JP2011005547A - 押出ダイス - Google Patents

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Abstract

【課題】適正な締め代を設定して心棒にマンドレルリングを安定して固定でき、かつメンテナンスを簡単に行える押出ダイスを提供する。
【解決手段】 押出材の内面を成形するマンドレル(30)が、心棒(32)と、該心棒(32)に外嵌めされるマンドレルリング(35)とを有し、前記マンドレルリング(35)が心棒(32)よりも熱膨張係数の小さい材料で構成され、前記心棒(32)の外周面(32a)およびマンドレルリング(35)の内周面(35a)が、マンドレルリング(35)を心棒(32)に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度では、マンドレル(30)の軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触し、その接触面が、マンドレル(30)の軸線に対し、押出の下流側に向かって外向きに傾斜する傾斜面となるように設定されている。
【選択図】 図1

Description

この発明は、中空材の押出加工に用いる押出ダイスおよびその関連技術に関する。
なお、本明細書および特許請求の範囲の記載において、押出材および押出材料の進む方向を下流または下流側と称し、逆方向を上流または上流側と称する。
押出ダイスにおいては、ベアリング部に耐摩耗性を与えるために、ベアリング部を含むダイスの一部に超硬合金やセラミック等の超硬材料が用いられている(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、工具鋼からなるダイケースの凹部内に超硬材料からなるリング状ダイスを焼嵌めしたダイスが記載されている。特許文献2には、マンドレルの心棒を工具鋼で形成し、この心棒に超硬材料からなるマンドレルリングを外嵌めし、心棒の先端に抜け止め用ナットを取り付けてマンドレルリングを心棒に固定するように構成したポートホールダイスの雄型が記載されている。
特開平6−15348号公報 特開2003−181525号公報
しかし、超硬材料を焼嵌めするタイプのダイスは、押出の準備工程やメンテナンスに手間がかかるという問題点がある。
また、超硬材料は工具鋼よりも熱膨張係数が小さく、かつ工具鋼よりも引張力に弱いという特性がある。このため、工具鋼からなる心棒に超硬材料からなるマンドレルリングを外嵌めする場合、熱間押出時に心棒が膨張し、マンドレルリングに対する締め付け力が強すぎると破損するおそれがある。逆に、締め付け力が弱すぎると、マンドレルリングがしっかりと固定されず、押出材の押継ぎ部に波打ちが発生したり、偏肉するおそれがある。また、押出材料の流れによってマンドレルリングが心棒から外れるおそれがある。
本発明は、上述した技術背景に鑑み、適正な締め代を設定して心棒にマンドレルリングを安定して固定でき、かつメンテナンスを簡単に行える押出ダイスおよびその周辺技術の提供を目的とする。
即ち、本発明は[1]〜[5]に記載の構成を有する。
[1]押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
前記マンドレルリングが心棒よりも熱膨張係数の小さい材料で構成され、
前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度では、マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触し、その接触面が、マンドレルの軸線に対し、押出の下流側に向かって外向きに傾斜する傾斜面となるように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
[2]常温時において、マンドレルの軸線に対し、前記マンドレルリングの内周面および前記心棒の外周面のうちの少なくとも一方が下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面で形成されている前項1に記載の押出ダイス。
[3]常温(T)時の隙間が最小となる部分において、押出時のダイス温度(T)における心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が下記式で表されるとき、常温(T)時における前記心棒の外径(AT1)およびマンドレルリングの内径(BT1)が前記締め代(XT2)が0〜0.3%となるように設定されている前項1または2に記載の押出ダイス。
T2={〔AT1×(T−T)×α+AT1〕/〔BT1×(T−T)×α+BT1〕−1}×100
ただし、α:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α:マンドレルリングを構成する材料の熱膨張係数(α>α
:常温
:押出時のダイス温度(>T
T1:常温(T)時の心棒の外径
T1:常温(T)時のマンドレルリングの内径(>AT1
[4]押出時のダイス温度において、マンドレルリングの内周面面積の20%以上が心棒の外周面と接触する前項1〜3のいずれかに記載の押出ダイス。
[5]前項項1〜4のいずれかに記載の押出ダイスを用い、心棒とマンドレルリングとの間の軸線方向の少なくとも一部において隙間が無くなる温度で押出を行うことを特徴とする押出方法。
