JP2011163163A - オイルポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】オイルポンプからのノイズを所定の音量以下とするオイルポンプを提供する
【解決手段】オイルポンプ1は、偏心して設けられたアウターロータ2と、アウターロータ2の内歯に噛合する外歯3aを有するインナーロータ3と、これらインナーロータ2及びアウターロータ3を収容するオイルポンプボディ5とを備えている。オイルポンプボディ5には、吸入ポート11と、吐出ポート10とが、設けられており、これら吸入ポート11の終端部11bと、吐出ポート10bとの間は、空間部Sの容積を圧縮する圧縮工程におけるインナーロータ3の回転角aが21°〜27°の範囲内になるように設定されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば自動変速機などに搭載されるオイルポンプに係り、詳しくは偏心して形成されたアウターロータの内歯にインナーロータの外歯を噛合させ、これらインナーロータ及びアウターロータの間の空間部を増減させて作動油の吸入及び吐出を行うオイルポンプに関する。
一般に、乗用車などの車輌に使用されるオイルポンプとして、例えば、トロコイド型のオイルポンプに代表される、内接型のオイルポンプが広く知られている。
上記内接型のオイルポンプは、偏心したアウターロータの内歯にインナーロータの外歯が噛合して構成されており、インナーロータが回転駆動することにより、これらインナー及びアウターロータ間の空間部が、吸入ポートに沿って増大して作動油を吸入し、吐出ポートに向かって減少することにより吸入した作動油を吐出する。
ところで、このようなオイルポンプにおいて、ロータの回転速度が高速になると、吸入ポート側で空間部の負圧が部分的に作動油の飽和蒸気圧よりも低くなり、作動油が気化して上記空間部にキャビテーション(気泡)が発生する。
このキャビテーションが発生すると、液体であった作動油が気体になって体積が急激に大きくなるため、オイルポンプの吐出量不足を招くだけではなく、上記空間部が吐出ポートに連通して空間部内の圧力が作動油の飽和蒸気圧以上になることにより、キャビテーションが特定の場所で消滅し、その際に生じるジェット流によってオイルポンプにエロージョン(壊食)が発生するという問題がある。
また、キャビテーションが消滅する際には、気泡の中心に周囲の作動油が殺到して衝突することにより圧力波が発生し、この圧力波がキャビテーションノイズとなって、オイルポンプのノイズ及び振動が大きくなるという問題がある。
そこで、従来、このようなエロージョンやキャビテーションノイズの発生を抑制するために、最大容積Vmax時の上記空間部(空隙部)Sに、吐出ポート5からの作動油を供給するための減圧浅溝Dを形成したオイルポンプが案出されている(特許文献1参照)。
特許第2582167号公報
上記特許文献1記載のオイルポンプは、減圧浅溝を介して最大容積時の空間部に吐出ポートから作動油を流入させ、空間部内の圧力を上昇させることにより、吐出圧と空間部内の圧力との差を小さくし、上記ジェット流の勢いを小さくすることができるため、エロージョン対策としては有効であった。
しかしながら、このような吐出ポートから作動油により空間部の圧力を上昇させる方法では、空間部内の圧力を除々に上昇させて行くことが難しく、吐出ポートと連通した段階では、空間部内に一定量のキャビテーションが残存してしまう。
そして、これら残存したキャビテーションは、空間部が吐出ポートに連通した瞬間に一斉に消滅するため、依然として大きなキャビテーションノイズが発生し、オイルポンプのノイズを低減する手段としては不十分であった。
そこで、本発明は、作動油を吸入する吸入工程と、作動油を吐出する吐出工程との間に圧縮工程を設け、この圧縮工程において、キャビテーションを除々につぶして消失させることによって、上記課題を解決したオイルポンプを提供することを目的とする。
