JP7112195B2 - 油性ボールペン - Google Patents

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Description

本発明は油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンに関するものである。
従来、ボールペンは他の種類の筆記具と異なり、先端にステンレス鋼などからなる金属チップと、該金属チップのボール受け座に抱持される超鋼などの金属からなる転写ボールと、からなるボールペンチップをインキ収容筒に装着した構成を有するが、筆記時にボールの回転によって、ボール座に摩耗が発生し、筆跡に線飛び、カスレなどの発生や、書き味が劣るという欠点があった。さらに、チップ先端部を大気中に放置すると、インキ中の溶媒などが蒸発して、着色剤や樹脂などが乾燥固化したときに、書き出し時において筆跡カスレが発生してしまう欠点があった。
こうした問題を解決するため、ボールペンチップのボールとボール座との潤滑性向上や書き出し性の向上を目的として、潤滑剤などの様々な添加剤を用いた油性ボールペン用インキ組成物が多数提案されている。
このような添加剤を用いた油性ボールペン用インキ組成物としては、アルキルβ-D-グルコシドを用いたものとしては、特開平5-331403号公報「油性ボールペンインキ」、平均分子量が200~4000000であるポリエチレングリコールを用いたものとしては、特開平7-196971号公報「油性ボールペン用インキ組成物」、N-アシルアミノ酸、N-アシルメチルタウリン酸、N-アシルメチルアラニンを用いたものとしては、特開2007-176995号公報「油性ボールペン用インキ」、デカマカデミアナッツ油脂肪酸デカグリセリルと、アルキル基の炭素数が16以上であり常温で固体のポリオキシエチレンアルキルエーテルとを少なくとも含有するものとしては、特開2008-88264号公報「ボールペン用油性インキ組成物」等に開示されている。
「特開平5-331403号公報」 「特開平7-196971号公報」 「特開2007-176995号公報」 「特開2008-88264号公報」
しかし、特許文献1~4のような各種添加剤を用いた場合、ある程度書き味を向上しつつ、ボール座の摩耗の抑制することはできるが、潤滑性、書き出し性が満足できるものではなく、改良の余地があった。さらに、最近では、複写用紙に筆記する時には、通常より筆圧を高く筆記(高筆圧筆記)するため、より潤滑性を向上して、高筆圧筆記性を向上することが求められている。
特に、ノック式油性ボールペンや回転繰り出し式油性ボールペン等の出没式油性ボールペンを用いた場合では、書き出し性能に影響が出やすいので重要となる。
そのため、高筆圧筆記性と書き出し性能の両性能を満足することが必要とされている。
本発明の目的は、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗抑制と、書き味を向上し、書き出し性能が良好である油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンを得ることである。
本発明は、上記課題を解決するために
「1.着色剤、有機溶剤、リン酸エステル、脂肪酸エステルを含んでなり、前記リン酸エステルが、一般式(化1)または(化2)であることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
Figure 0007112195000001

Figure 0007112195000002

2.前記リン酸エステルの末端アルキル基(l、m)が、1~10であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記脂肪酸エステルが、分岐鎖アルキル基を有する脂肪酸エステルであることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記脂肪酸エステルが、脂肪酸と多価アルコールによってエステル化した脂肪酸エステルであることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記着色剤が、アゾ系骨格またはトリアリルメタン系骨格を有する染料で造塩した造塩染料であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6.20℃、剪断速度5sec-1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下であることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。」とする。
本発明は、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗抑制と、書き味を向上し、特に、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)における潤滑性を向上することで、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においてもボール座の摩耗抑制(高筆圧筆記性)と、書き味、書き出し性能が良好である油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンを得ることができた。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有量とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
本発明の特徴は、一般式(化1)または(化2)で表されるリン酸エステルと、脂肪酸エステルを含んでなる油性ボールペン用インキ組成物とすることである。これは、一般式(化1)または(化2)で表されるリン酸エステルと、脂肪酸エステルを含んでなることで、前記リン酸エステルと脂肪酸エステルにより形成される潤滑層によって、潤滑性を向上することで、ボールとチップ本体との間の潤滑性を保ち、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗の抑制(高筆圧筆記性)と、書き味を向上し、さらに、脂肪酸エステルによって、チップ先端部のインキ乾燥時に形成される被膜強度が軟化し、書き出し性能を向上することができるため、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗の抑制(高筆圧筆記性)と、書き味、書き出し性能を全て向上することが可能である。
本発明で用いるリン酸エステルについては、下記一般式(化1)、(化2)のように表されるもので、前記リン酸エステルによる潤滑層によって、潤滑性の向上することで、さらに高筆圧下(筆記荷重300~500gf)における潤滑性を向上し、ボール座の摩耗の抑制と、書き味を向上することが可能となる。
Figure 0007112195000003

Figure 0007112195000004
前記一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルは、一般式(化1)、(化2)の構造のPが、金属製のボールペンチップ本体やボールに吸着し、Pに隣接するアルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)やアルコキシル基(C2m+1O)によって、潤滑層を形成することで、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗抑制と、書き味を向上することを可能とする。特に、従来のリン酸エステルとは異なり、アルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)やアルコキシ基(C2m+1O)を有することで、より高い潤滑性を有する潤滑層を形成するため、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においても潤滑性を保ち、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でもボール座の摩耗の抑制し、書き味を向上することが可能であり、効果的である。特に、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でもボール座の摩耗の抑制し、書き味を向上することを考慮すれば、アルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)を有する一般式(化1)を用いることが好ましい。
