JP2016017088A - 油性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた油性ボールペン - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、ドライアップ時の書き出し性能、書き味、インキ経時安定性が良好である油性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた油性ボールペンを提供することである。
【解決手段】少なくとも着色剤、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系界面活性剤からなり、前記シリコーン系界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンの中から1種以上選択することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも着色剤、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系界面活性剤からなり、前記シリコーン系界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンの中から1種以上選択することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は油性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた油性ボールペンに関するものである。
従来より、油性ボールペン用インキ組成物において、チップ先端部を大気中に放置すると、インキ中の溶媒などが蒸発して、着色剤や樹脂などが乾燥固化したときに、ドライアップ時の書き出しにおいて筆跡カスレが発生してしまう欠点があった。
このようなドライアップ時の書き出し性能を向上するために、様々な溶剤や添加剤を用いることを検討していた。例えば、蒸気圧0.005〜0.5mmHg(20℃)である不揮発性の有機溶剤を主溶剤として含有したものとしては、特開平6−247093号公報「油性ボールペン」が、平均分子量が200〜4,000,000であるポリエチレングリコールを含有したものとしては特開平7−196971公報「油性ボールペン用インキ組成物」が、重量平均分子量が25万以上のポリビニルピロリドンを含有したものとしては、特開2002−3771号公報「油性ボールペン用インキ組成物」が、デカマカデミアナッツ油脂肪酸デカグリセリルと、アルキル基の炭素数が16以上であり常温で固体のポリオキシエチレンアルキルエーテルとを少なくとも含有するものとしては、特開2008−88264号公報「ボールペン用油性インキ組成物」等に、開示されている。
しかし、特許文献1では、有機溶剤として、蒸気圧0.005〜0.5mmHg(20℃)である不揮発性の有機溶剤を含有すると、インキが完全に乾ききるのを防ぐ効果はあるが、筆跡の乾燥性が悪く、それだけではドライアップ時の書き出し性能を満足させることができなかった。
また、特許文献2では、添加剤として、特定分子量のポリエチレングリコールを含有すると、チップ先端部に樹脂皮膜を形成することで、それ以上のチップ先端部の乾燥を抑制して、チップ内のインキ増粘を抑制えることにより、ある程度書き出し性能を向上することは可能ではあるが、樹脂皮膜が硬いため、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡カスレが発生してしまい、十分なドライアップ性能が得られなかった。
また、特許文献3では、デカマカデミアナッツ油脂肪酸デカグリセリルとポリオキシエチレンアルキルエーテルを併用することで、ある程度性能を向上することは可能ではあるが、潤滑性が十分でなく、書き味が劣ってしまい、さらに、特殊な界面活性剤を用いているため、着色剤、有機溶剤、他の界面活性剤などの選定次第では、インキ経時安定性に影響してしまい、染料や他の界面活性剤との相性が合わないと、析出物が発生してしまい、筆記不良の原因となる問題が発生しやすかった。
また、特許文献4では、リン酸エステルを用いることで、ドライアップ時の書き出し性能、潤滑性を向上し、ポリエーテル変性シリコーンを併用することで、表面張力を低減して、泣きボテを抑制しようとしているが、リン酸エステルによる析出物が発生しやすく、筆記性能に影響しやすい問題があった。
上記の特許文献1〜4のように、ドライアップ時の書き出し性能、書き味を向上すると同時に、インキ経時を良好とする油性ボールペン用インキ組成物が望まれている。さらに、ノック式油性ボールペンや回転繰り出し式油性ボールペン等の出没式油性ボールペンを用いた場合では、書き出し性能に影響が出やすいので重要となる。
本発明の目的は、ドライアップ時の書き出し性能、書き味、インキ経時安定性が良好である油性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた油性ボールペンを提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために
「1.少なくとも着色剤、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系界面活性剤からなり、前記シリコーン系界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンの中から1種以上選択することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記シリコーン系界面活性剤のHLB値が13以下であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記有機溶剤が、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤を少なくとも含み、アルコール系溶剤の含有量をA、グリコールエーテル系溶剤の含有量をBとした場合、1≦A/B≦10の関係であることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量が25mol%以上であることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記樹脂が少なくとも曳糸性付与樹脂を含み、該曳糸性付与樹脂の含有量が全樹脂の含有量に対して0.1〜20質量%であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6.20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下であることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して装着し、前記インキ収容筒内に、第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンレフィルであって、前記ボール表面の算術平均粗さが、0.1〜15nmであることを特徴とする油性ボールペンレフィル。
8.前記油性ボールペンレフィルを軸筒内に配設したことを特徴とする第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
9.前記油性ボールペンレフィルを軸筒内に摺動自在に配設し、前記ボールペンチップのチップ先端部を前記軸筒先端部から出没可能とした出没式の油性ボールペンであることを特徴とする第1項ないし第8項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。」とする。
「1.少なくとも着色剤、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系界面活性剤からなり、前記シリコーン系界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンの中から1種以上選択することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記シリコーン系界面活性剤のHLB値が13以下であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記有機溶剤が、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤を少なくとも含み、アルコール系溶剤の含有量をA、グリコールエーテル系溶剤の含有量をBとした場合、1≦A/B≦10の関係であることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量が25mol%以上であることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.前記樹脂が少なくとも曳糸性付与樹脂を含み、該曳糸性付与樹脂の含有量が全樹脂の含有量に対して0.1〜20質量%であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
6.20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下であることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して装着し、前記インキ収容筒内に、第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンレフィルであって、前記ボール表面の算術平均粗さが、0.1〜15nmであることを特徴とする油性ボールペンレフィル。
8.前記油性ボールペンレフィルを軸筒内に配設したことを特徴とする第1項ないし第7項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
9.前記油性ボールペンレフィルを軸筒内に摺動自在に配設し、前記ボールペンチップのチップ先端部を前記軸筒先端部から出没可能とした出没式の油性ボールペンであることを特徴とする第1項ないし第8項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。」とする。
本発明は、チップ先端部を大気中に放置した状態で、該チップ先端部が乾燥したときに、形成する皮膜の固化を和らげることで、筆跡カスレが発生せず、ドライアップ時の書き出し性能が良好で、潤滑性を向上して、書き味、インキ経時安定性が良好である油性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた油性ボールペンを提供することができた。
本発明の特徴は、少なくとも着色剤、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系界面活性剤からなり、前記シリコーン系界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンの中から1種以上選択することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物とすることである。
本発明で用いる樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、書き味を向上するために、少なくともポリビニルブチラール樹脂を用いることが重要である。ポリビニルブチラール樹脂については、ポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造であるが、従来技術としては、ポリビニルブチラール樹脂を顔料分散剤として、好適に用いた技術はあるが、本発明では、書き味を向上することを見出した。
これは、ポリビニルブチラール樹脂は、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすくすることが可能となるためである。さらに、ポリビニルブチラール樹脂は、チップ先端で樹脂皮膜を形成し、ボールとチップ先端の間隙を覆うことで、インキ垂れ下がりを抑制するため、好ましいが、一方で、チップ先端の樹脂皮膜によって、ドライアップ時の書き出しが劣ってしまう。
