-Ni-Si-Sn系(Cu-3.2Ni-0.7Si-0.2Zn-1.25Sn等)、C725(Cu-9.2Ni-2.3Sn)等が用いられている。
【0004】
一方、近年の各種電気電子機器の小型化や実装密度の一層の向上に対する要求に対応したトランジスター、IC、LSI等の電子部品に用いるリードフレームにおいても種々の形式のものが実用化され、リードピッチの縮小、薄肉化が進展し、リードフレームに要求される特性はより高度化している。
【0005】
このような要求に応えるために従来つぎのような電子部品用銅合金が提案されている。すなわち、特開平11-343527号公報において、Fe:0.05〜3.0質量%P:0.01〜0.4質量%、Ni:0.001〜0.5質量%、Sn:0.005〜2.0質量%、Si:0.01質量%未満を含有し、剪断加工時の残留応力が除去されやすく、且つ軟化し難い電子部品用銅合金が提案されている。
【0006】
また、特開2000-104131公報には、Fe:0.2〜3.0質量%、P:0.001〜0.2質量%、Zn:0.05〜1.0質量%を含有し、圧延表面の板幅方向の結晶粒径が3〜60μmである高強度、高導電性の電気・電子部品用銅合金が提案されている。
【0007】
さらに、特開2000-144284公報には、Fe:1.8〜2.6質量%、P:0.01〜0.1質量%、Zn:0.05〜0.1質量%、Zr、In、Sn、Si、Be、Al、Mnの内から選択する1種または2種以上を含有する高強度、高導電性の電気・電子部品用銅合金が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、電子部品の実装密度の向上に伴って、前記電子部品として使用されるリードフレームの肉厚は、従来主流であった0.25mmから0.1〜0.2mmにシフトしてきており、さらに、0.08mmであるものも一部で実用化されつつある。そして、リードフレームがこのように薄肉化すると、その組織や機械的性質によっては、半導体素子を載せるアイランド部およびワイヤボンディングの行われるリードフレームの平坦性(coplanarity)が悪化し、また、アイランド部に「ペコつき」が発生しやすくなる。
【0009】
リードフレームは、銅合金板または条より、スタンピングプレスによる打抜き加工またはエッチング加工によって製造されるが、打抜き加工の場合は打抜きによる応力がリードフレーム内に導入される、また、エッチング加工の場合は、エッチングにより溶出する部分が発生するため、エッチング前の板または条内部の応力分布が変化する。前記アイランド部は、両端のガイドと細いタイバーで繋がることによって支えられているため、僅かな応力が加わってもその位置が変化しやすい状態となっている。そのため、前記の打抜き応力あるいはエッチング後の応力分布によっては、アイランドの位置が本来あるべき場所から上または下にずれやすくなる。このような現象を通常「ペコつき」といっている。
【0010】
また、このようなリードフレームの「ペコつき」は、アイランド部を中心にして4方向にリードの伸びるQFPタイプのリードフレームにおいて特に問題となりやすい。このようなリードフレームにおいては、Siチップのボンディング位置やワイヤボンディングの位置の狂いが発生しやすく、電子部品の不良発生や生産性を低下させる原因となる。従って、薄肉・狭ピッチのリードフレームにおいては、従来並みの機械的性質、物理的性質、および二次加工性を満足することが求められるだけでなく、アイランド部およびリード部の平坦性(coplanarity)が良いこと、およびアイランドやリード部に「ペコつき」が発生しないことが強く求められている。
【0011】
この様な要求を満足させるには、リードフレーム材の組成の見直し、および組織の適正化によって、リードフレーム加工後のアイランド部およびリード部が十分な剛性を持つこと、また、スタンピング加工後の「ばり」や「だれ」を少なくすることが検討される。さらに、前記の既存合金においても加工熱処理条件の変更によりその改善が検討されている。
【0012】
本発明の目的は、機械的性質、導電性、めっき性等の特性は従来材以上の値を確保しながら、打抜き加工により発生する「ばり」、「だれ」を小さくし、且つアイランド部およびリード部の平坦性を向上させ、「ペコつき」が発生しないスティフネス性の高い電子・電気部品用銅合金板または条、およびその製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため、以下にかかる構成とした。すなわち、電子・電気部品に用いられる電子・電気部品用銅合金板または条であって、Fe:1.2〜2.5質量%、P:0.01〜0.05質量%、Zn:0.01〜5質量%含有し、酸素:0.003質量%以下、水素:0.0002質量%以下であり、残部がCuおよび不可避的不純物よりなり、かつ、その圧延方向に平行な方向での引張り強さをxとし、0.2%耐力/引張り強さで表わされる降伏比をyとしたとき、350N/mm2≦x≦510N/mm2において、y≧5.66×10-4x+0.65を満足する電子・電気部品用銅合金板または条として構成した。
【0014】
