JP5790292B2 - 酸化ニッケル粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化ニッケル粉末とその製造方法に関し、更に詳しくは、不純物含有量、特に硫黄、塩素、アルカリ金属の含有量が少なく且つ微細であって、電子部品材料として好適な酸化ニッケル粉末及びその製造方法に関する。
一般に、酸化ニッケル粉末は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等のニッケル塩類又はニッケルメタル粉を、ロータリーキルン等の転動炉、プッシャー炉等の連続炉、あるいはバーナー炉等のバッチ炉を用いて、酸化性雰囲気下で焼成することによって製造される。これらの酸化ニッケル粉末は多様な用途に用いられており、例えば電子部品材料としての用途では、酸化鉄、酸化亜鉛等の他の材料と混合した後、焼結することにより製造されるフェライト部品等として広く用いられている。
上記フェライト部品のように、複数の材料を混合して焼成することにより、これらを反応させて複合金属酸化物を製造する場合には、生成反応は固相の拡散反応で律速されるので、一般に原料として微細なものが用いられる。これにより、他材料との接触確率が高くなると共に粒子の活性が高くなるため、低温度且つ短時間の処理で反応が均一に進むことが知られている。従って、このような複合金属酸化物を製造する方法においては、原料の粒径を小さくすることが効率向上の重要な要素となる。
尚、粉体が微細であることを測る指標としては、粒径以外に比表面積も用いられている。粒径と比表面積には、粒径=6/(密度×比表面積)の計算式で表される関係があり、比表面積が大きいほど粒径が小さくなることが分かる。ただし、上記計算式で表される関係は粒子が真球状であると仮定して導き出されたものであるため、計算式から得られる粒径と実際の粒径との間にはいくらかの誤差を含むことになる。
また、近年においては、フェライト部品の高機能化、並びに酸化ニッケル粉末のフェライト部品以外の電子部品等への用途の広がりに伴い、酸化ニッケル粉末に含有される不純物元素の低減が求められている。これら不純物元素の中でも、特に硫黄、塩素及びアルカリ金属は、電極に利用されている銀、ニッケル、銅と反応して電極劣化を生じさせたり、焼成炉を腐食させたりすることから、できるだけ低減することが望ましい。
上記酸化ニッケル粉末の製造方法としては、原料として硫酸ニッケルを用い、これを焙焼する方法が知られている。例えば、特開2001−032002号公報(特許文献1)には、硫酸ニッケルを原料とし、キルンなどを用いて酸化雰囲気中にて焙焼温度を950〜1000℃とする第1段焙焼と、焙焼温度を1000〜1200℃とする第2段焙焼とを行う方法が記載されている。この製造方法によれば、平均粒径が制御され、且つ硫黄品位が50質量ppm以下である酸化ニッケル微粉末が得られるとしている。
また、特開2004−123488号公報(特許文献2)には、450〜600℃での仮焼による脱水工程と、1000〜1200℃での焙焼による硫酸ニッケルの分解工程とを明確に分離した酸化ニッケル粉末の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、硫黄品位が低く且つ平均粒径が小さい酸化ニッケル粉末を安定して製造できるとしている。
更に、特開2004−189530号公報(特許文献3)には、横型回転式製造炉を用いて、強制的に空気を導入しながら、最高温度を900〜1250℃として硫酸ニッケルを焙焼する酸化ニッケル粉末の製造方法が提案されている。この製造方法によっても、不純物が少なく、硫黄品位が500質量ppm以下の酸化ニッケル粉末が得られるとしている。
しかしながら、上記特許文献1〜3のいずれの方法においても、硫黄含有量を低減するために焙焼温度を高くすると酸化ニッケル粉末の粒径が粗大になり、また粒子を微細にするために焙焼温度を下げると硫黄含有量が多くなるという欠点があり、酸化ニッケル粉末の粒径と硫黄含有量を同時に最適値に制御することは困難であった。また、原料として硫酸ニッケルを用いるため、加熱する際に大量のSOxを含む有害ガスが発生し、これを除害処理するために高価な設備が必要になるという問題を有していた。
上記SOxを含む有害ガス発生の対策として、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等のニッケル塩を含む水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリで中和して水酸化ニッケルを晶析させ、これを焙焼して酸化ニッケルを合成する方法も考えられる。この水酸化ニッケルを焙焼する方法では、SOxを含む有害ガスの発生がないため、低コストでの製造が可能であると考えられる。
例えば、特開2005−002395号公報(特許文献4)には、ニッケル粉を製造する際の中間物ではあるが、水酸化ニッケルを酸化性雰囲気下で加熱処理することによって、酸化ニッケル微粉末が得られることが開示されている。しかしながら、このような水酸化ニッケルにおいては、中和用のアルカリから混入するアルカリ金属、例えばナトリウムやカリウムが、一般的に100質量ppm以上含有されている。また、ここでの酸化ニッケルは中間物であるため粒径等については何等考慮されておらず、微細な酸化ニッケル微粉末が得られたとする報告はなされていない。
