JP2004351659A - ボールペンチップの製造方法 - Google Patents

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Yasunori Nakatani
泰範 中谷
Hiroyoshi Yamamoto
博義 山本
Kosaburo Fujita
幸三郎 藤田
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Abstract

【課題】本発明は、ボール後方を弾発部材で弾発し、当該ボールを前記ボール抱持部内壁面先端部に当接することで液密を保持する場合、当該液密が保持及び安定したインキ流出が得られるボールペンチップの製造方法とすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、ボール抱持部の底部に開けられたインキ誘導孔を有するボールペンチップにおいて、ボールをセットしたならば該ボールの重心よりも上方に位置するボール抱持部内壁面先端部を、ボール抱持部先端部内径よりも大きく削るために、ボール抱持部内壁面とボール抱持部先端部内径とを同時に削れる半月バイトでさらい加工して該抱持部内に段差を設け、該抱持部内にボールを挿入し、その後カシメ加工具により、前記抱持部先端部をカシメ加工して縮径部を形成して前記抱持部にボールを回動可能に抱持させるボールペンチップの製造方法とすることで、上記目的を達成するものである。
【選択図】図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、先端にカシメ加工を施し縮径部を形成することにより、筆記部材としてのボールを内孔より一部突出してなる水性・中粘度水性ボールペンチップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ボールペンチップにおいて、ボールを抱持するために、ボールペンチップのインキ誘導孔及びボール抱持部を切削加工などにより形成した後、一般に、水性・中粘度水性用ボールペンチップの場合は、カシメ加工具によりホルダー先端部をボールに当接させない範囲で内方に塑性変形させることによりボール抱持部を形成する方法が知られている。
【0003】
ボールペンは前記カシメ加工により形成されたホルダー先端部とボールとの隙間よりインキを吐出するので、前記隙間の大小によりインキ流出量及び描線幅などが変化し、完成体の品質に大きく影響する。よって、この隙間の間隔を一定に保つことがインキ流量を一定に保つための重要なファクターであり、かしめる際にボール下方より別部材でボールを突き上げ、その状態でカシメ加工を行い隙間を安定させる方法、また、カシメ加工を行った後にボール上方から長手方向に押圧力を付与し、ボール受け座部を陥没変形させ隙間を安定させる方法が知られている。
【0004】
また、特開平11−268467号公報(特許文献1参照)では、通常の水性・中粘度水性用ボールペンチップは、ボールに当接させずにカシメ加工で塑性変形させる方法については、連続加工におけるカシメツールセッティング状態及び摩耗等の経時的な変化、またはチップ先端の寸法形状により、塑性変形量及びスプリングバック量に差が発生し、ボールとボール抱持部間の隙間にバラツキが生じる。この時、カシメによる変形量が少ないとボール飛びしやすく、また、変形量が多いとボール抱持部下方まで塑性変形されてしまい、インキ量の不足が生じたり、特に、または金・銀インキのようにインキ組成物の粒子径が大きなものは筆記性能の低下を生じやすくなってしまうと言う問題やボールに当接させてカシメ加工を施す方法については、その性質上、ボール抱持部の体積やボール受け座部の表面積が大きくなるので、筆記時のボールの踊りや摩擦力増加などにより、筆記感が悪くなる問題を解決するためにボール抱持部の底部に開けられたインキ誘導孔を有するボールペンチップにおいて、ボールをセットしたならば該ボールの重心よりも上方に位置するボール抱持部内壁面先端部を、ボール抱持部先端部内径よりも径の大きなドリル、ミル、リーマなどでさらい加工して該抱持部内に段差を設け、該抱持部内にボールを挿入し、その後カシメ加工具により、前記抱持部先端部をカシメ加工をして縮径部を形成して前記抱持部にボールを回動可能に抱持させるボールペンチップの製造方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−268467号公報
【0006】
しかし、ボール抱持部先端部内径よりも径の大きなドリル、ミル、リーマなどでさらい加工すると、ボール抱持部内壁面先端部の表面が粗くなり、また2次加工によるボール抱持部先端部外形の膨れやボール抱持部先端部内径とボール抱持部内壁面先端部のセンターずれが起こりボール抱持部内壁面先端部の変形が発生するために、ボール後方をコイルスプリング等の弾発部材で弾発し、当該ボールを前記ボール抱持部内壁面先端部に当接することで液密を保持しようとした場合、当該液密が保持できない問題や安定したインキ流出が得られないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ボール後方をコイルスプリング等の弾発部材で弾発し、当該ボールを前記ボール抱持部内壁面先端部に当接することで液密を保持しようとした場合、当該液密が保持でき、また安定したインキ流出が得られるボールペンチップの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ボール抱持部の底部に開けられたインキ誘導孔を有するボールペンチップにおいて、ボールをセットしたならば該ボールの重心よりも上方に位置するボール抱持部内壁面先端部を、ボール抱持部先端部内径よりも大きく削るために、ボール抱持部内壁面とボール抱持部先端部内径とを同時に削れる半月バイトでさらい加工して該抱持部内に段差を設け、該抱持部内にボールを挿入し、その後カシメ加工具により、前記抱持部先端部をカシメ加工して縮径部を形成して前記抱持部にボールを回動可能に抱持させることを特徴とするボールペンチップの製造方法であり、ボール後方をコイルスプリング等の弾発部材で弾発し、当該ボールを前記ボール抱持部内壁面先端部に当接することで液密を保持しようとした場合、当該液密が保持でき、また安定したインキ流出が得られる効果を有するものである。
