JP2011062171A - 塩味増強剤及びそれを含有する飲食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 動物蛋白質の酵素分解物と植物蛋白質の酵素分解物の混合物、塩化カリウム、塩基性アミノ酸、グルコン酸ナトリウムを含有することを特徴とする塩味増強剤である。前記酵素分解物が蛋白加水分解酵素により処理されたものである。動物蛋白質の酵素分解物と植物蛋白質の酵素分解物の混合物中のそれぞれの有効成分比率は1:10〜10:1が好ましく、動物蛋白質が魚介類エキスで、植物蛋白質が大豆、小麦、トウモロコシのいずれかの蛋白質が好ましい。さらに塩化マグネシウムを添加した塩味増強剤。これらを用いた塩味の増強方法、及びこれらの塩味増強剤を含有する飲食品。
【選択図】 なし
Description
食塩摂取量を低減させるためには、単に飲食品の調味や加工において食塩の使用量を減らす方法が考えられるが、上記に論じたように、食塩は食品の風味おいて重要な役割を果たしているため、単に食塩の使用量を減らした飲食品は、風味を損ない、味気ないものとなる。そこで、食塩を低減しても飲食品の食塩味や風味を損なわない技術の開発が強く求められている。
(1)動物蛋白質の酵素分解物と植物蛋白質の酵素分解物の混合物、塩化カリウム、塩基性アミノ酸、グルコン酸ナトリウムを含有することを特徴とする塩味増強剤。
(2)酵素分解物が蛋白加水分解酵素により処理されたものである、(1)の塩味増強剤。
(3)動物蛋白質が魚介類の蛋白質である(1)又は(2)の塩味増強剤。
(4)動物蛋白質が魚介類エキスである(1)ないし(3)いずれかの塩味増強剤。
(5)植物蛋白質が大豆、小麦、トウモロコシのいずれかの蛋白質である(1)ないし(4)いずれかの塩味増強剤。
(6)動物蛋白質の酵素分解物と植物蛋白質の酵素分解物を1:100−100:1の比率で含有する(1)ないし(5)いずれかの塩味増強剤。
(7)塩基性アミノ酸がアルギニンである、(1)ないし(6)いずれかの塩味増強剤。
(8)さらに塩化マグネシウム又はにがりを含有する(1)ないし(7)いずれかの塩味増強剤。
(9)pHを4〜8に調整したものである、(1)ないし(8)いずれかの塩味増強剤。
(10)(1)ないし(9)いずれかの塩味増強剤を、食塩を含有する食品に添加することを特徴とする塩味の増強方法。
(11)(1)ないし(9)いずれかの塩味増強剤を含有する飲食品。
(12)通常よりも食塩含有量が低減された飲食品である(11)の飲食品。
本発明において動物蛋白質とは、畜肉類、家禽類、魚介類の肉、内臓など由来の蛋白質や乳、卵などの蛋白質である。具体的には、ビーフエキス、チキンエキス、ポークエキス、魚肉エキス、カゼイン、ゼラチン、卵白など各種動物由来蛋白質を使用することができる。特に好ましいのは、魚介類のエキスである。カツオエキス、白子エキス、ハモエキス、エソエキス、マグロエキス、ホタテエキス、オキアミエキス、タラコエキスなどが例示される。缶詰製造工程で派生する煮汁などを利用することもできる。
本発明において植物蛋白質とは、穀物類、野菜類などから得られる蛋白質である。具体的には、大豆、小麦、とうもろこし、米などを加工した各種植物由来蛋白質を使用することができる。好ましいのは、分離大豆蛋白質、豆乳蛋白質、濃縮大豆蛋白質、脱脂大豆蛋白質、小麦グルテン、コーングルテン、などである。
蛋白質加水分解酵素としては、エンドペプチダーゼあるいはエキソペプチダーゼが挙げられ、それらを単独又は組み合わせて用いても良い。