また、特開2009−196870号公報(特許文献5)には、マグネシウムを含む塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和し、得られた水酸化ニッケルを洗浄した後、450〜650℃の温度で焙焼して酸化ニッケルとし、有機酸の水溶液で洗浄するか、洗浄と解砕を同時に行うことにより塩素を除去する酸化ニッケルの製造方法が開示されている。
この方法で得られる酸化ニッケル粉末は、塩素品位が300質量ppm以下で且つ比表面積が6〜12m/gであるとされているが、粗大化抑制を意図して添加したマグネシウムが酸化ニッケル粉末に混入するという問題点があった。そのため、この方法で得られた酸化ニッケル粉末は、フェライト等の原料として用いたとき十分な焼結性が得られない場合があり、必ずしも電子部品材料として好適なものとは言えなかった。
特開2001−32002号公報 特開2004−123488号公報 特開2004−189530号公報 特開2005−002395号公報 特開2009−196870号公報
本発明は、上記上記した従来技術の問題点に鑑み、不純物含有量、特に塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量が少なく、粒径が微細で、電子部品材料として好適な酸化ニッケル粉末及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため、ニッケル塩水溶液を中和して得た水酸化ニッケルを焙焼して得られる酸化ニッケル粉末の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、水にオキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルを溶解したニッケル塩混合水溶液を中和して水酸化ニッケルを晶析させて得られた水酸化ニッケルを熱処理することによって、塩素、硫黄及びアルカリ金属の含有量が少なく、且つ微細な酸化ニッケル粉末を製造できることを見出した。さらに、熱処理の前に、得られた水酸化ニッケルを特定条件で洗浄することで塩素含有量を更に低減できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法は、炭酸ニッケル及び硝酸ニッケルから選択される少なくとも1種のオキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを洗浄する洗浄工程と、洗浄した水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において700〜950℃の温度で熱処理することより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備えることを特徴とする。
上記製造方法においては、洗浄工程において、30℃未満の温度で洗浄した後、30℃以上の温度で洗浄することが好ましく、前記30℃未満の温度での洗浄と30℃以上の温度での洗浄を、それぞれ少なくとも2回行うことが好ましい。
また、前記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液中の全ニッケル塩の量に対するオキソ酸ニッケル塩の量の割合が10〜60質量%であることが好ましく、前記ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度が50〜130g/lであることが好ましい。
さらに、上記製造方法においては、晶析工程で用いるアルカリが、水酸化ナトリウム及び/または水酸化カリウムであることが好ましい。
本発明によれば、不純物含有量、特に塩素及びアルカリ金属の含有量が少なく、しかもレーザー散乱法で測定したD90が1μm以下と、従来の方法によって得られるものに比べて微細な酸化ニッケル粉末を提供することができる。従って、本発明の酸化ニッケル粉末はフェライト部品などの電子部品材料として好適であり、その製造方法は容易で且つ工業的に安定して大量生産が可能であるため、その工業的価値は極めて大きい。
本発明の酸化ニッケル組成物の製造方法は、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、燐酸ニッケルから選択される少なくとも1種のオキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを洗浄する洗浄工程と、洗浄した水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において700〜950℃の温度で熱処理することより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備えている。
