JP2011162362A - ジボランの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
例えば、半導体の製造に用いられるジボランには高品質のものが要求される。しかし、従来の方法で得られるジボランは不純物として塩化メチル(CH3Cl)およびメタン(CH4)を含むため、純度、収率を十分に向上することができない。本発明によれば、 不純物であるメタンを発生することなく純度の高いジボランを収率よく得ることができ、さらにリサイクル可能な溶媒の歩留まりを向上することができる工業的に有利なジボランの製造方法を提供することができる。
【解決手段】
ソジウムボロハイドライドとジボランとを反応させた後、更に三塩化ホウ素を反応させるジボランの製造方法。
【選択図】なし
例えば、半導体の製造に用いられるジボランには高品質のものが要求される。しかし、従来の方法で得られるジボランは不純物として塩化メチル(CH3Cl)およびメタン(CH4)を含むため、純度、収率を十分に向上することができない。本発明によれば、 不純物であるメタンを発生することなく純度の高いジボランを収率よく得ることができ、さらにリサイクル可能な溶媒の歩留まりを向上することができる工業的に有利なジボランの製造方法を提供することができる。
【解決手段】
ソジウムボロハイドライドとジボランとを反応させた後、更に三塩化ホウ素を反応させるジボランの製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明はジボラン(B2H6)の製造方法に関する。ジボランは、沸点−92.5℃で常温では気体であり、引火性、毒性が強く、そのまま燃料、ロケット推進薬等として利用され、また、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、水素(H2)等のガスで希釈された混合ガスとして、半導体、太陽電池等の製造用ドーパントやBPSG絶縁膜材料として利用される。さらにジボランは、種々のアミン付加体や高次ボランのような、より安定した取り扱い容易な物質に変えられ、例えば、めっき工業分野における還元剤や、有機合成分野における生理活性物質として幅広く利用される。
ジボランの製造方法として、エチレングリコールジメチルエーテル類等の溶媒中で、ソジウムボロハイドライド(NaBH4)と三塩化ホウ素(BCl3)とを反応させる方法が知られている(特許文献1参照)。
上記従来のジボランの製造方法における反応は、以下の反応式(1)で示される反応と、反応式(2)で示される反応の2段階で進み、両反応式を足し合わせた反応式(3)により全体の反応が表される。
7NaBH4+BCl3→4NaB2H7+3NaCl (1)
6NaB2H7+2BCl3→7B2H6+6NaCl (2)
3NaBH4+BCl3→2B2H6+3NaCl (3)
6NaB2H7+2BCl3→7B2H6+6NaCl (2)
3NaBH4+BCl3→2B2H6+3NaCl (3)
例えば、半導体の製造に用いられるジボランには高品質のものが要求される。しかし、上記従来の方法で得られるジボランは不純物として塩化メチル(CH3Cl)およびメタン(CH4)を含むため、純度、収率を十分に向上することができない。上記特許文献においては、得られるジボランの純度は、コールドトラップにより半精製した状態で97.8〜99.6%、収率は85.1〜89.0%であり、不純物として塩化メチルおよびメタンを含む。そのような塩化メチルやメタンを除去するための精製工程は製造コストを増大させる。
さらに従来の製造方法においては、反応に用いられる溶媒が分解され、溶媒の再利用に際して歩留まりが悪化したり、溶媒に不純物が蓄積されて、再生処理のための新たな精製工程が必要になり、製造コストが増大する。そのため、ジボランの生成反応直後における純度と収率を向上させ、溶媒の再利用における歩留まりの向上を図り、効率的な生産を行うことが求められている。本発明は、このような課題を解決できるジボランの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ジボランの生成反応直後における純度と収率を向上させるための技術の開発に先立ち、従来技術における不純物の発生のメカニズムについて検討した。その結果、次のような不純物の発生メカニズムが判明した。すなわち、反応式(1)で表される反応に際して、三塩化ホウ素と反応した溶媒の末端のエーテル結合が開裂し、塩化メチルを生じる。
その塩化メチルが、ソジウムボロハイドライドにより還元されることでメタンとなる。
ソジウムボロハイドライドが反応系内にある間は、発生した塩化メチルは比較的速やかにメタンにまで還元される。
ソジウムボロハイドライドが反応系内にある間は、発生した塩化メチルは比較的速やかにメタンにまで還元される。
