JP2003054915A - 安定な金属酸化物微粒子とその製造方法 - Google Patents

安定な金属酸化物微粒子とその製造方法

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JP2003054915A
JP2003054915A JP2001245398A JP2001245398A JP2003054915A JP 2003054915 A JP2003054915 A JP 2003054915A JP 2001245398 A JP2001245398 A JP 2001245398A JP 2001245398 A JP2001245398 A JP 2001245398A JP 2003054915 A JP2003054915 A JP 2003054915A
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metal oxide
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particle
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Tomoji Sato
智司 佐藤
Ryoji Takahashi
亮治 高橋
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】凝集性がなく、また焼結に際しても異常粒成長
を起こすことのない安定な粒子特性を有する金属酸化物
微粒子とその製造方法を提供する。 【解決手段】金属酸化物微粒子又はその前躯体粒子を、
アルコキシシラン化合物のアルコール溶液に分散、接触
させ、シラン化合物を加水分解することによって金属酸
化物粒子表面にシリカコーテイングする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックス、電
子材料、電気材料、触媒、センサー等各種分野における
材料設計において使用される金属酸化物粒子とその製造
方法に関し、金属酸化物の粒子表面がアルコキシシラン
化合物の加水分解反応によってシリカコーティングさ
れ、これによって粒子特性の改良された、すなわち凝集
性がなく、また焼結に際しても異常粒成長を起こすこと
のない安定な粒子特性を有するように表面が改質されて
なる金属酸化物とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属酸化物の微粒子は、セラミックス材
料、電子材料、電気材料、触媒、センサー等各種分野に
おいて利用されており、欠かすことの出来ない基本的材
料の一つである。これらの分野においては、常に品質・
機能の向上が求められており、そのため、そこに使用す
る材料についても、これまでの基準、限界を超えた、新
しい特性、すぐれた物性を有するものが求められ、開
発、研究されている。
【0003】そのような材料の一つに、最近、NiOやZrO
2注目されている。NiOは、酸化・還元性を持つ機能性触
媒として、またZrO2は、酸性・塩基性を併せ持つ両機能
性触媒性能を有する材料として注目されている。これら
の酸化物微粒子は、一般に沈殿法などで調製されるが、
そのとき得られた粒子の比表面積は概して低く、一般的
には30〜50m2-1程度である。しかもこれを焼成
すると500℃程度から粒成長が生ずる事が観察、報告
されている。
【0004】最近、これらの粒特性について注目すべき
研究報告が発表されている。すなわち、「85th C
ATSJ Meeting Abstracts:N
o.2A06」Vol42、No.2、2000、p.
93〜95、及び「Journal of catal
ysis」vol196、p.190〜194(200
0)には、沈殿法により調製したZrO2の沈殿を還流処理
すると、高比表面積のZrO2が得られたとの報告に端を発
し、その原因につき追求調査をしたところ、その原因と
して、実験で用いた器具の石英及びパイレックス(登録
商標)ガラスから溶出したシリカ成分が被処理金属酸化
物微粒子表面に再析出し、これが粒子特性の一つである
比表面積に影響を与え、粒子の凝集、焼成時の粒成長を
抑制し、比表面積を大きくするのに寄与していることが
挙げられる、旨の知見が得られたとの報告が記載されて
いるされている。
【0005】さらに、「第86回触媒討論会講演要旨
集」p.136(鳥取大学2000年9月21日)『シ
リカの溶解再析出による高表面積SiO2/NiO2触媒の調
製』と題する研究報告にも、沈殿法で調製したNi(OH)2
微粒子について同様の知見が得られた旨の報告が記載さ
れている。すなわち、ガラス容器(石英ガラス管)中で
Ni(OH)2微粒子を水熱処理した結果、該微粒子の表面に
はシリカの析出が認められたこと、このシリカがNiO微
粒子の接触を妨げ、凝集を抑制し、微粒子状態を保つこ
とにより、焼成後の比表面積の減少が抑えられたと考え
られる、との知見が得られたとの報告が記載されてい
る。
【0006】なお、上記報告にある知見は、酸化物微粒
子同士の凝集や、焼成時の粒成長等、粒子特性に関する
ことであるのに対して、磁性特性を有する粒子の表面保
護をねらいとするものであることから、上記報告とは全
くねらいとするところが異なるものではあるが、「Jo
urnal of colloid and inte
rface science 」vol.160、p.
