JP2010184495A - 油性ボールペンリフィル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る油性ボールペンリフィル10は、ボールペンチップ15内に装着され、その先端部分が前記筆記ボール30を先端へ押圧する押圧棒41として形成されている押し荷重が0.010N以上かつ0.090N以下のスプリング40を備え、ボールハウス24内径が筆記ボール30径の104.0%以上かつ108.5%以下であり、ボール受座25径が筆記ボール30径の80.0%以上かつ90.0%以下であり、カシメ部22の角度が70°以上かつ90°以下である。
【選択図】図3
Description
この「ボテ」を抑制すべく、下記の特許文献1記載の発明のように、ボール受座を大きくすることが試みられることがある。そして、ボール受座を大きくすることで筆記ボールを収容するボールハウス内でのインク溜まりが小さくなる。これによりインク流量が少なくなったり、高速で筆記した場合に描線が追従しきれなくなったりする。そのため、ボールハウス径を大きくすることで対処する、と同文献には記載されている。一方、同文献にはまた、筆記ボールを先端方向へ付勢するスプリングをボールペンチップ内に備えることで、非筆記時において筆記ボールとボールペンチップ先端のカシメ部との間をシールし、耐乾燥性を付与する、ということも記載されている。
上記の問題点に鑑み、本発明は、径が0.7mm未満、特に0.5mm〜0.6mmの筆記ボールを使用した油性ボールペンリフィルにおいて、インク流量を少なくすることなく、ボールペンチップ内への紙巻き込みに伴う不具合を解消することを課題とする。
前記ホルダー20の一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部21と、
前記テーパー部21の内周を切削して形成したボールハウス24と、
前記ホルダー20の他端から前記ボールハウス24の近傍まで穿孔して形成したバック孔23と、
前記ボールハウス24と前記バック孔23との間を貫通して形成したインク孔26と、
前記インク孔26の周囲に等配された複数箇所を前記ボールハウス24側から切削して形成した溝であるチャンネル溝27と、
前記ボールハウス24内に挿入されるとともに径が0.5mm以上かつ0.6mm以下である筆記ボール30と、
前記ボールハウス24の底面24aにおいて前記筆記ボール30をバック孔23方向へ押圧した際に該筆記ボール30の曲面が転写されたボール受座25と、
前記テーパー部21の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部22と、
前記バック孔23内部に挿入されるとともに先端部分が前記筆記ボール30を先端へ押圧する押圧棒41として形成されている押し荷重が0.010N以上かつ0.090N以下のスプリング40とを備えたボールペンチップ15と、
油性インク12を収容しかつ前記ボールペンチップ15が先端に装着される両端開放円筒状のインク収容管11とを備えた油性ボールペンリフィル10であって、
前記ボールハウス24内径が前記筆記ボール30径の104.0%以上かつ108.5%以下であり、
前記ボール受座25径が前記筆記ボール30径の80.0%以上かつ90.0%以下であり、
前記カシメ加工して形成したカシメ部22の角度が70°以上かつ90°以下であることを特徴とする。
このボールペンチップ15は、インク収容管11の先端に装着されるが、インク収容管11に直接収容されることとしてもよいし、継手14を介して装着されることとしてもよい。
「ボールハウス24内径」は筆記ボール30を収容する空間の大きさを規定する。そして、筆記ボール30を収容した際に筆記ボール30が占める空間以外の空間であるところのいわゆる「インク溜まり」の容積を規定することにもなる。このインク溜まりには、筆記の際巻き込まれてきた筆記用紙繊維が入り込むことになる。よって、ボールハウス24内径が規定するインク溜まりの容積は、繊維の入り込みやすさと、入った繊維の排出されやすさとの両方に関わることとなる。
「ボール受座25径」は筆記ボール30の回転しやすさを規定し、やはり繊維の入り込みやすさと、入った繊維の排出されやすさとの両方に関わることとなる。
このボール受座25径が、筆記ボール30径の80.0%を下回ると、筆記ボール30の回転によりボール受座25の特定の部位が摩耗しやすくなる。一方、90.0%を上回ると、筆記ボール30の回転が阻害されてインクの流れも悪くなり、描線のかすれなどが起こりやすくなる。よって、ボール受座25径は筆記ボール30径の80.0%以上かつ90.0%以下の範囲内が適当である。
このカシメ部22の角度が70°を下回ると、カシメ部22と筆記ボール30との接触がより密であるために巻き込んだ繊維がカシメ部22で引っかかりやすくなり筆記に不適である。一方、90°を上回ると、カシメ部22での繊維の引っかかりはなくなるもののカシメ部22にインクのボテが付着しやすくなりやはり不適である。よって、カシメ部22の角度は70°以上かつ90°以下の範囲内が適当である。
