JP7221022B2 - 筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 - Google Patents

筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 Download PDF

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Description

本発明は筆記具油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具に関するものである。
筆記具は筆記時に筆記先端部と被筆記面との間で筆記抵抗によって、書き味に影響を及ぼしやすく、特にボールペンは、先端にステンレス鋼などからなる金属チップと、該金属チップのボール受け座に抱持される超鋼などの金属からなる転写ボールと、からなるボールペンチップをインキ収容筒に装着した構成を有しており、筆記時にボールの回転によって、ボール座に摩耗が発生し、筆跡に線飛び、カスレなどが生じたり、書き味が悪くなるという問題があり、改善の余地があった。
こうした問題を解決するため、筆記時に筆記先端部と被筆記面との間で筆記抵抗を抑制するために、潤滑性向上を目的として、様々な潤滑剤を用いた筆記具油性インキ組成物が多数提案されている。
このような潤滑剤を用いた油性インキ組成物としては、アルキルβ-D-グルコシドを用いたものとしては、特開平5-331403号公報「油性ボールペンインキ」、N-アシルアミノ酸、N-アシルメチルタウリン酸、N-アシルメチルアラニンを用いたものとしては、特開2007-176995号公報「油性ボールペン用インキ」、多環芳香族化合物を用いたものとして、特開2013-151594号公報「ボールペン用油性インキ」、さらに潤滑剤として、ジアルキルポリスルフィドを用いたものとしては、特開2014-88486号公報「ボールペン用油性インキ」等に、開示されている。
「特開平5-331403号公報」 「特開2007-176995号公報」 「特開2013-151594号公報」 「特開2014-88486号公報」
しかし、特許文献1~4のような各種潤滑剤を用いた場合、筆記先端部と被筆記面との間で筆記抵抗をある程度低減することはできるが、十分ではなく、より向上するために、改良の余地があった。近年では、通常より筆圧を高く筆記(高筆圧筆記性)するため、複写用紙に筆記する時には、筆記先端部と被筆記面との間で筆記抵抗をより低減するために、より潤滑性を向上して、高筆圧筆記性の向上することが求められている。
さらに、新たな潤滑剤を用いた場合では、他のインキ成分との相性もあり、インキ中での経時安定性に影響が出やすい。
本発明の目的は、筆記先端部の潤滑性を向上することで、書き味と、ボール座の摩耗抑制を向上する筆記具油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具を得ることである。
本発明は、上記課題を解決するために
「1.着色剤、有機溶剤、チオリン酸化合物を含んでなることを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
2.前記チオリン酸化合物が、少なくともS=P結合を有することを特徴とする第1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
3.前記チオリン酸化合物が、ジチオリン酸化合物または芳香環を有するチオリン酸化合物であることを特徴とする第1項または第2項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
4.前記チオリン酸化合物の含有量が、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~5.0質量%であることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
5.前記筆記具用油性インキ組成物に、界面活性剤を含んでなることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
6.第1項~第5項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする筆記具。
7.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。」とする。
本発明は、筆記先端部の潤滑性を向上し、書き味と、ボール座の摩耗抑制を向上し、特に、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)における潤滑性を向上する筆記具油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具を得ることができた。
本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」等は特に断らない限り質量基準である。
本発明の特徴は、チオリン酸化合物を含んでなる筆記具油性インキ組成物とすることである。これは、チオリン酸化合物を含んでなることで、筆記先端部の潤滑性を向上し、書き味と、ボールとチップ本体との間の潤滑性を向上することができ、ボール座の摩耗抑制することが可能となるが、チオリン酸化合物による潤滑層により、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制することが可能となる。
(チオリン酸化合物)
本発明で用いるチオリン酸化合物については、構造中に硫黄(S)とリン(P)の両方の原子を含んだ化合物である。
前記チオリン酸化合物の硫黄(S)とリン(P)の両方の原子が、筆記先端部に吸着することによって、該筆記先端部の接触面を被覆し、形成されるチオリン酸の被膜層(潤滑層)によって、摩擦緩和作用が働き、筆記先端部の筆記抵抗を抑制して、書き味を向上することが可能である。さらに、ボールペンの場合は、硫黄(S)とリン(P)の両方の原子を含んでいるため、金属材に吸着しやすく、形成されるチオリン酸の被膜層(潤滑層)によって、ボールとチップ本体との間で金属摩擦を緩和し潤滑性を向上することで、書き味を向上しつつ、ボール座の摩耗を抑制することが可能となる。特に、従来の潤滑剤とは異なり、硫黄(S)とリン(P)の両方の原子を有することで、より高い潤滑効果が得られるため、ボールペンに用いる場合は、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)においても潤滑性を保ち、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でもボール座の摩耗を抑制することが可能であり、効果的である。特に、S=P結合のような二重結合を少なくとも有するチオリン酸化合物は、強固な二重結合をしており、高筆圧でも結合が切れづらく、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)において、よりボール座の摩耗を抑制効果が得られやすいため、好ましい。
