JP2011015595A - モータ制御装置および車両用操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】仮想回転座標系であるγδ座標系のγ軸電流Iγでモータが駆動される。γδ座標系は制御上の回転角である制御角θCに従う座標系である。制御角θCとロータ角θMとの差(負荷角θL)に応じたアシストトルクが発生する。検出操舵トルクTがフィードバックされ、検出操舵トルクTを指示操舵トルクT*に近づけるように、加算角αが生成される。加算角αが制御角θCの前回値θC(n-1)に加算されることにより、制御角θCの今回値θC(n)が求められる。ロータ角変位演算部30は、演算周期当たりのロータ角変位Δθ(角速度に相当する値)を求める。このロータ角変位Δθは、所定の制限処理または平滑処理が施された値である。加算角ガード41は、ロータ角変位Δθに基づいて、加算角αを補正する。
【選択図】図1
Description
しかも、角速度に対しては、制限処理または平滑化処理が加えられるので、角速度も妥当な値を有することができる。したがって、たとえば、モータの誘起電圧を用いてロータの角速度を推定する場合などに、モータ電流等の急変が生じたときでも、加算角の補正に用いられる角速度が不適当な値をとることを抑制できる。これにより、電流制御や外乱によってモータ電流が急変するような状況においても、加算角の補正を適切に行って、モータを正確に制御できる。
たとえば、前演算周期に求めた角速度に対して、今演算周期に求めた角加速度を加算することによって、今演算周期の角速度を求めることができる。このような場合に、角加速度を制限または平滑することによって、角速度を制限または平滑することができる。
前記モータ制御装置は、モータによって駆動される駆動対象(2)に加えられる、モータトルク以外のトルク(T)を検出するためのトルク検出手段(1)と、前記駆動対象に作用させるべき指示トルク(T*:モータトルク以外のトルクの指示値)を設定する指示トルク設定手段(21)とをさらに備えていてもよい。加算角演算手段は、たとえば、トルク検出手段によって検出される検出トルクを指示トルクに一致させるべく、加算角を演算するように動作する。これにより、指示トルクに応じたトルク(モータトルク以外のトルク)が駆動対象に加えられる状態となるように、モータトルクが制御される。モータトルクは、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量である負荷角に対応する。負荷角は、制御角とロータ角との差で表される。モータトルクの制御は、負荷角を調整することによって達成され、この負荷角の調整が加算角を制御することによって達成される。
請求項3に記載されているように、前記モータは、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するものであってもよい。これにより、車両用操舵装置を構成することができる。この場合に、前記トルク検出手段は、前記車両の操向のために操作される操作部材(10)に加えられる操舵トルクを検出するものであってもよい。また、前記指示トルク設定手段は、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定するものであってもよい。そして、前記加算角演算手段は、前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとの偏差に応じて前記加算角を演算するものであってもよい。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
制御角θCに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iqとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iqとの間に、次式(1)の関係が成立する。
Iq=Iγ・sinθL …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、加算角監視部25と、制御角演算部26と、ゲイン変更部27と、誘起電圧推定部28と、回転角推定部29と、ロータ角変位演算部30と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/αβ変換部34Aと、αβ/UVW変換部34Bと、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/αβ変換部36Aと、αβ/γδ変換部36Bと、トルク偏差監視部40と、加算角ガード41とが含まれている。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θCの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θCの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxとすればよい。この制限値ωmaxを用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
LL=−ωmax …(5)
加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θCの前回値θC(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θCの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
加算角監視部25は、加算角リミッタ24から生成される加算角αを監視している。具体的には、加算角監視部25は、加算角αの絶対値が前記制限値ωmaxよりも小さな加算角しきい値に達したかどうかを監視する。加算角監視部25は、加算角絶対値|α|が当該加算角しきい値以上のときには、このことをゲイン変更部27に通知する。