288〜292(1993)、同vol.150、N
o.2、p.594〜599(1992)には、概要と
するところ、テトラエトキシシランを用いてヘマタイト
などの酸化鉄の微粒子をシリカ層でコーティングし、水
素雰囲気中で還元する実験を行ったこと、その結果、芯
(酸化物)は還元され、高い磁気特性を持った粒子が生
成したこと、そして、コーティングしたシリカ層は、該
磁気特性を持った芯粒子表面を様々な外の反応種から保
護する役割を有していること、すなわち、シリカ層は焼
成されても、磁気特性を発現している中の還元芯を保護
しているとのことが記載、報告されているが、そこに
は、金属酸化物微粒子の凝集や、焼成時の粒成長を防ぐ
ことについては何ら示唆するところはない。
【0007】さらにまた、特開昭6−327979号公
報には、触媒活性物質の粒成長を防ぐと共に、その蒸発
揮散を抑制するために、触媒活性物質を多孔性の耐熱性
物質を壁材としてマイクロカプセル化し、それを耐熱性
基体上に担持したことによって解決することが記載され
てはいるが、そこには、簡単な方法で粒子表面をシリカ
でコーティングでき、これによって金属酸化物微粒子同
士の凝集や、焼成時の粒成長を防ぐ手段とすることにつ
いては何ら示唆するところはない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、(000
4)、(0005)に摘示した技術報文に記載の技術に
おいては、金属酸化物の粒子特性の改善、改質手段は、
ガラスの溶解、再析出に依存しているものであり、条件
的にかなり制約のある実施形態であること、その態様
は、実験室的手法であること、また、そのプロセスは水
熱処理に基づいたものであることから、水熱処理に対し
て安定な酸化物でなければならないこと、また、その再
現性には未だ不安定な要因がつきまとうこと等の点で問
題がある。
【0009】また、(0006)に摘示した技術は、コ
ーティング保護層を設けることによって中の芯材料を保
護する技術を開示するにとどまりにすぎず、さらにま
た、(0007)に摘示した技術は、触媒活性物質を多
孔性の耐熱物質壁材としてマイクロカプセル化し、それ
を耐熱性基体上に担持するもので、その解決手段は、極
めて製造管理が複雑にすぎ、しかも触媒に限定した技術
であり、それ以外の使用等には汎用性を期待できないも
のであること、等の点で問題がある。
【0010】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、いずれの従来技術においても、金属酸化物微
粒子の粒特性を改善するには諸点において問題があるこ
とより、本発明は、酸化物の種類を問わず、常に安定し
た粒特性を持った金属酸化物微粒子を提供しようとする
ものであり、また、そのための製造手段を提供しようと
するものである。
【0011】
【発明が解決するための手段】本発明者らは、そのため
従来技術の問題点に留意しつつ、鋭意研究をした結果、
酸化物微粒子をコーティングするシリカ成分を、アルコ
キシシラン化合物から出発し、これをシリカ源とすると
きは、得られた金属酸化物の微粒子の粒特性は、ガラス
の溶解再析出法に比して、安定した特性を有し、しかも
再現性にも優れていることを見いだしたもので、本発明
は、この知見に基づいてなされたものである。
【0012】すなわち、本発明は、アルコキシシラン化
合物を加水分解することで、シリカを析出し、金属酸化
物微粒子の表面をシリカでコーティングするもので、金
属酸化物の種類を問わず、粒子特性が改善、改質され
た、すなわち、粒子間の接触による凝集や、焼成時にお
ける粒成長による比表面積の減少が抑制されてなる優れ
た粒特性を有してなる金属酸化物粒子を提供しようとす
るものであり、また、そのための製造方法を提供しよう
とするものである。
【0013】すなわち、本発明の第1番目の解決手段
は、金属酸化物の粒子表面がアルコキシシランの加水分
解反応によってシリカコーティングされてなるものであ
ることを特徴とするものである。すなわち、シリカ源と
して、特定の化合物、すなわちアルコキシシランを選定
し、この化合物を加水分解反応することによって金属酸
化物の微粒子表面をシリカコーティングし、これによっ
て粒特性の安定した金属酸化物の提供を可能ならしめた
ものである。
【0014】本発明の第2番目の解決手段は、前記アル
コキシシランがテトラエトキシシランであることを特徴
とするものである。これによって、加水分解反応自体の
制御とシリカの量的制御が容易となり、粒特性の改質に
大きく寄与し、ガラスの溶解再析出法に比し、安定化し
た粒特性を有するものである。
【0015】本発明の第3番目の解決手段は、前記加水
分解反応が、金属酸化物粒子の分散懸濁してなる反応液
中で行われることを特徴とするものであり、これによっ
て、シリカは、均一に分散析出し、粒特性に寄与してい
る。例えば、加水分解反応を金属酸化物粒子の存在しな
い系や、存在していても金属酸化物の分散懸濁が充分に
なされていない場合においては、後から別途コーティン
グ工程が必要になったり、均一なコーティングが困難に
なってしまうのに対し、この手段は、この点を解決しう
るものである。
【0016】本発明の第4番目の解決手段は、前記反応
液が、アルコキシシランのアルコール溶液であることを
特徴とするものである。また、続いて第5番目の解決手
段は、前記アルコールがエタノールであることを特徴と
するものである。これらの事項は、溶媒が極めて一般的
に入手可能なものに基づいて反応液の調整が行われるこ
と、したがって、本発明は、コスト的にも、製造手段と
しても極めて有利であり、優れた方法である。
【0017】本発明の第6番目の解決手段は、前記金属