上記酸化ニッケル粉末の製造方法においては、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、燐酸ニッケルから選択される少なくとも1種のオキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液を用いることが特に重要である。
即ち、上記晶析工程においては、上記オキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液を用いることによって、アルカリで中和して得られた水酸化ニッケル中に残留イオンとして微量の上記オキソ酸ニッケル塩を形成するオキソ酸型の陰イオンと塩素イオン及びアルカリ金属イオンが含有され、これらが後の熱処理工程において生成した酸化ニッケル粒子の焼結による結晶成長方向を制御し、微細で高比表面積の酸化ニッケル粉末を得ることができる。
上記残留イオンの中でも上記オキソ酸型の陰イオンが重要と推察される。詳細な理由は不明であるが、アルカリによる加水分解・中和反応の際に、オキソ酸型陰イオンの水酸化ニッケル(錯体)への配位がcis構造体として結合し、熱処理工程において酸化ニッケルのC軸方向の結晶粗大粒化を阻害することで、結晶成長を制御していると考えられる。このような熱処理における酸化ニッケル粒子の粗大化の抑制により、結果として微細化された電子材料に好適な酸化ニッケル粉末を他の特性を損なうことなく得ることができる。
一方、塩化ニッケルから晶析した水酸化ニッケルは、熱処理工程において比較的低温から微細で低塩素の酸化ニッケルを生成しやすいため、塩化ニッケルを含むニッケル塩混合水溶液を用いる利点がある。その理由は明確ではないが、残留する塩素イオンが脱離・ガス化しやすいこと、アルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合に中和により易水溶性のNaClを作るため、水酸化ニッケル中に焼結を阻害するNa化合物が残留し難いことなどが考えられる。
このように、晶析工程において上記オキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルからなるニッケル塩混合水溶液を用いることによって、熱処理時における酸化ニッケル粒子の粗大化の抑制することができると同時に、得られる水酸化ニッケル中の不純物含有量の低減を図ることができる。
上記ニッケル塩混合水溶液に含有される上記オキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルの混合割合は、特に制限されるものではないが、全ニッケル塩の量に対するオキソ酸ニッケル塩との量の割合が10〜60質量%となるように混合することが好ましい。上記オキソ酸ニッケル塩の量の割合が10質量%未満であると、上記粒子粗大化の抑制効果が十分に得られないことがある。一方、60質量%を超えると、アルカリでの中和において難溶性のオキソ酸塩の生成量が増加して、洗浄工程での除去が十分にできず、最終的に得られる酸化ニッケル粉末中に残留するオキソ酸を構成する元素である炭素、窒素、リンなどの含有量が多くなり過ぎる虞れがある。
以下、本発明による酸化ニッケル粉末の製造方法を工程毎に詳細に説明する。まず、晶析工程は、上記オキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルとを混合したニッケル塩混合水溶液をアルカリによってpHを8.3〜9.0に中和して、水酸化ニッケルを得る工程である。上記オキソ酸ニッケル塩としては炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、燐酸ニッケルから選択される少なくとも1種を用いるが、水に対する溶解度が十分にあれば、オキソ酸型の陰イオンを有する他のニッケル塩を用いることもできる。
中和に用いるアルカリとしては、特に限定されるものではないが、反応液中に残留するニッケルの量を考慮すると、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、コストを考慮すると水酸化ナトリウムが特に好ましい。また、アルカリは固体又は液体のいずれの状態でニッケル塩混合水溶液に添加してもよいが、取扱いの容易さから水溶液として添加することが好ましい。均一な特性の水酸化ニッケルを得るためには、十分に撹拌されている反応槽内にニッケル塩混合水溶液とアルカリ水溶液をダブルジェット方式で添加することが有効である。その際、反応槽内に予め入れておく液は純水にアルカリを添加した液とし、所定のpHに調整しておくことが好ましい。
アルカリでの中和反応では、pHを8.3〜9.0の範囲内で一定とすることが必要である。pHが8.3未満では、水酸化ニッケル中に残存する塩素やオキソ酸といった陰イオン成分が増大し、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末中の塩素及びオキソ酸由来の元素の含有量を十分に低減させることが困難になる。また、pHが9.0を超えて高くなると、得られる水酸化ニッケルが微細になりすぎるため、不純物の巻き込みが増加すると共に濾過が困難になる。また、後工程である熱処理工程で焼結が進みすぎ、微細な酸化ニッケルを得ることが困難になる。
