JP5168592B2 - ニッケル粉の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ニッケル粉の製造方法に関するものである。詳しくは、残留塩素濃度が低く分散性に優れ、電子部品用の材料として好適なニッケル粉の製造方法に関するものである。
ニッケル粉は、積層セラミックコンデンサーなどの電子部品の導電体形成用材料に使用され、特に1.0μm以下の粒子径を有するニッケル粉は広く使用されている。
このニッケル粉を導電体形成材料に使用した場合、ハロゲン元素が残留すると、形成した電子部品の性能低下につながってしまう。例えば、残留したハロゲン化物は、ニッケル粉の耐錆性を阻害する原因となり、特に、塩素は、ペースト化して電子部品の材料として使用する場合において、焼成時に塩化水素ガスを発生して環境や装置へ悪影響を与えるなどの問題がある。したがって、残留ハロゲン、特に残留塩素の低減は電子部品用のニッケル粉の製造において重要な課題である。
そのニッケル粉中のハロゲンを除去する方法として、種々の洗浄方法が提案されている。例えば水による洗浄方法として、塩化ニッケルを還元して得たニッケル粉を水洗した後、真空中で乾燥する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、金属ハロゲン化物の蒸気を気相還元して得た金属粉を、界面活性剤を添加した水により洗浄し、残留する金属ハロゲン化物を除去する洗浄方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法は、界面活性剤の添加により残留ハロゲン化物の量を効果的に低減することができること、および塩化ニッケルを気相還元したニッケル粉への適用が可能であることが開示されている。
一方、アンモニア水によるニッケル粉の洗浄方法も提案されている。例えば金属ハロゲン化物の蒸気を気相還元して得た金属粉を、アンモニア水を用いて洗浄する方法が提案され、その実施例において、塩化ニッケルの水素還元により得られたニッケル粉への適用が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
また、有機酸によるニッケル粉の洗浄方法も提案され、例えば金属ハロゲン化物の蒸気を気相還元して得た金属超微粉を、グルタミン酸で洗浄することが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。この方法の中で、金属ハロゲン化物として、ハロゲン化ニッケルを用いた場合についての検討がなされ、ハロゲン元素として特に塩素の場合に、その洗浄方法が好適に用いられることが開示されている。
しかしながら、これらの方法はいずれの場合も金属ハロゲン化物、すなわち、ニッケルハロゲン化物、特に塩化ニッケルの蒸気を気相中で水素還元して得られるニッケル粒子に対する洗浄方法であり、一般に気相還元法で形成されたニッケル粉は、ハロゲン化物が残留しやすい特徴を持つものの、粒子の比表面積が小さく結晶性が高いため、洗浄によるハロゲン除去が容易である。そのため、上記のハロゲン低減方法は効果的である。しかし、気相還元法によるニッケル粉製造は、製造設備に多大なコストがかかるとともに、生産性が低く高コストになるという問題点がある。
そこで、より生産性が高く、低コストなニッケル粉の製造方法として湿式法が開発されている。この湿式法は、湿式により水酸化ニッケルを生成し、これを原料として還元処理することによりニッケル粉を生成する製造方法である。
例えば、湿式による水酸化ニッケルの生成は、反応槽内のスラリーに含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、アルカリ溶液を添加して水酸化ニッケルを生成させたスラリーを濾過、水洗、乾燥して水酸化ニッケルを得るもので、この水酸化ニッケルを、還元剤に水素を用いて400〜550℃の還元温度で、加熱還元することによりニッケル粉を得る製造方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
特開平11−140514号公報 特開2004−162099号公報 特開平1−319610号公報 特開平2006−219688号公報 特開2003−213310号公報
