JP5125411B2 - ニッケル粉およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ニッケル粉およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは残留塩素濃度が低く、電子部品用の材料として好適なニッケル粉およびそのニッケル粉の製造方法に関する。
1.0μm以下の粒子径を有するニッケル粉は、積層セラミックコンデンサーなどの電子部品の導電体形成用材料として主流であり広く使用されている。ニッケル粉を導電体形成材料として使用した場合、ハロゲンが残留すると電子部品の性能低下につながる。例えば、残留したハロゲン化物はニッケル粉の耐錆性を阻害する原因となる。特に、塩素は、ペースト化して電子部品の材料として使用する場合において、焼成時に塩化水素ガスを発生して環境や装置へ悪影響を与えるなどの問題がある。したがって、残留ハロゲン、特に残留塩素の低減は電子部品用のニッケル粉の製造において重要な課題である。
ニッケル粉中のハロゲンを除去する方法として、種々の洗浄方法が提案されている。例えば、水による洗浄方法として塩化ニッケルを還元して得たニッケル粉を水洗した後、真空中で乾燥する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、金属ハロゲン化物の蒸気を気相還元して得た金属粉を、界面活性剤を添加した水により洗浄し、残留する金属ハロゲン化物を除去する洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この提案では、界面活性剤の添加により残留ハロゲン化物の量を効果的に低減することができること、塩化ニッケルを気相還元したニッケル粉への適用が可能であることが開示されている。
一方、アンモニア水によるニッケル粉の洗浄方法も提案されている。例えば金属ハロゲン化物の蒸気を気相還元して得た金属粉をアンモニア水を用いて洗浄することが提案され、その実施例において、塩化ニッケルの水素還元により得られたニッケル粉への適用が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、有機酸によるニッケル粉の洗浄方法も提案され、例えば金属ハロゲン化物の蒸気を気相還元して得た金属超微粉を、グルタミン酸で洗浄することが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。この中で、金属ハロゲン化物として、ハロゲン化ニッケルを用いた場合について検討され、ハロゲンとして特に塩素の場合にその洗浄方法が好適に用いられることが開示されている。
しかしながら、これらの方法はいずれの場合も金属ハロゲン化物、すなわち、ニッケルハロゲン化物、特に塩化ニッケルの蒸気を気相中で水素還元して得られるニッケル粒子に対する洗浄方法である。一般に気相還元法で形成されたニッケル粉は、ハロゲン化物が残留しやすい特徴を持つものの、粒子の比表面積が小さく結晶性が高いため、洗浄によるハロゲン除去が容易である。そのため、前述したハロゲン低減方法は効果的であった。しかし、気相還元法によるニッケル粉製造は、製造設備に多大なコストがかかるとともに、生産性が低く高コストになるという問題点があった。
一方、湿式法により水酸化ニッケルを生成し、これを原料として還元処理することによりニッケル粉を生成する方法は、生産性も高く低コストでニッケル粉が得られる製造方法である。例えば、反応槽内のスラリーに含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、アルカリ溶液を添加して水酸化ニッケルを生成させ、該スラリーを濾過し、水洗し、乾燥して水酸化ニッケルを得て、これを還元剤として水素を用いて還元温度を400〜550℃として、加熱還元することによりニッケル粉を得る製造方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
低残留ハロゲンのニッケル粉を得ようとした場合、塩化ニッケルよりも硝酸ニッケルや硫酸ニッケルを出発原料とする方が有利である。しかし、硝酸ニッケルを原料とした場合には、硝酸ニッケルが高価であるばかりか、硝酸性窒素濃度の高い廃液が発生するため、環境負荷を考慮すると処理設備に多くのコストが必要となるという問題がある。また、硫酸ニッケルを原料とした場合には、溶解度が塩化ニッケルよりも小さく、かつ単位質量あたりのニッケル量も低いため、生産性が低く高コストになる。
塩化ニッケルを原料とすると、原料も安価で生産性も良くニッケル粉が得られるが、残留塩素が多いという問題点がある。したがって、残留塩素を除去する必要があるが、上記方法で製造したニッケル粉は、気相還元法で得られたニッケル粉に比べて比表面積が大きいため洗浄による塩素の除去が難しく、上記洗浄方法での塩素の除去は十分ではなかった。また、得られるニッケル粉を安定したペーストとして使用するためには比表面積の増加に対する配慮が必要であった。
