JP2011126728A - ガラス組成物とそれを用いたフラットパネルディスプレイ用ガラス基板 - Google Patents

ガラス組成物とそれを用いたフラットパネルディスプレイ用ガラス基板 Download PDF

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Abstract

【課題】液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板に好適であるとともに、高い熱安定性を保つとともにBaOを実質的に含まないながらも失透温度が低く、ダウンドロー法によりガラス基板の製造に適したガラス組成物を提供する。
【解決手段】質量%で表示して、SiO2 54〜62%、B23 4〜11%、Al2315〜20%、MgO 2〜5%、CaO 0〜7%、SrO 0〜13.5%、K2O 0〜1%、SnO2 0〜1%、Fe23 0〜0.2%を含み、BaOを実質的に含まず、アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が10〜18.5質量%であり、失透温度が1200℃以下であるガラス組成物とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス組成物、特に液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いるガラス基板に好適なガラス組成物に関する。また、本発明は、このガラス組成物を用いたFPD用ガラス基板に関する。
液晶ディスプレイ(LCD)など、フラットパネルディスプレイ(FPD)と呼ばれる薄型の画像表示装置の需要が拡大している。このうち、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス型LCDが、表示される画像が美しいことから普及が進んでいる。アクティブマトリクス型LCDのTFT回路は、ガラス基板の表面に形成される。TFT回路をガラス基板の表面に形成する工程は、従来、1000℃以上の環境下で実施されていたが、近年になって、500〜600℃でTFT回路を形成可能な、低温ポリシリコン(p−Si)型と呼ばれるアクティブマトリックス型LCDが開発された。これに伴い、LCD用ガラス基板として、高温下においても物性が安定しているシリカガラス以外にもアルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラスの使用が可能となっている。
FPDのガラス基板には、肉厚が薄く、表面の平滑性が高いことが求められる。そして近年進むFPDの大型化に対応するために、より大きなサイズのガラス基板製造への要求も強い。ガラス基板の製造方法には種々あるが、このようなガラス基板を効率良く得るには、ダウンドロー法が最適である。ダウンドロー法では、成形装置の上部の溝に溶融ガラスを流し込み、溝の両側から溢れ出た溶融ガラスを成形装置の外壁に沿って下方へ流動させる。そして、成形装置の下部で、2つに分かれて流動してきた溶融ガラスを融合させて一体とし、一枚のガラスリボンを連続的に生産する。ガラスリボンは、固化後、所定のサイズに切断されてガラス基板となる。
ダウンドロー法では、ガラス基板の別の製造方法であるフロート法に比べて成形温度が低く、失透が生じやすい。このため、ダウンドロー法によるガラス基板の安定した製造には、失透温度が低いガラス組成物が求められる。また、ガラス基板上へのTFT回路形成を安定して行うためには、高い熱安定性(例えば、高いガラス転移点あるいは高い歪点)を有するガラス組成物が望まれる。
FPDのガラス基板に用いるガラス組成物として、例えば、以下の組成物が知られている。
特開2006-169107号公報には、ダウンドロー法以外の方法により製造できるガラス組成物であって、アルカリ金属酸化物を実質的に含まず、質量%で表示して、60〜67%のSiO2、16〜23%のAl23、0〜15%のB23、0〜8%のMgO、0〜18%のCaO、0〜15%のSrO、0〜21%のBaOから実質的になり、MgO+CaO+SrO+BaOの合計が12〜30%であるアルミノシリケートガラス組成物が開示されている。しかし、この組成物はダウンドロー法に適しておらず、また、実施例に示すようにBaOの含有量が多く、環境に与える負荷、製造コストの面から好ましくない。
