JP6706107B2 - 筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィル、油性ボールペン - Google Patents

筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィル、油性ボールペン Download PDF

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Description

本発明は筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィル、油性ボールペンに関するものである。
従来より、筆記具用油性インキ組成物において、着色剤として、ニグロシン系染料や、塩基性染料、酸性染料など様々な染料やそれを加工したタイプの染料を用いた筆記具用油性インキ組成物が多数提案されている。
このような筆記具用油性インキ組成物としては、様々な着色剤を用いているが、ニグロシン系染料を用いたものとしては、特開平5−320558号公報「油性黒色インキ」、トリアリールメタン系塩基性染料とアゾ系黄色酸性染料の造塩染料を用いたものとしては、特開平9−165542号公報「油性黒色インキ」、特開平9−71745号公報「油性黒色インキ」、塩基性染料を母体とした造塩染料を用いたものとしては、特開平8−134393号公報「油性ボールペン用黒インキ組成物」等に、開示されている。
「特開平5−320558号公報」 「特開平9−165542号公報」 「特開平9−71745号公報」 「特開平8−134393号公報」
しかし、特許文献1では、着色剤として、ニグロシン系染料を用いた場合、濃度が濃く、コストが安く、従来用いられているが、有機溶剤、樹脂、界面活性剤などのインキ成分との安定性に影響が出やすく、インキ経時安定性を考慮に入れる必要があった。
また、特許文献2、3では、着色剤として、トリアリールメタン系塩基性染料とアゾ系黄色酸性染料の造塩染料を用いた場合、長期間の経時によって造塩染料の一部が崩れ、析出物の発生や、書き味が劣ってしまうことや、コストが掛かる改良すべき点もあった。
また、特許文献4では、着色剤として、塩基性染料を母体とした造塩染料では、インキ経時安定性は良好であるが、コストがかかり、さらに書き味を良好とするために、新たに界面活性剤などを含むことで、書き味を向上することができるが、界面活性剤と染料が反応し析出物が発生することもあり、改良すべき点もあった。
さらに、特許文献1〜4のような着色剤として染料を用いたインキにおいてでも、耐光性の向上が求められ、一層求められている。
本発明の目的は、インキ経時安定性が良好である筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィル、油性ボールペンを提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために
「1.塩基性染料と樹脂酸との造塩染料、有機溶剤、有機アミンを含んでなることを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
2.前記塩基性染料が、トリアリールメタン骨格塩基性染料またはキサンテン骨格塩基性染料であることを特徴とする第1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
3.前記有機アミンが、2級アミンまたは3級アミンであることを特徴とする第1項または第2項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
4.前記筆記具用油性インキ組成物に、顔料を更に含んでなることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
5.前記筆記具用油性インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなり、前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量が、前記筆記具用油性インキ組成物中の全樹脂の含有量に対して50%以上であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
6.20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が、10〜30000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
7.インキ収容筒内に第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容したことを特徴とする油性ボールペンレフィル。
8.第7項に記載の油性ボールペンレフィルを軸筒内に配設し、軸筒先端部から出没可能としたことを特徴とする出没式油性ボールペン。」とする。
本発明は、油性インキ組成物中で長期間インキ経時安定性を保つことが可能である筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペンレフィル、油性ボールペンを得ることができた。
本発明の特徴は、筆記具用油性インキ組成物中に、塩基性染料と樹脂酸との造塩染料、有機溶剤、有機アミンを含んでなることである。
本発明で用いる着色剤については、塩基性染料と樹脂酸との造塩染料を用いる。これは、塩基性染料を樹脂酸によって造塩させた造塩染料は、長期間安定しており、有機溶剤、有機アミン、界面活性剤などの成分を含んだ油性インキ組成物中で、分離したり、反応したりせず、安定しているためである。
さらに、油性インキ組成物中で、塩基性染料と樹脂酸との造塩染料を、有機溶剤で安定溶解させるためには、有機アミンを含む必要がある。これは、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料を安定した状態を保つことができるためである。さらに、筆記具用油性インキ組成物中では、製造時や経時による吸湿等、インキ全質量に対して、微量の水を含有する。こうした筆記具用油性インキ組成物の水分によって微少ではあるが、塩基性染料は、カチオン性の性質を持つため、塩基性染料と樹脂酸は分離しやすくなり、インキ中で他成分と反応しやすく、塩基性染料と樹脂酸との造塩染料を長期間安定させるためには、有機アミンを併用する必要がある。
(塩基性染料と樹脂酸との造塩染料)
本発明では、塩基性染料と造塩安定性を考慮すれば、樹脂酸を用いることが好ましい。これは、樹脂酸と塩基性染料とを塩析反応させることで、樹脂酸と塩基性染料間のイオン結合力が強い造塩染料となりやすく、油性インキ中において、長期間インキ経時安定性を保ちやすいためである。樹脂酸としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン、不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジン、重合ロジン、カルボン酸変性ロジン等の変性ロジン、アルキルフェノール系樹脂などが挙げられる。なお、前記カルボン酸変性ロジンの調製に用いられるカルボン酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができる。これらの樹脂酸の中でも、塩基性染料と造塩安定性を考慮すれば、変性ロジンを用いることが好ましい。
