JP2006183569A - トロコイド型オイルポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐久性を向上させ、且つ吐出脈動及び騒音の低減を向上させることができ、しかもこれを極めて簡単な構造にて実現することができるトロコイド型オイルポンプとすること。
【解決手段】 トロコイド歯形又は略トロコイド状歯形を有するインナーロータ5とアウターロータ6により構成される歯間空間Sが吸入ポート2と吐出ポート3間の間仕切部4箇所で圧縮行程P3 を開始するとともに、前記歯間空間Sは吐出行程P4 にある先行隣接の歯間空間Sと連通隙間Jが構成されること。該連通隙間Jは、圧縮行程P3 開始から吐出行程P4 において次第に拡大してなること。
【選択図】 図1

Description

本発明は、耐久性を向上させ、且つ吐出脈動及び騒音の低減を向上させることができ、しかもこれを極めて簡単な構造にて実現することができるトロコイド型オイルポンプに関する。
内接歯車ポンプの外歯歯車の各歯の回転方向における後側の歯面もしくは内歯歯車の各歯の回転方向における先側の歯面の一部を全歯幅にわたり窪ませて対向する歯面との間で隣接する収縮室間および収縮室と吐出室間を絞り連通可能な隙間を形成することが、特開平5−215079に開示されている。
特開平5−215079号
特許文献1に開示された技術内容は、外歯歯車又は内歯歯車の歯面の一部を全歯幅に亘って、窪みを平坦な平面で形成されたものである。これは、曲線歯形の歯面の一部に、その曲線歯形の歯面(曲線輪郭)より内側に平面状(直線輪郭)とした歯面が形成され、その平面状の歯面によって外歯歯車又は内歯歯車の歯面(曲線歯形)に全歯幅にわたり窪みが形成されているものである。
この平面状の歯面によって形成される隙間は、吐出側の収縮室の適宜収縮を経てから吐出室に至らせるような場合、小さく絞られる状態になる。なぜならば、外歯歯車又は内歯歯車の歯面における駆動接触部を避けると、その平面状の大きさは極限られた大きさになり、それによって構成される隙間も限られた範囲の大きさになるからである。そのような隙間を介して収縮室の液体の一部は、収縮室の容積減少に伴って隣接する収縮室と吐出室に放出されるが、その収縮室の容積減少の大きさに対して、隙間の大きさは回転方向に拡大しながら保持されるものではなく、すぐに隙間が小さく絞られてしまい、隣接する収縮室との連通を十分にすることが難しいものである。
そのため、収縮によって液体が隣接する収縮室へ逃げる量が少なくなり、収縮室内の過剰な圧力上昇を防止したり、また、キャビテーションによる騒音を生じないようにすることは困難である。本発明の目的は、収縮行程の歯間空間と、その先行隣接する歯間空間との連通を十分に確保し、収縮行程の歯間空間における、液体の逃げが十分となるようにして、収縮行程の歯間空間内の流体が過剰に圧力上昇することを防止し、且つ、キャビテーションによる騒音や壊食を生じないオイルポンプを提供することにある。
そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明はは、トロコイド歯形又は略トロコイド状歯形を有するインナーロータとアウターロータにより構成される歯間空間が吸入ポートと吐出ポート間の間仕切部箇所で圧縮行程を開始するとともに、前記歯間空間は吐出行程にある先行隣接の歯間空間と連通隙間が構成され、該連通隙間は、圧縮行程開始から吐出行程において、次第に拡大してなるトロコイド型オイルポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