酸化物粒子がNi、Fe、Zr、Mg、Y、La、Sn、Ce、Pr、N
d、Dy、Al、Tiから選ばれる一種または二種以上の金属
の酸化物または水酸化物であることを特徴とするもので
ある。この金属元素に基ずく酸化物限定の理由について
は、後述第10番目の解決手段において触れており、そ
の技術的意義、意味するところは極めて大きい。
【0018】本発明の第7番目の解決手段は、金属酸化
物粒子を、アルコキシシラン化合物の溶液中に分散懸濁
し、該溶液中のアルコキシシラン化合物を加水分解し、
分散懸濁粒子の表面を加水分解反応によって析出するシ
リカによってコーティングすることを特徴とするもので
ある。このプロセスによって、安定した粒子特性を有す
る金属酸化物粒子を、再現性を以て製造方法することが
出来るものであることは、前示各理由を総合すれば一層
その意義が、大であることは明白である。
【0019】本発明の第8番目の解決手段は、前記第7
番目の解決手段中のアルコキシシラン化合物の溶液がエ
タノールの溶液であることを特徴するものである。その
理由は、上記第5番目に記載したと同様の理由に基づく
ものである、これによって安定した粒子特性を有する金
属酸化物粒子を、コストを安くし、量産化にも適した製
造方法を提供することが出来るものである。
【0020】本発明の第9番目の解決手段は、前記7番
目、第8番目のアルコキシシラン化合物がテトラエトキ
シシランであることを特徴とするものである。これによ
って、シリカを析出する加水分解反応が、酸化物粒子表
面上に時間的に、また量的に、均一に析出させることが
可能となり、これによって安定した粒子特性を有する金
属酸化物粒子を、再現性よく製造することが可能とする
ものである。
【0021】本発明の第10番目の解決手段は、前記金
属酸化物粒子がNi、Fe、Zr、Mg、Y、La、Sn、Ce、Pr、N
d、Dy、Al、Tiから選ばれる一種または二種以上の金属
の酸化物または水酸化物を対象として選択しうるもので
ある。その選択組み合わせ等は、特に制限されることは
なく、一元系に限らず、複数組成の酸化物についても、
安定した粒特性を有する金属酸化物粒子を製造、提供す
ることが可能となったものである。これによって、多元
系酸化物に基づく触媒設計や、焼結体においてその意義
は、大である。
【0022】
【発明の実施形態】本発明の実施形態について以下述べ
る。本発明で使用するアルコキシシランは、加水分解反
応によってシリカを生成析出するものであれば、特にそ
の種類について制限する必要はない。実施可能なアルコ
キシシラン化合物について例を挙げれば、テトラメトキ
シシランSi(OCH3)4、テトラエトキシシランSi(OC
2H5)4、テトラプロポキシシランSi(OC3H7)4、テトラブ
トキシシランSi(OC4H9)4が挙げられる。また、メチルト
リメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチ
ルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等各種
アルキルアルコキシシランが挙げられる。
【0023】ただし、アルコキシシラン化合物は、概し
て、一般に高価である。本件発明は、シリカ源として用
いているものであるから、化合物の種類によって作用効
果に極端に違いはない。したがって、作用効果に顕著な
違いがある場合は別として、この場合種類によって作用
効果に極端な差異はない以上、その選定基準にとして、
コストに基づいて選択すると云うことは、この場合重要
と考えられる。このような理由により、テトラエトキシ
シラン(TEOS)は作用効果にも優れ、しかもコスト
も比較的安く、使用し得る代表的シラン化合物として挙
げることができる。なお、メトキシシランは、TEOS
に比し反応性の点において優れ、処理時間を短くできる
メリットはあるが、これにもまして価格の点を考慮する
とむしろTEOSを選択することは自然であり、本発明
を実施する上では充分である。以上の理由で、TEOS
は、現時点では最も最適なものと言うことができ、それ
以外のシラン化合物はTEOSに比してさして格別であ
るとは言えず、事実上競合しない。
【0024】一方、コーティング処理する金属酸化物の
微粒子は、コーティングによって得られる粒子特性をよ
り向上させようとすると、出発粒子は、極力微粒子であ
る方が望ましい。このため、粉砕処理法で得た金属酸化
物粒子では、コスト面のみならず、得られる粒子の大き
さには自ずと限界があることより、本発明を実施する上
では、前記粉砕法によらない、金属酸化物の前駆体とし
て得られる沈殿水酸化物微粒子を用いることが好まし
い。すなわち、金属塩を水に溶解し、アルカリを滴下し
て、溶解度の低い水酸化物として析出、沈殿して得られ
たままの微粒子を用いるのが好ましい。
【0025】その後、沈殿粒子は、濾別、洗浄し、アル
コールに分散、懸濁する。なお、最終的に品質の優れた
ものを確保するためには、濾別、洗浄操作は、これを充
分に行う必要があることは言うまでもない。すなわち、
これが充分でないと、粒子に付着してくる出発溶液成分
やアルカリ等の成分は、不純物として残留し、ひいては
最終製品の品質上の評価を損なう可能性も生じることと
なるので、充分に洗浄除去することが望ましい。
【0026】得られた金属水酸化物微粒子アルコール懸
濁体は、その後、シリカコーティングする処理プロセス
に供される。すなわち、懸濁体に、テトラエトキシシラ
ン化合物を含むアルコール溶液を加え、該化合物を加水
分解する。反応中は撹拌を続け、反応終了後、処理後の
沈殿を濾別、洗浄、乾燥、焼成する。なお、該懸濁体と
シラン化合物溶液との添加順序、混合順序に基づく実施