本発明は、複数の外歯(3a)を有するインナーロータ(3)と、該インナーロータ(3)の外歯(3a)と噛合する複数の内歯(2a)を有すると共に、偏心して設けられたアウターロータ(2)と、これらアウターロータ(2)及びインナーロータ(3)を収容するオイルポンプボディ(5)と、を備え、前記インナーロータ(3)を回転駆動して前記内歯(2a)及び外歯(3a)の間の空間部(S)を増減させることで、前記オイルポンプボディ(5)に形成された吸入ポート(11)から作動油を吸入する吸入工程(I)と、前記オイルポンプボディ(5)に形成された吐出ポート(10)に前記吸入した作動油を吐出する吐出工程(IV)と、を行う、オイルポンプ(1)において、
前記吸入工程(I)と前記吐出工程(IV)との間で、前記吸入した作動油を前記吸入ポート(11)から遮断して前記空間部(S)に閉じ込める閉じ込み工程(II)と、前記空間部(S)を減少させて閉じ込められた作動油を圧縮する圧縮工程(III)と、が行われ、かつ前記圧縮工程(III)を行う際の前記インナーロータ(3)の回転角(a)が21°〜27°になるように、前記吸入ポート(11)の終端部(11b)と前記吐出ポート(10)の始端部(10a)との間隔(c)を設定した、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記インナーロータ(3)と摺動する前記オイルポンプボディ(5)の摺動面(5a)に、前記圧縮工程時の前記空間部(S)と、前記吐出ポート(10)と、を連通する浅溝(12)を形成した、ことを特徴とする。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を用意にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る発明によると、吸入工程と吐出工程との間にロータ間の空間部を圧縮する圧縮工程を設け、この圧縮工程中にインナーロータが進む回転角を21°〜27°の範囲としたことにより、空間部に発生したキャビテーションの大半を圧縮工程中で除々に潰して消失させることができ、オイルポンプのノイズを運転者が不快に感じない範囲内に抑えることができる。また、発生したキャビテーションは、圧縮工程中で時間的に分散されて消えて行き、特定の場所で一斉に消えることがないため、エロージョンの発生を防止することができる。
請求項2に係る発明によると、キャビテーションが発生しない低回転時には、圧縮工程において圧縮された作動油を、浅溝を介してを介して吐出ポートに排出することができるため、圧縮工程における空間部の圧力が過剰に上昇することを防止することができ、過剰な空間部内の圧力の上昇に基づく、インナーロータとアウターロータとの噛合部におけるノイズの発生や、燃費の悪化を防止することができる。
(a)本発明の実施形態に係るオイルポンプの、ロータ間の空間部が最大容積の際を示す要部正面図、(b)本発明の実施形態に係るオイルポンプの、ロータ間の空間部が閉じ込み工程にある状態を示す要部正面図。 本発明の実施形態に係るオイルポンプの、ロータ間の空間部の容積変化と、インナーロータの回転角との関係を示すグラフ。 (a)本発明の実施形態に係るオイルポンプのポート構成を示す模式図であって、圧力抜き用の浅溝を有するもの、(b)(a)において圧力抜き用の浅溝を有さないもの、(c)圧縮工程を有さないオイルポンプのポート構成を示す模式図。 圧縮角を21°〜27°の範囲内で設定したオイルポンプにおける、各工程とロータ間の空間部内の圧力との関係を示すグラフであって、(a)高回転時の場合、(b)低回転時であって圧力抜き用の浅溝を有さない場合、(c)低回転時であって圧力抜き用の浅溝を有する場合。 圧縮角を0°〜16°の範囲内で設定したオイルポンプにおける、各工程とロータ間の空間部内の圧力との関係を示すグラフであって、(a)高回転時の場合、(b)低回転時の場合。 様々な圧縮角における、エンジンの回転速度と、オイルポンプのノイズと、の関係を示すグラフ。