特許第3988209号公報には、FPDのガラス基板として好適なガラス組成物であって、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、フロート法で成形可能な組成物が開示されている。しかし、この組成物は、実施例に示すように失透温度が1250℃以上と高く、ダウンドロー法に適しているとはいえない。
特開2009-13049号公報には、アルカリ金属酸化物、As23、Sb23を実質的に含有せず、モル%表示で、SiO2 55〜75%、Al237〜15%、B23 7〜12%、MgO 0〜3%、CaO 7〜12%、SrO 0〜5%、BaO 0〜2%、ZnO 0〜5%、SnO2 0.01〜1%を含み、かつ液相粘度が105.2dPa・s以上、高温粘度102.5dPa・sにおける温度が1550℃以下であるガラス組成物が開示されている。
ところで、ガラス成分の一つであるBaOは、ガラスの分相を抑制し、溶解性を向上させ、失透温度を抑制する作用を有することが知られている(特許第3988209号公報の段落0023参照)。しかしBaOは、環境への負荷が大きく、また、原料の価格が高いことからガラス基板の製造コストを増大させる。このため、BaOを実質的に含まないガラス組成物が望まれる。
特開平2006-169107号公報 特許第3988209号公報 特開2009-13049号公報
本発明は、FPD用ガラス基板に好適であるとともに、高い熱安定性を保つとともにBaOを実質的に含まないながらも失透温度が低く、ダウンドロー法によるガラス基板の製造に適したガラス組成物を提供することを目的とする。
本発明のガラス組成物は、質量%で表示して、SiO2 54〜62%、B23 4〜11%、Al2315〜20%、MgO 2〜5%、CaO 0〜7%、SrO 0〜13.5%、K2O 0〜1%、SnO2 0〜1%、Fe23 0〜0.2%を含み、BaOを実質的に含まず、アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が10〜18.5質量%であり、失透温度が1200℃以下である。
本発明のFPD用ガラス基板は、本発明のガラス組成物からなる。
本発明のガラス組成物は、FPD用ガラス基板に好適であるとともに、高い熱安定性を保つとともにBaOを実質的に含まないながらも失透温度が低く、ダウンドロー法によるガラス基板の製造に適している。
本発明のガラス組成物において、CaOおよびSrOの含有率のバランスを変化させたときのガラス組成物の失透温度の変化を、アルカリ土類金属酸化物(RO)に占めるCaOの割合(CaO/RO)を横軸として示す図である。 本発明のガラス組成物において、CaOおよびSrOの含有率のバランスを変化させたときのガラス組成物の失透温度の変化を、アルカリ土類金属酸化物(RO)に占めるSrOの割合(SrO/RO)を横軸として示す図である。 本発明のガラス組成物において、K2Oの含有率を変化させたときのガラス組成物の失透温度の変化を示す図である。 本発明のガラス組成物において、K2Oの含有率を変化させたときのガラス組成物のガラス転移点の変化を示す図である。 本発明のガラス組成物において、K2Oの含有率を変化させたときのガラス組成物の線熱膨張係数の変化を示す図である。
本発明のガラス組成物について、組成の限定理由を説明する。以下の記述において、組成を示す「%」表示は、全て質量%である。
(SiO2
SiO2はガラスの骨格をなす成分であり、ガラスの化学的耐久性および耐熱性を高める作用を有する。SiO2の含有率が54%未満になると、その効果が十分に得られない。一方、SiO2の含有率が62%を超えると失透温度が上昇する。また、ガラスの溶融性が悪くなるとともに溶融粘度が上昇し、ダウンドロー法によるガラス基板の形成が困難となる。したがって、SiO2の含有率は、下限に関し、54%以上であり、55.5%以上が好ましく、56.5%以上がより好ましい。SiO2の含有率は、上限に関し、62%以下であり、60%以下が好ましく、58.4%未満がさらに好ましい。SiO2の含有率は54%以上62%以下であり、55.5%以上60%以下が好ましく、56.5%以上58.4%未満がより好ましい。
(B23
23は、ガラスの粘性を引き下げて、ガラスの溶解および清澄を促進する成分である。B23の含有率が4%未満になると、ガラスの溶融性が悪くなって、ダウンドロー法によるガラス基板の形成が困難となる。一方、B23の含有率が11%を超えると、溶融ガラス表面からのB23の揮発量が多くなり、ガラスの均質化が困難になる。したがって、B23の含有率は、下限に関し、4%以上であり、7%以上が好ましく、8%以上がより好ましい。B23の含有率は、上限に関し、11%以下であり、10%以下がより好ましい。B23の含有率は4%以上11%以下であり、7%以上11%以下が好ましく、8%以上10%以下がより好ましい。
