JP7197382B2 - 油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペン - Google Patents

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Description

本発明は油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンに関するものである。
従来、油性ボールペン用インキ組成物において、筆記先端部の間隙よりインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙よりインキ漏れ)を抑制するために、インキ漏れ抑制剤として、特定の樹脂や剪断減粘性付与剤を用いてインキ粘度を高く設定した油性インキ組成物の技術が提案されており、インキ漏れ抑制については、ある程度抑制することはできるが、筆記先端部を大気中に放置すると、インキ中の溶媒などが蒸発して、樹脂や剪断減粘性付与剤(インキ漏れ抑制剤)、着色剤などが乾燥固化したときに、ドライアップ時の書き出し(書き出し性能)において筆跡カスレが発生したり、書き味が十分ではないといった欠点があった。
このようなドライアップ時の書き出し(書き出し性能)を向上するために、様々な溶剤や添加剤を用いることを検討していた。例えば、蒸気圧0.005~0.5mmHg(20℃)である不揮発性の有機溶剤を主溶剤として含有したものとしては、特開平6-247093号公報「油性ボールペン」が、平均分子量が200~4,000,000であるポリエチレングリコールを含有したものとしては特開平7-196971公報「油性ボールペン用インキ組成物」が、デカマカデミアナッツ油脂肪酸デカグリセリルと、アルキル基の炭素数が16以上であり常温で固体のポリオキシエチレンアルキルエーテルとを少なくとも含有するものとしては、特開2008-88264号公報「ボールペン用油性インキ組成物」等に開示されている。
「特開平6-247093号公報」 「特開平7-196971号公報」 「特開2008-88264号公報」
しかし、特許文献1では、有機溶剤として、蒸気圧0.005~0.5mmHg(20℃)である不揮発性の有機溶剤を含有すると、インキが完全に乾ききるのを防ぐ効果はあるが、筆跡の乾燥性が悪く、それだけではドライアップ時の書き出し(書き出し性能)を満足させることができなかった。
また、特許文献2、3では、油性インキの添加剤として、特定分子量のポリエチレングリコール、デカマカデミアナッツ油脂肪酸デカグリセリルを含有すること、特許文献4では、水性インキの添加剤として、ワックスエマルジョンを含有することで、チップ先端部に樹脂被膜を形成することで、筆記先端部の乾燥を抑制して、チップ内のインキ増粘を抑制えることにより、ある程度書き出し性能を向上することは可能ではあるが、樹脂被膜が硬いため、ドライアップ時の書き出し(書き出し性能)において、筆跡カスレが発生してしまい、十分な書き出し性能が得られなかった。
上記のように、特定のインキ漏れ抑制剤で、筆記先端部に樹脂被膜などを形成して、インキ漏れを抑制できたとしても、該樹脂被膜などが硬いため、筆跡カスレが発生し、書き出し性能が劣ってしまい、前記2つの性能を両立することが難しく、改良する余地があった。
本発明の目的は、インキ漏れを抑制し、書き出し性能、書き味を向上する油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンを得ることである。
本発明は、上記課題を解決するために
「1.着色剤、芳香族有機溶剤、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が16~24であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量が、25mol%以上であることを特徴とする第1項または第2項にに記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記油性ボールペン用インキ組成物に、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を含んでなることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記芳香族有機溶剤が、アルコール溶剤であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6. 20℃、剪断速度5sec-1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下であることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。 」とする。
本発明は、筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制し、筆記先端部が乾燥した時の書き出し性能を良好とし、両立することが可能とし、さらに書き味を良好とする油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンを得ることができた。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有量とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
本発明の特徴は、油性ボールペン用インキ組成物に、芳香族有機溶剤、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなることで、筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制するだけでなく、さらに、筆記先端部が乾燥した時の書き出し性能を良好とすることができ、2つの性能を両立することが可能であることが解った。これは、芳香族有機溶剤、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルとポリビニルブチラール樹脂を併用することで、インキ中で安定しており、筆記先端部の間隙からインキ漏れを十分に抑制可能とし、かつ、書き出し時には、容易に破壊可能である脆い被膜を筆記先端部に形成することができるためである。さらに、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上することが可能となる。このため、本発明のインキ組成物は、筆記先端部からインキが漏れ出すことが抑制され、さらに、筆記先端部を大気中に放置したとしても、書き出し時より、筆跡カスレが改善された良好な筆跡とし、書き味を良好とすることができる。
(ショ糖脂肪酸エステル)