態様は、上記添加順序と逆にしても差し支えはない。す
なわち、シラン化合物溶液に懸濁体を加え、その後シラ
ン化合物を加水分解する態様でも良い。以上の処理操作
によって、酸化物粒子は、その表面に所定量のシリカが
コーティングされ、これによって、無処理のものに比し
て、あるいはガラスの再析出法によって得たものに比し
て、これまでの常識からすると考えられないほど高い粒
子特性を有する金属酸化物粒子を得ることが出来たこと
が確認された。
【0027】なお、ここでシリカコーティングをするの
に必須要件としているシラン化合物の加水分解反応の開
始時期については、大別すると二つの態様が考えられ
る。すなわち、前示したように金属酸化物あるいはその
前躯体粒子の分散液調整後、この液中のシラン化合物を
加水分解する態様と、これとは逆に、予め加水分解反応
をしておいてから両液を混合する態様の二様の態様が考
えられるが、ここでの操作目的は、シリカコーティング
であることを考えると、コーティング処理される被処理
粒子(金属酸化物微粒子ないしはその前駆体である水酸
化物微粒子)の分散液を調整後に、コーティング材料の
シリカを析出させる加水分解反応を行う前者の態様によ
る方が好ましい。
【0028】しかしながら、必ずしもこの順序に固執す
る必要はない。要は、金属酸化物微粒子に対してシリカ
が均一に分散し、粒子特性に優れたものが得られればこ
の限りではないが、一般的に云って、コーティング材料
である固相成分であるシリカを予めすべて析出しておく
と、これをコーティングする操作は、あくまでも事後的
撹拌混合操作でしかなく、金属酸化物微粒子とシリカの
関係を均一になるよう制御すること、ましてや前者の粒
子表面にシリカが均一にコーティングされるよう制御す
ることは困難なだけではなく、撹拌によって得られるも
のは、各成分が単に混合したいわゆる混合物が得られる
にすぎず、もはやコーティングとは言えない状態か、極
めて不均質な、偏在したコーティングが生じることとな
り、粒子特性にもバラツキが生じることとなり、好まし
いことではない。
【0029】以下、本発明を実例に基づいて説明する。
先ず、20℃のTEOSを含むアルコール溶液を用意
し、この中に、予め調製しておいた水酸化ニッケル沈殿
のアルコール分散液を添加混合し、撹拌を続けた。処理
時間経過につれてシリカ析出量が増加してきて、ほぼ一
定値で飽和した。これを分離回収、洗浄、乾燥、焼成、
水素雰囲気で還元、等の一連の処理をして、各段階の酸
化ニッケル粒子の状態等を観察分析した。その結果、以
下説明するように次のことが明らかとなった。
【0030】なお、上記一連の処理に供された沈殿水酸
化ニッケル(微粒子)に対するTEOSによるシリカコ
ーティング加水分解反応は、全く触媒を使用しないで行
ったものである。通常、アルコキシシランの加水分解反
応は、アンモニアなどの触媒を使用して行われている
が、本発明ではこれは全く必要としていない。これも本
発明の優れた特徴の一つに上げられる。
【0031】ただし、必要に応じ触媒を使用すること
は、これを妨げるものではない。例えば、加水分解に際
し、コーティング速度を速めようとしたり、あるいは短
時間あたりのシリカ析出量を大きくしようとする場合、
さらには、後述するように、酸化物によっては、シリカ
コーティングがなじみにくい性質がある場合、等の事情
が生じた場合には、触媒を積極的に使用することも、本
発明の態様の一つとして含まれる。
【0032】反応終了後の分離回収した粒子の状態は、
特に粒子同士の凝集も認められず、微細な粒子状態を呈
していた。これを、「Journal of the
Europian Ceramic Society、
18巻」p.1559−1564(1998)に掲載さ
れている『Synthesis of NicklHy
droxide Powders by Urea D
ecomposition』と題する研究報文に報告さ
れている塩基性条件で沈殿させて得た水酸化ニッケルの
粒子サイズと比較すると、この報告にある沈殿粒子サイ
ズはミクロンオーダーであり、上記本発明の方法で得た
粒子サイズに比べ数千倍の大きさに凝集した状態で得ら
れている。すなわち、本発明のTEOSによるシリカコ
ーティング加水分解反応に基づいて処理したものは、無
処理のものに比し凝集抑制効果が顕著であり、この点で
も優れた特性を有していることが裏付けられたものであ
る。
【0033】本発明のTEOSによるシリカコーティン
グにおいて、シリカ析出量と得られた酸化ニッケル微粒
子粉末の比表面積との関係は、図1に、(A)乾燥処理
をしたもの、(B)500℃焼成処理したもの、(C)
500℃水素還元処理したものが、それぞれの場合につ
いて示されている。何れも、どの処理段階に供しても、
シリカ析出含量が増えるとともに試料の比表面積が増加
する傾向は変わらない。すなわち、安定した粒子特性を
有していることが分かる。ちなみに、500℃焼成した
ものでも、比表面積は200m2-1を超え、無処理の
ものに比し格段に高い値を有していることが示されてい
る。そして、本発明に基づくTEOSによるシリカコー
ティングされたものは、従来例として記載したガラス成
分に由来する水熱処理によるシリカの溶解・再析出現象
に基づいてなる試料に比しても、優れていることは図1
に図示されている比較データからも明白である。(A)
110℃乾燥したもの、(B)500℃焼成処理したも
のは、(C)500℃水素還元処理したものは、そのい
ずれを問わず比表面積が格段に高い値を示している。す
なわち、本発明による酸化物微粒子は、それ自体、際だ
って安定した粒子特性に基づく特徴を備えており、この
