JP7074437B2 - 油性ボールペン - Google Patents
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Description
「1.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を収容した油性ボールペンであって、前記ボール表面の算術平均粗さが、0.1~12nmであり、前記油性ボールペン用インキ組成物が、着色剤、有機溶剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)を含んでなることを特徴とする油性ボールペン。
2.前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂またはケトン樹脂を含んでなることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン。
3.前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が、8~22であることを特徴とする第1項または第2項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
4.前記脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)が、脂肪酸と多価アルコールによってエステル化した脂肪酸エステルであることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
5.前記脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)の酸価が、0.01~5(mgKOH/g)であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
6.前記有機溶剤が、グリコールエーテル溶剤であることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
7.前記油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度が、20℃、剪断速度3.4sec-1において、3000~30000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。」とする。
また、樹脂としてポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂などを用いることで、インキ粘度を調整し、筆記先端部が乾燥した時に、樹脂被膜を形成することで、インキ漏れを抑制することができるが、前記樹脂による被膜形成に時間がかかるため(乾きが遅い)、チップ内のインキが乾いて、インキ増粘しやすく、書き出し性能が劣りやすい。
そこで、ポリグリセリン脂肪酸エステルのさらなる効果については、書き出し性能を向上するために、筆記先端部が乾燥した時に、短時間で被膜を形成することで(乾きが速い)、チップ内でインキ増粘しづらく、書き出し性能も向上することができる。
これは、前記脂肪酸エステルは、金属類である金属製のボールペンチップ本体やボールに吸着しやすく、潤滑膜を形成することで、潤滑性をより向上して、書き味を向上しつつ、ボールの回転力が上がり、筆記先端部の樹脂被膜を崩すことで、書き出し性能を向上することができるためである。さらに、前記脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)は、前記ボールペンのボール表面の算術平均粗さを0.1~12nmと設定すると、金属製のボール上に前記脂肪酸エステルが吸着しつつ、ボール表面に載りやすいため、長期間潤滑性を向上し、長期間書き出し性能を向上することができるためである。
上記のように、本発明では、油性ボールペン用インキ組成物にポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)を併用し、かつ、ボールペンチップ仕様としては、ボール表面の算術平均粗さを0.1~12nmと設定することで、書き出し性能を良好とし、インキ漏れを抑制し、書き味を良好とすることができる。
インキ吐出量が多くなるようにボール径をより大きく設定した厳しい条件下とした、ボール径1.0~2.0mm、特にボール径1.2~2.0mmとした油性ボールペンにおいては、書き出し性能が劣りやすいため、より効果的である。さらに、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、筆記先端部が出された状態であるため、書き出し性能、インキ漏れ抑制、をより考慮する必要があるため、効果的である。
本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、上記のように、インキ漏れを抑制し、書き味、書き出し性能を向上することができるが、着色剤として顔料を用いる場合は、顔料分散効果が得られるため、好適に用いることができ、好ましい。
ここで、平均重合度(m)は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(m)である。詳しくは、次式(式1)及び(式2)から平均重合度が算出される。
(式2)水酸基価=56110(m+2)/分子量
上記(式2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(1)、1996年度版」に準じて算出される。
一般に、HLBを算出する方法として、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法と種々の方法が知られるが、その中でも本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、次に示すグリフィンの式より算出したものである。
HLB=(親水基部分の分子量/界面活性剤の分子量)×20
前記脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)については、脂肪酸と、1価アルコールや多価アルコールなどのアルコールとをエステル化反応させたものである。前記脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)の中でも、長時間書き出し性能を向上することを考慮すれば、分岐鎖アルキル基を有する脂肪酸エステルを用いることが好ましい。 これは、分岐鎖アルキル基を有する脂肪酸エステルは、直鎖構造よりも、嵩高い構造をしているため、分岐鎖アルキル基の嵩高さによって、金属製のボール表面やチップ本体のボール座に吸着しやすく、さらに厚い潤滑膜を形成して、より潤滑性が向上しやすいためで、同時に分岐鎖アルキル基の嵩高さによって、チップ先端部のインキ乾燥時に形成される皮膜強度が軟化し、書き出し性能を向上するためである。
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分(遊離脂肪酸)を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分(遊離脂肪酸)を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