エンドペプチダーゼとしては、例えばトリプシン、キモトリプシン、ズブチリシンに代表されるセリンプロテアーゼ、ペプシンに代表されるアスパラギン酸プロテアーゼ、サーモリシンに代表される金属プロテアーゼ、パパインに代表されるシステインプロテアーゼ等が挙げられる。食品添加用として市販されているエンドペプチダーゼとしては、具体的にはアルカラーゼ(ノボザイムス製)、ニュートラーゼ(ノボザイムス製)、ヌクレイシン(エイチヴィアイ製)、スミチームMP(新日本化学工業性)、ブロメラインF(天野製薬製)、オリエンターゼ20A(エイチヴィアイ製)、モルシンF(キッコーマン製)、ニューラーゼF(天野製薬製)、スミチームAP(新日本化学工業製)等が挙げられる。また、食品添加用として市販されているエキソペプチダーゼ活性を有する酵素としては、フレーバーザイム(ノボザイムス製)、スミチームFP(新日本化学工業製)、アクチナーゼ(科研製薬製)、コクラーゼP(ジェネンコア製)等が挙げられる。特に、動物蛋白質においてはアルカリ性プロテアーゼで処理することが好ましい。具体的にはアルカラーゼ、スミチームMP等が挙げられる。さらに、2種類以上のプロテアーゼを組み合わせることで好ましい結果が得られることがある。具体的には、アルカラーゼ及びフレーバーザイム、あるいはオリエンターゼONS及びフレーバーザイムの組み合わせが好ましい。特に、植物性蛋白質においては2種類以上のプロテアーゼを組み合わせることが好ましく、少なくとも一種類は酸性プロテアーゼであることが特に好ましい。具体的には、パパイン及びスミチームMP、ヌクレイシン及びコクラーゼPの組み合わせが好ましく、モルシン及びオリエンターゼ20A、オリエンターゼ20A及びスミチームMP、モルシン及びコクラーゼP、ニュートラーゼ及びオリエンターゼ20Aの組み合わせが特に好ましい。酵素を選択する場合、完全に遊離アミノ酸に分解してしまわず、ジペプチドなどのアミノ酸2-4個のオリゴペプチドを多く生成する酵素の組み合わせが好ましい。これら酵素はそれぞれに適した温度、pH条件下で、原料に1〜48時間、特に3〜24時間反応させることが好ましい。このようにして得た酵素分解物をそのまま用いることができる。なお、これら酵素分解物は、TNBS法による平均ペプチド鎖長が2〜3を示すものが好ましい。あるいは、蛋白質の酵素分解はホルモール法で測定したアミノ態窒素が動物蛋白質分解物の場合1.8%以上、植物蛋白質分解物の場合、2.5%以上になる程度の分解をしたものが好ましい
また、酵素分解物は実施例4に示すように脱アミド化したものでもよい。脱アミド化は公知の方法で行えばよい。
上記の配合で食品に添加した場合、食品によっては塩化カリウムの苦味、異味などが目立ってしまうことがある。グルコン酸ナトリウムはこのような異味をマスキングする機能にすぐれており、0.1〜2.0重量%程度の範囲で用いることにより、異味を感じずに、減塩の程度を高めることができる。また、塩化マグネシウム、にがりはそれ自体に塩味と苦味を有するので苦味をマスキングしつつ、添加すると減塩の程度をさらに高めることができる。にがりとして0.1〜5.0重量%程度の範囲で用いるのが好ましい。
水産物の加工品は、上述の塩味増強剤を、水産物の加工の工程中、食塩を用いる際に併用することにより製造することができる。添加する目安としては、添加する水産物によるが、本発明の酵素分解物の混合物の有効成分を食品中に0.1〜3重量%、アルギニン0.1〜1.0重量%、及び塩化カリウム0.1〜5.0重量%程度を添加すると、食品に含まれる食塩を30〜50%減量しても減量していないものと同等の塩味を感じさせることができる。価格は塩化カリウムが安価なので、減塩したい程度に応じて食塩を原料し、異味がしない範囲で塩化カリウムを添加し、その上に酵素分解物とアルギニンを上記の濃度範囲程度の量添加することによって、希望する塩味に調節することができる。