また、上記中和反応時のpHは、変動幅が8.3〜9.0の範囲内の設定値から±0.2以内となるように制御することが好ましい。pHの変動幅がこれより大きくなると、不純物の増大や酸化ニッケル粉末の粒径が大きくなり、低比表面積化を招く恐れがある。尚、上記中和条件であるpH8.3より低いpHでは水溶液中に僅かにニッケル成分が残存することがあるが、この場合には中和晶析後にpHを10程度まで上げ、濾液中のニッケルを低減させることが好ましい。
また、上記ニッケル塩混合水溶液において、ニッケル塩の合計濃度は、特に限定されないが、ニッケル濃度として50〜130g/lの範囲が好ましい。ニッケル濃度が50g/l未満では晶析工程での生産性が悪くなり、130g/lを超えると水溶液中の陰イオン濃度が高くなり、生成した水酸化ニッケル中の塩素や硫黄の含有量が多くなるため、最終的に得られる酸化ニッケル粉末中の塩素の含有量を十分に低減できない場合がある。
中和反応時の液温は、通常の条件で特に問題なく、室温で行うことも可能であるが、水酸化ニッケル粒子を十分に成長させるためには50〜70℃の範囲とすることが好ましい。水酸化ニッケル粒子を十分に成長させることで、水酸化ニッケル中への塩素びナトリウムなどの不純物の巻き込みを抑制し、最終的に酸化ニッケル粉末中の不純物を低減させることができる。液温が50℃未満では、水酸化ニッケル粒子の成長が十分ではなく、また水酸化ニッケル中への不純物の巻き込みが多くなりやすい。また、液温が70℃を超えると、水の蒸発が激しくなり、水溶液中の不純物濃度が高くなるため、生成した水酸化ニッケル中の不純物含有量が多くなることがある。
洗浄工程は、上記晶析工程で回収した水酸化ニッケルを洗浄液により洗浄する工程である。洗浄に用いる洗浄液としては、不純物の混入を避けるため、水を用いることが好ましく、純水を用いることがより好ましい。一方、塩素低減効果の大きく残留ナトリウムも少ない0.01〜0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液を用いてもよいが、この場合には、ナトリウムを十分に除去するために、純水などで更に洗浄することが好ましい。
洗浄回数は、特に限定されるものではないが、不純物が低減されない場合は複数回の繰り返し洗浄を行なうことが好ましい。
水酸化ニッケルに対する洗浄液の量は、特に限定されるものではなく、不純物が十分に低減できる量とすればよいが、水酸化ニッケルを良好に分散させるためには、水酸化ニッケル/洗浄液の混合比を80〜150g/lとすることが好ましく、90〜110g/lとすることが更に好ましい。また、処理時間についても特に限定されるものではなく、処理条件により残留する不純物の濃度が十分に低減される洗浄条件(洗浄時間、水酸化物濃度の組み合わせ)とすればよい。不純物濃度が十分に低減できる洗浄条件としても、微量に残留するオキソ酸型の陰イオンによる効果で酸化ニッケルの微細化効果が十分に得られる。
さらに、上記洗浄工程において、30℃未満の温度と30℃以上の温度で順に洗浄することにより、酸化ニッケル粉末中に残留する不純物、特に塩素、オキソ酸を構成する元素及びアルカリ金属を大幅に低減させることが可能となる。
具体的には、例えばアルカリとして水酸化ナトリウムを用いた場合、晶析工程において、塩化ニッケル由来のNaClと上記オキソ酸ニッケル塩由来のNaCO、NaNO、NaPOなどのオキソ酸中和塩が混在して生成する。各中和塩の温度の違いによる水への溶解度を比較すると、塩化物であるNaClは温度に影響されず水に易溶性であるのに対して、前記オキソ酸中和塩は室温では溶解し難いが、加温すると溶解度が急激に増加し、40℃前後で大きく増加する。一方、例えばアルカリとして水酸化カリウムを用いた場合もナトリウムとカリウムが入れ替わるのみで、生成される塩の溶解度については同様のことが言える。
上記オキソ酸中和塩の溶解度が、塩化物の溶解度以上となる温度は概ね30℃以上である。本発明の洗浄工程では、このようなオキソ酸中和塩と塩化物の水に対する溶解度の特徴を利用して、例えば、加熱していない30℃未満の純水に水酸化ニッケルを投入し、ミキサー等で撹拌洗浄して濾過することによって、まず塩化物を除去する。次に、30℃以上、好ましくは40〜60℃に加熱した純水に水酸化ニッケルを投入し、撹拌洗浄することでオキソ酸中和塩を除去することができる。
上記洗浄の方法は、特に限定されるものではなく、洗浄液に水酸化ニッケルを投入してミキサー等で撹拌するレパルプ洗浄し、濾過する以外に、濾過物に洗浄液を通過させて塩を溶解除去するフィルタープレス洗浄濾過も有効である。洗浄に用いる装置としては、通常の湿式反応槽やフィルタープレスなどがある。また、洗浄液を30℃以上に加熱して洗浄する場合、加温可能な通常の湿式反応槽を用いることができる。湿式反応槽を用いた洗浄においては、洗浄中は水酸化ニッケルを含むスラリーを撹拌することが好ましく、例えば超音波撹拌や機械式撹拌を用いることができる。
上記30℃未満の温度での洗浄及び30℃以上の温度での洗浄は、1回の洗浄のみでは不純物除去効果が十分に得られないことがあるため、それぞれ少なくとも2回行うことが好ましい。