点で従来のものとは充分に区別し、特定しうるものであ
る。
【0034】図2は、上記各試料についてのX線回折分
析データを示している。aは、無処理(シリカコーティ
ングなし)の焼成酸化ニッケル粒子のX線回折図であ
り、この粒子は発達した結晶性を有し、良好な結晶粒子
であることを示している。b〜dは、シリカコーティン
グ後焼成した酸化ニッケル粒子のX線回折図、e〜f
は、試料をそれぞれ500℃、600℃で還元処理した
ニッケル粒子のX線回折図である。これによると、ニッ
ケル酸化物上に析出コーティングされるシリカの析出量
が増加するにつれて、結晶のピークが次第にブロードに
なっていくこと、すなわち、無定型化が進みはじめてい
ることが示されている。そして、還元処理温度が高くな
るにつれ金属ニッケルへの還元が始まっていることが示
されている。この結果を、図1と結びつけると、本発明
の粒子特性は、結晶性の高低と関係があることを示して
いるものといえる。
【0035】本発明によるシリカコーティング酸化物微
粒子及びこれを還元処理してなる粒子は、そのいずれも
比表面積が高く、高温に曝されても比表面積は依然とし
て高く維持されており、換言すれば安定した粒子特性を
有していることは、上述したとおりであるが、図3に
は、この試料を500℃で水素還元処理した金属ニッケ
ルの表面状態を、ニッケルの金属表面積とシリカ析出量
との関係に基づいて調査した結果を示している。これに
よれば、水素還元して得られる金属ニッケルの金属表面
積もシリカ析出量とともに変化して極大を示し、35m
2-1を超える金属表面積を示していることが分かる。
【0036】そして、この金属比表面積の値は、これを
ガラスによるシリカ再析出法(従来法)による、いわゆ
る水熱処理法により処理した試料に比し、倍近い大きい
値を示している。すなわち、本発明に基づくものから出
発したものは、金属に還元した段階に至っても、粒子特
性はそのまま残り、依然として高い比表面積を有してい
る。このことは、本発明が極めて優れた作用効果を奏
し、利用価値の高さを有してなる特徴を備えたものであ
ることを示唆し、意味している。ちなみに還元したこれ
らの試料は気相におけるベンゼンの水素化反応に高い活
性を示した。
【0037】図4〜図6は、酸化ジルコニウムについて
上記実験と同様の実験をした結果を示すものである。図
4は、シリカ析出量と比表面積の関係を示している。析
出量が増えるとともにZrO2の比表面積が増加し、溶解量
0.25g以上で500℃焼成後の比表面積が270m
2-1程度で一定になった。700℃焼成後でも比表面
積は200m2-1を越えた。
【0038】図5は、シリカコーティングしていないZr
O2のX線回折分析データである。不純物を含まない純粋
なZrO2は、初期の沈殿粒子は、110℃乾燥した段階で
は、粒子はまだアモルファス状態であるが、500℃か
ら800℃まで焼成温度を上げていくと、単斜晶型への
結晶化が次第に進むが、700℃からは結晶状態にはほ
とんど変化がないことが示されている。
【0039】これに対し、シリカコーティングしたZrO2
は図6に示され、これによるとシリカコーティングした
ものは、600℃までの熱処理ではアモルファス、70
0℃以上で正方晶へと移行していることが示されてい
る。正方晶ZrO2は1000℃以上の高温での安定相であ
るので、このような低い温度でアモルファス状態から準
安定相の単斜晶型を通過せず正方晶型ZrO2を得ることが
できたことは、注目に値する。
【0040】シリカをコーティングしたZrO229SiN
MR測定の結果、純粋なZrO2にはSiもピークは観測さ
れなかったが、シリカをコーティングしたZrO2には75
〜110ppm付近に4配位Siの存在を示すピークが
観測された。シリカ成分は、8配位のカチオンサイトか
らなる蛍石構造のZrO2粒子内部にあると考えるよりもZr
O2の表面に析出していると結論される。
【0041】また、シリカでコーティングしたZrO2は、
固体の酸触媒としての応用も期待できる。すなわち、ク
メンクラッキング反応に対しても触媒活性を有している
ことも見いだされた。
【0042】上記NiO、ZrO2以外にもMgO、Y2O3、La
2O3、SnO2、CeO2などの酸化物の微粒子をシリカコーテ
ィング後(500℃焼成後)の比表面積を示すと次のよ
うに何れも高い値を有していることが明らかとなった。 MgO(268m2-1)、Y2O3(310m2-1)、SnO2
(241m2-1)、La2O 3(122m2-1)、CeO2(1
88m2-1) すなわち、本発明は、種々の酸化物に対しても有効であ
り、安定した、優れた粒子特性を有していることが明ら
かとなった。
【0043】通常、例えば触媒調製においては、複数の
成分調製の際、熱処理することによって調製するのが一
般的であるに対し、本発明は、熱処理のような過酷な条
件に基づかなくても、シリカコーティングは、金属酸化
物ないしはその前駆体粒子に対して極めて穏やかな条
件、すなわちTEOS等のシラン化合物のエタノール等
のアルコール溶液を用いて低温で加水分解するだけで容
易にシリカコーティングでき、極めて簡単且つ再現性に
優れ、そのもたらす技術的意義は非常に大きい。
【0044】TEOS等を用いて酸化物微粒子又はその
前駆体微粒子の表面をシリカの薄い膜に覆われた構造と
すること、これによって微粒子のサイズを再現性を以
て、安定に制御する研究はこれまでには報告されておら
ず、本発明者等において初めて研究され、知見されたも
ので、新規性、進歩性を有しているものである。
【0045】
【実施例1】以下にさらに具体的に本発明の実施例を示
し、本発明を一層明確にする。 〔シリカコーティングした金属酸化物微粒子の作成〕 1.出発金属酸化物微粒子(前駆体水酸化物微粒子沈
