JP2006341492A - 油性ボールペン用チップおよび該チップを用いた油性ボールペン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 チップ本体10の前端側に略凹状のボールハウス11を形成し、該ボールハウス11内に転写ボール20を回転自在に抱持するようにした油性ボールペン用チップにおいて、前記ボールハウス11内で前記転写ボール20をその後方側から略環状に受けるボール受座15と、該ボール受座15をチップ軸方向へ貫通する複数のブローチ溝14とを備え、複数のブローチ溝14の総面積a/ボール受座15の総面積bにより算出される面積比であるK値を、0.66よりも大きく且つ0.80よりも小さい範囲内の値とした。
【選択図】 図3
Description
そのため、必然的に、従来のボールペンは、前記のような再生紙でない紙を筆記対象物とするように開発されていた。再生紙でない紙を筆記対象物としたボールペンの問題点としては、チップ先端側のエッジ部分が紙面を引っ掻いて削ってしまい、その際に発生した紙繊維が転写ボールに巻き込まれて、線割れや線薄等の筆記線異常の要因となる場合があった。そして、このような問題を解決する手段としては、例えば特許文献1に記載された発明のように、ボールペンチップの先端側のエッジ部分を面取り加工により無くすようにしたものがあった。
本願発明者は、従来のボールペンにより再生紙でない紙に筆記を行った場合と、従来のボールペンにより再生紙に筆記を行った場合とを実験的に比較したところ、後者(再生紙)の場合の方が筆記線異常を生じる可能性が高く、特に、油性ボールペンの場合にその不具合が顕著であることに気づいた。
前記不具合は、再生紙の紙粉が転写ボールに巻き込まれてチップ内に残留してしまうことが要因と考えられる。すなわち、再生紙では、木材チップを原料としている再生紙でない紙と比較し、紙粉の発生が多い。紙粉は、紙繊維よりも粒子が小さいため、従来構造のボールペンによれば、転写ボールに巻き込まれてチップ内に残留してしまう可能性が高い。
第一の発明によれば、複数のブローチ溝の総面積/ボール受座の総面積により算出される面積比を上記値としたことにより、製造バラツキによる不良の発生を最小限とした範囲内で、ボールハウス内のインクの流れのレイノルズ数を小さくできるため(すなわちインクの流れを乱流から層流に変化させることができるため)、ボールハウス内においてインクの流動の少ない部分を減少させて、ボールハウス内の紙粉の残留を防止することができる。
したがって、紙粉の巻き込みに起因する筆記線異常を防ぐことができる。
油性ボールペン用チップAは、チップ本体10の前端側に形成された略凹状のボールハウス11内に、回動自在に転写ボール20を抱持している。
該チップ本体10の後端側は、図示を省略しているが、油性インクを充填するための管体や軸筒等に接続可能な筒状に形成されている。
そして、このボールハウス11の底面(図1における下側面)は、後方へ向かって徐々に縮径する傾斜状に形成され、該底面の軸心側には、挿入される転写ボール20の押圧により、後述するボール受座15が形成される。
また、インク通路13は、インク誘導孔12と連通した通路であり、詳細には、インク誘導孔12よりも後方へ向かって徐々に拡大し、更に後方側(図示省略)を略円筒状の空間としている。
各ブローチ溝14は、インク通路13の周壁を軸方向へ貫通した所謂ストレートブローチであり、詳細に説明すれば、その前端をボールハウス11内の空間に連通し、その後端をインク通路13に連通し、更に、そのチップ中心側をインク誘導孔12に連通しており、本実施の形態の好ましい一例によれば、該ブローチ溝14の幅寸法wを0.135mmに設定している。
そして、このブローチ溝14は、インク誘導孔12およびインク通路13内のインクを、転写ボール20とボールハウス11内周面の隙間へ導く。なお、図示した好ましい一例によれば、このブローチ溝14の数を5つとしている。
なお、前記総面積aとは、図2に二点鎖線で示すように、複数のブローチ溝14により形成される空間の前端面における総面積である。
すなわち、この転写ボール20の表面粗さが小さすぎる場合には、その表面に存在する多数の微小な凹凸部分によってボールハウス11内の紙粉を掻き出す(排出する)という効果が現出し難いため、チップ本体10内に残留する紙粉が多くなってしまう。そして更に、筆記時における紙表面との摩擦が小さくなるため、転写ボール20がスリップし易くなり、筆記線異常等の要因となってしまう。