塩基性染料としては、塩基性染料は、トリアリールメタン骨格、キサンテン骨格、アゾメチン骨格、アゾ骨格、アントラキノン骨格、オキサジン骨格などが挙げられるが、その中でも、トリアリールメタン骨格塩基性染料、キサンテン骨格塩基性染料を用いることが好ましい。これは、トリアリールメタン骨格塩基性染料、キサンテン骨格塩基性染料、を反応させて、樹脂酸と塩基性染料間のイオン結合力が強い造塩染料とすることで、油性インキ中において、様々な環境下や長期間インキ経時安定性を保ちやすいためで、特に、トリアリールメタン骨格塩基性染料は、同一炭素に3つのフェニル基、ナフチル基などの芳香環を有する塩基性染料であり、3方向に芳香環を有することでバランスを取りやすい構造とし、樹脂酸との造塩安定性が得られやすいため、最も好ましい。
ここで、本発明において用いることができる塩基性染料については、トリアリールメタン骨格塩基性染料としては、C.I.ベーシックブルー1、7、19、26、C.I.ベーシックバイオレット1、3、4、10、15、C.I.ベーシックグリーン1、4、7、ソルベントブルー5、およびソルベントバイオレット8などが挙げられ、キサンテン骨格塩基性染料としては、C.I.ベーシックレッド1、1:1、C.I.ベーシックバイオレット10、11、およびソルベントレッド49などが挙げられ、アゾメチン骨格塩基性染料としては、C.I.ベーシックイエロー11、13、14、21、23、24、28、40、44、49、51、52、および53などが挙げられる。それらの塩基性染料の中でも、ジエチルアミノ基(−NH(C−)を有すると、樹脂酸との造塩染料を形成させたときの安定性が高いため好ましく、より樹脂酸との安定性を考慮すれば、C.I.ベーシックブルー7、ソルベントレッド49を用いることが好ましく、より考慮すれば、C.I.ベーシックブルー7がより好ましい。
また、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1質量%より少ないと、所望の筆跡の濃さが得られづらく、40.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすいため、インキ組成物全量に対し、0.1〜40.0質量%が好ましい。より好ましくは、インキ組成物全量に対し、1.0〜25.0質量%であり、より好ましくは、5.0〜20.0質量%であり、有機アミンとの安定性を考慮すれば、7.0〜15.0質量%が好ましい。
(有機アミン)
本発明で用いる有機アミンについては、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミンが挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミンが好ましく、さらに考慮すれば、ジメチルアルキルアミンが好ましい。
前記有機アミンの中でも、前記有機アミンと、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料との安定性を考慮すれば、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましい。これは、油性インキ中での反応性については、1級アミンが最も強く、次いで2級アミン、3級アミンと反応性が小さくなり、1級アミンは、前記造塩染料やその他の成分と反応しやすく、特に前記造塩染料と反応して、くすんだ色になりやすく、濃い筆跡が得られにくい。そのため、前記造塩染料との安定性を考慮すれば、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましく、より考慮すれば、3級アミンを用いることが好ましい。
さらに、前記有機アミンの全アミン価は、前記造塩染料やその他の成分との安定性を考慮すれば、100〜300(mgKOH/g)とすることが好ましい。これは、300(mgKOH/g)を超えると、反応性が強いため、前記造塩染料やその他の成分と反応し易いため、インキ経時安定性が劣りやすい。また、全アミン価が、100(mgKOH/g)未満であると、インキ中での前記造塩染料の安定性に影響が出やすく、さらに後に説明するリン酸エステル系界面活性剤に対する中和が不十分になり、インキ経時安定性に影響が出やすく、油性ボールペンとした場合、ボールやチップ本体などの金属類の吸着性が劣りやすく、潤滑性能が得られにくい。より前記造塩染料との安定性や潤滑性をより考慮すれば、150〜300(mgKOH/g)の範囲が好ましく、前記造塩染料との安定性を考慮すれば、200〜300(mgKOH/g)が好ましく、最も考慮すれば、230〜270(mgKOH/g)が好ましい。
なお、全アミン価については、1級、2級、3級アミンの総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
有機アミンについては、具体的には、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、具体的には、ナイミーンL−201(全アミン価:232〜246、2級アミン)、同L−202(全アミン価:192〜212、3級アミン)、同L−207(全アミン価:107〜119、3級アミン)、同S−202(全アミン価:152〜166、3級アミン)、同S−204(全アミン価:120〜134、3級アミン)、同S−210(全アミン価:75〜85、3級アミン)、同DT−203(全アミン価:227〜247、3級アミン)、同DT−208(全アミン価:146〜180、3級アミン)(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。アルキルアミンとしては、具体的には、ファーミン80(全アミン価:204〜210、1級アミン)、ファーミンD86(全アミン価:110〜119、2級アミン)、ファーミンDM2098(全アミン価:254〜265、3級アミン)、ファーミンDM8680(全アミン価:186〜197、3級アミン)(花王(株))、ニッサン3級アミンBB(全アミン価:243〜263、3級アミン)、同FB(全アミン価:230〜250、3級アミン)(日本油脂(株)社製)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記有機アミンの含有量は、前記造塩染料やその他の成分との安定性を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.1〜10.0質量%が好ましく、さらに後に説明するリン酸エステル系界面活性剤に対する中和を考慮すれば、0.2〜5.0質量%が好ましい。
(有機溶剤)
本発明に用いることができる有機溶剤は特に限定されず、一般に筆記具用インキ組成物に用いられる溶剤を用いることができるが、有機溶剤の中でも、アルコール系有機溶剤が好ましい。アルコール系有機溶剤としては例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、メチルフェニルカルビノール、フタリルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のその他のアルコール系溶剤などが挙げられる。アルコ−ル系有機溶剤は、油性インキ組成物中で、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料を安定した状態を保つことができるため、好ましい。さらに、揮発しやすく、チップ先端での乾燥をしやすく、皮膜形成が速くなりやすく、インキ垂れ下がり性能を向上させやすいため、好ましい。なお、本発明において、アルコール系有機溶剤とは、エーテル結合を有しないものをいう。