上記[1]に記載の発明の押出用ダイスは、常温時には心棒とマンドレルリングとの間に隙間があるのでマンドレルリングの心棒への着脱が容易であり、マンドレルリングの交換等のメンテナンスを簡単に行える。一方、押出時のダイス温度では、心棒とマンドレルリングとの熱膨張係数の差により両者の間に隙間が無くなり、マンドレルリングは心棒が膨張しようとする径方向の力によって締め付けられて心棒に固定される。しかも、押出時のダイス温度における心棒とマンドレルリングとの接触面は、マンドレルの軸線に対し、押出の下流側に向かって外向きに傾斜する傾斜面であるため、押出材料の流れがマンドレルリングを下流側へ押そうとしても、外向きの傾斜面がその動きを阻止する方向に作用して抜け止め効果を奏する。従って、マンドレルリングの動きが抑制されて高い固定安定性が得られる。このように、マンドレルリングが心棒に固定された状態で押出を行うと、押出材の偏肉が抑制されて高品質の押出材を製造することができる。
上記[2]に記載の各発明によれば、押出時のダイス温度において下流側に向かって外向きに傾斜する接触面を形成することができ、上記の効果を奏することができる。
上記[3]に記載の発明によれば、押出時のダイス温度における心棒とマンドレルリングとの間の締め代(XT2)が適正範囲に設定されているので、安定した固定状態が得られ、かつマンドレルリングの破損を回避できる。
上記[4]に記載の発明によれば、マンドレルリングの固定安定性が特に優れている。
上記[5]に記載の発明によれば、押出はマンドレルリングが心棒に固定された状態で行われているので、偏肉が抑制された高品質の押出材を製造することができる。
本発明の一実施形態である雄型を備えるポートホールダイスを示す分解斜視図である。 図1のポートホールダイスの組み付け状態を示す断面図である。 雄型の分解状態を示す要部断面図である。 常温時のマンドレルを示す断面図である。 押出時のダイス温度時のマンドレルを示す断面図である。 常温時のマンドレルの他の状態を示す断面図である。 温度と、心棒の外径およびマンドレルリングの内径との関係を示す図である。 常温時のマンドレルを示す断面図である。 押出時のダイス温度時のマンドレルを示す断面図である。 常温時のマンドレルを示す断面図である。 押出時のダイス温度時のマンドレルを示す断面図である。 常温時のマンドレルの他の形状を示す断面図である。 図8Aマンドレルの押出時のダイス温度時の状態を示す断面図である。 常温時のマンドレルの他の形状を示す断面図である。 図9Aマンドレルの押出時のダイス温度時の状態を示す断面図である。 常温時のマンドレルの他の形状を示す断面図である。 図10Aマンドレルの押出時のダイス温度時の状態を示す部分断面図である。 他のマンドレルの分解状態を示す断面図である。
図1および図2に示すポートホールダイス(10)は、中空押出材(1)の外周面を成形する雌型(11)と内周面を成形する雄型(20)とが組み合わされてなり、前記雄型(20)が本発明の押出ダイスの一実施形態である。
雌型(11)は、中央部にベアリング孔(12)を有し、ベアリング孔(12)の下流側にはリリーフ孔(13)が形成され、上流側には溶着室用凹部(14)が形成されている。
前記雄型(20)は、ダイス基盤(21)の中央から下流側にマンドレル(30)が突出し、このマンドレル(30)の周囲に押出方向に貫通する複数個のポートホール(22)を有している。隣接するポートホール(22)(22)間には、下流側に突出する前記マンドレル(30)をその基端部(31)で支持する脚部(23)が形成されている。
図3に示すように、前記マンドレル(30)において、基端部(31)の先端側に径の小さい心棒(32)が一体に形成され、前記基端部(31)と心棒(32)との直径差によりこれらの間には段部(33)が形成されている。前記心棒(32)の先端側はさらに径小となって、外周面に螺旋状のネジ溝が形成されたボルト部(34)が一体に形成されている。前記基端部(31)、心棒(32)およびボルト部(34)は同軸上に形成されている。マンドレルリング(35)は、外周面に、押出材(1)の内周面を成形するベアリング部(36)が突設された環状体である。ナット(37)は前記ボルト部(34)のネジ溝に螺合されるネジ孔(38)を有している。而して、前記心棒(32)にマンドレルリング(35)を外嵌めして段部(33)に当接させ、ボルト部(34)にナット(37)のネジ孔(38)を螺合させると、マンドレルリング(35)は段部(33)とナット(37)に挟まれて、軸線方向の所定位置に配置される。
本発明においては、前記心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材料と形状の両面により、押出時にマンドレルリング(35)が心棒(32)に固定されるように構成している。前記心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材料特性および形状については後に詳述する。本発明における「押出時のダイス温度」とは、心棒およびマンドレルリングが高温押出時に所定の温度となり、そのときの温度をいう。
前記雌型(11)と雄型(20)とを組み合わせると、雌型(11)のベアリング孔(12)内に雄型(20)のマンドレルリング(35)のベアリング部(36)が嵌り込んでこれらの間に環状の成形用間隙(符号なし)が形成され、雌型(11)の溶着室用凹部(14)の一部が雄型(20)の端面で塞がれてポートホール(22)に連通する溶着室を形成する。そして、各ポートホール(22)に流入した押出材料は溶着室で合流し、成形用間隙から中空部(2)を有する押出材(1)として押出される。
本発明は、マンドレルを構成する心棒およびマンドレルリングの材料および形状に主要な特徴を有し、これらによって適正な締め代が設定されかつテーパー状の接触面が形成されることでマンドレルリングを安定して固定できる。以下に、マンドレルリングおよび心棒の材料および形状、固定方法について詳述する。
〔マンドレルの材料〕
