本発明の第一の特徴は、油性ボールペンレフィルにおいて、前記インキ流通溝の底壁と前記インキ流通孔とが連接する位置が、長手方向において、前記ボールの後端と略同位置とするとともに、20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が、10000〜50000mPa・s、前記油性ボールペンレフィルの100mあたりのインキ消費量が、前記ボールのボール径をPmm、前記インキ消費量をQmgとしたとき、30≦Q/P≦100を満足することである。
前述の通り、濃い筆跡を得るには、染料濃度を高めること、紙面にインキを多く吐出することが考えられるが、染料濃度を濃くすると、経時安定性が低下する傾向となり、単にインキ消費量を多くすると、インキ垂れ下がり性能が劣りやすく、泣きボテが発生しやすい問題がある。こうした問題を鑑みて、本発明では、粘度を10000〜50000mPa・sとし、前記油性ボールペンレフィルの100mあたりのインキ消費量が、前記ボールのボール径をPmm、前記インキ消費量をQmgとしたとき、30≦Q/P≦100を満足することで、前記課題を解決するものである。
しかしながら、インキ粘度を高くすると、インキ消費量を多くすることは困難であった。これは、インキ粘度が高いと流動性が低下し、インキ流通孔からボール及びインキ流通溝にボールペン用インキが追従し難くなることの要因の一つであった。本発明者等は、インキの流動性について検討した結果、前記インキ流通溝の底壁と前記インキ流通孔とが連接する位置が、長手方向において、前記ボールの後端と略同位置とすることで、インキ粘度が高くてもインキ流通孔からボール抱持室へインキがスムーズに流れ易いことを見出し本発明に到ったものである。
具体的に、油性ボールペンレフィルのインキ吐出について詳述すると、筆記を行うと、インキ流通孔からインキ流通溝にインキが流れ、さらにその後、インキ流通溝からボール抱持室へ流れる。また、ボールの回転によっても、インキ流通孔からボールの表面に保持したインキは、インキ流通溝やボール抱持室に流れ、ボールの表面に保持したインキ等をチップ先端から吐出して筆跡となるものである。
前述の通り、油性ボールペンレフィルにおいては、インキ流通孔からインキ流通溝へのインキの流れと、ボールの回転によるインキ流通溝へのインキの流れが発生している。その結果、二つのインキの流れがぶつかり乱流し易く、ボール抱持室へインキが流れ難くなることが分かった。こうした現象は、インキ粘度が高くなると特に筆記に影響が出やすい傾向である。本願発明では、前記インキ流通溝の底壁と前記インキ流通孔とが連接する位置が、長手方向において、前記ボールの後端と略同位置とすることで、前記した二つの流れがぶつかり難くすることで、インキ粘度が高くてもインキ流通孔からボール抱持室へスムーズにインキが流すことができるものである。尚、本発明において、前記インキ流通溝の底壁と前記インキ流通孔とが連接する位置が、長手方向において、前記ボールの後端と略同位置とは、前後のズレがボール径の10%以内(±5%以内)が好ましく、同位置とすることが最も好ましい。
また、前述の通り、濃い筆跡を得るには、着色剤の濃度を高めること、紙面にインキを多く吐出することが考えられるが、着色剤の濃度を濃くすると、インキ経時安定性が低下する傾向となり、こうした問題を鑑みて、本発明では、特定の着色剤を用いて、100mあたりのインキ消費量と、ボール径とのバランスを考慮することで、濃い筆跡で、インキ経時安定性、インキ垂れ下がり、書き味を良好とするものである。
本発明では、前記油性ボールペンレフィルの100mあたりのインキ消費量をQ(mg)、前記ボール径をP(mm)とした場合、30>Q/Pだと、ボール径に対して、インキ消費量が十分ではなく、濃い筆跡や、良好な書き味が得られ難く、Q/P>100だと、ボールとチップ先端の間隙よりインキ垂れ下がりや、泣きボテが発生し、筆跡乾燥性にも影響しやすいため、30≦Q/P≦100の関係とし、濃い筆跡を得ている。より濃い筆跡とインキ垂れ下がりを考慮すれば、50≦Q/P≦70の関係となることが好ましい。具体的に例を挙げると、ボール径をP(mm)=1.0(mm)の場合、100mあたりのインキ消費量Q(mg)は、Q=30〜100(mg)とすることで、30≦Q/P≦100の関係とすることができる。なお、インキ消費量については、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度70°、筆記荷重200gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
また、ボール径については、特に限定されないが、一般的には0.2〜2.0(mm)程度のボールを用いる。
また、本発明の油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が10000mPa・s未満の場合では、インキ垂れ下がりを抑制しづらく、また、20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が50000mPa・sを超えると書き味が低下するとともに、前記した30≦Q/P≦100の関係を得るため、10000〜50000mPa・ sとしてある。
