JP7229722B2 - 筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 - Google Patents
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Description
特に、軸筒内に筆記先端を収容可能な出没式筆記具では、常にペン先が大気に晒されていることから、上述のような書き出し性能を考慮する必要がある。
このため、ノック式ボールペンや回転繰り出し式ボールペン等の出没式ボールペンにおいては、特に、上述のような書き味と筆記性の向上とともに、インキ垂れ下がり性能、さらには、書き出し性能を向上させ、すべてを満足させることが必要とされている。
「1.ラノリン誘導体と、ポリビニルブチラール樹脂と、着色剤と、有機溶剤と、を含んでなることを特徴とする、筆記具用油性インキ組成物。
2.前記ラノリン誘導体の含有率が、前記インキ組成物の総質量を基準として、0.1~20質量%である、第1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
3.前記ポリビニルブチラール樹脂の含有率が、前記インキ組成物の総質量を基準として、1~40質量%である、第1項または第2項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
4.前記ラノリン誘導体が、ラノリンアルコールまたはラノリン脂肪酸エステルである、第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
5.20℃、剪断速度5sec-1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下である、第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
6.第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、油性ボールペン。」とする。
本発明による筆記具用油性インキ組成物(以下、場合により、インキ組成物と表す。)は、ラノリン誘導体と、ポリビニルブチラール樹脂と、着色剤と、溶剤とを含んでなることが、第一の特徴である。本発明のインキ組成物は、ラノリン誘導体と、ポリビニルブチラール樹脂と併用することが必須であるが、ラノリン誘導体とポリビニルブチラール樹脂を用いることで、筆記先端部と被筆記面との間、さらには、ボールペンチップのボールとボール座との間の潤滑性を向上することができる。このため、滑らかな書き味を奏しながらも、線とびが改善された良好な筆跡が得られる。これは、ラノリン誘導体とポリビニルブチラール樹脂が相互に作用して、筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座を含む)に優れた潤滑層が形成され、筆記先端部と被筆記面との筆記抵抗が抑えられ、さらには、形成される潤滑層によりボールとボール座とが接触することが緩和され、ボール座の摩耗が抑制できるためと考える。
また、ラノリン誘導体とポリビニルブチラール樹脂を併用することは、筆記先端部の滑り性(ボールペンの場合は、ボールの回転性を含む)を向上できる。このため、本発明のインキ組成物は、優れた書き味と筆記性が得られることは勿論のこと、筆記先端部を大気中に放置した場合、筆記先端に乾燥被膜が形成されたとしても、該被膜が容易に破壊でき、書き出し時の筆跡カスレを改善でき、優れた書き出し性能が得られる。
さらには、ラノリン誘導体とポリビニルブチラール樹脂を併用することは、インキが漏れ出してしまうことを十分に抑制可能でありながら、かつ、書き出し時には、容易に破壊可能である柔らかな被膜を筆記先端部に形成することができる。このため、本発明のインキ組成物は、ペン先からインキが漏れ出すことが抑制され、さらに、例え、長時間、筆記先端部を大気中に放置したとしても、書き出し時より、筆跡カスレが改善された良好な筆跡を得ることができる。
以上より、ラノリン誘導体とポリビニルブチラール樹脂を併用することは、滑らかな書き味を奏しながらも、線とびが改善された良好な筆跡が得られるとともに、ペン先からインキが漏れ出すことが抑制され、かつ、筆記先端部を暫く大気中に放置したとしても、書き出し時より良好な筆跡が得られる。よって本発明のインキ組成物は、書き味、筆記性、さらにはインキ垂れ下がり性能、書き出し性能の全てを満足できるものとなる。
本発明におけるラノリン誘導体とは、ラノリンに化学修飾を加えるなどして得られる化合物である。
例えば、ラノリンを加水分解して得られるアルコール(ラノリンアルコール)や酸部分(ラノリン脂肪酸)を溶剤分別などにより分別精製したものは誘導体の例であり、さらに、それらの加水分解物又はラノリン自体にアセチル化、アルコキシル化、スルホン化、水素化、エステル交換、還元などの化学的作用を加えたものなども、またラノリン誘導体である。