また、インキ漏れ抑制をより向上するためには、樹脂をインキ粘度調整剤として、用いることが好ましい、樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、その中でも、インキ漏れ抑制効果をより向上しやすくするには、ポリビニルブチラール樹脂またはケトン樹脂を含んでなることが好ましい。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
特に、ボール径を通常よりも大きくして、1.0mm~2.0mmとした場合では、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れの影響が出やすいため、ポリビニルブチラール樹脂を用いると効果的であり、本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルとポリビニルブチラール樹脂を併用するとより効果的であり、特に1.2mm~2.0mmとした場合は、より効果的である。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
さらに、潤滑性を考慮すれば、芳香環骨格(フェニル基、アセトフェノン基、ナフタレン基などベンゼン環を有する)やシクロヘキサン骨格(シクロヘキサン基、シクロヘキサノン基などシクロヘキサン環を有する)などの環状構造を有するケトン樹脂を用いることが好ましい、これは、環状構造を有するケトン樹脂によるクッション効果が得られ、潤滑性を向上するためで、より好ましくは、芳香環を有するケトン樹脂の方が、二重結合構造を多数有するため、より強いクッション効果が得られやすいため、好ましい。
これは、前記配合比が、質量基準で0.1倍未満だと、筆記先端部の間隙からインキ漏れを抑制するための形成被膜が十分ではなく、インキ漏れ抑制に影響が出やすく、前記配合比が、質量基準で3.0倍以上だと、インキのはい上がりを抑制するには、十分ではなく、泣きボテ抑制しづらいためである。よりインキ漏れ、泣きボテ抑制効果を考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.1倍~2.0倍とすることが好ましく、より考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.1倍~1.0倍とすることが好ましい。特に、インキ吐出量が多くなるようにボール径をより大きく設定した場合は、ボール径1.2~2.0mmとした油性ボールペンにおいては、インキ漏れ、泣きボテが発生しやすいため、より効果的である。
これは、前記配合比が、質量基準で0.01倍未満だと、インキ粘弾性が十分ではなく、泣き・ボテを抑制が得られづらく、前記配合比が、質量基準で1.0倍以上だと、ケトン樹脂の効果であるインキのはい上がりを阻害しやすく、泣き・ボテを抑制が得られづらいためである。より泣きボテ抑制効果を考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.01倍~0.5倍とすることが好ましく、より考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.02倍~0.3倍とすることが好ましい。特に、インキ吐出量が多くなるようにボール径をより大きく設定して、ボール径1.2~2.0mmとした油性ボールペンにおいては、泣きボテ抑制が発生しやすいため、より効果的である。
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料、顔料を併用することで、下記のような効果が得られやすいため、好ましい。
染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料としては、インキ中の成分との相性による経時安定性を考慮して、少なくとも造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料を用いることが好ましく、より考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料が好ましい。さらに、造塩染料を構成する有機酸については、フェニルスルホン基を有する有機酸であれば、金属に吸着し易い潤滑膜を形成しやすく、潤滑性を向上し、書き味やボール座の摩耗抑制を良好とするため好ましく、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸が挙げられ、インキ中で長期安定することを考慮すれば、有機酸として、アルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB-B、BASE OF BASIC DYES RO6G-B、BASE OF BASIC DYES VPB-B、BASE OF BASIC DYES VB-B、BASE OF BASIC DYES MVB-3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH-スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C-RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C-RH、アイゼンスピロンレッド C-GH、アイゼンスピロンレッド C-BH、アイゼンスピロンイエロー C-GNH、アイゼンスピロンイエロー C-2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH-スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー530、S.R.C-BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
さらに、顔料を用いることで、ボールとチップ本体の隙間に顔料粒子が入り込むことで、ベアリングのような作用が働きやすく、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上し、書き味を向上し、ボール座の摩耗を抑制する効果が得られやすいため、顔料を用いることが好ましい。また、ボールペンチップ内部の隙間関係を考慮し、顔料の平均粒子径は、1~500nmとすることが好ましい。より好ましくは、10~350nmであり、さらに好ましくは、50~300nmである。本発明のように、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、インキ粘度を低粘度化することで、書き味を向上できるため、顔料を用いることは好ましい。
ここで、平均粒子径は、レーザー回折法、具体的には、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320-X100」、日機装株式会社)を用いて、標準試料や他の測定方法を用いてキャリブレーションした数値を基に測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により求めることができる。
