本発明のガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO2 55〜65%、Al2O3 15〜25%、B2O3 0〜7%、MgO 0〜5%、CaO 2〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜7%、P2O5 0.01〜7%を含有し、モル比(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3が0.8〜1.4、モル比CaO/Al2O3が0.3〜1.0であることを特徴とする。上記のように、各成分の含有量を規制した理由を以下に説明する。なお、各成分の説明において、下記の%表示は、特に断りがない限り、質量%を指す。
SiO2の含有量が少な過ぎると、耐薬品性、特に耐酸性が低下し易くなると共に、歪点が低下し易くなる。また低密度化を図り難くなる。更に初相として、2種類以上の結晶を析出させることが困難になる。一方、SiO2の含有量が多過ぎると、エッチングレートを高速化し難くなり、また高温粘度が高くなって、溶融性が低下し易くなり、更にSiO2系結晶、特にクリストバライトが析出して、液相線粘度が低下し易くなる。よって、SiO2の好適な上限含有量は65%、63%、62%、61%、特に60%であり、好適な下限含有量は55%、57%、特に58%である。最も好ましい含有範囲は58〜60%である。
Al2O3の含有量が少な過ぎると、歪点が低下し、熱収縮値が大きくなると共に、ヤング率が低下して、ガラス板が撓み易くなる。一方、Al2O3の含有量が多過ぎると、耐BHF(バッファードフッ酸)性が低下し、ガラス表面に白濁が生じ易くなると共に、耐クラック抵抗性が低下し易くなる。更にガラス中にSiO2−Al2O3系結晶、特にムライトが析出して、液相線粘度が低下し易くなる。Al2O3の好適な上限含有量は25%、23%、22%、21%、特に20%であり、好適な下限含有量は15%、16%、特に17%である。最も好ましい含有範囲は17〜20%である。
{[Al2O3]+2×[P2O5]}を所定値以上に規制すると、SiO2の含有量が少なくても、歪点を高め易くなる。{[Al2O3]+2×[P2O5]}の好適な下限値は20%、21%、21.5%、22%、22.5%、23%、23.5%、特に24%である。なお、[Al2O3]は、Al2O3の含有量を指し、[P2O5]は、P2O5の含有量を指す。{[Al2O3]+2×[P2O5]}は、Al2O3の含有量とP2O5の2倍の含有量の合量を指す。
B2O3は、融剤として働き、粘性を下げて溶融性を改善する成分である。B2O3の含有量は、好ましくは0〜7%、1〜6%、2.5〜5.5%、特に3〜5%である。B2O3の含有量が少な過ぎると、融剤として十分に作用せず、耐BHF性や耐クラック性が低下し易くなる。また液相線温度が上昇し易くなる。一方、B2O3の含有量が多過ぎると、歪点、耐熱性、耐酸性、特に歪点が低下し易くなる。特に、B2O3の含有量が7%以上になると、その傾向が顕著になる。また、B2O3の含有量が多過ぎると、ヤング率が低下して、ガラス板の撓み量が大きくなり易い。
MgOは、歪点を下げずに高温粘性を下げて、溶融性を改善する成分である。また、MgOは、RO中では最も密度を下げる効果が有するが、過剰に導入すると、SiO2系結晶、特にクリストバライトが析出して、液相線粘度が低下し易くなる。更に、MgOは、BHFと反応して生成物を形成し易い成分である。この反応生成物は、ガラス板表面の素子上に固着したり、ガラス板に付着したりして、素子やガラス板を白濁させる虞がある。更にドロマイト等の導入原料からFe2O3等の不純物がガラス中に混入し、ガラス板の透過率を低下させる虞がある。よって、MgOの含有量は、好ましくは0〜5%、0〜4%、0.1〜3%、0.3〜2.5%、0.5〜1.5%、特に0.5〜1%である。
CaOは、MgOと同様にして、歪点を下げずに高温粘性を下げて、溶融性を顕著に改善する成分である。しかし、CaOの含有量が多過ぎると、SiO2−Al2O3−RO系結晶、特にアノーサイトが析出して、液相線粘度が低下し易くなると共に、耐BHF性が低下して、反応生成物がガラス板表面の素子上に固着したり、ガラス板に付着したりして、素子やガラス板を白濁させる虞がある。よって、CaOの好適な上限含有量は10%、9%、特に8.5%であり、好適な下限含有量は2%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、特に6.5%である。最も好ましい含有範囲は6.5〜8.5%である。