上記のような従来技術における不純物の発生メカニズムから、三塩化ホウ素を用いることなく、反応中間体であるNaB2H7を生成し、その反応中間体と三塩化ホウ素を反応させて、ジボランを生成すれば、不純物であるメタンの発生が実質的にないことが究明された。本発明者らは、かかる不純物の発生メカニズムに基づきジボランの製造方法につき鋭意検討を行い、ソジウムボロハイドライドとジボランの反応により生成される反応中間体であるNaB2H7に、三塩化ホウ素を反応させることで、ジボランを生成できることを新たに見出し、本発明をなすに至った。
本発明によるジボランの製造方法は、ソジウムボロハイドライドとジボランを反応させることで反応中間体を生成し、前記反応中間体と三塩化ホウ素を反応させることで、ジボランを生成することを特徴とする。
本発明において、ソジウムボロハイドライドとジボランを反応させることで反応中間体であるNaB2H7を生成する第1段階の反応は以下の反応式(4)で示され、その反応中間体と三塩化ホウ素を反応させることでジボランを生成する第2段階の反応は、以下の反応式(5)で示される。
2NaBH4+B2H6→2NaB2H7 (4)
6NaB2H7+2BCl3→7B2H6+6NaCl (5)
6NaB2H7+2BCl3→7B2H6+6NaCl (5)
本発明においては、第1段階の反応において、三塩化ホウ素を用いることなく、第2段階の反応において、ソジウムボロハイドライドは、消費され尽くされているので、メタンが副生することなく、不純物であるメタンが含まれることなく、ジボランを得ることができる。また、溶媒の分解による不純物の発生を抑えられる結果、リサイクル可能な溶媒の歩留まりを向上できる。
本発明においては、溶媒にソジウムボロハイドライドが完全に溶解する前に、そのソジウムボロハイドライドの溶液中にジボランを供給して第1段階の反応を開始してもよい。これは、本発明においては溶媒による前記不純物の発生反応が起こらず、溶媒へのNaB2H7の溶解度がNaBH4の溶解度よりも大きいことから、溶媒量はNaB2H7を完全に溶解できる量であれば足りることによる。よって、溶媒にソジウムボロハイドライドが完全に溶解する前に第1段階の反応を開始することで、反応の容積効率を向上させ、ひいてはジボランの生産性を向上させることが可能となる。
本発明によれば、不純物であるメタンを発生することなく純度の高いジボランを収率よく得ることができ、さらにリサイクル可能な溶媒の歩留まりを向上することができる工業的に有利なジボランの製造方法を提供できる。
本発明の方法は、ガス吹込み管,撹拌器,還流冷却器、ヒーター等を備えたガラス製または金属製の反応容器や反応釜といった公知の反応器を用いて行うことができる。まず、反応器に所定量の溶媒とソジウムボロハイドライドを仕込み、攪拌することで溶媒にソジウムボロハイドライドを溶解させる。
溶媒としては、ポリエーテル系のものが好ましく、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム、トリグライムおよびテトラグライムなどが好適であり、また、エーテルの末端がエチル基、プロピル基およびブチル基などのものも利用可能である。
溶媒の量は溶媒種と反応を行う温度により異なるが、例えば、ジグライムを用いる場合はソジウムボロハイドライド1gあたり5ml以上あればよく、また、ソジウムボロハイドライドを反応前に完全溶解させる量である必要はなく、ソジウムボロハイドライドとジボランとの反応により反応中間体であるNaB2H7を生成でき、その生成されたNaB2H7を溶解させることができる量であればよい。
その反応器内のソジウムボロハイドライドの溶液に浸したガス吹き込み管より、水素、窒素、アルゴンおよびヘリウム等のイナートガスを冷却下に吹き込むみ、イナートガスで系内の気相領域の雰囲気を十分に置換する。これは、系内に水分,アルコール分などあると、生成されたジボランがそれらと反応してホウ酸およびホウ酸エステルに容易に変化して収率が低下し、また、反応器材料として一般に用いられるステンレススチールが水分を含む三塩化ホウ素により腐食されるため、それらを防止するためであり、さらに、生成されたジボランが重合して高次ボランが生成されるのを抑制するためである。
イナートガスで系内の気相領域の雰囲気を十分に置換した後、ソジウムボロハイドライドの溶液中にガス吹込み管を用いてジボランを吹き込む。これにより、溶媒中でソジウムボロハイドライドとジボランが反応することで反応中間体であるNaB2H7を生成する第1段階の反応が開始する。この第1段階の反応における反応温度は、好ましくは−10℃〜35℃、より好ましくは0℃〜25℃に保って行なう。−10℃よりも低くなると反応は進行するが冷却に多くのエネルギーを要し、35℃を超えると反応速度は増加するが反応溶液中に吹き込まれたジボランの一部が未反応のまま気相領域に抜けるためである。