尚、前記顔料は、油性ボールペン用インキ組成物中での顔料の分散状態で前記した作用効果を奏するため、分散状態の粒子径を求めることが好ましい。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤など、油性ボールペン用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
これは、前記配合比が、質量基準で0.01倍未満だと、グリコールエーテル溶剤が多すぎ、水分を吸湿し過ぎて、樹脂被膜が柔らかくなりインキ垂れ下がり性能や、インキ経時安定性にも影響しやすいため、前記配合比が、質量基準で3.0倍以上だと、アルコール溶剤が多すぎると、書き出し性能に影響しやすいためである。より書き出し性能を向上することを考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.01倍~2.0倍とすることが好ましく、より考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.1倍~1.0倍とすることが好ましい。特に、インキ吐出量が多くなるようにボール径をより大きく設定して、ボール径1.2~2.0mmとした油性ボールペンにおいては書き出し性能に影響がでやすいため、より効果的である。
本発明においては、書き出し性能を向上することを考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤または脂肪酸を用いることが好ましい。これは、リン酸エステル系界面活性剤または脂肪酸を用いると、形成される被膜を軟化する傾向があり、書き出し性能を改良できることがある。その中でも、リン酸エステル系界面活性剤または脂肪酸のアルキル基に含まれる炭素数が10~20であることが好ましく、さらに考慮すれば、前記炭素数が12~18であることがより好ましい。さらに、高筆圧下(300~500gf)での潤滑性(高荷重性能)を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい、これは、ボールペンの場合は、高筆圧下(300~500gf)においてもボールとチップ本体との間の潤滑性を向上してボール座の摩耗を抑制し、カスレなどのない良好な筆跡としやすいため、本発明ではより好適に用いることが可能である。特に、本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)と併用した場合は、効果的である。
さらに、リン酸エステル系界面活性剤の酸価は、200以下とすることが好ましい、これは、リン酸エステル系界面活性剤による高筆圧下(300~500gf)での潤滑性(高荷重性能)の向上を発揮しやすくするためで、さらにインキ中での安定性や、潤滑性を考慮すれば、酸価は30~200が好ましく、より考慮すれば、酸価は70~200が好ましい。
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
本発明では、インキ中でのインキ成分の安定性を考慮すれば、有機アミンを用いることが好ましい。オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミンが挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミンが好ましく、さらに考慮すれば、ジメチルアルキルアミンが好ましい。特にリン酸エステル系界面活性剤を用いる場合は、中和することで、インキ中で安定することで、書き出し性能や書き味を向上する効果が得られやすいため、好ましい。
なお、全アミン価については、1級、2級、3級アミンの総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
また、本発明で用いるボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1~12nmに設定するが、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)を併用する場合は、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が12nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、潤滑性が劣りやすく、書き味が劣るためで、より考慮すれば、前記算術平均粗さ(Ra)が0.1~10nmであることが好ましい。また、ボール表面にインキが載りやすいことで、書き出し性能を向上することを考慮すれば、3nm以上とすることが好ましく、より考慮すれば、5nm以上とすることが好ましい。なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
特に、剪断減粘性付与剤を用いる場合は、筆記時にボールに荷重が掛かる時に、ボールペンチップ内の前記弾発部材が振動などすることにより、チップ内のインキに剪断力が掛かるため、インキ粘度が下がるため、書き味を向上しつつ、さらにインキ追従性を向上しやすいため、コイルスプリングなどの弾発部材を用いることが好ましい。特に、書き味、インキ追従性を考慮すれば、非ニュートン粘性付与指数n=0.65~0.92とすることが好ましく、より考慮すれば、0.75~0.90が好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、上記範囲にしやすいため好ましい。
前記弾発部材については、インキ漏れ抑制、書き味を向上、インキ追従性を向上しやすいことを考慮すれば、前記弾発部材のバネ定数は、10~60gf/mmに設定することが好ましく、より書き味、インキ追従性の向上を考慮すれば、20~50gf/mmに設定することが好ましい。
また、ボールの直径は、特に限定されないが、ボールの直径が大きいと、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れがしやすく、筆記先端部の乾燥時に書き出し性能が劣りやすいため、ボール径を通常よりも大きくして、1.0mm~2.0mmとした場合では、影響が出やすく、特に1.2mm~2.0mmとした場合は顕著で、より効果的である。
なお、インキ消費量については、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度70°、筆記荷重200gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、着色剤として染料および顔料、有機溶剤としてベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、樹脂としてはポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、分岐鎖を有するアルキル基を有する脂肪酸エステル、界面活性剤としてはリン酸エステル系界面活性剤、有機アミンとしてオキシエチレンアルキルアミン、ポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて筆記具用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して、実施例1のインキ粘度を測定したところ、20℃の環境下、剪断速度0.18sec-1、インキ粘度=20950mPa・s、20℃の環境下、剪断速度3.4sec-1でインキ粘度=14070mPa・sであった。また、非ニュートン粘性付与指数nは、0.86であった。