例えば、サケフレークの瓶詰めを製造する場合、加熱済み鮭ほぐし身に対して、食塩を2重量%、塩化カリウムを0.6重量%、酵素分解物の混合物の有効成分を0.8重量%、アルギニン0.2重量%、リンゴ酸0.05重量%を添加すると、同じ塩味で食塩量を40%程度低下させることができた。
例えば、塩サケを製造する場合、鮭切り身40gに対して漬け込み液30gを加え、24時間冷蔵にて静置することにより、同じ塩味でありながら、食塩量を25〜45%低減させることができる。漬け込み液の組成は魚肉に対して食塩を1.6%、塩化カリウム2.0重量%、酵素分解物の混合物の有効成分を0.75〜3.0%、アルギニンを0.15〜0.7%を添加し、リンゴ酸を用いてpH5.0〜6.0としたものである。
例えば、魚肉ソーセージの場合、魚肉練り肉に対し、食塩を1.2重量%、塩化カリウムを0.5重量%、酵素分解物の混合物の有効成分を0.75〜1.5重量%、アルギニン0.1〜0.4重量%程度添加すると、30〜40%の減塩率の製品を製造することができる。
塩化カリウムの異味が気になる食品の場合には、グルコン酸ナトリウムによりマスキングする。また、さらに、高い減塩率の製品にしたい場合は、塩化マグネシウム又はにがりを併用する。
また、本発明の塩味増強剤は、その他公知、市販されている減塩を目的とするための各種添加剤と組み合わせて用いても良い。
実施例中において、「%」とのみ記載されている場合、明確に他の意味である場合を除き、重量%である。
1.食塩含量の測定
食塩含量の測定は、以下の方法に従って行った。即ち、試料を1% HClにて25倍に希釈した後30分間振とうし、ナトリウムイオンを抽出した後、抽出試料を任意の量の1% HClにて希釈し、原子吸光光度計(日立ハイテクノロジーズ製、Z-2000)によりナトリウム含量を測定した。食塩量は、得られたナトリウム含量に2.54を乗じ算出した。
蛋白質の酵素分解物のBrixから食塩量を引いたものを蛋白質の酵素分解物の有効成分量とした。なお、BrixはBrixメーター(アタゴ製、PAL-1)を用いて測定した。
食塩濃度を0.49%(w/w)に調整した試料溶液の塩味強度を、尺度基準法により測定した。即ち、0.49%(w/w) 、0.625%(w/w)、0.76%(w/w)、0.955%(w/w)に調整した食塩標準溶液の塩味強度と、試料溶液の塩味強度を比較し、試料溶液の塩味強度が4点の食塩標準溶液の濃度を直線で結んだ場合、試料溶液の塩味がどのあたりに位置するかで評価した。パネルは、飲食品の調味の専門家で構成した。また試料溶液の塩味増強率は、0.49%の食塩溶液の塩味強度をどの程度増強させたかを示すため、以下の式にて算出した。
カツオ煮汁エキス:NP-40(日本水産製、粗蛋白:40.0%)25.0g、スケソウ魚肉粉末(日本水産製、粗蛋白:88.8%)11.3g、カゼイン:サンラクトS-3(太陽化学製、粗蛋白:93.0%)10.8g、豚ゼラチン:AP-100(新田ゼラチン製、粗蛋白:93.0%)10.8g、卵白:卵白K(キューピータマゴ製、粗蛋白:86.5%)11.6gをそれぞれ蒸留水に分散させ2N NaOHにてpH8.0に調整後、さらに加水し100gとした。それぞれの反応液にスミチームMP(新日本化学工業製)0.1gを加え、50℃で24時間反応させた。反応後、95℃で30分間加熱して酵素を失活させ、7000回転、15分間にて遠心分離(サクマ製、50A-IV型)とろ過(アドバンテック製、NO.2ろ紙)を行い、各種動物蛋白素材の酵素分解物を得た。各素材と実施例の番号及びBrix、NaCl量との対応を、以下の表1に示す。