次に、請求項2の発明は、吸入ポートと吐出ポートと前記吸入ポートと吐出ポートとの間に位置する間仕切部とを有するロータ室1と、トロコイド歯形又は略トロコイド状歯形を有するインナーロータとアウターロータとからなり、前記インナーロータとアウターロータにより構成される歯間空間が前記吸入ポート終端と吐出ポート始端との間の前記間仕切部箇所における閉込み完了から圧縮開始とともに、前記アウターロータの歯形の歯頂部と歯元部との間に形成された前記インナーロータの歯形5aとの非接触領域によって、前記歯間空間と、該歯間空間に対して先行隣接する歯間空間とを連通する連通隙間が形成され、該連通隙間は、ロータの回転とともに、次第に拡大してなるトロコイド型オイルポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
次に、請求項3の発明は、吸入ポートと吐出ポートと前記吸入ポートと吐出ポートとの間に位置する間仕切部とを有するロータ室1と、トロコイド歯形又は略トロコイド状歯形を有するインナーロータとアウターロータとからなり、前記アウターロータの歯形の歯頂部と歯元部との間に窪み部が形成され、前記インナーロータとアウターロータにより構成される歯間空間は、前記吸入ポートにおける吸入行程と、間仕切部箇所における吸入完了行程及び圧縮行程と、吐出ポートにおける吐出行程とを形成し、前記圧縮行程の歯間空間と、該歯間空間に対して先行隣接し且つ吐出行程にある歯間空間との間に前記窪み部による連通隙間が形成され、該連通隙間は、ロータの回転とともに、次第に拡大してなるトロコイド型オイルポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
次に、請求項4の発明は、前述の構成において、前記アウターロータの歯形の非接触領域における外周縁の形状は、前記歯形の内方側に湾曲形状又は略円弧形状に中間が曲状に凹むトロコイド型オイルポンプとしたことにより、上記課題を解決した。また、請求項5の発明は、前述の構成において前記連通隙間は、前記歯間空間の閉じ込み完了状態から少なくとも圧縮行程終了状態又は吐出ポート内に交わる状態に到るまで継続して拡大が維持されてなるトロコイド型オイルポンプとしたことにより上記課題を解決したものである。
請求項1の発明は、最大密閉容積時の歯間空間にオイルが充填される回転領域(キャビテーションが発生しない領域)では、その歯間空間の内圧上昇を過渡に上昇しないように連通隙間を介して適宜圧力を逃がしてロータのチップクリアランスにおける回転駆動方向のフリクションを低減でき、回転駆動トルクを低減することができる。また、歯間空間が最大密封空間のときにオイルが十分に充填されにくい回転領域では、その歯間室に隣接する回転方向先側歯間室の圧力流体を連通隙間を介して適宜流入することで、吐出圧との圧力差を小さくすることができ、圧力差による衝撃が緩和されエロージョンの発生を防ぐことができ、製品の耐久性を向上することができる。また、製品の駆動馬力損失を低減することができ、さらに、脈動を低減し、騒音を低減することができる。請求項2の発明は、請求項1の効果と略同等である。
請求項3の発明は、前記アウターロータの歯形の歯頂部と歯元部との間に凹み状の窪み部が形成されたもので、連通隙間を構成するのに適宜の大きさのものを容易に形成することができ、また、任意の形状にできるので種々の特性を容易に設定することができる。請求項4の発明は、前記窪み部を前記歯形の内方側に湾曲形状又は略円弧形状に中間が曲状に凹むようにしたもので、連通隙間における流体の流れを円滑にすることができる。請求項5の発明は、連通隙間の継続的な拡大を歯間空間の閉じ込み完了状態から少なくとも圧縮行程終了状態又は吐出ポート3内に交わる状態に到るまで維持されることにより、キャビテーションを抑制することができ、エロージョンの発生を防ぐことができる。また良好に脈動と騒音を低減することができる。
以下、本発明の最良の形態を図面に基づいて説明する。本発明のトロコイド型ポンプは、図1(A)に示すように、ポンプケーシング内に形成されたロータ室1にトロコイド歯形のインナーロータ5及びアウターロータ6が内装されたものである。前記ロータ室1には、図1(A)に示すように、その円周方向に沿ってほぼ外周寄りに吸入ポート2と吐出ポート3とが形成されている。具体的には、図1(A),図4(A)等に示すように、前記吸入ポート2と吐出ポート3とは左右非対称の形状であり、前記吸入ポート2が吐出ポート3よりも領域面積が大きく形成されている。