また、前記脂肪酸エステルについては、脂肪酸と、1価アルコールや多価アルコールなどのアルコールとをエステル化反応させたものであるが、脂肪酸エステルを併用することで、脂肪酸基が金属製のボールペンチップ本体やボールに吸着することで、潤滑層を形成し、前記リン酸エステルのアルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)やアルコキシル基(C2m+1O)によって、形成される潤滑層との相互作用により、より高い潤滑性を有する潤滑層を形成するため、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でもボール座の摩耗の抑制し、書き味を向上することが可能となる。さらに、前記脂肪酸エステルによって、チップ先端部のインキ乾燥時に形成される被膜強度が軟化し、書き出し性能を向上することができる。
そのため、一般式(化1)または(化2)で表されるリン酸エステルと、脂肪酸エステルを併用することで、ボール座の摩耗の抑制(高筆圧筆記性)と、書き味、書き出し性能を全て向上することが可能である。
(リン酸エステル)
また、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルの中でも、アルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)、アルコキシル基(C2m+1O)の末端アルキル基の炭素鎖(l,m)について特定の炭素鎖(l,m)とすることが好ましいが、この効果については、以下のように推測する。
アルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)、アルコキシル基(C2m+1O)の末端アルキル基の炭素鎖(l,m)については、1~10とすることが好ましい。これは、アルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)やアルコキシル基(C2n+1O)の末端アルキル基の炭素鎖が長くなり過ぎて、書き味や書き出し性能は良好であるものの、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でのボール座の摩耗抑制が得られづらい。これは、末端アルキル基の炭素鎖(l,m)が10を越えた場合、特に前記炭素鎖(l,m)が5以下とした場合は、お互いの炭素鎖間で立体障害が出やすく、金属に吸着したリン酸基が密になっても、炭素鎖の配列が密になりづらく、潤滑性が十分な潤滑層が得られず、高筆圧下でのボール座の摩耗抑制が得られづらいためである。さらに、末端アルキル基の極性が油性側に寄ってしまうため、有機溶剤に対する親和性が劣ることで、溶解安定性に影響しやすく、特にグリコールエーテル溶剤では影響が生じやすく、インキ中での溶解安定性に問題が出やすくなる。このため、長期間保存により金属製チップ中の金属イオン等の影響により、金属塩析出物が発生しやすくなり、インキ経時安定性が劣りやすく、本発明のような潤滑効果が得られづらい。そのため、前記末端アルキル基の炭素鎖(l,m)については、1~10とすることが好ましく、より考慮すれば、前記末端アルキル基の炭素鎖(l,m)は、1~5であることが好ましい。
一方、末端アルキル基の炭素鎖(l,m)が3以下とした場合には、高筆圧下でのボール座の摩耗抑制は良好であるものの、インキ中において、前記アルキル基が十分に伸びず、ボールとボール座の間のクッション性が十分でない潤滑層であるため、書き味や書き出し性能に影響が出やすい。そのため、前記末端アルキル基が、ブチル基(末端アルキル基の炭素鎖:4)を有するブトキシエチルアシッドホスフェート(l=4)、ブチルアシッドホスフェート(m=4)などを用いることで、高筆圧下でのボール座の摩耗を抑制し、書き味、書き出し性能を向上する効果が得られやすいため、好ましい。
さらに、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルについては、リン酸エステルのモノエステル(化1、化2のn=1)、リン酸エステルのジエステル(化1、化2のn=2)、リン酸エステルのトリエステル(化1、化2のn=3)や、それらの混合物などが挙げられる。その中でも、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でもボール座の摩耗の抑制することと、書き味を考慮すれば、リン酸エステルのモノエステル(化1、化2のn=1)、リン酸エステルのジエステル(化1、化2のn=2)を用いることが好ましく、より考慮すれば、リン酸エステルのモノエステル(化1、化2のn=1)と、リン酸エステルのジエステル(化1、化2のn=2)の混合物を用いることが好ましい。これは、前記リン酸エステルのトリエステル(化1、化2のn=3)だと、アルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)、アルコキシル基(C2m+1O)が多すぎることで、インキ経時安定性に影響が出やすいためである。
さらに、上記高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でも潤滑性を考慮すれば、リン酸エステルのモノエステルと、リン酸エステルのジエステルとの混合物とした場合の質量比については、リン酸エステルのジエステル(化1、化2のn=2)を用いると、アルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)、アルコキシル基(C2m+1O)が多いため、潤滑性に有利に働き、さらにインキ経時安定性も保てるため、リン酸エステルのジエステルが多い方が好ましい。そのため、質量比1:1~1:5の範囲である混合物が好ましく、さらに考慮すれば、質量比1:1~1:3の範囲の混合物が好ましい。
また、一般式(化1)のアルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)を有するリン酸エステルについては、一例として、ポリオキシエチレンリン酸エステル系界面活性剤では、複数のエチレンオキサイド基を有することで、アルキル基とエチレンオキサイド基が反発してしまい、インキ中でアルキル基が直鎖上に伸びにくく、書き出し性能は良好であるものの、金属に吸着したリン酸エステルの疎水基が密に並ばないため、潤滑性、特に高筆圧下での潤滑性が、比較的劣りやすい。このため、アルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)のように、アルコキシ基と、エチレンオキシド基を1基有することで、従来のように複数のエチレンオキサイド基を有する構造と異なることで、格段の潤滑効果などが得られるため、一般式(化1)を用いることが好ましく、特にブトキシエチル基(COCHCHO、末端アルキル基の炭素鎖4)を有するブチルアシッドホスフェートが好ましい。
また、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルの具体例としては、一般式(化1)はブトキシエチルアシッドホスフェート(l=4)などや、(化2)はメチルアシッドホスフェート(m=1)、エチルアシッドホスフェート(m=2)、ブチルアシッドホスフェート(m=4)、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(m=8)、イソデシルアシッドホスフェート(m=10)、ラウリルアシッドホスフェート(m=12)、アルキル(m=12,14,16,18)アシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート(m=13)、オレイルアシッドホスフェート(m=18)、テトラコシルアシッドホスフェート(m=24)などが挙げられる。
また、前記リン酸エステルの含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1~10.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、10.0質量%を越えると、インキ経時が不安定になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、0.1~5.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.3~3.0質量%が、好ましい。
