JP7354873B2 - ボールペンチップ - Google Patents
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Description
近年は運筆に力を要しないような軽い書き味のボールペンが好まれる傾向にあることから、インキの粘度を低く設定したり、界面活性剤を添加するなどして結果的に浸透性が高いインキとなることにより、ボールホルダー先端開口部の縁と筆記ボールとの微細な隙間からインキが滲み出したり洩れたりすることを抑制するために、筆記ボールの後方に配置したコイルスプリングなどの弾撥部材によって、筆記ボールを前方付勢して、開口部の内縁に筆記ボールを押し付けた構造のものも知られている。
そして、筆記ボールを押圧する位置や力の安定性を考慮して、筆記ボールの後方に、この筆記ボールに当接して、コイルスプリング等の弾撥部材で前方に付勢した中間ボールを配置し、常にインキ通路孔の軸心方向の中心近傍で筆記ボールを押圧できるようにしたものが知られており、更に、中間ボールと筆記ボールとの接触による摩擦抵抗を低減する為に中間ボールの表面状態を鏡面にしたものが開示されている。(特許文献1)。
筆記ボールの材質としては、タングステンを主成分とした超硬合金や、ステンレス、アルミ、スチール等の金属や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂といった樹脂材料や、セラミックス、ガラスなどを研磨して製造することができるが、中間ボールとの摺動性や耐磨耗性、またインキによる耐食性を考慮するとステンレス、超硬合金やセラミックスが好ましい。
材質としては、ステンレス鋼や、黄銅、洋白などの銅合金が使用でき、筆記時の耐磨耗性やインキの耐食性を考慮するとステンレス鋼が好ましく、一般的にはオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430が用いられる。また、良好な加工性を有しつつボールホルダー先端部の打痕や摩耗などの変形等を抑制する為にビッカース硬さ(HV)を150以上300以下とすることが好ましい。また、自然環境への悪影響を低減させる目的で、鉛を含まないものとすることが好ましい。鉛は良好な加工性を付与する成分のため、鉛を含まないと加工性が低下する問題があるため、良好な加工性を維持する目的で、鉛の変わりにビスマス(元素記号:Bi)を用いることが好ましい。その他、ポリオキシメチレン樹脂などの耐摩耗性の高い樹脂製のものとすることもでき、その他の合成樹脂などの従来公知の材質も使用できる。
筆記ボールの直径と中間ボールの直径がおよそ近いもの(80%以上120%以下)であれば、筆記ボールと中間ボールの回転角度をおよそ同じにできるので、筆記ボールが回転した時にボールホルダーと接触により生じる抵抗と、中間ボールが回転した時にボールホルダーと接触により生じる抵抗を同程度とすることができる。これによりボールホルダー内における筆記ボールと中間ボールの回転し易さを同等とできるので、筆記ボールの回転をより確実に中間ボールに伝達することができる。
材質としては、炭化タングステンを主成分とした超硬合金や、ステンレス、アルミ、スチール等の金属や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂といった樹脂材料や、セラミックス、ガラスなどを研磨して製造することができるが、筆記ボールとの摺動性や耐磨耗性、またインキによる耐食性を考慮すると超硬合金やセラミックスといった金属製が好ましい。
中間ボールも筆記ボールも任意の方向に回転するため、ある特定の直線方向の表面の粗さを測定する算術平均粗さ(Ra)より、面で表面の粗さを測定する算術平均高さ(Sa)を特定することで本発明の効果を確実に奏することができる。
中間ボールと当接するコイルスプリングの端部は、コイルスプリングの線材を先端からコイル部の軸心方向に直線状に延出させた直状部としたものでもよいが、圧縮方向の荷重をコイル部の全体で受け、中間ボールに掛かる押圧力を安定させることを考慮すると隣り合った巻き部が密接した密着コイル部を形成していることが好ましく、その密接した巻き数は2巻き以上が好ましい。そして、端部の密着コイル部の内周径は中間ボールの直径よりも小さく形成することで中間ボールと当接しているが、内周径が大きいほど中間ボールをより大きな周径で押圧することができるので筆記ボールを安定して軸心方向に押圧できる。
また、密着コイル部は、コイルスプリングの押圧力や全長の調整、密着コイル部の内側と外側でインキの流れを遮断する事で実質的にインキ通路孔の流路を狭め、筆記ボールへ供給するインキの量を制御するといった目的でコイルスプリングの端部だけでなくコイル部の途中に形成することもできる。