誘起電圧推定部28は、モータ3の回転によって生じる誘起電圧を推定するものである。そして、回転角推定部29は、誘起電圧推定部28によって推定された誘起電圧に基づいて、ロータ50の回転角の推定値(推定回転角)θEを演算するものである。誘起電圧推定部28および回転角推定部29の具体例については、後述する。
指示電流値生成部31は、制御上の回転角である前記制御角θCに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ *およびδ軸指示電流値Iδ *(以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ *」という。)を生成する。指示電流値生成部31は、γ軸指示電流値Iγ *を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ *を零とする。より具体的には、指示電流値生成部31は、トルクセンサ1によって検出される検出操舵トルクTに基づいてγ軸指示電流値Iγ *を設定する。
γδ/αβ変換部34Aは、二相指示電圧Vγδ *をαβ座標系の二相指示電圧Vαβ *に変換する。この座標変換には、制御角演算部26で演算された制御角θCが用いられる。二相指示電圧Vαβ *は、α軸指示電圧Vα *およびβ軸指示電圧Vβ *からなる。αβ/UVW変換部34Bは、二相指示電圧Vαβ *に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW *を生成する。三相指示電圧VUVW *は、U相指示電圧VU *、V相指示電圧VV *およびW相指示電圧VW *からなる。この三相指示電圧VUVW *は、PWM制御部35に与えられる。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW *に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視することにより、指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの大小関係を判定する。その判定結果は、加算角ガード41に与えられるようになっている。
指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)ΔTに対するPI制御(KPは比例係数、KIは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θCの前回値θC(n-1)に対して加算されることによって、制御角θCの今回値θC(n)=θC(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θCとロータ50の実際のロータ角θMとの偏差が負荷角θL=θC−θMとなる。
この実施形態では、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とが正の相関を有する領域で負荷角θLが調整されるように、加算角αが制御される。具体的には、q軸電流Iq=IγsinθLであるから、−90°≦θL≦90°となるように、加算角αが制御される。むろん、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とが負の相関を有する領域で負荷角θLが調整されるように、加算角αを制御することもできる。この場合、90°≦θL≦270°となるように、加算角αが制御される。PI制御部23のゲインを正にすれば正の相関領域での制御となり、PI制御部23のゲインを負にすれば負の相関領域での制御となる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視しており、指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの大小関係に関する情報を加算角ガード41に与える。
加算角αは、演算周期間の制御角θCの変化量であり、γδ座標軸の演算周期当たりの角変位(回転速度に相当する。)に等しい。よって、加算角αが演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも大きければ負荷角θLが大きくなり、加算角αがロータ角変位Δθよりも小さければ負荷角θLが小さくなる。そして、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とに正の相関がある場合には、負荷角θLが大きくなればモータトルクが大きくなり、負荷角θLが小さくなればモータトルクが小さくなる。
図8Bに示す処理では、検出操舵トルクTと指示操舵トルクT*との大小関係に応じた処理が、図8Aの処理とは逆になっている。すなわち、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも小さいとき(ステップS11A:YES)、加算角ガード41は、加算角αが、ロータ角変位Δθよりも小さいかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入する(ステップS13)。すなわち、加算角αがロータ角変位Δθに補正される。加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば(ステップS12:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位よりも変化制限値Aだけ大きな値(Δθ+A)と比較する(ステップS14)。加算角αが当該値(Δθ+A)よりも大きいときには(ステップS14:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+A)を代入する(ステップS15)。加算角αが当該値(Δθ+A)以下であれば(ステップS14:NO)、加算角αの補正は行われない。
