JP2010248591A - ニッケル微粉およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微細で低不純物品位であるとともに、比表面積の小さいニッケル微粉を提供することを目的とする。また、工業的に簡易なプロセスで低コスト化が可能な製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】塩化ニッケルおよびマグネシウム化合物を含有する水溶液をアルカリ溶液で中和して水酸化物を生成する工程Aと、生成した水酸化物を非還元性雰囲気で加熱処理して酸化ニッケル粉を生成する工程Bと、生成した酸化ニッケル粉を還元性雰囲気で還元処理してニッケル粉を生成する工程Cと、このニッケル粉を有機酸で洗浄処理する工程Dを有し、塩化ニッケルおよびマグネシウム化合物を含有する水溶液は、その水溶液中に含有するマグネシウム化合物量がニッケルに対するマグネシウム量の割合で800〜2500質量ppmであるニッケル微粉の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ニッケル微粉およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、低不純物量で電子部品用の材料、特に積層セラミックコンデンサの内部電極材料として好適なニッケル微粉に関する。
ニッケル微粉は、積層セラミックコンデンサなどの電子部品の導電体形成用材料に使用され、特に1.0μm以下の粒子径を有するニッケル微粉は広く使用されている。
通常、積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極が交互に積層した構造の素子本体と、この素子本体の両端部に形成される一対の外部電極端子とから構成されている。また、その素子本体は、誘電体層となるセラミック誘電体グリーンシート上に内部電極材料である金属粉をペースト化した導電性ペーストを印刷し、この誘電体層と内部電極層を多層積層して加熱圧着したものを、還元雰囲気中、高温で焼成して作製されている。
このような積層セラミックコンデンサの内部電極に使用される材料には、従来、白金やパラジウムなどの貴金属が主として用いられてきたが、コスト削減のために、これらの貴金属に代わり、ニッケルや銅を含む卑金属材料を使用する内部電極が用いられてきている。一般には、ニッケル微粉等の金属粉をエチルセルロース等の樹脂とその他の添加剤を、ターピネオール等の有機溶媒中に分散、混合してペースト化したものが、内部電極の材料として用いられている。
近年の積層セラミックコンデンサの小型化、高容量化の要求に応じて、誘電体層及び内部電極の薄膜化、多層化が進み、必然的に電極材料である金属粉、例えばニッケル微粉の微粒化が要求されている。
現状、平均粒径0.3μm以下の微細なニッケル微粉が使用されるようになってきており、将来的には、さらに微細な、例えば平均粒径0.1μm程度のニッケル微粉の使用が予想されている。
さらに、電子部品材料用のニッケル微粉は、微粉化が望まれている一方で、比表面積は小さいことも要求されている。即ち、ニッケル微粉の比表面積が大きい場合、ニッケル微粉をペースト化した時に酸化により劣化しやすいこと、またペースト混錬時の混合不良やペーストの経時劣化など不具合の原因となるためである。従って、電子部品材料用のニッケル微粉としては、平均粒径が0.3μm以下で、かつ、比表面積の小さいニッケル微粉が求められている。
このように電子部品材料として使用されるニッケル微粉の製造には、従来、塩化ニッケルの蒸気を高温で還元性ガスにより還元する気相還元法、金属化合物を含む溶液を微細な液滴にして高温で熱分解させる噴霧熱分解法、水または有機溶媒中でニッケル塩を還元剤により還元する湿式還元法、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルなどのニッケル化合物の粉末を水素ガスにより還元する静置式水素還元法などが用いられている。
しかし、気相還元法、並びに噴霧熱分解法に代表される気相粒子合成法を使用して、凝集のない微細なニッケル微粉を得るためには、気相での粒子間衝突による粒子成長を抑制するためにニッケルの希薄な雰囲気を採用せざるを得ないために生成速度が低下し、製造コストが増大してしまう問題、一方、高濃度のニッケル雰囲気を採用し、下工程での分級処理にて連結粒子と粗大粒子を除去する場合、0.3μm以下の粒子の歩留まりが悪く、その製造コストが増大するという問題がある。
また、湿式還元法では、凝集の少ない微細なニッケル微粉が得られるが、一般に粒子の凝集の抑制及び粒子径の制御を目的に、分散安定剤をニッケル粒子表面に吸着しているため、不純物品位の増加や製造時に発生する廃液処理のコストが増大するという問題がある。
