JP2010536804A - 血糖降下剤を調製するための、桑の枝由来のアルカロイドの有効画分の使用 - Google Patents

血糖降下剤を調製するための、桑の枝由来のアルカロイドの有効画分の使用 Download PDF

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Abstract

桑の枝から作製される、生薬としての有効画分であって、総アルカロイドが有効画分を基準に50重量%であり、化合物1−ジオキシノジリマイシンが総アルカロイドを基準に30重量%以上である有効画分が、開示される。この有効画分を調製するための方法、およびこの有効画分を含有する薬学的組成物、ならびに血糖降下剤を調製するためのこの有効画分の使用もまた、開示される。

Description

発明の詳細な説明
〔本発明の分野〕
本発明は、血糖降下剤の調製のための、桑の枝を原料とするアルカロイドの有効画分の使用に関する。
〔背景技術の説明〕
中国において、40歳以上のヒトにおける真性糖尿病の罹患率は4%以下であり、60歳以上のヒトにおける真性糖尿病の罹患率は11%を上回っている。WHOの最新データによると、今後15年間で、中国における糖尿病患者の数は4倍に増加するという。糖尿病は、人命および健康を脅かす深刻な病気となっている。90%を上回る真性糖尿病患者が2型糖尿病に罹患しており、これらの患者は、長期にわたって経口血糖降下剤を服用して、高血糖を制御する必要がある。現在、市販の経口血糖降下剤には、(1)スルホニルウレア(2)ビグアニド(3)α‐グルコシダーゼ阻害剤(4)インスリン抵抗性改善薬(5)漢方、の5種類がある。中国では、経口血糖降下剤の年間売上高は100億元を上回る。
1950年代、スルホニルウレアやビグアニドなどの経口血糖降下剤が市販され始め、これらの剤によって2型糖尿病の患者は血糖値を制御することができ、長生きと生活の質(QOL)の向上が可能となった。しかし、スルホニルウレアは低血糖症を誘発する傾向があり、ビグアニドは消化器官に深刻な副作用をもたらす可能性がある。40年に及ぶ努力の末、2型糖尿病の治療薬として、新型のα−グルコシダーゼ阻害剤が発見された。世界中で、このような剤の適用は糖尿病制御の新しい方法として認識されてきた。α−グルコシダーゼ阻害剤は、小腸の刷子縁に存在するα−グルコシダーゼと相互作用する。この阻害剤は、多糖から単糖への加水分解を遅らせ、グルコースの吸収を遅らせ、食後の血糖値のピークを遅らせ、血糖値の変動の幅を低減する。その結果、α−グルコシダーゼ阻害剤は血糖値を下げ、糖尿病の慢性合併症の進行を抑制するか、または遅らせることができる。1990年代初めには、German Bayer Comanyが新薬グルコバイ(glucobay)(Acarbose)を発表し、50を上回る国の市場に急速に広まり、優れた治療効果が得られた。1994年、グルコバイは中国市場に参入され、10年間の臨床診療の結果、2型糖尿病の治療において効果的かつ安全であることが立証された。さらに、グルコバイは社会的利益および著しい経済利益をもたらした。
中国には多くの薬草があり、血糖降下作用のある多種の生薬が存在する。一方、この生薬の作用メカニズムは不明であり、その品質は制御不可能である。桑の枝は、morus albaの乾燥した枝であり、多糖類、単糖類、植物性タンパク質、フェノール、ファルコノイド、サポニン、有機酸、アミノ酸、多価アルカロイドなどを含む数百の化合物を含有する。1990年代には、中国医学科学院薬物研究所は、桑の枝の水抽出物および/またはエタノール抽出物が強いα−グルコシダーゼ阻害活性を有することを発見し、「血糖降下剤の調製における桑の枝のエタノール抽出物および/または水抽出物の使用」(中国特許出願第97112359.4号明細書)を出願し、2002年4月10日に中華人民共和国国家知識産権局によって特許付与がなされた。エタノールおよび/または水抽出物からなる生薬は、服用量が大きく、品質を制御できないことから、中国医学科学院薬物研究所は、桑の枝の有効画分についてさらなる研究を重ねた。