しかしながら、この湿式法を用いて低残留ハロゲンのニッケル粉を得ようとした場合、塩化ニッケルよりも硝酸ニッケルや硫酸ニッケルを出発原料とする方が有利である。しかし、硝酸ニッケルを原料とした場合には、硝酸ニッケルが高価であるばかりか、硝酸性窒素濃度の高い廃液が発生するため、環境負荷を考慮すると処理設備に多くのコストが必要となるという問題がある。また、硫酸ニッケルを原料とした場合には、溶解度が塩化ニッケルよりも小さく、かつ単位質量あたりのニッケル量も低いため、生産性が低く高コストになる。
また、塩化ニッケルを原料とする場合には、原料も安価で生産性も良いニッケル粉が得られるが、残留塩素が多いという問題点がある。したがって、残留塩素を除去する必要があるが、この湿式法で製造したニッケル粉は、気相還元法で得られたニッケル粉に比べて比表面積が大きいため洗浄による塩素の除去が難しく、上記洗浄方法での塩素の除去は十分ではなかった。
更に、得られるニッケル粉を電子部品製造用のペーストとして使用する場合、近年の微細化、薄膜化に対応するため、ニッケル粉の分散性が高いこと、すなわち、粗大粒子を含まず粒径分布の狭いことが求められている。ニッケル粉の分散性が悪い場合には、ペースト作製時に粗大なフレーク状の粒子が発生し、電子部品製造に用いたときの不具合の原因となる。
このように、電子部品製造用のペーストとして用いられるニッケル粉には、残留塩素が低濃度であるとともに高い分散性が求められている。
そこで、本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、低コストである湿式で得た水酸化ニッケルを還元する湿式法によるニッケル粉の製造方法を用いて、残留塩素濃度が低く、且つ粒子径のばらつきの小さい分散性の良いニッケル粉を提供することを目的とする。
本発明者は、生産性が高く低コストである湿式で製造した水酸化ニッケルを、還元処理することで得られる湿式法によるニッケル粉の残留塩素の低減と分散性の改善について鋭意検討した結果、ニッケル粉を有機酸水溶液でスラリー化し、そのスラリー状態で高圧を利用して解砕することでニッケル粉の分散性の改善と残留塩素の低減が同時に可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明のニッケル粉の製造方法は、塩化ニッケル水溶液からニッケル粉を生成するニッケル粉の製造方法で、この塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程Aと、生成した水酸化ニッケルを熱処理して酸化ニッケルを生成させる工程Bと、その酸化ニッケルを還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程Cと、工程Cで得られたニッケル粉をクエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸から選ばれる1種ないし2種以上の有機酸水溶液とスラリー化してニッケル粉スラリーを作製する工程Dと、このスラリー中で超高圧による作用を用いてニッケル粉を分散させる工程Eを備えることを特徴とする。
さらに、工程Eの作用は、対向衝突による衝突力あるいは溶液のキャビテーションによる衝撃力であり、特にスラリー中のニッケル粉の対向衝突による衝突力であることが望ましく、前記超高圧は100MPa以上の圧力であることを特徴とする。
また、工程Dの有機酸水溶液の濃度は、5〜50g/Lである水溶液であることを特徴とする。
さらに、工程Dの有機酸水溶液は、予め溶存酸素を除去された有機酸水溶液であることを特徴とする。
本発明のニッケル粉の製造方法によれば、残留塩素濃度が低く、かつ分散性に優れたニッケル粉を簡潔なプロセスで効率よく製造することができる。さらに、本発明によって得られるニッケル粉は、電子部品用として好適であり、その工業的価値は大きいものである。
以下に、本発明によるニッケル粉の洗浄方法について詳細に説明する。
本発明のニッケル粉の製造方法は、以下の工程を備えるものである。
[工程A]塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成する工程、湿式による水酸化ニッケルの生成。
[工程B]工程Aで生成した水酸化ニッケルを熱処理して酸化ニッケルを生成する工程。
[工程C]工程Bで生成した酸化ニッケルを還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程。