このように構成されることにより、薄肉・狭ピッチのリードフレームの構成であっても、他の特性を犠牲にすることなく、降伏応力と引張り強さの関係を所定の値とすることで「ペコつき」の低減を図ることができる。また、Fe、Pにおける添加量の範囲を特定することで、合金の強度および耐熱性を確保する。そして、Znの添加量の範囲を特定することで、はんだおよびSnめっきの耐熱剥離性、耐マイグレーション性、および、スタンピング加工時の金型における磨耗の低減を図っている。さらに、酸素の添加量の範囲を特定することで、酸化物の生成を抑制し、延性の低下を防止し、めっき性の低下を防止している。そして、水素の添加量の範囲を特定することで、熱間圧延時の割れ、焼鈍時の膨れ、めっき膨れを防止している。
【0015】
また、前記電子・電気部品用銅合金板または条において、任意成分としてさらに、Sn:0.005〜0.3質量%、Ni:0.005〜0.3質量%、Co:0.005〜0.3質量%、Mn:0.005〜0.3質量%、Si:0.005〜0.3質量%、Al:0.005〜0.3質量%、Zr:0.005〜0.1質量%、Cr:0.005〜0.1質量%の群から選択される1種または2種以上を合計で0.005〜0.3質量%を含む構成とすることが好ましい。
【0016】
このように構成することにより、Sn,Ni,Co,Mn,Si,Al,Zr,Crの群から選択される1種または2種以上を合計で0.005〜0.3質量%を含むことで、FeおよびFeのリン化物の析出物と共存した状態で耐熱性を向上させることができる。
【0017】
さらに、前記電子・電気部品用銅合金板または条において、板または条として圧延される圧延方向に平行な断面において、前記板または条の厚さ方向に測定した平均結晶粒径が1〜10μmである構成にすることが好ましい。このように構成されることにより、一定の機械的強度を保ちながら曲げ加工性を維持し、かつ、プレス打抜き加工時の「だれ幅」および「だれ高さ」を小さくすることができる。
【0018】
また、前記電子・電気部品用銅合金板または条において、室温における導電率が60%IACS以上である構成にすることが好ましい。このように構成されることにより、電子・電気部品用銅合金板または条から成形される、例えば、薄肉・狭ピッチのリードフレームなどのリード部における発熱を最小限に抑えることができる。
【0019】
さらに、電子・電気部品用銅合金板または条における製造方法としてつぎのように構成した。すなわち、前記したいずれかの電子・電気部品用銅合金板または条における製造方法であって、溶解鋳造して造塊したスラブを圧延する熱間圧延工程と、この熱間圧延工程後に行なう冷間圧延工程と、この冷間圧延工程の後に行なう連続焼鈍工程、および、バッチ焼鈍工程と、前記両焼鈍工程の後に行なう冷間圧延工程、および、歪み取り焼鈍工程とにより製造する構成とした。
このように構成されることにより、電子・電気部品用銅合金板または条から、例えば、薄肉、狭ピッチのリードフレームを形成したときに、平坦性に優れ、かつ、「ペコつき」を発生されることがない。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における実施の形態を説明する。なお、ここでは電子・電気部品用銅合金板または条から形成される電子・電気部品は、その一例であるリードフレームにより説明する。
本発明の電子・電気部品用銅合金板または条は、含まれる成分と、強度的な特性に対する条件とにより特定されて構成されるものである。
【0021】
この電子・電気部品用銅合金板または条は、含まれる成分として、Fe:1.2〜2.5質量%、P:0.01〜0.05質量%、Zn:0.01〜5%含有し、酸素:0.003質量%以下、水素:0.0002質量%以下であり、残部がCuおよび不可避的不純物からなるものとしている。
【0022】
併せて、この電子・電気部品用銅合金板または条は、強度的な特性に対する条件として、その圧延方向に平行な方向での引張り強さをxとし、0.2%耐力/引張り強さで表わされる降伏比をyとしたとき、350N/mm2≦x≦510N/mm2において、y≧5.66×10-4x+0.65を満足するものとしている。
【0023】
電子・電気部品用銅合金板または条は、その厚さおよび幅には特に規定を設けないが、厚さが0.25mm以下のリードフレーム用として用いることが望ましく、厚さ0.2mm以下のリードフレーム用として用いることがより望ましく、厚さ0.05〜0.08mmのリードフレーム用としても問題なく適用が可能である。
【0024】
以下に、電子・電気部品用銅合金板または条において、その組成、機械的性質、導電率、結晶粒径および表面粗さ等の限定理由および製造方法に付いて説明する。
はじめに、電子・電気部品用銅合金板または条における各成分の限定理由を説明する。
【0025】
電子・電気部品用銅合金板または条におけるFeに対する限定理由
Feは、Pとの化合物を形成し、その化合物が合金中に析出したり、Fe単体で合金中に析出したりすることで、合金の強度および耐熱性を確保する作用がある。そして、Feの含有量は、1.2質量%未満であるとFeおよびFeのリン化物の析出量が少なくなるため、特に調質を軟質とした場合に所望の強度および耐熱性が得られず、また機械的強度を高めるために加工率を大きくすると延性が低下し、曲げ加工性が劣化する。一方、Feは、2.5質量%を越えて含有させると、合金中に粗大なFe析出物が形成されるようになり、熱間圧延時の加工性が低下すると共に、製品の曲げ加工性、スタンピング加工性および導電率の低下が著しくなり、好ましくない。従って、Fe含有量は1.2〜2.5質量%とする。