小麦グルテン:A-グル-G(グリコ栄養製、粗蛋白:89.8%)11.1g、分離大豆蛋白:フジプロFX(不二製油製、粗蛋白:93.6%)10.7gをそれぞれ蒸留水に分散させ2N HClにてpH3.0に調整後、さらに加水し100gとした。それぞれの反応液にモルシンF(キッコーマン製)及びオリエンターゼ20A(HBI製)をそれぞれ0.1g加え、50℃で24時間反応させた。反応後、95℃で30分間加熱して酵素を失活させ、7000回転、15分間にて遠心分離(サクマ製、50A-IV型)とろ過(アドバンテック製、NO.2ろ紙)を行い、各種動物蛋白素材の酵素分解物を得た。各素材と実施例の番号及びBrix、NaCl量との対応を、以下の表2に示す。
分離大豆蛋白:フジプロFX(不二製油製、粗蛋白:93.6%)10.7g、調整豆乳蛋白:ソヤフィット(不二製油製、粗蛋白:60.1%)16.6g、コーングルテン:グルテンミール(王子コーンスターチ製、粗蛋白:73.1%)13.7g、小麦グルテン:A-グル-G(グリコ栄養製、粗蛋白:89.8%)11.1gをそれぞれ0.6N HClに分散させ100gとした。これらの分散液をオートクレーブにて120℃で120分間処理し、脱アミド化処理を行った。処理後、それぞれの反応液を2N NaOHにてpH3.0に調整後、加水し100gとした。それぞれの反応液にモルシンF(キッコーマン製)及びオリエンターゼ20A(HBI製)をそれぞれ0.1g加え、50℃で24時間反応させた。反応後、95℃で30分間加熱して酵素を失活させ、7000回転、15分間にて遠心分離(サクマ製、50A-IV型)とろ過(アドバンテック製、NO.2ろ紙)を行い、各種動物蛋白素材の酵素分解物を得た。各素材と実施例の番号及びBrix、NaCl量との対応を、以下の表3に示す。
実施例2から4にて作製した本発明塩味増強剤の作用を評価した。有効成分が1w/w%となるように本発明塩味増強剤を添加した。次に、評価液中の塩化ナトリウム濃度が0.49w/w%、アルギニン濃度が0.35w/w%となるように10w/w% 塩化ナトリウム溶液及び10w/w% アルギニン溶液を添加し調整した。さらにpH6.0になるように2N HClにて調整した後、蒸留水を加え100gとし、評価液とした。表4に評価液の組成を示す。この評価液を用いて、実施例1の3.に記載の尺度基準法により、本発明塩味増強剤の作用を評価した。これらの溶液の塩味増強作用を評価した結果を図1に示す。
実施例2及び4にて作製した酵素分解物の配合量をかえて塩味増強作用を評価した。表5に評価液の組成を示す。なお、各評価液は、2N HClにてpH6.0に調整した。この評価液を用いて、実施例1の3.に記載の尺度基準法により、本発明塩味増強剤の作用を評価した。これらの溶液の塩味増強作用を評価した結果を図2に示す。
カツオ煮汁エキス(NP-40、日本水産製)1kgに2kgの水を加え、カツオ煮汁エキス希釈液を作製した。このカツオ煮汁エキス希釈液に、スミチームMP(新日本化学工業製)3.85gを加えて、50℃で反応させた。スミチームMP添加後、経時的に試料を採取し、95℃で30分間加熱して酵素を失活させ、7000回転、15分間にて遠心分離とろ紙によるろ過を行い、カツオ煮汁エキス酵素分解物を得た。各酵素反応時間におけるBrix及びNaCl含量を表6に示す。
分離大豆蛋白:フジプロ515L(フジプロテイン製、粗蛋白:93.6%)120gに880gの水を加え、アルカラーゼ(ノボザイムス製)を0.6g添加し、55℃で4時間反応させた。反応後、2N HClにてpH4.0に調整し、オリエンターゼAY(エイチビィアイ製)を0.6g添加し、50℃で反応させた。オリエンターゼAY添加後、経時的に試料を採取し、95℃で30分間加熱して酵素を失活させ、7000回転、15分間にて遠心分離とろ紙によるろ過を行い、分離大豆蛋白酵素分解物を得た。各酵素反応時間におけるBrix及びNaCl含量を表6に示す。
