JP4756640B2 - ボールペンリフィル - Google Patents

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Description

本発明は、油性ボールペンのボールペンリフィルに関する。
従来の一般的なボールペンのボールペンチップは、筆記ボールを保持するホルダーに、該筆記ボールを収容するボールハウスが形成され、そのボールハウスの底面には筆記ボールの曲面が転写されたボール受座が形成されている。このボール受座は、筆記時に筆記ボールにかかる荷重を受ける部分であり、その形状によって筆記性が左右されることが知られている。また、ボールペンに搭載されるインクは水性インク、水性ゲルインク、油性インク等様々な性状があり、それらに応じてこのボール受座の適切な形状が決定される。
筆記ボールとボール受座との間には筆記時に常に摩擦が生じている。そして、通常、ホルダーの材料硬度は筆記ボールのそれより低いため摩擦により摩耗が生ずる。このため、ボールペンチップの耐久性に鑑みると筆記ボールとの接触面積はできるだけ大きくするのが望ましい。また、下記の特許文献1でも指摘されているように、筆記時に筆記ボールがホルダー長手方向の中心軸線からずれることで、筆跡にいわゆる「ボテ」が生じ、これを抑制するためにもボール受座の径を大きくすることは有効である。
一方、ボール受座を大きくすることで、筆記ボールがボール受座に嵌入する割合が大きくなる。そうすると、ボールハウス内で筆記ボールが閉める部分以外の体積(いわゆる「インク溜まり」)が小さくなることで、筆記に伴うインクの追従不足によるカスレという問題点が生ずる。この対策としてはボールハウス内径を大きくすることが考えられる。このようなカスレをボールハウス内径の調節により解決しようとする技術は下記の特許文献2に開示されている。
特開2005−212304号公報 特開平10−193863号公報
上述の通りボール受座を大きくすると筆記ボールとボール受座との接触面積が増え、筆記ボールがボール受座に張り付く現象が発生しやすい。この現象により、書き出しの時にボールが回転しにくくなり描線がかすれるという現象が起こりやすい。
このような問題は、特に油性ボールペンのようにインクの粘度が高い場合に顕著であり、さらに、ノック式ボールペンのように、キャップを設けないことで筆記先端は常に外気に曝されているようなものでは使用開始後比較的短時間でインク粘度が高くなりやすい。これを解消するにはインク溶媒の揮発性を低くすることも考えられるが、そうすると描線の乾燥性が悪くなるという問題が新たに生ずる。
そこで本発明は、粘度の高い油性インクを使用するボールペンリフィルにおいて、ボール受座径とボールハウス内径との適切なバランスを模索することで、インクの耐乾燥性を確保しつつ書き出しのカスレや筆記中のボテを発生しにくくすることを課題とする。
前記の課題を解決するために、本発明に係るボールペンリフィル10は、
(A)(a)円柱材を切削して形成されるホルダー40と、
(b)前記ホルダー40の一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部41と、
(c)前記テーパー部41の内周を切削して形成したボールハウス43と、
(d)前記ホルダー40の他端から前記ボールハウス43の近傍まで穿孔して形成したバック孔45と、
(e)前記ボールハウス43と前記バック孔45との間を貫通して形成した断面円形の孔であるインク孔46と、
(f)前記インク孔46の周囲に等配された複数箇所を前記ボールハウス43側から切削して該インク孔46に開放するように形成した溝であるチャンネル溝47と、
(g)前記ボールハウス43内に挿入される筆記ボール31と、
(h)前記ボールハウス43の底面44であって前記筆記ボール31をバック孔45方向へ押圧した際に該筆記ボール31の曲面が転写されたボール受座48と、
(i)前記テーパー部41の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部49と、
(j)前記バック孔45内部に挿入されるとともに先端部分が前記筆記ボール31を先端へ押圧する押圧棒33として形成されている押し荷重が0.01N以上かつ0.09N以下のスプリング32とを備えたボールペンチップ30と、
(B)粘度が500mPa・sec以上の油性インク12を収容した両端開放円筒状のインク収容管11と、
(C)前記インク収容管11と前記ボールペンチップ30とを連結する継手20と
を備えたボールペンリフィル10であって、
前記ボールハウス内径が前記筆記ボール径の101.5%以上かつ105.5%以下であり、
前記ボール受座径が前記筆記ボール径の85.0%以上かつ92.0%以下であることを特徴とする。
上述のように、本件発明に係るボールペンリフィル10は、「ボールペンチップ30」と、「インク収容管11」と、「継手20」から構成されている。