モル比CaO/Al2O3を所定範囲に調整すると、液相線温度付近の温度において、2種類以上の結晶が析出し易くなる。モル比CaO/Al2O3が小さくなると、SiO2−Al2O3系結晶が析出し易くなる。一方、モル比CaO/Al2O3が大きくなると、SiO2−Al2O3−CaO系結晶が析出し易くなる。よって、モル比CaO/Al2O3の好適な上限値は1.0、0.9、0.85、特に0.8であり、好ましい下限値は0.3、0.4、0.5、0.55、0.58、0.60、0.62、0.64、特に0.65である。
SrOは、耐薬品性、耐失透性を高める成分であるが、RO全体の中で、その割合を高め過ぎると、溶融性が低下し易くなると共に、密度、熱膨張係数が上昇し易くなる。よって、SrOの含有量は、好ましくは0〜5%、0〜4.5%、0〜4%、0〜3.5%、特に0〜3%である。
BaOは、耐薬品性、耐失透性を高める成分であるが、その含有量が多過ぎると、密度が上昇し易くなる。また、SiO2−Al2O3−B2O3−RO系ガラスは、一般的に溶融し難いため、高品質のガラス板を安価、且つ大量に供給する観点から、溶融性を高めて、泡、異物等による不良率を軽減することが非常に重要になる。しかし、BaOは、ROの中では、溶融性を高める効果が乏しい。よって、BaOの含有量は、好ましくは0〜7%、0〜5%、0.1〜5%、0.5〜4%、特に1〜3%である。
SrOとBaOは、CaOに比べて、耐クラック性を高める性質がある。よって、SrO+BaOの含有量(SrO及びBaOの合量)は、好ましくは2%以上、3%以上、特に3%超である。しかし、SrO+BaOの含有量が多過ぎると、密度、熱膨張係数が上昇し易くなる。よって、SrO+BaOの含有量は、好ましくは9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、特に5.5%以下である。
ROの内、二種以上(好ましくは三種以上)を混合して導入すると、液相線温度が大幅に低下し、ガラス中に結晶異物が生じ難くなり、溶融性、成形性が改善する。
CaO+SrO+BaOの含有量が多過ぎると、密度が上昇して、ガラス板の軽量化を図り難くなる。よって、CaO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは15%未満、14%未満、特に13%未満である。なお、「CaO+SrO+BaO」は、CaO、SrO及びBaOの合量である。
モル比(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3を所定範囲に調整すると、液相線温度が大幅に低下し、ガラス中に結晶異物が生じ難くなり、溶融性、成形性が改善する。モル比(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3が小さくなると、SiO2−Al2O3系結晶が析出し易くなる。一方、モル比(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3が大きくなると、SiO2−Al2O3−RO系結晶、SiO2系結晶が析出し易くなる。モル比(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3の好ましい上限値は1.4、1.3、1.25、1.2、1.15、1.1、特に1.08であり、好ましい下限値は0.8、0.85、0.88、0.91、0.93、0.95、0.97、特に0.99である。
{2×[SiO2]−[MgO]−[CaO]−[SrO]−[BaO]}を所定値以下に規制すると、HF水溶液によるエッチング深さが大きくなり、エッチングレートを高速化し易くなる。{2×[SiO2]−[MgO]−[CaO]−[SrO]−[BaO]}の好適な上限値は130モル%、128モル%、126モル%、125モル%、124モル%、特に123モル%である。
P2O5は、SiO2−Al2O3−CaO系結晶(特にアノーサイト)とSiO2−Al2O3系結晶(特にムライト)の液相線温度を低下させる成分である。よって、P2O5を添加すれば、SiO2の含有量を低減した場合に、これらの結晶が析出し難くなり、初相として二種以上の結晶が析出し易くなる。但し、P2O5を多量に導入すると、ガラスが分相し易くなる。よって、P2O5の含有量は、好ましくは0.01〜7%、0.01〜5%、0.1〜4.5%、0.3〜4%、0.5〜3.5%、1〜3%、特に1〜2.5%である。
{[B2O3]−2×[P2O5]}を所定値以下に規制すると、SiO2の含有量が少なくても、歪点を高め易くなる。{[B2O3]−2×[P2O5]}の好適な上限値は5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、特に2%である。なお、[B2O3]は、B2O3の含有量を指し、{[B2O3]−2×[P2O5]}は、B2O3の含有量からP2O5の2倍の含有量を減じた値を指す。
ZnOは、溶融性、耐BHF性を改善する成分であるが、その含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなったり、歪点が低下したりして、耐熱性を確保し難くなる。よって、ZnOの含有量は、好ましくは0〜5%、特に0〜1%である。