実施例7及び8にて作製した酵素分解物の作用を評価した。実施例7の有効成分が0.5w/w%及び実施例8の有効成分が0.5w/w%となるように添加した。次に、評価液中の塩化ナトリウム濃度が0.49w/w%、アルギニン(Arg)濃度が0.35w/w%となるように10w/w% 塩化ナトリウム溶液及び10w/w% アルギニン溶液を添加し調整した。さらにpH6.0になるように2N HClにて調整した後、蒸留水を加え100gとし、評価液とした。表7に評価液の組成を示す。この評価液を用いて、尺度基準法により、本発明塩味増強剤の作用を評価した。これらの溶液の塩味増強作用を評価した結果を図3に示す。
図3に示されるように、酵素反応時間は蛋白質と酵素の組み合わせや反応条件によるが、8〜12時間以上、好ましくは16〜24時間以上であることが示された。それ以上になると反応は頭打ちになるので、必要以上に長く反応する必要はない。
実施例7及び8にて作製した酵素分解物のアミノ態窒素を測定した。アミノ態窒素はホルモール法にて測定した。すなわち、実施例7及び8にて作製した酵素分解物についてフリーズドライを行ったものを試料とした。試料を0.5g採取し、メスフラスコを用いて蒸留水にて100mlに定容した。ろ紙によるろ過を行い、試料液とした。試料液を20ml採取し、0.1N 水酸化ナトリウムを用いてpH8.3に調整した。0.1N 水酸化ナトリウムにてpH8.3に調整したホルマリンを10ml添加し、0.1N 水酸化ナトリウムを用いてpH8.3になるまでビュレットにて滴定を行い、滴定量を測定した。アミノ態窒素は下式により算出した。これらの酵素分解物試料のアミノ態窒素の測定結果を表8に示す。
実施例7及び8にて作製した酵素分解物について陽イオン交換カラム及び活性炭カラムにより処理を行い、高速液体クロマトグラフィーによりジペプチド含量を測定した。
(1)陽イオン交換カラム処理
実施例7及び8にて作製した酵素分解物についてフリーズドライを行ったものを試料とし、0.5N塩酸溶液にて希釈し、Dowex 50W×4(200〜400メッシュ、H+型、室町テクノス製)のカラムに充填し、カラム容量の5倍量の蒸留水にて洗浄して非吸着画分を除いた。吸着画分は、カラム容量の5倍量の2N アンモニア溶液にて溶出させ、回収した。得られた吸着画分は、真空中で蒸発乾固させ、蒸留水に溶解させた。
(2)活性炭カラム処理
上記陽イオン交換カラム処理により得られた吸着画分を活性炭(二村化学工業製)のカラムに充填し、カラム容量の5倍量の蒸留水にて洗浄して非吸着画分を回収した。得られた非吸着画分は、真空中で蒸発乾固させ、蒸留水に溶解させた。
(3)高速液体クロマトグラフィーによる分析
上記活性炭カラム処理により得られた非吸着画分を高速液体クロマトグラフィー(東ソー製、LC-8020)により分析した。カラムはゲルろ過カラム(ワイエムシィ製、YMC-Pack Diol60:500×8.0mm)を用い、0.2M NaClを含む0.1M リン酸緩衝液pH7.0とアセトニトリルが7:3となるように調整した溶離液にて分析し、220nmにて検出した。表9に標準物質の保持時間を示す。オリゴペプチドについては保持時間が0分から23.5分、ジペプチドについては23.5分から25分、遊離アミノ酸については25分以降の領域とした。ジペプチド含量は下式により算出した。これら酵素分解物試料のジペプチド含量を図4に示す。
実施例7で作製したカツオ煮汁エキス酵素分解物(実施例7-5)と実施例8で作製した大豆酵素分解物(実施例8-5)をそれぞれBrix62となるようにエバポレーター(EYELA製)にて減圧濃縮を行い、酵素分解物の濃縮物を作製した。これら酵素分解物の濃縮物を重量比1:1となるように混合し、カツオ煮汁エキス酵素分解物と大豆酵素分解物の濃縮混合物を作製した。さらに食塩を2w/w%量添加し、95℃で5分間加熱を行ないカツオ煮汁エキス酵素分解物と大豆酵素分解物の濃縮混合調味液とした。