「ホルダー40」とは、ボールペンチップ30から「筆記ボール31」と「スプリング32」とを除いた本体部分をいい、ステンレス綱等の金属製円柱材を切削することにより形成される。このホルダー40の先端側を先細に切削した部分を「テーパー部41」という。なお、ホルダー40後端側については特に限定はないが、外径を減じるように切削して「継手20」に挿入される部分を形成することもできる。
「ボールハウス43」とは、テーパー部41の先端側から内周を切削して形成された空間をいい、この中に筆記ボール31が挿入される。
「バック孔45」とは、ホルダー40の後端からボールハウス43に達しない近傍までを切削した中心孔で、この中を「インク収容管11」に収容される油性インク12がボールハウス43まで誘導されることとなっている。
「インク孔46」とは、バック孔45とボールハウス43とを連結するバック孔45よりも小径な中心孔である。
「チャンネル溝47」とは、インク孔46周囲に複数等配された軸方向の溝である。前記バック孔45の先端まで誘導された油性インク12は、インク孔46からこのチャンネル溝47を経由して、ボールハウス43へ至ることとなる。
「筆記ボール31」とは、超硬ステンレス綱等の金属製球体であり、前記ボールハウス43に挿入される。ボールハウス43へ至った油性インク12は、筆記ボール31表面に付着して筆記面に転写されることになる。
「カシメ部49」とは、筆記ボール31を挿入した後のテーパー部41小口を内方にカシメ加工して内径を減じ、筆記ボール31の落下を防止する構造である。
「ボール受座48」とは、ボールハウス43に挿入された筆記ボール31を、いわゆる「タタキ加工」により後方に押圧して、ボールハウス43の底面44に筆記ボール31の曲面が転写されてできた凹曲面をいう。
「スプリング32」は、先端部分が真っ直ぐに伸びたコイルバネである。この真っ直ぐに伸びた部分が「押圧棒33」である。スプリング32のコイル部分はバック孔45内に位置するが、押圧棒33の部分はここからインク孔46を通ってボールハウス43へ至り筆記ボール31の後端に当接し、スプリング32の押し荷重によりこれを先端方向へ付勢押圧することとなっている。
「インク収容管11」とは、ポリプロピレン等の比較的硬度の低い合成樹脂製の管であり、内部に油性インク12を収容する。
「継手20」とは、インク収容管11の先端とホルダー40の後端とを連結する部品であり、合成樹脂、金属等により形成可能である。
本件発明で使用される油性インク12の粘度は500mPa・sec以上であり、さらには3,000mPa・sec以下であることが望ましい。ここで、油性インク12の粘度が500mPa・sec未満であるときには、描線の滲み等の不具合が生ずる。一方、3,000mPa・secを超えれば、いかに本件発明の数値範囲であっても筆記時のボテは避けられない。
本件発明におけるボールハウス内径は、筆記ボール径の101.5%以上かつ105.5%以下で、望ましくは102.5%〜104.5%である。ここで、ボールハウス内径が筆記ボール径の101.5%未満であるときには、インク流出量が少なくなる。一方、105.5%を超えるときには、逆にインク流出量が多すぎる。
本件発明におけるボール受座径は、筆記ボール径の85.0%以上かつ92.0%以下であり、望ましくは87.0%〜90.0%である。ここで、ボール受座径が筆記ボール径の85.0%未満であるときには、ホルダー40の摩耗が大きいとともに描線のボテが生じやすくなる。一方、92.0%を超えるときには、描線のカスレが生じやすくなる。
本件発明におけるスプリング32の押し荷重は、0.01N以上かつ0.09N以下であり、望ましくは0.03N〜0.07Nである。ここで、スプリング32の押し荷重が0.01N未満であるときには、筆記ボール31がボール受座48に張り付きやすくなり、書き出しの描線カスレが生じやすくなる。一方、0.09Nを超えるときには、筆記ボール31の回転抵抗が大きくなり紙面への引っかかりが生じやすく書き味を損なうこととなる。
以上の構成により、本件発明では、常に筆記ボール31とボール受座48とが密着しないようになり、ホルダー40の摩耗が抑えられてなおかつ書き出しのカスレも発生しにくくなる。また、これらの効果は、より筆記ボール31とボール受座径との接触面積が大きい直径0.7mm以上の比較的大径の筆記ボール31を備える場合により顕著となる。さらに、本件発明は、耐乾燥効果にも富むので、ノック式ボールペンのような、筆記先端が常に外気に曝されているような使用態様にも適することとなっている。
本発明は、上述のように構成されているので、以下に記す効果を奏する。
すなわち、粘度の高い油性インクを使用するボールペンリフィルにおいて、ボール受座径とボールハウス内径との適切なバランスをとることで、インクの耐乾燥性を確保しつつ書き出しのカスレや筆記中のボテが発生しにくくなっている。
以下、図面を参照しつつ、本発明の1の実施の形態を説明する。
本実施の形態に係るボールペンリフィル10は、図1の一部断面正面図に示すように、ボールペンチップ30と、継手20と、インク収容管11とから構成される。
インク収容管11は、ポリプロピレン製の管であり、その内部には油性インク12が充填される。