本発明では、筆記先端部の間隙からインキ漏れ抑制と、筆記先端部が乾燥した時の書き出し性能を良好とし、2つの性能を両立するには、油性ボールペン用インキ組成物にHLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルを含んでなることが重要である。これは、チップ先端を大気中に放置した状態にした場合、ショ糖脂肪酸エステルが、チップ先端で被膜を形成し、ボールとチップ先端の間隙を覆うことで、インキ漏れを抑制することが可能とし、同時に、筆記先端部が乾燥した時に、形成する被膜が、脆い被膜であり、硬くならないため、筆跡カスレが改善され、書き出し性能も良好とすることができるためである。
また、本発明では、詳細は後述するがインキ漏れ抑制のために、ポリビニルブチラール樹脂を用いるが、筆記先端部が乾燥した時に、被膜を形成することで、インキ漏れを抑制することができるが、硬い被膜を形成し、筆跡カスレが発生しやすく、書き出し性能が劣りやすく、改良の余地があった。そこで、ショ糖脂肪酸エステルを用いることで、筆記先端部の間隙からインキ漏れ抑制を向上しつつ、さらに、書き出し性能を向上することを両立することが可能となる。さらに、弱い揺変性を有するため、よりインキ漏れ抑制効果が得られやすい。
本発明ではHLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルを用いる。これは、HLB値12を超えると、芳香族有機溶剤に対して、安定せず、本発明のような効果として、インキ漏れを抑制と、書き出し性能の効果が得られず、両立させづらいためである。さらに、HLB値4未満だと、インキ中で浮上・沈降をし、顔料分散性にも影響し、インキ安定性が劣りやすく、本発明の効果が得られにくいため、HLB値4以上が好ましい。さらに、よりインキ漏れを抑制と、書き出し性能の両立させることを考慮すれば、HLB値5~11が好ましく、より考慮すれば、HLB値5~9が好ましい。
<HLB値>
HLBとは、Hydrophile Lypophile Balanceの略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明においてはGriffin(グリフィン)の算出法を用いる。Griffinの算出法は、
グリフィン式:HLB=20×{(親水部分の分子量)/(全分子量)}
からHLBの値を算出する方法を言う。式中、親水部分とは、蔗糖脂肪酸エステル分子全体から、構成脂肪酸の炭化水素鎖を除いた部分を言う。
前記ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖の水酸基に脂肪酸をエステル結合させたもので、ショ糖1分子中には8個の水酸基があり、これに脂肪酸をエステル結合させることができるショ糖1分子中に、脂肪酸1分子を結合させたモノエステル(1置換体)から脂肪酸1分子を結合させたオクタエステル(8置換体)などが挙げられ、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどの単体でも良く、これらの混合物でも良い。これらのショ糖脂肪酸エステルの中でも、インキ漏れを抑制と、書き出し性能の効果を考慮すれば、少なくともモノエステル(ショ糖脂肪酸モノエステル)を含んでなることが好ましい。さらに、ショ糖脂肪酸エステル中の、モノエステル組成の割合は、60%以下であることが好ましく、これは、60%を超えると、モノエステルが多すぎてしまい、親水性が高くなってしまい、インキ中で安定性に影響し、本発明の効果が得られにくいためで、より考慮すれば、50%以下が好ましく、さらに考慮すれば、45%以下が好ましい。逆に、ジエステル、トリエステルなどのポリエステルが多すぎても親油性が高くなってしまい、インキ中での安定性に影響し、本発明の効果が得られにくいため、ショ糖脂肪酸エステル中のモノエステル組成の割合は、10%以上であることが好ましく、より考慮すれば、20%以上が好ましく、さらに考慮すれば、30%以上が好ましい。
前記ショ糖脂肪酸エステルについて、ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が4~24のものがあり、具体的には、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖リノール酸エステル、ショ糖リノレン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、インキ漏れを抑制と、書き出し性能の効果を考慮すれば、ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が16~24であるものが好ましく、より考慮すれば、ショ糖ステアリン酸エステル(炭素数18)、ショ糖ベヘニン酸エステル(炭素数22)が好ましく、さらにインキ中で安定性を考慮すれば、ショ糖ステアリン酸エステル(炭素数18)が好ましい。
前記ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1~10質量%が好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、書き出し性能、インキ漏れ抑制効果が十分得られづらく、10.0質量%を越えると、インキ安定性に影響が出やすいためである。さらに、上記効果を考慮すれば、0.1~5.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.3~3.0質量%が好ましい。
(ポリビニルブチラール樹脂)
本発明では、ポリビニルブチラール樹脂を用いることで、インキ漏れ抑制効果と書き味を向上するため、ポリビニルブチラール樹脂を用いる必要がある。上記したショ糖脂肪酸エステルと、ポリビニルブチラール樹脂を併用すると、ショ糖脂肪酸エステルによって、筆記先端部が乾燥時にポリビニルブチラール樹脂の被膜を早く形成する働きが得られるような相互作用が得られ、さらに形成される被膜は、脆い被膜であり、硬くならず、容易に破壊でき、筆跡カスレが改善され、書き出し性能を損なわれないため、効果的である。さらにポリビニルブチラール樹脂は、ボールペンの場合、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上することが可能となるためである。また、着色剤として顔料を用いる場合は、顔料分散効果も得られるため、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
特に、ボール径を通常よりも大きくして、1.0mm~2.0mmとした場合では、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れや書き出し性能に影響が出やすいため、ショ糖脂肪酸エステルとポリビニルブチラール樹脂を併用すると効果的であり、特に1.2mm~2.0mmとした場合は、より効果的である。