ZrO2は、化学的耐久性を高める成分であるが、その導入量が多くなると、ZrSiO4の失透ブツが発生し易くなる。ZrO2の好ましい上限含有量は1%、0.5%、0.3%、0.2%、特に0.1%であり、化学的耐久性の観点から0.005%以上導入することが好ましい。最も好ましい含有範囲は0.005〜0.1%である。なお、ZrO2は、原料から導入してもよいし、耐火物からの溶出により導入してもよい。
TiO2は、高温粘性を下げて溶融性を高め、また化学的耐久性を高める効果があるが、導入量が過剰になると、紫外線透過率が低下し易くなる。TiO2の含有量は、好ましくは3%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下、0.05%以下、特に0.03%以下である。なお、TiO2を極少量導入(例えば0.001%以上)すると、紫外線による着色を抑制する効果が得られる。
清澄剤として、As2O3、Sb2O3、SnO2、SO3、Fe2O3、CeO2、F2、Cl2、C、或いはAl、Si等の金属粉末等を用いることができる。これらの含有量は、合量で3%以下が好ましい。
As2O3、Sb2O3は、環境負荷化学物質であるため、できるだけ使用しないことが望ましい。As2O3、Sb2O3の含有量は、それぞれ0.3%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.05%未満、0.03%未満、0.01%未満、0.005%未満、特に0.003%未満が好ましい。
SnO2は、ガラス中の泡を低減する清澄剤としての働きを有すると共に、Fe2O3又はFeOと共存する際に、紫外線透過率を比較的に高く維持する効果を有する。一方、SnO2の含有量が多過ぎると、ガラス中にSnO2の失透ブツが発生し易くなる。SnO2の好ましい上限含有量は0.5%、0.4%、特に0.3%であり、好ましい下限含有量は0.01%、0.05%、特に0.1%である。最も好ましい含有範囲は0.1〜0.4%である。また、Fe2O3換算でFe2O3又はFeOの含有量が0.01〜0.05%に対して、SnO2を0.01〜0.5%導入すれば、泡品位と紫外線透過率を高めることができる。ここで、「Fe2O3換算」は、価数によらず全Fe量をFe2O3量に換算した値を指す。
鉄は、不純物として、原料から混入する成分であるが、鉄の含有量が多過ぎると、紫外線透過率が低下する虞がある。紫外線透過率が低下すると、TFTを作製するフォトリソグラフィー工程や紫外線による液晶の配向工程で不具合が発生する虞がある。よって、鉄の好適な下限含有量は、Fe2O3に換算して、0.001%であり、好適な上限含有量は、Fe2O3に換算して、0.01%、0.008%、特に0.005%である。最も好ましい含有範囲は0.001%〜0.01%である。
Cr2O3は、不純物として、原料から混入する成分であるが、Cr2O3の含有量が多過ぎると、ガラス板端面から光を入射し、散乱光によりガラス板内部の異物検査を行う場合に、光の透過が生じ難くなり、異物検査に不具合が生じる虞がある。特に、基板サイズが730mm×920mm以上の場合に、この不具合が発生し易くなる。また、ガラス板の板厚が小さい(例えば0.5mm以下、0.4mm以下、特に0.3mm以下)と、ガラス板端面から入射する光が少なくなるため、Cr2O3の含有量を規制する意義が大きくなる。Cr2O3の好ましい上限含有量は0.001%、0.0008%、0.0006%、0.0005%、特に0.0003%であり、好ましい下限含有量は0.00001%である。最も好ましい含有範囲は0.00001〜0.0003%である。
Fe2O3+Cr2O3の含有量は、光の透過性の観点から、好ましくは120ppm以下(0.012%以下)、95ppm以下(0.0095%以下)、特に1〜90ppm(0.0001〜0.009%)である。
SnO2を0.01〜0.5%含む場合、Rh2O3の含有量が多過ぎると、ガラスが着色し易くなる。なお、Rh2O3は、白金の製造容器から混入する可能性がある。Rh2O3の含有量は、好ましくは0〜0.0005%、より好ましくは0.00001〜0.0001%である。
SO3は、不純物として、原料から混入する成分であるが、SO3の含有量が多過ぎると、溶融や成形中に、リボイルと呼ばれる泡を発生させて、ガラス中に欠陥を生じさせる虞がある。SO3の好適な上限含有量は0.005%、0.003%、0.002%、特に0.001%であり、好適な下限含有量は0.0001%である。最も好ましい含有範囲は0.0001%〜0.001%である。
アルカリ成分、特にLi2O、Na2Oは、ガラス板上に形成される各種の膜や半導体素子の特性を劣化させるため、その含有量を0.5%(望ましくは0.4%、0.3%、0.2%、特に0.1%)まで低減することが好ましい。
