JP4712983B2 - ボールペンチップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールペンチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ボールペンチップは、ステンレス鋼、黄銅、アルミニウム、樹脂等の様々な材料を用いて形成されている。その中でもステンレス鋼は、耐摩耗性、耐錆性、耐蝕性に優れているので、ボールペンチップとして数多く用いられている。また、より優れた耐摩耗性、耐錆性、耐蝕性を有するボールペンチップを得るために、各メーカーより、クロムの含有量やチタンの含有量等に係るステンレス鋼線材の配合成分や、ボール座形状等に係るボールペンチップの形状について数多く提案されている。また、ボールが当接するボール座の耐摩耗性を考慮した場合、チップ本体のボール座の硬度すなわちチップ本体を切削加工により形成するための線材の硬度は高い方が良いことは知られている。
【0003】
また、ボールペンチップに用いるステンレス鋼線材の外径は、一般的にφ2.0〜φ3.0mmであるのに対し、ボールの径は、φ0.3〜φ1.6mmと極めて小さいものである。チップ先端部は、筆記時に筆記先端部が目視可能なように、チップ先端縁に向って縮径したテーパー状に加工し、チップ先端縁部をかしめて落下等によりボールが容易に脱落しないようにしている。
【0004】
チップ先端縁部をかしめしることにより、チップ先端縁部とボールとに僅かな隙間が形成されるが、該隙間によって、インキの粘度によって異なるがインキ流出量が決まったり、またチップ先端縁部のかしめ角度やかしめ量により筆記時のチップ先端縁部の紙当たり現象が左右される等、チップ先端縁部のかしめ角度は筆跡や筆感に大きく関係してくるので、かしめ加工においては特に注意を払っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ボールペンチップ性能としてボールが当接するボール抱持室のボール座の耐摩耗性を特に考慮した場合、重要となるのは線材の硬度であり、硬度が高いほど耐摩耗性に優れている。しかし、その反面、硬度が高くなるほど切削加工やかしめ加工等の加工性が悪くなり、硬度によって加工条件は大きく異なってくる。
【0006】
こうした事を鑑みて、従来は線材の硬度がビッカース硬度で280Hv近辺の値のステンレス鋼線材を用いて製造していた。
【0007】
しかし、前記した底壁の摩耗やインキ出性能にバラツキがでているのが現実であった。そこで、本発明者は、線材の硬度について検討したところ、従来のチップ本体に用いるステンレス鋼線材は、線材の硬度が、中央部の硬度に対して表層に向って硬度が高くなっており、中央部の硬度値と表層部の硬度値の平均値を線材の硬度としていた。さらに中央部の硬度と表層の硬度との差は、ビッカース硬度で約20Hvもあり、かつ、ステンレス鋼線材などの比較的硬度の高い材料は、ビッカース硬さ試験や微少硬さ試験により測定を行うが、ビッカース硬さ試験や微少硬さ試験はその性質上、誤差が大きくでてしまう傾向にあり(このことは、日本規格協会の1998年のJISハンドブック鉄鋼1(151ページ)において、測定結果の精度に「現状では、総合不確かさは、測定値の10%に近いと思われる。」と記載されている。)、中央部の硬度と表層の硬度との差が、現実にはビッカース硬度で約50Hv近く相違している可能性があることが判った。
【0008】
そのために、ステンレス鋼線材の硬度が平均値で約280Hv近辺であっても、表層側の硬度が高く中央部の硬度が低いものは、表層側の加工条件は中央部の加工に比べ加工条件が厳しくなる。また一方、中央部の硬度がかなり低いものも出てくるため、底壁が摩耗し易くなってしまったり、放射状溝やボール座を形成する際に、設定した溝幅やボール座より大きく形成されていた。
【0009】
また、耐摩耗性を考慮して形成されるボール座は、ボール径が大きくなるに従ってその面積も大きくなってくるが、特にφ1.0mm以上のボール径が大きい場合には、前記したように中央部の硬度に対して表層に向って硬度が高くなると、ボール座において中央部側(硬度が低い)の摩耗量が多くなる偏減り現象を生じる可能性がある。
【0010】
ボールペンチップの加工として切削や曲げ等の加工があり、ボールペンチップのとしての諸性能が満足する用に加工するには加工寸法精度が重要であり、加工条件にあった加工ツールや加工方法を決定する。現状では、生産数やコスト、加工ツールの耐久性を考慮し、320Hv以下のステンレス鋼線材を選択している。
【0011】