尚、ラノリン誘導体の原料となるラノリンは、羊の原毛から羊毛をとる際に副生する羊毛脂で動物性ロウの一種である。その化学組成は羊の種類や産地、気象条件などにより必ずしも一定ではないが、そのアルコール部分は脂肪族アルコール類、コレステロール類、トリテルペンアルコール類が大部分を占め、酸部分はノルマル脂肪酸、イソ脂肪酸、アンチイソ脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸が大部分を占めるとされる。
酢酸ラノリン、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラノリン、還元ラノリン、ポリオキシエチレン還元ラノリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン還元ラノリン、ラノリンアルコール、酢酸ラノリンアルコール、イソステアリン酸ラノリンアルコール、スルホコハク酸ラノリンアルコール、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシプロピレンラノリンアルコール、ラノステロール、ラノリン脂肪酸、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソブチル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸グリセリル、ラノリン脂肪酸ジエタノールアミン、ラノリン脂肪酸カルシウム等が挙げられる。
さらに、本発明のインキ組成物は、後述の通り、ポリビニルブチラール樹脂により、筆記先端に樹脂被膜が形成され、優れたインキ垂れ下がり性能が得られるが、ラノリン誘導体は、この被膜を、インキ漏れ抑制の効果を十分に保持しながらも、書き出し時には容易に破壊できる程度の柔軟な被膜に軟化することができる。このため、本発明において、ラノリン誘導体を用いることで、筆記先端からのインキ漏れを十分に抑制しながらも、長時間、筆記先端部を大気中に放置した場合でも、書き出し時の筆跡カスレを改善でき、よって、長時間、短放置時間に関わらず良好な書き出し性能を得ることができる。
また、油性インキ中の溶解安定性を向上し、上記効果を経時的にバランス良く得て、書き味、筆記性、さらには、ボール座の摩耗抑制、また、書き出し性能の更なる向上を考慮すると、分岐アルコールの炭素数は、3~10であることが好ましく、3~5であることが特に好ましい。
尚、本発明における酸価は、試料1g中に含まれる酸性成分(遊離脂肪酸)を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
ラノリン誘導体の含有率が上記数値範囲内であれば、インキ経時安定性に影響を与えることなく、潤滑効果や筆記先端に形成される被膜の軟化効果を十分に得て、優れた書き味と、筆記性、書き出し性能が得られやすい。さらに、インキ経時安定性に優れながらも、上記効果を十分に得ることを考慮すると、3~5質量%であることが好ましい。
尚、前記ラノリン誘導体は、1種または2種以上の混合物として使用することが可能である。
ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させるなどして得られる樹脂であり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
ポリビニルブチラ-ル樹脂は、前記ラノリン誘導体と同様、高い潤滑効果が得られる潤滑層を形成するもので、よって、ラノリン誘導体との相乗効果により、筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座)に潤滑層を形成し、筆記先端部と被筆記面との間の筆記抵抗を抑え、滑らかな書き味をもたらす。
また、ラノリン誘導体とポリビニルブチラール樹脂を併用することにより、弾力を有する優れた潤滑層が形成できると考えられる。このため、本発明のインキ組成物をボールペンに用いた場合、特に効果的であり、ボールとボール座との間に、弾力を有する潤滑層が形成され、ボールとボール座との間の直接接触を抑制して、ボール座の摩耗抑制し、書き味をより一層向上できる。
また、ポリビニルブチラール樹脂を用いることは、筆記先端に被膜を形成してインキ漏れを抑制し、優れたインキ垂れ下がり性能を付与できる。
そして、前述の通り、筆記先端に形成されるポリビニルブチラール樹脂の被膜は、前記ラノリン誘導体により、適度な柔軟性を有するものとなるため、例え、長時間、筆記先端部を大気中に放置した場合でも、筆記先端に形成された該被膜は容易に破壊可能となり、書き出し時の筆跡カスレが改善され、長時間、短放置時間に関わらず良好な書き出し性能を得ることができる。
さらに、ポリビニルブチラール樹脂は、着色剤として顔料を用いる場合には、顔料分散効果も有することから、経時安定性に優れたインキ組成物をもたらすことができる。