本発明で用いるチオリン酸化合物については、有機チオリン酸化合物、無機チオリン酸化合物があるが、亜鉛などの無機物を有すると比重が大きいため、インキ中での安定性に影響があるため、有機チオリン酸化合物が好ましい。さらに、潤滑性を考慮すれば、ジチオリン酸化合物または芳香環を有するチオリン酸化合物を用いることが好ましい。ジチオリン酸化合物は、硫黄(S)原子を2個有することで、より筆記先端部に吸着しやすく、チオリン酸の被膜層(潤滑層)を形成しやすいため、効果的であり、芳香環を有するチオリン酸化合物は、芳香環を有すると、より筆記先端部に吸着しやすく、チオリン酸の被膜層(潤滑層)を形成しやすいため、効果的である。
また、ジチオリン酸化合物、芳香環を有するチオリン酸化合物の中でも、潤滑性を考慮すれば、ジチオリン酸エステル、トリフェニルチオリン酸エステルが好ましく、より潤滑性を考慮すれば、ジチオリン酸エステルは、硫黄(S)原子が2個有するため、より筆記先端部に吸着し、被膜層(潤滑層)を形成しやすく、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)のボール座の摩耗を抑制しやすいため、好ましい。
チオリン酸化合物、芳香環を有するチオリン酸化合物については、具体的には、ジチオリン酸エステル、モノチオリン酸エステル、トリフェニルチオリン酸エステルなどが挙げられるが、一般式(化1)、(化3)、(化4)の構造、または、エチル-3-[[ビス(1-メチルエトキシ)フォスフィノチオイル]チオ]プロピオネート、が好ましく、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でのボール座の摩耗抑制を考慮すれば、一般式(化1)~(化4)の構造のものが好ましく、硫黄(S)原子が多い方が、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でのボール座の摩耗抑制しやすいため、一般式(化1)、または、エチル-3-[[ビス(1-メチルエトキシ)フォスフィノチオイル]チオ]プロピオネートの構造のものが好ましい。
Figure 0007221022000001
Figure 0007221022000002
Figure 0007221022000003


前記チオリン酸化合物中の硫黄(S)の含有量は、前記チオリン酸化合物の総質量を基準として、0.1~30質量%が好ましい。これは、上記範囲内であると、潤滑性を向上するのに適しており、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でもボール座の摩耗を抑制しやすくなるためで、よりボール座の摩耗を抑制やインキ中での安定性を考慮すれば、硫黄(S)の含有量は、前記チオリン酸化合物の総質量を基準として、3~25質量%が好ましく、さらに、15~25質量%が好ましい。
また、前記チオリン酸化合物中のリン(P)の含有量は、前記チオリン酸化合物の総質量を基準として、リン(P)の含有量は、0.1~15質量%が好ましい。これは、上記範囲内であると、潤滑性を向上するのに適しており、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)でもボール座の摩耗を抑制しやすくなるためで、よりボール座の摩耗を抑制やインキ中での安定性を考慮すれば、リン(P)の含有量は、前記チオリン酸化合物の総質量を基準として、3~15質量%が好ましく、さらに7~12質量%が好ましい。
また、前記チオリン酸化合物の酸価は、インキ中での安定性を考慮することで、本発明の効果を得られやすくすることを考慮すれば、300(mgKOH/g)以下とすることが好ましい、よりインキ中での安定性を考慮すれば、酸価は200(mgKOH/g)以下が好ましく、より考慮すれば、酸価は100~200(mgKOH/g)が好ましい。
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
また、前記チオリン酸化合物の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~10.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、10.0質量%を越えると、インキ中での溶解性が劣りやすく、インキ経時安定性に影響が出やすいためであり、その傾向を考慮すれば、0.1~5.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.3~3.0質量%が好ましい。
(着色剤)
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができ、染料、顔料は併用して用いても良い。染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB-B、BASE OF BASIC DYES RO6G-B、BASE OF BASIC DYES VPB-B、BASE OF BASIC DYES VB-B、BASE OF BASIC DYES MVB-3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH-スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C-RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C-RH、アイゼンスピロンレッド C-GH、アイゼンスピロンレッド C-BH、アイゼンスピロンイエロー C-GNH、アイゼンスピロンイエロー C-2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH-スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー530、S.R.C-BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
染料としては、潤滑性の向上とインキ中でのチオリン酸化合物とのインキ経時安定性を考慮すれば、少なくとも造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料との塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料を用いることが好ましい。