尚、本発明で用いるボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1〜15nmとすることが好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、前記したポリビニルブチラールを用いてもボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすい。一方で、算術平均粗さ(Ra)が大きいほうが、ボール表面にインキを保持させやすく好ましいが、算術平均粗さ(Ra)が15nmを越えると、ボールとボール座の回転抵抗が大きくなり、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とび、線ムラなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。よりそのことを考慮すれば、3〜13nmが好ましく、より好ましくは、5〜10nmである。なお、算術表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
また、本発明に用いるボールペンチップにおけるボールの軸方向の移動量は5μm〜20μmとすることが好ましい。これは、5μm未満であると、ボールに保持したインキを紙面に転写し難く、筆跡が濃くなりづらくなり、20μmを越えると、インキ垂れ下がりが発生しやすくなるためである。よりそのことを考慮すれば、7〜16μmが好ましい。
また、ボール座径は、特に限定されるものではないが、ボール座の摩耗及び書き味ボール径の70〜95%とすることが好ましい。また、チャンネル溝の外径も特に限定されるものではないが、インキの流動性を考慮してボール径の90〜105%とすることが好ましく、溝幅は、ツールの耐久性やインキの流動性を考慮して0.1〜0.2mmとすることが好ましい。また、インキ流通溝の数も特に限定されるものではなく、ボール座の総面積、インキ流通溝の溝幅などを考慮して、2本〜6本等が例示できる。
さらに、インキ流動性を考慮すると、ボールによって塞がれないインキ流通孔側のインキ流通溝の開口部Sの面積(入り口)と、ボール抱持室側のインキ流通溝の開口部Tの面積(出口)との差が小さいほうが、ボール抱持室に供給されるインキの流れをスムーズになりやすいため好ましく、具体的には、0.4<S/T<1.5とすることが好ましい。より考慮すれば、0.5≦S/T≦1.0である。
また、ボールペンチップのかしめ角度は、かしめ角度が大きすぎると、紙当たり角度が小さくなる傾向となるため、90度以下、好ましくは80度以下とすることが好ましい。かしめ角度を50度以下とすると、ボールとチップ先端縁の間にインキを溜める空間が小さくなる傾向となり、インキリターンし難く、インキの這い上がりを抑制し難くなるので、かしめ角度は、50度〜90度することが好ましい。
また、インキ流通孔から放射状に延び、チップ後端部の内孔に達しないタイプのインキ流通溝の底壁は、インキの流動性及びツールの耐久性等を考慮して、先端角を70〜120度とすることが好ましく、90度とすることが最も好ましい。
また、ボール出、ボール抱持室の内径は、100mあたりのインキ消費量が、前記ボールのボール径をPmm、前記インキ消費量をQmgとしたとき、30≦Q/P≦100を得るためには、ボール出は、ボール径の20.0〜40.0%、より好ましくは20.0〜30.0%とし、インキの容積及び流動性を考慮してボール抱持室の内径は、ボール径の105.0〜120.0%、より好ましくは、110.0〜115.0%とすることが好ましい。
本発明に用いるボールの材料は、特に限定されるものではないが、例えば各種金属の単体若しくは合金又はセラミックス等とすればよい。具体的に鋼、銅、アルミニウム又はニッケル等の金属単体を用いてもよく、洋白又はステンレス等の合金を用いてもよい。また、金属等の炭化物、酸化物、窒化物、硼化物又は硅化物等を用いることができる。炭化物としてはチタン、バナジウム、クロム、タンタル、ニオブ、モリブデン、ホウ素、ジルコン、タングステン若しくは珪素等の炭化物を用いることができる。酸化物としてはアルミニウム、クロム、マグネシウム、シリコン、ベリリウム、トリウム、チタン、カルシウム若しくはジルコン等の酸化物を用いることができる。窒化物としてはチタン、ホウ素、珪素、シリコーン若しくはアルミニウム等の窒化物を用いることができる。硼化物としては ジルコーン、クロム若しくはチタン等の硼化物を用いることができる。硅化物としてはモリブデン、チタン若しくはクロム等の硅化物を用いることができ、書き味やボール座の摩耗、経時安定性を考慮してセラミックス製のボールとすることが好ましい。
また、本発明に用いるチップ本体の材料は、特に限定されるものではないが、例えば各種金属の単体若しくは合金、セラミックス、樹脂等とすればよい。具体的に鋼、銅、アルミニウム又はニッケル等の金属単体を用いてもよく、洋白又はステンレス等の合金を用いてもよい。書き味や切削等の加工性を考慮して洋白製のチップ本体やボール座の摩耗、経時安定性を考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
本発明に用いる着色剤については、染料、顔料を用いることができるが、染料のみを用いることが好ましい。染料については、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、直接染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等が採用可能である。これは、着色剤の中でも、染料を用いると濃い瑞々しい筆跡を得られやすく、一方、顔料を用いると顔料分散安定性を得るためには、顔料分散剤の選定などの課題やコスト面の問題があるため、染料のみを用いることが好ましいためである。
また、油性ボールペン用インキ組成物に用いる樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、少なくともポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。前記ポリビニルブチラールについては、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造であるが、油性ボールペン用インキ組成物において、前記した染料のみの着色剤と、前記ポリビニルブチラール樹脂を主たる樹脂として用いることで、濃い筆跡が得られ、書き味を向上するので好ましい。