実施例7-5、実施例8-5で得られた本発明塩味増強剤を添加して、食品として塩タラコを作製した。原卵2kgに並塩を60〜140g、タラコ用調味料を65g、リンゴ酸ナトリウムを 20g、ソルビトールを15g、水を200g加え5L樽に入れた。5L樽をもう1つ用意し、材料を交互に移し変える操作を樽返しと呼ぶ。次に1分間連続で樽返しを行った。次の1時間は10分間に1回樽返しを行い、次の3時間は15分間に1回樽返しを行った。15℃で一昼夜静置し、樽熟成を行った。次に15分間水切りを行い、−30℃冷凍庫一昼夜かけて凍結させた。4℃、24時間かけて解凍させ、更に4℃、24時間かけて熟成させた。最後に−30℃冷凍庫一昼夜かけて凍結させ、冷凍塩タラコを作製した。このように並塩の添加量を変化させた塩タラコを比較品1〜4とした。
原卵2kgに並塩を60g、塩化カリウムを30g、タラコ用調味料を65g、リンゴ酸ナトリウムを20g、ソルビトールを15g、水を200g加え上記と同様に処理した塩タラコを比較品5とした。原卵2kgに並塩6を0g、塩化カリウムを30g、実施例7−5を0.15〜0.60%(有効成分として)、実施例8−5を0.25〜1.00%(有効成分として)、アルギニンを8g、タラコ用調味料を65g、リンゴ酸ナトリウムを20g、ソルビトールを15g、水を200g加え上記と同様に処理した本発明塩タラコを発明品1〜5とした。各々の配合を表10に示した。
これら塩タラコに関して原子吸光分析法によるナトリウム量の測定を行い、比較品及び発明品の塩タラコの食塩含量を算出した。また、尺度基準法により発明品1〜5及び比較品5の塩味強度と比較品1〜4の塩味強度との比較評価を行った。即ち、本発明塩たらこが、どの程度の比較品塩たらこと同等の塩味に感じるかを評価し、官能的に感じる食塩濃度を算出した。パネルは、飲食品の調味の専門家で構成した。また本発明品の減塩率は、本発明塩味増強剤を添加することで塩味強度を上げ、どの程度食塩が減らせるかを求めるため、以下の式にて算出した。
実施例7-5、実施例8-5で得られた本発明塩味増強剤を添加して、食品として鮭フレークを作製した。加熱済み鮭ほぐし身100kgに対して食塩を2〜5kg、グルタミン酸ナトリウムを1.0kg、イノシン酸ナトリウムを0.1kg、植物油を10kg、水を20kgを添加し、ニーダーに投入した。これを100kgになるまで加熱混合・乾燥した。更に耐熱ビンに70gずつ投入し密封し、115℃40分間の加熱を行い、鮭フレークを作製した。このように並塩の添加量を変化させた鮭フレークを比較品1〜4とした。
加熱済み鮭ほぐし身100kgに対して食塩を2kg、塩化カリウムを0.6kg、グルタミン酸ナトリウムを1.0kg、イノシン酸ナトリウムを0.1kg、植物油を10kg、水を20kgを添加し、ニーダーに投入した。上記と同様に処理を行い比較品5とした。
加熱済み鮭ほぐし身100kgに対して食塩を2kg、塩化カリウムを0.6kg、実施例7−5を0〜0.3%(有効成分として)、実施例8−5を0〜0.5%(有効成分として)、アルギニン0.2kg、リンゴ酸0.05kg、グルタミン酸ナトリウムを1.0kg、イノシン酸ナトリウムを0.1kg、植物油を10kg、水を20kgを添加し、ニーダーに投入した。上記と同様に処理を行い発明品1〜3とした。各配合は表11に示した。
この鮭フレークに関して原子吸光分析法によるナトリウム量の測定を行い、比較例及び実施例の鮭フレークの食塩含量を算出した。また、実施例12と同様に本発明品との比較評価を行った。鮭フレークの評価結果を表11に示した。比較品5の塩化カリウムのみ使用した低塩品は低塩率が低くかつ異味を感じた。発明品1〜3においては低塩率32.2〜40.4%であり異味は生じなかった。