前記造塩染料の中でも、チオリン酸化合物との潤滑性の向上を考慮すれば、有機酸と塩基性染料との造塩染料を用いる方が好ましく、その中でも、アルキルアリルスルホン酸と塩基性染料との造塩染料を用いる方が好ましい。これは、アルキルアリルスルホン酸の構造において、芳香環を有し、スルホ基(-SOH)を有することで、フェニルスルホン基が、金属に吸着し易い潤滑層を形成することで、より潤滑性を向上し、書き味やボール座の摩耗抑制を良好とするため好ましく、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸が挙げられる。
また、アルキルベンゼンスルホン酸としては、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などが挙げられ、好ましく用いることが可能であるが、潤滑性を向上することを考慮すれば、スルホ基(-SOH)が多いドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸が好ましい。
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
顔料の種類としては、チオリン酸化合物との相性による潤滑性を考慮すれば、カーボンブラック、キナクリドン系、スレン系、ジケトピロロピロール系の顔料の中から用いることが好ましい。
着色剤としては、潤滑性を考慮すれば、顔料を用いることが好ましい。これは、ボールとチップ本体の隙間に顔料粒子が入り込むことで、ベアリングのような作用が働きやすく、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上し、書き味を向上し、ボール座の摩耗を抑制する効果が得られやすいため、顔料を用いることが好ましい。また、ボールペンチップ内部の隙間関係を考慮し、顔料の平均粒子径は、1~500nmとすることが好ましい。より好ましくは、10~350nmであり、さらに好ましくは、50~300nmである。本発明のように、チオリン酸化合物を用いることで、形成される潤滑層によって、書き味を向上できるため、顔料を用いることは好ましい。
ここで、平均粒子径は、レーザー回折法、具体的には、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320-X100」、日機装株式会社)を用いて、標準試料や他の測定方法を用いてキャリブレーションした数値を基に測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により求めることができる。
尚、前記顔料は、油性ボールペン用インキ組成物中での顔料の分散状態で前記した作用効果を奏するため、分散状態の粒子径を求めることが好ましい。
着色剤の総含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、5.0~45.0質量%が好ましい。これは5.0質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、45.0質量%を越えると、インキ中での溶解性に影響しやすい傾向があるためで、よりその傾向を考慮すれば、7.0~35.0質量%が好ましく、さらに考慮すれば、10.0~30.0質量%である。
(有機溶剤)
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤など、筆記具用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
これらの有機溶剤の中でも、グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。これは、着色剤を溶解安定し、インキ中で安定しやすいためで、さらに、グリコールエーテル溶剤を用いると、吸湿しやすいため、チップ先端部が乾燥したときに形成する被膜の強度を軟化させ、書き出し性能も向上しやすいためである。また、後述する界面活性剤と併用するとより効果的で、芳香族グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。または、グリコールエーテル溶剤以外の有機溶剤については、アルコール溶剤を用いることが好ましいが、これは、アルコ-ル溶剤は揮発して、チップ先端での乾燥をしやすく、筆記先端部内(チップ先端部内)をより早く増粘させることで、筆記先端部の間隙からインキ漏れを抑制して、インキ漏れ抑制性能を向上するためで、好ましい。さらに、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコ-ルは、潤滑性を向上する効果もあるため、少なくとも用いる方が好ましい。
また、有機溶剤の含有量は、溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を向上することを考慮すると、インキ組成物の総質量を基準として、10.0~70.0質量%が好ましい。また、アルコ-ル溶剤の含有量は、チップ先端での乾燥性を考慮すれば、全有機溶剤の総質量を基準として、30.0~90.0質量%が好ましく、より好ましくは50.0~90.0質量%である。
(界面活性剤)
本発明においては、上記潤滑性と、チップ先端部を大気中に放置した状態で、該チップ先端部が乾燥したときの書き出し性能を向上することを考慮すれば、界面活性剤を用いることが好ましい。これは、界面活性剤を用いると、形成される被膜を柔らかくする傾向があり、書き出し性能を改良でき、さらに潤滑性も向上することができる。界面活性剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。その中でも、上記効果を考慮すれば、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤(チオリン酸化合物を除く)の中から1種以上を用いることが好ましい。さらに、高筆圧下(300~500gf)での潤滑性を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤(チオリン酸化合物を除く)を用いることが好ましい、これは、チオリン酸化合物と同じリン酸骨格を有することで、強固に相互作用が働きやすく、ボールペンの場合は、高筆圧下(300~500gf)においてもボールとチップ本体との間の潤滑性を向上してボール座の摩耗を抑制し、カスレなどのない良好な筆跡としやすいため、本発明ではより好適に用いることが可能である。
特に、本発明では、前記チオリン酸化合物のリン酸塩被膜層(潤滑層)と上記界面活性剤の潤滑層による相互作用による潤滑効果が期待できるため、より効果的である。さらに、後述するが、ポリビニルブチラールを用いる場合は、ポリビニルブチラールによって形成するインキ層と、上記界面活性剤による潤滑層によって、より潤滑性を向上しやすいため好ましい。