【0026】
電子・電気部品用銅合金板または条におけるPに対する限定理由
Pは、Feとの化合物を生成し、その化合物を合金中に析出して合金強度および耐熱性を向上させる。また、溶解鋳造工程においては溶湯中に存在して脱酸剤として作用し、他の添加元素が酸化により失われることを防止し、且つ溶湯の湯流れを改善して鋳塊の健全性を向上させる。Pの含有量が0.01質量%未満の場合は、前記の効果が十分でなく、所望の強度、耐熱性並びに健全な鋳塊が得られない。一方、Pの含有量が0.05質量%を越える場合には、鋳塊の結晶粒界に低融点のCu−P化合物が多量に存在するため、熱間加工時の加工性が低下するとともに導電率の低下が生じるため、好ましくない。従って、Pの含有量は0.01〜0.05質量%とする。
【0027】
電子・電気部品用銅合金板または条におけるZnに対する限定理由
Znは、銅合金のはんだおよびSnめっきの耐熱剥離性、耐マイグレーション性、およびスタンピング加工時のスタンピング金型の摩耗を改善する。しかし、Znの含有量が0.01質量%未満の場合、所望の効果が得られない。一方、Znの含有量が5質量%を越えるとはんだ濡れ性が低下する。また、導電率の低下も激しくなる。従って、Znの含有量は0.01〜5質量%とする。
【0028】
電子・電気部品用銅合金板または条におけるOに対する限定理由
電子・電気部品用銅合金板または条に用いられる銅合金は、真空炉を用いなくても、通常のコアレス炉、溝型炉などを用い、溶湯表面を木炭、炭素粒子、適当なフラックス等の被覆材で被覆することにより、大気中で溶解鋳造することができる。ただし、大気中での溶解鋳造工程において、原料、溶湯表面の前記被覆材、炉材等に付着したあるいは含まれる水分、酸化物や、雰囲気中に存在する水蒸気、酸素、二酸化炭素、水素等が溶湯と反応して溶湯にOやHが含有されることが避けられないため、所定量以上含有させないよう溶解鋳造雰囲気、使用原料、溶湯被覆材の乾燥等に注意が必要である。
【0029】
電子・電気部品用銅合金板または条において、Oの含有量が0.003質量%を越えると、溶解鋳造工程、熱間圧延、および焼鈍工程において酸化物が形成されやすく、この酸化物によって製品の延性が低下しやすい。また、前記酸化物および固溶酸素によりAg、Sn、はんだ等のめっき性が低下する。したがって、O含有量は0.003質量%以下でなければならない。なお、望ましい酸素含有量は0.002質量%以下である。
【0030】
電子・電気部品用銅合金板または条におけるHに対する限定理由
電子・電気部品用銅合金板または条に用いられる銅合金は、前記のように大気中で溶解鋳造して鋳塊を造塊することが可能であるが、Hは一旦溶湯中に含有されると短時間で効果的に除去することが難しいため、特に溶解鋳造雰囲気、使用原料、溶湯被覆材の乾燥等に注意が必要である。本発明の銅合金において、Hの含有量が0.0002質量%を越えると、熱間圧延時の割れ、焼鈍時の膨れ、めっき膨れなどが発生して歩留りを低下させるため0.0002質量%以下でなければならない。より望ましいH含有量は0.0001質量%以下であり、さらに望ましくは0.00007質量%以下である。
【0031】
なお、電子・電気部品用銅合金板または条には、通常HとOは共に含有されるが、H含有量:appm、O含有量:bppmとすると、a×bの値が40を越えると、熱間圧延、焼鈍などの加熱工程においてHとOが反応して水蒸気が形成されやすく、割れ、膨れ等の原因となるため、H含有量(ppm)×O含有量(ppm)の値を40以下とすることが望ましい。前記の値が30以下であることがさらに望ましく、20以下であることがより望ましい。
【0032】
電子・電気部品用銅合金板または条におけるSn、Ni、Co、Mn、Si、Al、Zr、Crに対する限定理由
Sn、Ni、Co、Mn、Si、Al、Zr、Crはいずれも、FeおよびFeのリン化物の析出物と共存した状態で耐熱性を向上させる。そして、銅合金の耐熱性をさらに向上させる効果を示す。また、Sn、Ni、Co、Mn、Si、Al、Zr、Crの元素群より選択する1種または2種以上の含有量が0.005質量%未満ではその効果が十分でなく、0.3質量%を超えると導電率の低下が激しく好ましくない。従って、これらの元素の1種または2種以上の含有量は0.005〜0.3質量%とする。
【0033】
電子・電気部品用銅合金板または条における前記以外の他の元素
Pb、C、Mg、Sはいずれも結晶粒界に存在し易く、そのため打抜き加工性を向上させ(ばりの低減、せん断加工性向上)、金型摩耗を低減させる効果がある。これらの元素の含有量が多いほど、前記の効果が大きいが、Pb:0.01質量%、C:0.002質量%、S:0.002質量%を超えると、熱間加工性が低下する。また、Mg:0.001質量%を超えるとAgめっきを行ったときAgが突起状に異常析出し金線のワイヤボンディング性が低下する。
従って、製造上の歩留りや、リードフレームとしての特性を害しない範囲であれば、前記の組成に加えてさらにPb:0.01質量%以下、C:0.002質量%以下、S:0.002質量%以下、Mg:0.001質量%以下で含有させてもよい。
【0034】
つぎに、電子・電気部品用銅合金板または条における機械的性質の限定理由を説明する。