[工程D]生成したニッケル粉を、有機酸水溶液とスラリー化してニッケル粉スラリーを作製する工程。
[工程E]超高圧による作用を用いて、工程Dで作製したスラリー中のニッケル粉を解砕して分散させる工程。
本発明のニッケル粉の製造方法は、工程Aから工程Cによる湿式法によるニッケル粉の形成、並びに工程D、Eによるニッケル粉のハロゲン除去、特に塩素除去、および粗大粒子粉を解砕して分散性を高めるものである。
即ち、工程Aによる湿式による水酸化ニッケルの生成、工程Bによる水酸化ニッケルから酸化ニッケルの生成、工程Cによる低コストでのニッケル粉の生成、工程Dによるニッケル粉を有機酸水溶液に分散させてスラリー化すること、工程Eの超高圧による作用を用いたスラリー中の粗粒ニッケル粉の解砕による高い分散性のニッケル粉の生成と塩素除去であり、これらにより残留塩素濃度が低く、かつ分散性に優れたニッケル粉を簡便に製造することができるものである。
工程Aから工程Cを経て作製されたニッケル粉は、残留塩素が高い状態であり、この塩素の残留形態に関しては必ずしも明確ではないが、比較的表面に濃縮していると考えられる。また、このニッケル粉は、凝集あるいは部分的な焼結により複数のニッケル粒子による凝集体を形成している。このような状態では、表面が十分に露出しておらず、表面に多く濃縮している塩素を電子部品の許容レベルまで除去することは困難である。
そこで、本発明では、このような凝集体となっていると見られるニッケル粉を、工程Dおよび工程Eを施すことで、まず有機酸水溶液に凝集体となっているニッケル粉を加えてニッケル粉スラリー(以下、スラリーと称す)を作製し、そのスラリーに超高圧による作用を与えて、スラリー中の凝集しているニッケル粉を解砕して分散させ、ニッケル粉の粒子表面を強制的に露出させると共に塩素除去効果が高い有機酸水溶液と十分に接触させる。これにより、効率よく残留塩素濃度の低減と分散性の改善を行うものである。
本発明で用いる超高圧による作用としては、対向衝突による衝突力あるいは溶液のキャビテーションによる衝撃力を用いると良い。これらを利用できる装置としては、湿式ジェットミルを用いると良い。例えば、対向衝突を利用したものとしてスギノマシン製スターバースト、キャビテーションを利用したものとしてアドバンスト・ナノ・テクノロジィ製ナノメーカーなどが挙げられる。
本発明では、超高圧によりスラリー中のニッケル粉を対向衝突させて強い衝突力を発生させて、スラリー中のニッケル粉を解砕して分散性を高めるもので、この衝突力による場合は、その解砕力が強く、スラリー中で効率よく解砕することができる。
また、溶液のキャビテーションによる衝撃力の利用としては、スラリーに超高圧を与えて隘路を高速で通過させることにより、スラリー中の溶液にキャビテーションを発生させ、そのキャビテーションによる泡が隘路出口での速度低下により破裂し、その泡が破裂するときの衝撃力によりニッケル粉を解砕する方法も採られる。
この衝突力あるいは衝撃力は、圧力と相関があるため、圧力は高いことが好ましく、100MPa以上の超高圧となるようにするのが好ましい。100MPa未満では、ニッケル粒子を十分に分散させることができず、上記のような効果が十分に得られない。なお、圧力としては、100〜245MPaとすることがより好ましく、200〜245MPaとすることが特に好ましい。現状では、245MPaを超える圧力で対向衝突させる装置はないが、245MPaを超える圧力でも上記のような効果は得られるものと考えられる。
次に、塩素の除去効率は、その処理が高温で行われるほど向上することを確認しているが、その一方で、高温で塩素除去処理を行った場合には、ニッケル粉の比表面積が増大してしまうことが確認されている。
この相反する点に関して、超高圧を利用してニッケル粉を分散させることで塩素を除去する本発明の場合では、ニッケル粒子の表面露出部において、局部的に瞬間的な温度上昇が生じるために露出部の塩素を効率よく低減することができる。しかも、温度上昇は局部的なものであり系全体の温度上昇は抑えられているため、比表面積は増加せずに抑制されている。
ニッケル粉の塩素除去は、有機酸水溶液と接触させることでニッケル粒子表面の塩素を効率的に除去できるが、その理由については必ずしも明確ではない。しかしながら、有機酸が表面塩素と交換吸着することで残留塩素を効率的に除去することができると考えられる。