その吸入ポート2においては、図1(A)に示すように、インナーロータ5とアウターロータ6との回転によって形成される歯間空間Sが移動して、前記吸入ポート2の領域に最初に到達する端部が吸入ポート2の始端部2aとなり、その歯間空間Sが回転により前記吸入ポート2の領域最後に到達する端部が終端部2bとなる。同様に、前記吐出ポート3においては、前記インナーロータ5とアウターロータ6との回転によって形成される歯間空間Sが移動して吐出ポート3の領域に最初に到達する端部が吐出ポート3の始端部3aとなり、その歯間空間Sが回転により前記吐出ポート3の領域最後に到達する端部が終端部3bとなる。
前記吸入ポート2の終端部2bから吐出ポート3に向かって突出連通溝2cが形成されている。また、前記吐出ポート3の始端部3aには、吸入ポート2側に向かって突出連通溝3cが形成されている。これら吸入ポート2の突出連通溝2c及び吐出ポート3の突出連通溝3cは、それぞれ浅溝として形成されている。これらの突出連通溝2c,3cは、共に又はどちらか一方が形成されないこともある。
前記吸入ポート2と吐出ポート3との間には間仕切部4が形成されている。この間仕切部4は、2箇所に形成され、図4(A)に示すように、その1つは、吸入ポート2の終端部2bから吐出ポート3の始端部3aの間に位置するもので、この間仕切部4を第1間仕切部4aと称する。また、もう1つの間仕切部4は、吐出ポート3の終端部3bから吸入ポート2の始端部2aの間に位置するものであり、これを第2間仕切部4bと称する。前記第1間仕切部4aは、平坦面であり、ケーシングのカバーとともに、歯間空間S内に吸入ポート2から吸入充填した流体を閉じ込めつつ、吐出ポート3側へ流体を移送する役目をする面である。第2間仕切部4bは、吐出ポート3側で吐出完了したインナーロータ5とアウターロータ6を吸入ポート2側へ移動させる仕切面である。
なお、ここで、本実施例では、前記インナーロータ5とアウターロータ6との回転方向は時計回りの方向に回転するものとしている。また、前記吸入ポート2と吐出ポート3との形成位置が左右反対に配置形成される場合には、前記インナーロータ5とアウターロータ6の回転方向は反時計回りの方向となる。
そのインナーロータ5は、図1(A)に示すように、その歯数において前記アウターロータ6よりも一つ少なく、インナーロータ5が一回転すると、アウターロータ6は一歯分遅れて回転する関係となる。このように、前記インナーロータ5は、図5に示すように、外方に突出する歯形5a及び内方に凹状の歯底部5bを有し、同様にアウターロータ6は内周側より(回転)中心側に向かって突出する歯形6a及び凹状の歯底部6bを有している。そして、前記インナーロータ5とアウターロータ6とは、図1(A)に示すように、少なくとも常時1箇所で噛み合い、前記インナーロータ5の歯形5aが前記アウターロータ6の歯底部6bに挿入し、またアウターロータ6の歯形6aがインナーロータ5の歯底部5bに挿入する。このとき、歯形6aの歯頂部6a1 は、インナーロータ5の歯底部5bに接触することもあるし、或いは接触しない構造としてもよい。
アウターロータ6は、図6(A),(B)に示すように、前記インナーロータ5と噛み合う接触歯面として歯頂部6a1 に頂部接触領域T1 が設定され、歯元部6a2 に元部接触領域T2 が設定される。また、前記歯頂部6a1 と前記歯元部6a2 との間にインナーロータ5の歯形5aと常時,非接触となる非接触領域Kが形成されている。その非接触領域Kは、アウターロータ6がインナーロータ5と噛み合う状態において、その歯形5a及び歯底部5bに常時非接触状態で、後述する連通隙間Jを構成する領域である。前記歯頂部6a1 は、歯形6aの先端部分であり、また歯元部6a2 は、歯形6aの根元部分であり、歯形6a側面の歯底部6b寄り側に位置する適宜の範囲にインナーロータ5と接触可能である。