また、ポリビニルブチラール樹脂を主たる樹脂(全樹脂の含有量の50%以上)として含有することが好ましい。これは、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が全樹脂の含有量の50%未満となると、その他の樹脂によって、チップ先端の樹脂皮膜形成を阻害してしまい、インキ垂れ下がりを抑制できず、さらに弾力性がある樹脂膜を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果が得られなくなるためである。よりインキ垂れ下がり性能や書き味の向上する傾向を考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、全樹脂の含有量に対して70%以上が好ましく、さらにその傾向を考慮すれば、90%以上が好ましい。尚、前記ポリビニルブチラール樹脂の前記平均重合度は1200〜2000と平均重合度の高いものでは、インキの凝集力が高くなりやすいため、前記算術平均粗さ(Ra)が1〜15nmのボール表面にインキが載りやすいためより好ましい。
また、油性ボールペン用インキ組成物として、ポリビニルブチラール樹脂を主たる樹脂として含有することで、インキ粘度を、10000〜50000mPa・sとすることとの相乗効果によって、ボール表面でインキが凝集しやすく、ボール表面に載りやすく、かつボール表面にインキを保持しやすくなるため、ボールとボール座間にインキ層を形成し、書き味が良好となるとともに、紙面に転写する際、筆跡も崩れ難くなるため、濃い筆跡が得られるので好ましい。また、主たる樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、前述の通り、ボールとチップ本体、特にボールとボール座間にインキ層を形成しやすく、書き味を良好とすることが可能のため、インキ垂れ下がり抑制及び書き味を考慮すれば、前記インキ粘度は15000〜30000mPa・sがより好ましく、さらに、20000〜30000mPa・sが最も好ましい。
ところで、前記したようにポリビニルブチラール樹脂を用い、前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量が、前記インキ組成物中の全樹脂の含有量に対して50%以上とし、前記インキ粘度は10000〜50000mPa・sとすることで、インキ垂れ下がり性能を格段に向上する効果があるため、従来のように、チップ本体内にコイルスプリング等で、常時、ボールをチップ先端の内壁面に押圧し、ボールとチップ先端の微少な間隙を閉鎖することで、インキ垂れ下がりを抑制する構造とする必要がなく、インキ垂れ下がり抑制効果が得られるため、チップ本体内にコイルスプリング等を具備しなくてすむので、部品点数の低下に繋がり、出没式及び/又は低価格品に好適に用いることができる。
前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対し、3.0質量%より少ないと、樹脂皮膜形成量が足りないおそれがあり、インキ垂れ下がり性能が劣りやすく、40.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすいため、インキ組成物全量に対し、3.0〜40.0質量%が好ましい。さらに、インキ垂れ下がり性能を考慮すれば10.0質量%以上が好ましく、30.0質量%を越えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、10.0〜30.0質量%が好ましく、より考慮すれば、12.0〜25.0質量%が最も好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂については、具体的には、積水化学工業(株)製の商品名;エスレックBH−3(水酸基量:34mol%、平均重合度:1700)、同BH−6(水酸基量:30mol%、平均重合度:1300)、同BX−1(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:1700)、同BX−5(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:2400)、同BM−1(水酸基量:34mol%、平均重合度:650)、同BM−2(水酸基量:31mol%、平均重合度:800)、同BM−5(水酸基量:34mol%、平均重合度:850)、同BL−1(水酸基量:36mol%、平均重合度:300)、同BL−1H(水酸基量:30mol%)、同BL−2(水酸基量:36mol%、平均重合度:450)、同BL−2H(水酸基量:29mol%)、同BL−10(水酸基量:28mol%)などや、クラレ(株)製の商品名;モビタールB20H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:250〜500)、同30T(水酸基量:33〜38mol%、平均重合度:400〜650)、同30H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:400〜650)、同30HH(水酸基量:30〜34mol%、平均重合度:400〜650)、同45H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:600〜850)、同60T(水酸基量:34〜38mol%、平均重合度:750〜1000)、同60H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:750〜1000)、同75H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:1500〜1750)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