電子・電気部品用銅合金板または条により形成したリードフレームにおいて「ペコつき」の発生機構は明確でないが、リードフレームを加工する板または条の機械的性質(引張り強さ、耐力)により大きく影響され、その他伸び、機械的性質の異方性、組織(結晶粒径、整粒度)、応力分布、スタンピング加工時にリードフレームに導入される応力(金型のクリアランス、剪断面と破断面の割合等に影響を受ける)などにも影響を受けていることが本件発明者の行った実験で判明している。本発明は、他の特性を犠牲にすることなく、降伏比と引張り強さの関係を所定の値とすることで「ペコつき」低減に成功したものである。
【0035】
本発明の電子・電気部品用銅合金板または条は、特に薄肉リードフレームとして用いられるため、圧延方向に平行方向の引張り強さの下限値は350N/mm2以上でなければならない。また、電子・電気部品用銅合金板または条は、機械的強度が大きくなると延性が低下し、リード曲げ部において割れが発生しやすくなることから、引張り強さの上限値は510N/mm2以下であることが望ましい。なお、引張り強さの下限値は、400N/mm2以上であることが望ましい。
【0036】
また、引張り強さが前記値を満足していても、降伏比yが5.66×10-4x+0.65未満であると、リードフレームに加工したときのアイランド部に「ペコつき」が発生しやすくなる。従って、y≧5.66×10-4x+0.65でなければならない。
【0037】
電子・電気部品用銅合金板または条における結晶粒径についての限定理由
本発明の電子・電気部品用銅合金板または条においては、圧延方向に平行な断面において、板または条の厚さ方向に測定したときの平均結晶粒径が1〜10μmであることが望ましい。平均結晶粒径が1μmを下回った場合、曲げ加工性が低下し、平均結晶粒径が10μmを超えた場合は曲げ部の粒界割れや肌荒れが発生しやすくなり、かつプレス打抜き加工時の「ダレ幅」および「ダレ高」さが大きくかつ不均一となる。したがって、前記の平均結晶粒径は1〜10μmであることが望ましい。
【0038】
なお、前記板厚方向における結晶粒径の規定に加え、前記板または条の圧延面において圧延方向に直角な方向に測定した平均結晶粒径がaμmであったとき、その平均結晶粒径に対し、前記圧延方向に直角な方向の結晶粒径が0.8a〜1.2aμmである結晶粒の数(整粒化度)が70%以上であることが望ましい。
この規定を満たす板または条において、曲げ加工時の肌荒れ、およびプレス打抜き加工時の「ダレ幅」および「ダレ高さ」が一層減少する。前記整粒化度は80%以上であることが一層望ましい。
【0039】
なお、平均結晶粒径は、板または条の断面あるいは表面をエッチングした試料の光学顕微鏡組織写真を用い、JIS H0501に規定されている切断法で測定する。整粒化度は、前記組織写真を画像解析装置で解析して求めることができる。
【0040】
電子・電気部品用銅合金板または条における導電率についての限定理由
電子・電気部品用銅合金板または条から形成したリードフレームとして厚さ0.20mm以下のものが通常使用され、さらに薄肉化が進展している。リードフレームの薄肉化により、リード部の断面積が減少しても、Siチップを搭載した電子部品として十分な機能を発揮させるにはリードフレームとして十分な導電率および熱伝導率を有することが必要である。
【0041】
リードフレームの導電率が60%IACS未満となると、リード部における発熱が大きくなり、また搭載されたSiチップの発熱をリード部を通じて放散させる際の熱抵抗が大きくなり、搭載するSiチップに制限を受けたり、また、リードフレームの薄肉化が難しくなる。従って、電子・電気部品用銅合金板または条においては、その導電率が60%IACS以上であることが望ましい。
なお、本発明の電子・電気部品用銅合金板または条において、導電率を60%IACS以上とするには、FeおよびFeのリン化物をできるだけ多く析出させることが有効であり、そのためには加工熱処理条件を適当に定めるとよい。
【0042】
電子・電気部品用銅合金板または条における表面特性について
本発明の電子・電気部品用銅合金板または条から形成したリードフレームは、アイランド部とインナーリード部に主としてAgめっきを行った後、アイランド部にSiチップをボンディングし、リード部には直径10〜30μm程度のAu線、Cu線またはAl線がワイヤボンディングされる。Agめっきの接着強度には板または条に形成されている酸化膜の厚さが、前記ワイヤの接合強度には主として板または条の表面粗さが影響する。
【0043】
そのため、電子部品としての信頼性を確保するために、圧延方向に平行に測定した表面粗さが、Ra:0.1μm以下、且つ、Rmax:1μm以下であることが望ましい。Raが0.1μmを超え、且つ、Rmaxが1μmを超えると、金線、銅線、アルミニウム線のワイヤボンディングを行ったときの接合強度が低下しやすい。また、ワイヤボンディングの接合強度を良好に保つために、本発明の銅合金板または条においては、前記表面粗さであって、且つ表面に形成されている酸化膜の厚さが100nm以下であることが望ましい。
【0044】
なお、Ra:0.08μm以下、且つRmax.:0.8μm以下であることが望ましく、Ra:0.06μm以下、且つRmax.:0.6μm以下であることがさらに望ましい。このときの酸化膜厚については、60nm以下が望ましく、40nm以下であることがさらに望ましい。
【0045】
つぎに、電子・電気部品用銅合金板または条における製造方法について説明する。
(1)溶解鋳造