(脂肪酸エステル)
脂肪酸エステルについては、脂肪酸と、1価アルコールや多価アルコールなどのアルコールとをエステル化反応させたものであるが、前記脂肪酸エステルの中でも、より書き出し性能を向上することを考慮すれば、分岐鎖アルキル基を有する脂肪酸エステルを用いることが好ましい。これは、分岐鎖アルキル基を有する脂肪酸エステルは、直鎖構造よりも、嵩高い構造をしているため、分岐鎖アルキル基の嵩高さによって、金属製のボール表面やチップ本体のボール座に吸着しやすく、さらに厚い潤滑膜を形成して、より潤滑性が向上しやすいためで、同時に分岐鎖アルキル基の嵩高さによって、チップ先端部のインキ乾燥時に形成される被膜強度が軟化し、書き出し性能を向上するためである。
さらに、前記脂肪酸エステルについては、酸価を0.01~5(mgKOH/g)とすることが好ましい。これは、油性インキ中の前記一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルや他成分との相性が良好であり、長期間インキ中で安定しているため、長時間書き出し性能を向上し、長期間潤滑性を向上し、書き味を向上しやすくすることが可能となるためである。より考慮すれば、酸価については、0.01~2.5(mgKOH/g)であることが好ましく、より好ましくは、0.05~1.0(mgKOH/g)である。
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分(遊離脂肪酸)を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
前記脂肪酸エステルのエステル化反応に用いられるアルコールは、多価アルコールが好ましい。これは、理由は定かではないが、前記脂肪酸エステルのエステル化反応に用いられるアルコールの水酸基が多い方が、保湿作用が働きやすく、チップ先端部が乾燥したときに形成する被膜の強度を軟化させ、ボールの回転をスムーズにする効果が得られるので、筆跡カスレが発生せずに、書き出し性能が向上するものと推測される。より書き出し性能を向上することを考慮すれば、水酸基が4以上の多価アルコールであることが好ましく、より好ましくは水酸基が5以上であることが好ましい。また、水酸基が多すぎると、油性インキ中での安定性に影響が出やすいため、水酸基が8以下であることが好ましい。
前記脂肪酸エステルのエステル化反応に用いられるアルコールの具体例としては、1価アルコールとしては、ペンタノール、シクロヘキサノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、イソノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミスチリルアルコール、ステアリルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの中でも、より書き出し性能を向上し、インキ経時安定性を考慮すれば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどのペンタエリスリトール類によってエステル化した脂肪酸エステルを含むことが好ましく、より考慮すれば、ジペンタエリスリトールによってエステル化した脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
また、前記脂肪酸エステルのエステル化反応に用いられる脂肪酸の具体例としては、モノカルボン酸としては、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、2-エチルブタン酸、ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、イソヘプタン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、ネオノナン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸などが挙げられる。多価カルボン酸としては、具体的には、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
また、前記脂肪酸エステルの含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1~10.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の書き出し性能や潤滑性が得られにくい傾向があり、10.0質量%を越えると、インキ経時が不安定になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、0.1~5.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.1~3.0質量%が好ましく、0.3~2.0質量%が最も好ましい。
前記脂肪酸エステルに対する、前記一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルの配合比(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステル/脂肪酸エステル)が、質量基準で0.01倍~5倍とすることが好ましい。これは、上記範囲であると、ボール座の摩耗抑制と書き出し性能とを両立しやすいためで、より考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.05倍~3倍とすることが好ましく、より考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.1倍~2倍であることが好ましい。
(有機アミン)
また、本発明のように一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルを用いる場合は、有機アミンを用いることが好ましい。これは、前記リン酸エステルであるため、有機アミンによって、中和させることで、インキ中で溶解安定し、前記リン酸エステルによる潤滑層を形成しやすく、潤滑性効果を得られやすくし、さらに着色剤、界面活性剤など他のインキ成分の経時安定性を良好としやすくするためである。前記有機アミンと、前記リン酸エステル、着色剤との安定性を考慮すれば、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましい。これは、油性インキ中での反応性については、1級アミンが最も強く、次いで2級アミン、3級アミンと反応性が小さくなり、1級アミンは、前記一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステル、着色剤やその他の成分と反応しやすく、インキ経時安定性に影響が出やすい。そのため、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましく、より考慮すれば、3級アミンを用いることが好ましい。
また、有機アミンについては、具体的には、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミンが挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミンが好ましい。
さらに、前記有機アミンの全アミン価は、リン酸エステル、着色剤、界面活性剤やその他の成分との安定性を考慮すれば、100~300(mgKOH/g)とすることが好ましい。これは、300(mgKOH/g)を超えると、反応性が強いため、上記成分と反応し易いため、インキ経時安定性が劣りやすい。また、全アミン価が、100(mgKOH/g)未満であると、インキ中でのリン酸エステルの安定性に影響が出やすく、油性ボールペンとした場合、ボールやチップ本体などの金属類の吸着性が劣りやすく、潤滑性能が得られにくい。よりリン酸エステルとの安定性や潤滑性をより考慮すれば、150~300(mgKOH/g)の範囲が好ましく、より安定性を考慮すれば、200~300(mgKOH/g)が好ましく、最も考慮すれば、230~270(mgKOH/g)が好ましい。