また、その歯形6aの非接触領域Kは、通常のアウターロータ6の歯を構成する円弧又はインナーロータによる創成曲線からなる輪郭〔図6(B)に図示された歯形6aにおいて想像線(2点鎖線)により示された部分〕をアウターロータ歯形外周縁とした場合、このアウターロータ歯形外周縁よりも内方側に歯形6aの輪郭が形成されている。すなわち、その非接触領域Kの歯側面の輪郭形状は、そのアウターロータ6が通常の円弧又はインナーロータ5による創成曲線にて形成された場合の輪郭とは異なる曲線としたものである。この非接触領域Kは、前記アウターロータ6の歯形6aの歯厚方向側面箇所に設定され、その歯幅方向側面全体に設定されるものである。なお、ここで、前記歯形6aの歯厚方向とは、前記アウターロータ6の回転する方向に沿って示される方向のことであり、歯幅方向とは、アウターロータ6の軸方向に沿った方向〔図6(A)紙面上の垂直方向〕である。
その非接触領域Kにおける曲線形状は、円弧や任意の曲線を組み合わせた自由曲線又は代数方程式等で表される曲線(代数曲線)としたり、又はこれらの曲線を適宜に組み合わせてなる複合曲線等としたものである。またその円弧は、無限大の円弧とすることもある。この曲線を代数方程式として示すと、その次数は、2〜5であらわされることが好ましい。そのアウターロータ6の非接触領域Kは、通常の円弧又はインナーロータ5による創成曲線とは異なる上記曲線によって形成されたものであり、そのアウターロータ6と噛合うインナーロータ5の通常のトロコイド曲線からなる歯形5aとは、両者の噛合状態で非接触状態を維持する輪郭を形成する。
さらに、前記歯頂部6a1 と歯元部6a2 においては、前記インナーロータ5の歯形5aと接触する領域となっており、具体的には歯頂部6a1 は、頂部接触領域T1 を有し、インナーロータ5の歯形5aと接触する部位となる。また歯元部6a2 も同様にインナーロータ5の歯形5aと接触する部位となる。なお、歯形6aの頂部接触領域T1 及び元部接触領域T2 は、歯形5aに対して必ずしも常時,同時に接触するものではなく、前記頂部接触領域T1 又は前記元部接触領域T2 の何れか一方が歯形5aに接触するものである。特に頂部接触領域T1 及び元部接触領域T2 は、インナーロータ5が駆動源によって回転し、アウターロータ6に回転伝達するときに、インナーロータ5の歯形5aに対してアウターロータ6の歯形6aが接触する部位であり、歯形5aから回転力を受ける部位である。
このように、アウターロータ6の歯形6aの歯面に前記インナーロータ5との非接触領域Kを設け、また前記インナーロータ5は通常のトロコイド曲線からなる歯形5aとし、特にそのインナーロータ5側には、前記非接触領域Kに相当する領域を設けないものとする。そして、アウターロータ6とインナーロータ5とをオイルポンプのポンプ室に装填して組み合わせることで、前記インナーロータ5を回転駆動して該インナーロータ5の歯形5aと前記アウターロータ6の歯形6aとが噛み合いながら、アウターロータ6の歯頂部6a1 と歯元部6a2 のみがインナーロータ5のトロコイド曲線により形成された歯形5aの外周縁に接触するものである。
そして、インナーロータ5の歯形5a及び歯底部5bと、アウターロータ6との歯形6a及び歯底部6bにより構成される歯間空間S,S,…がポンプハウジングの吸入ポート2と吐出ポート3において前記非接触領域Kによる隙間部分によって連通状態となり、且つ前記吸入ポート2と吐出ポート3との間に設けられる第1間仕切部4aにおいて、アウターロータ6とインナーロータ5とからなる最大密封空間Smax が構成される。該最大密封空間Smax は、前記吸入ポート2と吐出ポート3との間における第1間仕切部4aによって密封状の歯間空間Sが形成されるものであり、前記吸入ポート2の終端部2bと吐出ポート3の始端部3aとの形成配置によって、その最大密封空間Smax の容積の大きさが異なることもある。