また、ポリビニルブチラール樹脂は、水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、前記した水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は、チップ先端を大気中に放置した状態にした場合、チップ先端で厚い樹脂皮膜を形成し、ボールとチップ先端の間隙を覆うことで、インキ垂れ下がりを抑制することが可能となるためである。一方、水酸基量25mol未満のポリビニルブチラール樹脂では、有機溶剤への溶解性が十分でなく、均一な樹脂皮膜ではないため、インキ垂れ下がり抑制の十分な効果が得られにくくなるため、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましいためである。また、前記水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は、書き味が向上しやすくなるため、好ましい。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、チップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂は他の樹脂とは違い、インキ温度が高くなっても、インキ粘度を下がりづらくする性質があり、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすい傾向がある。特に、油性ボールペンでは、高筆圧で筆記することも多いため、油性ボールペンでは効果的である。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、油性インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂が好ましい。そのため、水酸基量30〜40mol%のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、さらに好ましくは、水酸基量30〜36mol%が好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
また、ポリビニルブチラール樹脂は、平均重合度は、800〜2000が好ましい。これは、前記平均重合度は800以上であると、インキが載りやすいことで、紙面へ転写した際、立体的な筆跡を維持しやすく、濃い筆跡を得られやすいため好ましく、より書き味を考慮すれば、前記平均重合度は2000以下が好ましい。そのため、前記平均重合度は800〜2000が好ましく、また、前記平均重合度は1200以上だとインキ垂れ下がり性能を向上しやすい傾向があるため、前記平均重合度は1200〜2000が最も好ましい。ここで、平均重合度とは、ポリビニルブチラール樹脂の1分子を構成している基本単位の数をいい、JISK6728(2001年度版)に規定された方法に基づいて測定された値を採用可能である。
ポリビニルブチラール樹脂以外の樹脂は、インキ粘度調整剤や曳糸性付与剤として適宜用いてもよい。特に、ポリビニルピロリドン樹脂を配合することで、インキの結着性を高め、チップ先端における余剰インキの発生を抑制しやすいため、ポリビニルピロリドン樹脂を含有するのが好ましい。ポリビニルピロリドン樹脂の含有量は、油性ボールペン組成物中の全樹脂の含有量に対して0.1〜20.0%であることが好ましい。これは、曳糸性付与樹脂の含有量が全樹脂の含有量の0.1%未満となると、チップ先端における余剰インキ(泣きボテ)の発生を抑制しにくい傾向があり、20%を越えると、ポリビニルブチラール樹脂の効果を阻害しやすく、具体的には、チップ先端の樹脂皮膜の形成を阻害してしまいインキ垂れ下がりを抑制しづらくし、さらに弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果が得られにくくしやすいためである。より余剰インキを抑制する傾向を考慮すれば、曳糸性付与樹脂の含有量は、全樹脂の含有量に対して1.0〜20.0%が好ましく、インキ垂れ下がり性能や書き味が向上する傾向を考慮すれば、1.0〜10.0%が好ましく、さらにその傾向を考慮すれば、2.0〜7.0%が好ましい。具体的には、アイエスピー・ジャパン(株)製の商品名;PVP K−15、PVP K−30、PVP K−90、PVP K−120などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
染料の種類については、塩基性染料と酸性染料との造塩染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられるが、少量で濃い筆跡が得られる塩基性染料と酸性染料との造塩染料を用いるのが好ましく、特に、100mあたりのインキ消費量が30〜80mgとして従来よりも多くし、塩基性染料と酸性染料との造塩染料を用いることで、より濃い筆跡が得られやすいため好ましい。また、他種類の染料を用いると、インキ経時安定性や書き味に影響しやすいため、塩基性染料と酸性染料との造塩染料のみを用いるのが最も好ましい。また、塩基性染料と酸性染料との造塩染料について、塩基性染料は、キサンテン骨格、トリアリルメタン骨格、アゾメチン骨格、アゾ骨格、アントラキノン骨格、オキサジン骨格などの塩基性染料が挙げられ、酸性染料は、トリアリルメタン骨格、アゾ骨格、アントラキノン骨格、オキサジン骨格などの酸性染料が挙げられ、これらの塩基性染料や酸性染料を造塩させることで得られる。