特開平11−140514号公報 特開2004−162099号公報 特開平1−319610号公報 特開平2006−219688号公報 特開2003−213310号公報
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、湿式法で得た水酸化ニッケルを還元するニッケル粉の製造方法を用いて、残留塩素濃度が低いニッケル粉を低コストで提供することを目的としている。
本発明者は、生産性が高く低コストである湿式法で得た水酸化ニッケルを、還元処理することで得られるニッケル粉の残留塩素の低減について鋭意検討した結果、ニッケル粉を特定条件で有機酸により洗浄することで、比表面積の増加を抑制しつつ残留塩素の低減が可能であることを見出した。さらに、湿式法により得られた水酸化ニッケルを特定条件で洗浄することにより、残留塩素をより低減することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明のニッケル粉の製造方法は、塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程(A)と、水酸化ニッケルを空気中で熱処理して酸化ニッケルを生成させる工程(B)と、酸化ニッケルを還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程(C)と、還元後のニッケル粉を洗浄する工程(D)を備えたニッケル粉の製造方法であって、前記工程(D)において、洗浄液としてアスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸から選ばれる1種ないし2種以上を含む水溶液を用いることを特徴とするものである。洗浄液は、濃度を5〜50g/Lとすることが好ましく、30〜90℃に加熱することが好ましい。
本発明に係る製造方法においては、前記工程(A)の後に、工程(A)で生成した水酸化ニッケルを濃度0.0004〜0.0015mol/Lの硫酸あるいは硫酸塩水溶液で洗浄し、さらに水洗する工程(E)を備えていることが好ましい。
また、上記水酸化ニッケルを洗浄する工程(E)においては、工程(A)で生成した水酸化ニッケルをろ過分離した状態で、硫酸あるいは硫酸塩水溶液中に再分散させて洗浄することが好ましい。
さらに、前記工程(D)においては、洗浄液中に不活性ガスを連続して導入することが好ましく、不活性ガスは窒素ガスであることが好ましい。
本発明に係る製造方法においては、前記工程(C)における還元ガスは、含水素ガスであることが好ましく、還元は300〜450℃で行なうことが好ましい。
本発明においては、本発明のニッケル粉の製造方法によって得られるニッケル粉であって、残留塩素濃度が150質量ppm以下であることを特徴とするニッケル粉をも提供する。
本発明のニッケル粉の製造方法によれば、特殊な装置を必要とすることなく、簡潔なプロセスで効率よく残留塩素濃度が低いニッケル粉を製造することができる。本発明によって得られるニッケル粉は、電子部品用として好適であり、その工業的価値は大きい。
以下に、本発明によるニッケル粉の製造方法について詳細に説明する。
本発明のニッケル粉の製造方法は、塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程(A)と、水酸化ニッケルを空気中で熱処理して酸化ニッケルを生成させる工程(B)と、酸化ニッケルを還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程(C)と、還元後のニッケル粉を洗浄する工程(D)を備えたニッケル粉の製造方法であって、前記工程(D)において、洗浄液としてアスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸から選ばれる1種ないし2種以上を含む水溶液を用いることを特徴とするものである。
工程(A)は、塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程であり、濃度、中和条件等は公知の技術が適用できる。この時、均一な特性の水酸化ニッケルを得るために、十分に攪拌されている反応槽内に、塩化ニッケル水溶液と水酸化ナトリウム水溶液をダブルジェット方式で添加しながら中和生成することが有効である。反応槽内にあらかじめ入れておく液は純水を用いることができるが、中和生成に一度使用したろ液を所定のpHにアルカリで調整した液を用いることが好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが用いられるがコストを考慮すると、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