また、ポリビニルブチラール樹脂は、水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、水酸基量25mol未満のポリビニルブチラール樹脂では、有機溶剤への溶解性が十分でなく、十分な潤滑効果や、インキ漏れ抑制の効果が得られにくく、さらに、吸湿性による書き出し性能を考慮すると、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましいためである。また、前記水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は、書き味が向上しやすくなるため、好ましい。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、チップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂は他の樹脂とは違い、インキ温度が高くなっても、インキ粘度を下がりづらくする性質があり、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすい傾向がある。特に、油性ボールペンでは、高筆圧で筆記することも多いため、油性ボールペンでは効果的である。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、油性インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂が好ましい。そのため、水酸基量30~40mol%のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、さらに、前記ショ糖脂肪酸エステルとの相互作用による書き出し性を向上しやすさを考慮すれば、水酸基量30~36mol%が好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
また、ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度については、前記平均重合度は200以上であると、インキ漏れ抑制性能が向上しやすく、また、前記平均重合度は2500を超えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、前記平均重合度は、200~2500が好ましい。さらに、よりインキ漏れ抑制、書き味、泣きボテ抑制効果を考慮すれば、前記平均重合度は1500以下が好ましい。さらに、より考慮すれば、前記平均重合度は250~1000が好ましく、250~700がより好ましい。ここで、平均重合度とは、ポリビニルブチラール樹脂の1分子を構成している基本単位の数をいい、JISK6728(2001年度版)に規定された方法に基づいて測定された値を採用可能である。
前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対し、1.0質量%より少ないと、所望の潤滑性やインキ漏れ抑制性能が劣りやすく、40.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすいため、インキ組成物全量に対し、1.0~40.0質量%が好ましい。さらに、考慮すれば5.0質量%以上が好ましく、30.0質量%を越えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、5.0~30.0質量%が好ましい。
本発明では、ポリビニルブチラール樹脂に対する、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルの含有比(HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル/ポリビニルブチラール樹脂)が、質量基準で0.01~2倍とすることが好ましく、0.01~0.7倍とすることがより好ましく、0.03~0.5倍とすることが最も好ましい。これは、上記範囲だと、インキ漏れを抑制と、書き出し性能、書き味をバランス良く向上することが可能である。
(芳香族有機溶剤)
本発明のように、油性ボールペン用インキ組成物に、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を用いる場合は、芳香族有機溶剤を用いることで、インキ中での溶解性や安定性を維持することで、インキ漏れ抑制と書き出し性能を良好とし、2つの性能を両立させることが可能となる。さらに、芳香族有機溶剤は、芳香環を有することで潤滑性を向上しやすいため、好ましい。さらに、よりインキ中での溶解性や安定性を維持させることで、インキ漏れ抑制と書き出し性能を向上することや、さらに、アルコ-ル溶剤は揮発して、チップ先端での乾燥をしやすく、筆記先端部の間隙からインキ漏れを抑制しやすいため、芳香族アルコ-ル溶剤を少なくとも用いることが好ましい。そのため、本発明では、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂、および芳香族有機溶剤を含んでなることが重要である。
また、芳香族有機溶剤については、芳香族アルコール溶剤以外としては、芳香族グリコールエーテル溶剤を用いると、吸湿しやすく、形成された被膜を和らげることで、書き出し性能も向上しやすいため、好ましい。さらに、芳香環を有すると、潤滑性を向上しやすく、芳香族グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。
また、芳香族有機溶剤の含有量は、溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を向上することを考慮すると、インキ組成物全量に対し、10.0~90.0質量%が好ましく、チップ先端での乾燥性を考慮すれば、20.0~80.0質量%が好ましく、より好ましくは40.0~70.0質量%である。
(着色剤)
本発明に用いる油性インキ組成物、着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料、顔料を併用しても良い。
染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料としては、インキ中のHLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂、および芳香族有機溶剤との相性による経時安定性を考慮して、少なくとも造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料を用いることが好ましく、より考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料が好ましい。
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
着色剤としては、顔料を用いることが好ましい、これは、顔料粒子を用いることで、ボールペンの場合はボールとチップ先端の内壁との間の隙間に物理的な障害を起こして、インキ漏れを抑制しやすいためである。さらに、本発明では、前記ショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を用いることで、該ショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂、顔料の3種によって、筆記先端部に被膜形成と、各粒子の物理的な障害によって、相乗的な作用が働くことで、より高いインキ漏れ抑制効果が得られため好ましく、さらに同時に顔料分散効果が得られるため、好ましい。また、顔料は、筆跡の堅牢性に優れ、特に耐光性に優れるため、好ましい。