実施例7-5、実施例8-5で得られた本発明塩味増強剤を添加して、食品として魚肉ソーセージを作製した。白身魚すりみを45kg、食塩を1.0〜2.0kg、グルタミン酸ナトリウムを0.5kg、イノシン酸ナトリウムを0.05kgサイレントカッターに投入し混練する。大豆蛋白を2kg、澱粉を10kg、砂糖を2kg、植物油を8kg、水を30kg、各種調味料を入れ計100kgとし、充分に混練し魚肉ソーセージ用練り肉とする。この練り肉をケーシングに詰めた後、115℃40分間の加熱を行い、魚肉ソーセージを作製した。このように並塩の添加量を変化させた魚肉ソーセージを比較品1〜4とした。
白身魚すりみを45kg、食塩を1.2kg、塩化カリウムを0.5kg、グルタミン酸ナトリウムを0.5kg、イノシン酸ナトリウムを0.05kg、実施例7−5を0.25〜0.5%(有効成分として)、実施例8−5を0.4〜1.0%(有効成分として)、アルギニンを0.1〜0.35kg、リンゴ酸を0.05kgサイレントカッターに投入し混練する。大豆蛋白を2kg、澱粉を10kg、砂糖を2kg、植物油を8kg、水を30kg、各種調味料を入れ計100kgとし、充分に混練し魚肉ソーセージ用練り肉とする。この練り肉をケーシングに詰めた後、115℃40分間の加熱を行い、本発明魚肉ソーセージを作製した。これらを発明品1〜5とした。各配合を表12に示した。
この魚肉ソーセージに関して原子吸光分析法によるナトリウム量の測定を行い、比較例及び実施例の魚肉ソーセージの食塩含量を算出した。また、実施例12と同様に本発明品との比較評価を行った。魚肉ソーセージの試作評価結果を表12に示した。発明品1〜4においては低塩率33.8〜39.1%であったが、アルギニン含量を少なくした発明品5では低塩率が26.6%とやや低かった。
実施例7-5、実施例8-5で得られた本発明塩味増強剤を添加して、食品として焼き秋鮭を作製した。秋鮭切り身40gに対して漬け込み液30gを加え、24時間冷蔵にて静置した。漬け込み液の組成は魚肉に対して食塩1.9〜5.0%食塩の水溶液とした。次に固液を分け、秋鮭切り身を網の上に並べて室温30分間の水切りを行った。魚焼き機にて7分間焼成し、中心温度80℃以上となるのを確認し皿に移した。
秋鮭切り身40gに対して漬け込み液30gを加え、24時間冷蔵にて静置した。漬け込み液の組成は魚肉に対して食塩を1.6%、塩化カリウム2.0%、実施例7−5を0.35〜1.0%(有効成分として)、実施例8−5を0.4〜2.0%(有効成分として)、アルギニンを0.15〜0.7%を添加し、リンゴ酸を用いてpH5.0〜6.0とした。上記比較例と同様の処理を行い、発明品1〜5とした。
この秋鮭切り身(皮部を除いた焼成前)に関して原子吸光分析法によるNa量の測定を行い、比較例及び実施例の秋サケ切り身の食塩含量を算出した。また、実施例12と同様に本発明品との比較評価を行った。焼き鮭切り身の試作評価結果を表13に示した。いずれの発明品も低塩率35〜45%の効果を示した。
実施例7-5、実施例8-5で得られた本発明塩味増強剤を添加して、食品として焼きおにぎりを作製した。生米1kgに対して水1.34kgを加えて炊飯した。このご飯に1次調味液0.13kgを加え混合した。この調味済みご飯を80g毎おにぎり成型した。このおにぎりに片面0.8gの2次調味液を塗布し、急速冷凍を行い冷凍焼きおにぎりとした。