前記マンドレル(30)において、マンドレルリング(35)を構成する材料は耐摩耗性に優れ、かつその熱膨張係数(α)と心棒(32)を構成する材料の熱膨張係数(α)とがα>αの関係を満足するものであれば特に限定されない。本実施形態においては、心棒(32)を含む部分(以下、単に「心棒」と略する)が工具鋼で形成されているのに対し、マンドレルリング(35)は前記工具鋼よりも耐摩耗性の高い超硬材料で構成されている。超硬材料としては、WC−Co等の超硬合金、高速度工具鋼、粉末高速度工具鋼、セラミックス等を例示できる。表1に、これらの超硬材料および工具鋼の一例およびそれらの熱膨張係数を示す。なお、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の熱膨張係数がα>αの関係を満足すれば良いので、例示した材料は表1に記載した用途に限定されない。例えば、粉末高速度工具鋼の心棒に超硬合金やセラミックスのマンドレルリングを組み合わせる場合も本発明に含まれる。
Figure 2011005547
本発明において、マンドレルリングとして心棒よりも熱膨張係数の小さい材料を用いることにより、押出時の加工発熱によるマンドレルリングの膨張率が小さくなるため、押出材はより安定した寸法のものを得ることができる。即ち、心棒(工具鋼)に熱膨張係数の小さいマンドレルリングを組み合わせたマンドレルでは、押し出していない時と加工発熱最大時との外径差が、工具鋼のみで製作したマンドレルにおける外径差よりも小さくなるので、押出材の肉厚が安定する。また、押出材の寸法が安定していると、後加工後の製品品質も安定したものとなる。
〔マンドレルの形状〕
図3および図4Aは、常温(T)時におけるマンドレル(30)の要部断面図である。
前記マンドレル(30)は、心棒(32)の外周面(32a)をマンドレル(30)の軸線と平行に形成する一方で、マンドレルリング(35)の内周面(35a)は下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面(テーパー角度:θT1)で形成されている。心棒(32)にマンドレルリング(35)を外嵌めすると、心棒(32)とマンドレルリング(35)との間に、押出の上流側端部(心棒の付け根側)で最も狭く、下流側(心棒の先端側)に向かって徐々に広くなる隙間(S)が存在する。
図4Aは、常温(T)時のマンドレルリング(35)の内径(BT1)として直径が最小となる上流端における直径を示している。心棒(32)の外径(AT1)は軸線方向において一定である。従って、心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)との間には、(BT1−AT1)を最小値とする隙間(S)が存在する。
なお、図4Aはマンドレルリング(35)の内周面(35a)と心棒(32)の外周面(32a)との間の距離が周方向においても一定の大きさとした状態を示しているが、常温(T)においてはマンドレルリング(35)と心棒(32)の軸合わせがなされていないので、両者間の距離は周方向で必ずしも一定にはならない。例えば、図示の姿勢でマンドレル(30)の組み立てを行うと、図4Cに示したように、マンドレルリング(35)の内周面(35a)の上部が心棒(32)の外周面(32a)の上部に接触して両者間の距離はゼロであり、周方向に沿って下方にいくにつれて両者間の距離が拡大し、下部において距離が最大となる。前記マンドレルリング(35)は内周面(35a)がテーパー面であるから、マンドレルリング(35)の内径が最小となる上流端でのみ心棒(32)の外周面(32a)と接触している。また、マンドレルリング(35)はナット(37)で締め付けられて仮止めされた状態にあるので、全周において両者は接触していないが、両者間の距離には偏りがある、という場合もある。従って、本発明において「隙間がある」とは、マンドレルリング(35)と心棒(32)との接触の有無を意味するのではなく、常温(T)における心棒(32)の外径(AT1)とマンドレルリング(35)の内径(BT1)とが「BT1>AT1」なる関係を満足し、両者の間にクリアランスが存在することを意味する。また、マンドレルリング(35)と心棒(32)とが上述したいずれの位置関係にある場合においても、本発明における隙間(S)の大きさはマンドレルリング(35)の内径(BT1)と心棒(32)の外径(AT1)との差(BT1−AT1)で表される。
また、後述する図8A、9A、10Aのマンドレル(50)(55)(60)においても、マンドレルリング(52)(57)(62)の内周面(52a)(57a)(62a)と心棒(51)(56)(61)の外周面(51a)(56a)(61a))との間の距離が周方向において一定とした例を示しているが、これらの態様においても両者が接触する部分を有していたり、周方向における両者間の距離に偏りがある場合もある。なお、図8Aおよび図10Aのマンドレル(50)(60)はマンドレルリング(52)(62)の内径の最小値と心棒(51)(61)の外径の最大値との差が極めて小さいために、図面上では隙間(S)が最小となる部分でマンドレルリング(52)(62)と心棒(51)(61)が全周で接触しているように見えるが、両者間にはマンドレルリング(52)(62)を着脱できる程度の緩みが存在している。
常温(T)時に心棒(32)とマンドレルリング(35)とを組み付ける際には、前記隙間(S)があるのでマンドレルリング(35)を心棒(32)に外嵌めすることは容易である。さらに、ナット(37)を取り付けて締め付けると、心棒(32)には押出方向の引張力が生じ、マンドレルリング(35)には押出方向の圧縮力が生じる。
〔マンドレルリングの径方向における固定〕
図5は、温度(T)に対する心棒(32)の外径(A)およびマンドレルリング(35)の内径(B)の変化を示したものでる。なお、本実施形態のマンドレル(30)はマンドレルリング(35)の内周面(35a)がテーパー面であって軸線方向において外径が変化しているので、ここでは、心棒(32)とマンドレルリング(35)との隙間が最小となる、上流端における内径をマンドレルリングの内径(B)として説明する。