着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、1~45質量%が好ましい。これは1質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、45質量%を越えると、染料の溶解安定性及び顔料の分散安定性に影響しやすい傾向があるためで、よりその傾向を考慮すれば、3~35質量%が好ましく、さらに考慮すれば、3~30質量%である。
(界面活性剤)
本発明においては、上記潤滑性と、チップ先端部を大気中に放置した状態で、該チップ先端部が乾燥したときの書き出し性能を向上することを考慮すれば、界面活性剤を用いることが好ましい。これは、界面活性剤を用いると、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルとポリビニルブチラール樹脂によって形成される被膜を、より脆くする傾向があり、筆跡カスレを改善し、書き出し性能を向上し、さらに潤滑性も向上することができる。界面活性剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。その中でも、上記効果を考慮すれば、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を用いることが好ましく、書き出し性能、潤滑性を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。特に、ボールペンで用いる場合は、リン酸基が金属吸着などするため好ましい。
さらに、ポリビニルブチラールを用いる場合は、ポリビニルブチラールによって形成するインキ層と、上記界面活性剤による潤滑層によって、より潤滑性を向上しやすいため好ましい。
前記界面活性剤については、より書き出し性能と潤滑性の両方を向上することを考慮すれば、HLB値が6~14であることが好ましい。これは、HLB値が14を越えると親水性が強くなりやすく、インキ中での溶解性が劣りやすいため、前記界面活性剤の効果が得られにくいためである。また、HLB値が6未満だと、親油性が強くなり過ぎて、有機溶剤との相溶性に影響が出やすく、インキ経時が安定しにくく、さらに書き出し性能が向上しにくいためである。さらに、潤滑性を考慮すれば、HLB値が12以下にすることが好ましく、HLB値が6~12であることが好ましく、より書き出し性能を考慮すれば、HLB値が7~12が好ましい。
尚、HLBは、グリフィン法、川上法などから求めることができる。特に、ノック式ボールペンや回転繰り出し式ボールペン等の出没式ボールペンにおいては、キャップ式ボールペンとは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、筆記先端部の乾燥時の書き出し性能に影響しやすいため、上記HLB値とした界面活性剤を用いることはより好ましい。
前記界面活性剤としては、具体的には、脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸などが挙げられ、シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロ基ブチルスルホン酸塩、パーフルオロ基含有カルボン酸塩、パーフルオロ基含有リン酸エステル、パーフルオロ基含有リン酸エステル型配合物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物などが挙げられ、リン酸エステル系界面活性剤としては、アルコキシエチル基(C2n+1OCHCHO)またはアルコキシ基(C2m+1O)を有するリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~5.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性、書き出し性能が得られにくい傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、インキ組成物の総質量を基準として、0.3~3.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.5~3.0質量%が、最も好ましい。
(アミン)
本発明では、インキ中でのインキ成分の安定性や、pHを調整することを考慮すれば、アミンを用いることが好ましい。オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミンが好ましい。特にリン酸エステル系界面活性剤を用いる場合は、中和することで、インキ中で安定することで、書き出し性能や書き味を向上する効果が得られやすいため、好ましい。
また、前記アミンの中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、有機アミンが好ましく、インキ中の他成分との反応性については、1級アミンが最も強く、次いで2級アミン、3級アミンと反応性が小さくなるので、インキ経時安定性を考慮して、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましい。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記アミンの含有量は、前記造塩染料やその他の成分との安定性を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.1~10.0質量%が好ましく、さらに後に説明するリン酸エステル系界面活性剤に対する中和を考慮すれば、0.1~5.0質量%が好ましい。
また、本発明において、その他添加剤を適宜用いてもかまわない。例えば、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などのポリビニルブチラール樹脂以外の樹脂をインキ粘度調整などとして使用してもかまわない。また、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤、水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
ポリビニルブチラール樹脂以外の樹脂について、詳細には、インキの結着性を高め、チップ先端における余剰インキ(泣きボテ)の発生を抑制しやすいため、曳糸性付与樹脂を含有することが好ましい。曳糸性付与樹脂としては、ポリビニルピロリドン、エチレンオキサイド重合体が好ましい。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
