JP2007190693A - ボールペンリフィル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ボールハウス43の底面44に筆記ボール31の曲面が転写されたボール受座48と、バック孔45内部に挿入され先端部分が筆記ボール31を先端へ押圧する押圧棒33として形成されている押し荷重が0.01N以上かつ0.09N以下のスプリング32とを備えたボールペンチップ30と、粘度が500mPa・sec以上の油性インク12を収容したインク収容管11と、インク収容管11とボールペンチップ30とを連結する継手20とを備えたボールペンリフィル10であって、ボールハウス内径が筆記ボール径の101.5%以上かつ105.5%以下であり、ボール受座径が筆記ボール径の85.0%以上かつ92.0%以下である。
【選択図】図4
Description
筆記ボールとボール受座との間には筆記時に常に摩擦が生じている。そして、通常、ホルダーの材料硬度は筆記ボールのそれより低いため摩擦により摩耗が生ずる。このため、ボールペンチップの耐久性に鑑みると筆記ボールとの接触面積はできるだけ大きくするのが望ましい。また、下記の特許文献1でも指摘されているように、筆記時に筆記ボールがホルダー長手方向の中心軸線からずれることで、筆跡にいわゆる「ボテ」が生じ、これを抑制するためにもボール受座の径を大きくすることは有効である。
このような問題は、特に油性ボールペンのようにインクの粘度が高い場合に顕著であり、さらに、ノック式ボールペンのように、キャップを設けないことで筆記先端は常に外気に曝されているようなものでは使用開始後比較的短時間でインク粘度が高くなりやすい。これを解消するにはインク溶媒の揮発性を低くすることも考えられるが、そうすると描線の乾燥性が悪くなるという問題が新たに生ずる。
(A)(a)円柱材を切削して形成されるホルダー40と、
(b)前記ホルダー40の一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部41と、
(c)前記テーパー部41の内周を切削して形成したボールハウス43と、
(d)前記ホルダー40の他端から前記ボールハウス43の近傍まで穿孔して形成したバック孔45と、
(e)前記ボールハウス43と前記バック孔45との間を貫通して形成した断面円形の孔であるインク孔46と、
(f)前記インク孔46の周囲に等配された複数箇所を前記ボールハウス43側から切削して該インク孔46に開放するように形成した溝であるチャンネル溝47と、
(g)前記ボールハウス43内に挿入される筆記ボール31と、
(h)前記ボールハウス43の底面44であって前記筆記ボール31をバック孔45方向へ押圧した際に該筆記ボール31の曲面が転写されたボール受座48と、
(i)前記テーパー部41の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部49と、
(j)前記バック孔45内部に挿入されるとともに先端部分が前記筆記ボール31を先端へ押圧する押圧棒33として形成されている押し荷重が0.01N以上かつ0.09N以下のスプリング32とを備えたボールペンチップ30と、
(B)粘度が500mPa・sec以上の油性インク12を収容した両端開放円筒状のインク収容管11と、
(C)前記インク収容管11と前記ボールペンチップ30とを連結する継手20と
を備えたボールペンリフィル10であって、
前記ボールハウス内径が前記筆記ボール径の101.5%以上かつ105.5%以下であり、
前記ボール受座径が前記筆記ボール径の85.0%以上かつ92.0%以下であることを特徴とする。
「ホルダー40」とは、ボールペンチップ30から「筆記ボール31」と「スプリング32」とを除いた本体部分をいい、ステンレス綱等の金属製円柱材を切削することにより形成される。このホルダー40の先端側を先細に切削した部分を「テーパー部41」という。なお、ホルダー40後端側については特に限定はないが、外径を減じるように切削して「継手20」に挿入される部分を形成することもできる。
「ボールハウス43」とは、テーパー部41の先端側から内周を切削して形成された空間をいい、この中に筆記ボール31が挿入される。
「インク孔46」とは、バック孔45とボールハウス43とを連結するバック孔45よりも小径な中心孔である。
「チャンネル溝47」とは、インク孔46周囲に複数等配された軸方向の溝である。前記バック孔45の先端まで誘導された油性インク12は、インク孔46からこのチャンネル溝47を経由して、ボールハウス43へ至ることとなる。
「カシメ部49」とは、筆記ボール31を挿入した後のテーパー部41小口を内方にカシメ加工して内径を減じ、筆記ボール31の落下を防止する構造である。
「ボール受座48」とは、ボールハウス43に挿入された筆記ボール31を、いわゆる「タタキ加工」により後方に押圧して、ボールハウス43の底面44に筆記ボール31の曲面が転写されてできた凹曲面をいう。
「インク収容管11」とは、ポリプロピレン等の比較的硬度の低い合成樹脂製の管であり、内部に油性インク12を収容する。
「継手20」とは、インク収容管11の先端とホルダー40の後端とを連結する部品であり、合成樹脂、金属等により形成可能である。
本件発明におけるボールハウス内径は、筆記ボール径の101.5%以上かつ105.5%以下で、望ましくは102.5%〜104.5%である。ここで、ボールハウス内径が筆記ボール径の101.5%未満であるときには、インク流出量が少なくなる。一方、105.5%を超えるときには、逆にインク流出量が多すぎる。
