JP5916078B2 - 内接ギアポンプ - Google Patents
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Description
そして従来より、アウタギアの内歯の形状、及びインナギアの外歯の形状について、抵抗の低減等、種々の目的にて、種々の形状が提案されている。
また特許文献2に記載された従来技術では、インナギアの外歯の歯底部をハイポサイクロイド曲線で形成し、インナギアの外歯の歯先部と歯底部との間となる噛み合い部をインボリュート曲線で形成している。これにより、ロータの偏芯量の設定に自由度を与えて吐出量を大きくし得るようにしている。
軽量化へのアプローチとしては小型化が適切であるが、単純に小型化した場合、ポンプ吐出能力が低下してしまう。特許文献1に記載された従来技術では、サイクロイド曲線を用いて内歯や外歯の形状を決めているが、サイクロイド曲線を用いる場合、歯数が決まっている場合は歯の高さの調整ができない。歯の高さは内接ギアポンプの吐出能力に影響するので、歯の高さを自由に調整できない場合、吐出能力を維持しながら内接ギアポンプの小型化を進めることができない。
効率向上へのアプローチとしては、抵抗の低減が挙げられる。内接ギアポンプの場合、インナギアの外歯とアウタギアの内歯の間で発生する「すべり」によって、効率が低下することが知られている。しかし、特許文献2に記載された従来技術には、具体的な効率向上の手段が記載されていない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、より小型化が可能であり、より効率を向上させることができる内接ギアポンプを提供することを課題とする。
まず、本発明の第1の発明は、外周面に複数の外歯を有するインナギアと、前記インナギアを収容可能な収容空間が形成されて当該収容空間を形成する内周面に前記外歯と噛合する複数の内歯を有するアウタギアと、を備えた内接ギアポンプである。
そして、前記内歯または前記外歯の一方側が、他方側の創成曲線から形成された歯形に基づいた形状を有している。
また、前記内歯において前記インナギアの方向に突出している形状は円弧形状であり当該円弧形状の半径をro、前記外歯において前記アウタギアの方向に突出している形状は湾曲形状であり当該湾曲形状の中央部に対する両隅部は円弧形状に形成されて当該両隅部の円弧形状の半径をri、前記内歯のピッチ円の直径をdp、前記内歯の歯数をzとした場合、前記アウタギアの全体形状に対する前記内歯の歯先部の少なくとも高さおよび形状を決める比率であるro/(dp/z)と、前記アウタギアの全体形状に対する前記インナギアの前記外歯の歯先部の中央部に対する両隅部の形状を決める比率であるri/(dp/z)と、に関して、1.6>ro/(dp/z)>1.0、且つro/(dp/z)>ri/(dp/z)≧0.13の関係を満足する形状を有しており、且つ、隣り合う前記内歯の前記円弧形状に沿ったそれぞれの円弧における一方の円弧と前記内歯のピッチ円との交点であって他方の円弧に近い側の交点が、他方の円弧の外部に位置するように各内歯が設けられている。
また、隣り合う内歯が干渉しないように各内歯を適切な位置に配置することができる。
●[内接ギアポンプ1の全体構造(図1〜図3)]
まず図1の斜視図を用いて内接ギアポンプ1の構造について説明する。
内接ギアポンプ1は、インナギア10と、アウタギア20と、ハウジング30と、ポンププレート40と、駆動軸部材50と、にて構成されている。
インナギア10は、アウタギア20の収容空間20Kに収容されている。そしてインナギア10とアウタギア20は、ハウジング30の蓋となるポンププレート40とハウジング30にて形成されるギア収容空間30Kに収容されている。
また駆動軸部材50において軸Z51回りに回転可能なシャフト51は、ハウジング30に形成された貫通孔32及びインナギア10に形成された軸孔12に挿通されてインナギア10を回転駆動する。この軸Z51は、後述するインナギア10の回転軸Ziとなる。また符号52はシール部材である。
なお、図2(C)は図1に示すポンププレート40をハウジング30の側から見た図であり、図2(B)は図1に示すアウタギア20とインナギア10をポンププレート40の側から見た図であり、図2(A)は図1に示すハウジング30をポンププレート40の側から見た図である。