一方、比較的低コストで生産性の高いニッケル微粉の製造方法としては、ニッケル化合物を水素ガスにより還元する静置式水素還元法がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、一定温度に保持された反応槽内のスラリーに、含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、このスラリーが所定のpHを保持するようにアルカリ溶液を添加して水酸化ニッケルを生成させた後にスラリーを濾過し、水洗し、乾燥して水酸化ニッケルを得、これを還元剤として水素を用い、還元温度を400〜550℃として加熱還元するニッケル微粉の製造方法が開示されている。しかし、この方法においては、ニッケル微粉の粒径を還元温度のみで制御しているため、0.3μm以下のニッケル微粉末が得られていない。
この問題を解決するために、水酸化ニッケルへのアルカリ土類金属の添加、酸化焙焼および還元時の雰囲気制御を行い、微細なニッケル微粉を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2には、アルカリ土類金属を0.002〜1質量%含む水酸化ニッケル微粉を焙焼して酸化ニッケル微粉とし、得られた酸化ニッケル微粉を還元するニッケル微粉の製造方法において、水酸化ニッケル1gに対して0.02〜0.4リットル/分の空気を流すとともに250〜500℃の温度で焙焼して水酸化ニッケル微粉を酸化ニッケル微粉とし、さらに得られた酸化ニッケル微粉を酸化ニッケル微粉1gに対して0.01〜0.2リットル/分の水素を流すとともに300〜500℃の温度で還元してニッケル微粉を得る方法が開示されている。
この方法により、平均粒径が0.2〜0.4μmのニッケル微粉を得ることはできるが、不純物としてのマグネシウムは考慮されておらず、ニッケル微粉中のマグネシウム含有量が多いという問題がある。このマグネシウム含有量が多い場合、不純物として電子部品の特性を損なう可能性がある。特に、近年の積層セラミックコンデンサの電極層及び誘電体層の薄層化を考慮すると、ニッケル微粉中の不純物が電子部品に与える影響は大きく、ニッケル微粉中の不純物含有量はできるだけ低いほうが良い。
このニッケル微粉中の不純物の問題に対して、ニッケル微粉中のマグネシウム等のアルカリ土類金属を酸洗浄により除去する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3では、アルカリ土類金属とニッケルとの水溶液に苛性アルカリまたは炭酸アルカリを添加して、アルカリ土類金属化合物の沈殿およびニッケル化合物の沈殿を生成させながら混合する第1工程と、第1工程で得られた混合物中のニッケルを金属ニッケルに還元するために、その混合物を水素雰囲気で加熱する第2工程と、第2工程で得られた加熱物中のアルカリ土類金属を酸で溶解し除去する第3工程とからなる球状ニッケル微粉末の製造方法が開示され、この方法を用いることにより、アルカリ土類金属含有量が比較的少ない、微細なニッケル微粉が得られている。
しかしながら、ニッケル微粉末の焼結防止のために焼結防止剤として多量のアルカリ土類金属化合物を必要とするため、ニッケル微粉末中のアルカリ土類金属含有量が十分に低いとはいえない。また、第3工程での酸洗においては比表面積への影響が考慮されておらず、多量のアルカリ土類金属が除去されてしまうこともあり、比表面積の大きいニッケル微粉末が生成されることが予想される。
特開2003−213310号公報 特開2009−24197号公報 特開平11−140513号公報
このように、低不純物量且つ電子部品用材料として好適な微細なニッケル微粉が、比較的低コストで生産性の高い製造方法である静置式水素還元法では得られていないのが現状である。
そこで、このような状況を鑑み、本発明は上記問題点を解決し、微細で低不純物品位であるとともに、低比表面積のニッケル微粉を提供することを目的とする。また、工業的に簡易なプロセスで低コスト化が可能なその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、生産性が高く低コスト化が可能な静置式水素還元法を用いたニッケル微粉の製造方法を鋭意検討した結果、水酸化ニッケル晶析時の水溶液中のマグネシウム含有量を特定量に制御すること、水酸化ニッケルを酸化焙焼および還元して得られたニッケル微粉を特定の条件で洗浄処理することにより、微細で不純物品位の低いニッケル微粉が得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明のニッケル微粉の製造方法は、塩化ニッケルおよびマグネシウム化合物を含有する水溶液をアルカリ溶液で中和して水酸化物を生成する工程Aと、生成した水酸化物を非還元性雰囲気で加熱処理して酸化ニッケル微粉を生成する工程Bと、生成した酸化ニッケル微粉を還元性雰囲気で還元処理してニッケル微粉を生成する工程Cと、このニッケル微粉を有機酸で洗浄処理する工程Dを有し、塩化ニッケルおよびマグネシウム化合物を含有する水溶液は、その水溶液中に含有するマグネシウム化合物量がニッケルに対するマグネシウム量の割合で800〜2500質量ppmであることを特徴とする。