本発明で用いる曳糸性付与樹脂の含有量は、油性ボールペン組成物中の全樹脂の含有量に対して0.1~20.0%であることが好ましい。これは、曳糸性付与樹脂の含有量が全樹脂の含有量の0.1%未満となると、余剰インキ(泣きボテ)の発生を抑制しにくい傾向があり、20%を越えると、ポリビニルブチラール樹脂の効果を阻害しやすく、具体的には、チップ先端の樹脂皮膜の形成を阻害してしまい、インキ垂れ下がりを抑制しづらくし、さらに弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果や、書き出し性能が得られにくくなるためである。より考慮すれば、曳糸性付与樹脂の含有量は、全樹脂の含有量に対して1.0~20.0%が好ましく、インキ垂れ下がり性能や書き味が向上する傾向を考慮すれば、1.0~15.0%が好ましく、さらにその傾向を考慮すれば、2.0~10.0%が好ましい。
本発明の油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度が50000mPa・sを越えると、書き出し性能や書き味が劣りやすいため、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度は、50000mPa・s以下であることが好ましい。また、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度が1000mPa・s以下だと、インキ漏れを抑制しにくいため、インキ漏れを考慮すれば、1000mPa・s以上とすることが好ましい。よりインキ漏れ抑制、書き味、インキ追従性能、書き出し性能をより向上することを考慮すれば、前記インキ粘度は2000~30000mPa・sがより好ましく、さらに、より考慮すれば、3000~20000mPa・sが好ましい。
本発明による油性ボールペン用インキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ撹拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種撹拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
(ボールペンチップ)
また、本発明に用いるボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、3~20μmとするのが好ましい。これは、3μm未満であると、濃い筆跡や良好な書き味が得られづらくなり、20μmを越えると、インキ垂れ下がり性能に影響が出やすくなるためで、よりそのことを考慮すれば、3~12μmとするのが好ましい。
また、本発明で用いるボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1~12nmとすること好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が12nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とび、線ムラなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。また、前記算術平均粗さ(Ra)が0.1~10nmであると、ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、ボール表面にインキが載りやすいためより好ましく、より好ましくは、2~8nmである。なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。
また、ボールの直径は、特に限定されないが、ボールの直径が大きいと、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れがしやすく、筆記先端部の乾燥時に書き出し性能が劣りやすいため、ボール径を通常よりも大きくして、1.0mm~2.0mmとした場合では、影響が出やすく、特に1.2mm~2.0mmとした場合は顕著で、より効果的である。
また、ボ-ルペンチップの材料は、ステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABSなどの樹脂材が挙げられるが、ボール座の摩耗、経時安定性を考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
本発明のように、インキ漏れ抑制や、書き出し性能の両性能を向上するためには、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングなどの弾発部材により直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
実施例1
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、有機溶剤に顔料とポリビニルブチラール樹脂(顔料分散剤)を添加し分散機で分散させた後、着色剤として染料および前記顔料分散体、有機溶剤としてベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、樹脂としてはポリビニルブチラール樹脂、界面活性剤としてはリン酸エステル系界面活性剤、ポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して、実施例1のインキ粘度を測定したところ、20℃の環境下、剪断速度5sec-1、インキ粘度=3000mPa・sであった。
ポリビニルブチラール樹脂に対する、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルの含有比(HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル/ポリビニルブチラール樹脂)が、質量基準で0.07倍であった。
実施例1
着色剤(染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料) 10.0質量%
着色剤(染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料) 5.0質量%
顔料分散体(有機顔料) 5.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 27.5質量%
有機溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル) 35.0質量%
ショ糖脂肪酸エステル(HLB値6) 1.0質量%
界面活性剤(リン酸エステル系界面活性剤) 1.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(水酸基量:36mol%、平均重合度:300) 15.0質量%
ポリビニルピロリドン樹脂 0.5質量%
実施例2~14
表1に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2~14の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に、評価結果を示す。
比較例1、2