以下、工程毎に詳細に説明する。
[工程A]
工程Aは、塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程であり、濃度、中和条件等は公知の技術が適用できる。この時、均一な特性の水酸化ニッケルを得るために、十分に攪拌されている反応槽内に、塩化ニッケル水溶液と水酸化ナトリウム水溶液をダブルジェット方式で添加しながら中和生成することが有効である。反応槽内にあらかじめ入れておく液は純水を用いることができるが、中和生成に一度使用した濾液を所定のpHにアルカリで調整した液を用いることが好ましい。使用するアルカリ水溶液については、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などの水酸化アルカリ金属の水溶液を用いることが好ましく、入手しやすさや価格などの点で水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
生成した水酸化ニッケルを濾過により脱水し、濾過ケーキを得る。この時、数回の濾過、レパルプ洗浄を繰り返して、十分に残留塩素濃度を下げることが好ましい。この際、残留塩素濃度を下げながらスラリー濃度を上げていく方法としてクロスフロー方式の濾過を用いることが、濾過、レパルプ洗浄を繰り返すのに比べて作業効率を向上させながら洗浄を行うことができ有効である。
残留塩素濃度をより低減させるためには、生成した水酸化ニッケルを濃度0.0004〜0.0015mol/Lの硫酸あるいは硫酸塩水溶液で洗浄した後、さらに水洗することが好ましい。
この硫酸あるいは硫酸塩水溶液による洗浄は、得られた水酸化ニッケルのゲルを解消しながらの洗浄となるため、水酸化ニッケルに残留する塩素を効率よく低減させることができる。そのため、次工程以降の塩素による負荷を下げることにもなり、得られる効果は大きい。
硫酸あるいは硫酸塩水溶液濃度が0.0004mol/L未満であると、その洗浄効果が十分に得られず、濃度が0.0015mol/Lを超えると、その洗浄効果の改善が得られないばかりか、残留する硫黄濃度が高くなりすぎて得られるニッケル粉が電子材料として不適となる可能性があるため、好ましくない。洗浄時の水溶液の温度は常温で可能であるが、洗浄効果を高めるため加熱してもよい。
水酸化ニッケル粉に対する硫酸あるいは硫酸塩水溶液の量は、特に限定されるものではなく、残留塩素が十分に低減できる量とすればよいが、水酸化ニッケル粉を良好に分散させるためには、水酸化ニッケル粉/処理液の混合比を100g/L程度とすることが好ましい。また、洗浄時間は特に限定されるものではなく、洗浄条件により残留塩素濃度が十分に低減される洗浄時間とすればよい。
洗浄に用いる装置は特に限定されるものではなく、通常の湿式反応槽を用いることができる。
この硫酸あるいは硫酸塩水溶液による洗浄の方法は、あらかじめ硫酸あるいは硫酸塩濃度を調整した水溶液を準備し、これに撹拌しながら乾燥した水酸化ニッケルの粉末を加える方法が採られるが、含水したままのケーキ状のものを使用する方が、均一な処理を行いやすく洗浄の効率が良くなるばかりか、工程の短縮にもなるために好ましい。このケーキ状の水酸化ニッケルを洗浄する場合には、水酸化ニッケルの濾過ケーキに少量の水を加えてスラリー状にした後、添加後に所定の濃度となるように調整した硫酸あるいは硫酸塩水溶液を攪拌しながら一度に添加することが、均一な処理のために好ましい。
水酸化ニッケルケーキの水分含有率については、10〜40質量%であることが好ましく、30質量%程度にすることがさらに好ましい。水分含有率が10質量%よりも低い場合、均一に水溶液中に分散しにくく洗浄の効率が悪くなることや、水分含有率を下げるためにより厳しい脱水処理が必要となるなどの制約があり好ましくない。一方で、水分含有率が40質量%よりも高い場合、水酸化ニッケルのハンドリング性が悪く、均一な処理を妨げる場合がある。また、一定量の水酸化ニッケルを得るために必要な処理量が増加してしまう。
[工程B]
次に、工程Bは、工程Aで作製した水酸化ニッケルを熱処理して酸化ニッケルとする工程である。
この熱処理は、静置式焙焼炉、転動炉、バーナー炉、搬送式連続炉などの一般的な焙焼炉を使用することができ、得ようとする酸化ニッケルに応じて、適宜、処理温度および時間などの処理条件を設定することができる。熱処理の雰囲気は、特に制約されるものではなく、非還元性雰囲気であれば問題ないが、コストや取り扱いやすさなどの点から空気雰囲気下で行うと良い。その際、均一な処理を行うためにガスを流通させた状態で行うことが好ましい。