上述の中国特許出願第97112359.4号明細書のほか、α−グルコシダーゼ阻害活性を有する桑の抽出物に関する特許を3件検索することができた。中国特許出願第01113191.8号明細書(「α−グルコシダーゼ阻害活性を有する漢方抽出物、その調製および使用」)には、Morus alba L.、桑の葉、および桑の実からの総アルカロイドである漢方抽出物が開示されている。この文献は桑の枝には言及しておらず、アルカロイドの成分についても言及していない。
中国特許出願第02113004.3号明細書(「桑の枝の抽出物、その調製および新規な使用」)には、アルカロイドではなく全フラボンが記載されている。抽出物は、糖尿病ではなく、高尿酸血症および通風の予防に使用された。
中国特許出願第200410018677.4号明細書(「α−グルコシダーゼ阻害活性を有する薬用成分、およびその使用」)には、アルカロイドおよびフラボンからなる薬学的組成物が開示されている。重量比が5〜95%であるアルカロイドは、カイコの排泄物、桑の枝、Morus alba L.、または桑の葉から抽出された総アルカロイドである。そして、重量比が10〜95%であるフラボン抽出物は、カテキン、ケルセチン、および茶ポリフェノールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。この文献には、アルカロイド抽出物における総アルカロイドの含有量は特に記載されていない。加えて、治療におけるアルカロイド抽出物とフラボン抽出物との組合せの使用は、実験条件下において相乗作用を有することを示すというよりも、服用量との相加効果を示すに過ぎなかった。
Morus alba L.がアルカロイドを最も多く含有するが、この植物資源は希少であり、収集によって植物を傷つけてしまう。アルカロイドの含有量が最も低い桑の葉は、不純物を多く含むために、桑の葉からの抽出は困難である。桑の枝は資源が豊富で、アルカロイドの含有量がMorus alba L.と桑の葉との中間であり、毎年の刈り込みによって容易に入手できる。加えて、桑の枝は高価ではなく、その品質を制御できる。したがって、桑の枝を原料とするアルカロイドの有効画分がもたらす血糖降下作用の研究は、極めて実際的意義がある。
〔発明の詳細な説明〕
エタノールおよび/または水の抽出物からの粗調製品の問題に鑑みて、本発明では、桑の枝からのアルカロイドの有効画分についてのさらなる研究を行った。桑の枝からの異なる抽出画分のα−グルコシダーゼ阻害活性の研究を通して、水溶性アルカロイドが最も強い活性を示すことを見出した。言い換えれば、血糖降下作用を有する有効画分は、水溶性アルカロイド中に存在する。本発明は、中国特許出願第97112359.4号明細書に記載の内容を技術的にさらに発展させた発明である。
本発明の目的を達成するために、本発明は下記の技術的解決策をとる。
本発明に係るアルカロイドの有効画分は、桑の枝から調製され、活性成分はアルカロイドの組成物である。有効画分中の総アルカロイドの含有量は50重量%以上であり、総アルカロイド中の化合物1−デオキシノジリマイシンの含有量は30重量%以上である。
本発明に係る好ましい有効画分は、N−メチル−1−デオキシノジリマイシン、ファゴミン(fagomine)、3−エピ−ファゴミン、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−アラビニトール、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−リビトール、カリステギンB、2−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−1−デオキシノジリマイシン、6−O−(β−D−グルコピラノシル)−1−デオキシノジリマイシン、および、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−(2−O−β−D−グルコピラノシル)−D−アラビニトールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
本発明に係るより好ましい有効画分において、総アルカロイド中の化合物1−デオキシノジリマイシンの割合は40重量%以上である。
最も好ましい有効画分において、総アルカロイド中の化合物1−デオキシノジリマイシンの割合は50重量%以上である。
また、本発明は、アルカロイドの有効画分を調製するための方法を開示している。この方法は、桑の枝を粉砕、抽出、分離、精製および濃縮して、薬用材料として取り出すステップを包含しており、総アルカロイドの含有量が50重量%以上である有効画分が調製される。