(Al23
Al23は、ガラスの骨格をなす成分であり、ガラスの歪点を高くする作用を有する。ポリシリコン(p−Si)型LCDに用いるガラス基板には、500〜600℃で行われるTFT回路形成の際に高い熱安定性が要求される。このため、ガラスの歪点を高くする作用を有するAl23は、本発明のガラス組成物によって重要である。Al23の含有率が15%未満になると、ガラスの歪点が低下し、FPD用ガラス基板に好適なガラス組成物が得られない。一方、Al23の含有率が20%を超えると、酸に対する耐久性が低下し、例えば、FPDを製造する際の酸処理工程に耐えられなくなる。したがって、Al23の含有率は、下限に関し、15%以上であり、16%以上が好ましく、18%以上がより好ましい。Al23の含有率は、上限に関し、20%以下である。Al23の含有率は15%以上20%以下であり、16%以上20%以下が好ましく、18%以上20%以下がより好ましい。
(MgO)
MgOは、ガラスの粘性を引き下げて、ガラスの溶解および清澄を促進する成分である。また、MgOはガラスの密度を下げる作用を有し、得られるガラスを軽量化しつつ溶解性を向上させるためには有利な成分である。MgOの含有率が2%未満になると、ガラスの溶融性が悪くなって、ダウンドロー法によるガラス基板の形成が困難となる。一方、MgOの含有率が5%を超えると、ガラスの分相性が増加することで酸に対する耐久性が低下し、例えば、FPDを製造する際の酸処理工程に耐えられなくなる。したがって、MgOの含有率は、下限に関し、2%以上であり、3%以上が好ましい。MgOの含有率は、上限に関し、5%以下である。MgOの含有率は2%以上5%以下であり、3%以上5%以下が好ましい。
(CaO)
CaOは、ガラスの粘性を引き下げて、ガラスの溶解および清澄を促進する成分である。本発明のガラス組成物に必ずしも含まれていなくてよいが、ガラスの溶融性を向上させ、ダウンドロー法によるガラス基板の製造を安定させるためには、含まれていることが好ましい。また、SrOとのバランスをとることで、高い熱安定性を保ちながら失透温度がより低いガラス組成物を得るためにはCaOの含有が必要となる。一方で、CaOの含有率が過度に大きくなるとガラスの失透の原因となる。このため、過度に大きい含有率は好ましくない。これらの観点から、CaOの含有率は、下限に関し、0%以上であり、0.2%以上が好ましい。CaOの含有率は、上限に関し、7%以下であり、4.5%以下が好ましい。CaOの含有率は0%以上7%以下であり、0.2%以上4.5%以下が好ましい。
(SrO)
SrOは、ガラスの粘性を引き下げて、ガラスの溶解および清澄を促進する成分である。本発明のガラス組成物に必ずしも含まれていなくてよいが、ガラスの溶融性を向上させ、ダウンドロー法によるガラス基板の製造を安定させるためには、含まれていることが好ましい。また、CaOとのバランスをとることで、高い熱安定性を保ちながら失透温度がより低いガラス組成物を得るためにはSrOの含有が必要となる。さらに、本発明のガラス組成物はBaOを実質的に含まないため、この観点からもSrOを含むことが好ましい。一方、SrOの含有率が過度に大きくなると、酸に対するガラスの耐久性が低下し、例えば、FPDを製造する際の酸処理工程に耐えられなくなる。これらの観点から、SrOの含有率は、下限に関し、0%以上であり、5%以上が好ましい。SrOの含有率は、上限に関し、13.5%以下であり、12%以下が好ましく、11.5%以下がより好ましい。SrOの含有率は0%以上13.5%以下であり、0%以上12%以下が好ましく、5%以上11.5%以下がより好ましい。
(BaO)
本発明のガラス組成物はBaOを実質的に含まない。これにより、本発明のガラス組成物の環境への負荷は小さく、製造コストを低くできる。
本明細書における「実質的に含まない」とは、原料に由来する不純物など、ガラス組成物の工業的製造時に不可避に混入する微量不純物を許容する趣旨である。具体的には、含有率にして0.5%未満、好ましくは0.3%未満を、「実質的に含まない」とする。
(RO)