アウタギア20は、インナギア10を収容可能な収容空間20Kを有しており、当該収容空間20Kを形成するアウタギア20の内周面には、インナギア10の外歯T11〜T17と噛合する複数の内歯T21〜T28を有しており、本実施の形態では、歯数が8歯の例を示している。
なお図3(A)において、アウタピッチ円Coはアウタギア20の内歯T21〜T28のピッチ円であり、インナピッチ円Ciはインナギア10の外歯T11〜T17のピッチ円である。
また、図2(B)及び図3(A)に示すように、アウタギア20の回転軸Zoと、インナギア10の回転軸Ziは、異なる位置になる。これにより、インナギア10が回転軸Zi回りに回転すると、アウタギア20が回転軸Zo回りに回転し、インナギア10の外歯T11〜T17とアウタギア20の内歯T21〜T28との間に形成される閉鎖空間22の容積が徐々に大きくなった後、徐々に小さくなっていく。この、容積が徐々に大きくなっていく側に流体の吸入口41が設けられており、容積が徐々に小さくなっていく側に流体の吐出口42が設けられている(図2(C)参照)。
なお本実施の形態では、吸入口41と吐出口42は、ポンププレート40に設けられている例を説明する。
同様に、ギア収容空間30Kにおいて、ハウジング30に対向する側のポンププレート40の面には、吐出口42に連続して周方向に延びるように、略三日月形状の凹部である吐出ポート41Bが形成されている。そしてポンププレート40の吐出ポート41Bに対向するハウジング30の面には、吐出ポート41Bと同じ形状の、略三日月形状の凹部である吐出ポート31Bが形成されている。
図3(A)〜(C)は、インナギア10とアウタギア20の噛合状態を示しており、図3(A)における領域A1の拡大図を図3(B)に示し、図3(B)における領域A2の拡大図を図3(C)に示している。なお図3(A)では、インナギア10の軸孔12の記載を省略している。
図3(B)に示すように、アウタギア20の内歯T21〜T28において、インナギア10の方向に突出している歯先部の形状は、中心Zro、半径roの円弧Croに沿った形状に設定されている。またアウタギア20の内歯T21〜T28において、インナギア10の方向に対して反対側に凹んでいる歯底部の形状は、特に円弧やサイクロイド曲線等に限定されず、適宜設定された湾曲形状(連続的な任意の曲線形状)に設定されている。
そしてインナギア10の外歯T11〜T17は、アウタギア20の創成曲線から形成された歯形に基づいた形状を有しており、アウタギア20の側に突出している歯先部の形状は湾曲形状に設定されている。そして当該歯先部の湾曲形状の中央部に対する両隅部T11S、T12Sは、図3(C)に示すように、創成曲線から形成された形状に対して、中心Zri、半径riの円弧Criに沿った形状に設定されている。
なお、本実施の形態の説明では、アウタギアの内歯の歯先部の形状を円弧形状、内歯の歯底部の形状を湾曲形状に形成し、当該内歯の創成曲線に基づいて、インナギアの外歯の形状を形成した例を説明したが、インナギアの外歯の歯底部の形状を円弧形状、外歯の歯先部の形状を湾曲形状に形成し、当該外歯の創成曲線に基づいて、アウタギアの内歯の形状を形成してもよい。
噛み合い領域LBは、外歯T12と内歯T22との間で「すべり」がほとんど発生しない領域(すべり率が、ほぼゼロの領域)である。噛み合い領域LAは、噛み合い領域LBの直前までの領域であり、「すべり」が発生する領域である。また噛み合い領域LCは、噛み合い領域LBの直後の領域であり、外歯T12の円弧半径riを有する隅部が内歯T22を押す領域であり、「すべり」が発生する領域である。
この噛み合い領域LA〜LCのそれぞれの長さは、外歯及び内歯の形状で変化する。本実施の形態では、外歯及び内歯の形状は、内歯の歯先部の円弧形状の半径ro(または外歯の歯底部の円弧形状の半径)を適宜変更することで、外歯及び内歯の形状(すなわち噛み合い領域LA〜LCのそれぞれの長さ)を変更することができる。また、外歯の両隅部の円弧半径riを適宜変更することで、噛み合い領域LCの長さを変更することができる。
以降に、アウタギア20の内歯の歯先部の円弧形状の円弧Croの半径roをそれぞれ変更した3種類の形状のアウタギア20及びインナギア10の例と、それぞれの噛み合い領域LA〜LCの長さの違いと、「すべり」をより低減した最適形状の考察について説明する。