前記非接触領域Kの形状としては、図6(A),(B)及び図7(A),(B)に示すように、前記アウターロータ6の回転方向に対して、少なくとも前方側箇所の面において、前記歯形6aの内方側に凹むようにして形成されたもので、この凹み部を特に窪み部6cと称する。すなわち、歯形6aのトロコイド創成曲線から歯形6aの歯厚方向内方側に、より一層深く、引き込むようにして形成されたものである。この窪み部6cは、前記歯形6aの非接触領域Kと、インナーロータ5の歯形5aとの間により一層大きな間隔を設けるもので、この間隔部位がロータの回転によって相対的に隙間幅が可変する連通隙間Jとなる。
その窪み部6cの具体的な形状としては、前記歯形6aの内方に向かって弧状又は湾曲形状に形成されたものである。このような形状とすることで、第1間仕切部4aにおいて、最大密封空間Smax を構成した歯間空間Sが次第に容積が小さくなる圧縮行程に変化するときに、歯形6aの非接触領域Kを通過するインナーロータ5の歯形5aの歯頂部5a1 と前記歯形6aとの隙間、すなわち連通隙間Jを次第に拡大することができる(図3参照)。また、前記窪み部6cは、その歯形6aを中心にして歯厚方向両側に左右対称形状に形成されることもあり、実際には、この形状とすることが多い〔図6(A),(B)参照〕。
次に、本発明の動作について図2,図3に基づいて説明する。まず、トロコイド歯形又は略トロコイド歯形のインナーロータ5とアウターロータ6とが噛合って形成される歯間空間Sは、第1間仕切部4a箇所において、その吸入ポート2から第1間仕切部4aを通過して吐出ポート3に向かう行程で、吸入〔図2(A)参照〕、吸入終了〔図2(B)参照〕、圧縮〔図2(C)参照〕、吐出〔図2(D)又は(E)参照〕というポンプとしての4つの行程を有するものである。すなわち、そのポンプ行程は、吸入ポート2の吸入行程と、間仕切部4の吸入流体の閉じ込み(最大密封空間Smax )、と圧縮行程(吐出側に回転し、歯間空間Sが直接吐出ポート又は吐出ポートの連通溝と非連通状態)と、吐出ポート3の吐出行程の大きく4つが存在する。その4つの行程を、吸入行程P1 、吸入終了行程P2 、圧縮行程P3 、吐出行程P4 と符号を付す。
そして、4つの行程の歯間空間Sについて説明する。前記吸入行程P1 において前記吸入ポート2からインナーロータ5とアウターロータ6との歯間空間Sの容積を拡大しつつオイルが吸入される。吸入終了行程P2 においては、歯間空間Sが吸入ポート2から第1間仕切部4aに移って密封空間となる。さらに、圧縮行程P3 は、前記第1間仕切部4a箇所において、アウターロータ6とインナーロータ5との歯間空間Sが吸入終了行程P2 が終了して密封空間となる状態から吐出ポート3側に向かって移動しつつ、その容積の縮小により圧縮される状態であり、この状態は吐出ポート3又は吐出ポート3の突出連通溝3cには直接開口しないようにしている。次に、吐出行程P4 では、前記歯間空間Sが前記吐出ポート3又は吐出ポート3の突出連通溝3cと連通して歯間空間Sの容積を縮小しつつオイルが前記吐出ポート3に吐出される。
本発明のオイルポンプにおけるインナーロータ5の歯形5aは、通常のトロコイド歯形の歯面を有するものである。そして、歯間空間Sの圧縮行程P3 から吐出行程P4 に亘って、この歯間空間Sのロータ回転方向に対して、先行且つ隣接する歯間空間Sとの間に、隙間が可変する連通隙間Jが構成される。この連通隙間Jは、通常のチップクリアランスの概念に含まれるものであるが、通常のチップクリアランスは、インナーロータ5とアウターロータ6との回転を円滑にする役目をなすものであるのに対して、特に、この連通隙間Jは、歯間空間Sと先行隣接する歯間空間Sとの間で流体の流通を行わせる役目をなすものである。