そこで、本発明では、ドライアップ時の書き出しを向上するため、シリコーン系界面活性剤を用いるが、これはノニオン性であるためインキ中の他の成分やチップ材と反応せず好適に用いられる。また、シリコーン系界面活性剤中でも、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられるが、前記ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンのシリコーン系界面活性剤は、含有することで、チップ先端部が乾燥しても、筆跡カスレが発生せずに、ドライアップ時の書き出し性能が向上することが解った。これは、前記ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンによって、チップ先端部が乾燥したときに形成する皮膜の強度を和らげ、ボールの回転をスムーズにする効果が得られるので、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡カスレが発生せずに、ドライアップ時の書き出し性能が向上するものと推測される。特に前記シリコーン系界面活性剤は不揮発性であり、蒸発しづらいため、長期間の効果が保たれるため好ましい。さらに、前記ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンのシリコーン系界面活性剤は、ボールとチップ本体との間の潤滑性を保ち、書き味が向上するため好適に用いられる。そのため、本願発明では、ドライアップ時の書き出し性能と、書き味を良好とするためには、ポリビニルブチラール樹脂と、前記ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンのシリコーン系界面活性剤を併用することが重要である。
前記ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンのシリコーン系界面活性剤については、よりドライアップ時の書き出しを向上するために、HLB値が13以下のものを用いる方が好ましい。これは、HLB値が13を越えると親水性が強くなりやすいため、油性インキ中での溶解性が劣りやすいため、前記シリコーン系界面活性剤の効果が得られにくいためである。さらに、書き味を考慮すれば、HLB値が10以下にする方が好ましく、これは、HLB値が10以下だと、親油性が強くなりやすいため、潤滑性が向上しやすいためであり、ただし、HLB値が7未満だと、親油性が強くなり過ぎて、有機溶剤やポリビニルブチラール樹脂との相溶性に影響が出やすく、インキ経時が安定しにくいため、最も好ましくはHLB値が7〜10である。
尚、HLBは、一般式として、HLB=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基の分子量)から求めることができる。
尚、HLBは、一般式として、HLB=7+11.7log(Mw/Mo)、(Mw;親水基の分子量、Mo;親油基の分子量)から求めることができる。
また、ポリグリセリン変性シリコーンのシリコーン系界面活性剤には、親水性部分のポリグリセリンを有するため、親水性があり、油性インキ中での溶解性が劣りやすい、特にポリビニルブチラール樹脂との相溶性が劣り、インキ経時が劣りやすいため、ポリエーテル変性シリコーンを用いる方が好ましい。さらに、ポリエーテル変性シリコーンは、構造内のシリコーン鎖が、直鎖タイプ、分岐タイプ、架橋タイプとあるが、シリコーン鎖が直鎖タイプの方が、好ましい。これは、チップ先端部が乾燥したときに形成する皮膜の強度を全体的に均一に和らげて、よりドライアップ時の書き出しを向上しやすいためである。
また、前記ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンのシリコーン系界面活性剤については、具体的には、KF−6004、同6011、同6012、同6013、同6015、同6016、同6017、同6043、同6100などが挙げられるが、これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
また、前記ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンのシリコーン系界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜7.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の書き出し性能が得られにくい傾向があり、7.0質量%を越えると、インキ経時が不安定になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、0.3〜5.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.5〜3.0質量%が、最も好ましい。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール系溶剤など、油性ボールペン用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
これら有機溶剤の中でも、アルコール系溶剤を用いる方が好ましい、これはポリビニルブチラール樹脂を溶解安定させて、長期間インキ中で安定することができ、書き味、インキ垂れ下がり性能を向上することが可能となるためである。さらに、アルコール系溶剤以外としては、グリコールエーテル系溶剤を用いると、吸湿しやすいため、前記ポリビニルブチラール樹脂によって、形成された皮膜を和らげ、ドライアップ時の書き出し性能も向上しやすいため、好ましい。そのため、本発明では、グリコールエーテル系溶剤と芳香族アルコール系溶剤を少なくとも併用して用いる方が好ましい。特に、潤滑性を向上することを考慮すれば、芳香環を有する方が好ましいので、芳香族系グリコールエーテル溶剤と芳香族アルコール系溶剤を少なくとも併用して用いる方が好ましい。