図4(A)〜(C)のそれぞれは、それぞれの個所の寸法等を、図4(D)に示す設定表60の値に設定した、アウタギア20及びインナギア10の形状を示している。なお図4(A)〜(C)では、インナギア10の軸孔12の記載を省略している。
図4(D)に示す設定表60において「偏芯量」は、アウタギア20の回転軸Zoとインナギア10の回転軸Ziとの間の距離である。
また「歯数(z)」は、アウタギア20の内歯の数である。
また「アウタピッチ径(dp)」は、アウタギア20の内歯のピッチ円であるアウタピッチ円Coの直径である。
また「内歯円弧半径(ro)」は、アウタギア20の内歯の歯先部の円弧形状における円弧Croの半径である。
また「外歯隅部半径(ri)」は、図3に示した外歯の歯先部の中央部に対する両隅部の円弧形状における円弧Criの半径である。
また、「比率ro/(dp/z)」は、アウタギア20の全体形状に対する内歯の歯先部の高さや形状を決める比率であり、「比率ri/(dp/z)」は、アウタギア20の全体形状に対するインナギア10の外歯の歯先部の中央部に対する両隅部の形状を決める比率である。
図4(A)の例に示す形状では、アウタピッチ径と内歯円弧半径との比率を示すro/(dp/z)=0.967・・であり、図4(D)の設定表60では、1.0とみなしている。また、アウタピッチ径と外歯隅部半径との比率を示すri/(dp/z)=0.0967・・であり、図4(D)の設定表60では、0.10とみなしている。
図4(B)の例に示す形状では、アウタピッチ径と内歯円弧半径との比率を示すro/(dp/z)=1.290・・であり、図4(D)の設定表60では、1.3とみなしている。また、アウタピッチ径と外歯隅部半径との比率を示すri/(dp/z)=0.1354・・であり、図4(D)の設定表60では、0.13とみなしている。
図4(C)の例に示す形状では、アウタピッチ径と内歯円弧半径との比率を示すro/(dp/z)=1.547・・であり、図4(D)の設定表60では、1.6とみなしている。また、アウタピッチ径と外歯隅部半径との比率を示すri/(dp/z)=0.1251・・であり、図4(D)の設定表60では、0.12とみなしている。
図5のグラフより、図4(B)に示す形状が、最も効率がよい形状であることがわかる。
また、発明者は、図4(A)〜(C)の形状のアウタギア20及びインナギア10にて、ポンプ吐出能力が従来と同等以上であることを確認している。
1.6>ro/(dp/z)>1.0 (式1)
ri/(dp/z)≧0.13 (式2)
なお、riがroよりも大きくなることは考えられないので、(式2)については、以下のように、更に条件を追加した(式3)に変更することができる。
ro/(dp/z)>ri/(dp/z)≧0.13 (式3)
従って、上記の(式1)と(式3)の双方の関係を満足する形状とすると、アウタギア20とインナギア10の形状において、より効率よい形状とすることができる。
なお、(式1)における下限(=1.0)となる形状が、図4(A)に示す形状であり、(式1)における上限(=1.6)となる形状が図4(C)に示す形状である。
また、(式2)における下限(=0.13)となる形状が、図4(B)に示す形状である。
次に図6、図7(A)〜(C)を用いて、隣り合う内歯が干渉しないように設定する方法について説明する。
図6に示すように、アウタギア20における隣り合う2つの内歯に対して、以下のように各パラメータを設定する。
円弧Cro:アウタギア20の内歯の歯先部の円弧形状に沿った円弧(図3(B)参照)
中心Zro:円弧Croの中心(図3(B)参照)
アウタピッチ円Co:アウタギア20の内歯のピッチ円(図3(A)参照)
内歯中心ピッチ円Cc:アウタギア20の内歯の円弧形状に沿った円弧Croの中心Zroを通る円
ro:円弧Croの半径(図3(B)参照)
dp:アウタピッチ円Coの直径(図3(A)参照)
dc:内歯中心ピッチ円Ccの直径
a :偏心量(アウタギア20の回転軸Zoとインナギア10の回転軸Ziとの間の距離)
z :アウタギア20の内歯の歯数
直線Y1:隣り合う2つの内歯に沿ったそれぞれの円弧Croのそれぞれの中心Zroを通る直線
直線Y2:アウタギア20の回転軸Zoを通り直線Y1に直交する直線
直線Y3:アウタギア20の回転軸Zoと、一方の円弧Croの中心Zroと、を通る直線
交点P1:一方の円弧Croとアウタピッチ円Coとの交点であって他方の円弧Croに近い側の交点
θ:直線Y2と直線Y3とのなす角度