アルカリ土類金属酸化物RO(Rは、Mg、CaまたはSr)は、ガラスの溶融粘度に影響を与える成分である。ROの含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が10%未満になると、ガラスの溶融性が悪くなって、ダウンドロー法によるガラス基板の形成が困難となる。一方、当該合計が18.5%を超えると、酸に対するガラスの耐久性が低下し、例えば、FPDを製造する際の酸処理工程に耐えられなくなる。したがって、当該合計は、下限に関し、10%以上であり、12%以上が好ましい。当該合計は、上限に関し、18.5%以下であり、16%以下が好ましい。当該合計は10%以上18.5%以下であり、10%以上16%以下が好ましく、12%以上16%以下がより好ましい。
本発明のガラス組成物では、ROの含有率の合計Xに対する、MgOの含有率Y1の質量比Y1/Xが0.2〜0.3であり、CaOの含有率Y2の質量比Y2/Xが0.01〜0.3であり、SrOの含有率Y3の質量比Y3/Xが0.4〜0.74が好ましい。この場合、高い熱安定性を保ちながら失透温度がより低いガラス組成物が得られる。
このとき、ROに占めるMgOの割合をある一定の範囲に保ちながら、ROに占めるCaOおよびSrOの割合のバランスをとることにより、高い熱安定性を保ちながら失透温度がより低いガラス組成物が得られると考えられる。本発明のガラス組成物において、ROに占めるMgOの割合をほぼ固定しながら、ROに占めるCaOおよびSrOの割合のバランスを変化させたときの失透温度の変化を図1、2に示す。図1の横軸は、ROの含有率の合計Xに対するCaOの含有率Y2の質量比Y2/X(即ち、ROに占めるCaOの割合CaO/RO)、図2の横軸は、ROの含有率の合計Xに対するSrOの含有率Y3の質量比Y3/X(即ち、ROに占めるSrOの割合SrO/RO)である。具体的なガラス組成は、以下の表1に示すとおりである。
Figure 2011126728
図1、2に示すように、ROに対するMgOの質量比Y1/Xが0.2〜0.3であるとともに、ROに対するCaOの質量比Y2/Xが0.01〜0.3かつROに対するSrOの質量比Y3/Xが0.4〜0.74のときに、ガラスの失透温度が低くなる。また、ガラスの失透温度は、この範囲に極小値を有する。なお、その他の成分の含有率との兼ね合いにもよるが、表1に示すガラス組成では、質量比Y2/Xが0.07〜0.13、質量比Y3/Xが0.60〜0.68の時に、特に低い失透温度となる。
(K2O)
本発明のガラス組成物は、ガラスの熱的特性の調整を目的として、K2Oを含んでいてもよい。K2Oの含有率は0%以上1%以下である。
本発明者らは、本発明のガラス組成物において、K2Oの含有率と、ガラスの失透温度、ガラス転移点(Tg)および線熱膨張係数との間に特別な関係があることを見出した。本発明のガラス組成物において、K2O以外の成分の含有率をほぼ固定しながらK2Oの含有率を変化させたときの、失透温度、Tgおよび線熱膨張係数の変化を図3〜5に示す。具体的なガラス組成は、以下の表2に示すとおりである。
Figure 2011126728
図3に示すように、本発明のガラス組成物において、K2Oを0.1%以上添加することにより、失透温度が急激に低下する傾向が見られる。また、K2Oの含有率が1%を超えると、上記した失透温度が低下する効果は見られなくなる。この観点からは、K2Oの含有率は0.1%以上1%以下が好ましい。特に、ダウンドロー法によるガラス基板の製造には低い失透温度が望まれる。
一方、FPD用ガラス基板には、TFT回路形成時にも物性が安定していること、即ち、熱安定性が高いことが望ましい。Tgがより高く、線熱膨張係数がより低い方が、ガラスの熱安定性が高くなる。図4によれば、K2Oの含有率が0.5%以上になると、Tgが急激に低下する。また、図5によれば、K2Oの含有率が0.5%を超えると、線熱膨張係数が急激に大きくなる。即ち、K2Oの含有率は、0.1%以上0.5%未満がより好ましく、この場合、失透温度とTgおよび線熱膨張係数とのさらに良好なバランスを実現できる。
なお、ガラスのTgと上述した歪点とは相関関係があり、Tgの値から歪点の近似値を算出可能である。通常、ガラスのTgが高くなるほど歪点も高くなる。
(SnO2
SnO2は、高温の溶融ガラス中において価数変動し、ガスを発生させる成分である。このような成分はガラスの清澄に使用できる。従来、ガラスの清澄には、As23、Sb23などが使用されていたが、近年の環境意識の高まりにより、これらの物質を清澄剤に使用しないガラス組成物が求められている。SnO2は、環境への負荷が小さく、高い清澄作用を有する。このため、本発明のガラス組成物は、SnO2を含むことが好ましい。ただし、SnO2はガラスに失透を生じさせやすい成分であるため、その含有率が過度に大きくならないように注意する必要がある。これらの観点から、SnO2の含有率は、下限に関し、0%以上であり、0.1%以上が好ましい。SnO2の含有率は、上限に関し、1%以下であり、0.5%以下が好ましい。SnO2の含有率は、0%以上1%以下であり、0.1%以上1%以下が好ましく、0.1%以上0.5%以下がより好ましい。
