JP2011177982A - ボールペンチップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】後孔2側から、切削刃を放射状に配置した切削冶具Dを挿入して、放射状溝5を非貫通状態にまで穿孔した後、ボールホルダー1の前方よりボール抱持室となる大径部を穿孔し、ボール抱持室と放射状溝とを貫通させるボールペンチップの製造方法。
【選択図】図3
Description
ボールを前方付勢するために、先端にストレート部を有するコイルスプリングを配置する際に、コイルスプリングのストレート部を中心孔に挿入しようとすると、前記バリに引掛り中心孔まで達しないことがあった。また、この放射状溝の幅を、コイルスプリングのストレート部の線径より小さく設定したとしても、後孔錐面に形成された放射状溝周りが脱落していることによりテーパー状に拡形した状態となっているので、ストレート部が挟まってしまい、ボールを前方付勢できず、インキ漏れ、空気巻き込みによるカスレなどのボールペンの品質に大きく影響を与えるので、後孔錐面に形成された放射状溝周りの状態は、極めて重要である。
また、特開平11−348485号公報(特許文献2)には、後孔より放射状に配置された切削刃を有する切削冶具を挿入して、前方ボール抱持室側へ貫通し、後孔錐面にバリ・脱落部を発生させないといったボールペンチップの製造方法が開示されている。
また、上記特許文献2に記載の発明では、後孔より放射状溝加工をするため、後孔錐面にバリ・脱落部の発生はないが、ボールホルダーの形状が先端尖りとなっていると共に、予めボール抱持室が形成されているため、ボールホルダーの先端開口部肉厚が薄く、放射状溝を形成するために切削されて押し退けられていくボールホルダーの肉が、先端側の薄肉部分を押し広げようとするため、ボールホルダー外形部に亀裂が生じてインキが染み出すことがあった。
また、ボール抱持室錐面に形成された放射状溝周りにもバリ・脱落部がないため、ボールがボール抱持室の中心に座るため、ボールホルダーの先端開口部をカシメて縮径し、ボールを抜け止めする工程での真円度が向上し方向性筆跡の抑制となる。
比較的大径のドリルにて後孔となる部分を柱状部材に形成し、次いで比較的小径のドリルにて中心孔となる部分をボールホルダーの後方より所定寸法まで掘り進める。
尚、後孔を深く掘る必要がある場合には、大径のドリルで深く掘り進むのには大きな力が必要であったり、ドリルへの負担も大きいものとなるので、大径〜小径へ径を次第に小径とするようにドリルを替えて、徐々に深く掘り進めることが好ましい。更に、ボールを配置した後にボールを前方付勢するコイルスプリングなどを挿入配置する場合、中心孔と後孔との間に形成される径の差分の段部分を鋭角な傾斜状に形成しておくとコイルスプリングが傾斜面を滑り中心孔に落ち易くなり好ましい。
中心孔を形成するのは、ボール抱持室に設置されるボールの後退規制をなす段部をボール抱持室と後孔との間に形成するためであり、結果的に中心孔はインキの流通量を制限する部分となっている。特に、ボールを前方付勢するコイルスプリングのような他部材を挿入する場合、その挿入物の分インキの流通できる有効横断面積が減少することになるので、その分も考慮した設計寸法値とすることが望まれ、中穴横断面積からコイルスプリング先端ストレート部の線径横断面積を差し引いた有効横断面積がボール投影断面積の0.19以下にならないよう中心孔の径や、長さを調整することによって適正なインキ流量とすることできる。
中心孔の長さは、後述する先端端部側から、大径のドリルにてボール抱持室を形成することによって決められるため予め設定通りの中心孔長さになるよう後孔深さで調節する。
また、ボール抱持室形成前に、切削刃を有する切削冶具を中心孔の途中で止め、非貫通状態に放射状溝を形成するので、切削冶具が切削した面は剪断面となり、切削冶具を止めた放射状溝の上側に切削冶具により押し退けられたボールホルダーの金属肉片が中心孔内に収納された状態となる。ボールホルダーの先端側が非開口状態で放射状溝を形成するため、ボールホルダー先端側が十分な強度があり、放射状溝加工による歪みの発生がない。尚、これに対して、ボール抱持室形成後、放射状溝を形成した場合、放射状溝加工時、その加工抵抗によりボール抱持室の底面が内壁面と底面との接続点を支点に内側に倒れ、設計で意図した先端開口部からの一部ボール突出高さにズレが生じたり、放射状溝を加工した部分の延長線上にあるボール抱持室の壁部分も中心孔方向に倒れが発生し、真円度が損なわれるボール抱持室の歪みが発生することがある。