また、有機溶剤については、アルコール系溶剤の含有量をA、グリコールエーテル系溶剤の含有量をBとした場合、1≦A/B≦10が好ましい。これは、アルコール系溶剤が多すぎると、ドライアップ時の書き出し性能に影響しやすいため、A/B≦10が好ましく、一方、グリコールエーテル系溶剤が多すぎても、水分を吸湿し過ぎて、樹脂皮膜が柔らかくなりインキ垂れ下がり性能や、インキ経時安定性にも影響しやすいため、1≦A/Bが好ましいためである。さらに、本発明で用いる前記シリコーン系界面活性剤との相乗効果によりドライアップ時の書き出し性能が向上することを考慮すれば、1≦A/B≦5が好ましい。
また、有機溶剤の含有量は、溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を向上することを考慮すると、インキ組成物全量に対し、10.0〜70.0質量%が好ましい。また、アルコ−ル系溶剤の含有量は、前記ポリビニルブチラール樹脂や前記シリコーン系界面活性剤との溶解安定性を考慮すれば、全有機溶剤に対して30.0〜90.0質量%が好ましく、より好ましくは30.0〜60.0質量%である。また、グリコールエーテル系溶剤の含有量は、チップ先端での乾燥性を考慮すれば、全有機溶剤に対し、10.0〜50.0質量%が好ましく、より好ましくは10.0〜30.0質量%である。
本発明で用いるポリビニルブチラール樹脂は、水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、水酸基量25mol未満のポリビニルブチラール樹脂では、有機溶剤への溶解性が十分でなく、十分な潤滑効果や、インキ垂れ下がり抑制の効果が得られにくくなるため、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましいためである。また、前記水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は、書き味が向上しやすくなるため、好ましい。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、チップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂は他の樹脂とは違い、インキ温度が高くなっても、インキ粘度を下がりづらくする性質があり、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすい傾向がある。特に、油性ボールペンでは、高筆圧で筆記することも多いため、油性ボールペンでは効果的である。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、油性インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂が好ましい。そのため、水酸基量30〜40mol%のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、さらに好ましくは、水酸基量30〜36mol%が好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
また、ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度については、前記平均重合度は200以上であると、粘弾性の作用により、ボールがボール座と直接接触しづらくなるため、書き味を向上しやすい傾向があるとともに、インキ垂れ下がり性能が向上するため好ましい。一方、前記平均重合度は2500を超えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、前記平均重合度は、200〜2500が好ましい。さらに、より書き味を考慮すれば、前記平均重合度は2000以下が好ましい。そのため、前記平均重合度は800〜2000が好ましく、また、前記平均重合度は1200以上だと、書き味やインキ垂れ下がり性能を向上しやすい傾向があるため、前記平均重合度は1200〜2000が最も好ましい。ここで、平均重合度とは、ポリビニルブチラール樹脂の1分子を構成している基本単位の数をいい、JISK6728(2001年度版)に規定された方法に基づいて測定された値を採用可能である。
また、ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、油性ボールペン組成物中の全樹脂の含有量に対して50質量%以上とし、主たる樹脂として用いることが好ましい。これは、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が全樹脂の含有量の50質量%未満となると、その他の樹脂によって、弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味の向上効果が得られなくなりやすく、さらにチップ先端の樹脂皮膜の形成を阻害してしまいインキ垂れ下がりを抑制できないためである。