上記成分以外にも、他の成分を導入してもよい。その導入量は、好ましくは5%以下、3%以下、特に1%以下である。
本発明のガラスは、液相線温度から(液相線温度−50℃)の温度範囲において、SiO2−Al2O3−RO系結晶、SiO2系結晶、SiO2−Al2O3系結晶の内、2種類以上の結晶が析出する性質を有することが好ましく、3種類の結晶が析出する性質を有することが更に好ましい。また、2種類の結晶を析出させる場合、SiO2−Al2O3−RO系結晶とSiO2系結晶を析出させることが好ましい。複数の結晶相が液体と平衡状態になる領域近傍では、ガラスが安定化して、液相線温度が大幅に低下する。更に、液相線温度付近で上記結晶が複数析出するガラスであれば、上記要求特性(1)〜(6)を満たすガラスを得易くなる。
SiO2−Al2O3−RO系結晶として、SiO2−Al2O3−CaO系結晶が好ましく、特にアノーサイトが好ましい。SiO2系結晶として、クリストバライトが好ましい。SiO2−Al2O3系結晶として、ムライトが好ましい。液相線温度付近で上記結晶が複数析出するガラスであれば、上記要求特性(1)〜(6)、特に(6)の高耐失透性を満たすガラスを更に得易くなる。
本発明のガラスは、以下の特性を有することが好ましい。
近年、OLEDディスプレイ、液晶ディスプレイ等のモバイル用途のフラットパネルディスプレイでは、軽量化の要求が高まっており、ガラス板にも軽量化が求められている。この要求を満たすためには、低密度化によるガラス板の軽量化が望ましい。密度は、好ましくは2.52g/cm3以下、2.51g/cm3以下、2.50g/cm3以下、2.49g/cm3以下、特に2.48/cm3以下である。一方、密度が低過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれる虞がある。その結果、溶融温度の上昇、液相線粘度の低下が生じ易くなり、ガラス板の生産性が低下し易くなる。また歪点も低下し易くなる。よって、密度は、好ましくは2.43g/cm3以上、2.44g/cm3以上、特に2.45g/cm3以上である。
熱膨張係数は、好ましくは28〜45×10−7/℃、30〜40×10−7/℃、32〜39×10−7/℃、33〜38×10−7/℃、特に34〜37×10−7/℃である。このようにすれば、ガラス板上に成膜される部材(例えば、a−Si、p−Si)の熱膨張係数に整合し易くなる。ここで、「熱膨張係数」は、30〜380℃の温度範囲で測定した平均熱膨張係数を指し、例えばディラトメーターで測定可能である。
OLEDディスプレイ又は液晶ディスプレイ等では、大面積のガラス板(例えば、730×920mm以上、1100×1250mm以上、特に1500×1500mm以上)が使用されると共に、薄肉のガラス板(例えば、板厚0.5mm以下、0.4mm以下、特に0.3mm以下)が使用される傾向にある。ガラス板が大面積化、薄肉化すると、自重による撓みが大きな問題になる。ガラス板の撓みを低減するためには、ガラス板の比ヤング率を高める必要がある。比ヤング率は、好ましくは30GPa/g・cm−3以上、30.5GPa/g・cm−3以上、31GPa/g・cm−3以上、特に31.5GPa/g・cm−3以上である。また、ガラス板が大面積化、薄肉化すると、定盤上での熱処理工程、或いは各種の金属膜、酸化物膜、半導体膜、有機膜等の成膜工程後に、ガラス板の反りが問題になる。ガラス板の反りを低減するためには、ガラス板のヤング率を高めることが有効である。ヤング率は、好ましくは75GPa以上、特に76GPa以上である。
現在、超高精細のモバイルディスプレイに用いられるLTPSでは、その工程温度が約400〜600℃である。この工程温度での熱収縮を抑制するために、歪点は、好ましくは700℃以上、710℃以上、特に715℃以上である。
最近では、OLEDディスプレイが、モバイルやTV等の用途でも使用される。この用途の駆動TFT素子として、上記のLTPS以外に、酸化物TFTが着目されている。従来まで、酸化物TFTは、a−Siと同等の300〜400℃の温度プロセスで作製されていたが、従来よりも高い熱処理温度でアニールを行うと、より安定した素子特性が得られることが分かってきた。その熱処理温度は、400〜600℃程度であり、この用途でも低熱収縮のガラス板が要求されるようになっている。
本発明のガラスにおいて、室温(25℃)から5℃/分の速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持した後、5℃/分の速度で室温まで降温したとき、熱収縮値は、好ましくは30ppm以下、25ppm以下、23ppm以下、22ppm以下、特に21ppm以下である。このようにすれば、LTPSの製造工程で熱処理を受けても、画素ピッチズレ等の不具合が生じ難くなる。なお、熱収縮値が小さ過ぎると、ガラスの生産性が低下し易くなる。よって、熱収縮値は、好ましくは5ppm以上、特に8ppm以上である。なお、熱収縮値は、歪点を高める以外にも、成形時の冷却速度を低下させることでも低減することができる。
