JP4665342B2 - ボールペンまたは塗布具のチップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールを筆記媒体とするボールペンまたは塗布具のチップに関し、特に、後穴から中心孔を通るストレート部分を有するスプリングの、そのストレート部分の先端でボールをチップ先端の内縁に押圧付勢するようなしたボールペンまたは塗布具のチップの、先端内縁の密閉性向上に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、チップの後穴から中心孔を通るストレート部分を有するスプリングの、そのストレート部分の先端でボールをチップ先端の内縁に押圧付勢し、チップの先端内縁を密閉するようなしたボールペンまたは塗布具のチップが知られている。
【0003】
添付図5に示すように、前記従来のチップは、後穴にスプリングが配設されているが、ボールへのインキ供給性を考慮してスプリングのコイル部分外径は後穴内径に対して隙間を有する小さい径になっている。また、そのスプリングのストレート部分の線径も中心孔の内径に対してかなりの隙間を有する小径のものが選択されている。これにより、前記従来の技術のものは、スプリングのコイル部分外周がチップの後穴の内周壁に当接し、それにより、スプリングのストレート部分が中心孔内周の一方に倒れ込んでいるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
スプリングのストレート部分の先端が中心孔の内周壁に当接した状態でボールが上方付勢されている場合は、筆記時のボールの回転により、スプリングのストレート部分の先端が中心孔内壁面を周状に移動することになるので、ストレート部分の先端が中心孔内壁面に引っかかりを生じ、ボールの付勢力が減ぜられてチップ先端の内縁との密閉性が低下することがあるという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、後穴から中心孔を通るストレート部分を有するスプリングの、そのストレート部分の先端でボールをチップ先端の内縁に押圧付勢するようなしたボールペンまたは塗布具のチップにおいて、前記中心孔の内周壁に、中心孔の上部に外方に向けて放射状に形成された複数の矢溝の終端隆起として、前記スプリングのコイル部分外周が、チップの後穴の内周壁に当接し、スプリングのストレート部が中心孔の内周の一方に倒れ込んだ時、該ストレート部分を支え、該ストレート部分の先端と中心穴の内壁面とが離れた状態となる軸芯方向高さを有する突起を設けたことを特徴とするボールペンまたは塗布具のチップを要旨とする。
【0006】
【作用】
スプリングのストレート部分の先端が、中心孔の内周壁に触れることなく、ボールをチップ先端の内縁に押圧付勢する。
【0007】
【実施例】
図1に本発明を示し説明する。フェライト系ステンレスや洋白などよりなるチップの先端のボール把持部1には、ボール2が回動自在に抱持されている。参照符号3は先端小口部であり、この先端小口部3はチップのテーパー面4の先端部4aをロールかしめし、先端部4aをボール2の方へ倒し込むことにより形成されている。また、この先端部4aの倒し込みにより小口内縁部1aが形成され、この小口内縁部1aによって前記ボール2が抱持され、外方への抜け止めを施されている。
【0008】
尚、ボール2の図中下方には、ボール受け座部5およびインキの流通路となる中心孔6が形成され、その中心孔6の上部は、ボール2にインクを供給する放射状の矢溝7となっている。また、前記中心孔6の下部は中心孔6の内径よりも大きい内径を有する後穴8に連通している。そして、前記後穴8には、コイル部分を有するスプリング9が配設され、そのスプリング9の図中上方には、中心孔6を通ってボール2の下方に至るストレート部分9aが形成されている。そして、ボール2は、前記ストレート部分9aに支承されつつ上方に付勢されて前記小口内縁部1aに密接している。
【0009】
ここで、前記中穴の内周壁には、中孔6の上部に放射状に形成された複数の矢溝7の終端に加工形成されている隆起として、軸芯方向に向けて突起10が設けられている。この突起10は、その高さをHとし、前記スプリングのストレート部分の先端から前記突起の頂点までの長さをDとし、また、前記中心孔の内径をNとし、スプリングのストレート部分の外径をSとし、更に、前記後穴の内径をAとし、スプリングのコイル部分の外径をTとし、スプリングのストレート部分の長さをLとしたとき、(H/D)>〔{(N−S)/2}+{(A−T)/2}〕/Lの関係式を満たす高さになっている。この関係式を満足すれば、スプリング9のストレート部分9aが中心孔6の内壁面に接触することがないのである。