アルコール系溶剤の中でも、芳香族アルコール系溶剤が好ましく、その理由としては、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料、有機アミンの溶解性を改善し、該造塩染料をお互い分離することなく、インキの経時安定性をより向上させることができるため好ましい。
アルコール系有機溶剤以外の有機溶剤として、グリコールエーテル系溶剤を挙げることが出来る。グリコールエーテル系溶剤は、ボールに対してインキが載りやすく、筆跡カスレや中抜けなどに有利に働き、筆記性能を向上し、さらに、油性ボールペンとした場合、ボール座の摩耗抑制を考慮すれば、グリコールエーテル系溶剤を用いることが好ましい。さらに、チップ先端を大気中に放置した状態にした場合であっても、チップ先端で均一な厚い樹脂皮膜を形成し、ボールとチップ先端の間隙を覆うことで、インキ垂れ下がりをより抑制することが可能となることからも芳香族グリコールエーテル系溶剤が好ましい。
グリコールエーテル系溶剤としては例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール又は3−メトキシ−3−メチルブタノール等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、1種又は2種以上用いることができる。例えば、グリコールエーテル系溶剤とアルコ−ル系溶剤を併用して用いることが好ましい。また、グリコールエーテル系溶剤又はアルコール系溶剤のいずれかが芳香族基を有していることが好ましい。特に、芳香族基を有するグリコールエーテル系溶剤及び芳香族基を有するアルコール系溶剤を併用して用いることが、潤滑性を向上させることができるため、好ましい。
また、有機溶剤の含有量は、アルコール系有機溶剤が多すぎても、ドライアップ時の書き出し性能に影響しやすく、一方、グリコールエーテル系有機溶剤が多すぎても、水分を吸湿し過ぎて、樹脂皮膜が柔らかくなりインキ垂れ下がり性能や、前記造塩染料のインキ経時安定性にも影響しやすい。そのため、ドライアップ時の書き出し性能、前記造塩染料のインキ経時安定性のバランスを考慮すれば、アルコール系溶剤のインキ組成物の全質量に対する含有量をA、グリコールエーテル系溶剤のインキ組成物の全質量に対する含有量をBとした場合、0.1≦A/B≦10を満たすことが好ましく、0.5≦A/B≦7を満たすことがより好ましい、より考慮すれば、0.5≦A/B≦5を満たすことが好ましい。
また、有機溶剤の含有量は、溶解性、筆跡乾燥性を向上させることができ、にじみを防止すること等ができるため、インキ組成物の全質量に対し、10.0〜70.0質量%であることが好ましい。また、有機溶剤としてグリコールエーテル系有機溶剤を用いた場合、グリコールエーテル系有機溶剤の含有量は、前記造塩染料との安定性を考慮すれば、有機溶剤の全質量に対して10.0〜50.0質量%であることが好ましく、10.0〜30.0質量%であることがより好ましい。また、有機溶剤としてアルコ−ル系溶剤を用いた場合、アルコ−ル系溶剤の含有量は、前記造塩染料との安定性や、チップ先端での乾燥性を向上させるために、有機溶剤の全質量に対し、30.0〜90.0質量%であることが好ましく、50.0〜90.0質量%であることがより好ましい。
(着色剤)
前記造塩染料以外の着色剤としては、一般的な染料や顔料を用いても良いが、本発明では、油性ボールペンとした場合、顔料を含んでなることが好ましい。これは、顔料を含んでなることで、ボールとチップ本体の隙間に顔料粒子が入り込むことで、ベアリングのような作用が働き、金属接触を抑制することで、潤滑性を向上することが可能であるためである。そのため、前記顔料は、従来とは異なり、着色剤と潤滑剤との効果を併せ持つことが可能となる。さらに、顔料を併用することで、前記造塩染料だけでは得られづらかった濃い筆跡が得られ、同時に、耐光性も向上することが可能となり、好ましい。
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、DPP系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。これら顔料は、チップ本体の隙間に入り込むことで、金属接触を抑制し、潤滑性を向上しやすい。特に、チップ内部の隙間関係を考慮し、平均粒子径は、300nm以下が好ましく、より好ましくは、200nm以下である。これらの顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。また、顔料の平均粒子径は、レーザー回折法(MICROTRAC 9320−X100 Honeywell製)による体積基準法によって求められ、レーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。
また、顔料の含有量は、着色剤としての効果を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.1〜20質量%が好ましいが、本発明のように、着色剤としての効果だけではなく、潤滑性を向上するためには、インキ組成物全量に対し、0.1〜8.0質量%が好ましい。これは0.1質量%未満だと、潤滑性が十分ではなく、書き味やボール座の摩耗抑制を向上することが得られにくい傾向があり、8.0質量%を越えると、顔料粒子が多すぎて、潤滑性に影響が出やすいためである。さらに、顔料を用いた場合では、ボール座の摩耗抑制を特段に向上し、耐光性を向上しやすくする効果があり、それを考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.3〜5.0質量%が好ましく、より考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.5〜4.0質量%が好ましい。
また、前記造塩染料以外の着色剤としては、耐光性を良好とするために、Cu、Cr、Fe、Co、Siを含む含金染料を用いることが好ましい。特に、酸性含金染料と芳香環を有するアミンとの造塩染料を用いることが好ましいが、これは、酸性含金染料と芳香環を有するアミン間での強いイオン結合力が働いており、油性インキ中において、長期間インキ経時安定性を保つことができるためである。さらに、経時安定性を良好とすることを考慮すれば、Cuを含む酸性含金染料を用いることが好ましい。フタロシアニン系、アゾ系などあるが、その中でも、銅フタロシアニン系酸性染料を用いることが好ましい。具体的には、銅フタロシアニン系酸性染料としては、ダイレクトブルー86、ダイレクトブルー87、ダイレクトブルー199等が挙げられるが、芳香環を有するアミンとの安定性や耐光性を考慮すればダイレクトブルー86が好ましい。
芳香環を有するアミンについては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などの芳香環を有するアミンであり、芳香環を有することで、油性ボールペンとした場合、書き味が良好としやすくすることが可能となる。これは、芳香環が、金属チップに吸着し易い潤滑膜を形成することで、ボールとチップ本体間の金属接触を抑制する効果があり、潤滑性を向上して、書き味が良好となると推測する。そのため、本発明では、酸性含金染料と芳香環を有するアミンとの造塩染料を用いることで、インキ経時安定性と、書き味を向上し、耐光性を良好としやすくすることが可能となるため、好ましい。
また、芳香環を有するアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンや4級アミンなどが挙げられるが、酸性含金染料を十分に中和反応させ、より安定した造塩染料を作成するためには、芳香環を有する4級アミンを用いることが好ましい。