さらに、水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることで、書き味が向上しやすくなるため、好ましく、特に、ボールペンに用いる場合、効果的である。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、ボールペンチップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、他の樹脂に比べ、インキ温度が上昇しても、インキ粘度が下がりづらい傾向にあることから、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層が形成され、ボールとボール座の直接接触が抑制され、書き味を向上しやすい傾向があるためと考える。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。よって、本発明において、水酸基量30~40mol%のポリビニルブチラール樹脂を用いることがより好ましく、さらには、水酸基量30~36mol%であるポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤など、筆記具用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
また、グリコールエーテル溶剤以外の有機溶剤については、アルコール溶剤を用いることが好ましい。これは、アルコ-ル溶剤は揮発して、筆記先端での乾燥をしやすくし、筆記先端部内(チップ先端部内)をより早く増粘させることで、筆記先端部の間隙からインキが漏れ出すことが抑制できるためである。特に、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコ-ルは、潤滑性を向上する効果もあるため、少なくとも用いる方が好ましく、よって、本発明において、グリコールエーテル溶剤とアルコ-ル溶剤を併用することが特に好ましい。
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができ、染料、顔料は併用して用いても良い。
さらには、造塩染料を構成する有機酸については、フェニルスルホン基を有する有機酸であれば、金属に吸着し易い潤滑膜を形成しやすいことから、ボールペンに用いた場合、特に潤滑性を向上しやすく、ボール座の摩耗抑制や書き味を良好とするため好ましい。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸が挙げられる。また、インキ中での長期安定性を考慮すれば、有機酸として、アルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
コハク酸エステルは、構造内に(ジ)エステル(-COOX、X:官能基)を少なくとも有しており、(ジ)エステルのカルボニル基が筆記先端(ボールペンの場合、ボールとボール座)に吸着し、潤滑層を形成するものである。特に、筆記先端が金属類である場合、潤滑層を形成しやすく、よって、コハク酸エステルを更に含んでなることで、前記ラノリン誘導体とポリビニルブチラール樹脂が形成する潤滑層との相乗効果により、筆記先端部と被筆記面、さらには、ボールとボール座との間の潤滑性が向上し、また、筆記先端部の滑り性(ボールペンの場合は、ボールの回転性)をも向上することができる。このため、軽く滑らかな書き味を奏しつつ、筆記先端部が大気中に放置された場合においても、筆記先端部に形成される乾燥被膜を、さらに容易に破壊することが可能となり、書き出し性能、特に短時間放置した場合の書き出し性能(短時間書き出し性能)を向上することができる。
脂肪酸は、脂肪酸が有するカルボキシル基により筆記先端(ボールペンの場合、ボールとボール座)に吸着して、優れた吸着層を形成する。特に、筆記先端が金属類の場合に吸着層を形成しやすい。よって、本発明において、脂肪酸を更に用いることは、ラノリン誘導体とポリビニルブチラール樹脂が形成する潤滑層との相互作用により、筆記先端部と被筆記面、さらには、ボールとボール座との間の潤滑性をより向上することが可能となり、軽く滑らかで、より優れた書き味を得ることができる。さらに、脂肪酸を用いることは、筆記先端部の滑り性(ボールペンの場合は、ボールの回転性)をも向上することもできる。よって、筆記先端部が大気中に放置された場合に形成される乾燥被膜はさらに容易に破壊可能となり、書き出し性能(短時間書き出し性能)を向上することができる。さらには、脂肪酸は、ラノリン誘導体と同様、長時間、筆記先端部を大気中に放置した場合、筆記先端に形成される被膜をインキ漏れ抑制効果を得ながら、柔らかくする効果も併せ持つため、優れたインキ垂れ下がり性能を維持したまま、書き出し性能(長時間書き出し性能)をも、さらに向上することができる。
特に、ボールペンに用いた場合、ボールとボール座の間の潤滑性を一層向上することが可能であり、ボール座の摩耗を効果的に抑制し、さらに、ボールの回転性を向上できる。
また、コハク酸エステルおよび脂肪酸を用いることは、短時間または長時間放置した場合でも、書き出しから良好な筆跡がさらに得られやすくなり、放置時間に関わらず、書き出し性能を向上することができる。
以上より、ラノリン誘導体、ポリビニルブチラール樹脂、コハク酸エステル、脂肪酸の4成分を用いることは、より一層、軽く滑らかな書き味を奏しつつ、線とびのない良好な筆跡が得られ、短時間、長期間ともに書き出し性能を向上できる。よって、本発明において、コハク酸エステルおよび脂肪酸を更に含んでなることは、特段の効果が得られ、最も好ましい。