[オイルポンプの概略]
以下、本発明の実施形態に係るオイルポンプについて図面に沿って説明する。オイルポンプ1は、自動変速機のトルクコンバータ(不図示)と複数のプラネタリギヤからなる変速機構部(不図示)との間に配設されており、図1に示すように、複数のトロコイド歯からなる外歯3aを有するインナーロータ3と、外歯3aと噛合する内歯2aを有するアウターロータ2と、これらアウターロータ2及びインナーロータ3を収容するオイルポンプボディ5と、を備えている。
上記オイルポンプボディ5のインナーロータ3及びアウターロータ2との摺動面5aには、オイルパンとストレーナを介して連通している吸入ポート11と、自動変速機のコントロールバルブに連通している吐出ポート10と、が対向して形成されていると共に、インナーロータ3は、キー3b及びキー溝6aにより駆動源の出力軸に接続するオイルポンプ駆動軸6に固定して取付けられている。
また、アウターロータ2は偏心して設けられてため、外歯3aと内歯2aの1ピッチ間に形成される空間部Sは、インナーロータ3が吸入ポート11側から吐出ポート10側へと回転駆動すると(図1(a)の回転方向R)、これらインナーロータ3及びアウターロータ2の回転に沿って、その容積が増減する。
具体的には、上記空間部Sは、外歯3a及び内歯2aの、回転前方側の噛合点Eと回転後方側の噛合点Eとの間に形成されており、図1(b)に示す空間部Sのように吸入ポート11に沿ってその容積を増大させて行き、吸入ポート11の終端部11bの近傍でその容積が最大となる(図1(a)の空間部Smax)。
このように空間部Sは、図1(a)及び図2からも明らかなように、吸入ポート11に沿って容積を大きくして行くことによって、吸入ポート11から空間部S内に作動油を吸入する(吸入工程I)。
ついで、図1(b)に示す空間部Sのように、空間部Sは、回転後方側の噛合点Eが吸入ポート11の終端部11bに達すると、上記吸入した作動油を吸入ポート11から遮断し、空間部Sに閉じ込める(閉じ込み工程II)。
また、上記吸入ポート11の終端部11bと吐出ポート10の始端部10aとの間は、詳しくは後述するポート間仕切り部4により所定の間隔(角度)cを存するように形成されており、回転前方側の噛合点Eが吐出ポート10に連通する吐出タイミングを遅らせるように構成されているため、空間部Sは、図1(a)に示す空間部Sのように、上記閉じ込み工程IIの位置から吐出ポート10に連通するまでの間にその容積を圧縮して行く(圧縮工程III)。
そして、回転前方側の噛合点Eが吐出ポート10の始端部10aに到達すると、図1(b)に示す空間部Sのように、空間部Sは吐出ポート10と連通し、吸入した作動油を吐出ポート10に吐出する(吐出工程IV)。
なお、吸入ポート11の終端部11bは、より多くの作動油を空間部Sが吸入できるように、噛合点E,Eが形成される軌跡l上の径方向位置に凹部が形成されており、この凹部の頂点部分が吸入ポート11の終端部11bとなっている(図1(a)参照)。
[オイルポンプのポート構成]
次に、オイルポンプ1のポート構成について説明をする。上述したように、吸入ポート11の終端部11bと吐出ポート10の始端部10aとの間はポート間仕切り部4により所定間隔cを存して設けられており、この所定間隔cの間で、上記閉じ込み工程II及び圧縮工程IIIが行われる。
図1(b)に示すように、ポート間仕切り部4の内、インナーロータ3の回転中心Oと閉じ込み工程IIの空間部Sにおける回転前方側の噛合点Eとを結ぶ直線Aと、インナーロータ3の回転中心Oと吸入ポート11の終端部11bとを結ぶ直線Aと、の間bに空間部Sが納まった際に閉じ込み工程IIとなる。