また、その他の着色剤としては、染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等を採用しても良い。また、染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1621、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、BASE OF BASIC DYES RO6G−B、BASE OF BASIC DYES VPB−B、BASE OF BASIC DYES VB−B、BASEOF BASIC DYES MVB−3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、アイゼンスピロンレッド C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、アイゼンスピロンイエロー C−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
その他の着色剤の中でも、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料との相性による経時安定性を考慮すれば、前記樹脂酸のような酸性物質として、有機酸を用いることが好ましく、具体的には、塩基性染料と有機酸との造塩染料を含んでなることが好ましい。さらに、考慮すれば、塩基性染料とアルキルベンゼンスルホン酸との造塩染料を含んでなることが好ましく、これは、アルキルベンゼンスルホン酸と塩基性染料間のイオン結合力が強い造塩染料とすることで、油性インキ中において、様々な環境下や長期間インキ経時安定性が保つことが可能で、油性ボールペンとした場合、アルキルベンゼンスルホン酸を有すると、フェニルスルホン基が、金属に吸着し易い潤滑膜を形成することで、ボールとチップ本体間の金属接触を抑制する効果があり、潤滑性を向上するためである。
その他の着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、1.0〜30.0質量%が好ましい。これは1.0質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、30.0質量%を越えると、インキ中で凝集しやすい傾向があるためであり、よりその傾向を考慮すれば、3.0〜15.0質量%が最も好ましい。
(樹脂)
また、本発明では、樹脂を含んでなることが好ましいが、筆記具用油性インキ組成物に用いる樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、本発明では、油性ボールペンとした場合、インキ垂れ下がり性能と、書き味が優れるとともに、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料とのインキ経時安定性に優れるようにするには、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。これは、ポリビニルブチラール樹脂は、チップ先端で樹脂皮膜を形成し、ボールとチップ先端の間隙を覆うことで、インキ垂れ下がりを抑制し、さらに、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすくすることが可能となるためである。
ポリビニルブチラール樹脂については、ポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造であるが、従来技術としては、ポリビニルブチラール樹脂を顔料分散剤として、好適に用いた技術はあるが、本発明では、インキ垂れ下がり性能、書き味を向上することに関するものである。
ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物中の全樹脂の含有量に対して50%以上とし、主たる樹脂として用いることが好ましい。これは、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が、インキ組成物中の全樹脂の含有量の50%未満となると、その他の樹脂によって、チップ先端の樹脂皮膜の形成を阻害してしまい、インキ垂れ下がりを抑制できず、さらに弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果が得られづらくなるためである。よりインキ垂れ下がり性能や書き味が向上する傾向を考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物中の全樹脂の含有量に対して70%以上が好ましく、よりその傾向を考慮すれば、90%以上が好ましい。さらに、塩基性染料と樹脂酸との造塩染料とポリビニルブチラール樹脂との相性も良く、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が多く、90%以上としても、インキ経時安定性に影響が出にくいため、好ましい。
また、ポリビニルブチラール樹脂は、水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、前記した水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は、チップ先端を大気中に放置した状態にした場合、チップ先端で厚い樹脂皮膜を形成し、ボールとチップ先端の間隙を覆うことで、インキ垂れ下がりを抑制することが可能となるためである。一方、水酸基量25mol未満のポリビニルブチラール樹脂では、有機溶剤への溶解性が十分でなく、均一な樹脂皮膜ではないため、インキ垂れ下がり抑制の十分な効果が得られにくくなるため、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましいためである。また、前記水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は、書き味が向上しやすくなるため、好ましい。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、チップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂は他の樹脂とは違い、インキ温度が高くなっても、インキ粘度を下がりづらくする性質があり、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して、直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすい傾向がある。特に、油性ボールペンでは、高筆圧で筆記することも多いため、油性ボールペンでは効果的である。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、油性インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂が好ましい。そのため、水酸基量30〜40mol%のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、さらに好ましくは、水酸基量30〜36mol%が好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