また、工程Dの洗浄に用いる有機酸は、クエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、酢酸、酒石酸から選ばれる少なくとも一種、工程Bで生成される酸化ニッケル微粉の比表面積は、20〜60m/g、工程Cの酸化ニッケル微粉の還元処理は、350〜550℃の温度で行なわれ、さらにはマグネシウム化合物が、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種で、工程Dのニッケル微粉の洗浄処理が、30〜80℃に加温した状態で処理されることを特徴とするニッケル微粉の製造方法である。
本発明のニッケル微粉は、本発明の製造方法により生成されるニッケル微粉であり、平均粒子径が0.1〜0.3μm、BET法で測定された比表面積が10m/g以下で、マグネシウムの含有量が500質量ppm以下、塩素の含有量が100質量ppm以下のニッケル微粉である。
本発明のニッケル微粉は、電子部品材料として十分な粒径を有し、用いられた電子部品の特性を損なわないレベルまで不純物品位を低減されており、電子部品材料として好適である。また、本発明のニッケル微粉は、低比表面積であり、ペースト化された場合でも不具合の発生を抑制することができる。
さらに、本発明のニッケル微粉の製造方法は、工業的に簡易なプロセスで低コスト化が可能であり、工業的価値が高いものである。
以下に、本発明について詳細に説明する。
(ニッケル微粉の製造方法)
本発明のニッケル微粉の製造方法は、以下の工程を備えるものである。
[工程A]
塩化ニッケルとマグネシウム化合物を含有する水溶液をアルカリ溶液で中和して水酸化物を生成する工程で、水溶液中に含有されるマグネシウム化合物量をニッケルに対するマグネシウム量で800〜2500質量ppmとする。
[工程B]
工程Aで生成した水酸化物を、非還元性雰囲気で加熱処理して酸化ニッケル微粉を生成する工程。
[工程C]
工程Bにより生成した酸化ニッケル微粉を、還元性雰囲気で還元処理してニッケル微粉を生成する工程。
[工程D]
還元処理後のニッケル微粉を有機酸で洗浄する工程。
この本発明のニッケル微粉の製造方法では、特に、工程Aにおける水溶液中のマグネシウム化合物の含有量、および工程Dにおける還元処理後のニッケル微粉を有機酸で洗浄することが重要である。
本発明のニッケル微粉の製造方法は、先ず工程Aにおいて塩化ニッケルとマグネシウム化合物を含有する水溶液を、アルカリ溶液で中和して水酸化物を生成させ、工程Bにおいて、その水酸化物を非還元性雰囲気で加熱すると酸化ニッケル微粉を得られる。この酸化ニッケル微粉は、直径が0.1μm程度、厚みが数10nmの扁平な一次粒子の凝集体からなり、この凝集体を工程Cにおける還元処理により、粒径がサブミクロンの球状のニッケル微粉を生成するものである。
このニッケル微粉の形成機構については明らかではないが、還元反応に伴うガスの発生と生成したニッケルの物質移動により、凝集体が解れると同時に、球状のニッケル粉へ成長するものと推測される。この時、マグネシウムは固体酸化物として存在し、ニッケル粉同士の連結を防止する障壁として機能し、ニッケル粉の粗大化を抑制してニッケル微粉とすると考えられる。
したがって、工程Aにおける水溶液中のマグネシウム化合物の含有量を制御することで、ニッケル微粉の粒径を調節することが可能となる。
そこで、このマグネシウム化合物の含有量は、塩化ニッケルとマグネシウム化合物を含有する水溶液中のニッケルに対するマグネシウム量で800〜2500質量ppmであることが必要であり、好ましくは1000〜2500質量ppmである。また、この水溶液に含有されるマグネシウムは、通常10質量%程度が水溶液中に残存するが、他のマグネシウムは、晶析時にニッケルとともに共沈する。
したがって、生成した水酸化ニッケル中のマグネシウム含有量は、700〜2300質量ppm程度となる。この水酸化ニッケル中のマグネシウムは、工程Bで生成する酸化ニッケル微粉中でも維持され、工程Cにおける還元反応によるニッケル微粉の生成時に、ニッケルとの複合酸化物としてニッケル微粉の表面に濃縮し、ニッケル粉同士の焼結を防止するように働く。
この時のマグネシウムの含有量が800質量ppm未満では、還元反応時のニッケル粉の粗大化を抑制するのに十分な量の複合酸化物皮膜が形成しない。一方で、前記マグネシウム量が2500質量ppmを越えると、工程Bにおける酸化ニッケルの一次粒子径が微細になる傾向があり、工程Cにおける還元反応時のニッケル粉の連結を抑制することができず、さらに、最終的に得られるニッケル微粉中に残留するマグネシウムの含有量が多くなり、電子部品材料としての特性が得られない可能性がある。
そこで、焼結防止効果を十分に得るためにも1000〜2500質量ppmとすることが好ましい。なお、この800〜2500質量ppmの範囲でのマグネシウムの含有量は微量であることから、ニッケル微粉の生成効率を低下させて、その製造コストを増大させることはない。
このようなマグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウムまたは水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種を用いることが、水酸化ニッケルへの不純物混入の虞がないことから好ましい。
さらに、本発明においてはニッケル源として塩化ニッケルを用いることから、マグネシウムとニッケルの均一な水酸化物の沈殿を形成するためには塩化マグネシウムであることが更に好ましい。
以上のように、この工程Cを経て形成されたニッケル微粉には、粗大化を抑制してニッケル微粉を微粉とする役割を担った多量のマグネシウムが含有されているが、ニッケル微粉におけるマグネシウムの存在は、不純物として電子部品の特性を損なう可能性があり、積層セラミックコンデンサの電極層及び誘電体層の薄層化を指向する場合には、その含有量は低いほうが良い。
そこで、このニッケル微粉中のマグネシウムを除去するために、工程Dにおける有機酸による洗浄を行うものである。
ニッケル微粉中のマグネシウムは、複合酸化物としてニッケル粒子の表面に濃縮しているため、ニッケル微粉を有機酸水溶液中に装入して攪拌することにより、表面を洗い流し、濃縮した複合酸化物としてのマグネシウムを除去するものである。
また、本発明ではニッケル源に塩化ニッケルを用いることから、生成されたニッケル微粉中には、不純物として塩素が含有されている。この塩素も電子部品用として用いられた場合に悪影響を及ぼすため、除去することが好ましく、工程Dの有機酸による洗浄は、残留塩素の除去にも有効である。
この洗浄に用いられる有機酸水溶液は、クエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、酢酸、酒石酸から選ばれる少なくとも一種の水溶液であることが好ましく、クエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸から選ばれる少なくとも一種の水溶液であることがより好ましい。
この有機酸による洗浄のプロセスについては必ずしも明確ではないが、ニッケル粒子表面に生成された複合酸化物を溶解してマグネシウムを除去するとともに、塩素と交換吸着することで残留塩素を効率的に除去するものと考えられる。その作用はアスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸において大きく、これらの水溶液を用いて洗浄することで、比表面積の増加を抑制しながら残留塩素を大幅に低減することが可能である。
有機酸水溶液の有機酸濃度は、5〜50g/Lとすることが好ましい。濃度が5g/L未満の場合には洗浄効果が十分でなく、残留塩素が低減できない可能性がある。濃度が50g/Lよりも大きいと、酸過剰によるニッケル粒子表面の急激な溶解により比表面積が増加する可能性がある。また、洗浄効果の顕著な向上が見られず、経済的でない。
以下に各工程に関して詳細に説明する。
[工程A]
工程Aは、塩化ニッケルとマグネシウム化合物を含有する混合水溶液をアルカリ水溶液で中和してマグネシウムを含有した水酸化物、即ち水酸化ニッケルを生成する工程である。
この工程Aにおいては、水溶液の濃度、中和条件等は公知の技術が適用できる。この時、均一な特性の水酸化ニッケルを得るために、十分に攪拌されている反応槽内に、混合水溶液とアルカリ水溶液をダブルジェット方式で添加して反応させることが好ましく、pHを一定に保ちながら行うと、沈殿生成速度を一定に保つことができるため、さらに好ましい。
この反応槽内に、予め入れておく液は、純水を用いることができるが、中和生成に一度使用した濾液を、所定のpHにアルカリ成分で調整した液を用いることが好ましい。使用するアルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが用いられるが、コストを考慮すると水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
次に、生成した水酸化ニッケルを濾過により脱水し、濾過ケーキを形成する。中和条件によっては生成した水酸化ニッケルがゲル状になることがあるが、その場合には反応によって生成された塩などが偏って残留しやすい。このため、十分に不純物濃度を下げるため、数回の濾過、レパルプ洗浄を繰り返してもよいが、不純物濃度を下げながらスラリー濃度を上げていく方法としてクロスフロー方式の濾過を用いることも有効である。
生成した水酸化ニッケルに関しては、そのまま次工程に使用することもできるが、特に残留塩素濃度をより低減させるためには、中和生成した水酸化ニッケルを濃度0.0004〜0.0015mol/Lの硫酸或いは硫酸塩水溶液で洗浄した後、さらに水洗することが好ましい。この硫酸或いは硫酸塩水溶液での洗浄は、生成した水酸化ニッケルのゲルを解消しながらの洗浄となるため、水酸化ニッケルに残留する塩素を効率よく低減させることができる。そのため、次工程以降の塩素による負荷を下げることにもなり、得られる効果は大きい。