ボールペンチップ30は、図2の正面図に示すような外径を呈する。すなわち、ステンレス鋼製の円柱材のホルダー40の先端部分が先細に略円錐状に切削してテーパー部41として形成されるとともに、後端部分は外径を減じた被挿入部42として形成されている。さらにテーパー部41の内側に抱持されるボールの先端部がテーパー部41先端縁から露出するとともに、テーパー部41小口が内方に押圧されて縮径変形されたカシメ部49として形成されている。
ボールペンリフィル10の内部は、図3の一部断面正面図のように形成される。すなわち、テーパー部41の先端内周が切削されて、筆記ボール31を抱持するボールハウス43が形成されている。一方、ホルダー40の後端からは、テーパー部41の後端付近の位置までバック孔45が穿孔されている。さらに、バック孔45とボールハウス43とを連結するバック孔45より内径の小さいインク孔46が穿孔されている。また、ボールハウス43の底面44から、インク孔46の回りに放射状に等配されたチャンネル溝47が形成されている。
バック孔45の内部には、コイルバネにより形成されたスプリング32が挿入されている。スプリング32の先端は先端に向け真っ直ぐに伸びた押圧棒33として形成されている。
ボールペンチップ30を形成する際には、図4(A)の一部断面正面図に示すように、ボールハウス43に筆記ボール31を挿入してさらにカシメ部49が形成された後、筆記ボール31を後端方向に押圧するタタキ工程が施される。これにより、ボールハウス43の底面44に筆記ボール31の球面が転写されてボール受座48が形成される。本実施形態では、同図に示す筆記ボール径(φA)は0.7mm〜1.0mmであり、ボールハウス内径(φB)はφAの101.5%〜105.5%に切削され、さらにボール受座径(φC)はφAの85.0%〜92.0%に形成される。
また、スプリング32の押し荷重は0.01N〜0.09Nに調整されている。これにより筆記ボール31は押圧棒33により先端方向に付勢され、図4(B)に示すようにカシメ部49の内縁に押圧される。これにより、筆記ボール31とボール受座48との密着が解消される。
ABS樹脂製の継手20は、図1に示すように、その後端部の中心付近がインク収容管11先端内部に挿入されるとともに、周縁部が拡径してインク収容管11先端外周を覆っている。一方、継手20の先端部には、ホルダー40の被挿入部42が圧入される。さらに、継手20の内部空間の途中部分は径を減じた縮径部21となっており、その先端側には逆止ボール22が挿入され、さらにその先端側に落下防止片23が挿入されている。これにより、継手20は、ボールペンチップ30とインク収容管11とを連結しており、インク収容管11に収容された油性インク12は継手20を介してボールペンチップ30に至り、そこでバック孔45、インク孔46、さらにチャンネル溝47を通ってボールハウス43に至り、筆記ボール31表面に付着して筆記面に転写されることになる。
以下、本発明の実施例を、比較例との対比において説明する。
(1)実施例及び比較例
各実施例及び比較例に係るボールペンリフィル10として、前記発明を実施するための最良の形態で記載した形状の市販予定ボールペンリフィル(SXR−7(ボール径0.7mm)又はSXR−10(ボール径1.0mm)、インク色:黒、三菱鉛筆)を作製した。ただし、ボールペンチップ30の筆記ボール径、ボール受座径及びボールハウス内径、並びにスプリング32の押し荷重については後述の各実施例及び比較例に記載した通りとした。また、油性インク12のインク粘度については、上記ボールペンリフィルで使用されているインクの各成分を加減することにより、400mPa・sec、500mPa・sec、1,500mPa・sec、3,000mPa・sec及び3,500mPa・secに調整した。
(2)試験項目
下記の各試験はいずれも、各実施例及び比較例のボールペンリフィル10を市販予定ボールペン(SXN−210、三菱鉛筆)に装着したものを用いて実施した。
(2−1)試験1:インク流出量試験
JIS規格S6039に準拠した筆記試験機(ミニテック筆記試験機、三菱鉛筆)を用い、筆記速度4m/分、筆記角度70°、筆記加重1.96N及び筆記距離100mの筆記条件で、JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に螺旋筆記することにより筆記試験を行った。判定方法は、使用した筆記ボール径ごとに以下の基準に従い、100m筆記終了時におけるインク流出量(インク消費量)を、その描線の質に鑑みより適正な順に「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
(2−1−1)筆記ボール径0.7mmの場合
A:43mg超かつ48mg以下
B:41mg超かつ43mg以下又は48mg超かつ50mg以下
C:39mg超かつ41mg以下又は50mg超かつ52mg以下
D:39mg以下又は52mg超
(2−1−2)筆記ボール径1.0mmの場合
A:48mg超かつ53mg以下
B:46mg超かつ48mg以下又は53mg超かつ55mg以下