また、ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度については、前記平均重合度は200以上であると、インキ垂れ下がり性能が向上するとともに、インキの凝集力を高めることができ、ボール表面にインキが載りやすく、ボールにインキが残ることで、ボールとボール座の間にインキが入り込みやすいため、ボールがボール座と直接接触しづらくなるため、書き味を向上しやすい傾向がある。一方、前記平均重合度は2000を超えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、前記平均重合度は、200〜2000が好ましい。さらに、塩基性染料と樹脂酸との造塩染料との安定性を考慮すれば、前記平均重合度は1500以下であることが好ましく、より書き味を考慮すれば、前記平均重合度は1200以下が好ましい。そのため、前記平均重合度は200〜1500が好ましく、より好ましくは、前記平均重合度は200〜1000が最も好ましい。ここで、平均重合度とは、ポリビニルブチラール樹脂の1分子を構成している基本単位の数をいい、JISK6728(2001年度版)に規定された方法に基づいて測定された値を採用可能である。
また、インキ垂れ下がり性能を考慮すれば、有機溶剤として、グリコールエーテル溶剤を用いると、前記ポリビニルブチラール樹脂との溶解性を安定させることで、ポリビニルブチラール樹脂のチップ先端での樹脂皮膜形成の効果が得られやすいため、好ましく、特に、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いる場合では、樹脂皮膜形成の効果が得られやすいため、好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂については、具体的には、積水化学工業(株)製の商品名;エスレックBH−3(水酸基量:34mol%、平均重合度:1700)、同BH−6(水酸基量:30mol%、平均重合度:1300)、同BX−1(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:1700)、同BX−5(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:2400)、同BM−1(水酸基量:34mol%、平均重合度:650)、同BM−2(水酸基量:31mol%、平均重合度:800)、同BM−5(水酸基量:34mol%、平均重合度:850)、同BL−1(水酸基量:36mol%、平均重合度:300)、同BL−1H(水酸基量:30mol%)、同BL−2(水酸基量:36mol%、平均重合度:450)、同BL−2H(水酸基量:29mol%)、同BL−10(水酸基量:28mol%)などや、クラレ(株)製の商品名;モビタールB20H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:250〜500)、同30T(水酸基量:33〜38mol%、平均重合度:400〜650)、同30H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:400〜650)、同30HH(水酸基量:30〜34mol%、平均重合度:400〜650)、同45H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:600〜850)、同60T(水酸基量:34〜38mol%、平均重合度:750〜1000)、同60H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:750〜1000)、同75H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:1500〜1750)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対し、3.0質量%より少ないと、樹脂皮膜形成量が足りないおそれがあり、インキ垂れ下がり性能が劣りやすく、40.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすいため、インキ組成物全量に対し、3.0〜40.0質量%が好ましい。さらに、インキ垂れ下がり性能を考慮すれば5.0質量%以上が好ましく、30.0質量%を越えると、インキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、5.0〜30.0質量%が好ましく、より考慮すれば、7.0〜25.0質量%が最も好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂以外の樹脂は、インキ粘度調整樹脂や曳糸性付与樹脂を適宜用いてもよい。特に、曳糸性付与樹脂を配合することで、インキの結着性を高め、チップ先端における余剰インキ(泣きボテ)の発生を抑制しやすいため、曳糸性付与樹脂を含有することが好ましい。曳糸性付与樹脂としては、ポリビニルピロリドンが好ましく、具体的には、アイエスピー・ジャパン(株)製の商品名;PVP K−15、PVP K−30、PVP K−90、PVP K−120などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
本発明で用いる曳糸性付与樹脂の含有量は、インキ組成物中の全樹脂の含有量に対して0.1〜15.0%であることが好ましい。これは、曳糸性付与樹脂の含有量が全樹脂の含有量の0.1%未満となると、余剰インキ(泣きボテ)の発生を抑制しにくい傾向があり、15.0%を越えると、ポリビニルブチラール樹脂の効果を阻害しやすく、具体的には、チップ先端の樹脂皮膜の形成を阻害してしまい、インキ垂れ下がりを抑制しづらくし、さらに弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果が得られにくくしやすいためである。より余剰インキを抑制する傾向を考慮すれば、曳糸性付与樹脂の含有量は、全樹脂の含有量に対して1.0〜15.0%が好ましく、インキ垂れ下がり性能や書き味が向上する傾向を考慮すれば、1.0〜10.0%が好ましく、さらにその傾向を考慮すれば、2.0〜7.0%が好ましい。
また、油性ボールペンとした場合、高筆圧下(筆記荷重400gf)においても潤滑性を保ち、ボール座の摩耗を抑制するには、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。これは、リン酸エステル系界面活性剤において、リン酸基が金属表面に吸着しやすく、ボールとチップ本体との間の潤滑性を保ち、書き味がより向上しやすいためである。特に、前記ボリビニルブチラール樹脂を用いる場合には、該ボリビニルブチラール樹脂によって形成するインキ層とリン酸基によって、より潤滑性を向上しやすいためより好ましく、高筆圧下(筆記荷重400gf)においても潤滑性を保ちやすくなる。
リン酸エステル系界面活性剤の酸価は、100以下とすることが好ましい、これは、有機アミンと中和安定することで、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料の安定性を向上し、リン酸エステル系界面活性剤による潤滑性の向上を発揮しやすくするためである。より前記造塩染料の安定性や、潤滑性を考慮すれば、酸価は30〜100が好ましく、より考慮すれば、酸価は50〜90が好ましい。