オーバーフローダウンドロー法では、楔形の耐火物(或いは白金族金属で被覆された耐火物)の表面を溶融ガラスが流下し、楔の下端で合流して、板状に成形される。スロットダウンドロー法では、例えば、スリット状の開口部を持つ白金族金属製のパイプからリボン状の溶融ガラスを流下、冷却して、板状に成形される。成形装置に接触している溶融ガラスの温度が高過ぎると、成形装置の老朽化を招き、ガラス板の生産性が低下し易くなる。よって、高温粘度105.0dPa・sにおける温度は、好ましくは1300℃以下、1280℃以下、1270℃以下、1260℃以下、1250℃以下、1240℃以下、特に1230℃以下である。ここで、「105.0dPa・sにおける温度」は、例えば白金球引き上げ法で測定可能である。なお、高温粘度105.0dPa・sにおける温度は、成形時の溶融ガラスの温度に相当している。
ガラス組成中にSiO2、Al2O3、B2O3及びROを含むガラスは、一般的に、溶融し難い。このため、溶融性の向上が課題になる。溶融性を高めると、泡、異物等による不良率が軽減されるため、高品質のガラス板を大量、且つ安価に供給することができる。一方、高温域でのガラスの粘度が高過ぎると、溶融工程で脱泡が促進され難くなる。よって、高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1650℃以下、1640℃以下、1630℃以下、1620℃以下、特に1610℃以下である。ここで、「102.5dPa・sにおける温度」は、例えば白金球引き上げ法で測定可能である。なお、高温粘度102.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当しており、この温度が低い程、溶融性に優れている。
ダウンドロー法等で成形する場合、耐失透性が重要になる。ガラス組成中にSiO2、Al2O3、B2O3及びROを含むガラスの成形温度を考慮すると、液相線温度は、好ましくは1250℃未満、1230℃以下、1220℃以下、1210℃以下、1200℃以下、特に1190℃以下である。また、液相線粘度は、好ましくは105.0dPa・s以上、105.2dPa・s以上、105.3dPa・s以上、105.4dPa・s以上、105.5dPa・s以上、特に105.6dPa・s以上である。ここで、「液相線温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、1100℃から1350℃に設定された温度勾配炉中に24時間保持した後、白金ボートを取り出し、ガラス中に失透(結晶異物)が認められた温度を指す。「液相線粘度」は、液相線温度におけるガラスの粘度を指し、例えば白金球引き上げ法で測定可能である。
10質量%HF水溶液に室温で30分間浸漬した時のエッチング深さは、好ましくは25μm以上、27μm以上、28μm以上、29μm以上、特に30〜50μmになることが好ましい。このエッチング深さは、エッチングレートの指標になる。すなわち、エッチング深さが大きいと、エッチングレートが速くなり、エッチング深さが小さいと、エッチングレートが遅くなる。
β−OH値は、好ましくは0.5/mm以下、0.45/mm以下、0.4/mm以下、特に0.35/mm以下である。β−OH値を低下させると、歪点を高めることができる。一方、β−OH値が大き過ぎると、歪点が低下し易くなる。なお、β−OH値が小さ過ぎると、溶融性が低下し易くなる。よって、β−OH値は、好ましくは0.01/mm以上、特に0.05/mm以上である。
β−OH値を低下させる方法として、以下の方法が挙げられる。(1)含水量の低い原料を選択する。(2)ガラス中の水分量を減少させる成分(Cl、SO3等)を添加する。(3)炉内雰囲気中の水分量を低下させる。(4)溶融ガラス中でN2バブリングを行う。(5)小型溶融炉を採用する。(6)溶融ガラスの流量を速くする。(7)電気溶融法を採用する。
ここで、「β−OH値」は、FT−IRを用いてガラスの透過率を測定し、下記の式を用いて求めた値を指す。
β−OH値 = (1/X)log(T1/T2)
X:ガラス肉厚(mm)
T1:参照波長3846cm−1における透過率(%)
T2:水酸基吸収波長3600cm−1付近における最小透過率(%)