C:44mg超かつ46mg以下又は55mg超かつ57mg以下
D:44mg以下又は57mg超
(2−2)試験2:インク追従性試験
JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に、7〜10秒の間に55〜60mmの大きさの螺旋を25〜30個連続的に筆記することにより筆記試験を行った。筆記した描線中、カスレの長さがどのくらいであるかにつき、下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:1mm未満
B:1mm以上かつ3mm未満
C:3mm以上かつ5mm未満
D:5mm以上
(2−3)試験3:耐ボテ性能試験
前記(2−1)と同様の条件で筆記試験を実施し、筆記終了時に、ホルダー40に付着したインク塊(ボテ)の量を0(なし)、1(少ない)、2(やや多い)、3(多い)及び4(極めて多い)の5段階で点数化し、また、筆記面に付着したボテの量を同様に5段階で点数化した。そして、これらの点数の合計により、下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:0〜1点
B:2〜3点
C:4〜5点
D:6〜8点
(2−4)試験4:耐摩耗性試験
前記(2−1)と同様の条件(ただし筆記距離は1,000mとした。)で筆記試験を実施した。そして、筆記前後における筆記ボール31頂点とカシメ部49の先端縁との距離を測定してその差により下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:1μm未満
B:1μm以上2μm未満
C:2μm以上3μm未満
D:3μm以上
(2−5)試験5:初筆性能試験
前記(2−1)と同様の条件で筆記試験を実施した。そして、筆記開始時からのカスレ距離を測定し、その長さにより下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:1mm未満
B:1mm以上3mm未満
C:3mm以上5mm未満
D:5mm以上
(2−6)試験6:書き味試験
前記(2−2)と同様の条件で筆記試験を実施した。その際の書き味を下記の基準で官能評価した。
A:紙への引っかかり感がなく滑るように滑らかな書き味であった
B:紙への引っかかり感がなく滑らかな書き味であった
C:やや紙への引っかかり感があるものの概ね滑らかな書き味であった
D:紙への引っかかり感があり滑らかな書き味ではない
(3)ボール受座径の検討
筆記ボール径が0.7mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボールハウス内径を0.735mm(筆記ボール径比105.0%)及びスプリング32の押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、ボール受座径の適正な範囲を検討した。すなわち、ボール受座径を下記表1の通り0.580mm〜0.660mmにした場合において、各試験項目の評価は下記表1の通りであった。
Figure 0004756640
同様に、筆記ボール径が1.0mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボールハウス内径を1.045mm(筆記ボール径比104.5%)及びスプリング32の押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、ボール受座径の適正な範囲を検討した。すなわち、ボール受座径を下記表1の通り0.840mm〜0.930mmにした場合において、各試験項目の評価は下記表2の通りであった。
Figure 0004756640
上記の結果、いずれの筆記ボール径においても、ボール受座径が筆記ボール径比85.0%を下回る比較例1及び比較例3では試験3(耐ボテ性能)及び試験4(耐摩耗性)の結果が劣ることとなった。また、ボール受座径が筆記ボール径比92.0%を上回る比較例2及び比較例4では試験2(インク追従性)の結果が劣ることとなった。それに対し、ボール受座径が筆記ボール径比85.0%〜92.0%の範囲内である実施例1〜実施例4及び実施例5〜実施例8では悪くとも評価Cが見られたのみで、いずれの試験項目でも好評価が得られた。以上の検討より、ボール受座径の筆記ボール径比は、耐ボテ性能及び耐摩耗性の観点より85.0%以上、並びにインク追従性の観点より92.0%以下が好適である。
特に、実施例2及び実施例3並びに実施例6及び実施例7ではいずれの試験項目でも評価Aか評価Bが得られた。このことから、ボール受座径の筆記ボール径比は、87.0%以上90.0%以下がより望ましいことが判明した。
(4)ボールハウス内径の検討
筆記ボール径が0.7mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボール受座径を0.630mm(筆記ボール径比90.0%)及びスプリング32の押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、ボールハウス内径の適正な範囲を検討した。すなわち、ボールハウス内径を下記表3の通り0.705mm〜0.745mmにした場合において、各試験項目の評価は下記表3の通りであった。