本発明の電子・電気部品用銅合金板または条における銅合金は大気中にて溶解鋳造が可能である。溶解炉としては、コアレス炉、溝型炉等、銅または銅合金の溶解に通常用いられている溶解炉を用いることができ、溶湯表面は木炭、黒鉛粒子、カバリングフラックス等で被覆し、なるべく大気との接触が少ない条件で行なうことが望ましい。溶解手順は、例えば、先ず電気銅地金を溶解し、Fe、P、およびZnを適当な中間合金あるいは純金属の形態で、この順に銅溶湯に添加すれば特に問題は発生しない。Sn、Ni等の原料もその後添加すると良い。また、溶解原料として、製造工程において発生したスクラップ、打抜き加工後の屑なども使用可能である。
【0046】
また、水素が溶湯に取込まれないようにするために溶湯と接触する木炭、黒鉛粒子、フラックス、炉材、鋳型、樋、治具の類などは十分乾燥しておくことが望ましい。本発明の銅合金は、Znが1.0質量%を越えて含まれる場合があるため、その場合には溶解鋳造工程においては溶湯からのZnの気化が発生し、溶湯の水素含有量を低減するためには有利である。さらに、溶湯に含有される水素を低減するために、鋳造前に、露点の低いアルゴンガス、不活性ガス等を溶湯中に吹込み、脱水素処理を行っても良い。鋳造は、縦形連続鋳造によりスラブを造塊しても良く、あるいは横形連続鋳造を行っても良い。
【0047】
(2)加工熱処理
本発明の銅合金の加工熱処理においては、降伏比と引張り強さの関係を、その圧延方向に平行な方向での引張り強さをxとし、0.2%耐力/引張り強さで表わされる降伏比をyとしたとき、350N/mm2≦x≦510N/mm2において、y≧5.66×10-4x+0.65を満足するように定めることが必要であり、また結晶粒径や表面粗さが所定の範囲となるよう、その条件を決めてやることが望ましい。
【0048】
加工熱処理工程の一例を示すと、スラブの場合は、(1)熱間圧延、(2)冷間圧延、(3)連続焼鈍、(4)バッチ焼鈍、(5)冷間圧延、(6)歪み取り焼鈍の工程[(2)〜(4)は繰返し行っても良い]、水平連鋳材の場合は、(1)均質化焼鈍、(2)冷間圧延、(3)連続焼鈍、(4)バッチ焼鈍、(5)冷間圧延、(6)歪み取り焼鈍の工程[(2)〜(4)は繰返し行っても良い]とすることが望ましい。
【0049】
熱間圧延は、合金組成によって適宜適当な圧延温度を選択すれば良いが、加熱炉中の鋳塊が850〜1000℃に到達してからさらに30分〜2時間程度保持し、その後圧延を開始すれば良い。熱間圧延終了後は水冷して、FeおよびFeのリン化物の析出を抑制しておくことが強度や耐熱性を向上させるためには望ましい。
【0050】
熱間圧延後の板は、表面に形成された酸化膜をスカルパー等機械的な方法により除去し、所定の厚さまで冷間圧延する。その後、焼鈍を行ってFeおよびFeのリン化物を析出させ、さらに冷間圧延を行い、歪み取り焼鈍を行なう。本発明の銅合金においては、最初の冷間圧延後の焼鈍として、結晶粒径のばらつきをなくすためには先ず連続焼鈍を行い、その後バッチ焼鈍を行なうと有効である。前記連続焼鈍においては、焼鈍される薄板が縦型または横型の連続焼鈍炉の加熱帯を通過するため、薄板は急速加熱され、微細で結晶粒径の揃った再結晶組織が形成される。
【0051】
また、その加熱時間は短いため、FeおよびFeのリン化物の析出量は僅かである。そのため、連続焼鈍後の薄板コイルをベル型炉などで焼鈍し、FeおよびFeのリン化物を析出させる。連続焼鈍において形成されている再結晶粒は、バッチ焼鈍中に成長しても、異なる粒径の結晶粒が混在する組織にならないため、本発明の銅合金の機械的性質、曲げ加工性、打抜き加工性等の異方性を少なくすることが可能である。
【0052】
前記連続焼鈍条件としては、500〜800℃程度の雰囲気中に焼鈍材を入れ、加熱速度1℃/秒以上、冷却速度1℃/秒以上、再結晶温度における加熱時間5〜120秒程度の条件で行なうことが望ましい。また、バッチ焼鈍は、400〜600℃程度で30分〜4時間程度加熱すると良い。なお、いずれの焼鈍においても加熱される薄板の酸化を防止するために、N−Hガス、DXガス(100級ガス、原料ガスに空気を混ぜ部分的に、または完全に燃焼し水分を除いて露点を調節するもの)、不活性ガス等の雰囲気で操業することが望ましく。焼鈍後の薄板は、酸洗して表面の酸化膜を除去しておくことが望ましい。さらに、機械的または化学的な研磨を行っても良い。
【0053】
このようにして再結晶整粒組織となり、FeおよびFeのリン化物を析出させた薄板を冷間圧延し、組織中に転位を増殖させることによって降伏応力および引張り強さを向上させる。冷間圧延による加工率は目的とする機械的性質に合せて適宜決めることができる。
【0054】
冷延材は、転位を再配列させることにより強度を殆ど低下させないで延性を改善するために歪み取り焼鈍することが望ましい。なお、2回目の冷間圧延の加工率が小さい場合は、延性の低下が少ないため焼鈍または/およびその後の歪み矯正を省略することも可能である。この後、さらに、テンションレベラあるいはテンションアニーラー等に通し、薄板の歪みの分布を矯正してもよい。
【0055】
【実施例】
以下本発明について電子・電気部品用銅合金板または条(以下、銅合金板または条という)についての実施例を用いて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されないことはもちろんである。