その歯間空間Sが第1間仕切部4a箇所で圧縮行程P3 の作動状態に入るとともに、前記連通隙間Jは、図3(A)乃至(C)に示すように、徐々に拡大をし始めて、圧縮行程P3 の領域に位置する歯間空間Sから先行隣接する歯間空間Sに流体を送出したり、又はその反対に先行隣接する歯間空間Sから歯間空間Sに流入したりと相互間の流通路となる。その連通隙間Jは、ロータの回転方向にしたがって、徐々に拡大するように可変するので、先行隣接する歯間空間Sへの流体の送り量を徐々に多くすることができ、また歯間空間Sに流体を適宜流入させることができる。
また、歯間空間Sが圧縮行程P3 に入ったときには、図2(C),図3(A)に示すように、先行隣接する歯間空間Sは、すでに前記吐出ポート3、又は吐出ポート3の突出連通溝3cに開口連通しており、先行隣接する歯間空間Sから吐出ポート3に流体を吐出している状態なので、圧縮行程P3 にある歯間空間Sからの流体も円滑に先行隣接する歯間空間Sに送り込むことができる。また、先行隣接する歯間空間Sから歯間空間Sに圧力流体を適宜流入させることができる。この連通隙間Jの拡大動作は、少なくとも前記歯間空間Sの吐出ポート3又は吐出ポート3の突出連通溝3cにおける吐出開始位置近傍まで維持されることになる〔図2(E),図3(C)等参照〕。すなわち、歯間空間Sが圧縮行程P3 の開始位置から吐出行程P4 の開始位置に亘って、連通隙間Jが徐々に連続して拡大することが好ましい。
しかし、その歯間空間Sが吐出行程P4 の開始位置前から連通隙間Jを僅かに減少することがあってもかまわない。この場合、圧縮行程における回転駆動方向のフリクションに大きな影響をおよぼさない程度とする。その連通隙間Jは、可変チップクリアランスの最大隙間の10%以内が好ましい。
その歯間空間Sが第1間仕切部4aにおいて、吸入終了行程P2 が終了して最大密封空間Smax に流体が十分に充填される回転領域、すなわち、キャビテーションが発生しない領域では、歯間空間S内に閉じ込められた流体は、その歯間空間Sの内圧を上昇させることになるが、前記連通隙間Jは、この内圧の上昇を過渡にしないようにするものである。すなわち、前記連通隙間Jから歯間空間Sの過度の圧力を先行隣接の歯間空間Sに適宜逃して、吐出圧との圧力差を小さくすることができる。そして、アウターロータ6及びインナーロータ5の回転駆動方向のフリクションを低減し、回転駆動トルクの増大を防ぐことができる。
その歯間空間Sの最大密封空間状態の吸入終了から圧縮行程において、その歯間空間Sと隣接先行する歯間空間Sとの連通隙間Jが徐々に拡大することによって、歯間空間Sの内圧を吐出ポート3へ逃がす場合、ロータの回転方向に向かって圧縮を大きく内圧を高めることになるが、連通隙間Jも徐々に拡大し、圧力の逃がしが適時緩やかに行われ、歯間空間Sに過渡な圧力上昇が発生することを防ぐことができる。また、最大密封空間Smax に流体が十分に充填されにくい回転領域、すなわちキャビテーションが発生しやすい領域では、隣接先行する歯間空間Sにより前記連通隙間Jを介して歯間空間Sに適宜圧力の流体を適時量流入させることができ、そのために吐出ポート3側からの急激な流入によって起こるキャビテーションの崩壊によるエロージョンや振動、騒音を防ぐことができる。
次に、歯間空間Sの吐出行程P4 において前記連通隙間Jを継続して徐々に拡大させることで、歯間空間Sに対する隣接先行する歯間空間Sとの連通状態が大きくなり、吐出ポート3の突出連通溝3c又は吐出ポート3に連通開口する吐出行程P4 領域にある歯間空間Sと、先行の隣接する歯間空間Sとの圧力差が小さくなるように調整され、急激な圧力変化を防止し、脈動、騒音を小さくすることができる。
前記連通隙間Jについて、具体例を図8に示すグラフで説明する。前記インナーロータ5とアウターロータ6の通常設定されるチップクリアランスを基準チップクリアランスとする。その大きさは、一例として0.10mmとする。この値は、吸入終了行程P2 から圧縮行程P3 において、前記アウターロータ6の歯形6aの回転方向先側とインナーロータ5の歯形5aの回転方向後側との間に設けられた連通隙間Jとして、基準チップクリアランスに対しておよそ1.3倍の大きさとなる。