また、放射状溝の幅は、コイルスプリング先端ストレート部の線径より狭く設定することで放射状溝内へのコイルスプリング先端ストレート部挟まりが防止でき、ボールを前方に付勢することが確実になるだけでなく、インキ流通路が塞がれてインキ流通が阻害されることも防止される。
この際、ドリルの先端部分の開き角度を、最終的に形成するボール抱持室と中心孔との段部の角度に近似したものにしておくと後の加工が少なくて済むので好ましい。
この仕上げ加工は、前述したボール抱持室形成後、放射状溝を形成した場合発生するボール抱持室の歪みを除去する加工も兼ねているので、寸法精度を向上させる以上の仕上げ加工代が必要であるが、ボール抱持室形成前に放射状溝を形成する本発明では、ボール抱持室の歪みが発生せず除去する必要がなく、加工代が少なく済み、刃物の寿命が延びる。
この際、前述したボール抱持室形成後、放射状溝を形成した場合発生するボール抱持室の歪みがなく、また、ボール抱持室錐面に形成された放射状溝周りにもバリや脱落部がないため、ボールがボール抱持室の中心に座り易く、均一なカシメとなり真円度が損なわれない。
尚、カシメ行程を、段部に凹部を形成する工程の後に施した場合には、後穴からピンを挿入してボールを押し上げて、カシメられたボールホルダー先端部分を若干拡開し、ボールが前後に移動可能な空間を形成することもできる。
コイルスプリングの後方移動規制は、ボールホルダーの後端をカシメたり、インキタンクや、インキタンクとの接続部材に形成した段部とすることもできる。また、コイルスプリングは、ボールと当接させる先端部分を直線状に伸ばした形状とすることで、段部の存在などによって細い穴となっている中心孔でも挿入し易く好ましい。
本発明では、後孔の錐面に形成された放射状溝周辺にバリ・脱落部の発生がないため、コイルスプリングが確実に挿入され確実にボールに押圧力を付与することができる。
また、インキの粘度や残量確認などの必要に応じて、インキ界面に接触させて、インキと相溶しない、α−オレフィンやポリブテンなどのゲル化物、シリコーンオイルなどの高粘度流体などをインキ界面に追従して移動するように層状に充填配置することもできる。この高粘度流体は、インキの逆流を抑制する働きをも担いうる。
図1に示すように、ボールホルダー1となる円柱状金属部材をチップ加工機のコレットチャック(図示せず)に固定し、全長を所定の長さにあわせるために前後端をバイト(図示せず)にて切断した後、バイトAを図上の矢印にて示すように回転させながら下降させて、複数に分けて切削して先端外形を先端に向かい縮径するテーパー部1aを形成する。尚、当該バイトAによるテーパー部1aの形成加工は、後述のかしめ加工の前までに実施すればよく、それによって、加工材料の肉厚を維持できて内側加工の影響をより外側に出さない様にすることもできる。
そして、ドリルBにて、後方より後孔2を所定の位置まで穿孔する。
尚、先端外形テーパー部形成と後孔形成工程は、同時でも別工程でもよい。
次に、図2に示すように、後孔2の後方よりドリルCによって、中心孔3を穿孔する。図示のものでは、中心孔3を穿孔する前に、ドリルの中心位置ガイドとなる補助孔3’を形成しているが、補助孔を形成するかどうかは適宜である。補助孔を形成する場合は、後孔2を加工するドリルBの先端角及び、中心孔3を加工するドリルCの先端角より鋭角な先端角のバイトやドリルで中心孔3より大径な補助孔3´とすることが好ましい。ドリルCによる穿孔深さは、後工程による放射状溝の形成長さに加えて、放射状溝を非貫通状態に形成する際に出る切削金属肉片が収納できる長さとなる位置までにすると、非貫通状態でありながらも、切削金属片が穿孔の障害となり難い。
図3に示すように、後孔2と中心孔3とを加工して形成された段部4に、放射状に配置された切削刃を有する切削冶具Dを後孔側から挿入し、切削加工し、中心孔3の途中で切削冶具Dを止め、非貫通状態にインキ流通孔としての放射状溝5を形成する。
ここまでの工程で得られたものの要部縦断面図を図4に示す。
切削冶具Dを後孔側から挿入し、放射状溝5を形成することで、後孔2錐面2aには脱落及びバリの発生が皆無となる。また、非貫通状態に放射状溝5を形成することで切削冶具Dがボール抱持室に貫通する際、発生する脱落及びバリの発生も抑えられる。