【0010】
以下に実施例のチップの各部の数値を示す。
H:突起の高さ 0.07mm
D:ストレート部分の先端から突起頂点までの長さ 0.25mm
N:中心孔の内径 0.48mm
S:スプリングのストレート部分の外径 0.13mm
A:後穴の内径 1.20mm
T:スプリングのコイル部分の外径 1.05mm
L:スプリングのストレート部分の長さ 2.07mm
【0011】
図2および図2の要部拡大図である図3に示すように、スプリング9のコイル部分外周がチップの後穴8の内周壁に当接し、スプリング9のストレート部分9aが中心孔6の内周の一方に倒れ込んでいるが、前記ストレート部分9aが突起10の頂点に支えられている状態を示しており、ストレート部分9aの先端は中心孔6の内壁面より離れた状態になっている。
【0012】
前記実施例のチップを市販の水性顔料ボールペン(ぺんてる(株)、商品名:K155−AD)100本に組み込んで試験用試料となした。
試験の結果によれば、チップを下向きの状態で放置してもインキ洩れを生じることがなく、また、経時試験においてもチップ先端内縁のインキ乾燥やチップ上向き放置でのインキ下がり等不具合が発生しなかった。尚、同時に実施した、前記関係式を満足しない各部数値の比較試料では、経時試験においてチップ先端内縁のインキ乾燥やチップ上向き放置でのインキ下がりが発生した。
【0013】
尚、前記突起は、適宜の方法で中心孔の内方に向けて形成されればよいが、中心孔6の上部に放射状に形成された複数の矢溝7の終端に加工形成される隆起をもって前記突起としてもよい。これによれば、従来の加工工数と変わらず容易に所要の突起をなすことができる。
【0014】
【発明の効果】
本発明は、後穴から中心孔を通るストレート部分を有するスプリングの、そのストレート部分の先端でボールをチップ先端の内縁に押圧付勢するようなしたボールペンまたは塗布具のチップにおいて、前記中心孔の内周壁に、軸芯方向に向けて、突起の高さHと、スプリングのストレート部分の先端から前記突起の頂点までの長さDと、中心孔の内径Nと、スプリングのストレート部分の外径Sと、後穴の内径Aと、スプリングのコイル部分の外径Tと、スプリングのストレート部分の長さLが、(H/D)>〔{(N−S)/2}+{(A−T)/2}〕/Lの関係式を満たす、少なくとも一つの突起を設けたので、スプリングのストレート部の先端が中心孔内壁面に引っかかるということがなく、ボールの付勢が確実になされ、チップ先端の内縁との密閉性を良好な状態で保てるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を示すチップの縦断面図。
【図2】作用を説明する縦断面図。
【図3】図2の要部拡大図。
【図4】図2のA−A断面図(ボールを外した図)。
【図5】従来例を示すチップの断面図。
【符号の説明】
1 ボール把持部
1a 小口内縁部
2 ボール
3 先端小口部
4 テーパー面
4a 先端部
5 ボール受け座部
6 中心孔
7 矢溝
8 後穴
9 スプリング
9a ストレート部分部
10 突起
H 突起の高さ
D スプリングのストレート部分の先端から突起頂点までの長さ
N 中心孔の内径
S スプリングのストレート部分の外径
A 後穴の内径
T スプリングのコイル部分の外径
L スプリングのストレート部分の長さ
Claims (1)
- 後穴から中心孔を通るストレート部分を有するスプリングの、そのストレート部分の先端でボールをチップ先端の内縁に押圧付勢するようなしたボールペンまたは塗布具のチップにおいて、前記中心孔の内周壁に、中心孔の上部に外方に向けて放射状に形成された複数の矢溝の終端隆起として、前記スプリングのコイル部分外周が、チップの後穴の内周壁に当接し、スプリングのストレート部が中心孔の内周の一方に倒れ込んだ時、該ストレート部分を支え、該ストレート部分の先端と中心穴の内壁面とが離れた状態となる軸芯方向高さを有する突起を設けたことを特徴とするボールペンまたは塗布具のチップ。
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