本件発明におけるスプリング32の押し荷重は、0.01N以上かつ0.09N以下であり、望ましくは0.03N〜0.07Nである。ここで、スプリング32の押し荷重が0.01N未満であるときには、筆記ボール31がボール受座48に張り付きやすくなり、書き出しの描線カスレが生じやすくなる。一方、0.09Nを超えるときには、筆記ボール31の回転抵抗が大きくなり紙面への引っかかりが生じやすく書き味を損なうこととなる。
すなわち、粘度の高い油性インクを使用するボールペンリフィルにおいて、ボール受座径とボールハウス内径との適切なバランスをとることで、インクの耐乾燥性を確保しつつ書き出しのカスレや筆記中のボテが発生しにくくなっている。
本実施の形態に係るボールペンリフィル10は、図1の一部断面正面図に示すように、ボールペンチップ30と、継手20と、インク収容管11とから構成される。
インク収容管11は、ポリプロピレン製の管であり、その内部には油性インク12が充填される。
ボールペンチップ30は、図2の正面図に示すような外径を呈する。すなわち、ステンレス鋼製の円柱材のホルダー40の先端部分が先細に略円錐状に切削してテーパー部41として形成されるとともに、後端部分は外径を減じた被挿入部42として形成されている。さらにテーパー部41の内側に抱持されるボールの先端部がテーパー部41先端縁から露出するとともに、テーパー部41小口が内方に押圧されて縮径変形されたカシメ部49として形成されている。
バック孔45の内部には、コイルバネにより形成されたスプリング32が挿入されている。スプリング32の先端は先端に向け真っ直ぐに伸びた押圧棒33として形成されている。
また、スプリング32の押し荷重は0.01N〜0.09Nに調整されている。これにより筆記ボール31は押圧棒33により先端方向に付勢され、図4(B)に示すようにカシメ部49の内縁に押圧される。これにより、筆記ボール31とボール受座48との密着が解消される。
(1)実施例及び比較例
各実施例及び比較例に係るボールペンリフィル10として、前記発明を実施するための最良の形態で記載した形状の市販予定ボールペンリフィル(SXR−7(ボール径0.7mm)又はSXR−10(ボール径1.0mm)、インク色:黒、三菱鉛筆)を作製した。ただし、ボールペンチップ30の筆記ボール径、ボール受座径及びボールハウス内径、並びにスプリング32の押し荷重については後述の各実施例及び比較例に記載した通りとした。また、油性インク12のインク粘度については、上記ボールペンリフィルで使用されているインクの各成分を加減することにより、400mPa・sec、500mPa・sec、1,500mPa・sec、3,000mPa・sec及び3,500mPa・secに調整した。
下記の各試験はいずれも、各実施例及び比較例のボールペンリフィル10を市販予定ボールペン(SXN−210、三菱鉛筆)に装着したものを用いて実施した。
(2−1)試験1:インク流出量試験
JIS規格S6039に準拠した筆記試験機(ミニテック筆記試験機、三菱鉛筆)を用い、筆記速度4m/分、筆記角度70°、筆記加重1.96N及び筆記距離100mの筆記条件で、JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に螺旋筆記することにより筆記試験を行った。判定方法は、使用した筆記ボール径ごとに以下の基準に従い、100m筆記終了時におけるインク流出量(インク消費量)を、その描線の質に鑑みより適正な順に「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
A:43mg超かつ48mg以下
B:41mg超かつ43mg以下又は48mg超かつ50mg以下
C:39mg超かつ41mg以下又は50mg超かつ52mg以下
D:39mg以下又は52mg超
(2−1−2)筆記ボール径1.0mmの場合
A:48mg超かつ53mg以下
B:46mg超かつ48mg以下又は53mg超かつ55mg以下
C:44mg超かつ46mg以下又は55mg超かつ57mg以下
D:44mg以下又は57mg超
(2−2)試験2:インク追従性試験
JIS規格P3201に準拠した筆記試験紙上に、7〜10秒の間に55〜60mmの大きさの螺旋を25〜30個連続的に筆記することにより筆記試験を行った。筆記した描線中、カスレの長さがどのくらいであるかにつき、下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
B:1mm以上かつ3mm未満
C:3mm以上かつ5mm未満
D:5mm以上
(2−3)試験3:耐ボテ性能試験
前記(2−1)と同様の条件で筆記試験を実施し、筆記終了時に、ホルダー40に付着したインク塊(ボテ)の量を0(なし)、1(少ない)、2(やや多い)、3(多い)及び4(極めて多い)の5段階で点数化し、また、筆記面に付着したボテの量を同様に5段階で点数化した。そして、これらの点数の合計により、下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
B:2〜3点
C:4〜5点
D:6〜8点
(2−4)試験4:耐摩耗性試験
前記(2−1)と同様の条件(ただし筆記距離は1,000mとした。)で筆記試験を実施した。そして、筆記前後における筆記ボール31頂点とカシメ部49の先端縁との距離を測定してその差により下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
B:1μm以上2μm未満
C:2μm以上3μm未満
D:3μm以上
(2−5)試験5:初筆性能試験
前記(2−1)と同様の条件で筆記試験を実施した。そして、筆記開始時からのカスレ距離を測定し、その長さにより下記の基準に従い「A」、「B」、「C」及び「D」とした。
B:1mm以上3mm未満