より、潤滑性の向上を考慮すると、イソパルミチン酸(炭素数16)、イソステアリン酸(炭素数18)、イソアラキン酸(炭素数20)の中から1種以上選択することが好ましく、特に、潤滑性を向上しやすいバランスのとれた嵩高い構造を有することで、潤滑性が向上しやすい、イソステアリン酸(炭素数18)、イソアラキン酸(炭素数20)を用いることが好ましく、より考慮すれば、イソステアリン酸(炭素数18)を用いることが最も好ましい。
さらに、長時間書き出し性能の向上を考慮すれば、イソステアリン酸(炭素数18)、イソアラキン酸(炭素数20)を用いることがより好ましく、イソステアリン酸(炭素数18)を用いることが特に好ましい。特に、ノック式や回転繰り出し式などの出没式筆記具は、キャップ式筆記具とは異なり、常時、筆記先端部が大気中に露出した状態であり、書き出し性能、特に長時間書き出し性能を考慮する必要があることから、上記脂肪酸を用いることは好適であり、効果的である。
本発明による筆記具用油性インキ組成物は、各種の筆記具に適用することができるが、特にボールペン、さらにはノック式や回転繰り出し式などの出没式ボールペンに好適に用いられる。このようなボールペンは、インキ組成物を収容した収容筒と、その収容筒の先端に配置された、ボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップとを具備したものであり、そのボールペンチップを軸筒の先端開口部から出没可能である、一般的に出没式ボールペンと呼ばれる構造を有するものである。一般的に、このような、ペン先が密閉されない出没式ボールペンにインキ組成物を用いた場合、チップ先端部が定常的に大気中に放置されるため、チップ先端部が乾燥し、書き出し時に筆跡カスレなどが生じやすいという課題を有している。しかし、本発明によるインキ組成物を用いることで、上述のような問題が改善されるため、本発明のインキ組成物を、出没式ボールペンに用いることは効果的である。
また、本発明で用いるボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.1~12nmとすることが好ましい。これは、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が12nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とびなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。また、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1~10nmであると、本発明のようなインキ組成物を用いた場合、ボール表面にインキが載りやすいためより好ましく、より書き味を考慮すれば、2~8nmであることが好ましい。
なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
以下、本発明を実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら
実施例に限定されるものではない。
予め有機溶剤、顔料、顔料分散剤を添加し、3本ロール分散機で分散させて、顔料分散体を作製し、その後、作製した顔料分散体、染料、有機溶剤、ラノリン誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール樹脂を所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させ、実施例1の筆記具用油性インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec-1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、3000mPa・sであった。
・着色剤(染料B:アミンと酸性染料との造塩染料) 2.0質量%
・着色剤(顔料分散体(顔料分20%)) 20.0質量%
・ラノリン誘導体(ラノリン脂肪酸イソブチル(イソブチルラノレート))4.0質量%
・ポリビニルブチラール樹脂 6.0質量%
・アルコール溶剤(ベンジルアルコール) 28.1質量%
・グリコールエーテル溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル)27.1質量%
・ポリビニルピロリドン 0.8質量%
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表に示した通りに変更した以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2~20の筆記具用油性インキ組成物を得た。
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表に示した通りに変更した以外は、実施例1と同じ方法で、比較例20の筆記具用油性インキ組成物を得た。
得られたインキ組成物を以下の通りの方法で試験および評価した。得られた結果は、表1~表3の通りである。
試験用ボールペンを用いて、手書きによる筆感を、官能試験により下記基準に従って評価した。
A++:非常に滑らかなもの
A+:滑らかであるもの
A:やや滑らかであるもの
B:やや重さを感じる部分もあるが、実用上問題のない滑らかさであるもの