そして、コイルスプリングの前後端の形状を同形状とすることで、製造工程上コイルスプリングをボールホルダー内に挿入する際に挿入方向を決める必要がない為、工程の簡略化が可能であり、製造コスト等の面から有効である。
図1は、本発明のボールペンチップの一例を示す縦断面図である。
ボールペンチップ1は、筆記部材としての筆記ボール2を、貫通孔であるインキ通路孔の先端開口部より一部突出した状態でボールホルダー3内にて回転自在に抱持しており、また、筆記ボール2の後方には、この筆記ボール2と接触して中間ボール4が回転可能に配置され、更に、中間ボール4の後方には、弾撥部材であるコイルスプリング5が中間ボール4に接して配置されている。コイルスプリング5は、ボールホルダー3の後方から挿入され、全長を圧縮するように押し込まれて抜け止めされており、その圧縮されたことによる復元力によって中間ボール4を前方に付勢し、この中間ボール4を介して筆記ボール2を前方に付勢している。コイルスプリング5の後端部は、ボールホルダー3の後部内壁面に等間隔に周状に4箇所設けられた凸部6によって受け止められボールホルダー3の内部から抜け止めされている。この凸部6は、ブローチ加工によってボールホルダー3の後端の内壁面を抉り切削片として形成したものである。ブローチ加工の他に、ボールホルダー3の側壁部をポンチ加工等によって凹ませて内壁面に凸部6を生じさせる方法で形成しても良いし、別部材を使用するなど、コイルスプリング5の抜け止め方法や形状は適宜選択できる。
また、筆記ボール2の材質は、タングステンカーバイドを主成分として結合相にコバルトやニッケル、クロム等を使用した超硬合金((株)ツバキナカシマ製、商品名:PB11)を使用した。
更に、中間ボール4の材質は、タングステンカーバイドを主成分として結合相にコバルトやニッケル、クロム等を使用した超硬合金((株)Heraeus製、商品名:H3)を使用した。
コイルスプリング5の材質は、SUS304のステンレス鋼線にニッケルメッキを施したものを使用し、大径の大径コイル部5aと前後端に小径の小径コイル部5bを形成しており、小径コイル部5bの端部を密着コイル部5cとしてある。また、コイルスプリング5の前後端は、共に小径コイル部5bと密着コイル部5cを形成し同形状として、組み立ての際に方向性による不良が発生することを防止している。
先端開口部8の内縁は、中間ボール4を介してコイルスプリング5によって筆記ボール2が押圧され周接した際の密閉性を向上させる為に、かしめ加工を行う際に筆記ボール2に押し当てる事で筆記ボール2の曲面を転写しつつ鏡面化している。また、内方突出部9に切削により複数本、放射状に等間隔のインキ通溝13が形成されている。このインキ通溝13は、筆記ボール抱持部10へのインキ供給を確実なものとする為に後孔12へ貫通させているが、後孔12に貫通させずに中心孔11の途中で留めてもよい。そして、内方突出部9に筆記ボール2を押し付けることによって凹状のボール受け座部14が形成されており、ボール受け座部14は、筆記時に紙面などに当接して筆記ボール2が後退した時に筆記ボール2の位置を安定させ、不要な振動等の少ない円滑な回転を保障せんとするものであり、筆記ボール2とボール受け座部14とが略面状に接触するような形状としている。また、前記インキ通溝13は、内方突出部9に形成されているボール受け座部14より外側に開口部を有し、筆記ボール抱持部10へのインキ供給を確保しているものである。尚、本実施例では、インキ通溝13は周状に等間隔に5箇所形成しているが、その大きさや数は特に限定されるものではない。
また、筆記ボール2の直径は、0.8(mm)及び1.0(mm)とし、いずれの直径においても表面の算術平均高さ(Sa)は、4(nm)とした。
中間ボール4及び筆記ボール2の算術平均高さ(Sa)は、あらかじめ素球をダイヤモンドパウダーを使用して研磨加工し、表面が鏡面である所定のボール径に加工した後、表面に化学処理を行い所定の算術平均高さ(Sa)になるように微細な凹凸を形成するものである。化学処理の方法は村上試薬と呼ばれる赤血塩のアルカリ溶液に浸漬してエッチング処理をするもので、溶液濃度や浸漬時間によって算術平均高さ(Sa)を調整したものである。
尚、筆記ボール2と中間ボール4の表面の算術平均高さ(Sa)は、走査型プローブ顕微鏡(AFM5100N;(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて、任意の20μm×20μmの範囲を3か所測定し、平均値から算出した。