図5に示すように、心棒(32)およびマンドレルリング(35)はいずれも熱膨張により寸法が拡大する(A、B)。常温(T)において、マンドレルリング(35)の内径(B)は心棒(32)の外径(A)よりも大きく、図4Aに示したように、心棒(32)の上流端においてBT1−AT1の隙間(S)がある。
温度(T)が上昇すると、心棒(32)およびマンドレルリング(35)は、それぞれの熱膨張係数(α)(α)に応じて径が大きくなる。T>Tを満足する任意の温度(T)における心棒(32)の外径(AT2)およびマンドレルリング(35)の内径(BT2)は、下記の(I)式および(II)式で表される。
T2=AT1×(T−T)×α+AT1 …(I)
T2=BT1×(T−T)×α+BT1 …(II)
ただし、α:心棒を構成する材料の熱膨張係数
α:マンドレルリングを構成する材料の熱膨張係数
:常温
:高温(>T
T1:常温(T)時の心棒の外径
T1:常温(T)時のマンドレルリングの内径(>AT1
ダイス温度が上昇すると、心棒(32)およびマンドレルリング(35)がそれぞれの熱膨張係数(α)(α)に従って膨張し、心棒(32)には圧縮力が生じ、マンドレルリング(35)には周方向の引張力が生じる。そして、心棒(32)の外径拡大量がマンドレルリング(35)の内径拡大量を上回るために隙間(S)は減少していき、図4Bに示すように上流端において隙間(S)が無くなるとマンドレルリング(35)は心棒(32)に固定される。
熱膨張係数はα>αであるから、図5に参照されるように、温度上昇に伴い、温度(T)において心棒(32)の外径(ATZ)とマンドレルリング(35)の内径(BTZ)が等しくなった時点で隙間(S)が無くなり、マンドレルリング(35)は心棒(32)から外れなくなって固定された状態となる。さらに温度が上昇すると、心棒(32)の外径(A)がマンドレルリング(35)の内径(B)を上回る。心棒(32)の外径(A)がマンドレルリング(35)の内径(B)を上回る温度領域(T>T)では、心棒(32)の膨張力がマンドレルリング(35)を内側から締め付ける力として作用し、マンドレルリング(35)に周方向の引張力が付与されるので、ますます心棒(32)から外れにくくなってしっかりと固定される。
また、本実施形態のマンドレル(30)は常温時(T)における隙間(S)は上流側ほど狭くなっているので、ダイス温度が上昇する過程で、最初に心棒(32)の上流端において隙間(S)が無くなり、隙間(S)の無い領域が下流側に拡大していく。図4Bに示すように、本実施形態のマンドレル(30)は、押出時のダイス温度(T)において上流側で心棒(32)とマンドレルリング(35)とが接触し下流側で隙間(S)が残るように、マンドレルリング(35)の上流端における内径(BT1)および内周面(35a)のテーパー角度、心棒(32)の外径(AT1)が設定されている。また、上流側に形成される接触面(39)は、常温(T)時のマンドレルリング(35)の内周面(35a)に倣って下流側に向かって外向きに傾斜する傾斜面となる。
押出時、ダイスは所定温度に加熱されて常温(T)よりも高温となる。従って、図5に示すように、押出時のダイス温度(T)において、心棒(32)の外径(AT2)がマンドレルリング(35)の内径(BT2)と等しくなるか、心棒(32)の外径(AT2)がマンドレルリング(35)の内径(BT2)を上回るように、常温(T)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定すれば、マンドレルリング(35)を心棒(32)に固定した状態で押出を行うことができる。そして、マンドレルリング(35)が心棒(32)に固定された状態で押出を行うと、押出材(1)の偏肉が抑制されて高品質の押出材(1)を製造することができる。ただし、心棒(32)の膨張力が過剰になってマンドレルリング(35)の引張力の限界を超えるとマンドレルリング(35)が破損するので、材料の熱膨張係数(α、α)と押出時のダイス温度(T)を勘案して、高温時に適度な引張力を生じさせるように、常温(T)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定する。
ここで、任意の温度(T)における心棒(32)とマンドレルリング(35)との締まり具合および緩み具合を、心棒(32)の外径(A)とマンドレルリング(35)の内径(B)の比率に基づいて、下記(III)式の締め代(X)として定義する。A<B、即ち両者の間には隙間がある状態ではX<0となり、締め代(X)値が小さくなるほど緩みが大きいことを示している。一方、A>B、即ち両者の間には隙間がなくマンドレルリング(35)が内側から心棒(32)に締め付けられている状態ではX>0となり、締め代(X)の値が大きくなるほど締め付け力大きいことを示している。A=B(X=0)は、両者に隙間はないが締め付け力が利いていない状態である。
(%)=(A/B−1)×100 …(III)
さらに、(III)式により、常温(T)時および高温(T)時(押出時のダイス温度)における心棒(32)とマンドレルリング(35)との締め代(XT1)(XT2)は、それぞれ(IV)式および(V)式により表わされる。
T1(%)=(AT1/BT1−1)×100 …(IV)
T2=(AT2/BT2−1)×100
={〔AT1×(T−T)×α+AT1〕/〔BT1×(T−T)×α+BT1〕−1}×100
…(V)
心棒(32)およびマンドレルリング(35)は、常温(T)時にAT1<BT1となるように製作されるのでXT1<0となり、締め代(XT1)は両者間の隙間があって緩んだ状態を示している。一方、押出時のダイス温度(T)時は両者間の隙間が無くなってAT2≧BT2であるから、その締め代(XT2)は0または正値となり、締め付け力が利いている状態を示している。また、XT2<0は、押出時のダイス温度(T)時にも緩みがあってマンドレルリング(35)が心棒(32)に固定されていない状態を示している。
