JP2011012320A - コネクタ用金属材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】接続信頼性と低摩擦係数を両立し、かつ、はんだ濡れ性が良好なコネクタ用金属材料を提供する。
【解決手段】CuまたはCu合金の母材上にCu−Sn合金層とSnまたはSn合金層がこの順で形成され、前記SnまたはSn合金層の平均厚さが0.001〜0.05μmであるコネクタ用金属材料。
【選択図】なし

Description

本発明はコネクタ用金属材料に関し、さらに詳しくは、優れた挿抜性と優れたはんだ濡れ性を両立したコネクタ用金属材料に関する。
銅(Cu)、銅合金などの導電性基体(以下、適宜、基体と記す。)上にスズ(Sn)、スズ合金などのめっき層を設けためっき材料は、基体の優れた導電性と強度、およびめっき層の優れた電気接続性と耐食性とはんだ付け性を備えた高性能導体として知られており、各種の端子やコネクタなどに広く用いられている。
ところで近年、電子制御化が進む中で嵌合型コネクタが多極化したため、オス端子群とメス端子群を挿抜する際に多大な力が必要になっている。特に自動車のエンジンルーム内などの狭い空間で無理な姿勢で挿抜作業を行う場合、作業が困難なため、前記挿抜力の低減(挿抜性の向上)が強く求められている。
前記挿抜力を低減する方法として、コネクタ端子表面のSnめっき層を薄くして挿抜時の摺動抵抗を軽減したり、接触圧力を低くしたりする方法があるが、この方法ではSnめっき層が軟質のため端子の接触面間にフレッティング現象が起きて、端子間に導通不良が起きることがある。
フレッティング現象とは、振動や温度変化などが原因で端子の接触面間に起きる微摺動により、端子表面の軟質のSnめっき層が摩耗し酸化して、比抵抗の大きい摩耗粉になる現象で、この現象が端子間に発生すると接続不良が起きる。そして、この現象は端子間の接触圧力が低いほど起き易い。
フレッティング現象を防ぎ、かつ挿抜力を下げるため、コネクタ端子表面のSnめっき層を下地Cu層と加熱によって合金化することにより、端子表面の摩擦係数を低くする方法があるが、この方法はCu−Sn合金層のはんだ濡れ性が悪いため、組み立て時にはんだ不良が起こることがある。
摩擦係数を低くした嵌合型端子用導電材料としては、特許文献1及び特許文献2に記載のものなどが提案されているが、コネクタとしたときの挿抜力の低減化や、はんだ濡れ性の点でまだ十分とはいえない。
特開2006−77307号公報 特開2006−183068号公報
本発明は、接続信頼性と低摩擦係数を両立させ、かつ、はんだ濡れ性も十分なコネクタ用金属材料を提供することを課題とする。
上記課題は以下の手段により達成された。
(1)CuまたはCu合金の母材上にCu−Sn合金層とSnまたはSn合金層がこの順で形成され、前記SnまたはSn合金層の平均厚さが0.001〜0.05μmであることを特徴とするコネクタ用金属材料。
(2)前記SnまたはSn合金層において、SnまたはSn合金の粒子が一辺100μmの正方形の視野内において、面積比で10〜90%存在していることを特徴とする(1)に記載のコネクタ用金属材料。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明によれば、接続信頼性と低摩擦係数を維持しつつ、はんだ濡れ性も良好なコネクタ用金属材料を提供できる。
本発明のコネクタ用金属材料は、CuまたはCu合金の母材上にCu−Sn合金層とSnまたはSn合金層がこの順で形成されている。
母材は、通常、導電性材料に用いられているCu基材を特に制限なく用いることができ、タフピッチ銅(TPC)や黄銅、コルソン合金などがあげられる。形状としては、例えば、条材、角線などがあげられる。
母材上には、必要に応じNi下地めっきを施すことができる。Ni下地めっきを施すことは、母材からの合金元素拡散防止の作用を奏する。Ni下地めっき厚は、常法に従い、0.1〜3.0μmが好ましい。なお、本発明におけるめっき厚は、アノード溶解法(コクール法)によって算出される平均厚さをいう。NiのかわりにCo,Fe等を用いてもよい。
次いでCu、Snの順に、めっきを行う。このときCu/Snのめっき厚の比が1.5〜2.0となるようにするのが好ましい。また、Cuのめっき厚を0.01〜2.0μmとするのが好ましく、Snのめっき厚を0.01〜2.0μmとするのが好ましい。
このめっき層に対し、Snの融点以上の温度でリフロー処理を行い、好ましくは厚さ0.1〜2.0μmの、Cu−Sn合金層を形成する。このCu−Sn合金層は、CuSn化合物(CuSn、CuSnなど)の層である。リフロー処理の好ましい温度は300〜800℃であり、好ましい時間は3〜20秒である。また、リフロー処理時の温度が低い場合には比較的長時間で、リフロー処理時の温度が高い場合には比較的長時間で処理することが好ましい。本発明においてはオーバーリフローによって表面までCu−Sn合金層を露出させる。下地Cuは残存してもよい。少し残存している方がリフロー時に純Sn層が残存しにくい場合がある。
このCu−Sn合金層のCu含有量は30〜50質量%であることが好ましく、35〜45質量%であることがより好ましい。
本発明においては、上記Cu−Sn合金層上にSnまたはSn合金の薄層を、フラッシュめっき(無光沢浴)により形成する。電流密度を下げて長時間行ってもよいし、強い電流密度でごく短時間行ってもよい。またパルスめっきによってもよい。この層の厚さは平均厚さで0.001〜0.05μmであり、0.001〜0.03μmが好ましい。薄すぎると、はんだ濡れ性を確保する効果が生じない。一方、厚すぎると動摩擦係数(μk)が大きくなり、結果として挿抜力が大きくなる。また、ウィスカが発生しやすくなる。