(Fe23
Fe23は、清澄効果を有するとともに、ガラスを着色させる成分である。本発明のガラス組成物をFPD用ガラス基板に用いるためには、Fe23の含有率について、清澄効果を高めながらFPD用ガラス基板としての品質を損なわない範囲とすることが望まれる。この観点から、Fe23の含有率は、下限に関し、0%以上であり、0.05%以上が好ましい。Fe23の含有率は、上限に関し、0.2%以下であり、0.15%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。Fe23の含有率は0%以上0.2%以下であり、0.05%以上0.2%以下が好ましく、0.05%以上0.15%以下がより好ましく、0.05%以上0.1%以下がさらに好ましい。
本発明のガラス組成物は、清澄剤あるいは物性の調整を目的とする成分として、上述した各成分以外の成分、例えばLi2O、Na2O、TiO2、Cl、SO3、ZnOなどを、その含有率の合計が0.5%以下の範囲で含んでいてもよい。
本発明のガラス組成物は、上述した成分群(SiO2、B23、Al23、MgO、CaO、SrO、K2O、SnO2、Fe23ならびに物性の調整を目的として加えられるその他の成分、清澄剤)から実質的になってもよい。この場合、本発明のガラス組成物は、上述した成分群以外の成分を実質的に含まない。
具体的には、本発明のガラス組成物は、SiO2 54〜62%、B23 4〜11%、Al2315〜20%、MgO 2〜5%、CaO 0〜7%、SrO 0〜13.5%、K2O 0〜1%、SnO2 0〜1%、Fe23 0〜0.2%から実質的になり、アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が10〜18.5%であり、失透温度が1200℃以下であるガラス組成物であってもよい。
本発明のガラス組成物は、SiO2の含有率が55.5%以上60%以下、B23の含有率が7%以上11%以下、Al23の含有率が16%以上20%以下、SrOの含有率が0%以上12%以下であり、アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が10%以上16%以下であり、失透温度が1160℃以下であるガラス組成物であることが好ましい。これは、本発明のガラス組成物が、上述した成分群から実質的になるガラス組成物である場合にも同様である。
本発明のガラス組成物は、SiO2の含有率が56.5%以上58.4%未満、B23の含有率が8%以上10%以下、Al23の含有率が18%以上20%以下、MgOの含有率が3%以上5%以下、CaOの含有率が0.2%以上4.5%以下、SrOの含有率が5%以上11.5%以下、K2Oの含有率が0.1%以上1%以下であり、アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が12%以上16%以下であり、アルカリ土類金属酸化物ROの含有率の合計Xに対する、MgOの含有率Y1の質量比Y1/Xが0.2〜0.3であり、CaOの含有率Y2の質量比Y2/Xが0.01〜0.3であり、SrOの含有率Y3の質量比Y3/Xが0.4〜0.74であり、失透温度が1130℃以下であるガラス組成物であることが好ましい。これは、本発明のガラス組成物が、上述した成分群から実質的になるガラス組成物である場合にも同様である。
本発明のガラス組成物の失透温度は1200℃以下であり、その組成によっては、1160℃以下、さらには1130℃以下となる。また、場合によっては、後述の実施例に示すように、1120℃以下、1110℃以下、1100℃以下とすることも可能である。
本発明のガラス組成物のTgは、例えば、710℃以上であり、その組成によっては720℃以上とすることも可能である。このような高いTgを有する本発明のガラス組成物は、熱安定性が高く、特に、ポリシリコン型LCDに用いるガラス基板としての用途に好適である。
本発明のガラス組成物の歪点は、例えば、665℃以上であり、その組成によっては670℃以上とすることも可能である。このような高い歪点を有する本発明のガラス組成物は、熱安定性が高く、特に、ポリシリコン型LCDに用いるガラス基板としての用途に好適である。