アルカロイドの有効画分を調製するための方法を以下に詳述する:
(a)溶媒によって桑の枝を抽出し、抽出液を濃縮して沈殿を生成させ、そして不純物を除去する。
(b)上澄み液を陽イオン交換樹脂に加え、弱塩基性の溶出液を用いて溶出する。
(c)この溶出液を濃縮し、陰イオン交換樹脂に加え、吸収されなかった部分を収集し、乾燥して、有効画分の粉末を得る。
ステップ(a)は、以下のように実施される:
桑の枝は、新鮮な桑の枝であることが好ましい;
溶媒との接触面を増大させ、かつ効率を向上させるために、好ましい桑の枝を乾燥し、適切に粉砕する;
水、アルコール、水とアルコールとの混合物、および、酸性水からなる群から溶媒を選択する。好ましいアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられる。最も好ましい溶媒は水である;
溶媒の量は薬用材料の4〜12倍であり、上記抽出を1〜3回繰り返す。静止条件下、または動的条件下にて抽出を行うが、動的条件下にて抽出を行うことが好ましい。抽出の効率を向上させるために、超音波を使用してもよい。室温(例えば20℃)〜溶媒の還流温度の温度にて、好ましくは還流温度にて、抽出を行う。抽出のプロセスは、連続的または間欠的であってもよい。間欠的なプロセスは1〜3回繰り返されてもよい。抽出時間は、1〜4時間の範囲内、好ましくは1.5〜2.5時間の範囲内である;
沈殿はアルコール沈殿またはフロキュレーションであることが好ましく、フロキュレーションには、50〜80%のアルコールを使用する;
濾過または遠心分離を用いて不純物の除去を行うことが好ましい。
ステップ(b)は、以下のように実施される:
上澄み液を陽イオン交換樹脂に加え、蒸留水を用いてこの樹脂を選択的に洗浄し、吸収されなかった不純物を除去し、その後、弱塩基性の水溶液を用いて溶出する。この溶出によって、純度を上げることができる;
好ましい溶出液は、アンモニア溶液であり、その濃度は0.2〜1Nであることが好ましい;
陽イオン交換樹脂を強スルホン酸型および弱カルボン酸型から選択する;強スルホン酸型であることが好ましく、001×7(732#)の陽イオン樹脂であることが最も好ましい;
生薬と陽イオン樹脂との重量比は、1:0.1〜0.5であり、より好ましくは1:0.1〜0.4であり、最も好ましくは1:0.2〜0.3である。
ステップ(c)は、以下のように実施される:
濃縮された溶出液を陰イオン交換樹脂に加え、蒸留水を用いてこの樹脂を選択的に洗浄し、吸収されなかった全ての化合物を収集し、最終収率を高める;
乾燥方法としては、減圧濃縮法、噴霧乾燥法、および凍結乾燥法が挙げられる;
陰イオン交換樹脂は、(第4級アミンとしても知られる)第4級アミン−NROH(Rは炭化水素族)などの強塩基型、または第1級アミン−NH、第2級アミン−NHR、および第3級アミン−NRなどの弱塩基型であってもよく、好ましくは第4級アミンの強塩基型である;
最も好ましい樹脂は、Dowex1×2(OH)の陰イオン交換樹脂、または201×7(717,OH)の陰イオン交換樹脂である;
生薬と陰イオン交換樹脂との重量比は1:0.2〜0.8であり、好ましくは1:0.3〜0.7、最も好ましくは1:0.5〜0.6である。
イオン交換樹脂の材料は、スチレン系、アクリル酸系、フェノール(FP)系、エポキシ(EPA)系、ビニールピリジン(VP)系、および尿素ホルムアルデヒド(UA)系が挙げられ、好ましくはスチレン系である。
本願に記載されたスチレン樹脂としては、ゲル型およびマクロ多孔型が挙げられ、ゲル型であることが好ましい。
本発明において記載された「生薬」という用語は、出発材料の桑の枝を意味する。
好ましい調製方法を下記に記載する。
(a)新鮮な桑の枝350kg毎に、2000Lの水を加え、混合物を2時間還流させる。抽出のプロセスを2回繰り返し、抽出物を合わせ、250Lの体積まで濃縮する。この濃縮物に250〜270Lのエタノールを加える。混合物に対して24時間沈殿の生成を行い、混合物を濾過する。
(b)生薬と樹脂との重量比が1:0.2〜0.3となるような量で上澄み液を001×7(732#)の陽イオン交換樹脂に加え、中性になるまで蒸留水を用いて洗浄し、0.5Nのアンモニア溶液を用いて洗浄し、溶出液を収集する。