なお、全アミン価については、1級、2級、3級アミンの総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
有機アミンについては、具体的には、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、具体的には、ナイミーンL-201(全アミン価:232~246、2級アミン)、同L-202(全アミン価:192~212、3級アミン)、同L-207(全アミン価:107~119、3級アミン)、同S-202(全アミン価:152~166、3級アミン)、同S-204(全アミン価:120~134、3級アミン)、同S-210(全アミン価:75~85、3級アミン)、同DT-203(全アミン価:227~247、3級アミン)、同DT-208(全アミン価:146~180、3級アミン)(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。アルキルアミンとしては、具体的には、ファーミン80(全アミン価:204~210、1級アミン)、ファーミンD86(全アミン価:110~119、2級アミン)、ファーミンDM2098(全アミン価:254~265、3級アミン)、ファーミンDM8680(全アミン価:186~197、3級アミン)(花王(株))、ニッサン3級アミンBB(全アミン価:243~263、3級アミン)、同FB(全アミン価:230~250、3級アミン)(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記有機アミンの含有量は、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステル、着色剤やその他の成分との安定性を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.1~10.0質量%が好ましく、さらに後に説明するリン酸エステルに対する中和を考慮すれば、0.5~5.0質量%が好ましい。
前記有機アミンに対する、前記一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルの配合比(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステル/有機アミン)が、質量基準で0.01倍~5倍とすることが好ましい。これは、上記範囲であると、リン酸エステルを中和安定させることができ、潤滑効果が得られやすく、さらに、よりインキ経時安定性を考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.05倍~3倍とすることが好ましく、より考慮すれば、前記配合比が、質量基準で0.1倍~2倍であることが好ましい。
(着色剤)
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができ、染料、顔料は併用して用いても良い。染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB-B、BASE OF BASIC DYES RO6G-B、BASE OF BASIC DYES VPB-B、BASE OF BASIC DYES VB-B、BASE OF BASIC DYES MVB-3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH-スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C-RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C-RH、アイゼンスピロンレッド C-GH、アイゼンスピロンレッド C-BH、アイゼンスピロンイエロー C-GNH、アイゼンスピロンイエロー C-2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH-スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー530、S.R.C-BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、着色剤としては、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステル、後述の界面活性剤との相性による経時安定性を考慮して、少なくとも造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料との塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料中から用いることが好ましい。よりインキ中の成分との安定性を考慮すれば、アゾ系骨格またはトリアリルメタン系骨格を有する染料で造塩した造塩染料を用いることが好ましく、より考慮すれば、アゾ系骨格を有する染料で造塩した造塩染料を用いることが好ましい。
アゾ系骨格を有する染料で造塩した造塩染料については、アゾ系酸性染料またはアゾ系塩基性染料で造塩した造塩染料を用いることが好ましく、その中でも、結合が安定していて、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルへの影響が出にくいため、アゾ系酸性染料と塩基性染料との造塩染料、アゾ系酸性染料と有機アミンとの造塩染料、アゾ系塩基性染料と有機酸との造塩染料の中から選択することが好ましい。
さらに、造塩染料を構成する有機酸については、フェニルスルホン基を有する有機酸であれば、金属に吸着し易い潤滑膜を形成しやすく、潤滑性を向上し、書き味やボール座の摩耗抑制を良好とするため好ましく、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸が挙げられる。また、よりアゾ系塩基性染料と中和反応させても、インキ中で長期安定することを考慮すれば、有機酸として、アルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
また、着色剤としては、潤滑性を考慮すれば、顔料を用いることが好ましい、これは、ボールとチップ本体の隙間に顔料粒子が入り込むことで、ベアリングのような作用が働きやすく、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上し、書き味を向上し、ボール座の摩耗の抑制する効果が得られやすいため、顔料を用いることが好ましい。特に、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルによる潤滑層と、顔料粒子とベアリング作用による相乗効果によって、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においても潤滑性を保ちやすく、ボール座の摩耗の抑制し、書き味を向上することが可能となる。さらに、顔料は、耐水性、耐光性に優れ、良好な発色を得られるため、好ましい。
顔料の種類としては、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルとの相性による潤滑性を考慮すれば、カーボンブラック、キナクリドン系、スレン系、ジケトピロロピロール系の顔料の中から用いることが好ましく、さらに経時的な相性により、インキ経時安定性を考慮すれば、キナクリドン系、スレン系の顔料を用いることが好ましい。
着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、5.0~30.0質量%が好ましい。これは5.0質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、30.0質量%を越えると、インキ中での溶解性に影響しやすい傾向があるためで、よりその傾向を考慮すれば、7.0~25.0質量%が好ましく、さらに考慮すれば、10.0~20.0質量%である。
(有機溶剤)
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤など、筆記具用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