具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1360、バリファーストレッド1380、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、アイゼンスピロンレッド C−PH、アイゼンスピロンレッド C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、アイゼンスピロンイエロー C−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシヤル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、5.0〜30.0質量%が好ましい。これは5.0質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、30.0質量%を越えると、インキ中での溶解性に影響しやすい傾向があるためで、よりその傾向を考慮すれば、7.0〜25.0質量%が好ましく、さらに考慮すれば、10.0〜20.0質量%である。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のグリコールエーテル系、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール系など、油性ボールペン用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
これら有機溶剤の中でも、インキ垂れ下がり性能を考慮すれば、グリコールエーテル溶剤を用いると、前記ポリビニルブチラール樹脂との溶解性を安定させることで、前記ポリビニルブチラール樹脂のチップ先端での樹脂皮膜形成の効果が得られやすいため、好ましく、また、アルコ−ル溶剤は、揮発しやすく、チップ先端での乾燥をしやすく、樹脂皮膜形成が速くなりやすく、インキ垂れ下がり性能を向上しやすいため、好ましい。そのため、本発明では、グリコールエーテル溶剤とアルコ−ル溶剤を少なくとも併用して用いる方が好ましい。特に、潤滑性を向上することを考慮すれば、芳香環を有する方が好ましいので、芳香族のグリコールエーテル溶剤と芳香族のアルコ−ル溶剤を少なくとも併用して用いる方が好ましい。これらの有機溶剤は、1種又は2種以上用いることができる。
また、有機溶剤の含有量は、溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を向上することを考慮すると、インキ組成物全量に対し、10.0〜70.0質量%が好ましい。また、グリコールエーテル溶剤の含有量は、前記ポリビニルブチラール樹脂との溶解安定性を考慮すれば、全有機溶剤に対して10.0〜50.0質量%が好ましく、より好ましくは10.0〜30.0質量%である。また、アルコ−ル溶剤の含有量は、チップ先端での乾燥性を考慮すれば、全有機溶剤に対し、30.0〜90.0質量%が好ましく、より好ましくは50.0〜90.0質量%である。
また、書き味を良好とするため、界面活性剤、特に、リン酸エステル系界面活性剤を用いるのが好ましい。これは、リン酸エステル系界面活性剤において、リン酸基が金属表面に吸着しやすく、ボールとチップ本体との間の潤滑性を保ち、書き味がより向上しやすいためである。特に、本発明のように、上述のように、前記ポリビニルブチラール樹脂によって形成するインキ層とリン酸基によって、より潤滑性を向上しやすいためである。
リン酸エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられ、前記リン酸エステル系界面活性剤のアルキル基は、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルフェノール系などが挙げられる。これらのリン酸エステル系界面活性剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。その中でも、アルキル基に含まれる炭素数が5〜15であることが好ましく、10〜15であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が過度に少ないと、潤滑性が不足しやすい傾向があり、炭素数が過度に多いと、インキ経時安定性に影響が出やすい傾向があるので注意が必要である。さらに、リン酸エステル系界面活性剤は、形成される皮膜を柔らかくする傾向があり、書き出し性能を改良できることがある。そのため、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、書き出し性能に影響しやすいため、リン酸エステル系界面活性剤を用いることはより好ましい。
また、リン酸エステル系界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.3〜3.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.5〜3.0質量%が、最も好ましい。
リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬(株))の中から、プライサーフA217E(アルキル基:炭素数14、酸価:45〜58)、同A219B(アルキル基:炭素数12、酸価:44〜58)、同A215C(アルキル基:炭素数12、酸価:80〜95)、同A208B(アルキル基:炭素数12、酸価:135〜155)、同A208N(アルキル基:炭素数12と13の混合物、酸価:160〜185)、フォスファノールシリーズ(東邦化学工業(株)製)の中から、フォスファノールRB410(アルキル基:炭素数18、酸価:80〜90)、同RS−610(アルキル基:炭素数13、酸価:75〜90)、同RS−710(アルキル基:炭素数13、酸価:55〜75)等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独又は2種以上混合して使用してもよい。
さらに、本発明の油性ボールペン用インキに、リン酸エステル系界面活性剤などを中和する目的で有機アミンを用いるのが好ましい。有機アミンについては、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等や、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のアルキルアミン等が挙げられる。その中でも、エチレンオキサイド(CH2CH2O)を有する有機アミンを用いると、より潤滑効果が得られやすいため、エチレンオキサイド(CH2CH2O)を有するオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンを用いることが好ましい。
また、前記有機アミンとインキ中の他成分との反応性については、1級アミンが最も強く、次いで2級アミン、3級アミンと反応性が小さくなるので、インキ経時安定性を考慮して2級アミン及び/又は3級アミンを用いることが好ましい。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、具体的には、ナイミーンL−201(全アミン価:232〜246、2級アミン)、同L−202(全アミン価:192〜212、3級アミン)、同L−207(全アミン価:107〜119、3級アミン)、同S−202(全アミン価:152〜166、3級アミン)、同S−204(全アミン価:120〜134、3級アミン)、同S−210(全アミン価:75〜85、3級アミン)、同DT−208(全アミン価:146〜180、3級アミン)(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。アルキルアミンとしては、具体的には、ファーミン80(全アミン価:204〜210、1級アミン)、ファーミンD86(全アミン価:110〜119、2級アミン)、ファーミンDM2098(全アミン価:254〜265、3級アミン)、ファーミンDM8680(全アミン価:186〜197、3級アミン)(花王(株))等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。 前記オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンの含有量は、潤滑性や経時安定性を考慮すると、インキ組成物全量に対し、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは、0.5〜5.0質量%である。
また、前記有機アミンの全アミン価をX、前記リン酸エステル系界面活性剤の酸価をYとした場合、0.1≦Y/X≦2.0である方が好ましい。これは、Y/X>2.0、または、Y/X<0.10であると、金属類からなるボール材やチップ本体のイオンの影響で経時的な析出を促進し易く、析出物による筆記不良の原因になりやすいためである。より上記理由を考慮すれば、0.1≦Y/X≦1.0が好ましく、さらにより考慮すれば0.3≦Y/X≦0.8が最も好ましい。
また、本発明によるインキ組成物には、その他の添加剤として、潤滑性やインキ経時安定性を向上させるために、界面活性剤、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤や、陰イオン性界面活性剤及び/または陽イオン性界面活性剤の造塩体を、粘度調整剤、例えば脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤、または助溶剤としての水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
次に図面を参照しながら、本発明のボールペンの実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
実施例1
図1〜図3に示す実施例1の油性ボールペンレフィル1は、インキ収容筒2の先端に、ボール径がボール表面の算術平均粗さ(Ra)6nmのボール3(φ0.7mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ4を装着するとともに、インキ収容筒2内に、実施例1の油性ボールペン用インキ10(0.2g)を直に収容して油性ボールペンレフィル1を得ている。
具体的には、ボールペンチップ4は、φ2.3mm、硬度が230Hv〜280Hvのステンレス鋼線材を所望の長さに切断し、ボール抱持室6、インキ流通孔7と、インキ流通孔7から放射状に伸びるインキ流通溝8を6本作製後、ボール抱持室6の底壁に、略円弧面状のボール座9を形成してある。その後、窒化珪素材のボール3をボール座9に載置し、チップ先端部5を内側へかしめてボールの一部がチップ先端より臨出し、回転自在に抱持している。
また、ボール3が、ボール座9に載置している状態のチップ先端より臨出するボール出Hは、ボール径の30.0%、かしめ角度αは70度、ボール3の縦方向のクリアランスは15μ m、ボール抱持室の内径は、ボール径の104.0%、ボール座9の径は、ボール径の86.0%としてある。