このスプリング40の押し荷重が、0.010N未満であると、非筆記時における筆記ボール30とカシメ部22との密着が弱いので、インク溜まりが乾燥しやすくなる。そのため、書き始めの描線がかすれやすくなる。一方、0.090Nを上回ると、筆記圧をかけても筆記ボール30が押し戻されにくくなる。したがって、書き味を損ねることになる。よって、スプリング40の押し荷重は0.010N以上かつ0.090N以下の範囲内が適当である。
図1は、本発明の1の実施の形態に係る油性ボールペンリフィル10の正面断面図である。
両端が開放したポリプロピレン製の円筒形状のインク収容管11の一端に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)製の継手14を介してボールペンチップ15が装着されている。なお、継手14内には、筆記先端を上向きにして放置した際の空気の流入に伴うインクの逆流を防止する目的で、逆流防止ボール16が挿入されている。インク収容管11には油性インク12が充填されている。この後端側に、グリース状の物質であるインク追従体13が充填されている。このインク追従体13は、油性インク12がインク収容管11の後端から流出するのを防止するための栓の役割を果たす。
ボールペンチップ15は、ステンレス鋼製の円柱材を切削して形成されるホルダー20と、ホルダー20の先端に装着される超硬合金製の筆記ボール30と、ホルダー20内部に嵌装されるスプリング40とから構成される。
ホルダー20の先端部は、図2(A)に示すように、円錐状に先細に形成されたテーパー部21となっている。テーパー部21の先端は内方に縮径するように押圧変形されたカシメ部22となっており、先端から一部が覗いている筆記ボール30を抱持している。一方、ホルダー20の後端部の外径は縮径されており、この部分が図1に示す継手14に挿入される挿入部28となっている。
ボールハウス24内に筆記ボール30が挿入されている。このボールハウス24の径(H)は筆記ボール30の径(B)の104.0%以上かつ108.5%以下である。この筆記ボール30は内方に押圧変形されたカシメ部22によって抱持されている。このカシメ部22のなす角度(α)は、70°以上かつ90°以下である。カシメ部22の先端側と筆記ボール30とは、筆記ボール30の移動により、カシメ部22の内面に当たるシール面22aで筆記ボール30と直接接触する。このシール面22aの軸方向に沿った長さ(S)は、0.020mm以上かつ0.050mm以下である。ボールハウス24の底面24aには、筆記ボール30が挿入後に後方に押圧されるいわゆる「叩き」工程によって筆記ボール30の曲面が転写されたボール受座25が形成されている。このボール受座25の径(R)は、筆記ボール30の径(B)の80.0%以上かつ90.0%以下である。また、ボールハウス24の底面24aから、インク孔26周囲の5箇所に等配されたチャンネル溝27が形成されている。このチャンネル溝27は、ボール受座25に筆記ボール30が接触している状態において、インク孔26とボールハウス24とのインクの流通を確保するための構造である。
前記溶剤に可溶な樹脂は、様々な目的のために用いられる。たとえば、固形分の調整、ペン先の摩耗抑制、色材の定着性及び固着性向上、粘度調整、耐擦過性の向上、顔料分散などが挙げられる。したがって、用いられる樹脂は目的に応じて、その種類や分子量、インク配合量が適宜選択される。具体的には、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂を含むテルペン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサン系樹脂、ポリビニルピロリドン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラールなどが挙げられる。
以下、下記各実施例及び比較例に示す構成のボールペンチップを図1に示すような油性ボールペンリフィルに組み込んで、下記の各試験に供した。なお、全ての実施例及び比較例において、インク収容管に充填した油性インクの組成は、以下の通りであった。
スピロンブラックGMHスペシャル(保土ヶ谷化学工業):8.0重量%
バリファーストバイオレット#1702(オリエント化学工業):20.0重量%
スピロンイエローC−GNH(保土ヶ谷化学工業):5.0重量%
ポリビニルブチラール BM−1(積水化学):6.0重量%
YSポリスター T−130(ヤスハラケミカル):4.0重量%
3−メトキシブタノール:57.0重量%
上記組成で得られた油性インクの粘度は1,100mPa・s(25℃、剪断速度:3.83/s)であった。
また、全ての実施例及び比較例において、ボールペンチップに装着した筆記ボールの径は0.5mmであった。