また、ポート間仕切り部4の内、閉じ込み工程IIの際の回転前方側の噛合点Eと吐出ポート10の始端部10aとの間において、圧縮工程IIIが行われる。即ち、図2を合わせて参照すると、上記直線Aと、インナーロータ3の回転中心Oと吐出ポート10の始端部10aとを結ぶ直線Aとの間の角度aが、圧縮工程を行う際のインナーロータ3の回転角である圧縮角となり、この圧縮角a中に減少した空間部Sの容積が、圧縮工程中に圧縮された圧縮容積Vとなる。
更に、上記圧縮角aに亘って、オイルポンプボディ5の摺動面5aには、圧縮工程中の空間部S3と、吐出ポート10の始端部10aとを連通する浅溝12が設けられており、該浅溝12は、噛合点E,Eが形成される軌跡l上に位置している。
なお、浅溝12は、ポート間仕切り部4において、インナーロータ3とアウターロータ2の噛合点E,Eに沿うように、極浅く形成されたものであり、閉じ込み工程IIでは、空間部Sが吸入ポート11及び吐出ポート10とも連通しないよう、例えば、インナーロータ3の回転角では、噛合点Eに対し0°より大きく1°〜3°程度進んだ回転角の位置に浅溝12の先端部が設けられるように形成される。また、浅溝12は、駆動源(インナーロータ2)が低速回転時で作動油の流量が少ない際には、空間部S内の作動油を吐出ポート10に排出する溝として作用するが、駆動源の回転速度が高速となって作動油の流量が多くなった場合には、空間部S内の圧力に影響を及ぼすほどの作動油を吐出ポート10に流すことはないようになっている。
ついで、図3(a),(b)に示すような、圧縮角aが21°〜27°の範囲で設定されたオイルポンプと、図3(c)に示すような、圧縮角aが0°〜16°の範囲で設定されたオイルポンプとを比較して、圧縮角aと、各工程における空間部内の圧力と、の関係について説明をする。なお、(a)は浅溝12を有した第1の実施形態に係るオイルポンプ、(b)は浅溝12は有していない第2の実施形態に係るオイルポンプ、(c)は浅溝及び圧縮工程を備えていない(圧縮角0°)オイルポンプである。
図4は、圧縮角aが21°〜27°の範囲で設定されたオイルポンプについての各工程と空間部内の圧力を示すグラフであり、図5は、圧縮角aが0°〜16°の範囲で設定されかつ浅溝12を有さないオイルポンプについての各工程と空間部内の圧力を示すグラフである。
上記図4及び図5において、高速回転速度時(4500〜7000rpm)のグラフである図4(a)及び図5(a)を比較すると、図4(a)に示すように、圧縮角aが21°〜27°の範囲で設定された場合には、圧縮工程IIIにおいて空間部Sの圧力が、負圧である吸入圧Pから正圧である吐出圧Pまで除々に圧力が上昇して行き、空間部S内の圧力が吐出圧Pになった際に圧縮工程IIIが終了していることが分かる。
一方、図5(a)に示すように、圧縮角aが0°〜16°の範囲で設定されたオイルポンプでは、圧縮工程IIIが短い(もしくは存在しない)ため、まだ空間部S内の圧力が吸入圧Pから吐出圧Pまで上昇しない間に吐出工程IVとなり、圧力の上昇途中で一気に吐出圧Pになることが分かる。
即ち、キャビテーションの存在は空間部S内の圧力に依存するため、圧縮角aが21°〜27°(図4(a))の範囲では圧縮工程IIIにおいて空間部Sの圧力の上昇に伴ってキャビテーションが除々に潰れて、吐出工程IVに到達する際には、大半のキャビテーションを消滅させることができる。しかし、圧縮角aが0°〜16°(図5(a))では、空間部Sの圧力がキャビテーションを除々に潰して行くよりも前に、その圧力が一気に吐出圧Pまで上昇してしまい、図4(a)の場合のようにキャビテーションの消滅を時間的に分散させることなく、空間部Sの圧力が吐出圧Pになった瞬間に一斉にキャビテーションを消滅させてしまう。