生成した水酸化ニッケルをろ過により脱水し、ろ過ケーキを得る。この時、十分に残留塩素濃度を下げることが好ましいため、数回のろ過・レパルプ洗浄を繰り返してもよいが、残留塩素濃度を下げながらスラリー濃度を上げていく方法としてクロスフロー方式のろ過を用いることも有効である。
次に、工程(B)において、工程(A)で得られた水酸化ニッケルを空気中で熱処理して酸化ニッケルとする。熱処理は、一般的な焙焼炉を使用することができ、得ようとする酸化ニッケルに応じて、適宜、処理温度および時間などの処理条件を設定することができる。熱処理は、空気雰囲気下で行うことが好ましいが、非還元性雰囲気であれば他の雰囲気下で行なっても問題ない。
工程(B)で得られた酸化ニッケルを、工程(C)において、還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする。この時、還元性ガスは適宜選定することができるが、入手しやすさや環境への影響を考慮すると、含水素ガスを使用することが好ましい。また、還元条件についても、得ようとするニッケル粉に応じて設定することができるが、温度は300〜450℃とすることが好ましい。還元温度が450℃よりも高い場合には、ニッケル粉の焼結が進行し、分散性の良好な粒子が得られなくなる。一方で、還元温度が300℃よりも低い場合には、酸化ニッケルからニッケルへの還元反応が起こりにくく、ニッケル粉の製造効率が著しく悪化する。
さらに、工程(D)において生成したニッケル粉を洗浄することで、残留塩素濃度が低減されたニッケル粉が得られる。
ニッケル粉の洗浄は、アスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸から選ばれる1種ないし2種以上を含む水溶液に、ニッケル粉を分散させてスラリー状態に保持することで行う。 有機酸の効果については必ずしも明確ではないが、塩素と交換吸着することで残留塩素を効率的に除去することができると考えられ、前記アスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸はその効果が大きく、これらの水溶液を用いて洗浄することで、比表面積の増加を抑制しながら残留塩素を大幅に低減することが可能である。
洗浄液の濃度は5〜50g/Lとすることが好ましい。濃度が5g/L未満の場合には洗浄効果が十分でなく、残留塩素が低減できない可能性がある。濃度が50g/Lよりも大きくしても特に問題はないが、洗浄効果に向上が見られず、経済的でない。
洗浄液の温度は、30〜90℃とすることが好ましい。残留塩素濃度の低減のみに着目すると、洗浄温度が高いほど残留塩素をより低い濃度まで低減することができる。その一方で、洗浄温度が高い場合には、比表面積の増加が大きくなる傾向がある。したがって、残留塩素濃度の低減と比表面積の増加抑制を両立させるためには、30℃〜90℃の温度で洗浄することが好ましく、40℃〜90℃の温度で洗浄することがより好ましい。洗浄液の温度が90℃を超えた場合には、比表面積の増加が大きくなりすぎるばかりか、安全性に問題があり、エネルギー的にも不利である。洗浄液の温度が、30℃未満であると反応が十分でなく残留塩素が低減できない場合がある。
ニッケル粉と洗浄液の混合比は特に限定されるものではなく、実施する規模に応じて適宜変化させることができるが、ニッケル粉/洗浄液の混合比を50〜500g/Lとすることが好ましい。この混合比が500g/Lを超える場合には、ニッケル粉の分散が悪化して洗浄が十分に行えなくなる可能性がある。一方で混合比が50g/L未満の場合には、洗浄のために大量の薬液が必要となり、経済性や操作性に問題がある。また、洗浄時間は特に限定されるものではなく、スラリー中のニッケル粉濃度、アスコルビン酸、グルタミン酸およびクエン酸の濃度、洗浄条件により残留塩素濃度が十分に低減される洗浄時間とすればよい。
洗浄に用いる装置は特に限定されるものではなく、通常の湿式反応槽を用いることができる。洗浄中は、ニッケル粉を含むスラリーを撹拌することが好ましく、洗浄には、例えば、超音波撹拌を用いるか機械式攪拌を用いることができる
ニッケル粉を洗浄する工程(D)においては、洗浄液中に不活性ガスを連続して導入することが好ましく、不活性ガスは窒素ガスであることが好ましい。不活性ガスを導入することでニッケル粉の酸化を抑制し比表面積の増加をさらに抑制しながら効率よく塩素濃度を下げることができる。
本発明に係る製造方法においては、不活性雰囲気槽などの特別な設備を設けることなく、上記のような通常に用いられる湿式反応槽を用いることができる。有機酸中でニッケル粉を洗浄すると、保護被膜として機能する表面の緻密な酸化被膜が溶解され、急激に酸化が進む。このため、反応系から酸素除去する必要があるが、アスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸は表面に吸着して保護するとともに還元作用も期待できるため、洗浄液中に不活性ガスを連続して導入するのみでニッケル粉の酸化を抑制することができる。しかしながら、酸素は可能な限り反応系から除去することが好ましいため、洗浄前に上記洗浄液に不活性ガスを導入して酸素を除去しておくことが好ましい。不活性ガスは特に限定されるものではないがコスト面を考慮すると窒素ガスが好ましい。