さらに、リン酸エステル系界面活性剤は、形成される皮膜を柔らかくする傾向があり、ドライアップ時の書き出し性能を改良できることがある。特に、前記ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合は、形成された皮膜によって、ドライアップ時の書き出し性能が劣りやすく、リン酸エステル系界面活性剤を用いると、形成された皮膜を和らげて、書き出しを向上しやすいため、好ましく、その中でもアルキル基に含まれる炭素数が12〜18であることが好ましく、さらに考慮すれば、前記炭素数が12〜15であることがより好ましい。特に、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、ドライアップ時の書き出し性能に影響しやすいため、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが、より好ましい。
また、リン酸エステル系界面活性剤と、有機アミンとして、2級アミンまたは3級アミンを用いる場合は、アルコール系溶剤を用いることが好ましい、これは、リン酸エステル系界面活性剤と、2級アミンまたは3級アミンとを安定中和状態を維持しやすく、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料も溶解安定させて、析出物がなく、長期間インキ経時安定性が得られやすいためで、より安定性を考慮すれば、3級アミンを用いると好適である。
また、リン酸エステル系界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.3〜3.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.5〜3.0質量%が、最も好ましい。
リン酸エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられ、前記リン酸エステル系界面活性剤のアルキル基は、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルフェノール系などが挙げられる。これらのリン酸エステル系界面活性剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬(株))の中から、プライサーフA217E(アルキル基:炭素数14、酸価:45〜58)、同A219B(アルキル基:炭素数12、酸価:44〜58)、同A215C(アルキル基:炭素数12、酸価:80〜95)、同A208B(アルキル基:炭素数12、酸価:135〜155)、同A208N(アルキル基:炭素数12と13の混合物、酸価:160〜185)、フォスファノールシリーズ(東邦化学工業(株)製)の中から、フォスファノールRB410(アルキル基:炭素数18、酸価:80〜90)、同RS−610(アルキル基:炭素数13、酸価:75〜90)、同RS−710(アルキル基:炭素数13、酸価:55〜75)等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独又は2種以上混合して使用してもよい。
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
また、前記有機アミンの全アミン価をX、前記リン酸エステル系界面活性剤の酸価をYとした場合、0.1≦Y/X≦7であることが好ましい。これは、上記範囲内であると、有機アミンと中和安定することで、前記塩基性染料と樹脂酸との造塩染料の安定性や、潤滑性を向上しやすく、より前記造塩染料の安定性を考慮すれば、0.1≦Y/X≦5が好ましく、さらに考慮すれば、0.1≦Y/X≦3が好ましく、最も好ましくは、0.1≦Y/X≦1である。
また、その他として、潤滑性を向上させるために、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミドや、陰イオン性界面活性剤および/または陽イオン性界面活性剤の造塩体を、安定剤として、脂肪酸を、粘度調整剤として、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤を、また、着色剤安定剤、可塑剤、キレート剤、水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
さらに、本発明のように筆記具用油性インキ組成物に新たに塩基性染料と樹脂酸との造塩染料を含有する場合に、インキ経時安定性を保つには、製造時や経時による吸湿等によって、油性インキ中に水を含有するため、pH値についても着目することが好ましい。前記筆記具用油性インキ組成物のインキ経時安定性を保つには、pH値が4.0〜10.0とすることが好ましい。これは、pH値が3.9以下だと、チップ本体内の金属イオンが溶出し易いため、前記造塩染料とで金属塩析出物が発生し易く、pH値が10.1以上だと、前記造塩染料のイオン結合が離れやすくなるため、インキ経時安定性や、色調に影響が出やすい傾向があるためである。さらに、よりインキ経時安定性を考慮すれば、pH値が5.0〜9.0が好ましい。
尚、本発明におけるpH値は、筆記具用油性インキ組成物の測定方法においては、油性インキを容器に採取し、イオン交換水を加えて、攪拌しながら加温し、加温後放冷し、蒸発した水分量を補充後、濾紙を用いて濾過する。その濾過したろ液の上層を用いて、pH測定は東亜ディーケーケー社製IM−40S型pHメーターを用いて、20℃にて測定した値を示すものである。
本発明の筆記具用油性インキ組成物のインキ粘度は、特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度は、10〜30000mPa・sにすることが好ましい。これは、インキ粘度が10mPa・s未満の場合では、インキ垂れ下がりを抑制しづらく、また、20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が30000mPa・sを越えると、潤滑性が劣りやすいためである。さらに、インキ垂れ下がりや書き味をより向上することを考慮すれば、前記インキ粘度は5000〜25000mPa・sがより好ましく、さらに、考慮すれば、10000〜20000mPa・sが好ましい。
ところで、ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量が、前記インキ組成物中の全樹脂の含有量に対して50%以上とし、前記インキ粘度は5000〜25000mPa・sとすることで、インキ垂れ下がり性能を格段に向上する効果があるため、好ましい。従来のように、チップ本体内にコイルスプリング等で、常時、ボールをチップ先端の内壁面に押圧し、ボールとチップ先端の微少な間隙を閉鎖することで、インキ垂れ下がりを抑制する構造とする必要がなく、インキ垂れ下がり抑制効果が得られるため、チップ本体内にコイルスプリング等を具備しなくてすむので、部品点数の低下に繋がり、出没式及び/又は低価格品に好適に用いることができる。
また、本発明に用いるボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、3〜20μmとするのが好ましい。これは、3μm未満であると、濃い筆跡や良好な書き味が得られづらくなり、20μmを越えると、インキ垂れ下がり性能に影響が出やすくなるためで、よりそのことを考慮すれば、5〜17μmとするのが好ましく、より考慮すれば、5〜12μmが好ましい。