そのガス吹込み管から、ジボランと同時にイナートガスを吹き込むことで、反応溶液の逆流防止、吹き込み管の閉塞防止、反応器外からの空気の侵入防止等を図ってもよい。
そのガス吹込み管から、ジボランと同時にイナートガスを吹き込むことで、反応溶液の逆流防止、吹き込み管の閉塞防止、反応器外からの空気の侵入防止等を図ってもよい。
反応容器中に供給するジボランの量は、反応器に仕込んだソジウムボロハイドライドに対してモル比で、0.5以上であることが好ましく、0.5〜1.0であることがより好ましく、0.5〜0.7であることがさらに好ましい。これは、そのモル比が0.5未満では第2段階の反応で、不純物メタンの副生が見られるおそれがあり、1.0を超えても、過剰に加えたジボランは、そのまま反応系内に変化せずに残るだけであるので効果に変化はないことに拠る。
第1段階の反応は反応速度が速く、生成物である反応中間体のNaB2H7 が安定した化合物として存在するので、反応に要する時間は反応溶液中へのジボランの吹き込み速度で決定されることになる。時間としては、1〜2時間が適当である。
次に反応器に三塩化ホウ素を供給して第2段階の反応を開始させる。第2段階の反応において、その供給する三塩化ホウ素の量は、反応器に仕込んだソジウムボロハイドライドの量に対し、モル比で0.29〜0.37として、反応溶液中へ吹き込むのが好適である。モル比で0.29より少ない場合はジボランの収率が低下し、0.37を超えると過剰な三塩化ホウ素が溶媒と反応し、不純物である塩化メチルを生成するので好ましくない。
第2段階の反応における反応温度は好ましくは20〜60℃、より好ましくは25〜50℃である。反応温度が20℃未満になると発生するジボランの気化が不十分となり、60℃を超えると溶媒と三塩化ホウ素との反応により塩化メチルの副生が多くなるため好ましくない。反応時間としては1〜6時間が適当である。
第2段階の反応によって反応溶液中に生成したジボランは吸熱してガスとなり、反応器の気相領域のイナートガスと共に反応器から粗ジボランとして流出される。反応器からイナートガスと共に流出する粗ジボランを、還流冷却器、−78℃に冷却した第1コールドトラップを経由して、液体窒素により約−196℃に冷却された第2コールドトラップに導き、主にジボランと不純物の塩化メチルを凝縮,固化させることでイナートガスと分離し、しかる後に、第2コールドトラップの気相領域を真空排気した後、常温まで加熱し、気化させ、別途準備した圧力容器内に導き捕集する。これにより、半精製品化された状態のジボランを得る。
上記実施形態によれば、第1段階の反応において、ソジウムボロハイドライドは、消費され尽くされているので、第2段階の反応において、メタンが副生することなく、純度の高いジボランを得ることができる。また、使用する溶媒についても、三塩化ホウ素との反応が緩和される結果、次反応への歩留まりを高く維持することができる。
以下、本発明を実施例および比較例を用いて、さらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
実施例1
反応器の内容積が10Lで、反応器出口に−50℃に冷却した還流冷却器を備え、その還流冷却器に約−78℃に冷却した第1コールドトラップおよび約−196℃に冷却した第2コールドトラップを接続したステンレス(SUS304)製電磁撹拌式反応器を備えた反応装置を用い、本発明方法を以下の条件下で実施した。
反応器の内容積が10Lで、反応器出口に−50℃に冷却した還流冷却器を備え、その還流冷却器に約−78℃に冷却した第1コールドトラップおよび約−196℃に冷却した第2コールドトラップを接続したステンレス(SUS304)製電磁撹拌式反応器を備えた反応装置を用い、本発明方法を以下の条件下で実施した。
反応器にジグライム6.00Lを仕込み、そこに粉末状のソジウムボロハイドライド500g(13.2モル)を加えて攪拌して得た溶液に、ヘリウムガスを10L/分で吹き込みつつ、その溶液を25℃にした。
そのソジウムボロハイドライドの溶解液中にジボラン182.8g(6.60モル、仕込みソジウムボロハイドライドに対するモル比0.50)を、流量計を通して1時間で吹き込み、第1段階の反応を行なった。
次に、反応溶液を昇温して40℃とし、その反応液に三塩化ホウ素510.5g(4.36モル、ソジウムボロハイドライドに対するモル比0.33)を、90分かけて吹き込み第2段階の反応を行なった。この三塩化ホウ素の吹き込み中にヘリウムガスを200ml/分で反応溶液中に吹き込み続け、三塩化ホウ素の吹き込み後もヘリウムガスの吹き込みを3時間継続し、ジボランの発生を完結させた。
