JP6792403B2 - 油性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた油性ボールペン - Google Patents
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Description
「1.着色剤、有機溶剤、ソルビタン脂肪酸エステル、リン酸エステル系界面活性剤を含有してなることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記ソルビタン脂肪酸エステルのインキ組成物全量に対する含有量をA、前記リン酸エステル系界面活性剤のインキ組成物全量に対する含有量をB、とした場合、0.1≦A/B≦5の関係であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記油性ボールペン用インキ組成物に、有機アミンを含んでなることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に、第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容した油性ボールペンとし、前記ボール表面の算術平均粗さが、0.1〜15nmであることを特徴とする油性ボールペン。」とする。
本発明で用いるソルビタン脂肪酸エステルについては、水酸基を4つ有するソルビタンと脂肪酸とのエステルであり、前記脂肪酸として具体的には、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸等が挙げられる。具体的な化合物としては例えば、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート等やそれらの複合物等が挙げられる。
リン酸エステル系界面活性剤については、ボールとチップ本体との間の潤滑性を向上するだけでなく、ドライアップ性能を向上することが可能である。これは、リン酸エステル系界面活性剤を用いると、形成される皮膜を柔らかくする傾向があり、ドライアップ時の書き出し性能を改良できることがある。その中でも、リン酸エステル系界面活性剤のアルキル基に含まれる炭素数が12〜18であることが好ましく、さらに考慮すれば、前記炭素数が12〜15であることがより好ましい。特に、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、ドライアップ時の書き出し性能に影響しやすいため、リン酸エステル系界面活性剤を用いることはより好ましい。
本発明では樹脂を用いることが好ましい、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、書き味を向上するためには、少なくともポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。ポリビニルブチラール樹脂については、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造であるが、従来技術としては、ポリビニルブチラール樹脂を顔料分散剤として、好適に用いた技術はあるが、本発明では、書き味を向上しやすくする効果がある。
そのため、本発明のように、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗を抑制して、かつ、ドライアップ時の書き出し性能を向上するには、前記ソルビタン脂肪酸エステルと、リン酸エステル系界面活性剤に加えて、さらにポリビニルブチラール樹脂を併用することが好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤など、油性ボールペン用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
本発明で用いる有機アミンについては、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミンが挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミンが好ましく、さらに考慮すれば、ジメチルアルキルアミンが好ましい。
なお、全アミン価については、1級、2級、3級アミンの総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
また、本発明で用いるボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1〜15nmとすることが好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が15nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とび、線ムラなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。特に、後に記載するポリビニルブチラール樹脂を用いる場合では、前記算術平均粗さ(Ra)が0.1〜10nmのボール表面にインキが載りやすいためより好ましい。また、前記ソルビタン脂肪酸エステルによる、ボール座の摩耗抑制効果を発揮しやすくすることを考慮すれば、1〜8nmが好ましく、さらに前記アルキル基に含まれる炭素数が6〜12であるソルビタン脂肪酸エステルは2〜7nmであると、ボールの表面に残りやすいため、ボール座の摩耗抑制効果が得られやすいため、好ましい。なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
なお、インキ消費量については、20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度70°、筆記荷重200gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本を用いて、らせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義する。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、有機溶剤に顔料と顔料分散剤を添加し分散機で分散させた後、染料、有機溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、ソルビタン脂肪酸エステル、曳糸性付与樹脂としてポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP−52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec−1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、インキ粘度3000mPa・sであった。
また、実施例1の100mあたりのインキ消費量Cは、ボール径D=0.7mmのボールペンでらせん筆記試験を行ったところ、40mg/100mで、C/D=57であった。
着色剤(有機酸と塩基性染料との造塩染料) 5.0質量%
着色剤(酸性染料と有機アミンとの造塩染料) 5.0質量%
顔料分散体(Pigment Blue60) 3.0質量%
ソルビタン脂肪酸エステル 3.0質量%
アルコール溶剤(ベンジルアルコール) 42.5質量%
グリコールエーテル溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル)25.0質量%
リン酸エステル系界面活性剤 2.0質量%
有機アミン(ジメチルアルキルアミン(3級アミン) 2.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(水酸基量:36mol%、平均重合度:300) 12.0質量%
曳糸性付与樹脂(ポリビニルピロリドン樹脂) 0.5質量%
実施例1〜9及び比較例1〜6で作製した油性ボールペン用インキ組成物を、シリコーンでインキ収容筒(ポリプロピレン製)内壁に塗布したインキ収容筒の先端に、ボール(φ0.7mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量:12μm)を装着するとともに、インキ収容筒内に、実施例1の油性ボールペン用インキ(0.4g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:アクロボール(登録商標)に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
ボール座の摩耗が5μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの ・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの・・・×
ボール座の摩耗が5μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの ・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの・・・×
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
<筆記条件>筆記荷重70gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
筆跡カスレの長さが、10mm未満であるもの ・・・◎
筆跡カスレの長さが、10mm以上、20mm未満であるもの ・・・○
筆跡カスレの長さが、20mm以上、40mm未満であるもの ・・・△
筆跡カスレの長さが、40mm以上であるもの ・・・×
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4未満のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2未満のもの・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの・・・×
Claims (6)
- 着色剤、有機溶剤、ソルビタン脂肪酸エステル、リン酸エステル系界面活性剤を含有してなる油性ボールペン用インキ組成物であって、前記ソルビタン脂肪酸エステルのアルキル基に含まれる炭素数が5〜15であり、前記油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度が、20℃、剪断速度5sec −1 において、10〜5000mPa・sであることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記ソルビタン脂肪酸エステルのインキ組成物全量に対する含有量をA、前記リン酸エステル系界面活性剤のインキ組成物全量に対する含有量をB、とした場合、0.1≦A/B≦5の関係であることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記油性ボールペン用インキ組成物に、有機アミンを含んでなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記着色剤が顔料であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容した油性ボールペンとし、前記ボール表面の算術平均粗さが、0.1〜15nmであることを特徴とする油性ボールペン。
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