前記界面活性剤については、より書き出し性能と潤滑性の両方を向上することを考慮すれば、HLB値が6~14であることが好ましい。これは、HLB値が14を越えると親水性が強くなりやすいため、油性インキ中での溶解性が劣りやすいため、前記界面活性剤の効果が得られにくく、潤滑効果が得られにくいためである。また、HLB値が6未満だと、親油性が強くなり過ぎて、有機溶剤との相溶性に影響が出やすく、インキ経時が安定しにくく、さらに書き出し性能が向上しにくいためである。さらに、潤滑性を考慮すれば、HLB値が12以下にすることが好ましく、HLB値が6~12であることが好ましく、より書き出し性能を考慮すれば、HLB値が7~12が好ましい。
尚、HLBは、グリフィン法、川上法などから求めることができる。特に、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、筆記先端部の乾燥時の書き出し性能に影響しやすいため、上記HLB値とした界面活性剤を用いることはより好ましい。
前記界面活性剤としては、具体的には、脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸などが挙げられ、シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロ基ブチルスルホン酸塩、パーフルオロ基含有カルボン酸塩、パーフルオロ基含有リン酸エステル、パーフルオロ基含有リン酸エステル型配合物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物などが挙げられ、リン酸エステル系界面活性剤としては、アルコキシエチル基(C2n+1OCHCHO)またはアルコキシ基(C2m+1O)を有するリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられる。
さらに、リン酸エステル系界面活性剤の中でも、高筆圧下(300~500gf)においてもボールとチップ本体との間の潤滑性を向上してボール座の摩耗を抑制することを考慮すれば、アルコキシエチル基(C2n+1OCHCHO)またはアルコキシ基(C2m+1O)を有するリン酸エステルを用いることが好ましく、より考慮すれば、アルコキシエチル基(C2n+1OCHCHO)を有するリン酸エステルを用いることが好ましい。
界面活性剤の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~5.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、インキ組成物の総質量を基準として、0.3~3.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.5~3.0質量%が、最も好ましい。
(有機アミン)
本発明では、チオリン酸化合物の経時安定性を考慮すれば、有機アミンを用いることが好ましい。オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミンが挙げられ、その中でも、チオリン酸化合物の析出などを抑制し、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、アルキルアミンが好ましく、さらに考慮すれば、アルキルアミンが好ましい。さらに、リン酸エステル系界面活性剤を用いる場合は、中和することで、インキ中で安定することで、潤滑性や書き出し性能を向上する効果が得られやすいため、好ましい。
また、前記有機アミンとインキ中の他成分との反応性については、1級アミンが最も強く、次いで2級アミン、3級アミンと反応性が小さくなるので、インキ経時安定性を考慮して、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましい。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
さらに、前記有機アミンの全アミン価は、チオリン酸化合物、染料などのインキ成分との安定性を考慮すれば、100~300(mgKOH/g)とすることが好ましい。これは、300(mgKOH/g)を超えると、反応性が強いため、チオリン酸化合物、染料やその他のインキ成分と反応し易いため、インキ経時安定性が劣りやすい。また、全アミン価が、100(mgKOH/g)未満であると、インキ中の成分の安定性に影響が出やすく、さらに、チオリン酸化合物に対するインキ経時安定性に影響が出やすく、油性ボールペンとした場合、ボールやチップ本体などの金属類の吸着性が劣りやすく、潤滑性能が得られにくい。よりチオリン酸化合物、染料との安定性や潤滑性をより考慮すれば、150~300(mgKOH/g)の範囲が好ましく、より考慮すれば、200~300(mgKOH/g)が好ましい。
なお、全アミン価については、1級、2級、3級アミンの総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
有機アミンについては、具体的には、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、具体的には、ナイミーンL-201(全アミン価:232~246、2級アミン)、同L-202(全アミン価:192~212、3級アミン)、同L-207(全アミン価:107~119、3級アミン)、同S-202(全アミン価:152~166、3級アミン)、同S-204(全アミン価:120~134、3級アミン)、同S-210(全アミン価:75~85、3級アミン)、同DT-203(全アミン価:227~247、3級アミン)、同DT-208(全アミン価:146~180、3級アミン)(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。アルキルアミンとしては、具体的には、ファーミン80(全アミン価:204~210、1級アミン)、ファーミンD86(全アミン価:110~119、2級アミン)、ファーミンDM2098(全アミン価:254~265、3級アミン)、ファーミンDM8680(全アミン価:186~197、3級アミン)(花王(株))、ニッサン3級アミンBB(全アミン価:243~263、3級アミン)、同FB(全アミン価:230~250、3級アミン)(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記有機アミンの含有量は、前記チオリン酸化合物、染料やその他の成分との安定性を考慮すれば、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~10.0質量%が好ましく、さらに前記リン酸エステル系界面活性剤に対する中和を考慮すれば、0.1~5.0質量%が好ましい。