[実施例1]
【0056】
純度99.99%の電気銅地金、純度99.9%の還元鉄粉、Cu−15%P中間合金、純度99.99%の亜鉛地金、純度99.99%の錫地金、Cu−10%Mn中間合金、Cu−10%Si中間合金、純度99.99%のAl地金、Cu−10%Cr中間合金を原料に用い、下記製造工程にて図1に示す組成の銅合金板コイルを製作した。板厚は0.152mmである。なお、図1に示した分析値は、仕上げ圧延後の薄板コイルより採取した試料の分析値である(No.13のみ熱延材の分析値)。また、図1には示していないが、前記薄板コイルを分析した結果下記元素の含有量は以下の範囲であった。
【0057】
Mg:0.0001〜0.0012%、Pb:0.0004〜0.003%、S:0.0001〜0.002%、Sb:0.00005〜0.0006%、Bi:0.00005〜0.0004%、As:0.00005〜0.0003%、Ti:0.0001〜0.0007%、C:0.00005〜0.001%、Ag:0.00005〜0.0004%。
【0058】
(銅合金板コイルの製造工程)
木炭被覆下でコアレス炉により電気銅地金を溶解後、各合金元素を所定量添加溶解し、目的組成となっていることを確認した後、1200〜1250℃で出湯し、厚さ150mm、幅500mm、長さ4000mmの鋳塊に半連続鋳造した。なお、図1のNo.1、No.3およびNo.7については前記寸法の鋳塊を2本作製した。また、鋳造時において、溶解炉、樋、および鋳型内の湯面を赤熱木炭、黒鉛系フラックス等でカバーし、溶湯の酸化による合金元素の滅失、溶湯への酸素あるいは水素の侵入を極力防止した。
【0059】
このようにして作製した鋳塊は、950〜1000℃のウォーキングビーム炉に装入され、鋳塊が所定温度に到達後さらに1時間保持してから厚さ15mmまで熱間加工された。熱間圧延終了後直ちに熱延材表面をシャワー水冷し、FeおよびFeのリン化物の析出を抑制した。なお、水冷開始温度はいずれの熱延材においても600℃以上であった。冷却後、熱延材表面の酸化膜をスカルパーで機械的に除去した。なお、No.10の鋳塊はPの含有量が、またNo.15の鋳塊はFeの含有量が、それぞれ本発明の銅合金板または条の上限値を越えるため、熱延中、板の耳部に部分的に割れが発生した。そのため、その部分を除去して以下の工程に供した。また、No.13の鋳塊はHの含有量が本発明の銅合金板または条の上限値を越えるため、熱延中、ほぼ全面において割れが発生し、その後の工程に共することが不可能であった。
【0060】
この後、前記熱延材に冷間粗圧延、中間焼鈍、冷間仕上げ圧延、歪取り焼鈍を行って板厚を0.15mmのコイルとした。中間焼鈍は、450〜600℃に到達後1〜4時間保持することにより行い、歪取り焼鈍は雰囲気温度600〜800℃の連続焼鈍炉(N2−10vol%H2雰囲気)に通板することにより行なった。連続焼鈍された板材は連続的に硫酸を含有する水溶液で酸洗される。冷間粗圧延および仕上げ圧延の加工率は、小型圧延機で予め試験圧延して作製した板材の特性を調査することによって決定した。冷延後の板材は溶剤脱脂され、コイルに巻取った。
【0061】
このようにして製作した薄板コイルより試験片を加工し、引張り強さ、耐力、導電率、結晶粒径、はんだ耐候性、Agめっき性を調査した。さらに、薄板コイルを幅30mmにスリットして条を製作し、「ペコつき」の発生状況を調査した。
(特性調査方法)
【0062】
[引張り強さ、耐力]
引張り強さは、各試料のコイルより圧延方向に平行にASTM E8試験片として加工し、引張り試験を行なうことにより求めた。耐力は、引張り試験における試験片の伸び−荷重のチャートより0.2%伸びに対応する荷重より計算した。
【0063】
[導電率]
導電率は、各試料のコイルより圧延方向に平行に幅10mm、長さ300mmの試験片として加工し、JISH0505に規定されている方法に基づき、ダブルブリッジを用いて測定した。
[平均結晶粒径]
平均結晶粒径は、各試料のコイルより幅方向のほぼ中央から試料を採取し、圧延方向に平行な断面を研磨して塩化第二鉄希釈液等でエッチングし、JISH0501に規定されている切断法(線分の向きを板厚方向とする)により求めた。
【0064】
[はんだ耐候性]
各試料のコイルより幅25mm、長さ50mmの試験片を採取し、溶剤脱脂、電解脱脂後、厚さ5μmのSn−10%Pb電気めっきを行い、150℃のオーブンで1000時間保持し、試験片の長さの中央部を180°曲げ戻し加工する。そして、加工を受けた部分の断面を研磨し、はんだの剥離の有無を光学顕微鏡にて調査する。
【0065】
[Agめっき性]
各試料のコイルより幅20mm、長さ20mmの試験片を採取し、溶剤脱脂、電解脱脂後、厚さ0.15μmのCu下地めっき(CuCN+KCN浴)を行なった後、厚さ5μmのAgめっき(AgCN+KCN浴)を行い、大気中で450℃に加熱して5分間保持し、その後室温まで冷却してからAgめっき面を光学顕微鏡で観察し、加熱による膨れ発生の有無を調査した。
【0066】
[曲げ加工性]
各試料のコイルより幅10mm、長さ30mmの試験片に加工し、曲げ半径を変えて180°曲げを行い、曲げ部の外面側を光学顕微鏡で確認し、割れの発生しない最小曲げ半径Rと板厚t(=0.15mm)の比R/tをその試料の曲げ加工性とした。即ち、この数値が小さいほど曲げ加工性に優れると判断してよい。なお、曲げは、曲げ線が圧延方向に直角(Good Way)および曲げ線が圧延方向に平行(Bad Way)の2方向となるように試験片を採取し、行った。