負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とに負の相関がある場合には、負荷角θLが大きくなればモータトルクが小さくなり、負荷角θLが小さくなればモータトルクが大きくなる。
このように、回転角推定部29で求められた回転角θEから求まるロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)を上限値Ulimおよび下限値Llimの間の値に制限することができる。これにより、指示電流値Iγδ *、検出電流値Iγδおよび制御角θcのいずれかに急変が生じた場合であっても、ロータ角変位Δθに基づく加算角αの補正を適切に行うことができる。運転者がステアリングホイール10を急操作したり、路面からの外乱が生じたりした場合などには、指示電流値Iγδ *、検出電流値Iγδおよび制御角θcに急変が生じることがある。このような場合には、誘起電圧推定部28および回転角推定部29による回転角推定精度が悪くなる。したがって、推定回転角θEを用いて演算されるロータ角変位Δθの精度も悪くなるから、このようなロータ角変位Δθをそのまま加算角αの補正に用いると、適切な補正を行うことができない。これにより、操舵感が悪化するおそれがある。そこで、この実施形態では、ロータ角変位Δθに対して、上限値Ulimおよび下限値Llimによる制限を加えている。さらに、制限処理後のロータ角変位Δθに対して、移動平均処理による平滑化処理も加えられている。これにより、指示電流値Iγδ *、検出電流値Iγδまたは制御角θcの急変による影響を抑制できるから、加算角ガード41による処理を適切に行える。これにより、良好な操舵感を保持することができる。
制限値ωmaxの場合と同様の考察により、ロータ角変位Δθの最大値は、次式(8)により与えられる。
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(8)
したがって、このロータ角変位最大値を上限値Ulimとし、それに負符号を付して下限値Llimとすればよい。
図11は、ロータ角変位演算部30による処理の他の例を説明するためのフローチャートである。ロータ角変位演算部30は、回転角推定部29から与えられる推定回転角θEの今回値θE(n)から前演算周期で求められた推定回転角(前回値)θE(n-1)を減じることにより、ロータ角変位Δθ(暫定値)を求める(ステップS31)。このロータ角変位Δθは、ロータの角速度に相当する値である。
このように、この例では、ロータ角変位変化量d(Δθ)に対して制限を加えることによって、結果として、ロータ角変位Δθに対して制限を加えることができる。これにより、図10の処理例の場合と同様の効果を得ることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、図10のステップS22〜S24によるロータ角変位Δθの制限の代わりに、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、移動平均フィルタその他のフィルタ処理を用いた平滑化処理を行うようにしてもよい。これにより、ロータ角変位Δθの急変を抑制できるから、ロータ推定角θEの値が不適切である場合に、その影響を抑制して、加算角αの補正を適正に行うことができる。同様に、図11のステップS33〜S36によるロータ角変位変化量d(Δθ)制限に代えて、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、移動平均フィルタその他のフィルタ処理を用いた平滑化処理を適用してもよい。これにより、同様の効果を得ることができる。
また、前述の実施形態では、回転角センサを備えずに、専らセンサレス制御によってモータ3を駆動する構成について説明したが、レゾルバ等の回転角センサを備え、この回転角センサの故障時に前述のようなセンサレス制御を行う構成としてもよい。これにより、回転角センサの故障時にもモータ3の駆動を継続できるから、操舵補助を継続できる。
さらに、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置にこの発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置のためのモータの制御や、パワーステアリング装置以外にも、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システム、可変ギヤレシオ(VGR)ステアリングシステムその他の車両用操舵装置に備えられたブラシレスモータの制御のために用いることができる。むろん、車両用操舵装置に限らず、他の用途のモータの制御のためにも本発明のモータ制御装置を適用できる。
Claims (3)
- ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
前記ロータの角速度を演算する角速度演算手段と、
前記角速度演算手段によって演算された角速度に応じて前記加算角を補正する加算角補正手段と、
前記角速度を制限または平滑する手段と
を含む、モータ制御装置。 - 前記角速度演算手段は、前記ロータの角加速度を演算する角加速度演算手段を含み、
前記制限または平滑する手段は、ロータの角加速度を制限または平滑することにより、前記角速度を制限または平滑するものである、請求項1記載のモータ制御装置。 - 車両の舵取り機構に駆動力を付与するモータと、
前記モータを制御する請求項1または2記載のモータ制御装置とを含む、
車両用操舵装置。
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