また、逆に、転写ボール20の表面粗さが大きすぎる場合には、その表面に存在する多数の微小な凹凸部分によってボールハウス11内の紙粉を掻き出す(排出する)という効果が顕著に現出する一方で、その粗い転写ボール20表面により紙面が傷つけられ、その損傷により、紙粉よりも大きい紙の微細断片や紙繊維等が転写ボール20に巻き込まれる易くなるため、その結果、筆記線異常等が生じ易くなってしまう。
そこで、本願発明者は、試行錯誤の実験の末に、転写ボール20の表面粗さRa(JISB0601に規定された中心線平均あらさ)の適切な値を、5〜10nmの範囲内とし、より好ましくは約7nmとし、本実施の形態の油性ボールペン用チップAに適用している。なお、前記表面粗さには、±2nm程度の製造上の誤差を有する。
また、本実施の形態の好ましい一例によれば、この転写ボール20の外径は、約0.7mmとしている。
この油性ボールペンの構造は、例えば、油性インクを充填した管体の先端に油性ボールペン用チップAを装着することでリフィールを構成し、該リフィールを軸筒内に支持するようにした態様や、油性インクが直接充填された軸筒の先端に油性ボールペン用チップAを装着するようにした態様等とすることが可能である。
また、この油性ボールペンに用いられるインクは、特に好ましいものとして、図4の表に示す組成および粘度の油性インクとしている。なお、図示例では、特に好ましい値として、温度約35゜Cの条件における粘度の設計値を2500mPa.sとしているが、実際に製造されるインクは、製造上の誤差等により2000〜3000mPsの範囲内の粘度となる。
この実験に用いたボールペンは、その筆記先端部に上記構造の油性ボールペン用チップAを備え、図4の表に示す組成および粘度の油性インクを充填したものである。
また、この実験に用いた再生紙は、図5(a)の電子顕微鏡写真に示す一般的な再生紙であり、参考例として図5(b)の電子顕微鏡写真に示す再生紙でない紙と比較し、紙繊維間の紙粉が顕著に多いものである。
すなわち、筆記線異常率は、K値が大きくなるにつれて徐々に減少し、K値が略0.66を超えた時点で、顕著に急激な減少があり、その時点以降も徐々に減少するという傾向があった。
また、圧痕径xは、K値が大きくなるにつれてバラツキ(図3の上のグラフにおける上下幅)が大きくなる傾向があり、特に、K値が0.80以下の範囲内では前記バラツキが小さいが、K値が0.80よりも大きくなると、前記バラツキが顕著に大きくなる傾向があった。
本願発明者は、筆記線異常率の減少が著しくなるポイントを実験的に見出し、該ポイントよりも大きい範囲に、適切なK値を設定することにした。
本願発明者は、この圧痕径xのバラツキが著しく急増するポイントを実験的に見出し、該ポイントよりも小さい範囲に、適切なK値を設定することにした。
なお、圧痕径xのバラツキが大きい場合の不具合としては、転写ボール20がボールハウス11から突出する寸法のバラツキが大きくなったり、転写ボール20とボールハウス11との隙間寸法のバラツキが大きくなったり等するため、転写ボール20がボールハウス11から外れてしまうボール飛び不良や、チップ先端から過剰にインクを流出してしまうボテやダレ等の不良を生じ易くなることが懸念される。
更に、本実施の形態の油性ボールペン用チップAでは、圧痕径xの製造バラツキに起因する不良の発生をより確実に回避できるように、前記範囲の上限値から安全率を考慮して、K値に0.73を適用した。
11:ボールハウス
14:ブローチ溝
15:ボール受座
20:転写ボール
a:複数のブローチ溝の総面積
b:ボール受座の総面積
x:圧痕径
A:油性ボールペン用チップ
Claims (4)
- チップ本体の前端側に略凹状のボールハウスを形成し、該ボールハウス内に転写ボールを回転自在に抱持するようにした油性ボールペン用チップにおいて、
前記ボールハウス内で前記転写ボールをその後方側から略環状に受けるボール受座と、該ボール受座をチップ軸方向へ貫通する複数のブローチ溝とを備え、
複数のブローチ溝の総面積/ボール受座の総面積により算出される面積比を、0.66よりも大きく且つ0.80よりも小さい範囲内の値としたことを特徴とする油性ボールペン用チップ。 - 上記面積比を、0.73としたことを特徴とする請求項1記載の油性ボールペン用チップ。
- 筆記先端部に請求項1又は2記載の油性ボールペン用チップを用いた油性ボールペンであって、
上記転写ボールの表面粗さRaを5〜10nmの範囲内とし、油性インクのインク粘度を温度約35゜Cの条件で約2500mPa・sとしたことを特徴とする油性ボールペン。 - 上記転写ボールの表面粗さRaを約7nmとしたことを特徴とする請求項3記載の油性ボールペン。
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