JP5755892B2 - 銅合金板の製造方法 - Google Patents
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銅合金表層の結晶配向を制御することによって、酸化膜密着性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
まず、本発明の一実施形態に係る銅合金板について説明する。なお、以下においてはリードフレーム用の銅合金板(銅合金条)として説明する。
本実施形態における銅合金板は、リードフレーム材用などとして、一次特性だけでなく酸化膜密着性などの二次特性も必要である。このため、本実施形態における銅合金板はCu−Fe−P系銅合金板として、Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下、残部がCuと不可避不純物からなっている。そして、本発明においては、この基本組成に対して、Znを0.01質量%以上3.00質量%以下、Snを0.01質量%以上3.00質量%以下の少なくとも一方をさらに含むことが好ましい。
Feは、Fe単体若しくはFeとPの化合物を形成し、強度や耐熱性を向上させる。Fe含有量が少ないと銅合金中の析出量が不足し強度や耐熱性を十分に得られない。一方、Fe含有量が多いと導電率が低下するばかりかFeの粗大結晶の発生によりエッチング性やメッキ性が低下する。したがって、銅合金板中のFeの含有量は0.1質量%以上3.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上2.4質量%以下の範囲である。
Pは、脱酸剤として働く上に、Feと化合物を形成し強度を向上させる。Pの含有量が少ないと、Feとの化合物形成が妨げられ、十分な強度を得られない。Pの含有量が多いと、鋳造性や熱間加工性を低下させるとともに導電率も低下させる。したがって、Pの含有量は0.01質量%以上0.3質量%以下、好ましくは0.02質量%以上0.15質量%以下の範囲である。
本発明においては、Cu、Fe、P以外にZnをさらに含有させることが好ましい。Znは、脱酸剤として働く上に半田密着性や半田耐熱剥離性を向上させる。Znの含有量が少ないと十分な効果を得られず、Znの含有量が多いと導電率が低下する。したがって、Znの含有量は0.1質量%以上3.0質量%以下とすることが好ましい。
また、本発明においては、Cu、Fe、P以外にSnをさらに含有させることが好ましい。Snは銅合金中に固溶して強度と耐熱性を向上させる。しかも、Snは応力緩和特性を有するため、コネクタなどに用いられる場合に添加されることが好ましい。Snの含有量が少ないと十分な効果を得られず、Snの含有量が多いと導電率および鋳造性が低下する。したがって、Snの含有量は、0.1質量%以上3.0質量%以下とすることが好ましい。
銅合金板の表面における断面構造は、一般的に表面側から加工変質層、加工組織層(塑性変形層)、再結晶組織層の順に積層された構造となっている。加工変質層は、銅合金板の最表面に存在する層であり、加工により材質的に変化して内部の加工組織層などとは異なった状態の表面層である。加工変質層には、結晶構造の破壊、乱れ、非晶質化などが起こっている。加工組織層(塑性変形層)は、加工変質層の下層にあり、冷間圧延などの塑性変形により結晶構造中に歪みの原因となる転位を含み、歪んだ結晶構造を有している。そして、加工組織層のアスペクト比は冷間圧延の圧下率に影響される。再結晶組織層は、加工組織層の下層にあり、高い温度で焼鈍されて再結晶することにより加工歪みがほとんどない結晶構造となっている。したがって、銅合金板の表層部は、内部ほど大きな結晶で結晶構造の歪みの原因である転位は少ないが、表面側に向かうに従い、微細な結晶となり、結晶構造の歪みも大きくなる。
加工変質層は銅合金板の最表面に位置するため、酸化により、まず加工変質層に酸化膜(CuOまたはCu2O)が形成される。形成された酸化膜と銅合金との間には界面が形成され、加熱による剥離が生じる場合、この界面を境にして剥離する。
このように、本発明においては、加工変質層の厚さを100nm以下として、銅合金板と酸化膜との界面を、加工変質層と比較して安定した結晶構造の中に配置することができるので、酸化膜密着性の低下を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る銅合金板の製造方法について説明する。