また、本発明で用いるボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)については、0.1〜15nmとすること好ましい。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が15nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とび、線ムラなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。特に、前記ポリビニルブチラール樹脂の前記平均重合度は1500以下のものでは、前記算術平均粗さ(Ra)が0.1〜10nmのボール表面にインキが載りやすいためより好ましい。さらに、本発明で用いる酸性含金染料と芳香環を有するアミンとの造塩染料やポリビニルブチラール樹脂を含んでなるインキの載りやすさを考慮すれば、1〜9nmが好ましく、より好ましくは、2〜8nmである。なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
また、ボールに用いる材料は、特に限定されるものではないが、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボール、ステンレス鋼などの金属ボール、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、シリカ、ジルコニアなどのセラミックスボール、ルビーボールなどが挙げられる。書き味やボール座の摩耗、経時安定性を考慮してセラミックスボールとすることが好ましい。また、ボールの直径は、特に限定されないが、一般的には0.25mm〜2.0mm程度である。
また、ボ−ルペンチップの材料は、ステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABSなどの樹脂材が挙げられるが、書き味や切削等の加工性を考慮すれば洋白製のチップ本体が好ましく、ボール座の摩耗、経時安定性を考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
本発明で用いるインキ収容筒としては、耐薬品性、水分透過性、空気透過性等の観点から採用可能な材料に制限がある。その点、従来からポリプロピレンを材料として用いることが、好ましい。しかし、本発明で用いる塩基性染料と樹脂酸との造塩染料と、ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、ポリプロピレンのインキ収容筒と非常に親和性が強く、インキ収容筒内をインキが移動する際、インキが内壁に付着しやすく、インキ残量が分かりづらい。そのため、ポリプロピレンをインキ収容筒とする場合はそのインキ収容筒内壁をシリコーンで処理することが好ましい。これは、シリコーンをインキ収容筒内壁に塗布することで、収容筒材料であるポリプロピレンとインキとが直接接することなく、あくまでもシリコーンを中間に介在させた関係を維持し、インキが移動する際において収容筒内壁への付着防止することが可能ある。
シリコーンの材料としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチル水素シリコーン、アルキルアラルキルシリコーン、ポリエーテルシリコーン、高脂肪酸エステル脂肪酸シリコーンなどが挙げられ、その中でも、付着防止性が優れ、非反応性であるため、油性インキ成分に対しても安定性を考慮すれば、アルキルアラルキルシリコーンが好ましい。塗布の方法は押出成形時において内壁に同時に均一に塗布することが最も効果的である。
配合例1、2
次に塩基性染料と樹脂酸との造塩染料の作成方法を説明する。
まず、水、塩基性染料、樹脂酸を入れて、加温した後、ディスパー攪拌機を用いて溶解させた後濾紙を用い濾過を行って、濾紙上の残渣を乾燥させ造塩染料を得た。
配合例3〜5
次に塩基性染料と樹脂酸との造塩染料以外の造塩染料の作成方法を説明する。
表に示すように、塩基性染料、樹脂酸を変更した以外は、配合例1と同様な手順で配合例3〜5の造塩染料を得た。
次に、実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の筆記具用油性インキ組成物は、着色剤として造塩染料、顔料分散体、有機アミンとしてジメチルアルキルアミン、有機溶剤としてアルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ポリビニルブチラール樹脂、潤滑剤としてリン酸エステル系界面活性剤、曳糸性付与樹脂としてポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させて筆記具用油性インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ティー・エイ・インスツルメント株式会社製AR−G2(ステンレス製40mm2°ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度5sec−1にてインキ粘度を測定したところ、15000mPa・sであった。
また、pH値を測定したところ、pH=7.7であった。
また、実施例1で、前記有機アミンの全アミン価をX、前記リン酸エステル系界面活性剤の酸価をYとした場合、Y/X=0.28〜0.34の範囲であった。
実施例1
配合例1の造塩染料 15.0質量%
配合例2の造塩染料 5.0質量%
顔料分散体 7.0質量%
有機アミン(ジメチルアルキルアミン) 2.0質量%
ポリビニルブチラール樹脂
(エスレックBL−1、水酸基量:36mol%、平均重合度:300)15.0質量%
アルコール溶剤(ベンジルアルコール) 42.0質量%
グリコールエーテル溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル) 11.5質量%
潤滑剤(リン酸エステル系界面活性剤) 2.0質量%
曳糸性付与樹脂(ポリビニルピロリドン) 0.5質量%
実施例2〜15
表に示すように、インキ組成物の各成分とチップ仕様を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜15の筆記具用油性インキ組成物を得た。
また、実施例2〜15で、前記有機アミンの全アミン価をX、前記リン酸エステル系界面活性剤の酸価をYとした場合、Y/X=0.28〜0.39の範囲であった。
Figure 0006706107
Figure 0006706107
比較例1〜5
表に示すように、インキ組成物の各成分とチップ仕様を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、配合し、比較例1〜5の筆記具用油性インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
Figure 0006706107
試験及び評価
実施例1〜15及び比較例1〜5で作製した筆記具用油性インキ組成物を、アルキルアラルキルシリコーンでインキ収容筒(ポリプロピレン製)内壁に塗布したインキ収容筒の先端に、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)3nmのボール(φ0.7mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量:7μm)を装着するとともに、インキ収容筒内に、実施例1の油性ボールペン用インキ(0.3g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:レックスグリップ)に配設して、油性ボールペンを作製し筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