比較品は、1次調味液の基本組成は醤油40%、食塩5%、上白糖5%、グルタミン酸Na 1.0%、核酸系調味料0.05%、カツオ・昆布調味料2.0%、を混合し、水を加えて100%とした。2次調味液の基本組成は醤油80%、カツオ・昆布調味料5.0%、酵母エキス2.5%を混合し、水を加えて100%とした。これら調味料の醤油、食塩量を調整し比較品1〜3を作成した。
本発明品は、1次調味液の基本組成は醤油33〜39%、食塩0%、上白糖5%、グルタミン酸Na 1.0%、核酸系調味料0.05%、カツオ・昆布調味料2.0%、塩化カリウム2.5〜4.1%、実施例7−5を2.64%(有効成分として)、実施例8−5を3.62%(有効成分として)、アルギニン3.28%を混合し、リンゴ酸を用いてpH5.0とし水を加えて100%とした。2次調味液の基本組成は醤油50〜60%、カツオ・昆布調味料5.0%、酵母エキス2.5%、塩化カリウム2.5%、実施例7−5を1.32%(有効成分として)、実施例8−5を1.51%(有効成分として)、アルギニン1.64%、リンゴ酸0. 5%を混合しリンゴ酸を用いてpH5.0とし、水を加えて100%とした。
この焼きおにぎりに関して原子吸光分析法によるNa量の測定を行い、比較品及び発明品の焼きおにぎりの食塩含量を算出した。また、実施例12と同様に本発明品との比較評価を行った。焼きおにぎりの試作評価結果を表14に示した。発明品1、2、3においては低塩率33.0〜40.8%であり異味は生じなかった。また、塩化カリウム由来の異味は感じられなかった。
実施例7-5、実施例8-5で得られた本発明塩味増強剤を添加して、食品としてめんつゆを作製した。濃口醤油32%、砂糖13%、カツオ昆布エキス5%、みりん1%、グルタミン酸ナトリウム0.5%、核酸系調味料0.05%、酵母エキス0.2%、食塩及び本発明品随意量(表15に記載の組み合わせ)を使用して、市販の3倍濃縮相当の濃縮めんつゆ100mlを作成した。原材料を混ぜ合わせ、均一に溶かした後に、クエン酸でpH 5.0に調整した。ビニールのパウチに入れ、85℃(±5℃)10分間の加熱の後に急冷し、6倍に希釈してめんつゆとした。
このめんつゆに対して、原料の塩分含量と添加量から、比較品及び発明品のめんつゆの食塩含量を算出した。また、実施例12と同様に本発明品との比較評価を行った。めんつゆの試作評価結果を表15に示した。発明品は低塩率30.77〜38.36%の低塩効果を示した。発明品7では塩化カリウム由来と考えられる異味が感じられた。
Claims (12)
- 動物蛋白質の酵素分解物と植物蛋白質の酵素分解物の混合物、塩化カリウム、塩基性アミノ酸、グルコン酸ナトリウムを含有することを特徴とする塩味増強剤。
- 酵素分解物が蛋白加水分解酵素により処理されたものである、請求項1の塩味増強剤。
- 動物蛋白質が魚介類の蛋白質である請求項1又は2の塩味増強剤。
- 動物蛋白質が魚介類エキスである請求項1ないし3いずれかの塩味増強剤。
- 植物蛋白質が大豆、小麦、トウモロコシのいずれかの蛋白質である請求項1ないし4いずれかの塩味増強剤。
- 動物蛋白質の酵素分解物と植物蛋白質の酵素分解物を1:100−100:1の比率で含有する請求項1ないし5いずれかの塩味増強剤。
- 塩基性アミノ酸がアルギニンである、請求項1ないし6いずれかの塩味増強剤。
- さらに塩化マグネシウム又はにがりを含有する請求項1ないし7いずれかの塩味増強剤。
- pHを4〜8に調整したものである、請求項1ないし8いずれかの塩味増強剤。
- 請求項1ないし9いずれかの塩味増強剤を、食塩を含有する食品に添加することを特徴とする塩味の増強方法。
- 請求項1ないし9いずれかの塩味増強剤を含有する飲食品。
- 通常よりも食塩含有量が低減された飲食品である請求項11の飲食品。
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