まず、所定の質量%のCu、Fe、Pを溶解・調整した鋳塊を900℃以上の温度により均質化処理して、所定の組成のCu−Fe−P系の銅母材を形成する。この銅母材を熱間圧延することにより、銅母材の展延性を向上させ所定の厚さの銅圧延材を形成する。そして、銅圧延材の表面に生じた酸化スケールを面削することにより除去する。その後、銅圧延材を時効処理することにより、溶融したFeやFeとPとの化合物を析出させ、強度を増加させる。さらに、酸洗し、冷間圧延することにより、銅圧延材を所定の厚さまで圧延するとともに、銅圧延材に加工硬化を施し、さらに強度を増加させる。この銅圧延材の形成過程において、銅圧延材には、転位を含み歪んだ結晶構造の加工組織層が導入される。それと同時に、加工組織層の表面には、加工組織層よりも結晶性の乱れた加工変質層が薄い厚さで導入される。
上記の冷間圧延された銅圧延材の表面にバフ研磨加工を行い、表面に形成された酸化膜や押込まれた銅粉を研磨することによって除去する。このバフ研磨工程により銅圧延材の極表面にエネルギーが集中するため、加工組織層の結晶構造が大きく歪み、加工変質層の厚さが増加する。
続いて、バフ研磨工程により表面に加工変質層が生じた銅圧延材を少なくとも圧下率50%以上で冷間圧延する。圧下率とは、圧延される銅圧延材の厚さ減少率のことである。具体的には、圧延される前の銅圧延材の厚さをh1、圧延後の銅圧延材の厚さをh2とすると、この圧延工程における圧下率rは、r=(h1−h2)/h1の式で表される。この工程により、銅圧延材とともに表面の加工変質層も圧延されるため、加工変質層は薄型化されまたは部分的に破断されることになる。この工程により加工変質層は少なくとも圧下率以上に薄く延ばされ、その厚さは縮小される。
上記冷間圧延工程の後、圧延された銅圧延材を実体温度(銅圧延材の温度)500℃以上で1分以上焼鈍する。銅合金板の再結晶温度である500℃以上の焼鈍を行うことにより加工変質層は再結晶または結晶性の回復により減少し、加工変質層の厚さは縮小する。ここで、再結晶とは、銅の粒界が歪みの原因である転位を吸収することにより歪みが小さくなり、安定した結晶構造に戻ることである。また、結晶性の回復とは、転位を吸収する再結晶とは異なり、転位が元に戻り、結晶構造の歪みが減少することである。なお、焼鈍時間は、1分以上であることが好ましい。1分よりも少ないと、十分に再結晶化することができず、加工変質層の厚さを効率的に縮小できないためである。
焼鈍された銅圧延材を仕上げ圧延することにより所定の厚さおよび強度を有する銅合金板を形成する。なお、仕上げ圧延工程は、所望とする銅合金板の厚さや強度によって適宜設けられるため、必要のない場合は、上記冷間圧延工程が仕上げ圧延工程となる。
仕上げ圧延工程後の銅合金板を再結晶温度以下で焼鈍することにより、本実施形態に係
る銅合金板を得る。ここで得られる銅合金板の加工変質層の厚さは上記圧延工程と焼鈍工程により100nm以下となっている。この歪除去焼鈍工程により銅圧延材中に残留する転位が元に戻り結晶性が回復する。なお、歪除去焼鈍工程は、実体温度を300℃以上500℃以下、焼鈍時間を1分以上3分以下とすることが好ましい。これは再結晶を起こさず、銅合金板の強度を適切に調節するためである。
とも250℃以上あると好ましい。実施例1の断面BSE像を示す図1(a)および図1(a)の要部拡大図である図1(b)に示すように、銅合金板の表面には加工変質層がほとんど存在しないばかりか、再結晶により、安定した結晶構造となっている。すなわち、酸化膜が形成されても、酸化膜と銅合金との界面が結晶構造の安定したところ(再結晶組織層)に形成されるため、加熱による界面構造の変化が少なく、酸化膜密着性の低下を抑制できる。
Claims (3)
- Feを0.1質量%以上3.0質量%以下、Pを0.01質量%以上0.3質量%以下でそれぞれ含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金の銅圧延材に対して仕上げ圧延する圧延工程を含む銅合金板の製造方法において、
前記銅圧延材をバフ研磨するバフ研磨工程と、
前記バフ研磨工程の後になされる、少なくとも50%以上の圧下率の圧延工程と、を有し、
銅合金板の表面層における加工変質層の厚さを100nm以下にすることを特徴とする
銅合金板の製造方法。 - 請求項1に記載の銅合金板の製造方法において、前記バフ研磨工程の後に、前記銅圧延材を実体温度500℃以上、1分以上の焼鈍をする焼鈍工程をさらに設けることを特徴とする銅合金板の製造方法。
- 請求項1または2に記載の銅合金板の製造方法において、前記銅合金は0.01質量%以上3.00質量%以下のZn、0.01質量%以上3.00質量%以下のSnの少なくとも一方を含むことを特徴とする銅合金板の製造方法。
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