C:重いもの
試験用ボールペンのチップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に30分放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定し、下記基準に従って評価した。
<筆記条件>筆記荷重70gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
A++:筆跡カスレの長さが、2.5mm未満であるもの
A+:筆跡カスレの長さが、2.5mm以上15mm未満であるもの
A:筆跡カスレの長さが、15mm以上、30mm未満であるもの
B:筆跡カスレの長さが、30mm以上、50mm未満であるもの
C:筆跡カスレの長さが、50mm以上であるもの
試験用ボールペンのチップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に24時間放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定し、下記基準に従って評価した。
<筆記条件>筆記荷重200gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
A++:筆跡カスレの長さが、2.5mm未満であるもの
A+:筆跡カスレの長さが、2.5mm以上10mm未満であるもの
A:筆跡カスレの長さが、10mm以上、15mm未満であるもの
B:筆跡カスレの長さが、15mm以上、25mm未満であるもの
C:筆跡カスレの長さが、25mm以上であるもの
試験用ボールペンを用いて、荷重200gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて、100m筆記試験後の得られた筆跡を観察し、下記基準に従って評価した。
A+:筆跡に線とびがなく、良好なもの
A:筆跡に線とびが若干あるが、良好なもの
B:筆跡に線とびがあるが、実用上問題のないもの
C:筆跡に線とびが多く、実用上懸念があるもの
試験用ボールペンを用いて、荷重200gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて、筆記試験後のボール座の摩耗量を測定し、下記基準に従って評価した。
A++:ボール座の摩耗が3μm未満のもの
A+:ボール座の摩耗が3μm以上、5μm未満のもの
A:ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの
B:ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの
C:ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの
試験用ボールペンを、30℃RH環境下にペン先下向きで7日間放置し、筆記先端(チップ先端)からのインキ漏れの程度を目視にて確認し、下記基準に従って評価した。
A+:チップ先端のインキ滴がないもの
A:チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの
B:チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの
C:チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの
Claims (8)
- ラノリン誘導体と、ポリビニルブチラール樹脂と、着色剤と、有機溶剤と、を含んでな
ることを特徴とする、筆記具用油性インキ組成物であって、前記ラノリン誘導体がラノリン脂肪酸エステルであり、前記インキ組成物の20℃、剪断速度5sec -1 におけるインキ粘度が、2000~35000mPa・sである、筆記具用油性インキ組成物。
。 - 前記ラノリン誘導体の含有率が、前記インキ組成物の総質量を基準として、0.1~2
0質量%である、請求項1に記載の筆記具用油性インキ組成物。 - 前記ポリビニルブチラール樹脂の含有率が、前記インキ組成物の総質量を基準として、
1~40質量%である、請求項1または2に記載の筆記具用油性インキ組成物。 - コハク酸エステルを更に含んでなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 脂肪酸を更に含んでなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを
特徴とする、筆記具。 - インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記
インキ収容筒内に請求項1~5のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容
してなることを特徴とする、油性ボールペン。 - 前記ボールの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1~12nmである、請求項7に記載の油性ボールペン。
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