その大きさについて詳述すると、歯間空間Sの圧縮行程P3 の開始位置では、基準チップクリアランスに対しておよそ1.3倍の連通隙間Jになり、その圧縮行程P3 の開始位置から吐出行程P4 の開始位置における連通隙間Jが基準チップクリアランスに対しておよそ1.5倍となる。すなわち、圧縮行程P3 の開始と終了位置において連通隙間Jが基準チップクリアランスに対しておよそ1.3倍以上から始まって、およそ1.5倍以上(吐出開始位置)の大きさで継続的に拡大可変するものである。このように吸入終了行程P2 ,圧縮行程P3 ,吐出行程P4 に亘って構成される連通隙間Jは、0.1mm〜2.0mmまで適宜連通量を継続して拡大可変するものとすることが好ましい。
さらに、その好適範囲を詳述すると、歯間空間Sの圧縮行程P3 の開始位置では基準チップクリアランスに対しておよそ1.3倍〜10倍の範囲の連通隙間Jとし、その圧縮行程P3 から吐出行程P4 の開始位置では、基準チップクリアランスに対しておよそ1.5倍〜20倍の範囲の連通隙間Jとなる。また、本発明において、前記連通隙間Jは、前述したように0.1mm〜2.0mmまで適宜連通量を継続的に拡大可変するものとすることが好ましいとしたが、特に、この範囲に限定されるものではない。その連通隙間Jは、前記した非接触領域Kにおける窪み部6cの大きさを種々バリエーションを与えて、拡大の可変状態を緩やかにしたり、急激にしたりして種々のオイルポンプ特性が得られるようにするものである。その連通隙間Jの可変が緩やかでも急激でも、基準のチップクリアランスに対して連通隙間Jをおよそ圧縮行程P3 間連続して拡大するように可変させるものであれば良い。なお、図8において、0.3mmと0.15mmのグラフは、圧縮行程P3 終了位置より吐出側(グラフ右側)に可変チップクリアランスの最大隙間が設けられたものである。
基準チップクリアランスに対して、連通隙間Jの可変傾向は、オイルポンプによって種々設定されるものである。これは、上記の可変状態が緩やかな傾斜で徐々に拡大するグラフ線に対して、その可変量が大きくなって変化の傾斜が大きくなったり、又はその反対に可変量が小さくなって変化の傾斜が小さくなったりと、オイルポンプの大きさやロータの歯数や特性などによってその連通隙間Jの可変の大きさは種々設定することができる。
この連通隙間Jは、吐出行程P4 において、吐出ポート3の突出連通溝3c又は吐出ポート3に前記歯間空間Sが適宜開口する範囲において拡大するように可変したり、又は縮小するように可変したりと適宜設定される。また、吐出行程P4 の開始前に僅かに縮小可変させることもある。しかし、この場合には、圧縮行程P3 で連通隙間Jを小さくすることになるので、回転駆動方向のフリクションに大きく影響がない程度のものとする。この場合、連通隙間Jの最大隙間のおよそ10%以内の縮小可変が好ましい。
また、前記吐出ポート3に突出連通溝3cが形成されている場合では、圧縮行程P3 において、連通隙間Jが吐出ポート3に連通開口しないことが好ましい。すなわち、歯間空間Sが突出連通溝3cに開口するまでは、その歯間空間Sの連通隙間Jのみから吐出側に連通するようにする。
ここで、オイルポンプの回転領域における連通隙間Jの働きを説明する。その歯間空間Sが最大密封空間Smax であるとき、その歯間空間Sにオイルが充填される回転領域(キャビテーションが発生しない領域で低速回転ということもある。)では、その歯間空間Sの内圧上昇を過渡に上昇しないように連通隙間Jから適宜圧力を逃がしてロータのチップクリアランスにおける回転駆動方向のフリクションが低減でき、回転駆動トルクを低減することができる。