[工程C]
工程Cは、工程Bで作製した酸化ニッケルを、還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程である。
この時、還元性ガスは適宜選定することができるが、入手しやすさや環境への影響を考慮すると、含水素ガスを使用することが好ましい。また、還元条件についても、得ようとするニッケル粉に応じて設定することができるが、温度は300〜450℃とすることが好ましい。還元温度が450℃よりも高い場合には、ニッケル粉の焼結が進行し、分散性の良好な粒子が得られなくなる。一方で、還元温度が300℃よりも低い場合には、酸化ニッケルからニッケルへの還元反応が起こりにくく、ニッケル粉の製造効率が著しく悪化する。
[工程D]
工程Dは、工程Cで作製したニッケル粉を有機酸水溶液とスラリー化する工程である。
ニッケル粉をスラリー化するための溶液は、有機酸水溶液から適宜選択することができるが、アスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸の水溶液は、塩素除去の効果が大きく、取り扱いも容易であり、したがって、用いる有機酸水溶液は、アスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸から選ばれる1種ないし2種以上を含む水溶液とすることが好ましい。
これらの水溶液を用いて処理を行った場合、効率よく塩素を除去することが可能であるので、短時間での処理となり粒子の酸化機会を減少させることができるほか、ニッケル粉の表面に吸着することで粒子の酸化そのものを抑制することが可能となる。
この有機酸水溶液の濃度は、5〜50g/Lとすることが好ましい。濃度が5g/L未満の場合には塩素除去効果が十分でなく、残留塩素が低減できない可能性がある。濃度が50g/Lよりも大きくしても特に問題はないが、洗浄効果に向上が見られず、経済的でない。
また、スラリーの有機酸水溶液とニッケル粉の混合比は、工程Eで分散処理に用いる装置における最適な状態に選択することが好ましく、概ねニッケル粉が50g/Lから500g/Lの範囲が好ましいと考えられる。この混合比が500g/Lを超える場合には、スラリー粘度が高く前記分散処理ができない場合があるばかりか、ニッケル粉の分散が悪化して塩素除去が十分に行えなくなる可能性がある。一方で混合比が50g/L未満の場合には、前記分散処理のために大量の薬液が必要となり、経済性や操作性に問題がある。
有機酸水溶液を用いてニッケル粉をスラリー化すると、保護被膜として機能する表面の緻密な酸化被膜が溶解され、急激に酸化が進む。このため、反応系から酸素除去する必要があり、使用する有機酸水溶液は、あらかじめ溶存酸素を除去しておくことが好ましい。
溶存酸素の除去としては、有機酸水溶液に不活性ガスを導入することが好ましく、不活性ガスは窒素ガスであることが好ましい。溶存酸素の除去には、効率よく水溶液中全体にガスを導入することが効果的であるため、不活性ガスは可能な限り微細な気泡にして導入することが好ましい。したがって、バブラーを用いて微細な気泡を発生させることが有効である。
以上のようにあらかじめ溶存酸素を除去しておくことで、ニッケル粉の酸化を抑制して比表面積の増加をさらに抑制しながら、効率よく塩素濃度を下げることができる。なお、工程Eにおいて装置へスラリーを導入する直前にも、同様にスラリー中から溶存酸素を除去しておくことが、より効果的であり好ましい。
アスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸は表面に吸着して保護するとともに還元作用も期待できるため、ニッケル粉の酸化を抑制して比表面積の増加を抑制する効果の面からも、これらの有機酸を用いることが好ましい。
[工程E]
工程Eは、スラリー中の凝集しているニッケル粉を、超高圧による作用を用いてニッケル粉を解砕して分散させる工程である。工程Eにより、ニッケル粉の残留塩素濃度の低減と分散性の改善を行うことができる。