効率よく水溶液中全体に導入するため、不活性ガスは可能な限り微細な気泡にして導入することが好ましい。バブラーを用いて微細な気泡を発生することが、酸化の抑制と攪拌効率の向上の面で有効である。
上記工程(D)によるニッケル粉の洗浄により残留塩素濃度の低減が可能であるが、残留塩素濃度をより低減させるためには、工程(A)の後に、工程(A)で生成した水酸化ニッケルを濃度0.0004〜0.0015mol/Lの硫酸あるいは硫酸塩水溶液で洗浄した後、さらに水洗する工程(E)を備えることが好ましい。工程(E)は、得られた水酸化ニッケルのゲルを解消しながらの洗浄となるため、水酸化ニッケルに残留する塩素を効率よく低減させることができる。そのため、次工程以降の塩素による負荷を下げることにもなり、得られる効果は大きい。
硫酸あるいは硫酸塩水溶液濃度が0.0004mol/L未満であると洗浄効果が十分に得られず、濃度が0.0015mol/Lを超えると洗浄効果の改善が得られないばかりか、残留する硫黄濃度が高くなりすぎて得られるニッケル粉が電子材料として不適となる可能性があるため、好ましくない。洗浄時の水溶液の温度は常温で可能であるが、洗浄効果を高めるため加熱してもよい。
水酸化ニッケル粉に対する硫酸あるいは硫酸塩水溶液の量は特に限定されるものではなく、残留塩素が十分に低減できる量とすればよいが、水酸化ニッケル粉を良好に分散させるためには、水酸化ニッケル粉/処理液の混合比を100g/L程度とすることが好ましい。また、洗浄時間は特に限定されるものではなく、洗浄条件により残留塩素濃度が十分に低減される洗浄時間とすればよい。
洗浄に用いる装置は特に限定されるものではなく、工程(D)においてニッケル粉の洗浄と同様の装置を用いることができる。
工程(E)における洗浄は、あらかじめ硫酸あるいは硫酸塩濃度を調整した水溶液を準備し、これに撹拌しながら乾燥した水酸化ニッケルの粉末を加えることで行えるが、含水したままのケーキ状のものを使用する方が、均一な処理を行いやすく洗浄の効率が良くなるばかりか、工程の短縮にもなるために好ましい。ケーキ状の水酸化ニッケルを洗浄する場合には、水酸化ニッケルのろ過ケーキに少量の水を加えてスラリー状にした後、添加後に所定の濃度となるように調整した硫酸あるいは硫酸塩水溶液を攪拌しながら一度に添加することが、均一な処理のために好ましい。
水酸化ニッケルケーキの水分含有率については、10〜40質量%であることが好ましく、30質量%程度にすることがさらに好ましい。水分含有率が10質量%よりも低い場合、均一に水溶液中に分散しにくく洗浄の効率が悪くなることや、水分含有率を下げるためにより厳しい脱水処理が必要となるなどの制約があり好ましくない。一方で、水分含有率が40質量%よりも高い場合、水酸化ニッケルのハンドリング性が悪く、均一な処理を妨げる場合がある。また、一定量の水酸化ニッケルを得るために必要な処理量が増加してしまう。
以上の方法により製造されたニッケル粉は、残留塩素濃度が低く、電子部品用の材料としても好適である。残留塩素濃度は150質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以下であることがより好ましい。また、湿式法により製造した水酸化ニッケルを還元処理するため、複雑な工程を備えておらず、その製造コストも低く抑えることができる。
[実施例]
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、本実施例および比較例で用いている塩素濃度の評価は、ニッケル粉を硝酸で溶解した後に硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を蛍光X線定量分析装置(PANalytical社製Magix)にて検量線法で評価することで行った。
還元時の融着抑制剤となるマグネシウムを0.04g/L含んだニッケル濃度60g/Lの塩化ニッケル水溶液と、24質量%の水酸化ナトリウム水溶液をpH=8.3となるように調整しながら連続的に添加することで水酸化ニッケルの沈殿を生成させた。その後、ろ過と30分の純水レパルプを3回繰り返して水分含有率30質量%の水酸化ニッケルろ過ケーキを得た。さらに、このろ過ケーキを送風乾燥機により大気中160℃で48時間乾燥して、水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末20gを、雰囲気焼成炉により3.4L/minの流量で、空気を導入しながら400℃で6時間熱処理して酸化ニッケルを得た。さらに、得られた酸化ニッケル8gを雰囲気焼成炉により2L/minの流量で窒素85%−水素15%の混合ガスを導入しながら、400℃で2時間還元処理してニッケル粉を得た。