【0067】
[表面粗さ]
圧延方向に平行に25mm×50mmの試験片を切出し、触針式表面粗さ測定器(Taylor Hobson社製)を用いて圧延方向に平行な方向に粗さの測定を行った。平均表面粗さRaおよび最大表面粗さRmaxの定義はJISB0601による。
【0068】
[酸化膜厚]
各試料のコイルより圧延方向に平行に幅25mm、長さ50mmの試験片を採取し、測定部(測定面積約100mm2)以外を樹脂で被覆し、カソード還元法にて測定した。電解液には0.1NKCl溶液を用いた。N2ガスを通気して溶存酸素を十分に除去した後サンプルを浸漬し、同時に通電して還元を行った。液温度は25℃に保持し、カソード電流密度は0.1mA/cm2とした。
【0069】
還元により、カソード還元曲線が得られ、これより酸化膜の厚さを計算する。
銅の酸化物には酸化第2銅(CuO)および酸化第1銅(Cu2O)の2種類の形態があり、夫々銅の価数が異なり2価(Cu2+)と1価(Cu+)である。また、銅合金の場合は、銅の酸化物以外に合金元素の酸化物が形成されていることもある。実際の酸化物はCuO、Cu2O、…等があるが、ここではそれらが全てCu2Oであったとみなしたときの膜厚を酸化膜厚さとする。
【0070】
(「ペコつき」の発生状況)
各試料の条より、アイランドを中心にして4方向に各12本のリードが伸びるQFP(Quad Flat Package)タイプのリードフレームを10000ショット打抜き加工し、アイランド部の「ペコつき」の発生状況を1000ショット毎に目視にて確認した。
【0071】
図2に、前記項目の試験結果を示す。本発明例の銅合金板および条はいずれも良好な機械的性質、導電率、曲げ加工性、はんだ耐候性、Agめっき性を有し、リードフレーム加工後においても「ペコつき」が発生しない。
それに対して、各比較例の銅合金板および条は、以下のような欠点を有する。
No.8:Feの含有量が規格値を下回るため、伸びが低下し、その結果曲げ加工性が低下している。
No.9:Pの含有量が規格値を下回るため、脱酸が不十分であることからO含有量が増加し、その結果Agめっきの加熱ふくれが発生し、曲げ加工性が低下している。
【0072】
No.10:Pの含有量が規格値を上回るため、熱間加工時に割れが発生しやすく、またはんだの剥離が発生している。
また、No.11:Znの含有量が規格値を下回るため、はんだの剥離が発生している。
No.12:Znの含有量が規格値を上回るため、導電率が60%IACSを下回っている。特に、発熱量の大きいSiチップを搭載した場合やリードフレームの肉厚が0.15mm以下になると、電子部品として使用する場合熱放散性が問題となることがあり、電子部品としての信頼性低下や機能を十分に発揮でないなどの問題を引き起こす可能性がある。
【0073】
No.14:Oの含有量が規格値を上回るため、Agめっきの加熱ふくれが発生し、酸化物粒子の増加よって伸びと曲げ加工性が低下している。
No.15:Feの含有量が規格値を上回るため、Agめっきの加熱ふくれが発生し、また伸びと曲げ加工性が低下している。
なお、本発明のNo.3の条材よりスタンピングにより作製したリードフレームにCu下地めっき/Agめっきを行い、Siチップのはんだ付け、Au線によるワイヤボンディングを行い、さらに樹脂封止を行ってロジックLSIを製作し、プリント基板に実装してプレッシャクッカーテスト、振動試験、熱衝撃試験などを行った。前記試験後においても問題なく作動することが確認できた。
【0074】
[実施例2]
実施例1における熱延材を用いて加工熱処理条件を変えることにより機械的性質、導電率の異なる厚さ0.15mmの板材コイルおよび条を作成し、実施例1と同様な方法により特性調査を行った。その結果を図3に示す。なお、図3において、{[2]/[1]/(5.66×10−4x+0.65)}の値が1.00以上であれば、本発明の請求項1の関係を満足する。
【0075】
本実施例の板3−1〜3−4においては、その降伏比が既定値(図3では1)以上の値であるため、それらの条をスタンピングして製作したリードフレームにおいてはいずれも「ペコつき」は発生しない。一方、比較例の板3−5〜3−8においては、その降伏比が既定値を下回るため、さらに板3−8においては引張り強さが既定値より小さいこともあり、それらの条をスタンピングして製作したリードフレームにおいてはいずれも「ペコつき」が発生する。導電率、結晶粒径、はんだ耐候性、Agめっき性、曲げ加工性は、引張り強さが同程であれば、本発明例および比較例の板とも同等である。
【0076】
なお、曲げ加工性、狭ピッチ等の要求のあるリードフレーム用としては圧延方向に平行な断面において板厚方向に測定したときの結晶粒径が1〜10μmの範囲であることが望ましい。
【0077】
さらに、ここには示していないが、実施例1におけるNo.1およびNo.7についても同様な方法で降伏比と「ペコつき」の関係を調査したが、3−1〜3−7において示したものと同様な結果が得られた。
備考:図3に示していないが、3−1〜3−8における酸化膜厚は20〜50nm、表面粗さは、Ra:0.007〜0.1μm、Rmax:0.5〜0.8μmであった。
【0078】
[実施例3]