前記締め代(XT2)が大きくなるほど締め付け力も強くなり、マンドレルリング(35)がしっかりと固定されて外れにくくなるが、上述したように締め付け力が過度に大きくなるとマンドレルリング(35)が破損するおそれがある。また、押出時には材料流れにより押出方向の力もが加わる。これらを勘案すると、前記押出時のダイス温度(T)における締め代(XT2)は0.3%以下が好ましい。前記締め代(XT2)が0または正値である限り下限値は規定されないが、確実に固定するために0.05%以上が好ましい。特に好ましい締め代(XT2)は0.15〜0.25%である。なお、締め代(XT2)の適正範囲は、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材質、マンドレルリング(35)の厚み等によって異なる。
従って、常温(T)時に隙間(S)が最小となり押出時のダイス温度(T)時に締め付け力が最大となる部分において、押出時のダイス温度(T)時の締め代(XT2)が0〜0.3%となるように、常温(T)時の心棒(32)の外径(AT1)およびマンドレルリング(35)の内径(BT1)を設定すれば良い。その他の部分における締め代は、常温(T)時の隙間(S)の大きさに応じた値となる。
また、常温(T)時の締め代(XT1)は負値である限り限定されない。心棒(32)の外径(AT1)がマンドレルリングの内径(BT1)よりも小さいので、これらの組み付け作業は容易である。押出ダイスは、押出が終わって常温(T)に冷却されると常温(T)時の締め代(XT1)に戻って緩みが生じるので、心棒(32)からマンドレルリング(35)を取り外すことができる。従って、摩耗したマンドレルリングの取り外し、新しいマンドレルリングの取り付けといったメンテナンスを容易に行える。
なお、図4Aおよび図4Bは、径方向の熱膨張を説明するための模式図であって、軸線方向の熱膨張は表わされていない。
〔マンドレルリングの軸線方向における固定〕
常温(T)のマンドレルリング(35)の内周面(35a)は、マンドレル(30)の軸線に対して下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面で形成されているため、押出時のダイス温度(T)時における接触面(39)もマンドレルリング(35)の内周面(35a)の傾斜方向に倣って下流側に向かって広がる外向きの傾斜面となる(図4B参照)。このため、押出材料の流れがマンドレルリング(35)を下流側へ押そうとしても、外向きの傾斜面(接触面)(39)がその動きを阻止する方向に作用して抜け止め効果を奏する。従って、マンドレルリング(35)の動きが抑制されて高い固定安定性が得られる。前記接触面(39)の位置は、常温(T)時の隙間(S)の大きさや熱膨張率(α、α)の差によって決まるので、常温(T)時に上流側に向かって狭くなる隙間(S)を有する本実施形態においては、その傾斜角度(θT2)は常温(T)時のマンドレルリング(35)の内周面(35a)のテーパー角度(θT1)から僅かに変化するが、傾斜方向は維持される。
前記接触面(39)は僅かでも傾斜していれば上述した抜け止め効果が得られるので、本発明は接触面(39)の傾斜角度(θT2)を限定するものではない。ただし、接触面(39)のマンドレル(30)の軸線に対する傾斜角度(θT2)が大きくなるほどその効果は増大するので、前記傾斜角度(θT2)は0.05〜3°が好ましく、特に0.1〜2°が好ましい。
また、本実施形態のマンドレル(30)は心棒(32)の先端側(下流側)からマンドレルリング(35)を外嵌めする構造であるので、両者の接触面積の確保と外嵌め可能なマンドレルリング(35)の最小径と心棒(32)の最大径とを勘案すると、常温(T)時のテーパー角度(θT1)は自ずと制限され、接触面(39)の傾斜角度(θT2)も相応の角度に制限される。ただし、心棒を基端部に対して脱着自在とし、心棒の根本側(上流側)からマンドレルリングを嵌める構造にすれば、上記のテーパー角度(θT1)および傾斜角度(θT2)を大きくすることができる。かかる構造のマンドレルについては後に詳述する。
押出時のダイス温度(T)において、心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)とは必ずしも全領域で接触している必要はなく、図4Bに示すように隙間(S)が残っていても良い。ただし、接触面積が大きいほど締め付け力が利いてマンドレルリング(35)の固定安定性が向上することから、マンドレルリング(35)の内周面(35a)の面積の20%以上、特に50%以上が心棒(32)の外周面(32a)に接触することが好ましい。かかる接触面積率は、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の材料選定および寸法設定によって調節できる。また、部分的に接触する場合、接触位置は常温時の隙間の狭い部分であり、本実施形態の上流側に限定されない。上流側または中間部で接触する場合や複数箇所で接触する場合も本発明に含まれる。
なお、接触面の一部が上述した傾斜面であれば抜け止め効果が得られるので、接触面の全領域が傾斜面であることにも限定されない。例えば、接触面の一部に、軸線に対して平行な面や逆向きの傾斜面を含んでいる場合も本発明に含まれる。