着色剤(染料、塩基性染料と酸性染料との造塩染料) 10.0質量%
着色剤(染料、酸性染料とアミンとの造塩染料) 5.0質量%
着色剤(スレン系顔料) 5.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 20.0質量%
有機溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル) 34.0質量%
ポリグリセリン脂肪酸エステル(ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル)
0.5質量%
脂肪酸エステル 1.0質量%
界面活性剤(リン酸エステル系界面活性剤) 2.0質量%
有機アミン(オキシエチレンアルキルアミン) 2.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(水酸基量:36mol%、平均重合度:300) 5.0質量%
ケトン樹脂(アセトフェノン基を有するケトン樹脂、重量平均分子量1500)
15.0質量%
ポリビニルピロリドン樹脂(重量平均分子量100万) 0.5質量%
表1に示すように、インキ成分とチップ仕様を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2~22の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
実施例1~22及び比較例1~4で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、シリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)でインキ収容筒(ポリプロピレン製)内壁に塗布したインキ収容筒2の先端に、ボール径がボール表面の算術平均粗さ(Ra)6nmのボール3(φ1.6mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ4(チップ内にボールを直接チップ先端縁の内壁に押圧したコイルスプリングを有する、ボールの縦軸方向の移動量12μm)を装着するとともに、インキ収容筒2内に、実施例1の油性ボールペン用インキ10(0.27g)を直に収容してボールペンレフィル1を(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ)に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
また、実施例1のボールペンの100mあたりのインキ消費量は、油性ボールペンで、らせん筆記試験を行ったところ、70mg/100mであった。
<筆記条件>筆記荷重200gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
筆跡カスレの長さが、8mm未満であるもの ・・・◎◎
筆跡カスレの長さが、15mm未満であるもの ・・・◎
筆跡カスレの長さが、15mm以上、20mm未満であるもの ・・・○
筆跡カスレの長さが、20mm以上、40mm未満であるもの ・・・△
筆跡カスレの長さが、40mm以上であるもの ・・・×
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの ・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
また、実施例1~22の中で、着色剤として顔料を用いたインキを、顕微鏡で見たところ、顔料分散性が良好で、析出物もなく良好であった。また、実施例1~18にて、高筆圧筆記下(300gf)にて、筆記したところ、潤滑性は良好で、筆跡も良好であった。
2 インキ収容筒
3 ボール
4 ボールペンチップ
5 チップ先端部
6 ボール抱持室
7 インキ流通孔
8 インキ流通溝
9 ボール座
10 油性ボールペン用インキ
H ボール出
α カシメ角度
Claims (8)
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を収容した油性ボールペンであって、前記ボール表面の算術平均粗さが、0.1~12nmであり、前記油性ボールペン用インキ組成物が、着色剤、有機溶剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)、リン酸エステル系界面活性剤、有機アミンを含んでなり、前記リン酸エステル系界面活性剤のアルキル基に含まれる炭素数が10~20であり、前記有機アミンが2級アミンまたは3級アミンであり、前記脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)が、脂肪酸と水酸基が3~8個であるアルコールによってエステル化した脂肪酸エステルであることを特徴とする油性ボールペン。
- 前記脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)が、脂肪酸とペンタエリスリトール類によってエステル化した脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン。
- 前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂またはケトン樹脂を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン。
- 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が、8~22であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
- 前記脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)の酸価が、0.01~5(mgKOH/g)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
- 前記有機溶剤が、グリコールエーテル溶剤であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
- 前記油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度が、20℃、剪断速度3.4sec-1において、3000~30000mPa・sであり、非ニュートン粘性付与指数nが0.55~0.95であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
- 前記ボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、30μm以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
Priority Applications (1)
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