本実施例においては、Fe、P、およびZnの含有量がほぼ同じである実施例1のNo.3、No.5の板材を用いて、耐熱性向上に及ぼすSn、Ni、Coなどの元素の効果を検証する。耐熱性の試験方法とその定義は以下のとおりである。
【0079】
[耐熱性]
前記板材より引張り試験片(ASTM E 8)を多数加工し、250〜600℃(50℃間隔)の硝石炉に浸漬し、5分間保持してから水冷する。その後室温にて引張り試験を行い、浸漬温度−引張り強さの関係をグラフ化する。浸漬前の初期引張り強さに対して90%の引張り強さとなる温度をグラフより読取り、その板材の耐熱温度と定義する。
【0080】
耐熱性の測定結果を図4に示す。Sn、Mn等の元素を各0.0005〜0.01%程度含有させた実施例No.5の板材は実施例No.3の板材より耐熱性が25℃向上する。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる電子・電気部品用銅合金板または条および製造方法によれば、以下に示すように優れた効果を奏する。
【0082】
(1)電子・電気部品用銅合金板または条は、強度的な特性に対する条件と共に、含まれる成分により特定されて構成されるため、例えば、電子・電気部品としての肉薄、狭ピッチのリードフレームを形成した際に、強度、導電性、めっき性等の特性は従来材以上の値を確保しながら、平坦性の向上を図ることができると共に、「ペコつき」が発生することがない。
【0083】
(2)電子・電気部品用銅合金板または条は、任意成分としてさらに、所定範囲のSn、Ni、Co、Mn、Si、Al、Zr、Crにおける群から選択される1種または2種以上を合計で0.005〜0.3質量%を含むことで、耐熱性をさらに向上させることができる。
【0084】
(3)前記電子・電気部品用銅合金板または条において、特定方向の断面において測定した平均結晶粒径が1〜10μmとしているため、プレス打抜き加工時の「バリ」や「ダレ幅」および「ダレ高さ」を最小限とし、かつ、均一にすることができる。
【0085】
(4)前記電子・電気部品用銅合金板または条において、室温における導電率が60%IACS以上とすることにより、電子・電気部品として例えば、薄肉・狭ピッチのリードフレームを形成した際に、リードフレームとして十分な導電率および熱伝導率を確保することが可能となる。
【0086】
(5)前記電子・電気部品用銅合金板または条の製造方法により、例えば、薄肉、狭ピッチのリードフレームを形成したときには、そのリードフレームの平坦性に優れ、かつ、「ペコつき」を発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる実施例を示すグラフ図である。
【図2】 本発明にかかる実施例における各測定項目での結果を示すグラフ図である。
【図3】 本発明にかかる他の実施例を示すグラフ図である。
【図4】 本発明にかかる実施例における他の測定項目での結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
なし
Claims (5)
- 電子・電気部品に用いられる電子・電気部品用銅合金板または条であって、
Fe:1.2〜2.5質量%、P:0.01〜0.05質量%、Zn:0.01〜5質量%含有し、酸素:0.003質量%以下、水素:0.0002質量%以下であり、残部がCuおよび不可避的不純物よりなり、かつ、
その圧延方向に平行な方向の引張り強さをxとし、0.2%耐力/引張り強さで表わされる降伏比をyとしたとき、350N/mm2≦x≦510N/mm2において、y≧5.66×10-4x+0.65を満足することを特徴とする電子・電気部品用銅合金板または条。 - さらに、Sn:0.005〜0.3質量%、Ni:0.005〜0.3質量%、Co:0.005〜0.3質量%、Mn:0.005〜0.3質量%、Si:0.005〜0.3質量%、Al:0.005〜0.3質量%、Zr:0.005〜0.1質量%、Cr:0.005〜0.1質量%の群から選択される1種または2種以上を合計で0.005〜0.3質量%を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子・電気部品用銅合金板または条。
- 前記板または条として圧延される圧延方向に平行な断面において、前記板または条の厚さ方向に測定した平均結晶粒径が1〜10μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子・電気部品用銅合金板または条。
- 室温における導電率が60%IACS以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子・電気部品用銅合金板または条。
- 前記請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子・電気部品用銅合金板または条の製造方法であって、
溶解鋳造して造塊したスラブを熱間圧延する工程と、この熱間圧延する工程後に行なう冷間圧延工程と、この冷間圧延工程の後に行なう連続焼鈍工程、および、バッチ焼鈍工程と、前記両焼鈍工程の後に行なう冷間圧延工程、および、歪み取り焼鈍工程とにより製造することを特徴とする電子・電気部品用銅合金板または条の製造方法。
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