より書き味やインキ垂れ下がり性能を向上する傾向を考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、全樹脂の含有量に対して70質量%以上が好ましく、さらにその傾向を考慮すれば、90質量%以上が好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂については、具体的には、積水化学工業(株)製の商品名;エスレックBH−3(水酸基量:34mol%、平均重合度:1700)、同BH−6(水酸基量:30mol%、平均重合度:1300)、同BX−1(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:1700)、同BX−5(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:2400)、同BM−1(水酸基量:34mol%、平均重合度:650)、同BM−2(水酸基量:31mol%、平均重合度:800)、同BM−5(水酸基量:34mol%、平均重合度:850)、同BL−1(水酸基量:36mol%、平均重合度:300)、同BL−1H(水酸基量:30mol%)、同BL−2(水酸基量:36mol%、平均重合度:450)、同BL−2H(水酸基量:29mol%)、同BL−10(水酸基量:28mol%)などや、クラレ(株)製の商品名;モビタールB20H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:250〜500)、同30T(水酸基量:33〜38mol%、平均重合度:400〜650)、同30H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:400〜650)、同30HH(水酸基量:30〜34mol%、平均重合度:400〜650)、同45H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:600〜850)、同60T(水酸基量:34〜38mol%、平均重合度:750〜1000)、同60H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:750〜1000)、同75H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:1500〜1750)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対し、3.0質量%より少ないと、樹脂皮膜形成量が足りないおそれがあり、書き味やインキ垂れ下がり性能が劣りやすく、40.0質量%を越えると、ドライアップ時の書き出し性能やインキ中で溶解性が劣りやすいため、インキ組成物全量に対し、3.0〜40.0質量%が好ましい。さらに、書き出し性能やインキ垂れ下がり性能を考慮すれば7.0質量%以上が好ましく、30.0質量%を越えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、10.0〜30.0質量%が好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂以外の樹脂は、インキ粘度調整樹脂や曳糸性付与樹脂を適宜用いてもよい。特に、曳糸性付与樹脂を配合することで、インキの結着性を高め、チップ先端における余剰インキ(泣きボテ)の発生を抑制しやすいため、曳糸性付与樹脂を含有することが好ましく、さらに、吸湿性があるため、前記ポリビニルブチラール樹脂によって、形成された皮膜を和らげ、ドライアップ時の書き出し性能も向上しやすいため、好ましい。曳糸性付与樹脂としては、ポリビニルピロリドンなどがあり、具体的には、アイエスピー・ジャパン(株)製の商品名;PVP K−15、PVP K−30、PVP K−90、PVP K−120などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
本発明で用いる曳糸性付与樹脂の含有量は、油性ボールペン組成物中の全樹脂の含有量に対して0.1〜20.0質量%であることが好ましい。これは、曳糸性付与樹脂の含有量が全樹脂の含有量の0.1質量%未満となると、余剰インキ(泣きボテ)の発生を抑制しにくい傾向があり、20.0質量%を越えると、ポリビニルブチラール樹脂の効果を阻害しやすく、具体的には、チップ先端の樹脂皮膜の形成を阻害してしまいインキ垂れ下がりを抑制しづらくし、さらに弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果が得られにくくしやすいためである。より余剰インキを抑制する傾向を考慮すれば、曳糸性付与樹脂の含有量は、全樹脂の含有量に対して1.0〜20.0質量%が好ましく、インキ垂れ下がり性能や書き味が向上する傾向を考慮すれば、1.0〜10.0質量%が好ましく、さらにその傾向を考慮すれば、3.0〜10.0質量%が好ましい。
本発明で用いる着色剤については、染料、顔料があるが、染料を用いると濃い瑞々しい筆跡を得られやすく、一方、顔料を用いると顔料分散安定性を得るためには、顔料分散剤の選定などの課題やコスト面の問題があるため、少なくとも染料を用いることが良い。染料の種類については、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。
本発明の油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が50000mPa・sの高粘度でも、インキ層を形成することで潤滑性を維持し、書き味を良好にすることが可能であるため、20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度は、50000mPa・s以下が好ましい。また、ドライアップ時の書き出し性能、書き味をより向上することを考慮すれば、前記インキ粘度は35000mPa・s以下がより好ましく、さらに、より考慮すれば、30000mPa・s以下が最も好ましい。
ところで、本発明では、前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量が、油性ボールペンインキ組成物中の全樹脂の含有量に対して50質量%以上とし、前記曳糸性付与樹脂の含有量が、油性ボールペン組成物中の全樹脂の含有量に対して0.1〜20.0質量%とし、かつ、前記インキ粘度を50000mPa・s以下とすることで、インキ垂れ下がり性能を格段に向上する効果があるため、従来のように、チップ本体内にコイルスプリング等で、常時、ボールをチップ先端の内壁面に押圧し、ボールとチップ先端の微少な間隙を閉鎖することで、インキ垂れ下がりを抑制する構造とする必要がなく、インキ垂れ下がり抑制効果が得られるため、チップ本体内にコイルスプリング等を具備しなくてすむので、部品点数の低下に繋がり、出没式及び/又は低価格品に好適に用いることができる。