これらの有機溶剤の中でも、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルとの溶解性を考慮すれば、非水溶性有機溶剤を用いて、油性ボールペン用インキ組成物で、溶解安定させることで、潤滑性も向上する効果が得られやすいため、好ましい。
その中でも、グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。これは、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルのアルコキシエチル基(C2l+1OCHCHO)、アルコキシル基(C2m+1O)とのグリコールエーテル溶剤に対する親和性が良好となりやすく、溶解安定するため、長期間保存においてもインキ経時が安定しやすい。さらに、グリコールエーテル溶剤を用いると、吸湿しやすいため、チップ先端部が乾燥したときに形成する被膜の強度を軟化させ、書き出し性能も向上しやすいためであり、後述する界面活性剤と併用するとより効果的で、インキ中での安定性を考慮すれば、芳香族グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。さらに、グリコールエーテル溶剤以外の有機溶剤については、アルコール溶剤を用いることが好ましいが、これは、アルコ-ル溶剤は揮発して、チップ先端での乾燥をしやすく、筆記先端部内(チップ先端部内)をより早く増粘させることで、筆記先端部の間隙からインキ漏れを抑制するため、好ましい。さらに、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコ-ルは、潤滑性を向上する効果もあるため、少なくとも用いる方が好ましい。そのため、グリコールエーテル溶剤とアルコ-ル溶剤を併用することが好ましい。
また、有機溶剤の含有量は、溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を向上することを考慮すると、インキ組成物全量に対し、10.0~70.0質量%が好ましい。また、アルコ-ル溶剤の含有量は、チップ先端での乾燥性を考慮すれば、全有機溶剤に対し、30.0~90.0質量%が好ましく、より好ましくは50.0~90.0質量%である。
(樹脂)
また、インキ漏れ抑制をより向上するためには、樹脂をインキ粘度調整剤として、用いることが好ましい、樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、その中でも、ポリビニルブチラール樹脂またはケトン樹脂を含んでなることが好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂についても、より高い潤滑効果が得られる潤滑層を形成しやすい。これは、前記ポリビニルブチラール樹脂を用いると、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすく、前記一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステル、脂肪酸エステルと併用することで形成される潤滑層とによる相乗効果によって、より高い潤滑効果が得られやすい。さらに、前記ポリビニルブチラール樹脂を用いると、形成する被膜によって、インキ漏れをより向上しやすくなるため、好ましく、また、着色剤として顔料を用いる場合は、顔料分散効果も得られるため、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。そのため、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
また、ポリビニルブチラール樹脂は、水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、水酸基量25mol未満のポリビニルブチラール樹脂では、有機溶剤への溶解性が十分でなく、十分な潤滑効果や、インキ漏れ抑制の効果が得られにくく、さらに、吸湿性による書き出し性能を考慮すると、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましいためである。また、前記水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は、書き味が向上しやすくなるため、好ましい。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、チップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂は他の樹脂とは違い、インキ温度が高くなっても、インキ粘度を下がりづらくする性質があり、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすい傾向がある。特に、ボールペンでは、高筆圧で筆記することも多いため、筆記具では効果的である。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂が好ましい。そのため、水酸基量30~40mol%のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、さらに好ましくは、水酸基量30~36mol%が好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
また、ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度については、前記平均重合度は200以上であると、インキ漏れ抑制性能が向上しやすく、また、前記平均重合度は2500を超えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、前記平均重合度は、200~2500が好ましい。さらに、より考慮すれば、前記平均重合度は1500以下が好ましく、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルとの潤滑性を考慮すれば、前記平均重合度は、200~1000が好ましい。ここで、平均重合度とは、ポリビニルブチラール樹脂の1分子を構成している基本単位の数をいい、JISK6728(2001年度版)に規定された方法に基づいて測定された値を採用可能である。
ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、油性ボールペン組成物中の全樹脂の含有量に対して70%以上とし、主たる樹脂として用いることが好ましい。これは、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が全樹脂の含有量の70%未満となると、その他の樹脂によって、弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまいやすく、書き味向上の効果が得られづらくなり、さらに、チップ先端の樹脂被膜の形成を阻害しやすく、インキ垂れ下がりを抑制できず、さらに弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果が得られづらくなるためである。より書き味やインキ垂れ下がり性能を向上する傾向を考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、全樹脂の含有量に対して90%以上が好ましい。