得られたニッケル粉3gを窒素ガスの導入により溶存酸素を除去した10g/Lのクエン酸水溶液30mL中に分散させ、60℃で30分間攪拌洗浄した。洗浄後のニッケル粉は、吸引ろ過後に再度純水でレパルプ洗浄し、ろ過後、80℃で真空乾燥してニッケル粉末を得た。得られたニッケル粉の残留塩素濃度は、110質量ppmであった。
実施例1で得た水分含有率30質量%の水酸化ニッケルろ過ケーキに少量の水を加えた後、水酸化ニッケル100gに対して、先に加えた水との合計で0.0005mol/Lの硫酸1Lとなるように濃度調整した硫酸を加え、30分間攪拌して洗浄した。洗浄後にろ過し、再度、純水でレパルプ洗浄し、乾燥して水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末20gを、雰囲気焼成炉により3.4L/minの流量で空気を導入しながら、400℃で6時間熱処理して酸化ニッケルを得た。さらに、得られた酸化ニッケル8gを雰囲気焼成炉により2L/minの流量で窒素85%−水素15%の混合ガスを導入しながら、400℃で2時間還元処理してニッケル粉を得た。
得られたニッケル粉5gを窒素ガスの導入により溶存酸素を除去した5g/Lのアスコルビン酸水溶液50mL中に分散させ、80℃で30分間攪拌洗浄した。洗浄後のニッケル粉は、吸引ろ過後に再度純水でレパルプ洗浄し、ろ過後、80℃で真空乾燥しニッケル粉末を得た。得られたニッケル粉の塩素濃度は70質量ppmであった。
水酸化ニッケルの洗浄に0.0010mol/Lの硫酸ナトリウム水溶液を用いた以外は、実施例2と同様にしてニッケル粉を得た。
得られたニッケル粉5gを窒素ガスの導入により溶存酸素を除去した10g/Lのグルタミン酸水溶液50mL中に分散し、60℃で30分間攪拌洗浄した。洗浄後のニッケル粉は、吸引ろ過後に再度純水でレパルプ洗浄し、ろ過後80℃で真空乾燥しニッケル粉末を得た。得られたニッケル粉の塩素濃度は、30質量ppmであった。
(比較例1)
還元後に洗浄を行わなかった以外は実施例1と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の残留塩素濃度は、1200質量ppmであった。
(比較例2)
還元後に洗浄を行わなかった以外は実施例2と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の残留塩素濃度は、990質量ppmであった。
(比較例3)
還元後に洗浄を行わなかった以外は実施例3と同様にしてニッケル粉を得た。得られたニッケル粉の塩素濃度は、570質量ppmであった。
表1に実施例1〜3および比較例1〜3によって得られたニッケル粉の洗浄条件と残留塩素濃度をまとめて示す。
Figure 0005125411
本発明に従ってニッケル粉の洗浄を行った実施例1は、残留塩素濃度が110質量ppmと低減されているのに対して、ニッケル粉の洗浄を行わなかった比較例1は、残留塩素濃度が1200質量ppmと非常に高く、残留塩素濃度が低減されていないことがわかる。
また、水酸化ニッケルの洗浄とニッケル粉の洗浄を本発明に従って行った実施例2および3は、残留塩素濃度が実施例1よりさらに低減されていることがわかる。一方、水酸化ニッケルの洗浄のみを行った比較例2および3は、残留塩素濃度が低減されていないことがわかる。
ニッケル粉の洗浄液を濃度10g/Lのクエン酸水溶液としたこと、洗浄液の温度を60℃としたこと以外は実施例2と同様にしてニッケル粉を得た。なお、洗浄後のニッケル粉は、吸引ろ過後、余分な洗浄液を除去するために純水50mLで30分間レパルプ洗浄を行った。
得られたニッケル粉の残留塩素濃度は30質量ppmであり、比表面積は4.79m/gであった。この時の比表面積の増加量は0.42m/gであり、比表面積の増加率は9.6%であった。表2に洗浄条件、残留塩素濃度、比表面積変化をまとめて示す。
ニッケル粉の洗浄液を濃度10g/Lのグルタミン酸水溶液とした以外は実施例4と同様にしてニッケル粉を得た。
得られたニッケル粉の残留塩素濃度は、30質量ppmであり、比表面積は4.70m/gであった。この時の比表面積の増加量は0.33m /gであり、比表面積の増加率は7.6%であった。表2に洗浄条件、残留塩素濃度、比表面積変化をまとめて示す。
洗浄時にバブラー用いて窒素ガスを導入したこと以外は実施例4と同様にしてニッケル乾燥粉を得た。
得られたニッケル粉の残留塩素濃度は20質量ppmであり、比表面積は4.79m/gであった。この時の比表面積の増加量は0.36m /gであり、比表面積の増加率は8.1%であった。表2に洗浄条件、残留塩素濃度、比表面積変化をまとめて示す。
洗浄時にバブラー用いて窒素ガスを導入したこと以外は実施例5と同様にしてニッケル乾燥粉を得た。
得られたニッケル乾燥粉の残留塩素濃度は30質量ppmであり、比表面積は4.63m/gであった。この時の比表面積の増加量は0.20m/gであり、比表面積増加率は4.5%であった。表2に洗浄条件、残留塩素濃度、比表面積変化をまとめて示す。