本発明のガラス組成物の熱膨張係数は、50℃から300℃までの線熱膨張係数にして、例えば、33×10-7〜38×10-7/℃である。このような低い熱膨張係数を有する本発明のガラス組成物は、熱安定性が高く、特に、ポリシリコン型LCDに用いるガラス基板としての用途に好適である。
上述したように、ダウンドロー法では、溶融ガラスを成形装置の外壁に沿って下方へ流動させる。このため、溶融ガラスは、十分に流動できる粘度を有していなければならない。具体的には、成形工程における溶融ガラスの粘度が高くなると、溶融ガラスの流動性が悪くなって、成形不良が生じやすくなる。
一般に、フロート法での成形工程においてフロートバス内へ供給する溶融ガラスの粘度が1000Pa・s程度であるのに対し、ダウンドロー法における成形工程では、溶融ガラスの粘度を4000Pa・s〜50000Pa・sに制御する必要がある。
また、ダウンドロー法では成形装置に使用する成形部材のクリープ変形が問題となるため、より低温で成形することが好ましく、例えば、成形部材と接触する溶融ガラスの温度を1200℃以下とすることが望ましい。そしてダウンドロー法では、ガラスの失透温度が前記成形部材との接触部分(前記外壁)の温度以上であると、当該接触部分に失透物が生成し、成形品質の低下、更に成形作業自体ができなくなることがある。このため、ダウンドロー法で製造するガラスの失透温度は、フロート法で製造するガラスの失透温度に比べ、特に低温であることが必要となる。
本発明のガラス組成物は特に失透温度が低く、ダウンドロー法での製造に好適である。なお、望むガラス成形体が得られる限り、ダウンドロー法以外の成形方法を適用してもよい。
本発明のガラス組成物は、ダウンドロー法を用いたガラス基板の製造に好適であり、製造するガラス基板としては、FPD用ガラス基板が好適である。
本発明のFPD用ガラス基板は、本発明のガラス組成物からなり、本発明のガラス組成物が有する特性に基づく特性(例えば、歪点、Tg、熱膨張係数などの熱的特性)を有する。
本発明のFPD用ガラス基板は、LCD用ガラス基板、特に500〜600℃の温度域でTFT回路が形成されるポリシリコン(p−Si)型LCDに用いるガラス基板として好適である。
本発明のFPD用ガラス基板は、典型的には、本発明のガラス組成物をダウンドロー法により成形して形成される。即ち、典型的には、本発明のガラス組成物をダウンドロー法により成形して得たガラス基板である。本発明のFPD用ガラス基板がダウンドロー法により成形して得たガラス基板である場合、他の方法により得たガラス基板に比べて表面の平滑性が高く、LCD用ガラス基板として特に好適である。
本発明のFPD用ガラス基板は、例えば、LCDなどのFPDにおける前面板および/または背面板として使用できる。
本発明のFPD用ガラス基板を適用できるFPDの種類は特に限定されず、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)である。本発明のFPD用ガラス基板を適用できるFPDは、典型的にはLCDであり、特にポリシリコン型LCDが好ましい。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(試料ガラスの作製方法)
最初に、表3〜7に示す各実施例、比較例のガラス組成となるように、ガラス原料バッチをそれぞれ調合した。ガラス原料には、シリカ、無水ホウ酸、アルミナ、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カリウム、酸化スズ、酸化鉄を用いた。
次に、調合した原料バッチを白金るつぼに入れ、これを1550℃に設定した電気炉で2時間保持した後、電気炉の設定温度を1620℃に上げて2時間保持し、溶解ガラスを得た。次に、得られた溶解ガラスを鉄板上に流し出し、得られたガラスブロックを750℃に設定した電気炉に入れて30分間保持した後、550℃まで2時間かけて冷却した。その後、電気炉の電源を切り、炉内にガラスブロックを収容したまま室温まで冷却して、試料ガラスとした。
試料ガラスの評価方法を以下に示す。
(失透温度)