また、インキ消費量については、100mあたりのインキ消費量が30mg未満だと、良好な書き味や濃い筆跡が得られにくいため、30mg以上が好ましい。また、100mあたりのインキ消費量が100mgを越えると、ボールとチップ先端の間隙よりインキ垂れ下がりが発生しやすく、泣きボテも発生しやすいため、100mg以下が好ましい。より好ましくは、40〜70mgである、これは、より書き味を良好とし、濃い筆跡にするには、40mg以上が好ましく、よりインキ垂れ下がり性能や泣きボテを向上することを考慮すれば70mg以下が好ましいためである。
なお、インキ消費量については、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度70°、筆記荷重200gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
また、ボール径については、特に限定されないが、一般的には0.2〜2.0(mm)程度のボールを用いる。
なお、インキ消費量については、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度70°、筆記荷重200gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
また、ボール径については、特に限定されないが、一般的には0.2〜2.0(mm)程度のボールを用いる。
また、本発明に用いるボールペンチップのボールの軸方向の移動量が、5〜20μmとするのが好ましい。これは、5μm未満であると、良好な書き味や濃い筆跡が得られづらくなり、20μmを越えると、インキ垂れ下がり性能に影響が出やすくなるためで、よりそのことを考慮すれば、7〜16μmとする方が好ましい。
また、本発明で用いるボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1〜15nmとするのが好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が15nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とび、線ムラなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。特に、前記ポリビニルブチラール樹脂の前記平均重合度は1200〜2000と平均重合度の高いものでは、インキの凝集力が高くなりやすいため、前記算術平均粗さ(Ra)が1〜15nmのボール表面にインキが載りやすいためより好ましい。よりそのことを考慮すれば、3〜13nmが好ましく、より好ましくは、3〜10nmである。
また、本発明で用いるボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1〜15nmとするのが好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が15nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味や書き出し性能が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とび、線ムラなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。特に、前記ポリビニルブチラール樹脂の前記平均重合度は1200〜2000と平均重合度の高いものでは、インキの凝集力が高くなりやすいため、前記算術平均粗さ(Ra)が1〜15nmのボール表面にインキが載りやすいためより好ましい。よりそのことを考慮すれば、3〜13nmが好ましく、より好ましくは、3〜10nmである。
なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。書き味やボール座の摩耗、経時安定性を考慮してセラミックスボールとすることが好ましい。また、ボールの直径は、特に限定されないが、一般的には0.25mm〜2.0mm程度である。
また、ボ−ルペンチップの材料は、ステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、 ABSなどの樹脂材が挙げられるが、書き味や切削等の加工性を考慮すれば洋白製のチップ本体が好ましく、ボール座の摩耗、経時安定性を考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
本発明で用いるインキ収容筒としては、耐薬品性、水分透過性、空気透過性等の観点から採用可能な材料に制限がある。その点、従来からポリプロピレンを材料として用いることが、好ましい。しかし、本発明で用いる、ポリビニルブチラール樹脂と着色剤を用いた場合、ポリプロピレンのインキ収容筒と非常に親和性が強く、インキ収容筒内をインキが移動する際、インキが内壁に付着しやすく、よりインキが内壁に付着しやすいため、インキ残量が分かりづらい。そのため、ポリプロピレンをインキ収容筒とする場合は、インキ中に前記シリコーン系界面活性剤を含有していれば、収容筒材料であるポリプロピレンとインキとが直接接することなく、あくまでもシリコーンを中間に介在させた関係を維持し、インキが移動する際において収容筒内壁への付着防止することが可能であり好ましい。
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、有機溶剤に顔料と顔料分散剤を添加し分散機で分散させた後、染料、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル変性シリコーン、曳糸性付与樹脂としてポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーター RVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec−1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、インキ粘度3000mPa・sであった。