Figure 0004756640
同様に、筆記ボール径が1.0mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボール受座径を0.900mm(筆記ボール径比90.0%)及びスプリング32の押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、ボールハウス内径の適正な範囲を検討した。すなわち、ボールハウス内径を下記表4の通り1.010mm〜1.060mmにした場合において、各試験項目の評価は下記表4の通りであった。
Figure 0004756640
上記の結果、いずれの筆記ボール径においても、ボールハウス内径が筆記ボール径比101.5%を下回る比較例5及び比較例7並びに105.5%を上回る比較例6及び比較例8では試験1(インク流出量)の結果が劣ることとなった。それに対し、ボールハウス内径が筆記ボール径比101.5%〜105.5%の範囲内である実施例9〜実施例12及び実施例13〜実施例16ではいずれの試験項目でも好評価が得られた。以上の検討より、ボールハウス内径の筆記ボール径比は、インク流出量の観点より101.5%以上105.5%以下が好適である。
特に、実施例10及び実施例11並びに実施例14及び実施例15では試験1の結果が評価Aとなった。このことから、ボールハウス内径の筆記ボール径比は、102.5%以上104.5%以下がより望ましいことが判明した。
(5)スプリング32押し荷重の検討
筆記ボール径が0.7mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボール受座径を0.610mm(筆記ボール径比87.1%)及びボールハウス内径を0.735mm(筆記ボール径比105.0%)に固定した条件下で、スプリング32押し荷重の適正な範囲を検討した。すなわち、スプリング32押し荷重を下記表5の通り0.00N〜0.10Nにした場合において、各試験項目の評価は下記表5の通りであった。
Figure 0004756640
同様に、筆記ボール径が1.0mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボール受座径を0.870mm(筆記ボール径比87.0%)及びボールハウス内径を1.045mm(筆記ボール径比104.5%)に固定した条件下で、スプリング32押し荷重の適正な範囲を検討した。すなわち、スプリング32押し荷重を下記表6の通り0.00N〜0.10Nにした場合において、各試験項目の評価は下記表6の通りであった。
Figure 0004756640
上記の結果、いずれの筆記ボール径においても、スプリング32押し荷重が0.01Nを下回る比較例9及び比較例11では試験5(初筆性能)の結果が劣ることとなった。また、スプリング32押し荷重が0.09Nを上回る比較例10及び比較例12では試験6(書き味)の結果が劣ることとなった。それに対し、スプリング32押し荷重が0.01N〜0.09Nの範囲内である実施例17〜実施例20及び実施例21〜実施例24では悪くとも評価Cが見られたのみで、いずれの試験項目でも好評価が得られた。以上の検討より、スプリング32押し荷重は、初筆性能の観点より0.01N以上、及び書き味の観点より0.09N以下が好適である。
特に、実施例18及び実施例19並びに実施例22及び実施例23ではいずれの試験項目でも評価Aか評価Bが得られた。このことから、スプリング32押し荷重は、0.03N以上0.07N以下がより望ましいことが判明した。
(6)インク粘度の検討
筆記ボール径が0.7mmの場合において、ボール受座径を0.610mm(筆記ボール径比87.1%)、ボールハウス内径を0.715mm(筆記ボール径比102.1%)及びスプリング32押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、インク粘度の低粘度側における適正な範囲を検討した。すなわち、インク粘度を下記表7の通り400〜3,000mPa・secにした場合において、各試験項目の評価は下記表7の通りであった。
Figure 0004756640
同様に、筆記ボール径が1.0mmの場合において、ボール受座径を0.870mm(筆記ボール径比87.0%)、ボールハウス内径を1.025mm(筆記ボール径比102.5%)及びスプリング32押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、インク粘度の低粘度側における適正な範囲を検討した。すなわち、インク粘度を下記表8の通り400〜3,000mPa・secにした場合において、各試験項目の評価は下記表8の通りであった。
Figure 0004756640