(c)生薬と樹脂との重量比が1:0.5〜0.6になるような量でこの溶出液を、Dowex1×2(OH)の陰イオン交換樹脂または201×7(717,OH)の陰イオン交換樹脂に加え、吸収されない部分を収集し、減圧濃縮によって濃縮し、乾燥し、淡褐色の粉末を得る。
〔有効画分の定量〕
有効画分中のアルカロイドは、紫外線吸収性を有さない多価アルカロイドおよびそのグリコシドからなる。そのために、このアルカロイドに対して誘導体化試薬を用いて誘導化を行い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分離する必要がある。この定量法は、特異性および感受性が高く、再現性に優れていることが立証されている。
有効画分のアルカロイドの1つのクラスにおいて1−デオキシノジリマイシンの含有量が最も多く、活性も最も高い。そこで、本発明者らは、定量のための基準物質として使用する精製された1−デオキシノジリマイシンを準備した。精製された1−デオキシノジリマイシンは、NMR、MS、IR、UVおよび熱解析によって特徴付けられ、その構造が立証されている。精製された1−デオキシノジリマイシンの純度は98%を上回り、基準物質の品質要求事項を満たす。
上記方法に従って、桑の枝の有効画分を調製する。この有効画分を水に溶解し、化合物(1)を基準物質として使用して、プレカラム誘導体化HPLCを用いて分析する。外部標準法を用いた計算によると、有効画分毎における総アルカロイドの含有量は50%以上であり、抽出物における化合物(1)である1−デオキシノジリマイシンの含有量は27%以上である。有効画分中の化合物(1)の含有量は、27%÷50%=54重量%である。
〔有効画分中の活性成分の特徴〕
有効画分中の活性成分の構造は、プレカラム誘導体化LC−MS/MSによって特徴づけられた。その結果、これらの活性成分は、多価アルカロイド類であることが示された。これらの活性成分の本来の構造は以下の通りである。
Figure 2010536804
[有効画分の安定性]
パイロット実験から得られる有効画分を室温にて密封して保存し、異なる期間においてHPLCを用いて分析した。その結果、24ヵ月後の品質が安定していることが示された。結果を表1に示す。
Figure 2010536804
アルカロイドを含有する有効画分は、薬学的に受容可能な賦形剤と混合され、多種の薬学的組成物を形成する。この薬学的組成物は、主として錠剤、分散性錠剤、チュアブル錠、カプセル、顆粒、ドリッピングピル(dripping pill)、または経口液などの経口薬である。薬学的組成物におけるアルカロイドの有効画分の含有量は、総アルカロイドに換算して、12.5〜300mg/錠であるが、25〜100mg/錠であることが好ましく、50〜100mg/錠であることがより好ましい。
薬物の投与および治療効果の向上のために、如何なる周知の方法を用いて薬物または薬学的組成物を投与してもよい。
薬学的組成物の服用量は、疾病の性質、重症度、患者個々の状況、投与経路、剤形などに応じて広範に変更することができる。他の治療方法を含めて、医者の臨床経験および投与計画に応じて、1つの服用量のユニットでまたは複数の服用量のユニットに分けて投与することができる。
この薬学的組成物を単独で服用してもよく、あるいは、他の治療薬または対症薬と併せて服用してもよい。本発明の化合物と他の治療薬との間に相乗作用が存在する場合、実際の状況に応じてその服用量を調整すればよい。
in vitroの実験において、本発明に係る有効画分中のα−グルコシダーゼ阻害剤の比率は、グルコバイ(Acarbose)を陽性対象として用いて、異なる濃度において決定され、IC50値が算出された。その結果、in vitroにおいて、桑の枝の総アルカロイドは、スクラーゼおよびマルターゼに対して強い阻害作用を有し、スクラーゼに対する阻害作用はグルコバイよりも強く、マルターゼに対する阻害作用はグルコバイと同じである一方、アミラーゼに対する阻害作用はグルコバイよりも顕著に低いことがわかった。これにより、有効画分の血糖降下作用はグルコバイと同一であり、かつ、消化管のガス膨張(gastrointestinal tract up gas)の副作用はグルコバイよりも少ない可能性があることが示唆された。