洗浄後の水酸化ニッケルは濾過して回収するが、濾過ケーキの含水率は10〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%とすることが更に好ましい。含水率が10質量%未満であると、更に洗浄する場合に濾過ケーキが均一に洗浄液中に分散しにくいため洗浄処理の効率が悪くなることや、濾過ケーキの含水率を下げるため厳しい脱水処理が必要となるなどの制約があり好ましくない。含水率が40質量%よりも高い場合には、水酸化ニッケルのハンドリング性が悪く、均一な処理を妨げる場合があるうえ、一定量の水酸化ニッケルを得るために必要な処理量が増加してしまうなどの不都合がある。
熱処理工程は、洗浄後の水酸化ニッケルを熱処理して、酸化ニッケルとする工程である。この熱処理により水酸化ニッケル結晶内の水酸基が脱離して酸化ニッケルの粒子が形成されるが、その際の熱処理温度を適切に設定することによって、粒径の微細化と硫黄含有量の制御が可能であると共に、洗処理後に残存した塩素の多くの部分を揮発させることができる。
この水酸化ニッケルの熱処理は、非還元性雰囲気中において700〜950℃の温度で行うが、この熱処理温度は850〜900℃の範囲が好ましく、800〜900℃の範囲が更に好ましい。熱処理温度が700℃未満では、残存塩素の揮発が不十分であり、酸化ニッケル中の塩素及の含有量を十分に低減させることができない。また、水酸化ニッケルの一次粒子は板状であり、酸化ニッケルの生成に伴い一次粒子が球状化するが、この球状化が700℃未満では進まず、酸化ニッケルの微細化も十分に起こらない。一方、950℃を超えると、酸化ニッケル粒子同士の焼結が顕著になり、比表面積が小さくなったり、機械的な解砕が必要になったりする。更に焼結が進行すると、機械的解砕でも必要な比表面積を得ることが困難になる。
熱処理時間は、処理温度及び処理量に応じて適宜設定することができるが、最終的に得られる酸化ニッケル粉末の比表面積が5.5m/g以上となるように設定すればよい。熱処理工程後に酸化ニッケルを解砕した場合、得られる酸化ニッケル粉末の比表面積は、熱処理後の酸化ニッケルの比表面積に対して0.5m/g程度増加する程度であるため、熱処理後の酸化ニッケル粉末の比表面積で判断して、解砕の要否及び条件を設定することができる。熱処理の雰囲気は非還元性雰囲気であれば特に限定されないが、経済性を考慮して大気雰囲気とすることが好ましい。また、熱処理の際に水酸基の脱離により発生する水蒸気を排出するため、十分な流速を持った気流中で行うことが好ましい。尚、熱処理には、一般的な焙焼炉を使用することができる。
上記熱処理工程の後に、得られた酸化ニッケル粉末を機械的に解砕する工程を追加することもできる。解砕により増加する比表面積は上述のとおり0.5m/g程度と小さいが、解砕により凝集をほぐすことで、フェライト材料などの電子材料として一層好適な材料とすることが期待できる。また、熱処理工程で水酸化ニッケル結晶中の水酸基が離脱して酸化ニッケルとなる際に、オキソ酸型の陰イオンとニッケル錯体はcis型に結合することで粒径の微細化を促進すると推定されるが、不純物除去のために高温で熱処理した場合、酸化ニッケル粒子同士の焼結が進行することがある。このような場合には、解砕によって焼結部を破壊して酸化ニッケル粒子を微細化し、酸化ニッケル粉末の比表面積を十分に高めることが可能である。
酸化ニッケル粉末の解砕方法としては、乳鉢等による機械式解砕、特に工業的規模においてはビーズミルやボールミル等の解砕メディアを用いたものや、ジェットミル等の解砕メディアを用いないものが一般的な方法を用いることができるが、ジルコニア等の解砕メディアを構成している成分が不純物として混入することを防止するため、解砕メディアを用いることなく解砕を行うことが好ましい。
不純物としてジルコニウムのみを考慮すれば良いのであれば、ジルコニア等のジルコニウムを含有しない解砕メディアを用いて解砕することで対処することができるが、この場合であっても解砕メディアから他の不純物が混入し、結果的に低不純物含有量の酸化ニッケル粉末が得られない。また、ジルコニウムを含有しない解砕メディア、例えば、イットリア安定化ジルコニアを含有しない解砕メディアでは強度や耐摩耗性で十分でなく、この観点からも解砕メディアを用いることなく解砕を行う方法が好ましい。
解砕メディアを用いることなく解砕する方法としては、粉体同士を衝突させる方法や、液体などの媒体により粉体にせん断力をかける方法等がある。前者を用いた解砕装置としては、例えば、ジェットミル、アルティマイザー(登録商標)等が挙げられる。また、後者を用いた解砕装置としては、例えば、ナノマイザー(登録商標)等が挙げられる。これらの解砕方法のうち、不純物混入の恐れが少なく且つ比較的大きな解砕力が得られることから、粉体同士を衝突させる方法が特に好ましい。また、解砕条件には特に限定がなく、通常の条件の範囲内での調整により容易に目的とする粒度分布の酸化ニッケル粉末を得ることができる。
本発明による酸化ニッケル粉末の製造方法においては、湿式法により製造した水酸化ニッケルを熱処理するため、硫黄を含有せず有害なSOxがほとんど発生せず、これを除害処理するための高価な設備も不要であることから、その製造コストも低く抑えることができる。