さらに、本実施形態のマンドレル(30)においては、心棒(32)の先端に、マンドレルリング(35)の内径よりも径の大きいナット(37)が着脱自在に取り付けられている。押出時のダイス温度(T)時のマンドレルリング(35)は心棒(32)によって径方向に締め付けられ、かつ前記接触面(39)の傾斜によって固定されるが、押出中は材料の流れによって下流側への力が加わる。そこで、前記マンドレル(30)においては、ナット(37)を取り付けることでマンドレルリング(35)の抜け落ちを確実に防ぎ、固定安定性を高めている。また、ナット(37)を取り付けて軸線方向の拘束力を加えることで、心棒(32)の膨張力による締め付けおよび接触面の傾斜のみで固定する場合よりも、締め代(XT2)を小さくすることができるので、締め代(XT2)の増大によるマンドレルリング(35)の破損の危険性を回避できる。
また、ナット(37)を取り付けるマンドレル(30)においては、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の軸線方向における寸法にも常温(T)時に差を設けておき、押出時のダイス温度(T)時にナット(37)がマンドレルリング(35)に当接して、マンドレルリング(35)がナット(37)によって確実に拘束されるようにすることが好ましい。
図6Aおよび図6Bは、心棒(32)およびマンドレルリング(35)の軸線方向における好ましい寸法関係を示している。図6Aに示す常温(T)時において、心棒(32)の長さはマンドレルリング(35)の長さよりも短く、ボルト部(34)に螺合させたナット(37)はマンドレルリング(35)を締め付けている。心棒(32)には、心棒(32)とナット(37)との間の隙間(S)に応じた引張力が付与され、マンドレルリング(35)は軸線方向に拘束されている。図6Bは、図6の押出時のダイス温度(T)時の状態を示す図であり、心棒(32)およびマンドレルリング(35)がそれぞれに膨張した状態を示している。心棒(32)の熱膨張係数(α)とマンドレルリング(35)の熱膨張係数(α)はα>α2の関係にあるので、心棒(32)の寸法拡大量がマンドレルリング(35)の寸法拡大量を上回り、前記隙間(S)は減少方向に変化する。この隙間(S)の減少により、心棒(32)に付与される引張力は減少し、マンドレルリング(35)に対する締め付け力は減少するが、隙間(S)がある限りがナット(37)による抑えが利いているので、マンドレルリング(35)が軸線方向にずれることはない。即ち、マンドレルリング(35)は径方向と軸線方向の両方向に拘束されて固定されている。このように、軸線方向の拘束が加わることで、上述した径方向の締め代(XT2)を小さくしても、マンドレルリング(35)の固定安定性を維持することができる。ひいては、マンドレルリング(35)に付与される周方向の引張力を軽減して、締め代(XT2)の増大による破損を回避することができる。
これに対し、図7Aは、常温(T)において心棒(32)とマンドレルリング(35)の長さが等しく、心棒(32)とナット(37)との間に隙間(S)が無い状態を示している。図7Bは、図7Aの押出時のダイス温度(T)時の状態を示す図であり、熱膨張により心棒(32)がマンドレルリング(35)よりも長くなって、マンドレルリング(35)とナット(37)との間に隙間(S)が生じている。このような状態では、マンドレルリング(35)に対してナット(37)による抑えが利かなくなり、軸線方向の固定安定性が低下する。また、このような状態でマンドレルリング(35)のずれを確実に阻止するには、径方向の締め代(XT2)を十分に大きくする必要があるので、マンドレルリング(35)が破損する可能性も増大する。
なお、図6Aおよび図6Bでは常温(T)時に心棒(32)がマンドレルリング(35)より短い場合を示したが、その差が小さく押出時のダイス温度(T)時に長さが逆転して心棒(32)がマンドレルリング(35)よりも長くなれば、図7Bのようにナット(37)による抑えが利かなくなる。
以上より、押出時のダイス温度(T)時にマンドレルリング(35)にナット(37)による締め付け力が作用するように、常温(T)時の心棒(32)およびマンドレルリング(35)の軸線方向の寸法を設定しておくことが好ましい。ダイスの温度上昇に伴って、マンドレルリング(35)とナット(37)は緩む方向に変化するので、押出時のダイス温度(T)時にナット(37)による締め付け力を確実に利かせるためには、少なくとも常温(T)時にナット(37)がマンドレルリング(35)を締め付けている必要がある。
〔マンドレルリングの周方向における位置決め〕
マンドレルにおいては、心棒およびマンドレルリングの孔の断面形状を非円形に形成することにより、マンドレルリングの周方向の回動を阻止することができる。これにより、周方向のずれがなくなって固定安定性を高めるとともに、マンドレルリングの位置決めを行うことができる。特に、押出材の中空部の形状が円以外の場合は、周方向の位置決めが必要となるため、適用意義が大きい。非円形断面としては、角形断面、円形の一部を直線で形成した断面等である。
〔マンドレルの他の形状〕
本発明における特徴の一つは、押出時のダイス温度時に心棒とマンドレルリングの接触面の少なくとも一部が下流側に向かって外向きの傾斜面となることである。図3等のマンドレル(30)は、心棒(32)の外周面(35a)を軸線に平行とし、マンドレルリング(35)の内周面(35a)を軸線に対して傾斜させることにより、押出時のダイス温度において接触面が傾斜面となるようにしたものであるが、本発明は上記の組み合わせに限定されない。押出時のダイス温度において接触面を傾斜面とするには、心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面の一方または両方が、常温時に下流側に向かって外向きに傾斜していれば良い。