また、実施例1の100mあたりのインキ消費量は、ボール径0.7mmのボールペンレフィルでらせん筆記試験を行ったところ、45mg/100mであった。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、有機溶剤に顔料と顔料分散剤を添加し分散機で分散させた後、染料、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル変性シリコーン、曳糸性付与樹脂としてポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーター RVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec−1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、インキ粘度3000mPa・sであった。
また、実施例1の100mあたりのインキ消費量は、ボール径0.7mmのボールペンレフィルでらせん筆記試験を行ったところ、45mg/100mであった。
実施例1
着色剤(酸性染料と有機アミンとの造塩染料) 12.0質量%
着色剤(有機酸と赤色塩基性染料との造塩染料) 2.0質量%
顔料(Pigment Blue60) 3.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(エスレックBL−1、水酸基量:36mol%、平均重合度:300) 9.0質量%
アルコール系溶剤(ベンジルアルコール) 43.3質量%
グリコールエーテル系溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル)28.9質量%
ポリエーテル変性シリコーン(HLB:4.5) 1.0質量%
曳糸性付与樹脂(ポリビニルピロリドン樹脂) 0.8質量%
着色剤(酸性染料と有機アミンとの造塩染料) 12.0質量%
着色剤(有機酸と赤色塩基性染料との造塩染料) 2.0質量%
顔料(Pigment Blue60) 3.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(エスレックBL−1、水酸基量:36mol%、平均重合度:300) 9.0質量%
アルコール系溶剤(ベンジルアルコール) 43.3質量%
グリコールエーテル系溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル)28.9質量%
ポリエーテル変性シリコーン(HLB:4.5) 1.0質量%
曳糸性付与樹脂(ポリビニルピロリドン樹脂) 0.8質量%
試験及び評価
実施例1〜10及び比較例1〜7で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒の先端に、ボール径がボール表面の算術平均粗さ(Ra)6nmのボール(φ0.7)を回転自在に抱時したボールペンチップを装着するとともに、インキ収容筒内に、実施例1の油性ボールペン用インキ(0.2 g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ)に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
実施例1〜10及び比較例1〜7で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、インキ収容筒の先端に、ボール径がボール表面の算術平均粗さ(Ra)6nmのボール(φ0.7)を回転自在に抱時したボールペンチップを装着するとともに、インキ収容筒内に、実施例1の油性ボールペン用インキ(0.2 g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ)に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
ドライアップ性能試験:手書き筆記した後、チップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に30分放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定した。
<筆記条件>筆記荷重70gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
筆跡カスレの長さが、5mm未満であるもの ・・・◎
筆跡カスレの長さが、5mm以上、20mm未満であるもの ・・・○
筆跡カスレの長さが、20mm以上、40mm未満であるもの ・・・△
筆跡カスレの長さが、40mm以上であるもの ・・・×
<筆記条件>筆記荷重70gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
筆跡カスレの長さが、5mm未満であるもの ・・・◎
筆跡カスレの長さが、5mm以上、20mm未満であるもの ・・・○
筆跡カスレの長さが、20mm以上、40mm未満であるもの ・・・△
筆跡カスレの長さが、40mm以上であるもの ・・・×
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
インキ経時試験:50℃、湿度80%、2ヶ月経過後に光学顕微鏡(オリンパス社製)倍率100倍にてチップ本体内のインキを顕微鏡観察した後、手書き筆記を行い評価した。
析出物などがなく、筆跡が良好のもの ・・・◎
析出物などが微少に発生したが、筆跡が良好のもの ・・・○
析出物などが発生したが、実用上問題のない筆跡のもの ・・・△
析出物などが発生し、筆跡カスレや筆記不良などの原因になるもの ・・・×
析出物などがなく、筆跡が良好のもの ・・・◎