殿)の調製 次の11種類の金属硝酸塩、すなわち、〔Mg(II)、Fe
(III)、Y(III)、Zr(IV)、Sn(II)、Sn(IV)、L
a(III)、Ce(IV)、Pr(III)、Nd(III)、Dy(II
I)〕の硝酸塩を用意し、各10wt%水溶液を計11試
料調製した。この水溶液を、それぞれ別々に用意した5
Mのアンモニア水におよそ1時間かけて滴下した。その
後30分間撹拌し、金属水酸化物沈殿11種をそれぞれ
得た。各試料は、12時間静置後、ろ過、洗浄した。洗
浄後、濾別した各沈殿を乾燥することなくそれぞれ別に
用意したエタノールに分散した。この試料は、次のシリ
カコーティング処理に付されることとなる。
【0046】2.シリカコーティング処理 1.のプロセスで得られた各金属水酸化物沈殿エタノー
ル分散液に、テトラエトキシシラン(TEOS)を所定
量(シリカ重量に換算して0.40ggsupo rt -1)含む
エタノール溶液を加え、40℃、96時間撹拌した。
【0047】3.コーティング後の後処理 所定時間の撹拌後、各沈殿を濾別、洗浄して、110
℃、12時間乾燥した。次いで500℃、3時間焼成し
た。
【0048】以上のプロセスによってシリカコーティン
グした各金属酸化物微粒子を得、これらの試料について
その粒子についてシリカの析出量、コーティング前後の
各比表面積等を測定し、その粒子特性について評価し
た。その結果、酸化マグネシウムの場合を例にとって説
明すると、得られたコーティングサンプルは、比表面積
が268m2-1となり、無処理の酸化マグネシウムの
65m2-1を大きく上回り、また、水熱処理でガラス
の溶解・再析出によりシリカコーティングしたときの値
(166m2-1)よりも大きな比表面積となった。そ
の他のサンプルの物性値については、表1に示す。
【0049】
【実施例2】1.水酸化ニッケル沈殿の作成 最終的な酸化ニッケル収量が1gとなるように硝酸ニッ
ケル〔Ni(II)〕を秤量し、蒸留水を加え、10wt%の硝
酸ニッケル水溶液を100mlビーカーに調製、用意し
た。粒状のNaOH4gを92mlの水に溶かして調製した
1NのNaOH水溶液100mlに硝酸ニッケル水溶液をゆ
っくりと滴下した。滴下終了後、30分撹拌した後、ス
ターラーを取り出し、一晩、室温で静置した。沈殿をろ
過、洗浄し、水酸化ニッケル沈殿を得た。洗浄後分別し
た沈殿を湿潤状態のまま、乾燥することなくエタノール
30gと一緒に100mlサンプル瓶に入れ、スターラ
ーで撹拌し、懸濁状態とした。
【0050】2.水酸化ニッケルのシリカコーティング 該水酸化ニッケルエタノール懸濁液に所定量のテトラエ
トキシシラン(TEOS)を加え、全てのTEOSがNi
(OH)2 沈殿上に析出するまで室温で撹拌を続けた。
【0051】3.コーティング後の後処理 所定時間の撹拌後、沈殿を濾別、洗浄して、110℃、
12時間乾燥した。次いで500℃で3時間焼成した。
得られたシリカコーティングした酸化ニッケル微粒子に
ついて、析出シリカコーティング重量と各サンプルの比
表面積との関係を調べた結果、シリカ重量0.05、
0.10、0.20、0.30、0.40ggsuport -1
で比表面積は、それぞれ149、209、305、31
1、333m2-1となり、無処理の酸化ニッケルの2
6m2-1を大きく上回った。ちなみに、0.05、
0.10、0.20、0.30、0.40ggsuport -1
のシリカ重量になるまですべてのシリカ析出のための撹
拌時間は、それぞれ、2、4、8、12、16日であっ
た。
【0052】
【実施例3】シリカ析出量の制御(TEOS量、反応温
度変化) 1.水酸化鉄の作成 最終的な焼成後の酸化物収量が1gとなるように硝酸鉄
(III)九水和物を5.1g秤量し、蒸留水を45.9
g加え、あわせて51gにした10wt%の硝酸塩水溶液
を100mlビーカーに用意し、スターラーで撹拌して
溶解した。25%アンモニア水溶液68gを126gの
蒸留水に加え、5Mのアンモニア水溶液を300mlビ
ーカーに用意した。アンモニア水溶液をスタ−ラーで撹
拌しながら、金属塩水溶液をゆっくりと滴下した。滴下
終了後、30分撹拌した後、一晩、室温で静置した。沈
殿をろ過し、触媒前駆体である水酸化鉄(III)を得
た。洗浄、濾別した沈殿を乾燥することなくエタノール
に分散させ、次のシリカコーティング工程に使用した。
【0053】2.水酸化鉄のシリカコーティング 該水酸化鉄エタノール分散液に、シリカ重量に換算して
0.05〜0.40ggsuport -1に相当するアルコキシ
シラン(TEOS)を含むアルコール(エタノール)溶
液を加え、20℃、所定時間、撹拌した。
【0054】3.コーティング後の後処理 所定時間の撹拌後、沈殿を濾別、洗浄して110℃、1
2時間乾燥、500℃で3時間焼成した。その結果、得
られたシリカコーティングした酸化鉄微粒子の析出シリ
カコーティング重量と各サンプルの比表面積との関係
は、析出シリカコーティング重量0.05、0.10、
0.20、0.30、0.40ggsuport -1で比表面積
はそれぞれ98、166、230、262、285m2
-1となり、無処理酸化鉄(III)の24m2-1を大き
く上回った。
【0055】ちなみに、0.05、0.10、0.2
0、0.30、0.40ggsuport -1のシリカ重量にな
るまですべてのシリカ析出のための撹拌時間は、それぞ
れ、1、2、4、6、10日であった。また、シリカコ
ーティング温度を20℃、40℃、60℃、80℃と変
化させると、シリカ析出量0.20ggsuport -1 をそ
れぞれ96時間、10時間、3時間、1時間で達成し