前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対し、1.0質量%より少ないと、所望の潤滑性やインキ漏れ抑制性能が劣りやすく、40.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすいため、インキ組成物全量に対し、1.0~40.0質量%が好ましい。さらに、考慮すれば5.0質量%以上が好ましく、30.0質量%を越えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、5.0~30.0質量%が好ましく、より考慮すれば、8.0~25.0質量%が好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂については、具体的には、積水化学工業(株)製の商品名;エスレックBH-3(水酸基量:34mol%、平均重合度:1700)、同BH-6(水酸基量:30mol%、平均重合度:1300)、同BX-1(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:1700)、同BX-5(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:2400)、同BM-1(水酸基量:34mol%、平均重合度:650)、同BM-2(水酸基量:31mol%、平均重合度:800)、同BM-5(水酸基量:34mol%、平均重合度:850)、同BL-1(水酸基量:36mol%、平均重合度:300)、同BL-1H(水酸基量:30mol%)、同BL-2(水酸基量:36mol%、平均重合度:450)、同BL-2H(水酸基量:29mol%)、同BL-10(水酸基量:28mol%)などや、クラレ(株)製の商品名;モビタールB20H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:250~500)、同B30T(水酸基量:33~38mol%、平均重合度:400~650)、同B30H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:400~650)、同B30HH(水酸基量:30~34mol%、平均重合度:400~650)、同B45H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:600~850)、同B60T(水酸基量:34~38mol%、平均重合度:750~1000)、同B60H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:750~1000)、同B75H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:1500~1750)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
ケトン樹脂については、前記一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステル、脂肪酸エステルと併用することで、相乗的に潤滑作用が働きやすく、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)で、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗抑制をより向上しやすいため好ましい。ケトン樹脂の中でも、芳香環骨格(フェニル基、アセトフェノン基、ナフタレン基などベンゼン環を有する)やシクロヘキサン骨格(シクロヘキサン基、シクロヘキサノン基などシクロヘキサン環を有する)などの環状構造を有するケトン樹脂を用いることが好ましい。これは、環状構造を有するケトン樹脂によるクッション効果が得られ、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)で、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗抑制をより向上するためで、より好ましくは、芳香環を有するケトン樹脂の方が、二重結合構造を多数有するため、より強いクッション効果が得られやすいため、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)での潤滑性は効果的であり、好ましい。特に、ボール直径が0.7mm以下である小径ボールを用いると、同一距離の筆記をする場合にボールの直径が小さいほどボールの回転数が多くなるので、ボール座の摩耗が激しなりやすいため、効果的であり、さらに、ボール直径が0.5mm以下であると、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)での、ボール座の摩耗が進みやすいため、より効果的である。
ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂以外の樹脂は、曳糸性付与剤を適宜用いてもよい。特に、ポリビニルピロリドン樹脂を配合することで、インキの結着性を高め、チップ先端における余剰インキの発生を抑制しやすいため、ポリビニルピロリドン樹脂を含有することが好ましい。前記ポリビニルピロリドン樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.01質量%より少ないと、余剰インキの発生を抑制しにくい傾向があるため、3.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすい傾向があるため、インキ組成物全量に対し、0.01~3.0質量%が好ましい。より上記理由を考慮すれば、0.1~2.0質量%が好ましい。具体的には、アイエスピー・ジャパン(株)製の商品名;PVP K-15、PVP K-30、PVP K-90、PVP K-120などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
(界面活性剤)
本発明においては、上記潤滑性と、チップ先端部を大気中に放置した状態で、該チップ先端部が乾燥したときの書き出し性能を向上することを考慮すれば、界面活性剤を用いることが好ましい。これは、界面活性剤を用いると、形成される被膜を柔らかくする傾向があり、書き出し性能を改良でき、さらに潤滑性も向上することができる。界面活性剤としては、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルを除く)などが挙げられる。その中でも、上記効果を考慮すれば、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルを除く)の中から1種以上を用いることが好ましい。
特に、本発明で用いる一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルについては、リン酸エステル系界面活性剤(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルを除く)は同骨格としてリン酸を有することで、相性が良く、相乗的な潤滑効果が得られやすいため、リン酸エステル系界面活性剤(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルを除く)を用いることが好ましい。これは、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルとリン酸エステル系界面活性剤(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルを除く)を併用することで、前記一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルの潤滑層とリン酸エステル系界面活性剤との潤滑層とが相互作用することで、より高い潤滑性を有する潤滑層を形成できるため、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗の抑制しやすくする効果を奏するものと推測する。さらに、前記したポリビニルブチラール樹脂を用いる場合は、ポリビニルブチラールによって形成するインキ層と前記潤滑層によって、より潤滑性を向上しやすいため、より好ましい。
前記界面活性剤については、より書き出し性能と潤滑性の両方を向上することを考慮すれば、HLB値が6~14であることが好ましい。これは、HLB値が14を越えると親水性が強くなりやすいため、油性インキ中での溶解性が劣りやすいため、前記界面活性剤の効果が得られにくく、潤滑効果が得られにくいためである。また、HLB値が6未満だと、親油性が強くなり過ぎて、有機溶剤との相溶性に影響が出やすく、インキ経時が安定しにくく、さらに書き出し性能が向上しにくいためである。さらに、潤滑性を考慮すれば、HLB値が12以下にすることが好ましく、HLB値が6~12であることが好ましく、よりインキ経時安定性、書き出し性能を考慮すれば、HLB値が8~12が好ましい。
尚、HLBは、グリフィン法、川上法、デイビス法、アトラス法などから求めることができる。特に、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、筆記先端部の乾燥時の書き出し性能に影響しやすいため、上記HLB値とした界面活性剤を用いることはより好ましい。