以上の方法により製造される本発明の酸化ニッケル粉末は、不純物含有量、特に塩素の含有量が少なく、比表面積も大きいので、フェライト部品などの電子部品用の材料として好適な酸化ニッケル粉末である。具体的には、比表面積が5.5m/g以上であり、塩素の含有量がいずれも100質量ppm以下、より好ましくは塩素及びアルカリ金属の含有量がいずれも50質量ppm以下である酸化ニッケル粉末である。尚、比表面積の上限は8m/g程度である。
また、上記酸化ニッケル粉末は、オキソ酸から残留する炭素、窒素及びリンの少なくとも1種の含有量が10〜50質量ppmであり、得られた酸化ニッケル粉末の分析により確認されている。これらは微量であるとともに電子部品用としても有害性を示さないことから、上記酸化ニッケル粉末は、電子部品用の材料として好適である。
一方、本発明の酸化ニッケル粉末は、その製造方法において硫酸ニッケルなどの硫黄を含む原料を用いず、マグネシウム等の第2族元素を添加する工程を含まないので、これらの元素が不純物として含まれることは実質的にありえない。更に解砕メディアを使用せずに解砕する場合は、ジルコニアなどの解砕メディアの構成成分も含まれなくなるので、硫黄、ジルコニア及び第2族元素のそれぞれの含有量を20質量ppm以下にすることができる。
さらに、本発明の酸化ニッケル粉末は、レーザー散乱法で測定したD90(粒度分布曲線における粒子量の体積積算90%での粒径)が1μm以下であることが好ましい。尚、レーザー散乱法で測定したD90は電子部品等の製造時に他の材料と混合されるときに酸化ニッケル粉末が解砕されて小さくなるが、この解砕によって比表面積が大きくなる可能性は低いため、酸化ニッケル粉末自体の比表面積が大きいことがより重要である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例における塩素含有量の分析は、塩素の揮発を抑制できる密閉容器内にて酸化ニッケル粉末をマイクロ波照射下で硝酸に溶解し、硝酸銀を加えて塩化銀を沈殿させ、沈殿物中の塩素を蛍光X線定量分析装置(PANalytical社製、Magix)を用いて検量線法で評価することによって行った。アルカリ金属濃度の分析は、同じく硝酸に溶解した後、蛍光X線定量分析装置を用いて検量線法で評価した。
酸化ニッケル粒子の粒径はレーザー散乱法により測定し、その粒度分布から体積積算90%での粒径D90を求めた。また、比表面積の分析は、窒素ガス吸着によるBET法により求めた。
[実施例1]
3リットルのビーカー内に、純水に水酸化ナトリウムを溶解してpH8.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液500mlを準備した。この水溶液に、塩化ニッケルと硝酸ニッケルを混合比1:1(硝酸ニッケル50質量%)で混合して水に溶解したニッケル塩混合水溶液(ニッケル濃度120g/l)と、12.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、pH8.5にて変動幅±0.2以内となるように調整しながら連続的に添加混合して、水酸化ニッケルの沈殿を生成させた(晶析工程)。
その際、ニッケル塩混合水溶液は6ml/分の速度で添加した。また、液温は60℃とし、混合は撹拌羽を200rpmで回転させて行った。1リットルのニッケル塩混合水溶液を添加した後、3時間撹拌を続けながら熟成させた。
その後、水酸化ニッケルの沈殿を濾過し、得られた水酸化ニッケルを20℃の純水に100g/lとなるように混合して30分間撹拌する純水レパルプ洗浄を4回繰り返して、水酸化ニッケル濾過ケーキを得た(洗浄工程)。
この濾過ケーキを大気中にて送風乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥し、水酸化ニッケルを得た。得られた水酸化ニッケル10gを大気焼成炉に供給し、800℃で3時間熱処理することにより酸化ニッケルを得た(熱処理工程)。次に、得られた酸化ニッケルを、乳鉢で解砕して酸化ニッケル粉末を得た。
得られた酸化ニッケル粉末は、塩素含有量が60質量ppm、比表面積は5.9m/g、D90は0.7μmであった。
引き続き、以下の実施例2〜7及び比較例1〜6を実施したが、これらについては上記実施例1と異なる条件のみを記載した。また、実施例1〜7及び比較例1〜6について、中和に用いたアルカリの種類、中和時のpH、ニッケル塩の混合比(オキソ酸ニッケル塩濃度及びNi合計濃度)及び熱処理温度、得られた酸化ニッケル粉末の比表面積、塩素含有量及びD90を下記表1に、それぞれまとめて示した。
[実施例2]
上記晶析工程において、硝酸ニッケルに替えて炭酸ニッケルを用いるとともにニッケル塩混合水溶液の混合比を塩化ニッケル70質量%、炭酸ニッケル30質量%とした以外は上記実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例3]