この硫酸或いは硫酸塩水溶液濃度が0.0004mol/L未満であると洗浄効果が十分に得られない。また、濃度が0.0015mol/Lを超えると洗浄効果の改善が得られないばかりか、残留する硫黄濃度が高くなり過ぎて、最終的に得られるニッケル微粉が電子部品用材料として不適となる可能性があるため、好ましくない。
なお、この洗浄時の水溶液の温度は常温で可能であるが、洗浄効果を高めるため加熱してもよい。
水酸化ニッケルに対する硫酸或いは硫酸塩水溶液の量は、特に限定されるものではなく、残留塩素が十分に低減できる量とすればよいが、水酸化ニッケルを良好に洗浄するには、水酸化ニッケル/処理液(硫酸或いは硫酸塩水溶液の量)の混合比を、100g/L程度とすることが好ましい。また、洗浄時間は特に限定されるものではなく、洗浄条件により残留塩素濃度が十分に低減される洗浄時間とすればよい。
この洗浄に用いる装置は、特に限定されるものではなく、次工程の工程Dにおけるニッケル微粉の洗浄と同様の装置を用いることができる。
また、この硫酸或いは硫酸塩水溶液による洗浄の方法は、予め硫酸或いは硫酸塩濃度を調整した水溶液を準備し、これに撹拌しながら乾燥した水酸化ニッケルの粉末を加える方法も採れるが、濾過ケーキ(含水したままのケーキ状水酸化ニッケル)を使用する方が、均一な処理を行いやすく洗浄の効率が良くなるばかりか、工程の短縮にもなるために好ましい。この濾過ケーキを洗浄する場合には、濾過ケーキに少量の水を加えてスラリー状にした後、添加後に所定の濃度となるように調整した硫酸或いは硫酸塩水溶液を攪拌しながら一度に添加することが、均一な処理のために好ましい。
なお、使用する濾過ケーキの水分含有率については、10〜40質量%であることが好ましく、30質量%程度にすることがさらに好ましい。水分含有率が10質量%よりも低い場合、均一に水溶液中に分散しにくく洗浄の効率が悪くなることや、水分含有率を下げるためにより厳しい脱水処理が必要となるなどの制約があり好ましくない。一方で、水分含有率が40質量%よりも高い場合、水酸化ニッケルのハンドリング性が悪く、均一な処理を妨げる場合がある。また、一定量の水酸化ニッケルを得るために必要な処理量が増加してしまう。
[工程B]
次に、工程Bは前工程の工程Aで形成した水酸化物の水酸化ニッケルを、非還元性雰囲気で加熱処理して酸化ニッケル微粉を得る工程である。
本発明において、平均粒径0.1〜0.3μmで、粒径の均一性に優れた、すなわち分散性の良いニッケル微粉を得るには、マグネシウムの含有量の制御に加え、本工程において得られる酸化ニッケル微粉の形状、即ち、一次粒子径の制御が重要となる。
例えば、酸化ニッケル微粉の一次粒子径が微細である場合には、還元時における粉粒子間の凝集力が強くなり、マグネシウムの焼結防止剤としての効果を上回るため、その粒子径を制御することが出来なくなる。一方で、酸化ニッケル微粉の一次粒子径が大きい場合には、目的とする粒径のニッケル粉が得られないことは、ニッケル粉の形成機構から明らかである。
そこで、酸化ニッケル微粉の一次粒子径の指標として酸化ニッケル微粉の比表面積を用いて表した。具体的には、目的とする粒径および分散性を有するニッケル微粉を得るためには、前記酸化ニッケル微粉の比表面積が、20〜60m/gであることが好ましく、25〜45m/gとすることがより好ましい。
この酸化ニッケル微粉の一次粒子径は、マグネシウムの含有量および加熱処理の条件による制御が可能である。さらに比表面積の制御に関しては、水酸化ニッケルの状態および処理量によって、所望の比表面積が得られるように処理条件を決定すればよい。
その加熱処理における温度は、350〜500とすることが好ましく、より好ましくは400〜450℃である。この加熱処理の温度が350℃未満であると、酸化ニッケル微粉の一次粒子径が小さくなり、得られる酸化ニッケル微粉の比表面積が60 m/gを越える場合がある。また、加熱処理の温度が500℃を越えると、酸化ニッケル微粉が焼結して酸化ニッケル微粉の比表面積が20m/g未満となる場合がある。
加熱処理の時間は、特に限定しなくても良いが、処理する水酸化ニッケルの量、処理温度により、適宜、設定することができる。
この加熱処理では、均一な処理を行うためには、ガスを流通させた状態で行うことが望ましいが、このガスの流通が不十分であると、発生した水蒸気の影響により、得られる酸化ニッケル微粉の比表面積が不均一になることがあるので注意を要する。
用いるガスの種類については、非還元性雰囲気であれば、不活性ガスおよび酸化性ガスなど、その種類は制約されるものではないが、空気雰囲気は、コストおよび取り扱いやすさなどの点から好適である。
この加熱処理に用いる装置は、一般的な焙焼炉を使用することができ、静置式焙焼炉、転動炉、バーナー炉、搬送式連続炉、流動焙焼炉などが用いられる。
[工程C]
工程Cは、先の工程Bで生成した酸化ニッケル微粉を還元性雰囲気下において還元してニッケル微粉を得る工程である。