C:3mm以上5mm未満
D:5mm以上
(2−6)試験6:書き味試験
前記(2−2)と同様の条件で筆記試験を実施した。その際の書き味を下記の基準で官能評価した。
A:紙への引っかかり感がなく滑るように滑らかな書き味であった
B:紙への引っかかり感がなく滑らかな書き味であった
C:やや紙への引っかかり感があるものの概ね滑らかな書き味であった
D:紙への引っかかり感があり滑らかな書き味ではない
(3)ボール受座径の検討
筆記ボール径が0.7mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボールハウス内径を0.735mm(筆記ボール径比105.0%)及びスプリング32の押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、ボール受座径の適正な範囲を検討した。すなわち、ボール受座径を下記表1の通り0.580mm〜0.660mmにした場合において、各試験項目の評価は下記表1の通りであった。
(4)ボールハウス内径の検討
筆記ボール径が0.7mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボール受座径を0.630mm(筆記ボール径比90.0%)及びスプリング32の押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、ボールハウス内径の適正な範囲を検討した。すなわち、ボールハウス内径を下記表3の通り0.705mm〜0.745mmにした場合において、各試験項目の評価は下記表3の通りであった。
(5)スプリング32押し荷重の検討
筆記ボール径が0.7mmの場合において、インク粘度を500mPa・sec、ボール受座径を0.610mm(筆記ボール径比87.1%)及びボールハウス内径を0.735mm(筆記ボール径比105.0%)に固定した条件下で、スプリング32押し荷重の適正な範囲を検討した。すなわち、スプリング32押し荷重を下記表5の通り0.00N〜0.10Nにした場合において、各試験項目の評価は下記表5の通りであった。
(6)インク粘度の検討
筆記ボール径が0.7mmの場合において、ボール受座径を0.610mm(筆記ボール径比87.1%)、ボールハウス内径を0.715mm(筆記ボール径比102.1%)及びスプリング32押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、インク粘度の低粘度側における適正な範囲を検討した。すなわち、インク粘度を下記表7の通り400〜3,000mPa・secにした場合において、各試験項目の評価は下記表7の通りであった。
次に、筆記ボール径が0.7mmの場合において、ボール受座径を0.630mm(筆記ボール径比90.0%)、ボールハウス内径を0.715mm(筆記ボール径比102.1%)及びスプリング32押し荷重を0.03Nに固定した条件下で、インク粘度の高粘度側における適正な範囲を検討した。すなわち、インク粘度を下記表9の通り500〜3,500mPa・secにした場合において、各試験項目の評価は下記表9の通りであった。
20 継手 21 縮径部 22 逆止ボール
23 落下防止片
30 ボールペンチップ 31 筆記ボール 32 スプリング
33 押圧棒
40 ホルダー 41 テーパー部 42 被挿入部
43 ボールハウス 44 底面 45 バック孔
46 インク孔 47 チャンネル溝 48 ボール受座
49 カシメ部
Claims (3)
- (A)(a)円柱材を切削して形成されるホルダーと、
(b)前記ホルダーの一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部と、
(c)前記テーパー部の内周を切削して形成したボールハウスと、
(d)前記ホルダーの他端から前記ボールハウスの近傍まで穿孔して形成したバック孔と、
(e)前記ボールハウスと前記バック孔との間を貫通して形成した断面円形の孔であるインク孔と、
(f)前記インク孔の周囲に等配された複数箇所を前記ボールハウス側から切削して該インク孔に開放するように形成した溝であるチャンネル溝と、
(g)前記ボールハウス内に挿入される筆記ボールと、
(h)前記ボールハウスの底面であって前記筆記ボールをバック孔方向へ押圧した際に該筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
(i)前記テーパー部の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部と、
(j)前記バック孔内部に挿入されるとともに先端部分が前記筆記ボールを先端へ押圧する押圧棒として形成されている押し荷重が0.01N以上かつ0.09N以下のスプリングとを備えたボールペンチップと、
(B)粘度が500mPa・sec以上の油性インクを収容した両端開放円筒状のインク収容管と、
(C)前記インク収容管と前記ボールペンチップとを連結する継手と
を備えたボールペンリフィルであって、
前記ボールハウス内径が前記筆記ボール径の101.5%以上かつ105.5%以下であり、
前記ボール受座径が前記筆記ボール径の85.0%以上かつ92.0%以下であることを特徴とするボールペンリフィル。 - 前記筆記ボール径は0.7mm以上であることを特徴とする請求項1記載のボールペンリフィル。
- 前記油性インクの粘度は、3,000mPa・sec以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のボールペンリフィル。
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