上記晶析工程において、水酸化ナトリウム水溶液に替えて水酸化カリウムを用いて中和した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例4]
上記熱処理工程において、700℃で3時間熱処理した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例5]
上記熱処理工程において、950℃で3時間熱処理した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例6]
上記晶析工程において、pHを9.0に変更した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例7]
上記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度を80g/lに変更した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[比較例1]
上記晶析工程において、オキソ酸ニッケル塩を含まず塩化ニッケルのみからなるニッケル塩水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[比較例2]
上記晶析工程において、硝酸ニッケルと炭酸ニッケルを1:1(各50質量%)で混合し、塩化ニッケルを含まないニッケル塩混合水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[比較例3]
上記熱処理工程において、600℃で3時間熱処理した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[比較例4]
上記熱処理工程において、980℃で3時間熱処理した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[比較例5]
上記晶析工程において、pHを8.0に変更した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。pHが低くなったため、水酸化ニッケルがほとんど晶析せず、収率が大幅に低下した。
[比較例6]
水酸化ニッケルの沈殿を濾過した後、レパルプ洗浄を行わずに乾燥した以外は実施例1と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
上記表1からわかるように、実施例1〜7において、塩素含有量は100質量ppm以下となっている。また比表面積が5.5m/g以上と非常に大きくなっており、D90値も1μm以下の微細な酸化ニッケル粉末が得られている。
一方、比較例1では、オキソ酸ニッケル塩を含まないニッケル塩を用いたため、塩素含有量が大幅に増加している。一方、比較例2では、塩化ニッケルを含まないニッケル塩を用いたため、焼結が進行して比表面積が低下している。
また、比較例3では、熱処理温度が低いため、塩素含有量が多くなり、比較例4では、熱処理温度が高いため、焼結が進行して比表面積が低下している。比較例5では、pHが低いため、水酸化ニッケル中の塩素が増加して、酸化ニッケルの塩素含有量も増加した。さらに、比較例6では、洗浄工程を実施しなかったため、塩素含有量が増加した。
次に、以下の実施例8〜14及び比較例7を実施し、洗浄工程において30℃未満の温度と30℃以上の温度で順に洗浄したときの効果を確認した。実施例9〜14及び比較例7については実施例8と異なる条件のみをそれぞれ記載した。
また、実施例8〜14及び比較例7について、中和に用いたアルカリの種類、中和時のpH、ニッケル塩の混合比(オキソ酸ニッケル塩濃度及びNi合計濃度)、洗浄条件(温度、回数)及び熱処理温度を下記表2に、得られた酸化ニッケル粉末の比表面積、アルカリ金属と塩素の含有量及びD90を下記表3に、それぞれまとめて示した。
[実施例8]
3リットルのビーカー内に、純水に水酸化ナトリウムを溶解してpH8.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液500mlを準備した。この水溶液に、塩化ニッケルと硝酸ニッケルを混合比1:1(硝酸ニッケル50質量%)で混合して水に溶解したニッケル塩混合水溶液(ニッケル濃度100g/l)と、12.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、pH8.5にて変動幅±0.2以内となるように調整しながら連続的に添加混合して、水酸化ニッケルの沈殿を生成させた(晶析工程)。
その際、ニッケル塩混合水溶液は6ml/分の速度で添加した。また、液温は60℃とし、混合は撹拌羽を200rpmで回転させて行った。1リットルのニッケル塩混合水溶液を添加した後、3時間撹拌を続けながら熟成させた。
その後、水酸化ニッケルの沈殿を濾過し、得られた水酸化ニッケルを20℃の純水に100g/lとなるように混合して30分間撹拌する純水レパルプ洗浄を2回繰り返した。さらに、純水の温度を60℃に変更して純水レパルプ洗浄を2回繰り返し、水酸化ニッケル濾過ケーキを得た。