前記界面活性剤としては、具体的には、脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸などが挙げられ、シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロ基ブチルスルホン酸塩、パーフルオロ基含有カルボン酸塩、パーフルオロ基含有リン酸エステル、パーフルオロ基含有リン酸エステル型配合物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物などが挙げられ、リン酸エステル系界面活性剤(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルを除く)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられる。また、リン酸エステル系界面活性剤(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルを除く)を用いる場合は、酸価は、150以下とすることが好ましい、これは、リン酸エステル系界面活性剤による潤滑性の向上を発揮しやすくするためで、さらにインキ中での安定性や、潤滑性を考慮すれば、酸価は30~120が好ましい、より考慮すれば、酸価は70~120が好ましい
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1~5.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.3~3.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.5~3.0質量%が、最も好ましい。
また、その他として、粘度調整剤として、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤を、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤、水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
本発明の油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度が50000mPa・sを越えると、書き出し性能や書き味が劣りやすいため、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度は、50000mPa・s以下であることが好ましい。また、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度が2000mPa・s未満だと、高筆圧筆記性、インキ漏れを抑制しにくいため、2000mPa・s以上とすることが好ましい。よりインキ漏れ抑制、高筆圧筆記性、書き味、インキ追従性能、書き出し性能をより向上することを考慮すれば、前記インキ粘度は2000~35000mPa・sがより好ましく、さらに、より考慮すれば、10000~30000mPa・sが好ましい。
本発明の油性ボールペン用インキ組成物の金属塩析出物の抑制などのインキ経時安定性、潤滑性を保つには、pH値を3~10とすることが好ましい。これは、pH値が3未満だと、チップ本体内の金属イオンが溶出し易いため、金属塩析出物が発生し易く、pH値が10を越えると、インキ中の着色剤や界面活性剤のイオン結合が離れやすくなるため、インキ経時安定性、潤滑性、色調に影響が出やすい傾向があり、さらに顔料分散安定性が得られなくなってしまうためである。さらに、よりインキ経時安定性を考慮すれば、pH値が3~9が好ましく、より考慮すれば、pH値が5~8が好ましい。
尚、本発明におけるpH値は、油性ボールペン用インキ組成物の測定方法においては、油性インキを容器に採取し、イオン交換水を加えて、攪拌しながら加温し、加温後放冷し、蒸発した水分量を補充後、濾紙を用いて濾過する。その濾過したろ液の上層を用いて、pH測定は東亜ディーケーケー社製pHメーター HM-30R型を用いて、を用いて、20℃にて測定した値を示すものである。
また、本発明で用いるボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1~12nmとすることが好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が12nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とび、線ムラなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。また、前記算術平均粗さ(Ra)が0.1~10nmであると、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステル、脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、ボール表面にインキが載りやすいためより好ましく、より書き味を考慮すれば、2~8nmが好ましい。なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。
また、ボールの直径は、ボール直径が0.7mm以下とした比較的小さいボール径であると、同一距離の筆記をする場合にボールの直径が小さいほどボールの回転数が多くなるので、ボール座の摩耗が激しくなりやすいため、効果的であり、さらに、ボール直径が0.5mm以下であると、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)での、ボール座の摩耗が進みやすいため、より効果的である。
また、ボ-ルペンチップの材料は、ステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABSなどの樹脂材が挙げられるが、ボール座の摩耗、経時安定性を考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
また、本発明に用いるボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、3~20μmとするのが好ましい。これは、3μm未満であると、濃い筆跡や良好な書き味が得られづらくなり、20μmを越えると、インキ垂れ下がり性能に影響が出やすくなるためで、よりそのことを考慮すれば、3~16μmとするのが好ましく、3~12μmとするのが好ましい。
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、予め有機溶剤、顔料、顔料分散剤を添加し、3本ロール分散機で分散させて、顔料分散体を作製した。その後、顔料分散体、染料、有機溶剤、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステル、脂肪酸エステル、界面活性剤、有機アミン、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、曳糸性付与樹脂としてポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec-1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、インキ粘度18000mPa・sであった。
また、pH値を東亜ディーケーケー社製pHメーター HM-30R型を用いて、20℃にて測定したところ、pH値=6であった。
実施例1
着色剤(アゾ系塩基性染料とアルキルベンゼンスルホン酸との造塩染料)15.0質量%
着色剤(塩基性染料とアゾ系酸性染料との造塩染料) 2.0質量%
顔料分散体(顔料分20%、キナクリドン系顔料) 5.0質量%
一般式(化1)リン酸エステル(化1:l=4として、n=1とn=2の混合物)
1.0質量%
分岐鎖アルキル基を有する脂肪酸エステル(脂肪酸とジペンタエリスリトールによってエステル化した脂肪酸エステル) 1.0質量%
アルコール溶剤(ベンジルアルコール) 12.5質量%
グリコールエーテル溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル) 45.0質量%
界面活性剤 2.0質量%