本発明の目的は、加工によるバラツキがなく、ボールが当接するボール座の耐摩耗性がよく、偏減り現象を起こすことがなく、ボールが容易に脱落せず、インキ出等のボールペンチップとしての諸性能が良いボールペンチップを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ボールペンチップにおいて、ボールを挿入するためのボール抱持室や該ボール抱持室の底壁にインキ流通孔と該インキ流通孔に連通する放射状に延びた放射状溝を形成するステンレス鋼線材製のチップ本体が、外径がφ2.0〜φ3.0mm、横断面上におけるビッカース硬度が280Hv〜320Hvで、中央部と表層部の相違での硬度差がビッカース硬度で10Hv以下であるステンレス鋼線材であり、前記チップ本体に、前記ボール抱持室、インキ流通孔、放射状溝を形成したことを特徴とするボールペンチップである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。ボールペンチップ1は、次のように製造する。後述するようなビッカース硬度を有するφ2.3mmのステンレス鋼線材を、先ず、チップ先端部7をチップ先端縁8に向って徐々に縮径するテーパー状に切削加工し、次に線材の中央部にインキ流通孔3、ボール抱持室2を順次、切削加工する。その後、前記ボール抱持室2により形成された底壁4に、放射状溝5を形成し、底壁4にボール9を載置した状態で、チップ先端縁側からボールをハンマーリングすることによりボールと同形のボール座6を設け、ボール抱持室2内にボールを、ボール9の一部がチップ先端縁8より突出させ、チップ先端縁8を内方にかしめ加工して回転自在に抱持している。
【0014】
前記ステンレス鋼線材のビッカース硬度は、ステンレス鋼線材の横断面を鏡面に仕上げ、株式会社 明石製作所社製のマイクロビッカース式硬さ試験機を用いて、図2に示す測定箇所(中心=C、中心から0.6mmの位置=B1〜B4、表層から0.2mmの位置=A1〜A4)を5本(資料番号1〜5)測定した。その値を表2に示す。(荷重:500gf、時間15s)
【0015】
【表1】
【0016】
同様の条件で、表層の硬度が約300Hvである従来のボールペンチップに用いられていたステンレス鋼線材F(資料番号6〜10)、G(資料番号11〜15)を5本測定した結果を表2、表3に示す。
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
表1、2、3によって得られた結果から、中心=C、中心から0.6mmの位置=A1〜A4、表層から0.2mmの位置=B1〜B4の硬度分布(平均値)を表4に示す。
【0020】
【表4】
【0021】
表4で明らかなように、従来のステンレス鋼線材は中央部の硬度に対し、表層側の硬度が高くなっており、硬度差が約20Hvあることが判る。
【0022】
【発明の効果】
本発明のボールペンチップは、加工によるバラツキがなく、ボールが当接するボール座の耐摩耗性がよく、偏減り現象を起こすことがなく、ボールが容易に脱落せず、インキ出等のボールペンチップとしての諸性能が良いボールペンチップを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボールペンチップの要部縦断面図である。
【図2】図1に用いたステンレス鋼線材における横断面図である。
【符号の説明】
1 ボールペンチップ
2 ボール抱持室
3 インキ流通孔
4 底壁
5 インキ流通溝
6 ボール座
7 チップ先端部
8 チップ先端縁
9 ボール
Claims (1)
- ボールペンチップにおいて、ボールを挿入するためのボール抱持室や該ボール抱持室の底壁にインキ流通孔と該インキ流通孔に連通する放射状に延びた放射状溝を形成するステンレス鋼線材製のチップ本体が、外径がφ2.0〜φ3.0mm、横断面上におけるビッカース硬度が280Hv〜320Hvで、中央部と表層部の相違での硬度差がビッカース硬度で10Hv以下であるステンレス鋼線材であり、前記チップ本体に、前記ボール抱持室、インキ流通孔、放射状溝を形成したことを特徴とするボールペンチップ。
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JP2001044703A JP4712983B2 (ja) | 2001-02-21 | 2001-02-21 | ボールペンチップ |
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- 2001-02-21 JP JP2001044703A patent/JP4712983B2/ja not_active Expired - Lifetime
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