JP7197382B2 - 油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペン - Google Patents
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Description
「1.着色剤、芳香族有機溶剤、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が16~24であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量が、25mol%以上であることを特徴とする第1項または第2項にに記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記油性ボールペン用インキ組成物に、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を含んでなることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記芳香族有機溶剤が、アルコール溶剤であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6. 20℃、剪断速度5sec-1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下であることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。 」とする。
本発明では、筆記先端部の間隙からインキ漏れ抑制と、筆記先端部が乾燥した時の書き出し性能を良好とし、2つの性能を両立するには、油性ボールペン用インキ組成物にHLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルを含んでなることが重要である。これは、チップ先端を大気中に放置した状態にした場合、ショ糖脂肪酸エステルが、チップ先端で被膜を形成し、ボールとチップ先端の間隙を覆うことで、インキ漏れを抑制することが可能とし、同時に、筆記先端部が乾燥した時に、形成する被膜が、脆い被膜であり、硬くならないため、筆跡カスレが改善され、書き出し性能も良好とすることができるためである。
また、本発明では、詳細は後述するがインキ漏れ抑制のために、ポリビニルブチラール樹脂を用いるが、筆記先端部が乾燥した時に、被膜を形成することで、インキ漏れを抑制することができるが、硬い被膜を形成し、筆跡カスレが発生しやすく、書き出し性能が劣りやすく、改良の余地があった。そこで、ショ糖脂肪酸エステルを用いることで、筆記先端部の間隙からインキ漏れ抑制を向上しつつ、さらに、書き出し性能を向上することを両立することが可能となる。さらに、弱い揺変性を有するため、よりインキ漏れ抑制効果が得られやすい。
<HLB値>
HLBとは、Hydrophile Lypophile Balanceの略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明においてはGriffin(グリフィン)の算出法を用いる。Griffinの算出法は、
グリフィン式:HLB=20×{(親水部分の分子量)/(全分子量)}
からHLBの値を算出する方法を言う。式中、親水部分とは、蔗糖脂肪酸エステル分子全体から、構成脂肪酸の炭化水素鎖を除いた部分を言う。
本発明では、ポリビニルブチラール樹脂を用いることで、インキ漏れ抑制効果と書き味を向上するため、ポリビニルブチラール樹脂を用いる必要がある。上記したショ糖脂肪酸エステルと、ポリビニルブチラール樹脂を併用すると、ショ糖脂肪酸エステルによって、筆記先端部が乾燥時にポリビニルブチラール樹脂の被膜を早く形成する働きが得られるような相互作用が得られ、さらに形成される被膜は、脆い被膜であり、硬くならず、容易に破壊でき、筆跡カスレが改善され、書き出し性能を損なわれないため、効果的である。さらにポリビニルブチラール樹脂は、ボールペンの場合、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上することが可能となるためである。また、着色剤として顔料を用いる場合は、顔料分散効果も得られるため、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
特に、ボール径を通常よりも大きくして、1.0mm~2.0mmとした場合では、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れや書き出し性能に影響が出やすいため、ショ糖脂肪酸エステルとポリビニルブチラール樹脂を併用すると効果的であり、特に1.2mm~2.0mmとした場合は、より効果的である。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
本発明のように、油性ボールペン用インキ組成物に、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を用いる場合は、芳香族有機溶剤を用いることで、インキ中での溶解性や安定性を維持することで、インキ漏れ抑制と書き出し性能を良好とし、2つの性能を両立させることが可能となる。さらに、芳香族有機溶剤は、芳香環を有することで潤滑性を向上しやすいため、好ましい。さらに、よりインキ中での溶解性や安定性を維持させることで、インキ漏れ抑制と書き出し性能を向上することや、さらに、アルコ-ル溶剤は揮発して、チップ先端での乾燥をしやすく、筆記先端部の間隙からインキ漏れを抑制しやすいため、芳香族アルコ-ル溶剤を少なくとも用いることが好ましい。そのため、本発明では、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂、および芳香族有機溶剤を含んでなることが重要である。
本発明に用いる油性インキ組成物、着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料、顔料を併用しても良い。
染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料としては、インキ中のHLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂、および芳香族有機溶剤との相性による経時安定性を考慮して、少なくとも造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料を用いることが好ましく、より考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料が好ましい。
本発明においては、上記潤滑性と、チップ先端部を大気中に放置した状態で、該チップ先端部が乾燥したときの書き出し性能を向上することを考慮すれば、界面活性剤を用いることが好ましい。これは、界面活性剤を用いると、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルとポリビニルブチラール樹脂によって形成される被膜を、より脆くする傾向があり、筆跡カスレを改善し、書き出し性能を向上し、さらに潤滑性も向上することができる。界面活性剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。その中でも、上記効果を考慮すれば、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を用いることが好ましく、書き出し性能、潤滑性を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。特に、ボールペンで用いる場合は、リン酸基が金属吸着などするため好ましい。
さらに、ポリビニルブチラールを用いる場合は、ポリビニルブチラールによって形成するインキ層と、上記界面活性剤による潤滑層によって、より潤滑性を向上しやすいため好ましい。
尚、HLBは、グリフィン法、川上法などから求めることができる。特に、ノック式ボールペンや回転繰り出し式ボールペン等の出没式ボールペンにおいては、キャップ式ボールペンとは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、筆記先端部の乾燥時の書き出し性能に影響しやすいため、上記HLB値とした界面活性剤を用いることはより好ましい。