なお、ここで用いることのできるSn合金は、好ましくはSnの含有量が60質量%以上、より好ましくはSn 80〜95質量%の合金である。合金に含まれる添加元素成分としては、例えばCu、Bi、Pb、Zn、Ag、Inなどがあげられる。
本発明の金属材料では、前記SnまたはSn合金層において、SnまたはSn合金の粒子が一辺100μmの正方形の視野内において、面積比で10〜90%存在していることが好ましく、20〜80%存在していることがより好ましい。面積比が小さすぎるとはんだ濡れ性が確保できない場合がある。また、大きすぎると挿抜力が大きくなる場合がある。粒子の存在形状は、全面に均一でも、筋状になっていてもよい。
なお、上記粒子の存在割合(面積比)の測定は走査型電子顕微鏡によって行う。
このようにして得られる本発明の金属材料は次のような層構成を有する。
CuまたはCu合金母材/(Ni等の下地層)/(Cu層)/Cu−Sn合金層/平均厚さ0.001〜0.05μmのSnまたはSn合金層
この構成により、低挿抜力(低摩擦係数)と、表面のはんだ濡れ性が両立できる。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、たとえばサンプルおよびその作製条件などは具体的一例にすぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例におけるめっき厚は、アノード溶解法(コクール法)により平均厚さを算出した。
実施例1
厚さ0.25mmのコルソン合金(古河電気工業社製 商品名:EFTEC−97)にNi下地めっきを0.5μm、銅めっきを0.3μm施した後、0.3μmのスズめっきを行った。このときのめっき条件は下記表1のとおりである。その後、スズの融点以上で加熱しリフローを行った(リフロー処理は、バーナ温度を730℃とし、3〜30秒の範囲で熱処理を行った)。Cu含有量40質量%(残部Sn)、厚さ0.5μmのCu−Sn合金層が形成された。
Figure 2011012320
その後、形成されたCu−Sn合金層上に再度スズめっきを0.001μm施し金属材料の試料を得た。このときのめっき条件は以下のとおりである。
石原薬品(株)製の524M(商品名)液を使用し、浴温度30℃、電流密度0.1A/dm、めっき時間は3秒以内とした。めっき時間はめっき厚が0.001μmとなるように適宜調整した。
実施例2、3
Cu−Sn合金層上のスズめっき厚を0.01μm、0.05μmとした以外は実施例1と全く同様にして各金属材料の試料を得た。
実施例4〜6
Ni下地めっきを行わなかった以外は実施例1〜3と全く同様にして金属材料の試料を得た。
実施例7〜9
めっき前の母材の表面を、銅のエッチング液に浸漬して溶解し、表面平滑化の処理を行った以外は実施例1〜3と全く同様にして金属材料の試料を得た。
実施例10〜12
母材(基体)を黄銅(Zn 30質量%含有)とした以外は実施例4〜6と全く同様にして金属材料の試料を得た。
比較例1〜8
母材、Ni下地めっき、処理については、各々表2に示すとおりとし、上記実施例と同様の条件でめっき、リフロー処理を行った。表中、再Sn厚が0となっているものは再スズめっきを行わず、0.1μmとなっているものは、石原薬品(株)製の524M(商品名)液を使用し、浴温度30℃、電流密度5A/dmで再スズめっきを行った、金属材料の試料である。
得られた試料に対し以下の評価を行った。結果を表2に示した。
(表面形状)
得られた試料の表面形状を拡大して観察した。
筋 Sn粒子が筋状に存在
平面 Sn粒子が均一に存在
結晶粒大 平均結晶粒径が1μm以上
(摩擦係数)
バウデン試験により摩擦係数を測定した。圧延筋に直角方向に摺動を行い、荷重は300gf、摺動速度は100mm/min、摺動距離10mm、1回摺動で行った。
◎(優) 0.25未満
○(良) 0.25以上0.3未満
×(否) 0.3以上
(はんだ濡れ)
メニスコグラフ法のゼロクロスタイムを測定した(Sn−3.0Ag−0.5Cu 温度245℃、ロジン)。
◎ 2秒以下
○ 2秒を超え3秒未満
× 3秒以上
(ウィスカ)
50℃で500時間および1000時間加熱して、拡大鏡を使用して目視で評価した。
◎ 発生なし
× 発生あり
Figure 2011012320
摩擦係数、はんだ濡れ、ウィスカの3つの特性について、比較例ではそのいずれか1つ以上が×になっているのに対し、各実施例の試料は×がなく、3つの特性を併せて良好に維持できていることがわかる。
次に、上記実施例および比較例について、一辺100μmの正方形の視野内におけるSnまたはSn合金の粒子の面積比を表3に示す。
Figure 2011012320
表2および表3によれば、SnまたはSn合金の粒子が一辺100μmの正方形の視野内において、面積比で10〜90%存在しているものは、摩擦係数、はんだ濡れ、ウィスカの3つの特性が優れており、面積比で20〜80%である実施例2、実施例5、実施例8、実施例11については、摩擦係数、はんだ濡れ、ウィスカの3つの特性が特に優れていた。

Claims (2)

  1. CuまたはCu合金の母材上にCu−Sn合金層とSnまたはSn合金層がこの順で形成され、前記SnまたはSn合金層の平均厚さが0.001〜0.05μmであることを特徴とするコネクタ用金属材料。
  2. 前記SnまたはSn合金層において、SnまたはSn合金の粒子が一辺100μmの正方形の視野内において、面積比で10〜90%存在していることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ用金属材料。
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