表に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1、2の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に、評価結果を示す。
比較例3、4
顔料分散時にポリビニルブチラール樹脂を用いず、表に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例3、4の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に、評価結果を示す。
Figure 0007197382000001
Figure 0007197382000002
試験及び評価
実施例1~14及び比較例1~4で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒の先端に、ボール(φ1.2mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ(チップ内にボールを直接チップ先端縁の内壁に押圧したコイルスプリングを有する、ボールの縦軸方向の移動量10μm)を装着するとともに、インキ収容筒内に、実施例1の油性ボールペン用インキ(0.27g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ)に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
インキ漏れ抑制試験:30℃、85%RHの環境下にペン先下向きで7日放置し、チップ先端からのインキ漏れを確認した。
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの ・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
書き出し性能試験:手書き筆記した後、チップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に24時間放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定した。
<筆記条件>筆記荷重200gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
筆跡カスレの長さが、15mm未満であるもの ・・・◎
筆跡カスレの長さが、15mm以上、30mm未満であるもの ・・・○
筆跡カスレの長さが、30mm以上、40mm未満であるもの ・・・△
筆跡カスレの長さが、40mm以上であるもの ・・・×
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
実施例1~14では、インキ漏れ抑制試験、書き出し性能、書き味ともに良好な性能が得られた。
また、実施例1~7、実施例10~14は、析出物などなく、良好であった。実施例8(ショ糖ステアリン酸エステル、HLB:2)、実施例9(ショ糖ベヘニン酸エステル、HLB:3)では、若干の析出物はあったが、実用上問題ないレベルであった。
比較例1~4では、HLB12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を用いなかったため、インキ漏れ抑制性能、書き出し性能、書き味の全ての性能が良好とはならなかった。
また、ノック式ボールペンや回転繰り出し式ボールペン等の出没式ボールペンを用いた場合では、インキ漏れ抑制性能、書き出し性能が最も重要な性能の1つであるため、本発明のように筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制して、かつ、書き出し性能を良好とすることが可能である本発明のような油性ボールペンを用いると効果的である。
また、本実施例では、インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容したボールペンレフィルを軸筒内に配設した油性ボールペンなどを例示したが、本発明の油性ボールペンは、軸筒自体をインキ収容筒とし、軸筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を直に収容した直詰め式の油性ボールペンであっても良く、インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容したもの(ボールペンレフィル)をそのままボールペンとして使用した構造であっても良い。
本発明は、キャップ式、出没式等の油性ボールペンとして広く利用することができる。

Claims (8)

  1. 着色剤、芳香族有機溶剤、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなり、前記ショ糖脂肪酸エステル中の、モノエステル組成の割合が40%以下であり、前記ポリビニルブチラール樹脂に対する、前記HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルの含有比が、質量基準で0.01~2倍とすることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
  2. 前記ショ糖脂肪酸エステル中の、モノエステル組成の割合が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  3. 前記ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が16~24であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  4. 前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量が、25mol%以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  5. 前記油性ボールペン用インキ組成物に、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を含んでなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  6. 前記芳香族有機溶剤が、アルコール溶剤であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
  7. インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンとし、ボールの直径を1.0mm~2.0mmとすることを特徴とする油性ボールペン。
  8. インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンとし、前記ボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、3~20μmであることを特徴とする油性ボールペン。
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