また、ボールホルダー1の先端側が非開口状態で放射状溝を形成するので、ボール抱持室の歪みの発生もないが、切削冶具Dを止めた放射状溝5の上側に、切削冶具Dにより押し退けられ排除されたボールホルダーの金属肉片6が発生する。前記中心孔形成工程にて、この金属肉片6が収納できる中心孔3の長さにしていることで、金属肉片6の上側の中心孔3に空間7があるため、切削冶具Dの進行を阻害することがない。
図5に示すように、大径のドリルEでボール抱持室8を形成してボール抱持室8と中心孔3との間に内抱突出部9を形成しつつ、ボール抱持室8と放射状溝5とを貫通させる。
次に、図6に示すように、ボール抱持室8の内壁面8a、底面8bをバイトFにて仕上げ切削する。また、先端面8cもバイトF’にて仕上げ切削すると同時に先端外面取り部8dもバイトF’’にて仕上げ切削する。
ここまでの工程で得られたものの要部縦断面図を図7に示す。図8は図7のI−I’線断面矢視図であり、前述した放射状溝形成工程で脱落・バリのない非貫通状態に放射状溝5を形成しているため、ボール抱持室8を穿孔し、貫通した放射状溝5のボール抱持室8の底面8bの放射状溝5の周辺には、脱落部及びバリがない状態となると同時に、中心孔3内に収納された放射状溝加工時に排除された金属肉片6も除去される。また、ボール抱持室8の歪みもなく、後工程でのボールをボール抱持室8に配置した時、ボールがボール抱持室8の中心に座りボール寄りが抑えられるが、ボール抱持室8の底面8bを切削した際に、放射状溝5のバイトの回転方向側の肉が放射状溝5側に延び、横バリ10が発生し、放射状溝5の一部が塞がれ、インキ流路の減少となる。
図9に示すように、前述した後孔側から非貫通状態に放射状溝5を形成する加工で使用した同一切削冶具Dをボール抱持室側8から挿入し後孔2に貫通させ、ボール抱持室加工工程にて発生した放射状溝5を一部塞いでいる切削横バリ10が除去され、インキ流通路が塞がれてインキ流通が阻害されることが防止される。
図10に示すように、次いで、ボール11をボール抱持室8に配置した後、ボールホルダー1の先端外面取り部8dをローラーなどの圧接加工具Gにて、内方に向かって塑性変形させるかしめ加工を施し、ボール11をボール抱持室8から抜け止めする。
図11に示すように、ボール11に対してハンマー工具Hによって衝撃力を付与し、その塑性変形により内抱突出部9の段部9aにボール11の形状を転写した凹部12を形成する。このハンマー工具Hの内抱突出部9の段部9aへの押し付け深さを調整することにより、ボールが前後に移動可能な空間を形成する。これによって、筆記時にボールが紙面と当接して後退し、インキが吐出される隙間が形成される。
ここまでの工程で得られたものの要部縦断面図を図12に示す(ボール1は破線で表示)。
中心孔3と貫通している後孔2の錐面2aに形成された放射状溝5の周りには、脱落及びバリが皆無なため、コイルスプリング13の先端ストレート部13aが後孔2の錐面2aを滑り落ち、中心孔3内に確実に挿入される。
図14に示すように、コイルスプリング13を設置したボールホルダー1の後端の小径部1cをポリプロピレン樹脂などの押し出し成形パイプであるインキ収納管14の先端に圧入固定する。
インキ収納管14内に、インキ15を充填し、その後、インキ界面に追従体16を充填し、インキ内の空気を除去する遠心工程を経て所謂リフィルとなる。
1aテーパー部
1b後端
1c後端小径部
2 後孔
2a錐面
3 中心孔
3’ 補助孔
4 段部
5 放射状溝
6 金属肉片
7 空間
8 ボール抱持室
8a内壁面
8b底面
8c先端面
8d先端外面取り部
9 内抱突出部
9a段部
10 横バリ
11ボール
12凹部
13コイルスプリング
13a 先端ストレート部
14インキ収納管
15インキ
16追従体
A バイト
B ドリル
C ドリル
D 切削冶具
E ドリル
F バイト
F’ バイト
F’’ バイト
G 圧接加工具
H ハンマー工具
Claims (1)
- ボール抱持室となる前方の大径部を形成する前に、後孔側から、切削刃を放射状に配置した切削冶具を挿入して、放射状溝を非貫通状態にまで穿孔した後、ボールホルダーの前方よりボール抱持室となる大径部を穿孔し、ボール抱持室と放射状溝とを貫通させるボールペンチップの製造方法。
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