上記の結果、いずれの筆記ボール径においても、インク粘度が500mPa・secを下回る比較例13及び比較例14では試験1において、インク流出量が劣ることとなった。すなわち、描線の滲みが著しく、使用に耐えるものではなかった。
次に、筆記ボール径が0.7mmの場合において、ボール受座径を0.630mm(筆記ボール径比90.0%)、ボールハウス内径を0.715mm(筆記ボール径比102.1%)及びスプリング32押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、インク粘度の高粘度側における適正な範囲を検討した。すなわち、インク粘度を下記表9の通り500〜3,500mPa・secにした場合において、各試験項目の評価は下記表9の通りであった。
Figure 0004756640
同様に、筆記ボール径が1.0mmの場合において、ボール受座径を0.900mm(筆記ボール径比90.0%)、ボールハウス内径を1.025mm(筆記ボール径比102.5%)及びスプリング32押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、インク粘度の高粘度側における適正な範囲を検討した。すなわち、インク粘度を下記表10の通り500〜3,500mPa・secにした場合において、各試験項目の評価は下記表10の通りであった。
Figure 0004756640
上記の結果、いずれの筆記ボール径においても、インク粘度が3,000mPa・secを上回る比較例15及び比較例16では試験3において、耐ボテ性能が劣ることとなった。すなわち、ボテの発生が極めて多く、使用に耐えるものではなかった。
以上の検討を総合し、インク粘度は500mPa・sec以上3,000mPa・sec以下が好適であることが判明した。
本発明の1の実施の形態に係るボールペンリフィルを一部断面正面図で示したものである。 本発明の1の実施の形態に係るボールペンリフィルにおけるボールペンチップを正面図で示したものである。 本発明の1の実施の形態に係るボールペンリフィルにおけるボールペンチップを一部断面正面図で示したものである。 本発明の1の実施の形態に係るボールペンリフィルにおけるボールペンチップの(A)ボール受座形成の様子及び(B)押圧棒による押圧の様子を一部断面正面図で示したものである。
符号の説明
10 ボールペンリフィル 11 インク収容管 12 油性インク
20 継手 21 縮径部 22 逆止ボール
23 落下防止片
30 ボールペンチップ 31 筆記ボール 32 スプリング
33 押圧棒
40 ホルダー 41 テーパー部 42 被挿入部
43 ボールハウス 44 底面 45 バック孔
46 インク孔 47 チャンネル溝 48 ボール受座
49 カシメ部

Claims (3)

  1. (A)(a)円柱材を切削して形成されるホルダーと、
    (b)前記ホルダーの一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部と、
    (c)前記テーパー部の内周を切削して形成したボールハウスと、
    (d)前記ホルダーの他端から前記ボールハウスの近傍まで穿孔して形成したバック孔と、
    (e)前記ボールハウスと前記バック孔との間を貫通して形成した断面円形の孔であるインク孔と、
    (f)前記インク孔の周囲に等配された複数箇所を前記ボールハウス側から切削して該インク孔に開放するように形成した溝であるチャンネル溝と、
    (g)前記ボールハウス内に挿入される筆記ボールと、
    (h)前記ボールハウスの底面であって前記筆記ボールをバック孔方向へ押圧した際に該筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
    (i)前記テーパー部の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部と、
    (j)前記バック孔内部に挿入されるとともに先端部分が前記筆記ボールを先端へ押圧する押圧棒として形成されている押し荷重が0.01N以上かつ0.09N以下のスプリングとを備えたボールペンチップと、
    (B)粘度が500mPa・sec以上の油性インクを収容した両端開放円筒状のインク収容管と、
    (C)前記インク収容管と前記ボールペンチップとを連結する継手と
    を備えたボールペンリフィルであって、
    前記ボールハウス内径が前記筆記ボール径の101.5%以上かつ105.5%以下であり、
    前記ボール受座径が前記筆記ボール径の85.0%以上かつ92.0%以下であることを特徴とするボールペンリフィル。
  2. 前記筆記ボール径は0.7mm以上であることを特徴とする請求項1記載のボールペンリフィル。
  3. 前記油性インクの粘度は、3,000mPa・sec以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のボールペンリフィル。
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