前述の押圧荷重は、ボールペンチップ1を作製した後に、デジタルフォースゲージ(ZTA-5N;(株)イマダ製)を用いて、ボールペンチップ1の筆記ボール2が前方に押圧されボールホルダー3の先端開口部8に周接した状態から、筆記ボール2を軸心方向に0.025(mm)後方に移動させた状態の時の荷重を測定した。
ウォーターブラック#256L(黒色染料の14%水溶液、オリエント化学工業(株)
製) 35.0重量部
ウォーターイエロー#1(C.I.アシッドイエロー23、オリエント化学工業(株)
製) 1.2重量部
エチレングリコール 6.0重量部
グリセリン 8.0重量部
チオジグリコール 8.0重量部
サルコシネートOH(N-オレオイルサルコシン、日光ケミカルズ(株)製)
3.0重量部
ベンゾトリアゾール 0.5重量部
CWK(エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、オリエント化学工業(株)製)
1.0重量部
プロクセルGXL(1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンの20%ジプロピレングリコール溶液、アビシア(株)製) 0.2重量部
ハイドロキノンスルホン酸カリウム 0.3重量部
BC-5.5(ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB11.5、日光ケミカルズ(株)
製) 1.0重量部
AKP-20(微粒子アルミナ、平均粒子径0.5μm、住友化学工業(株)製)
0.1重量部
水酸化ナトリウム 0.3重量部
ケルザンAR(キサンタンガム、三晶(株)製) 0.4重量部
イオン交換水 35.0重量部
上記成分のうち、ケルザンARの全量を水5重量部に攪拌しながら加え1時間攪拌してケルザンAR水溶液を得た。次いで残りの成分を混合し1時間攪拌して均一に溶解した後ケルザンAR水溶液を加えて、更に2時間攪拌して粘度はELD型粘度計((株)トキメック製)にてST型ローターを用いて、温度25(℃)、剪断速度100(s-1)の条件にて測定し、200m(Pa・s)とした。
また、pH値は、コンパクトpHメーターB-212((株)堀場製作所製)を用いて測定し8.7の試験用の黒色インキを得た。
静・動摩擦測定機(Tribo-masterType TL201Sa;(株)トリニティーラボ製)を用い、試験用ボールペンリフィルの先端をJIS S 6039に規定される被筆記用紙に当て、ボールペンチップを被筆記用紙に押しつける力を100gf、被筆記用紙とボールペンチップとのなす角度を70°とし、被筆記用紙の移動速度を0.5cm/secの条件で、1.25cm移動させることによって筆記し、その際に被筆記用紙の移動によってボールペンリフィル本体が筆記の移動方向に掛かる荷重の大きさをロードセルにて感知し、それを筆記抵抗値として測定した。筆記抵抗値の測定は2.5秒間行い、その間に500個の測定データを得て、その内、書き初めを想定した筆記速度が0である測定開始直後から1.0秒までの間で得られた最初の200個のデータから、被筆記用紙の移動方向の筆記抵抗値の標準偏差を算出した。
尚、試験用ボールペンリフィルサンプルは各水準で5本ずつ準備し、各測定結果は5本の平均値を記載した。
○:書き初めから書き終わりまで筆跡の輪郭が真っ直ぐであり、直線度の高い筆跡が得られている。
△:書き初めから書き終わりまで間の輪郭の一部が波打っており、やや筆跡にブレが見られる。
×:書き初めから書き終わりまで間の輪郭の半分以上が波打っており、ブレが目立つ筆跡である。
試験1で用いた試験用ボールペンリフィルサンプルの各水準の5本の中からモニター1人につき1本ランダムで抜き取り、筆記用紙に「国会の年日」の文字を3回繰り返して筆記してもらい、各文字の書き初めに感じる筆記感を下記に記載する基準に基づいて3段階評価を実施した。尚、モニターは3人にて実施した。
○:書き初めが円滑であり、思った通りの文字が書ける
△:書き初めにやや抵抗感を感じるが、違和感無く文字が書ける
×:書き初めに抵抗感があり、思った通りの文字が書き難い
2 筆記ボール
3 ボールホルダー
4 中間ボール
5 コイルスプリング
5a 大径コイル部
5b 小径コイル部
5c 密着コイル部
6 凸部
7 チップホルダー
8 先端開口部
9 内方突出部
10 筆記ボール抱持部
11 中心孔
12 後孔
13 インキ通溝
14 ボール受け座部
Claims (1)
- 筆記ボールと、この筆記ボールを先端開口部より一部突出させて回転可能に抱持するボールホルダーと、筆記ボールと接触し回転可能な中間ボールとを備えるボールペンチップにおいて、前記中間ボールの表面の算術平均高さ(Sa)を6(nm)以上20(nm)以下としたボールペンチップ。
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