この濾過ケーキを大気中にて送風乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥し、水酸化ニッケルを得た。得られた水酸化ニッケル10gを大気焼成炉に供給し、800℃で3時間熱処理することにより酸化ニッケルを得た(熱処理工程)。次に、得られた酸化ニッケルを、乳鉢で解砕して酸化ニッケル粉末を得た。
[実施例9]
上記晶析工程において、硝酸ニッケルに替えて炭酸ニッケルを用いるとともにニッケル塩混合水溶液の混合比を塩化ニッケル70質量%、炭酸ニッケル30質量%とした以外は上記実施例8と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例10]
上記晶析工程において、水酸化ナトリウム水溶液に替えて水酸化カリウムを用いて中和した以外は実施例8と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例11]
上記洗浄工程において、20℃の純水レパルプを2回繰り返し、その後40℃で純水レパルプを2回繰り返して水酸化ニッケル濾過ケーキを得た以外は実施例8と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例12]
上記洗浄工程において、20℃の純水レパルプを4回繰り返し、その後60℃で純水レパルプを4回繰り返して水酸化ニッケル濾過ケーキを得た以外は実施例8と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例13]
上記晶析工程において、20℃の純水レパルプを4回繰り返して水酸化ニッケル濾過ケーキを得た以外は実施例8と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[実施例14]
上記洗浄工程において、50℃で純水レパルプを4回繰り返して水酸化ニッケル濾過ケーキを得た以外は実施例8と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
[比較例7]
上記晶析工程において、オキソ酸ニッケル塩を含まず塩化ニッケルのみからなるニッケル塩水溶液を用いた以外は実施例8と同様にして、酸化ニッケル粉末を得るとともに分析した。
上記表1からわかるように、実施例8〜12において、塩素およびアルカリ金属の含有量は50質量ppm以下となっている。また比表面積が5.5m/g以上と非常に大きくなっており、D90値も1μm以下の微細な酸化ニッケル粉末が得られている。一方、洗浄工程において30℃未満の温度と30℃以上の温度で順に洗浄しなかった実施例13及び14では、塩素含有量は100質量ppm以下となっているものの、塩素およびアルカリ金属の含有量のいずれかが50質量ppmを超えており、30℃未満の温度と30℃以上の温度で順に洗浄する効果が確認できる。
比較例7は、洗浄工程で30℃未満の温度と30℃以上の温度で順に洗浄しているものの塩素含有量が多く、比表面積も小さくなっており、晶析工程においてオキソ酸ニッケル塩の添加が必要であることが確認される。
本発明の酸化ニッケル粉末は、不純物含有量、特に塩素及びアルカリ金属の含有量が少なく、微細であることからフェライト部品などの電子部品材料として好適である。また、硫黄を含まないことから、固体酸化物形燃料電池の電極用として好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 炭酸ニッケル及び硝酸ニッケルから選択される少なくとも1種のオキソ酸ニッケル塩と塩化ニッケルのニッケル塩混合水溶液をアルカリによりpH8.3〜9.0に中和して水酸化ニッケルを得る晶析工程と、得られた水酸化ニッケルを洗浄する洗浄工程と、洗浄した水酸化ニッケルを非還元性雰囲気中において700〜950℃の温度で熱処理することより酸化ニッケルを得る熱処理工程とを備えることを特徴とする酸化ニッケル粉末の製造方法。
  2. 前記洗浄工程において、30℃未満の温度で洗浄した後、30℃以上の温度で洗浄することを特徴とする請求項1に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  3. 前記30℃未満の温度での洗浄と30℃以上の温度での洗浄を、それぞれ少なくとも2回行うことを特徴とする請求項2に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  4. 前記晶析工程において、ニッケル塩混合水溶液中の全ニッケル塩の量に対するオキソ酸ニッケル塩の量の割合が10〜60質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  5. 前記ニッケル塩混合水溶液のニッケル濃度が50〜130g/lであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
  6. 前記晶析工程で用いるアルカリが、水酸化ナトリウム及び/または水酸化カリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
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