グルコバイをコントロールとして使用して、桑の枝からの有効画分が、スクロース投与後の正常マウス、およびアロキサンによって誘発された糖尿病マウスの血糖曲線に与える影響を検証した。その結果、総アルカロイドに換算して5〜20mg/kgの服用量のとき、桑の枝からの有効画分は、スクロース投与後のマウスの高血糖値を大幅に低減させ、血糖のピークを下げるとともに遅らせ、曲線下の血糖の面積がコントロール群よりも大幅に小さいことがわかった。これによって、本発明に係るアルカロイドを、糖尿病患者の食後の血糖値を制御する血糖降下剤の調製に使用できる可能性があることが示された。
本発明の利点は、下記の通りである。
原材料が豊富で廉価であり、その品質が制御可能である。
プロセスが単純で、低コストである。
桑の枝からの総アルカロイドの有効画分の血糖降下作用はグルコバイと同じであるが、消化管のガス膨張の副作用はグルコバイよりも少ない可能性がある。
桑の枝からの生薬のα−グルコシダーゼ阻害活性IC50は、約60μg/mlである一方、桑の枝からの総アルカロイドの有効画分のIC50は、0.1μg/ml未満であり、この値は、桑の枝のエタノール抽出物および/または水抽出物からなる生薬よりも顕著に優れた値である。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、桑の枝からの有効画分が、スクロース投与後の正常マウスの血糖曲線に及ぼす影響を示すグラフである。
図2は、桑の枝からの有効画分が、スクロース投与後のアロキサンによって誘発された糖尿病マウスの血糖曲線に及ぼす影響を示すグラフである。
〔実施例〕
下記の調製例を用いて本願に開示された本発明を例示するが、この例は、本発明の範囲を限定するものではない。
<総アルカロイドの有効画分の調製>
(例1:総アルカロイドの有効画分の調製および含有量定量)
新鮮な桑の枝を粉砕し、乾燥させた。乾燥した桑の枝350kgに、脱イオン水2000Lを加え、混合物を2時間還流した。抽出のプロセスを2回繰り返し、抽出物を混合して250Lまで濃縮し、この濃縮物に700Lのエタノールを加えた。24時間、混合物に対して沈殿の生成を行い、混合物を濾過した。生薬と樹脂との重量比が1:0.2になるような量で上澄み液を001×7(732#)の陽イオン交換樹脂に加え、中性になるまで蒸留水を用いて洗浄し、そして、0.5Nアンモニア溶液を用いて洗浄し、溶出液を収集した。生薬と樹脂との重量比が1:0.6になるような量でこの溶出液を201×7(717、OH)の陰イオン交換樹脂に加え、吸収されなかった部分を収集し、減圧濃縮によって濃縮し、乾燥させて淡褐色の粉末530gを得た。収率1.51%。
(例2:総アルカロイドの有効画分の調製および含有量の定量)
他の乾燥した桑の枝350kgに、脱イオン水2000Lを加え、混合物を2時間還流した。抽出のプロセスを2回繰り返し、抽出物を混合して250Lまで濃縮し、この濃縮物に700Lのエタノールを加えた。24時間混合物に対して沈殿の生成を行い、混合物を濾過した。生薬と樹脂との重量比が1:0.2になるような量で上澄み液を001×7(732#)の陽イオン交換樹脂に加え、中性になるまで蒸留水を用いて洗浄し、そして、0.5Nアンモニア溶液を用いて洗浄し、溶出液を収集した。生薬と樹脂との重量比が1:0.6になるような量でこの溶出液を201×7(717、OH)の陰イオン交換樹脂に加え、吸収されなかった部分を収集し、減圧濃縮によって濃縮し、乾燥させて淡褐色の粉末500gを得た。
(例3:総アルカロイドの有効画分の調製および含有量定量)
新鮮な桑の枝を粉砕し、乾燥させた。乾燥した桑の枝350kgに、脱イオン水2000Lを加え、混合物を2時間還流した。抽出のプロセスを2回繰り返し、抽出物を混合して250Lまで濃縮し、当該濃縮物に250Lのエタノールを加えた。24時間混合物に対して沈殿の生成を行い、混合物を濾過した。生薬と樹脂との重量比が1:0.2になるような量で上澄み液を001×7(732#)の陽イオン交換樹脂に加え、中性になるまで蒸留水を用いて洗浄し、そして、0.5Nアンモニア溶液を用いて洗浄し、溶出液を収集した。生薬と樹脂との重量比が1:0.5になるような量でこの溶出液を201×7(717、OH)の陰イオン交換樹脂に加え、吸収されなかった部分を収集し、減圧濃縮によって濃縮し、乾燥させて淡褐色の粉末495gを得た。