本発明では、インキ中でのインキ成分の安定性や、pHを調整することを考慮すれば、アミンを用いることが好ましい。オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミンが好ましい。特にリン酸エステル系界面活性剤を用いる場合は、中和することで、インキ中で安定することで、書き出し性能や書き味を向上する効果が得られやすいため、好ましい。
また、本発明に用いるボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、3~20μmとするのが好ましい。これは、3μm未満であると、濃い筆跡や良好な書き味が得られづらくなり、20μmを越えると、インキ垂れ下がり性能に影響が出やすくなるためで、よりそのことを考慮すれば、3~12μmとするのが好ましい。
また、ボールの直径は、特に限定されないが、ボールの直径が大きいと、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れがしやすく、筆記先端部の乾燥時に書き出し性能が劣りやすいため、ボール径を通常よりも大きくして、1.0mm~2.0mmとした場合では、影響が出やすく、特に1.2mm~2.0mmとした場合は顕著で、より効果的である。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、有機溶剤に顔料とポリビニルブチラール樹脂(顔料分散剤)を添加し分散機で分散させた後、着色剤として染料および前記顔料分散体、有機溶剤としてベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、樹脂としてはポリビニルブチラール樹脂、界面活性剤としてはリン酸エステル系界面活性剤、ポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して、実施例1のインキ粘度を測定したところ、20℃の環境下、剪断速度5sec-1、インキ粘度=3000mPa・sであった。
ポリビニルブチラール樹脂に対する、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルの含有比(HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル/ポリビニルブチラール樹脂)が、質量基準で0.07倍であった。
着色剤(染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料) 10.0質量%
着色剤(染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料) 5.0質量%
顔料分散体(有機顔料) 5.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 27.5質量%
有機溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル) 35.0質量%
ショ糖脂肪酸エステル(HLB値6) 1.0質量%
界面活性剤(リン酸エステル系界面活性剤) 1.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(水酸基量:36mol%、平均重合度:300) 15.0質量%
ポリビニルピロリドン樹脂 0.5質量%
表1に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2~14の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に、評価結果を示す。
表に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1、2の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に、評価結果を示す。
顔料分散時にポリビニルブチラール樹脂を用いず、表に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例3、4の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に、評価結果を示す。
実施例1~14及び比較例1~4で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒の先端に、ボール(φ1.2mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ(チップ内にボールを直接チップ先端縁の内壁に押圧したコイルスプリングを有する、ボールの縦軸方向の移動量10μm)を装着するとともに、インキ収容筒内に、実施例1の油性ボールペン用インキ(0.27g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ)に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの ・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
<筆記条件>筆記荷重200gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
筆跡カスレの長さが、15mm未満であるもの ・・・◎
筆跡カスレの長さが、15mm以上、30mm未満であるもの ・・・○
筆跡カスレの長さが、30mm以上、40mm未満であるもの ・・・△
筆跡カスレの長さが、40mm以上であるもの ・・・×
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
また、実施例1~7、実施例10~14は、析出物などなく、良好であった。実施例8(ショ糖ステアリン酸エステル、HLB:2)、実施例9(ショ糖ベヘニン酸エステル、HLB:3)では、若干の析出物はあったが、実用上問題ないレベルであった。
Claims (8)
- 着色剤、芳香族有機溶剤、HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなり、前記ショ糖脂肪酸エステル中の、モノエステル組成の割合が40%以下であり、前記ポリビニルブチラール樹脂に対する、前記HLB値12以下であるショ糖脂肪酸エステルの含有比が、質量基準で0.01~2倍とすることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記ショ糖脂肪酸エステル中の、モノエステル組成の割合が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が16~24であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量が、25mol%以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記油性ボールペン用インキ組成物に、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を含んでなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記芳香族有機溶剤が、アルコール溶剤であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンとし、ボールの直径を1.0mm~2.0mmとすることを特徴とする油性ボールペン。
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンとし、前記ボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、3~20μmであることを特徴とする油性ボールペン。
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