続いて低速回転度時(0〜4500rpm)について、図4(b),(c)及び図5(b)に基づいて説明をする。図5(b)に示すように、圧縮角aが0°〜16°の場合は、低速回転度時においても、空間部Sの圧力が吸入圧Pからなだらかに吐出圧Pまで上昇する前に、吐出工程IVとなって一気に吐出圧Pまで圧力が上昇してしまうことが分かる。
一方、図4(b),(c)に示すように、圧縮角aが21°〜27°の場合、圧縮工程中に空間部S内の圧力はなだらかに上昇して行くが、低回転時にはほとんどキャビテーションが発生しないため、空間部Sの圧力逃がし用の浅溝12を設けていない図4(b)では、圧縮工程IIIにおいて液体の作動油が圧縮されて、空間部Sの圧力が吐出圧Pよりも高い圧Pとなってしまうことが分かる。また、浅溝12を設けた場合の図4(c)では、空間部S内の圧力が高まると、浅溝12を介して空間部Sから吐出ポート10に圧縮された作動油が排出され、空間部S内の圧力が吐出圧Pよりも大きくなることが防止されていることが分かる。
ついで、上述した圧縮角aと各工程における空間部内の圧力との関係を踏まえ、圧縮角aとキャビテーションノイズとの関係について説明をする。
図6は、駆動源(インナーロータ)の回転速度とオイルポンプから発生するノイズとの関係を示す図であり、aは圧縮角aが0°の際のグラフ、aは圧縮角aが27°の際のグラフ、Bは圧縮角aが21°〜27°の際の平均を示すグラフ、Bは圧縮角aが0°〜16°の際の平均を示すグラフである。
上記aのグラフを参照すると、回転速度が4500rpm近傍において、オイルポンプからのノイズが上昇している。これは、駆動源が高速で回転して空間部Sにキャビテーションが発生し、このキャビテーションが消滅する際にキャビテーションノイズが発生しているためである。
一方、圧縮角aが27°の際のグラフaを参照すると、キャビテーションが発生する4500rpmを過ぎてもオイルポンプのノイズが上昇して行かず、オイルポンプ1から発生するノイズを抑えていることが分かる。この時、オイルポンプ1から発生するノイズは、80dB以下に抑えられている。
ついで、圧縮角aが0°〜16°の場合の平均値であるBのグラフと、圧縮角aが21°〜27°の場合の平均値であるBのグラフと、を比較すると、BのグラフよりもBのグラフの方がノイズ音量が低いことが分かる。実際には、B2のグラフは、平均してノイズが90dB程度であるが、Bのグラフは、80dB以下であり、これらBのグラフとBのグラフとでは、10dB程度の音量の差がある。このことから、圧縮角aが0°〜16°の範囲(図2の無効圧縮角C)では、圧縮工程III中においてキャビテーションをほとんど潰せないため、キャビテーションノイズを防止する観点からは有効ではなく、キャビテーションノイズの低減のためには、圧縮角aが21°〜27°の範囲が有効であることが分かる(図2の有効圧縮角C)。
上述したように、本実施形態では、吸入工程Iと圧縮工程IVとの間に、閉じ込み工程IIIと圧縮工程IVとを設け、圧縮角aを、車輌が通常走行する際に使用される駆動源の回転速度領域の内、高回転速度域の最高回転速度(例えば、通常市販されている乗用車においては7000rpm程度)にて発生するキャビテーションを消失させる角度(例えば27°)から、オイルポンプ1のノイズが所定の音量以下になる角度(例えば21°)までの範囲Cとなるように、吸入ポート11の終端部11bと前記吐出ポート10の始端部10aとの間隔cを設定したことにより、圧縮工程IIIにおいて発生したキャビテーションのほとんど全てを除々に潰して消滅させることができ、オイルポンプのノイズを、一般に運転者が不快に感じない音量に抑えることができる。
なお、一般に運転者は、図6のようにオイルポンプ1のノイズを直接測定した場合において、80〜85dBとなると、運転席においてもオイルポンプ1からのノイズが気になるようになるが、本実施形態では、圧縮角aを有効圧縮角Cに設定することにより、無効圧縮角Cのオイルポンプに比較して、オイルポンプ近傍において、約10dBノイズの発生を低減できており、特に、乗用車、その中でも走行時のノイズの少ないハイブリッド駆動車輌においても耐えうる80dB以下に抑えることが出来ている。