た。
【0056】
【実施例4】1.水酸化チタン沈殿の作成 チタンイソプロポキシド[Ti(OC3H7)4]3.56gを水100gに
ゆっくり滴下し水酸化物の沈殿を生成させた。12時間静
置後、ろ過、洗浄した。 2.水酸化物沈殿のシリカコーティング 濾別した沈殿(乾操させることなく)をエタノールに分
散させ、ここに所定量(シリカ重量に換算して0.40 g g
support -1に相当する)のTEOSを含むエタノール溶液を
加え、40℃、96時間、撹拌した。 3.コーティング後の後処理 所定時間の撹拌後、沈殿を濾別、洗浄して、110℃ 12時
間、乾燥。必要に応じて、500℃ 3時間、焼成した。得
られたコーティングサンプルの比表面積が376 m2g-1
なり、何も処理していない酸化チタンの58 m2 g-1を大
きく上回り、また、水熱処理でガラスの溶解・再析出に
よりシリカコーティングしたときの値(65 m 2 g-1)よ
りも大きな比表面積となった。
【0057】
【実施例5】1.水酸化アルミニウム沈殿の作成 硝酸アルミニウムの水溶液を5モル/リットルのアンモ
ニア水中に滴下し水酸化物の沈殿を生成させた。12時間
静置後、ろ過、洗浄した。 2.水酸化物沈殿のシリカコーティング 濾別した沈殿(乾操させることなく)をエタノールに分
散させ、ここに所定量のTEOSを含むエタノール溶液(硝
酸アンモニウム0.13g)を加え、40℃、96時間、撹拌し
た。撹拌後、沈殿を濾別、洗浄して、110℃ 12時間、乾
燥。必要に応じて、500℃ 3時間、焼成した。 3.コーティングサンプルの特性 エタノール溶液に硝酸アンモニウムを加えないで調製し
た試料では、TEOS量を変化させてもシリカ析出量は0.08
g gsupport -1で一定となった。これに対して、硝酸ア
ンモニウムを加えると、シリカ析出量は加えたTEOS量に
比例して増加した。シリカ析出量は0.2, 0.3, 0.4 g g
support -1で比表面積はそれぞれ346, 353,348 m2 g-1
あった。何も処理していない酸化アルミニウムの301 m
2 g-1を上回った。硝酸アンモニウムをTEOS分解時に共
存させた試料では、硝酸アンモニウムの触媒作用により
TEOS分解が促進され、TEOS仕込み量を変化させること
で、シリカ析出量を制御することができた。このように
して得られたシリカアルミナ触媒の触媒作用をクメンの
クラッキング反応について試験すると、図7のようにな
り、触媒活性はシリカ析出量とともに増加することが認
められた。ちなみに、市販されているシリカアルミナの
触媒活性は、シリカ析出量0.40 g gsupport -1の試料と
ほぼ同程度であった。
【0058】以上、具体的に実施例に示した通り、本発
明によるもの、すなわちTEOSを用いてこれを加水分
解してシリカコーティング処理したものは、無処理のも
のあるいは水熱処理でガラスの溶解・再析出によりシリ
カコーティング処理したものに比して、処理直後の初期
段階から乾燥、焼成、さらには、金属へ還元処理した段
階に至るまで、粒子の比表面積は極めて高い値を有して
いることが明らかとなった。
【0059】すなわち、本発明によるものは、安定した
粒子特性を有していることが明らかとなった。その態様
は、かなりの種類の金属酸化物に対して、ほぼ同様の傾
向にあることが裏付けられた。しかも、そのためのプロ
セスも、簡単な操作要領に基づくものであり、ガラスの
溶解・再析出法による水熱処理法に比しても、シリカの
析出コーティング量のコントロール等の制御は容易であ
り、再現性に富んでいる。
【0060】各図及び実施例等からは、Al、Tiの酸化物
を除き、その余の金属酸化物に対するシリカの析出コー
ティング量は、ある量までは比表面積の増加に寄与して
いることが認められる。すなわち、シリカ析出コーティ
ング量が増えるに従い、その粒子の比表面積は高くなっ
ていく傾向にあるが、その効果は、一定のところで平衡
に達することも明らかとなった。
【0061】これに対して、Al、Tiの酸化物だけは、他
の酸化物とは少し異なる挙動を示していることが分かっ
た。すなわち、この両酸化物は、アルコキシシラン化合
物の加水分解反応によるシリカコーティング処理をして
も、シリカの析出コーティング量は、他の金属酸化物ほ
どには多くはなかった。それにもかかわらず、Ti酸化物
について云うと、コーティング処理をしたものは、コー
ティング処理をしていないものに比し、かなり高い値の
比表面積を示し、粒特性の改善が認められた。
【0062】一方、Al酸化物は、硝酸アンモニウムを触
媒として加えることによって、TEOS仕込量によって
シリカ析出量をコントロールしうることが分かったが、
比表面積は、無処理のものでも高い値を有しているとこ
ろから、本発明の処理による比表面積の改善効果は、他
の酸化物ほどではないが、それでも充分な効果が認めら
れた。
【0063】上記一連の実施例では、シリカ源として用
いたシラン化合物は専らTEOSによる態様によってシ
リカコーティング処理を行ったが、前記(0022)、
(0023)にも記載した通り、使用しうるシラン化合
物は、TEOSに限定されるものではない。すなわち、
本発明は、その余のシラン化合物も使用することがで
き、これをシリカ源としてTEOSに代えて実施するこ
とに基本的に問題はなく、これも実施態様として成立す
ることは、加水分解によってシリカを析出するというシ
ラン化合物の特性を考慮すれば明らかであり、本発明
は、その発明の目的、ないしは作用効果の限りで、TE
OS以外のシラン化合物による場合も実施態様として含
むものである。
【0064】
【表1】 註(表の説明)a それぞれ相当する硝酸塩(ただし、SnCl2 と SnCl4