(樹脂)
また、インキ漏れ抑制をより向上するためには、樹脂をインキ粘度調整剤として、用いることが好ましい、樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、その中でも、ポリビニルブチラール樹脂またはケトン樹脂を含んでなることが好ましい。
ケトン樹脂については、チオリン酸化合物と併用することで、相乗的に潤滑作用が働きやすく、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)で、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗抑制をより向上するため好ましい。ケトン樹脂の中でも、芳香環骨格(フェニル基、アセトフェノン基、ナフタレン基などベンゼン環を有する)やシクロヘキサン骨格(シクロヘキサン基、シクロヘキサノン基などシクロヘキサン環を有する)などの環状構造を有するケトン樹脂を用いることが好ましい。これは、環状構造を有するケトン樹脂によるクッション効果が得られ、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)で、潤滑性を向上し、ボール座の摩耗抑制をより向上するためで、より好ましくは、芳香環骨格であるケトン樹脂の方が、二重結合構造を多数有するため、より強いクッション効果が得られやすいため、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)での潤滑性は効果的であり、好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂についても、チオリン酸化合物と併用することで、より高い潤滑効果が得られる潤滑層を形成しやすい。そのため、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすい。さらに、前記ポリビニルブチラール樹脂を用いると、形成する被膜によって、インキ漏れをより向上しやすくなるため、好ましく、また、着色剤として顔料を用いる場合は、顔料分散効果も得られるため、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
また、ポリビニルブチラール樹脂は、水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、水酸基量25mol未満のポリビニルブチラール樹脂では、有機溶剤への溶解性が十分でなく、十分な潤滑効果や、インキ漏れ抑制の効果が得られにくく、さらに、吸湿性による書き出し性能を考慮すると、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましいためである。また、前記水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は、書き味が向上しやすくなるため、好ましい。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、チップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂は他の樹脂とは違い、インキ温度が高くなっても、インキ粘度を下がりづらくする性質があり、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすい傾向がある。特に、ボールペンでは、高筆圧で筆記することも多いため、筆記具では効果的である。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂が好ましい。そのため、水酸基量30~40mol%のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、さらに好ましくは、水酸基量30~36mol%が好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
また、ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度については、前記平均重合度は200以上であると、インキ漏れ抑制性能が向上しやすく、また、前記平均重合度は2500を超えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、前記平均重合度は、200~2500が好ましい。より考慮すれば、前記平均重合度は1500以下が好ましく、さらに1000以下が好ましい。ここで、平均重合度とは、ポリビニルブチラール樹脂の1分子を構成している基本単位の数をいい、JISK6728(2001年度版)に規定された方法に基づいて測定された値を採用可能である。
ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、筆記具組成物中の全樹脂の総質量を基準として、50%以上とし、主たる樹脂として用いることが好ましい。これは、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が全樹脂の総質量を基準として、50%未満となると、その他の樹脂によって、弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまいやすく、書き味向上の効果が得られづらくなり、さらに、チップ先端の樹脂被膜の形成を阻害しやすく、インキ垂れ下がりを抑制できず、さらに弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果が得られづらくなるためである。より書き味やインキ垂れ下がり性能を向上する傾向を考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、全樹脂の総質量を基準として、70%以上が好ましく、より考慮すれば、90%以上が好ましい。