【0009】
本発明を例えば、図2〜4を参照して説明する。本発明では、水性・中粘度水性用等のボールペンチップに適用するのに、ボールfを抱持するために、ボールペンチップのインキ誘導孔d及びボール抱持部bを切削加工などにより形成した後、さらにボール抱持部b径よりも刃径の大きな半月バイトhで、ボール抱持部bとボールfの重心f1よりも上方のボール抱持部b内面先端部を同時にさらうことにより、段差部aを形成する。その後、ボール抱持部b先端をカシメ加工する際に、カシメ加工具gによる内方への応力は前記段差部aに集中し、そこを支点に塑性変形される。これにより、塑性変形されるボール抱持部b先端部分と塑性変形されないボール抱持部b下方部分との変曲点のバラツキがなく、またボール抱持部b先端部分の変形もなくなり、また、変曲点をあらかじめ有しているためスプリングバックも抑制され、ボールf・ボール抱持部b間の隙間を適切に保つことが可能になるとともに、ボール後方をコイルスプリング等の弾発部材で弾発し、当該ボールを前記ボール抱持部内壁面先端部に当接することで液密を保持しようとした場合、当該液密が保持でき、また安定したインキ流出が得られることが可能となる。
【0010】
これにより、従来は連続加工におけるカシメツールセッティング状態及び摩耗等の経時的な変化、またはチップ先端の寸法形状をリニアにうけてしまっていたが、上記段差部を設けることにより、従来以上の範囲のバラツキを許容することが可能になる。よって、結果的には完成体としてボールペンチップの品質向上につながる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は実施形態に係る、水性・中粘度水性用ボールペンチップの完成後の説明図、図2〜図4は製造方法の説明図である。ボールペンチップのホルダーcには、ボールfを先端から一部突出させてボールfを包み込むように保持する概略椀内形状のボール抱持部bを形成しており、そのボール抱持部bの底面の中心には、インク誘導孔dが図示しないインクタンク保溜体あるいはインクタンクに向けて開けられている。そして、インク誘導孔dには、それを中心として放射溝eが形成されている。
【0012】
図2に示すように、ホルダーcに形成されたボール抱持部bの底面の中心には、インキ流路となるインキ誘導孔dと、それを中心とした放射状溝を切削加工により形成する。その後、ボール抱持部b径D1よりも大きな刃径D2の半月バイトhで、ボール抱持部bとボールfの重心f1よりも上方のボール抱持部b内面先端部を同時にさらうことにより、段差部aを形成する。半月バイト加工された段差部aは塑性変形の変曲点の働きをするので、深さはカシメ幅に近い値が好ましく、また刃径D2の段差は、段差部aが有りすぎると完全にボールfを抱持出来なくなるので、変曲点の働きを阻害しない範囲でボール抱持部b径に近い値が好ましい。
【0013】
半月バイト加工後には、図3のように、ボール抱持部b内にボールfを挿入する。その後、図4に示すように、周縁が下細いテーパー状の斜面のあるカシメ加工具gの当該斜面g1を上方に向けたボール抱持部b先端に押圧して互いに回転させることにより該抱持部b先端に対して内方にカシメ加工を行う。その際には、カシメ加工による応力は半月バイト加工で形成された段差部aに集中し、ボール保持部bはその段差部aを変曲点として塑性変形される。したがって、連続加工におけるカシメツールセッティング状態及び摩耗等の経時的な変化、またはチップ先端の寸法形状などのバラツキを許容できる。また、段差部aの存在で従来のカシメ加工よりも小さな応力で加工可能になることにより、摩耗などの面からもメリットがあり、ツール寿命を延ばすことが可能になる。また、塑性変形し易いと言う点から、変形後のスプリングバック量も抑制することが出来るという利点もあるとともに、ボール抱持部b内面先端部のセンターズレや変形がないため、ボール後方をコイルスプリング等の弾発部材で弾発し、当該ボールを前記ボール抱持部内壁面先端部に当接することで液密を保持しようとした場合、当該液密が保持でき、また安定したインキ流出が得られる効果を有するものである。
【0014】
【発明の効果】
以上のように本発明のボールペンチップの製造方法によれば、大量生産においてもカシメ加工におけるバラツキが少なく、ボール抱持部内壁面先端部の表面祖度が向上し、また2次加工によるボール抱持部先端部外形の膨れやボール抱持部先端部内径とボール抱持部内壁面先端部のセンターずれが起こりボール抱持部内壁面先端部の変形が少なく、ボール後方をコイルスプリング等の弾発部材で弾発し、当該ボールを前記ボール抱持部内壁面先端部に当接することで液密を保持しようとした場合、当該液密が保持でき、また安定したインキ流出が得られる効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係わるボールペンチップの構造を示す縦断面図である。
【図2】ボールペンチップに半月バイト加工を示す縦断面図である。
【図3】ボールペンチップのカシメ加工前の形状を示した縦断面図である。
【図4】ボールペンチップのカシメ加工後の形状を示した縦断面図である。
【符号の説明】
a 半月バイト加工される段差部
b ボール抱持部
c ホルダー
d インキ誘導孔
e 放射状溝
f ボール
g カシメ加工具

Claims (1)

  1. ボール抱持部の底部に開けられたインキ誘導孔を有するボールペンチップにおいて、ボールをセットしたならば該ボールの重心よりも上方に位置するボール抱持部内壁面先端部を、ボール抱持部先端部内径よりも大きく削るために、ボール抱持部内壁面とボール抱持部先端部内径とを同時に削れる半月バイトでさらい加工して該抱持部内に段差を設け、該抱持部内にボールを挿入し、その後カシメ加工具により、前記抱持部先端部をカシメ加工して縮径部を形成して前記抱持部にボールを回動可能に抱持させることを特徴とするボールペンチップの製造方法。
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