そのソジウムボロハイドライドの溶解液中にジボラン182.8g(6.60モル、仕込みソジウムボロハイドライドに対するモル比0.50)を、流量計を通して1時間で吹き込み、第1段階の反応を行なった。
次に、反応溶液を昇温して40℃とし、その反応液に三塩化ホウ素510.5g(4.36モル、ソジウムボロハイドライドに対するモル比0.33)を、90分かけて吹き込み第2段階の反応を行なった。この三塩化ホウ素の吹き込み中にヘリウムガスを200ml/分で反応溶液中に吹き込み続け、三塩化ホウ素の吹き込み後もヘリウムガスの吹き込みを3時間継続し、ジボランの発生を完結させた。
還流冷却器、第1コールドトラップを経由して第2コールドトラップに捕集された半精製品ジボランの収率を求め、また、ガスクロマトグラフィーにより、品質として純度、メタン含有率、および塩化メチル含有率を求めた。さらに、反応後の溶媒をろ過し、副生した塩化ナトリウム(NaCl)を除去し、溶媒の回収率を求めた。以下の表1に求めた各値を示す。
比較例1
実施例1と同様の反応装置を用い、反応器にジグライム6.00Lを仕込み、そこに粉末状のソジウムボロハイドライド500g(13.2モル)を加えて攪拌して得た溶液に、ヘリウムガスを10L/分で吹き込みつつ、その溶液を25℃にした。そのソジウムボロハイドライドの溶解液中に、三塩化ホウ素221.0g(1.89モル、仕込みソジウムボロハイドライドに対するモル比0.14)を流量計を通して1時間で吹き込み、第1段階の反応を行なった。第1段階の反応終了後、ヘリウムガスで系内の気相領域の雰囲気を置換した後に反応液温を昇温して40℃とし、残りの三塩化ホウ素294.6g(2.51モル、ソジウムボロハイドライドに対するモル比0.19)を90分で吹き込み、第2段階の反応を行った。その後、実施例1と同様にして、純度、メタン含有率、および塩化メチル含有率を求めた。さらに、反応後の溶媒をろ過し、副生した塩化ナトリウム(NaCl)を除去し、溶媒の回収量を求めた。以下の表1に求めた各値を示す。
実施例1と同様の反応装置を用い、反応器にジグライム6.00Lを仕込み、そこに粉末状のソジウムボロハイドライド500g(13.2モル)を加えて攪拌して得た溶液に、ヘリウムガスを10L/分で吹き込みつつ、その溶液を25℃にした。そのソジウムボロハイドライドの溶解液中に、三塩化ホウ素221.0g(1.89モル、仕込みソジウムボロハイドライドに対するモル比0.14)を流量計を通して1時間で吹き込み、第1段階の反応を行なった。第1段階の反応終了後、ヘリウムガスで系内の気相領域の雰囲気を置換した後に反応液温を昇温して40℃とし、残りの三塩化ホウ素294.6g(2.51モル、ソジウムボロハイドライドに対するモル比0.19)を90分で吹き込み、第2段階の反応を行った。その後、実施例1と同様にして、純度、メタン含有率、および塩化メチル含有率を求めた。さらに、反応後の溶媒をろ過し、副生した塩化ナトリウム(NaCl)を除去し、溶媒の回収量を求めた。以下の表1に求めた各値を示す。
上記表1から、実施例により得られたジボランの収率および品質は比較例と比べて大幅に改善されていることを確認できる。また、回収された溶媒量は実施例では比較例よりも多いことが確認された。
Claims (2)
- ソジウムボロハイドライドとジボランとを反応させた後、更に三塩化ホウ素を反応させるジボランの製造方法。
- 前記ジボランの使用割合が、ソジウムボロハイドライド1モルに対して、0.5モル以上である請求項1に記載のジボランの製造方法。
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JP2010023725A JP2011162362A (ja) | 2010-02-05 | 2010-02-05 | ジボランの製造方法 |
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Cited By (1)
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CN110627820A (zh) * | 2019-09-25 | 2019-12-31 | 博纯材料股份有限公司 | 一种乙硼烷合成系统及其方法 |
-
2010
- 2010-02-05 JP JP2010023725A patent/JP2011162362A/ja active Pending
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CN110627820A (zh) * | 2019-09-25 | 2019-12-31 | 博纯材料股份有限公司 | 一种乙硼烷合成系统及其方法 |
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