洗浄に用いるニッケル粉を45gとしたこと、洗浄液の量を500mlとしたこと以外は実施例6と同様にしてニッケル粉を得た。
得られたニッケル粉の残留塩素濃度は40質量ppmであり、比表面積は4.43m/gであった。この時の比表面積の増加量は0.16m/gであり、比表面積の増加率は3.7%であった。表2に洗浄条件、残留塩素濃度、比表面積変化をまとめて示す。
洗浄温度を室温(23℃)とした以外は実施例4と同様にしてニッケル粉を得た。
得られたニッケル粉の残留塩素濃度は150質量ppmであり、比表面積は4.85m /gであった。この時の比表面積の増加量は0.42m /g、比表面積増加率は9.5%であった。表2に洗浄条件、残留塩素濃度、比表面積変化をまとめて示す。
(比較例4)
洗浄液を濃度5g/Lのアンモニア水溶液とした以外は実施例4と同様にしてニッケル粉を得た。
得られたニッケル粉の残留塩素濃度は50質量ppm、比表面積は6.13m/gであった。この時の比表面積の増加量は1.70m/gであり、比表面積の増加率は38%であった。表2に洗浄条件、残留塩素濃度、比表面積変化をまとめて示す。
Figure 0005125411
本発明に従って水酸化ニッケルの洗浄とニッケル粉の洗浄を行った実施例4〜9は、残留塩素濃度が大幅に低減されているとともに比表面積の増加が抑制されていることがわかる。また、洗浄時に不活性ガスを導入した実施例6および8は、不活性ガスを導入しなかった実施例4と比較すると比表面積の増加がさらに抑制されていることがわかる。同様に不活性ガスを導入した実施例7は、不活性ガスを導入しなかった実施例5と比較すると比表面積の増加がさらに抑制されていることがわかる。一方、洗浄液としてアンモニア水溶液を用いた比較例4は、残留塩素濃度は低減されているが、比表面積の増加が著しいことがわかる。
本発明のニッケル粉の製造方法により、残留塩素濃度が低減されたニッケル粉が得られる。得られるニッケル粉は、電子部品材料として好適であり、特に配線材料、電極材料等として好適であり、ペーストとしても安定して用いることができる。

Claims (8)

  1. 塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程(A)と、該水酸化ニッケルを空気中で熱処理して酸化ニッケルを生成させる工程(B)と、該酸化ニッケルを還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程(C)と、還元後のニッケル粉を洗浄する工程(D)を備えたニッケル粉の製造方法であって、前記洗浄する工程(D)において、アスコルビン酸、グルタミン酸、クエン酸から選ばれる1種ないし2種以上を5〜50g/L含む水溶液を用いることを特徴とするニッケル粉の製造方法。
  2. 前記水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程(A)の後に、工程(A)で生成した水酸化ニッケルを濃度0.0004〜0.0015mol/Lの硫酸あるいは硫酸塩水溶液で洗浄し、さらに水洗する工程(E)を備えていることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
  3. 前記工程(E)において、水酸化ニッケルの沈殿を生成させる工程(A)で生成した水酸化ニッケルをろ過分離したままの状態で硫酸あるいは硫酸塩水溶液中に再分散させて洗浄することを特徴とする請求項2に記載のニッケル粉の製造方法。
  4. 前記洗浄する工程(D)において、洗浄液を30〜90℃に加熱することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
  5. 前記洗浄する工程(D)において、洗浄液中に不活性ガスを連続して導入することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
  6. 前記不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする請求項5に記載のニッケル粉の製造方法。
  7. 前記酸化ニッケルを還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程(C)において、還元ガスが含水素ガスであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
  8. 前記酸化ニッケルを還元ガス雰囲気中で還元してニッケル粉とする工程(C)において、還元を300〜450℃で行なうことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
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