この時のスラリー温度は、この解砕して分散させる工程(以下、分散工程と称す)によってニッケル粒子に局部的な温度上昇が期待できるため、加温する必要がないが、塩素除去の効果をさらに向上させるため、スラリー温度を30〜90℃に加温してもよい。残留塩素濃度の低減のみに着目すると、スラリー温度が高いほど残留塩素をより低い濃度まで低減することができる。
その一方で、スラリー温度が高い場合には、比表面積の増加が大きくなる傾向がある。したがって、残留塩素濃度の低減と比表面積の増加抑制を両立させるためには、30℃〜90℃の温度で分散処理することが好ましく、40℃〜90℃の温度で分散処理することがより好ましい。洗浄液の温度が90℃を超えた場合には、比表面積の増加が大きくなりすぎるばかりか、安全性に問題があり、エネルギー的にも不利である。洗浄液の温度が、30℃未満であると反応が十分でなく残留塩素が低減できない場合がある。
本発明の製造方法では、ニッケル粉をスラリーとして分散処理を行なう装置の処理部へ導入してニッケル粉を分散処理するが、複数回導入して処理することが効果的である。したがって、その導入回数は2〜15回とすることが好ましい。2回未満では、残留塩素濃度の低減と分散性の改善が十分でないことがあり、15回を超えると凝集を起こす可能性があるためである。なお、好ましくは5〜10回である。5回未満では、分散性が十分得られないことがあり、5回以上とすることがより好ましい。尚、分散された後には、通常行われているように濾過、水洗および乾燥を行えば良い。
以上の方法により製造されたニッケル粉は、残留塩素濃度が低く、電子部品用の材料としても好適である。
その残留塩素濃度は150質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることがより好ましい。また、湿式法により製造した水酸化ニッケルを還元処理するため、複雑な工程を備えておらず、その製造コストも低く抑えることができる。
以下に、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
なお、この実施例等における塩素濃度は、ニッケル粉を硝酸で溶解した後に硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を蛍光X線定量分析装置(Panalytical社製Magix)を用いた検量線法で評価している。
また、比表面積は、BET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス社製マルチソーブ16)によりBET一点法により評価している。
粒子の分散性は、レーザー光回折・散乱型粒度分布測定装置(Microtrack社製MICROTRACK HRA)により粒度分布を測定し、90%体積径(以下、D90と表記)を求めて分散状態の指標としている。
[工程A]
還元時の融着抑制剤となるマグネシウムを0.04g/L含んだニッケル濃度60g/Lの塩化ニッケル水溶液と、24質量%の水酸化ナトリウム水溶液をpH=8.3となるように調整しながら連続的に添加することで水酸化ニッケルの沈殿を生成させた。
その後、濾過と30分の純水レパルプを3回繰り返して水分含有率30質量%の水酸化ニッケル濾過ケーキを得た。さらに、この濾過ケーキに少量の水を加えた後、水酸化ニッケル100gに対して、先に加えた水との合計で0.0005mol/Lの硫酸1Lとなるように濃度調整した硫酸を加え、30分間攪拌して洗浄した。洗浄後に濾過し、再度純水でレパルプ洗浄し、乾燥して水酸化ニッケル粉末を得た。
[工程B]
この水酸化ニッケル粉末200gを、雰囲気焼成炉により20L/minの流量で、空気を導入しながら400℃で6時間熱処理して酸化ニッケルを生成した。
[工程C]
この工程Bで作製した酸化ニッケル132gを、25L/minの流量で窒素80容量%−水素20容量%の混合ガスを導入しながら、雰囲気焼成炉を用いて、400℃で2時間還元処理して還元ニッケル粉を作製した。
[工程D]
次に、この還元ニッケル粉50gを、窒素ガスの導入により溶存酸素を除去した濃度10g/Lの室温のクエン酸水溶液500mL中に分散させニッケル粉含有スラリーを作製した。
[工程E]
湿式ジェットミル装置(スギノマシン社製StarBurst Labo)を用い、先の工程Dで作製したスラリーに対して、圧力が245MPaになるような条件で10パスの分散処理を行い、ニッケル粉分散スラリーを得た。得られたニッケル粉分散スラリーを、吸引濾過後に再度純水でレパルプ洗浄し、濾過後、80℃で真空乾燥して脱塩素処理したニッケル粉を得た。