ら調製したSnの酸化物は除く)とアンモニア水 (5 mol
dm-3) から水酸化物前駆体を調製した。b TEOS エタノール溶液によるシリカコーティングを 40
℃ 96 時間行った。 (最大シリカ析出量が0.40 g g
support -1 となるようにTEOSを仕込んだ。)c コーティング後にエタノール溶液中に残った未反応の
TEOS量から求めた。d 500℃ 3 時間焼成したサンプル。カッコ内の数値は、
100℃で水熱処理をしてガラスの溶解・再析出によりシ
リカコーティングしたサンプルの参考データ値。e シリカコーティングをしていない酸化物(500℃焼
成)の値。f Ni(NO3)2 または Co(NO3)2 の水溶液から NaOH (1.0
mol dm-3)を沈殿剤にして調製。g チタンイソプロポキシド〔Ti(OC3H7)4〕の加水分解に
より調製。
【0065】
【発明の効果】本発明は、金属酸化物微粒子表面をアル
コキシシラン化合物に基づく加水分解反応によりシリカ
コーティングすることによって、金属酸化物のもつ基本
的性質、物性を損なうことなく、安定な粒子特性を有す
る金属酸化物微粒子に再現性よく改質することができる
ものである。その果たす役割は、基本的材料として使用
されていたもともとの用途分野に対しても計り知れない
意味、意義をもたらすだけでなく、金属酸化物の用途を
さらに広げることとなり、産業上の利用価値は、大きい
ことは、通常の知識を有する者においては自明の理とす
るところであると考えられる。
【0066】
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化ニッケル粉末比表面積に与えるシリカ析出
量あるいは調製方法の影響を示す図である。
【図2】酸化ニッケル粉末試料に与える焼成処理(a−
d)、あるいは還元処理(e−f)の影響を示すX線回
折図である。
【図3】Ni金属比表面積に与えるシリカ析出量あるい
は調製方法の影響を示す図である。
【図4】酸化ジルコニウム粉末比表面積の与えるシリカ
析出量あるいは焼成温度の影響を示す図
【図5】無処理酸化ジルコニウム沈殿粉末試料に与える
熱処理の影響を示すX線回折図である。
【図6】シリカコーティング処理した酸化ジルコニウム
沈殿粉末試料に与える熱処理の影響を示すX線回折図で
ある。
【図7】本発明によって得られたシリカアルミナ触媒の
触媒作用をクメンのクラッキング触媒として使用した場
合のクラッキング活性評価を示す転化率と温度との関係
図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C01G 23/047 C01G 23/047 25/02 25/02 49/02 49/02 Z 51/04 51/04 53/04 53/04 Fターム(参考) 4G002 AA02 AA12 AB02 4G042 DA01 DB27 DE05 DE14 4G047 CA01 CB05 CB09 CC03 CD03 4G048 AA02 AB04 AD03 AE05 4G076 AA02 AB06 BA11 BF05 CA02 DA01 DA02 DA30

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属酸化物の粒子表面がアルコキシシラン
    の加水分解反応によってシリカコーティングされてなる
    ものであることを特徴とする粒子特性の改質された金属
    酸化物。
  2. 【請求項2】前記アルコキシシランがテトラエトキシシ
    ランであることを特徴とする請求項1記載の粒子特性の
    改質された金属酸化物。
  3. 【請求項3】前記加水分解反応が、金属酸化物粒子の分
    散懸濁してなる反応液中で行われることを特徴とする請
    求項1ないし2記載のいずれか一つの粒子特性の改質さ
    れた金属酸化物。
  4. 【請求項4】前記反応液が、アルコキシシランのアルコ
    ール溶液である請求項3記載の金属酸化物。
  5. 【請求項5】前記アルコールがエタノールである請求項
    4記載の金属酸化物。
  6. 【請求項6】前記金属酸化物粒子がNi、Fe、Zr、Mg、
    Y、La、Sn、Ce、Pr、Nd、Dy、Al、Tiから選ばれる一種
    または二種以上の金属の酸化物または水酸化物である請
    求項1ないし5記載のいずれか一つの金属酸化物。
  7. 【請求項7】金属酸化物粒子を、アルコキシシラン化合
    物の溶液中に分散懸濁し、該溶液中のアルコキシシラン
    化合物を加水分解し、分散懸濁粒子の表面を加水分解反
    応によって析出するシリカによってコーティングするこ
    とを特徴とする安定した粒子特性を有する金属酸化物粒
    子の製造方法。
  8. 【請求項8】前記アルコキシシラン化合物の溶液がエタ
    ノールの溶液である請求項6記載の安定した粒子特性を
    有する金属酸化物粒子の製造方法。
  9. 【請求項9】前記アルコキシシラン化合物がテトラエト
    キシシランである請求項6ないし7記載の安定した粒子
    特性を有する金属酸化物粒子の製造方法。
  10. 【請求項10】前記金属酸化物粒子がNi、Fe、Zr、Mg、
    Y、La、Sn、Ce、Pr、Nd、Dy、Al、Tiから選ばれる一種
    または二種以上の金属の酸化物または水酸化物である請
    求項6ないし8記載のいずれか一つの安定した粒子特性
    を有する金属酸化物粒子の製造方法。
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