この還元条件に関しては、その還元温度を350〜550℃とすることが好ましく、より好ましくは、400〜500℃で、さらに好ましくは、400〜450℃である。この還元温度が350℃未満では、酸化ニッケル微粉が十分に還元されない場合や還元するのに長い時間を要する場合があり、生産効率を大きく低下させる。一方、還元温度が550℃を超えると、マグネシウムを添加しても反応を制御できずに、粗大化したニッケル粉が形成されてしまう恐れが大きい。
その他の還元処理にかかわる因子に関しては、必要とする規模などに応じて任意に設定することができる。還元性雰囲気は、適宜選定することができるが、入手しやすさや環境への影響を考慮すると、含水素ガス雰囲気とすることが好ましい。また、還元時は、工程Bと同様に雰囲気ガスを流通させた状態で行うことが、均一な還元のために好ましい。雰囲気ガスの流通が十分でない場合、発生した水蒸気の影響で粗大化したニッケル微粉の形成や、還元に必要なガスが不足して得られるニッケル微粉の分散性が悪化する。
[工程D]
この工程Dは、還元後のニッケル微粉を、有機酸水溶液とのスラリーとして有機酸でニッケル微粉を洗浄する工程である。その洗浄効果および用いる有機酸については、上記に記載したとおりである。
ここで、この有機酸による洗浄は、任意の温度で行うことが可能であるが、この洗浄温度を高くすることで不純物の除去という効果は大きくなるが、洗浄温度が高いほどニッケル微粉の溶出速度が増加するために、ニッケルロスが大きくなること、ニッケル微粉表面の不均一な溶解による比表面積の増加が抑えられないこと、および温度を上げるためのエネルギーが必要になることなどの問題点が発生してくる。したがって、これらの影響を考慮すると、洗浄の温度は30〜80℃に加熱して行うことが好ましく、さらに好ましくは40〜60℃である。この洗浄温度が、30℃未満になると、反応が十分に進まずにマグネシウムおよび残留塩素濃度が十分に低減できない。
ニッケル微粉と有機酸水溶液の混合比は、特に限定されるものではなく、実施する規模に応じて適宜変化させることができるが、ニッケル微粉と有機酸水溶液の混合割合は、有機酸水溶液1Lあたりニッケル微粉50〜500g、即ち50〜500g/Lとすることが好ましい。この混合割合が500g/Lを超える場合には、有機酸水溶液中でのニッケル微粉の分散が悪化して、洗浄が十分に行えなくなる可能性がある。一方で混合割合が50g/L未満の場合には、洗浄のために大量の薬液が必要となり、経済性や操作性に問題がある。
また、洗浄時間は特に限定されるものではなく、用いるスラリー中のニッケル微粉濃度、有機酸濃度、洗浄条件により残留塩素濃度が十分に低減される洗浄時間とすればよい。
さらに、このニッケル微粉の洗浄に用いる装置は、特に限定されるものではなく、通常の湿式反応槽を用いることができる。洗浄中は、ニッケル微粉を含むスラリーを撹拌することが好ましく、例えば、洗浄に超音波撹拌、或いは機械式攪拌を用いることができる。
このニッケル微粉の洗浄においては、有機酸水溶液中に不活性ガスを連続して導入することが好ましく、不活性ガスは窒素ガスであることが好ましい。不活性ガスを導入することで、ニッケル微粉の酸化を抑制して、比表面積の増加をさらに抑制しながら効率よくマグネシウムおよび塩素濃度を下げることができる。
なお、有機酸水溶液中でニッケル微粉を洗浄すると、保護被膜として機能していた表面の緻密な酸化被膜が溶解され、急激に酸化が進む。このため、反応系から酸素除去する必要があるが、有機酸、特にアスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸は表面に吸着して保護するとともに還元作用も期待できるため、有機酸水溶液中への不活性ガスの連続導入のみでニッケル微粉の酸化を抑制することができる。
しかしながら、酸素は可能な限り反応系から除去することが好ましいため、洗浄前に有機酸水溶液に不活性ガスを導入して、酸素を除去しておくことが好ましい。不活性ガスは特に限定されるものではないがコスト面を考慮すると窒素ガスが好ましい。また、効率よく有機酸水溶液中全体に導入するため、不活性ガスは可能な限り微細な気泡にして導入することが好ましい。バブラーを用いて微細な気泡を発生させる方法は、酸化の抑制と攪拌効率の向上の面で有効である。
(ニッケル微粉)
本発明のニッケル微粉は、上記製造方法によって生成されるもので、平均粒子径が0.1〜0.3μm、BET法で測定された比表面積が10m/g以下で、マグネシウムの含有量が500質量ppm以下であることを特徴とするもので、微細であり、積層セラミックコンデンサの小型化、高容量化に伴った内部電極の薄膜化、多層化に対応するものである。
この平均粒子径が0.1μm未満になると、ペーストとされた場合にニッケル微粉が凝集して分散が十分に得られないことがある。また、取扱いも困難である。