(例4:総アルカロイドの有効画分の調製および含有量定量)
新鮮な桑の枝を粉砕し、乾燥させた。乾燥した桑の枝350kgに、脱イオン水2000Lを加え、混合物を2時間還流した。抽出のプロセスを2回繰り返し、抽出物を混合して250Lまで濃縮し、この濃縮物に500Lのエタノールを加えた。24時間混合物に対して沈殿の生成を行い、混合物を濾過した。生薬と樹脂との重量比が1:0.3になるような量で上澄み液を001×7(732#)陽イオン交換樹脂に加え、中性になるまで蒸留水を用いて洗浄し、そして、0.5Nアンモニア溶液を用いて洗浄し、溶出液を収集した。生薬と樹脂との重量比が1:0.5になるような量でこの溶出液を、Dowex1×2(OH)陰イオン交換樹脂に加え、吸収されない部分を収集し、減圧濃縮によって濃縮し、乾燥させて淡褐色の粉末520gを得た。
〔剤形の調製〕
(例1:桑の枝からの血糖降下に有効な画分の錠剤の調製)
例1において調製された有効画分10g、リン酸カルシウム5g、乳糖15g、およびマグネシウム0.3gをそれぞれ80メッシュのふるいにかけ、混合した。混合物に対して、70%のエタノールを加えて湿潤性の塊(damp mass)を調合し、これを20メッシュのふるいにかけて粉状にし、乾燥させ、14メッシュのふるいにかけて調整し、圧縮して錠剤を生成した。各錠剤の重さは約300mgであり、100mgの有効画分の抽出物、すなわち、50mgの総アルカロイドを含有する。
(例2:桑の枝からの血糖降下に有効な画分のカプセルの調製)
例1において調製された有効画分10g、リン酸カルシウム5g、乳糖15g、およびマグネシウム0.3gをそれぞれ80メッシュのふるいにかけ、混合した。混合物に対して、70%のエタノールを加えて湿潤性の塊を調合し、それを20メッシュのふるいにかけて粉状にし、乾燥させ、40メッシュのふるいにかけて調整し、NO.2ハードカプセルに加えた。各カプセルの含有量は約100mgであり、100mgの有効画分の抽出物を含有し、そのうち50mgが総アルカロイドである。
(例3:桑の枝からの血糖降下に有効な画分の経口液の調製)
例1において調製された有効画分10gを、蒸留水500mlにて希釈し、0.05%の安息香酸を加え、任意で香料を加え、5mlまたは10mlのバイアルに混合物を小分けして入れ、フタを取り付けた。各ビンが100〜200mgの有効画分の抽出物を含有しており、そのうち50〜100mgが総アルカロイドである。
(例4:桑の枝からの血糖降下に有効な画分のドリッピングピルの調製)
ポリエチレングリコール(PEG6000)50gを取り、溶融するまで加熱し(100℃)、例1において調製された有効画分10gを加えて攪拌し、溶融液を得た。丸薬機の液体貯蔵タンクにこの溶融液を注ぎ、流動パラフィンに液滴状に加え、冷却成形し、パラフィンを洗い流し、乾燥させた。各ドリッピングピルの重さは30mgであり、有効画分の抽出物を5mg含有しており、このうち2.5mgが総アルカロイドである。
(例5:桑の枝からの血糖降下に有効な画分の分散性錠剤の調製)
例1において調製された有効画分10g、リン酸カルシウム20g、乳糖5g、マンニトール15g、架橋ポリエチレンピロリドン10g、および、マグネシウム0.3gを、それぞれ80メッシュのふるいにかけ、混合した。混合物に対して、70%のエタノールを加えて湿潤性の塊を調合し、それを20メッシュのふるいにかけて粉状にし、乾燥させ、14メッシュのふるいにかけて調整し、圧縮して錠剤を生成した。各錠剤の重さは約600mgであり、100mgの有効画分の抽出物を含有しており、このうち50mgが総アルカロイドである。
(例6:桑の枝からの血糖降下に有効な画分のチュアブル錠の調製)
例1において調製された有効画分10g、リン酸カルシウム5g、乳糖5g、マンニトール15g、および、マグネシウム0.3gを、それぞれ80メッシュのふるいにかけ、混合した。混合物に対して、70%のエタノールを加えて湿潤性の塊を調合し、それを20メッシュのふるいにかけて粉状にし、乾燥させ、14メッシュのふるいにかけて調整し、圧縮して錠剤を生成した。各錠剤の重さは約300mgであり、100mgの有効画分の抽出物を含有しており、このうち50mgが総アルカロイドである。
〔薬理実験〕
(例1:in vitroの実験)