また、キャビテーションが時間的に分散されて消滅することによって、エロージョンの発生をも低減することができる。
更に、圧縮角aの上限を、車輌が通常走行する際に使用される駆動源の回転速度領域の内の最高回転速度にて発生するキャビテーションを消失させる角度にしたことにより、キャビテーションの発生量以上に空間部Sが圧縮されることがなく、空間部Sの圧力が必要以上に上昇して外歯3a及び内歯2aの噛合い部からノイズを発生することや、抵抗が増えることによる燃費の悪化を防止することができる。
また、圧縮角aに亘って、圧力抜き用の浅溝12を設けたため、低回転時においても、空間部S内の圧力が必要以上に上昇することを防止することができる。
なお、本実施形態において駆動源とは、エンジンのみならず、モータや、これらエンジン及びモータを組み合わせたハイブリッド駆動装置及び、ハイブリッド車輌や電気自動車において駆動とは独立してオイルポンプを回転させる電動オイルポンプモータをも含む。
また、本発明をハイブリッド車輌に適用した場合、低車速ではエンジンを駆動させずにEV走行し、高車速ではオイルポンプの駆動回転速度が高速になるようなハイブリッド車輌にあっては、低車速時のEV走行時のエンジンノイズがないためにオイルポンプノイズが目立つことがあるが、このオイルポンプノイズを低減でき、高車速時のキャビテーションによるノイズも低減することができる。
更に、車輌が通常走行する際に使用される駆動源の回転速度領域の内、高回転速度域とは、駆動源に許容された回転速度の内の最高回転速度よりも低く設定されているが、この高回転速度域の内の最高回転速度を、許容された回転速度の内の最高回転速度としても良い。
また、本発明に係るオイルポンプは、自走変速機だけではなく、エンジンや他の油圧装置のオイルポンプとして使用されても良く、内歯2a及び外歯3aは、必ずしもトロコイド歯である必要はなく、例えば通常の歯車構成にしても良い。
1 オイルポンプ
2 アウターロータ
2a 内歯
3 インナーロータ
3a 外歯
5 オイルポンプボディ
5a 摺動面
11 吸入ポート
11b 終端部
10 吐出ポート
10a 始端部
a 回転角(圧縮角)
c 間隔
S 空間部
I 吸入工程
II 閉じ込み工程
III 圧縮工程
IV 吐出工程

Claims (2)

  1. 複数の外歯を有するインナーロータと、該インナーロータの外歯と噛合する複数の内歯を有すると共に、偏心して設けられたアウターロータと、これらアウターロータ及びインナーロータを収容するオイルポンプボディと、を備え、前記インナーロータを回転駆動して前記内歯及び外歯の間の空間部を増減させることで、前記オイルポンプボディに形成された吸入ポートから作動油を吸入する吸入工程と、前記オイルポンプボディに形成された吐出ポートに前記吸入した作動油を吐出する吐出工程と、を行う、オイルポンプにおいて、
    前記吸入工程と前記吐出工程との間で、前記吸入した作動油を前記吸入ポートから遮断して前記空間部に閉じ込める閉じ込み工程と、前記空間部を減少させて閉じ込められた作動油を圧縮する圧縮工程と、が行われ、かつ前記圧縮工程を行う際の前記インナーロータの回転角が21°〜27°になるように、前記吸入ポートの終端部と前記吐出ポートの始端部との間隔を設定した、
    ことを特徴とするオイルポンプ。
  2. 前記インナーロータと摺動する前記オイルポンプボディの摺動面に、前記圧縮工程時の前記空間部と、前記吐出ポートと、を連通する浅溝を形成した、
    請求項1記載のオイルポンプ。
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