また、インキ流通溝8は、溝幅を0.14mmとしてあり、底壁の角度は90度をしてある。さらに、インキ流通溝8外径はボール径の95%であって、インキ流通溝8の底壁8Aとインキ流通孔7との連接部(底壁8Aとインキ流通孔7とが連接する位置)8Bと、ボール3がボール座9に載置した状態でのボール3の後端位置3Bとの差は、0.03mm(ボール径の約4.3%)であった。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、着色剤として染料、有機溶剤としてベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリビニルブチラール樹脂、潤滑剤としてリン酸エステル系界面活性剤、有機アミンとしてオキシエチレンアルキルアミン、曳糸性付与剤としてポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec−1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、インキ粘度=23000mPa・sであった。また、100mあたりのインキ消費量は、45mg/100mであり、ボールのボール径をPmm、インキ消費量をQmgとしたとき、Q/P=64.3であった。
実施例1(インキ配合)
着色剤(染料、塩基性染料と酸性染料との造塩染料) 18.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 54.0質量%
有機溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル) 16.5質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(エスレックBH−3、水酸基量:34mol%、平均重合度:1700)9.0質量%
潤滑剤(リン酸エステル系界面活性剤) 1.0質量%
有機アミン(オキシエチレンアルキルアミン) 1.0質量%
曳糸性付与剤(ポリビニルピロリドン樹脂) 0.5質量%
実施例2〜8
表1、表2に示すように、実施例2〜8のインキ配合とインキ消費量を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜8の油性ボールペン用インキ組成物及び油性ボールペンレフィルを得た。表1、表2に測定、評価結果を示す。
比較例1、2
表2に示すように、比較例1、2のインキ配合とインキ消費量を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1、2の油性ボールペン用インキ組成物及び油性ボールペンレフィルを得た。表2に測定、評価結果を示す。
試験及び評価
実施例1〜8及び比較例1、2で作製した油性ボールペンレフィルを、(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ)に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
筆跡の濃さ:手書きにより筆記した筆跡を観察した。
濃く鮮明な筆跡であるもの ・・・◎
濃い筆跡であるもの ・・・○
実用上問題ない濃さの筆跡であるもの ・・・△
薄い筆跡のもの ・・・×
インキ垂れ下がり試験:30℃、85%RHの環境下にペン先下向きで7日放置し、チップ先端からのインキ漏れを確認した。
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
筆記性能試験:紙面上に筆記後、筆記した筆跡を観察した。
筆跡にカスレ、線とび、カスレ、線ムラなどがあり実用上問題ないもの ・・・○
筆跡にカスレ、線とび、カスレ、線ムラなどがひどく、実用性に乏しいもの・・・×
実施例1〜8では、筆跡の濃さ、書き味、インキ垂れ下がり試験、筆記性能試験ともに良好な性能が得られた。
比較例1では、30>Q/Pであったため、筆跡も濃くなく、筆跡にひどいカスレや線ムラが発生した。また、比較例2では、Q/P>100であったため、インキ垂れ下がりも良くなかった。
比較例1では、インキ粘度が60000mPa・ sであったため、書き味が重く、筆跡にひどいカスレや線ムラが発生した。また、比較例2では、インキ粘度が5000mPa・sであったため、インキ垂れ下がりが悪かった。
実施例1〜8では、ボール径がφ0.7mmのボールを用いたが、ボール径をφ1.0mmのボールに変更して、実施例1〜8の試験及び評価を行ったところ、筆跡の濃さ、書き味、インキ垂れ下がり試験、筆記性能試験ともに良好な性能が得られた。
また、ノック式油性ボールペンや回転繰り出し式油性ボールペン等の出没式油性ボールペンを用いた場合では、インキ垂れ下がり性能が最も重要な性能の1つであるため、本発明のように、チップ先端で樹脂皮膜を形成し、ボールとチップ先端の間隙を覆うことで、インキ垂れ下がり性能を良好とすることが可能である油性ボールペンレフィルを用いると効果的である。
また、本実施例では、便宜上、軸筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を直に収容した油性ボールペンレフィルを収容した油性ボールペンを例示しているが、本発明の油性ボールペンは、軸筒をインキ収容筒とし、軸筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を直に収容した直詰め式の油性ボールペンであってもよい。また、本実施例では便宜上、線材を切削によって形成したボールペンチップを例示しているが、パイプ材を押圧加工によって形成するボールペンチップであってもよい。