JIS規格S6039に準拠した筆記試験機(ミニテック筆記試験機、三菱鉛筆)を用い、筆記速度4m/分、筆記角度70°、筆記加重1.96N及び筆記距離100mの筆記条件で、JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に螺旋筆記することにより筆記試験を行った。判定方法は以下の基準に従い、100m筆記終了時におけるインク流出量(インク消費量)を、その描線の質に鑑み、より適正な順に「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:28mg超かつ33mg以下
B:25mg超かつ28mg以下又は33mg超かつ35mg以下
C:23mg超かつ25mg以下又は35mg超かつ38mg以下
D:23mg以下又は38mg超。
JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に、7〜10秒の間に55〜60mmの大きさの螺旋を25〜30個連続的に筆記することにより筆記試験を行った。筆記した描線中、カスレの長さがどのくらいであるかにつき、下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:1mm未満
B:1mm以上かつ3mm未満
C:3mm以上かつ5mm未満
D:5mm以上。
前記試験1と同様の条件で筆記試験を実施し、筆記終了時に、ホルダーに付着したインク塊(ボテ)の量を0(なし)、1(少ない)、2(やや多い)、3(多い)及び4(極めて多い)の5段階で点数化し、また、筆記面に付着したボテの量を同様に5段階で点数化した。そして、これらの点数の合計により、下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:0〜1点
B:2〜3点
C:4〜5点
D:6〜8点。
前記試験1と同様の条件(ただし筆記距離は1,000mとした。)で筆記試験を実施した。そして、筆記前後における筆記ボール頂点とカシメ部の先端縁との距離を測定してその差により下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:1μm未満
B:1μm以上2μm未満
C:2μm以上3μm未満
D:3μm以上。
前記試験1と同様の条件で筆記試験を実施した。そして、筆記開始時からのカスレ距離を測定し、その長さにより下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:1mm未満
B:1mm以上3mm未満
C:3mm以上5mm未満
D:5mm以上。
前記試験2と同様の条件で筆記試験を実施した。その際の書き味を下記の基準で官能評価した。
A:紙への引っかかり感がなく滑るように滑らかな書き味であった
B:紙への引っかかり感がなく滑らかな書き味であった
C:やや紙への引っかかり感があるものの概ね滑らかな書き味であった
D:紙への引っかかり感があり滑らかな書き味ではない。
試験1と同様の条件で筆記試験を実施しインク流出量を確認した。その後、同じ筆記試験機を用い、筆記速度4m/分、筆記角度40°、筆記加重2.35N及び筆記距離25mの筆記条件で、藁半紙上に螺旋筆記することにより強制的に紙を巻き込ませた。そして再度、試験1と同様の条件で筆記試験を実施し筆記流量の低下率により紙巻き込み性を確認した。更に試験1と同様の条件で筆記試験を実施し、筆記流量の回復により巻き込んだ紙の排出性を確認した。判定は下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:紙巻き込みがなく、筆記できた
B:やや紙を巻き込むが、巻き込んだ紙を排出でき、筆記できた
C:紙を巻き込むが、概ね紙を排出でき、筆記できた
D:紙を巻き込み、紙を排出できず、筆記できない。
(2−1)ボール受座径
ボールハウス内径を0.530mm(筆記ボール径比106.0%)、スプリングの押し荷重を0.030N及びカシメ部の角度を85°に固定した条件下で、ボール受座径の適正な範囲を検討した。すなわち、ボール受座径を下記表1の通り0.390mm〜0.460mmの範囲内で変化させた場合において、各試験項目の評価は下記表1の通りであった。
ボール受座径を0.430mm(筆記ボール径比86.0%)、スプリングの押し荷重を0.030N及びカシメ部の角度を85°に固定した条件下で、ボールハウス内径の適正な範囲を検討した。すなわち、ボールハウス内径を下記表2の通り0.505mm〜0.550mmの範囲内で変化させた場合において、各試験項目の評価は下記表2の通りであった。
ボール受座径を0.430mm(筆記ボール径比86.0%)、ボールハウス内径を0.530mm(筆記ボール径比106.0%)及びカシメ部の角度を85°に固定した条件下で、スプリング押し荷重の適正な範囲を検討した。すなわち、スプリング押し荷重を下記表3の通り0.005〜0.100Nの範囲内で変化させた場合において、各試験項目の評価は下記表3の通りであった。