マグネシウムの含有量が500質量ppmを越えると、電子部品用材料として用いられた場合、電子部品の特性を損なうことがある。マグネシウムの含有量は、少ない方がより好ましく、300質量ppm未満であることが好ましい。一方、本発明では、マグネシウムを還元時の焼結防止剤として用いるため、通常、その下限は100質量ppm程度である。
残留する不純物の塩素も、電子部品材料においては低いことが好ましく、塩素の含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。塩素の含有量が100質量ppmを越えると、電子部品に用いられた場合、マイグレーション等が発生することがある。一方、本発明においては、ニッケル源として塩化ニッケルを用いるため、通常、その下限は20質量ppm程度である。
電子部品材料用のニッケル粉には、微粉化が望まれている一方で、比表面積が低いことが要求されており、BET法で測定された比表面積が10m/g以下であることが必要である。その比表面積が10m/gを超えると、ペースト化した場合にペースト混錬時の混合不良やペーストの経時劣化が起こることがある。本発明のニッケル微粉における比表面積の下限は、通常、4m/g程度である。
このように本発明のニッケル微粉は、微細で比表面積が小さく、且つ不純物の含有量が低いことから、電子部品材料には好適である。また、その製造方法は、複雑な工程を備えておらず、低コスト化が可能であり、工業的に優れたものである。
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例における各特性の評価は、以下の手法を用いて行っている。
塩素の含有量は、ニッケル微粉を硝酸で溶解して、蛍光X線定量分析の検量線法により測定した。
マグネシウムの含有量は、ICP発光分光分析法により測定した。
比表面積は、窒素ガス吸着によるBET一点法により測定した。
平均粒径は、走査型電子顕微鏡により観察した倍率10000倍の画像より1000個の粒子を計測して求めた。
マグネシウムを0.06g/L含んだニッケル濃度60g/Lの塩化ニッケル水溶液(ニッケルに対するマグネシウム量1000質量ppm)と、24質量%の水酸化ナトリウム水溶液をpH8.3となるように調整しながら反応槽に連続的に添加することで水酸化ニッケルを生成させた。生成した水酸化ニッケルを濾過、水洗、乾燥して乾燥物を得た。この乾燥物に30質量%の純水を加えた後、水酸化ニッケル100gに対して、0.0005mol%の硫酸を1L加えて30分間撹拌した。撹拌後、濾過、水洗、乾燥して水酸化ニッケルを得た。水酸化ニッケルのマグネシウムの含有量は、570質量ppm(ニッケルに対しては900質量ppm)であった。
次に、得られた水酸化ニッケルを、空気中425℃で2時間加熱して酸化ニッケル粉を生成した。この酸化ニッケル粉の比表面積は、39.5m/gであった。さらに、酸化ニッケル粉を、水素雰囲気中400℃で2時間還元することによりニッケル微粉を生成した。このニッケル微粉から10gを採取し、100mlの純水にクエン酸を添加して濃度0.8質量%のクエン酸水溶液に懸濁させ、50℃で30分間撹拌して、ニッケル微粉を洗浄した。洗浄後、ニッケル微粉を吸引濾過により固液分離した。分離されたニッケル微粉を100mlの純水中で30分間撹拌して水洗、濾過後、120℃で12時間真空乾燥し、ニッケル微粉を得た。
このニッケル微粉の平均粒径を測定した結果、平均粒径は0.26μmであった。また、比表面積は6.03m/gであった。ニッケル微粉の塩素の含有量とマグネシウムの含有量を測定した結果、塩素の含有量は100質量ppm以下、マグネシウムの含有量は170質量ppmであった。
塩化ニッケル水溶液に含有されるマグネシウム量を0.12g/L(マグネシウム量2000質量ppm)とした以外は、実施例1と同様にしてニッケル微粉を生成した。なお、水酸化ニッケルのマグネシウムの含有量は、1130質量ppm(ニッケルに対しては1780質量ppm)であり、酸化ニッケル粉の比表面積は、30.4m/gであった。
このニッケル微粉を実施例1と同様に評価した結果、平均粒径は0.24μmであり、比表面積は10.00m/gであり、塩素の含有量は100質量ppm以下、マグネシウムの含有量は240質量ppmであった。
濃度0.8質量%のクエン酸水溶液を濃度1.0質量%のグルタミン酸水溶液に変更した以外は実施例1と同様にしてニッケル微粉を生成した。
このニッケル微粉について実施例1と同様に評価した結果、平均粒径は0.24μmであり、比表面積は5.97m/gであり、塩素の含有量は100質量ppm以下、マグネシウムの含有量は170質量ppmであった。
濃度0.8質量%のクエン酸水溶液を濃度1.0質量%のアスコルビン酸水溶液に変更した以外は実施例1と同様にしてニッケル微粉を生成した。
このニッケル微粉を、実施例1と同様に評価した結果、平均粒径は0.24μmであり、比表面積は6.05m/gであり、塩素の含有量は100質量ppm以下、マグネシウムの含有量は160質量ppmであった。
(比較例1)