直線Y4:交点P1と、当該交点P1を有する円弧Croの中心Zroと、を通る直線
直線Y5:交点P1を通り直線Y2と平行な直線
直線Y6:アウタギア20の回転軸Zoと、交点P1と、を通る直線
θ1:直線Y2と直線Y6とのなす角度で、角度θより小
ho:交点P1と直線Y1との間の距離
lo:中心Zroと直線Y2との間の距離
lo´:中心Zroと直線Y5との間の距離
θ=360°/2z (式4)
dp=2az (式5)
ho=(dc/2)*cosθ−(dp/2)*cosθ1 (式6)
lo=(dc/2)*sinθ (式7)
lo´=√(ro2−ho2) (式8)
そして、本発明の内接ギアポンプ1において、アウタギア20の内歯の円弧形状に沿った円弧Croの中心Zroの位置を、以下の(式9)を満たす範囲に設定する。
lo´<lo (式9)
図7(B)は、(式9)を満足しない範囲(lo´=lo)に中心Zroを設定した状態におけるアウタピッチ円Co、内歯中心ピッチ円Cc、円弧Cro、中心Zroを示す図である。この設定では、隣り合う2つの内歯において、一方の円弧Croとアウタピッチ円Coとの交点であって他方の円弧Croに近い側の交点P1が、他方の円弧Croの円周上に位置する。この状態では、隣り合う内歯が干渉するので、好ましくない位置に内歯が配置される。
図7(C)は、(式9)を満足しない範囲(lo´>lo)に中心Zroを設定した状態におけるアウタピッチ円Co、内歯中心ピッチ円Cc、円弧Cro、中心Zroを示す図である。この設定では、隣り合う2つの内歯において、一方の円弧Croとアウタピッチ円Coとの交点であって他方の円弧Croに近い側の交点P1が、他方の円弧Croの内部に位置する。この状態では、隣り合う内歯が干渉するので、好ましくない位置に内歯が配置される。
また本発明の内接ギアポンプ1において、アウタギア及びインナギアの歯数は、本実施の形態にて説明した歯数に限定されず、種々の歯数のアウタギア及びインナギアに適用することができる。
本発明の内接ギアポンプ1は、例えば車両に用いる種々のオイルポンプとして利用することができる他にも、種々の流体の吸入と吐出を行う種々の機械のポンプとして利用することができる。
10 インナギア
20 アウタギア
20K 収容空間
30 ハウジング
30K ギア収容空間
31A、41A 吸入ポート
31B、41B 吐出ポート
40 ポンププレート
41 吸入口
42 吐出口
50 駆動軸部材
Ci インナピッチ円(インナギアの外歯のピッチ円)
Co アウタピッチ円(アウタギアの内歯のピッチ円)
dp アウタギアの内歯のピッチ円の直径
ri インナギアの歯先部の中央部に対する両隅部の円弧半径
ro アウタギアの歯先部の円弧半径
T11〜T17 外歯
T21〜T28 内歯
z アウタギアの内歯の歯数
Zi インナギアの回転軸
Zo アウタギアの回転軸
Claims (1)
- 外周面に複数の外歯を有するインナギアと、
前記インナギアを収容可能な収容空間が形成されて当該収容空間を形成する内周面に前記外歯と噛合する複数の内歯を有するアウタギアと、を備えた内接ギアポンプにおいて、
前記内歯または前記外歯の一方側が、他方側の創成曲線から形成された歯形に基づいた形状を有しており、
前記内歯において前記インナギアの方向に突出している形状は円弧形状であり当該円弧形状の半径をro、前記外歯において前記アウタギアの方向に突出している形状は湾曲形状であり当該湾曲形状の中央部に対する両隅部は円弧形状に形成されて当該両隅部の円弧形状の半径をri、前記内歯のピッチ円の直径をdp、前記内歯の歯数をzとした場合、前記アウタギアの全体形状に対する前記内歯の歯先部の少なくとも高さおよび形状を決める比率であるro/(dp/z)と、前記アウタギアの全体形状に対する前記インナギアの前記外歯の歯先部の中央部に対する両隅部の形状を決める比率であるri/(dp/z)と、に関して、
1.6>ro/(dp/z)>1.0
且つro/(dp/z)>ri/(dp/z)≧0.13
の関係を満足する形状を有しており、且つ、隣り合う前記内歯の前記円弧形状に沿ったそれぞれの円弧における一方の円弧と前記内歯のピッチ円との交点であって他方の円弧に近い側の交点が、他方の円弧の外部に位置するように各内歯が設けられている、
内接ギアポンプ。
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