析出物などが微少に発生したが、筆跡が良好のもの ・・・○
析出物などが発生したが、実用上問題のない筆跡のもの ・・・△
析出物などが発生し、筆跡カスレや筆記不良などの原因になるもの ・・・×
インキ垂れ下がり性能試験:30℃、85%RHの環境下にペン先下向きで7日放置し、チップ先端からのインキ漏れを確認した。
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
実施例1〜10では、ドライアップ性能試験、書き味、インキ経時試験、インキ垂れ下がり試験ともに良好な性能が得られた。
比較例1、2、7では、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンを用いなかったため、ドライアップ性能試験が悪く、筆跡カスレが発生し、さらに、書き味が重かった。
比較例3、4では、脂肪酸、リン酸エステル界面活性剤を用いたため、ドライアップ性能試験に影響が出てしまい、さらに、インキ中の他成分と反応してしまい、析出物が発生した。
比較例5、6では、ポリビニルブチラール樹脂を用いなかったため、書き味が重く、インキ垂れ下がり試験が悪かった。
また、ノック式油性ボールペンや回転繰り出し式油性ボールペン等の出没式油性ボールペンを用いた場合では、ドライアップ性能やインキ垂れ下がり性能が最も重要な性能の 1つであるため、本願発明のように、前記したポリビニルブチラール樹脂とシリコーン系界面活性剤を併用すると効果的である。
また、本実施例では、便宜上、軸筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を直に収容した油性ボールペンレフィルを収容した油性ボールペンを例示しているが、本発明の油性ボールペンは、軸筒をインキ収容筒とし、軸筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を直に収容した直詰め式の油性ボールペンであってもよい。また、本実施例では便宜上、線材を切削によって形成したボールペンチップを例示しているが、パイプ材を押圧加工によって形成するボールペンチップであってもよい。
本発明は油性ボールペンとして利用でき、さらに詳細としては、該油性ボールペン用インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の油性ボールペンとして広く利用することができる。
Claims (9)
- 少なくとも着色剤、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系界面活性剤からなり、前記シリコーン系界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンの中から1種以上選択することを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記シリコーン系界面活性剤のHLB値が13以下であることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記有機溶剤が、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤を少なくとも含み、アルコール系溶剤の含有量をA、グリコールエーテル系溶剤の含有量をBとした場合、1≦A/B≦10の関係であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量が25mol%以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記樹脂が少なくとも曳糸性付与樹脂を含み、該曳糸性付与樹脂の含有量が全樹脂の含有量に対して0.1〜20.0質量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して装着し、前記インキ収容筒内に、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンレフィルであって、前記ボール表面の算術平均粗さが、0.1〜15nmであることを特徴とする油性ボールペンレフィル。
- 前記油性ボールペンレフィルを軸筒内に配設したことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
- 前記油性ボールペンレフィルを軸筒内に摺動自在に配設し、前記ボールペンチップのチップ先端部を前記軸筒先端部から出没可能とした出没式の油性ボールペンであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
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JP2014138485A JP2016017088A (ja) | 2014-07-04 | 2014-07-04 | 油性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた油性ボールペン |
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JP7007822B2 (ja) | 2017-06-21 | 2022-01-25 | 株式会社パイロットコーポレーション | 筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 |
WO2022230671A1 (ja) * | 2021-04-28 | 2022-11-03 | 株式会社パイロットコーポレーション | 油性ボールペン |
-
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- 2014-07-04 JP JP2014138485A patent/JP2016017088A/ja active Pending
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