試料ガラスの失透温度は、以下のように測定した。最初に、試料ガラスを乳鉢で粉砕し、得られたガラス粒のうち、網目サイズ2380μmの篩を通過するが網目サイズ1000μmの篩を通過しないガラス粒を回収した。次に、回収したガラス粒をエタノール中で超音波洗浄し、乾燥して、測定用試料とした。次に、得られた測定用試料25gを、幅12mm×長さ200mmの白金ボートに収容し、白金ボートごと温度勾配炉に挿入して24時間保持した。次に、ガラスが収容された白金ボートを炉から取り出して室温まで冷却し、光学顕微鏡により当該ガラス中に生成した結晶(失透)を観察した。これを、必要に応じて、温度勾配炉の測定温度域を変えながら実施し、結晶が観察された最高温度を試料ガラスの失透温度とした。
(線熱膨張係数)
試料ガラスの線熱膨張係数は、以下のように測定した。最初に、試料ガラスを加工して、直径5mm、長さ20mmの円柱状とした。次に、形成した前記円柱状のガラスをサンプルとして、熱機械分析装置(リガク社製、ThermoPlus2 TMA8310)を用いた熱機械分析(TMA)により、50℃を基準とするその膨張量を測定し、測定された膨張量から線熱膨張係数を求めた。なお、昇温速度は5℃/分とした。
(ガラス転移点:Tg)
線熱膨張係数を評価する際に得た、横軸を温度、縦軸を試料ガラスの膨張量とするTMA曲線から試料ガラスのTgを求めた。具体的には以下のとおりである。最初に、TMA曲線を低温側から高温側に見ていったときに、膨張率がほぼ一定の値から増大に転じる点と、試料ガラスが収縮し始める降伏点との間に存在するTMA曲線の変曲点を、当該曲線の微分曲線から求めた。次に、変曲点におけるTMA曲線の接線と、変曲点の温度から200℃低い温度におけるTMA曲線の接線とを引き、双方の接線が交差する温度を試料ガラスのTgとした。
(歪点)
試料ガラスの歪点は、JIS R3103-2付属書(ISO7884-7)に準拠し、ビーム曲げ式粘度測定装置により測定した。
Figure 2011126728
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本発明のガラス組成物は、LCDなどのFPD用ガラス基板として好適に使用できる。本発明のガラス組成物は、LCD用ガラス基板のなかでも、500〜600℃の温度でTFT回路が表面に形成されるポリシリコン(p−Si)型LCDに用いるガラス基板に特に好適である。

Claims (6)

  1. 質量%で表示して、
    SiO2 54〜62%
    23 4〜11%
    Al23 15〜20%
    MgO 2〜5%
    CaO 0〜7%
    SrO 0〜13.5%
    2O 0〜1%
    SnO2 0〜1%
    Fe23 0〜0.2%
    を含み、
    BaOを実質的に含まず、
    アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が10〜18.5質量%であり、
    失透温度が1200℃以下であるガラス組成物。
  2. 含有率を質量%で表示して、SiO2が55.5〜60%、B23が7〜11%、Al23が16〜20%、SrOが0〜12%であり、
    アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が10〜16質量%であり、
    失透温度が1160℃以下である請求項1に記載のガラス組成物。
  3. 含有率を質量%で表示して、SiO2が56.5%以上58.4%未満、B23が8〜10%、Al23が18〜20%、MgOが3〜5%、CaOが0.2〜4.5%、SrOが5〜11.5%、K2Oが0.1〜1%であり、
    アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計(MgO+CaO+SrO)が12〜16質量%であり、
    アルカリ土類金属酸化物の含有率の合計に対する、MgOの含有率の質量比が0.2〜0.3であり、CaOの含有率の質量比が0.01〜0.3であり、SrOの含有率の質量比が0.4〜0.74であり、
    失透温度が1130℃以下である請求項2に記載のガラス組成物。
  4. 2Oの含有率が0.5質量%未満である請求項3に記載のガラス組成物。
  5. ガラス転移点が720℃以上である請求項1〜4のいずれかに記載のガラス組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のガラス組成物からなるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板。
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