また、歯間空間Sが最大密封空間Smax のときにオイルが十分に充填されにくい回転領域(キャビテーションが発生しやすい領域で高速回転ということもある。)では、その歯間空間Sの容積効率がキャビテーション発生により低い状態となって、歯間空間Sの内圧が低く圧力流体を吐出側から適宜流入して吐出圧との圧力差を小さくすることができる。すなわち、その歯間空間Sに先行隣接する歯間空間Sの圧力流体を連通隙間Jを介して適宜流入することで、吐出圧との圧力差を小さくすることができ、圧力差による衝撃が緩和されエロージョンの発生を防ぐことができる。また、以上の効果に加えてさらに、製品の耐久性を向上することができる。また、製品の駆動馬力損失を低減することができ、さらに、脈動を低減し、騒音を低減することができる。
(A)は本発明の正面図、(B)は(A)の連通隙間付近の拡大図である。 (A)は吸入行程図、(B)は吸入終了行程図、(C)は圧縮行程図、(D)は吐出行程を開始した状態図、(E)は吐出行程図である。 (A)乃至(C)は連通隙間が次第に拡大する状態を示す作用図である。 ポンプケーシングの正面図である。 インナーロータの正面図である。 (A)はアウターロータの正面図、(B)は(A)の要部拡大図である。 (A)はアウターロータの別の実施例の正面図、(B)は(A)の要部拡大図である。 本発明の特性を示すグラフである。
符号の説明
吸入ポート…2、吐出ポート…3、間仕切部…4、インナーロータ…5、
アウターロータ…6、歯形…6a、歯頂部…6a1 、歯元部…6a2 、窪み部…6c、
歯間空間…S、連通隙間…J、吸入行程…P1 、吸入終了行程…P2 、圧縮行程…P3 、吐出行程…P4

Claims (5)

  1. トロコイド歯形又は略トロコイド状歯形を有するインナーロータとアウターロータにより構成される歯間空間が吸入ポートと吐出ポート間の間仕切部箇所で圧縮行程を開始するとともに、前記歯間空間は吐出行程にある先行隣接の歯間空間と連通隙間が構成され、該連通隙間は、圧縮行程開始から吐出行程において次第に拡大してなることを特徴とするトロコイド型オイルポンプ。
  2. 吸入ポートと吐出ポートと前記吸入ポートと吐出ポートとの間に位置する間仕切部とを有するロータ室と、トロコイド歯形又は略トロコイド状歯形を有するインナーロータとアウターロータとからなり、前記インナーロータとアウターロータにより構成される歯間空間が前記吸入ポート終端と吐出ポート始端との間の前記間仕切部箇所における閉込み完了から圧縮開始とともに、前記アウターロータの歯形の歯頂部と歯元部との間に形成された前記インナーロータの歯形との非接触領域によって、前記歯間空間と、該歯間空間に対して先行隣接する歯間空間とを連通する連通隙間が形成され、該連通隙間は、ロータの回転とともに、次第に拡大してなることを特徴とするトロコイド型オイルポンプ。
  3. 吸入ポートと吐出ポートと前記吸入ポートと吐出ポートとの間に位置する間仕切部とを有するロータ室と、トロコイド歯形又は略トロコイド状歯形を有するインナーロータとアウターロータとからなり、前記アウターロータの歯形の歯頂部と歯元部との間に凹み状の窪み部が形成され、前記インナーロータとアウターロータにより構成される歯間空間は、前記吸入ポートにおける吸入行程と、間仕切部箇所における吸入終了行程及び圧縮行程と、吐出ポートにおける吐出行程とを形成し、前記圧縮行程の歯間空間と、該歯間空間に対して先行隣接し且つ吐出行程にある歯間空間との間に前記窪み部による連通隙間が形成され、該連通隙間は、ロータの回転とともに、次第に拡大してなることを特徴とするトロコイド型オイルポンプ。
  4. 請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記アウターロータの歯形6aの非接触領域における外周縁の形状は、前記歯形の内方側に湾曲状又は略円弧形状に中間が曲状に凹むことを特徴とするトロコイド型オイルポンプ。
  5. 請求項1,2,3又は4のいずれか1項の記載において、前記連通隙間は、前記歯間空間の閉込み完了状態から少なくとも圧縮行程終了状態又は吐出ポート内に交わる状態に到るまで継続して拡大が維持されてなることを特徴とするトロコイド型オイルポンプ。
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