図8A、8Bのマンドレル(50)は、マンドレル(50)の軸線に対し、心棒(51)の外周面(51a)を下流側に向かって外向きに傾斜させ、マンドレルリング(52)の内周面(52a)を平行に形成したものである。図8Aに示す常温時には下流側で狭くなる隙間(S)を有し、図8Bに示す押出時のダイス温度において、下流側で両者が接触し、かつその接触面(53)は心棒(51)の外周面(51a)に傾斜方向に倣って下流側に向かって外向きに傾斜したものとなる。図中のθT2は接触面(53)の軸線に対する傾斜角度である。
図9A、9Bのマンドレル(55)は、心棒(56)の外周面(56a)およびマンドレルリング(57)の内周面(57a)の両方を、マンドレル(55)の軸線に対し、下流側に向かって外向きに同一角度で傾斜させたものである。図9Aに示す常温時の隙間(S)は、大きさが一定で軸線に対して傾斜している。図9Bに示す押出時のダイス温度において、接触面積率100%で両者が接触し、接触面(58)は心棒(56)の外周面(56a)およびマンドレルリング(57)の内周面(57a)の傾斜方向に倣って下流側に向かって外向きに傾斜したものとなる。なお、心棒(56)の外周面(56a)とマンドレルリング(57)の内周面(57a)の両方が傾斜し、そのテーパー角度が異なる場合も本発明に含まれる。
また、心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面は平滑面であることに限定されず、一方に設けられた突起部を他方に食い込ませるような接触構造も本発明に含まれる。図10A、10Bのマンドレル(60)は、心棒(61)の外周面(61a)を軸線と平行に形成し、マンドレルリング(62)の内周面を、断面V字形の山部(63)と谷部とを軸線方向に交互配置した凹凸面で形成したものである。図10Bに示す押出時のダイス温度時には、マンドレルリング(62)の山部(63)が心棒(61)に食い込んで下流側に向かって外向きに傾斜する接触面(64)が形成される。1つの山部(63)で形成される接触面積は小さいが、食い込みによるくさび効果によって高い固定安定性を達成できる。また、複数の山部(63)を設けることでも高い固定安定性を達成できる。本発明は心棒に突出部を設けてマンドレルリングの内周面に食い込ませる構造を排除するものではないが、マンドレルリングには心棒よりも耐摩耗性の高い硬質材料を用いることから、マンドレルリングに突出部を設ける方がくさび効果を得やすく固定安定性を高めることができる。
さらに、本発明においては、心棒をマンドレルの基端部に対して脱着自在とすることもできる。図11は、脚部から突出するマンドレル(70)において、心棒(71)を基端部(31)から切り離し、心棒(71)の上流側端面にネジ溝を形成したボルト部(72)を突設する一方で、基端部(31)の下流側端面に前記ボルト部(72)のネジ溝に螺合される有底のネジ穴(73)を設け、心棒(71)を基端部(31)にネジ止めするようにしたものである。このマンドレル(70)では、心棒(71)が基端部(31)に対して脱着自在であるから、取り外した心棒(71)の上流側、下流側のどちらからでもマンドレルリング(74)を外嵌めすることができる。図示例のマンドレル(70)は、心棒(71)の外周面(71a)およびマンドレルリング(74)の内周面(74a)がともに下流側に向かって外向きに傾斜し、心棒(71)の下流端における外径(心棒の最大径)(D)がマンドレルリング(74)の上流端における内径(マンドレルリングの最小径)(D)よりも大きい。このため、マンドレルリング(74)を心棒(71)の下流側から外嵌めすることはできないが、上流側からの外嵌めは可能である。このような心棒脱着構造を採用すれば、マンドレルの設計においてテーパー角度を含む形状選定の自由度が高くなる。また、心棒一体構造のマンドレルよりも接触面の傾斜角度を大きくすることができ、接触面の傾斜角度を大きくすることで軸方向の固定安定性も高めることができる。さらに、心棒を脱着自在とすることにより、1つの基端部に対して形状の異なる複数の心棒およびマンドレルリングを組み合わせることもできる。また、心棒の脱着手段は図示例のネジ止めに限定されないが、脱着が容易で心棒の固定安定性が高い点でネジ止めを推奨できる。
本発明の押出ダイスは、閉じられた中空部を有する中空材の押出のみならず、中空部の一部が開口した半中空材の押出にも適用することができる。
また、本発明の押出ダイスを用いて成形する材料は金属である限り何ら限定されず、アルミニウム、銅、鉄およびこれらの合金を例示できる。
以下の実施例1,2において、図1および図2に参照されるポートホールダイス(10)の雄型(20)を、マンドレルの形状を変えて製作した。各マンドレルにおける心棒およびマンドレルリングの材料は共通であり、心棒を含む部分の材料は工具鋼(SKD61、熱膨張率:13×10−6/℃)であり、マンドレルリングの材料は超硬合金(WC−Co、熱膨張率:7×10−6/℃)である。
〔実施例1〕
図3〜4Bに示すマンドレル(30)を製作した。表2に、製作した心棒(32)よびマンドレルリング(35)の寸法を示す。
常温(T)時において、前記心棒(32)の外径(AT1)は24.000mmであり、その外周面(32a)は軸線に対して平行に形成されている。一方、マンドレルリング(35)の内周面(35)は下流側に向かって外向きのテーパー面に形成され、その軸線に対するテーパー角度(θT1)は0.138°である。また、マンドレルリング(35)は、最小径である上流端の内径(BT1)が24.024mm、軸線方向における長さは20mmであり、前記テーパー角度(θT1)より、下流端における内径が24.120mm、両端部間の中央部(長さ方向の1/2の位置)における外径は24.072mmである。
図4Aに示すように、常温(T)時において、マンドレルリング(35)を心棒(32)に外嵌めすると、両者間に隙間(S)が生じる。この隙間(S)の大きさは下流側端部において0.060mm(直径差として0.120mm)、上流側端部において0.0012mm(直径差として0.024mm)であり、下流に向かって徐々に広く、上流側に向かって徐々に狭くなっている。