前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、1.0質量%より少ないと、所望の潤滑性やインキ漏れ抑制性能が劣りやすく、40.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすいため、インキ組成物の総質量を基準として、1.0~40.0質量%が好ましい。さらに、考慮すれば5.0質量%以上が好ましく、30.0質量%を越えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、5.0~30.0質量%が好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂については、具体的には、積水化学工業(株)製の商品名;エスレックBH-3(水酸基量:34mol%、平均重合度:1700)、同BH-6(水酸基量:30mol%、平均重合度:1300)、同BX-1(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:1700)、同BX-5(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:2400)、同BM-1(水酸基量:34mol%、平均重合度:650)、同BM-2(水酸基量:31mol%、平均重合度:800)、同BM-5(水酸基量:34mol%、平均重合度:850)、同BL-1(水酸基量:36mol%、平均重合度:300)、同BL-1H(水酸基量:30mol%)、同BL-2(水酸基量:36mol%、平均重合度:450)、同BL-2H(水酸基量:29mol%)、同BL-10(水酸基量:28mol%)などや、クラレ(株)製の商品名;モビタールB20H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:250~500)、同B30T(水酸基量:33~38mol%、平均重合度:400~650)、同B30H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:400~650)、同B30HH(水酸基量:30~34mol%、平均重合度:400~650)、同B45H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:600~850)、同B60T(水酸基量:34~38mol%、平均重合度:750~1000)、同B60H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:750~1000)、同B75H(水酸基量:26~31mol%、平均重合度:1500~1750)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂以外の樹脂は、曳糸性付与剤を適宜用いてもよい。特に、ポリビニルピロリドン樹脂を配合することで、インキの結着性を高め、チップ先端における余剰インキの発生を抑制しやすいため、ポリビニルピロリドン樹脂を含有することが好ましい。前記ポリビニルピロリドン樹脂の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.01質量%より少ないと、余剰インキの発生を抑制しにくい傾向があるため、3.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすい傾向があるため、インキ組成物の総質量を基準として、0.01~3.0質量%が好ましい。より上記理由を考慮すれば、0.1~2.0質量%が好ましい。具体的には、アイエスピー・ジャパン(株)製の商品名;PVP K-15、PVP K-30、PVP K-90、PVP K-120などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
また、本発明による筆記具用インキ組成物には、その他の添加剤として、潤滑性やインキ経時安定性を向上させるために、(i)界面活性剤、例えば脂肪酸アルカノールアミド、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤や、(ii)粘度調整剤、例えば脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤、また、(iii)着色剤安定剤、(iv)可塑剤、(v)キレート剤、または(vi)助溶剤としての水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
ボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1~12nmとすることが好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が12nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とび、線ムラなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。また、前記算術平均粗さ(Ra)が0.1~10nmであると、ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、ボール表面にインキが載りやすいためより好ましく、より書き味を考慮すれば、2~8nmが好ましい。なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。
また、ボールの直径は、ボール直径が0.7mm以下とした比較的小さいボール径であると、同一距離の筆記をする場合にボールの直径が小さいほどボールの回転数が多くなるので、ボール座の摩耗が激しなりやすいため、本発明で用いるチオリン酸化合物を用いると効果的であり、さらに、ボール直径が0.5mm以下であると、高筆圧下(筆記荷重300~500gf)での、ボール座の摩耗が進みやすいため、より効果的である。
また、ボ-ルペンチップの材料は、ステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABSなどの樹脂材が挙げられるが、ボール座の摩耗、経時安定性、コストを考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
本発明の筆記具油性インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度が50000mPa・sを越えると、書き出し性能や書き味が劣りやすいため、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度は、50000mPa・s以下であることが好ましい。また、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度が3000mPa・s未満だと、インキ漏れを抑制しにくいため、インキ漏れを考慮すれば、3000mPa・s以上とすることが好ましい。よりインキ漏れ抑制、書き味、インキ追従性能、書き出し性能をより向上することを考慮すれば、前記インキ粘度は5000~30000mPa・sがより好ましく、さらに、より考慮すれば、5000~20000mPa・sが好ましい。