塩化ニッケル水溶液に含有されるマグネシウム量を0.04g/L(マグネシウム量667質量ppm)とした以外は実施例1と同様にしてニッケル微粉を生成した。なお、酸化ニッケル粉の比表面積は、29.6m/gであった。
このニッケル微粉を、実施例1と同様に評価した結果、平均粒径は0.36μmであり、比表面積は4.91m/gであり、塩素の含有量は100質量ppm以下、マグネシウムの含有量は70質量ppmであった。
(比較例2)
塩化ニッケル水溶液に含有されるマグネシウム量を0.18g/L(マグネシウム量3000質量ppmとした以外は実施例1と同様にしてニッケル微粉を生成した。なお、酸化ニッケル粉の比表面積は47.1m/gであり、マグネシウムの含有量は2900質量ppmであった。
このニッケル微粉を、実施例1と同様に評価した結果、一次粒子の平均粒径0.20μmであったが、凝集体となっていることが確認された。また、比表面積は、12.6m/gであり、塩素の含有量は100質量ppm以下、マグネシウムの含有量は530質量ppmであった。
(比較例3)
濃度0.8質量%のクエン酸水溶液を濃度2.5質量%の硫酸水溶液に変更した以外は実施例1と同様にしてニッケル微粉を生成した。
このニッケル微粉を、実施例1と同様に評価した結果、平均粒径は0.24μmであり、比表面積は12.8m/g、塩素の含有量は100質量ppm以下、マグネシウムの含有量は230質量ppmであった。
(比較例4)
クエン酸水溶液による洗浄を行わず、水洗のみとした以外は実施例1と同様にしてニッケル微粉を生成した。
このニッケル微粉を、実施例1と同様に評価した結果、平均粒径は0.24μm、比表面積は5.95m/gであり、塩素の含有量は1200質量ppm、マグネシウムの含有量は720質量ppmであった。
表1に、実施例1から実施例4、及び比較例1から比較例4における塩化ニッケル水溶液に含有されるマグネシウム(Mg)量と生成したニッケル微粉の平均粒径、比表面積、塩素(Cl)含有量、マグネシウム(Mg)含有量をまとめて示す。
Figure 2010248591
表1から明らかなように、本発明に係る実施例では、微細で不純物含有量も少ないことがわかる。また、比表面積も小さく、電子部品用材料として好適である。
一方、比較例1は、マグネシウム量が少ないため、平均粒径が粗大になっている。また、比較例2は、マグネシウム量が多いため、凝集粉が認められるとともにマグネシウムの含有量が多く、電子部品用材料として好ましくない。さらに、比較例3は、洗浄により比表面積が増加しており、好ましくない。比較例4はマグネシウムや不純物の塩素の含有量が多く、特に塩素量が極めて多くなっている。

Claims (8)

  1. ニッケル微粉の製造方法であって、
    塩化ニッケルおよびマグネシウム化合物を含有する水溶液をアルカリ溶液で中和して水酸化物を生成する工程Aと、
    前記水酸化物を非還元性雰囲気で加熱処理して酸化ニッケル粉を生成する工程Bと、
    前記酸化ニッケル粉を還元性雰囲気で還元処理してニッケル粉を生成する工程Cと、
    前記ニッケル粉を有機酸で洗浄処理する工程Dを有し、
    前記塩化ニッケルおよびマグネシウム化合物を含有する水溶液は、前記水溶液中に含有されるマグネシウム化合物量が、ニッケルに対するマグネシウム量の割合で800〜2500質量ppmであることを特徴とするニッケル微粉の製造方法。
  2. 前記有機酸が、クエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、酢酸、酒石酸から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル微粉の製造方法。
  3. 前記酸化ニッケル粉の比表面積が、20〜60m/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のニッケル微粉子の製造方法。
  4. 前記工程Cにおける酸化ニッケル粉の還元処理が、350〜550℃の温度で行なわれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  5. 前記マグネシウム化合物が、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  6. 前記工程Dにおける洗浄処理が、30〜80℃に加温した状態で処理されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって得られるニッケル微粉であって、平均粒子径が0.1〜0.3μm、BET法で測定された比表面積が10m/g以下であり、マグネシウムの含有量が500質量ppm以下であることを特徴とするニッケル微粉。
  8. 前記ニッケル微粉の塩素の含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする請求項7に記載のニッケル微粉。
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