グルコバイ(Acarbose)を陽性コントロールとして使用して、異なる濃度において例1の有効画分中のα−グルコシダーゼ阻害作用の比率を測定し、IC50値を算出した。その結果、in vitroにおいて、桑の枝の総アルカロイドは、スクラーゼおよびマルターゼに対して強い阻害作用をもち、スクラーゼに対する阻害作用はグルコバイよりも強く、マルターゼに対する阻害作用はグルコバイと同一である一方、アミラーゼに対する阻害作用はグルコバイよりも顕著に低いことがわかり、有効画分の血糖降下作用はグルコバイと同一で、かつ、消化管のガス膨張の副作用はグルコバイよりも少ない可能性があることが示された。結果を表2に示す。
Figure 2010536804
(例2:有効画分がスクロース投与後の正常マウスの血糖曲線に及ぼす影響)
有効画分の試験群を、10mg/kg、20mg/kg、および40mg/kg(経口)の3つの服用量に設定し、陰性コントロール群(空)、および、陽性コントロール群(陽性コントロール薬としてグルコバイを用いる、10mg/kg;経口)に設定した。その結果、10mg/kg〜40mg/kgの服用量における桑の枝の有効画分が、スクロースが投与されたマウスの高血糖値を大幅に低減させ、曲線下の血糖の面積がコントロール群より顕著に小さいことがわかった。試験群の結果と陽性コントロール群には顕著な差異は見られなかった(図1参照)。
(例3:有効画分がスクロース投与後のアロキサンによって誘発された糖尿病マウスの血糖曲線に及ぼす影響)
アロキサンによって誘発された5群の糖尿病マウスを、陰性コントロール群とグルコバイを使用する陽性コントロール群とに分け、異なる服用量群(10mg/kg、20mg/kg、40mg/kg)に分けた。その結果、桑の枝の有効画分が血糖値のピークを下げるとともに遅らせ、曲線下の血糖の面積を低減させることがわかった。20mg/kgおよび40mg/kgの治療群の効果が、陽性コントロール群よりも高かった(図2参照)。
図1は、桑の枝からの有効画分が、スクロース投与後の正常マウスの血糖曲線に及ぼす影響を示すグラフである。 図2は、桑の枝からの有効画分が、スクロース投与後のアロキサンによって誘発された糖尿病マウスの血糖曲線に及ぼす影響を示すグラフである。

Claims (17)

  1. アルカロイドの有効画分であって、
    該有効画分は桑の枝から調製され、活性成分がアルカロイドの組成物であり、該有効画分中の総アルカロイドの割合が50重量%以上であり、該総アルカロイド中の化合物1−ジオキシノジリマイシンの割合が30重量%以上であることを特徴とする、アルカロイドの有効画分。
  2. N−メチル−1−デオキシノジリマイシン、ファゴミン、3−エピ−ファゴミン、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−アラビニトール、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−リビトール、カリステギンB、2−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−1−デオキシノジリマイシン、6−O−(β−D−グルコピラノシル)−1−デオキシノジリマイシン、および、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−(2−O−β−D−グルコピラノシル)−D−アラビニトールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のアルカロイドの有効画分。
  3. 前記総アルカロイド中の化合物1−ジオキシノジリマイシンの割合は、40重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアルカロイドの有効画分。
  4. 前記総アルカロイド中の化合物1−ジオキシノジリマイシンの割合は、50重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルカロイドの有効画分。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカロイドの有効画分を調製する方法であって、
    (a)溶媒によって桑の枝を抽出し、抽出液を濃縮して沈殿を生成させ、そして不純物を除去するステップ、