インキ経時試験:チップ本体内のインキを顕微鏡観察した。
色調の変色がなく、析出物がなく、良好のもの ・・・◎
色調の変色がないが、析出物が微少に発生したもの ・・・○
色調の変色があり、くすんだ色になったが、実用上問題のないもの ・・・△
色調の変色がひどい、または、析出物が発生し、筆跡カスレや筆記不良などの原因になるもの ・・・×
インキ垂れ下がり性能試験:30℃、85%RHの環境下にペン先下向きで7日放置し、チップ先端からのインキ漏れを確認した。
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかなもの ・・・○
やや重いもの ・・・△
重いもの ・・・×
高筆圧筆記試験:荷重400gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
ボール座の摩耗が5μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの ・・・○
ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの ・・・△
ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの ・・・×
耐光性試験:JIS P3201筆記用紙Aに筆記角度70°、筆記荷重150gの条件にて、筆記速度4.5m/minの速度で、らせん筆記試験を行い、1時間放置した後、キセノンフェードメーターX15F(スガ試験機株式会社製)を用いて、ブルースケールが3級退色するまで照射し、筆跡を観察した。
退色しない若しくは若干退色する ・・・◎
退色するが、実用上問題ないレベルのもの ・・・○
退色が目立ち、実用上問題になるレベルのもの ・・・×
実施例1〜15では、インキ経時試験、インキ垂れ下がり性能、書き味、高筆圧筆記試験ともに良好な性能が得られた。
実施例14、15については、酸性含金染料と芳香環を有するアミンとの造塩染料を用いたため、他の実施例よりも耐光性が優れた。
実施例16としては、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)7nmのボール(φ1.0mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ(ボールの縦軸方向の移動量:12μm)に変更し、実施例1の筆記具用油性インキ組成物を用いて、油性ボールペンを作製し、実施例1と同様な試験及び評価を行ったところ、実施例1と同等のレベルの性能評価となった。
比較例1〜3では、有機アミンを用いなかったため、析出物が発生し、筆跡カスレなどが発生し、インキ経時安定性が悪かった。さらに、潤滑性にも影響し、書き味、高筆圧筆記試験も劣ってしまった。
比較例4、5では、塩基性染料と樹脂酸との造塩染料以外の造塩染料を用いたところ、造塩染料が、溶解安定しなかった。
表には記載していないが、各実施例及び比較例の筆記具用油性インキ組成物は、筆記試験を行った時に、インキの消費にともないインキがインキ収容筒を移動するが、その際、アルキルアラルキルシリコーンでインキ収容筒(ポリプロピレン製)内壁に塗布しているため、インキがインキ収容筒の内壁に付着しないので、インキ残量が明確に確認できた。一方、実施例1の筆記具用油性インキ組成物を用いて、シリコーンでインキ収容筒(ポリプロピレン製)内壁に塗布しないボールペンで筆記試験を行ったところ、インキがインキ収容筒の内壁に付着してしまい、インキ残量が分かりにくく、シリコーンを塗布することが好ましい。
本発明で、書き味を向上するために、20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度を、5000mPa・s以下の範囲に設定する場合には、インキの垂れ下がりを防止するため、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
本発明では、ボールの表面及び/又は当接面の表面に潤滑被膜層を設けることで、潤滑被膜層と前記したインキ層による流体潤滑又は混合潤滑との相乗効果によって、ボールとチップ内壁との接触抵抗を著しく軽減しやすく、当接面の耐摩耗性及び筆感を著しく向上しやすくなるため、好ましい。
尚、本発明に用いる潤滑被膜層としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、二硫化タングステン(WS2)、二硫化モリブデン(MoS2)やグラファイト、四フッ化エチレン(PTFE)等の含フッ素高分子、シリコーン樹脂等、従来から知られている固体潤滑剤などを適宜用いることができる。また、潤滑被膜層を被覆する方法は、特に制限されず、真空蒸着、イオン蒸着、物理的蒸着、化学的蒸着、真空アーク蒸着などが挙げられ、直接又は前記した潤滑剤を含有した被膜層であってもよい。特に前記した潤滑剤の中でも、耐摩耗性及び潤滑性を考慮してダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いることが最も好ましい。
本発明は油性ボールペンとして利用でき、さらに詳細としては、該筆記具用油性インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の水性ボールペンとして広く利用することができる。

Claims (9)

  1. 塩基性染料と樹脂酸との造塩染料、有機溶剤、有機アミンを含んでなり、前記樹脂酸が、変性ロジン、アルキルフェノール系樹脂であることを特徴とする筆記具用油性インキ組成物。
  2. 前記塩基性染料が、トリアリールメタン骨格塩基性染料またはキサンテン骨格塩基性染料であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  3. 前記有機アミンが、2級アミンまたは3級アミンであることを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  4. 前記筆記具用油性インキ組成物に、顔料を更に含んでなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  5. 前記筆記具用油性インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂を含んでなり、前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量が、前記筆記具用油性インキ組成物中の全樹脂の含有量に対して50%以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  6. 前記筆記具用油性インキ組成物に、リン酸エステル系界面活性剤を更に含んでなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  7. 20℃、剪断速度5sec−1におけるインキ粘度が、10〜30000mPa・sであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
  8. インキ収容筒内に請求項1ないしのいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容したことを特徴とする油性ボールペンレフィル。
  9. 請求項に記載の油性ボールペンレフィルを軸筒内に配設し、軸筒先端部から出没可能としたことを特徴とする出没式油性ボールペン。
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