有機アミン (2級アミン) 1.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂 10.0質量%
ケトン樹脂 5.0質量%
曳糸性付与樹脂(ポリビニルピロリドン樹脂) 0.5質量%
実施例2~28
表に示すように、各成分、チップ仕様を変更した以外は、実施例1と同様な手順でインキ配合し、実施例2~28の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
比較例1~5
表に示すように、各成分、チップ仕様を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1~5の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
Figure 0007112195000005
Figure 0007112195000006
Figure 0007112195000007
Figure 0007112195000008

試験および評価
実施例1~28および比較例1~5で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒(ポリプロピレン製)の先端に、ボール(φ0.7mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量:8μm)を装着するとともに、インキ収容筒内に、実施例1の油性ボールペン用インキ(0.2g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ(登録商標))に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験および評価を行った。
高筆圧下耐摩耗試験(高筆圧筆記性):荷重400gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
ボール座の摩耗が5μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの ・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの ・・・×
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
書き出し性能試験:手書き筆記した後、チップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に30分放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定した。
<筆記条件>筆記荷重70gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
筆跡カスレの長さが、15mm未満であるもの ・・・◎
筆跡カスレの長さが、15mm以上、25mm未満であるもの ・・・○
筆跡カスレの長さが、25mm以上、45mm未満であるもの ・・・△
筆跡カスレの長さが、45mm以上であるもの ・・・×
インキ経時試験:チップ本体内のインキを顕微鏡観察した。
析出物がなく、良好のもの ・・・◎
析出物が微少に発生したもの ・・・○
析出物が発生したが、実用上問題のないもの ・・・△
析出物が発生し、カスレや筆記不良などの原因になるもの ・・・×
実施例1~28では、高筆圧下耐摩耗試験(ボール座の摩耗試験)、書き味、書き出し性能試験、インキ経時試験ともに良好な性能が得られた。
また、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して20℃の環境下で、剪断速度5sec-1(回転数2.5rpm)にて、インキ粘度を測定したところ、実施例10:19000mPa・s、実施例26:16000mPa・s、実施例28:3000mPa・sであった。
また、pH値を東亜ディーケーケー社製pHメーター HM-30R型を用いて、20℃にて測定したところ、実施例10:pH値=6、実施例26:pH値=6、実施例28:pH値=7であった。
比較例1~3では、一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステルを用いなかったため、高筆圧下耐摩耗試験(ボール座の摩耗試験)において、ボール座の摩耗がひどく筆跡にカスレが発生し、筆記不良になるものがあり、書き味も劣っていた。
比較例1、4、5では、書き出し性能がひどく、書き味も劣っていた。
また、ノック式油性ボールペンや回転繰り出し式油性ボールペン等の出没式油性ボールペンを用いた場合では、書き出し性能が重要な性能の1つであるため、少なくとも本発明のような一般式(化1)、(化2)のようなリン酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル系界面活性剤(一般式(化1)、(化2)のリン酸エステルを除く)と、を併用すると効果的である。
また、本実施例では、インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容したボールペンレフィルを軸筒内に配設した油性ボールペンを例示したが、本発明の油性ボールペンは、軸筒自体をインキ収容筒とし、軸筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を直に収容した直詰め式の油性ボールペンであっても良く、インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容したもの(ボールペンレフィル)をそのままボールペンとして使用した構造であっても良い。
本発明は油性ボールペン用インキ組成物として利用でき、さらに詳細としては、該油性ボールペン用インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の油性ボールペンとして広く利用することができる。

Claims (8)

  1. インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンであって、前記油性ボールペン用インキ組成物が、着色剤、有機溶剤、リン酸エステル、脂肪酸エステルを含んでなり、前記リン酸エステルが、一般式(化1)または(化2)であり、前記脂肪酸エステルが、脂肪酸と水酸基が4~8個であるペンタエリスリトール類によってエステル化した脂肪酸エステルであり、該脂肪酸エステルの酸価が0.01~5(mgKOH/g)であり、前記ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1~10nmであることを特徴とする油性ボールペン。
    Figure 0007112195000009
    Figure 0007112195000010
  2. 前記ペンタエリスリトール類が、ジペンタエリスリトールであることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン。
  3. 前記リン酸エステルの末端アルキル基(l、m)が、1~10であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン。
  4. 前記脂肪酸エステルが、分岐鎖アルキル基を有する脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
  5. 前記脂肪酸エステルに対する、前記リン酸エステルの配合比(リン酸エステル/脂肪酸エステル)が、質量基準で0.01倍~5倍であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
  6. 前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
  7. 前記着色剤が、アゾ系骨格またはトリアリルメタン系骨格を有する染料で造塩した造塩染料であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
  8. 20℃、剪断速度5sec-1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
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