このニッケル粉の各特性を測定した結果を表1に示す。得られたニッケル粉の残留塩素濃度は30質量ppm未満であり、比表面積は4.66m2/g、D90は0.53μmであった。
Figure 0005168592
(比較例1)
還元後のニッケル粉をスラリー化する際の有機酸水溶液を、窒素ガスの導入により溶存酸素を除去した純水に変更した以外は実施例1と同様にして、ニッケル粉を作製して、その残留塩素濃度、比表面積を測定した。その結果を表1に示す。
このニッケル粉の残留塩素濃度は310質量ppmと高い値であり、その比表面積は4.81m2/gであり、D90は0.42μmであった。
(比較例2)
湿式ジェットミル装置による超高圧の衝突力を用いたニッケル粉を分散させる処理を行わず、60℃に加熱しながら攪拌機を用いて30分間攪拌洗浄した以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を作製し、その残留塩素濃度、比表面積を測定した。その結果を表1に示す。作製したニッケル粉の残留塩素濃度は30質量ppm未満であり、その比表面積は4.91m/gであったが、D90は0.73μmであった。
表1からも明らかなように、本発明に係るニッケル粉の製造方法を経た実施例1では、残留塩素濃度が30質量ppm未満まで低減されており、D90も0.53μmと良好な分散性を示している。これに対して、ニッケル粉を純水とスラリー化し分散処理した比較例1は、残留塩素濃度が310質量ppmと高く、残留塩素濃度が低減されていないことがわかる。
また、ニッケル粉を機械式攪拌によって洗浄した比較例2では、残留塩素濃度が30ppm未満まで低減されているものの、D90が0.73μmと分散性が実施例1に比べて劣っていることがわかる。さらに、比較例2では、残留塩素の低減のために60℃に液を加熱する必要があったが、実施例1では加熱処理を必要としていない。
本発明のニッケル粉の製造方法により、残留塩素濃度が低減され、かつ、分散性が良好なニッケル粉が得られる。得られるニッケル粉は、電子部品材料として好適であり、特に配線材料、電極材料等として好適であり、ペーストとしても安定して用いることができる。

Claims (6)

  1. 塩化ニッケル水溶液からニッケル粉を生成するニッケル粉の製造方法であって、
    前記塩化ニッケル水溶液を、アルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程Aと、
    前記水酸化ニッケルを、熱処理して酸化ニッケルを生成させる工程Bと、
    前記酸化ニッケルを、還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程Cと、
    前記工程Cで得られたニッケル粉をクエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸から選ばれる1種ないし2種以上の有機酸水溶液とスラリー化して、ニッケル粉スラリーを作製する工程Dと、
    前記ニッケル粉スラリー中で、超高圧による作用を用いてニッケル粉を分散させる工程Eを、
    備えることを特徴とするニッケル粉の製造方法。
  2. 前記工程Eの作用が、対向衝突による衝突力あるいは溶液のキャビテーションによる衝撃力であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
  3. 前記工程Eの作用が、ニッケル粉スラリー中のニッケル粉の対向衝突による衝突力であることを特徴とする請求項2に記載のニッケル粉の製造方法。
  4. 前記工程Eの超高圧が、100MPa以上の圧力であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
  5. 前記工程Dの有機酸水溶液の濃度が、5〜50g/Lであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
  6. 前記工程Dの有機酸水溶液が、予め溶存酸素を除去された有機酸水溶液であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
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