    (b)上澄み液を陽イオン交換樹脂に加え、弱塩基性の溶出液を用いて溶出するステップ、および、
    (c)該溶出液を濃縮し、陰イオン交換樹脂に加え、吸収されなかった部分を収集し、乾燥させて、該有効画分の粉末を得るステップ、
    を包含していることを特徴とする方法。
  6. 前記陽イオン交換樹脂が、強スルホン酸型および弱カルボン酸型から選択され、
    前記陰イオン交換樹脂が、強塩基型陰イオン交換樹脂および弱塩基型陰イオン交換樹脂から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記強塩基型陰イオン交換樹脂は、(第4級アミンとしても知られる)第4級アミン−NROH型(Rは炭化水素基である。)であり、
    前記陰イオン交換樹脂は、第1級アミン−NH型、第2級アミン−NHR型、および第3級アミン−NR型を包含していることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記イオン交換樹脂の材料が、スチレン系、アクリル酸系、フェノール(FP)系、エポキシ(EPA)系、ビニールピリジン(VP)系、および尿素ホルムアルデヒド(UA)系を包含していることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
  9. 前記スチレン系が、ゲル型および多孔型を包含していることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記弱塩基性の溶出液が0.2〜1Nのアンモニア溶液であり、
    前記陽イオン交換樹脂が001×7(732#)の陽イオン樹脂から選択され、
    前記陰イオン交換樹脂がDowex1×2(OH)の陰イオン交換樹脂または201×7(717、OH)の陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  11. (a)新鮮な桑の枝350kg毎に2000Lの水を加え、混合物を2時間還流させ、抽出のプロセスを2回繰り返し、抽出物を合わせ、250Lの体積まで濃縮し、濃縮物に、250〜270Lのエタノールを加え、混合物を24時間かけて沈殿させ、混合物を濾過するステップ、
    (b)生薬と樹脂との重量比が1:0.2〜0.3となるような量で上澄み液を001×7(732#)の陽イオン交換樹脂に加え、中性になるまで蒸留水を用いて洗浄し、0.5Nのアンモニア溶液を用いて洗浄し、溶出液を収集するステップ;および、
    (c)生薬と樹脂との重量比が1:0.5〜0.6になるような量で該溶出液を、Dowex1×2(OH)陰イオン交換樹脂または201×7(717,OH)陰イオン交換樹脂に加え、吸収されない部分を収集し、減圧濃縮によって濃縮し、乾燥させ、淡褐色の粉末を得るステップ、
    を包含していることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  12. 有効量の請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカロイドの有効画分、および薬学的に受容可能な賦形剤を含有していることを特徴とする血糖降下作用を有する薬学的組成物。
  13. 錠剤、分散性錠剤、チュアブル錠、カプセル、顆粒、ドリッピングピル、または経口液を包含していることを特徴とする請求項12に記載の薬学的組成物。
  14. 前記アルカロイドの有効画分の含有量が、前記総アルカロイドに換算して12.5〜300mg/錠であることを特徴とする請求項13に記載の薬学的組成物。
  15. 前記アルカロイドの有効画分の含有量が、前記総アルカロイドに換算して25〜100mg/錠であることを特徴とする請求項14に記載の薬学的組成物。
  16. 前記アルカロイドの有効画分の含有量が、前記総アルカロイドに換算して50〜100mg/錠であることを特徴とする請求項15に記載の薬学的組成物。
  17. 血糖降下剤の調製における、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカロイドの有効画分の、使用。
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