本発明のガラスは、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法とは、楔形の耐火物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを楔形の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス板を成形する方法である。オーバーフローダウンドロー法では、ガラス板の表面となるべき面は耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形される。このため、未研磨で表面品位が良好なガラス板を安価に製造することができ、大面積化や薄肉化も容易である。なお、オーバーフローダウンドロー法で用いる耐火物の材質は、所望の寸法や表面精度を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行う際に、力を印加する方法も特に限定されない。例えば、十分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
オーバーフローダウンドロー法以外にも、例えば、ダウンドロー法(スロットダウン法、リドロー法等)、フロート法等でガラス板を成形することも可能である。
本発明のガラスにおいて、厚み(板厚)は、特に限定されないが、好ましくは0.5mm以下、0.4mm以下、0.35mm以下、特に0.3mm以下である。板厚が小さい程、デバイスを軽量化し易くなる。一方、板厚が小さい程、ガラス板が撓み易くなるが、本発明のガラスは、ヤング率や比ヤング率が高いため、撓みに起因する不具合が生じ難い。なお、板厚は、ガラス製造時の流量や板引き速度等で調整可能である。
本発明のガラスは、OLEDディスプレイの基板に用いることが好ましい。OLEDは、一般に市販されつつあるが、大量生産によるコストダウンが強く望まれている。本発明のガラスは、生産性に優れており、且つ大面積化や薄肉化が容易であるため、上記要求を的確に満たすことができる。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
表1〜4は、本発明の実施例(試料No.1〜60)を示している。
次のように、各試料を作製した。まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れ、1600℃で24時間溶融した。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、板状に成形した。得られた各試料について、密度、熱膨張係数、ヤング率、比ヤング率、歪点、軟化点、高温粘度102.5dPa・sにおける温度、高温粘度105.0dPa・sにおける温度、液相線温度、初相、液相線粘度logη、HF水溶液によるエッチング深さを評価した。
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
熱膨張係数は、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターで測定した平均熱膨張係数である。
ヤング率は、JIS R1602に基づく動的弾性率測定法(共振法)により測定した値を指し、比ヤング率は、ヤング率を密度で割った値である。
歪点、軟化点は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
高温粘度102.5dPa・s、105.0dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
次に、各試料を粉砕し、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、1100℃から1350℃に設定された温度勾配炉中に24時間保持した後、白金ボートを取り出し、ガラス中に失透(結晶異物)が認められた温度を液相線温度とした。そして、液相線温度から(液相線温度−50℃)の温度範囲に析出している結晶を初相として評価した。表中で「Ano」は、アノーサイトを指し、「Cri」は、クリストバライトを指し、「Mul」は、ムライトを指している。更に、液相線温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定し、これを液相線粘度とした。
各試料の両面を光学研磨した上で、試料表面の一部にマスキングを施し、10質量%のHF水溶液中で、室温で30分間浸漬した後、得られた試料表面のマスキング部とエッチング部間での段差を測定することにより、エッチング深さを評価した。
試料No.1〜60は、熱膨張係数が36〜38×10−7/℃、歪点が714℃以上であり、熱収縮値を低減することができる。またヤング率が77GPa以上、比ヤング率が31GPa/(g/cm3)以上であり、撓みや変形が生じ難い。また102.5dPa・sにおける温度が1624℃以下、高温粘度105.0dPa・sにおける温度が1227℃以下であり、且つ液相線温度が1223℃以下、液相線粘度が104.7dPa・s以上であるため、溶融性、成形性及び耐失透性に優れており、大量生産に向いている。更にエッチング深さが28μm以上であるため、エッチングレートを高速化することができる。