ボール受座径を0.430mm(筆記ボール径比86.0%)及びボールハウス内径を0.530mm(筆記ボール径比106.0%)及びスプリングの押し荷重を0.030Nに固定した条件下で、カシメ角度の適正な範囲を検討した。すなわち、カシメ角度を下記表4の通り65°〜100°の範囲内で変化させた場合において、各試験項目の評価は下記表4の通りであった。
ボール受座径を0.430mm(筆記ボール径比86.0%)及びボールハウス内径を0.530mm(筆記ボール径比106.0%)及びスプリングの押し荷重を0.030Nに固定した条件下で、シール面の長さの適正な範囲を検討した。すなわち、カシメ部を調整してシール面の長さを下記表5の通り0.008mm〜0.065mmの範囲内で変化させた場合において、各試験項目の評価は下記表5の通りであった。
ボール受座径を0.430mm(筆記ボール径比86.0%)及びボールハウス内径を0.530mm(筆記ボール径比106.0%)及びスプリングの押し荷重を0.030Nに固定した条件下で、ボール縦移動量の適正な範囲を検討した。すなわち、カシメ部を調整してボール縦移動量を下記表6の通り0.002mm〜0.012mmの範囲内で変化させた場合において、各試験項目の評価は下記表6の通りであった。
ボール受座径を0.430mm(筆記ボール径比86.0%)及びボールハウス内径を0.530mm(筆記ボール径比106.0%)及びスプリングの押し荷重を0.030Nに固定した条件下で、ボール横移動量の適正な範囲を検討した。すなわち、カシメ部を調整してボール横移動量を下記表7の通り0.002mm〜0.018mmの範囲内で変化させた場合において、各試験項目の評価は下記表7の通りであった。
11 インク収容管 12 油性インク 13 インク追従体
14 継手 15 ボールペンチップ 16 逆流防止ボール
20 ホルダー 21 テーパー部
22 カシメ部 22a シール面
23 バック孔 24 ボールハウス 24a 底面
25 ボール受座 26 インク孔 27 チャンネル溝
28 挿入部 28a 内方突起
30 筆記ボール
40 スプリング 41 押圧棒
Claims (5)
- 円柱材を切削して形成されるホルダーと、
前記ホルダーの一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部と、
前記テーパー部の内周を切削して形成したボールハウスと、
前記ホルダーの他端から前記ボールハウスの近傍まで穿孔して形成したバック孔と、
前記ボールハウスと前記バック孔との間を貫通して形成したインク孔と、
前記インク孔の周囲に等配された複数箇所を前記ボールハウス側から切削して形成した溝であるチャンネル溝と、
前記ボールハウス内に挿入されるとともに径が0.5mm以上かつ0.6mm以下である筆記ボールと、
前記ボールハウスの底面において前記筆記ボールをバック孔方向へ押圧した際に該筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
前記テーパー部の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部と、
前記バック孔内部に挿入されるとともに先端部分が前記筆記ボールを先端へ押圧する押圧棒として形成されている押し荷重が0.010N以上かつ0.090N以下のスプリングとを備えたボールペンチップと、
油性インクを収容しかつ前記ボールペンチップが先端に装着される両端開放円筒状のインク収容管とを備えた油性ボールペンリフィルであって、
前記ボールハウス内径が前記筆記ボール径の104.0%以上かつ108.5%以下であり、
前記ボール受座径が前記筆記ボール径の80.0%以上かつ90.0%以下であり、
前記カシメ加工して形成したカシメ部の角度が70°以上かつ90°以下であることを特徴とする油性ボールペンリフィル。 - 前記カシメ部の内側面のうち前記筆記ボールと接触し得る部分であるシール面の軸方向に沿った長さは0.020mm以上かつ0.050mm以下であることを特徴とする請求項1記載の油性ボールペンリフィル。
- 前記筆記ボールが前記ボールハウス内で軸方向に沿って移動可能な距離は0.004mm以上かつ0.009mm以下であることを特徴とする請求項1記載の油性ボールペンリフィル。
- 前記筆記ボールが前記ボールハウス内で軸方向と直交する方向に沿って移動可能な距離は0.005mm以上かつ0.015mm以下であることを特徴とする請求項1記載の油性ボールペンリフィル。
- インク消費量が100mあたり25mgから40mgであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の油性ボールペンリフィル。
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