心棒(32)のボルト部(34)にナット(37)を螺合させてマンドレルリング(35)を仮止めした後、常温(T)からの500℃昇温させた。従って、押出時のダイス温度(T)はT+500℃である。心棒(32)およびマンドレルリング(35)の熱膨張率および常温(T)時の各部の寸法より計算した押出時のダイス温度(T)における寸法を表2に示す。さらに上述した(V)式により計算した締め代(XT2)を表2に示す。
Figure 2011005547
表2に記載した押出時のダイス温度(T)時の心棒(32)の外径(A)およびマンドレルリング(35)の内径(B)より、心棒(32)の上流端においてマンドレルリング(35)は0.2%の締め代で締め付けられて、中央部で心棒(32)の外径(A)とマンドレルリング(35)の内径(B)が同寸となって締め代が「0」となる。即ち、上流端から中央部までは心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)とが接触し、締め付け力が作用している。この締め付け力は上流端で最大となり、下流側に向かって中央部まで徐々に減少する。中央部から下流端までは、心棒(32)の外周面(32a)とマンドレルリング(35)の内周面(35a)との間の隙間があって締め付け力が利いていない状態である。また、接触面(39)の傾斜角度(θT2)は0.063°(数値解析により算出)であり、マンドレルリング(35)の内周面(35a)は、その面積の50%が心棒(32)の外周面(32a)と接触している。
〔実施例2〕
図9Aに参照されるように、マンドレル(55)は、常温(T)において、心棒(56)の外周面(56a)およびマンドレルリング(57)の内周面(57a)が軸線に対して同一方向、同一テーパー角度で傾斜するテーパー面に形成されている。よって、両者間に形成される隙間(S)は、軸線に対して傾斜しかつその大きさは一定である。各部の寸法は表3に示すとおりである。
実施例1と同様に、常温(T)において心棒(56)にマンドレルリング(57)を外嵌めし、ナット(37)を螺合させて仮止めした後、常温(T)からの500℃昇温させて押出時のダイス温度(T)とした。表3に、心棒(56)およびマンドレルリング(57)の熱膨張率および常温(T)時の各部の寸法より計算した押出時のダイス温度(T)における寸法を表3に示す。さらに上述した(V)式により計算した締め代(XT2)を表3に示す。
Figure 2011005547
表3に記載した押出時のダイス温度(T)における心棒(56)の外径(A)およびマンドレルリング(57)の内径(B)より、両者は軸線方向の全領域において一定の締め代(0.11%)で接触している。従って、接触面積率は100%であり、接触面(58)の傾斜角度(θT2)は、常温(T)時と同じく0.05°である。
本発明の押出ダイスは、中空部または半中空部を有する各種押出材の製造に利用できる。
1…押出材
10…ポートホールダイス
11…雌型
20…雄型(押出ダイス)
30、50、55、60、70…マンドレル
31…基端部(ダイス基盤)
32、51、56、61、71…心棒
32a、51a、56a、61a、71a…外周面
33…段部
34…ボルト部
35、52、57、62、74…マンドレルリング
35a、52a、57a、74a内周面
36…ベアリング部
63…山部(突出部)

Claims (5)

  1. 押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
    前記マンドレルリングが心棒よりも熱膨張係数の小さい材料で構成され、
    前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度では、マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触し、その接触面が、マンドレルの軸線に対し、押出の下流側に向かって外向きに傾斜する傾斜面となるように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
  2. 常温時において、マンドレルの軸線に対し、前記マンドレルリングの内周面および前記心棒の外周面のうちの少なくとも一方が下流側に向かって外向きに傾斜するテーパー面で形成されている請求項1に記載の押出ダイス。
  3. 常温(T)時の隙間が最小となる部分において、押出時のダイス温度(T)における心棒とマンドレルリングとの締め代(XT2)が下記式で表されるとき、常温(T)時における前記心棒の外径(AT1)およびマンドレルリングの内径(BT1)が前記締め代(XT2)が0〜0.3%となるように設定されている請求項1または2に記載の押出ダイス。
    T2={〔AT1×(T−T)×α+AT1〕/〔BT1×(T−T)×α+BT1〕−1}×100
    ただし、α:心棒を構成する材料の熱膨張係数
    α:マンドレルリングを構成する材料の熱膨張係数(α>α
    :常温
    :押出時のダイス温度(>T
    T1:常温(T)時の心棒の外径
    T1:常温(T)時のマンドレルリングの内径(>AT1
  4. 押出時のダイス温度において、マンドレルリングの内周面面積の20%以上が心棒の外周面と接触する請求項1〜3のいずれかに記載の押出ダイス。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の押出ダイスを用い、心棒とマンドレルリングとの間の軸線方向の少なくとも一部において隙間が無くなる温度で押出を行うことを特徴とする押出方法。
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