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の筆記具油性インキ組成物は、着色剤、有機溶剤、チオリン酸化合物、リン酸エステル系界面活性剤、有機アミン、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて筆記具油性インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec-1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、インキ粘度15000mPa・sであった。
実施例1
着色剤(アルキルアリルスルホン酸と塩基性染料との造塩染料) 10.0質量%
着色剤(酸性染料と塩基性染料との造塩染料) 5.0質量%
アルコール溶剤(ベンジルアルコール) 30.5質量%
グリコールエーテル溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル)35.0質量%
ジチオリン酸エステル(化1:硫黄19.8質量%含有、リン9.3質量%含有、酸価140(mgKOH/g) 1.0質量%
リン酸エステル系界面活性剤(アルコキシエチル基(C2n+1OCHCHO)を有するリン酸エステル系界面活性剤) 1.0質量%
有機アミン 2.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(水酸基量:36mol%、平均重合度:300) 15.0質量%
曳糸性付与樹脂(ポリビニルピロリドン樹脂) 0.5質量%
実施例2~15
表に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順でインキ配合し、実施例2~15の筆記具油性インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
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比較例1~3
表に示すように、各成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1~3の筆記具油性インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
Figure 0007221022000004
Figure 0007221022000005
試験および評価
実施例1~15および比較例1~3で作製した筆記具油性インキ組成物を、インキ収容筒(ポリプロピレン製)の先端に、ボール(φ0.5mm)を回転自在に抱時したボールペンチップを装着するとともに、インキ収容筒内に、実施例1の油性ボールペン用インキ(0.2g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ(登録商標))に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験および評価を行った。
高筆圧下耐摩耗試験(ボール座の摩耗試験):荷重400gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
ボール座の摩耗が3μm未満であるもの ・・・◎◎
ボール座の摩耗が3μm以上、5μm未満であるもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの ・・・×
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
インキ経時試験:50℃環境下、1ヶ月後にチップ本体内のインキを顕微鏡観察した。
析出物がなく、良好のもの ・・・◎
析出物が発生したが、実用上問題のないもの ・・・○
析出物が発生し、カスレや筆記不良などの原因になるもの・・・×
実施例1~15では、高筆圧下耐摩耗試験(ボール座の摩耗試験)、書き味、インキ経時試験ともに良好な性能が得られた。
比較例1~3では、チオリン酸化合物を用いなかったため、高筆圧下耐摩耗試験(ボール座の摩耗試験)において、ボール座の摩耗がひどく筆跡にカスレが発生し、筆記不良になるものがあった。さらに比較例1~2では、書き味も劣っていた。
また、本実施例では、インキ収容筒内に筆記具油性インキ組成物を収容したボールペンレフィルを軸筒内に配設した油性ボールペンを例示したが、本発明の筆記具は、軸筒自体をインキ収容筒とし、軸筒内に、筆記具油性インキ組成物を直に収容した直詰め式のボールペン、マーキングペン、サインペンとした筆記具であっても良く、インキ収容筒内に筆記具油性インキ組成物を収容したもの(ボールペンレフィル)をそのままボールペンとして使用した構造であっても良い。
本発明は筆記具油性インキ組成物として利用でき、さらに詳細としては、該筆記具油性インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の筆記具として広く利用することができる。

Claims (7)

  1. 着色剤、有機溶剤、チオリン酸化合物を含んでなり、前記チオリン酸化合物が一般式(化1)、(化3)、(化4)の構造、
    または、エチル-3-[[ビス(1-メチルエトキシ)フォスフィノチオイル]チオ]プロピオネート、
    であることを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
    Figure 0007221022000006
    Figure 0007221022000007
    Figure 0007221022000008
  2. 前記チオリン酸化合物の酸価が、200(mgKOH/g)以下であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  3. 前記チオリン酸化合物が、少なくともS=P結合を有することを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  4. 前記チオリン酸化合物が、ジチオリン酸化合物または芳香環を有するチオリン酸化合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  5. 前記筆記具用油性インキ組成物に、界面活性剤を含んでなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする筆記具。
  7. インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1ないし6のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。
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