JP2010201345A - 多孔性吸着材 - Google Patents

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Abstract

【課題】
分子量に関係なく、広範囲の物質を吸着できる多孔性吸着材を提供することである。
【解決手段】
易加水分解性縮合ポリマーの成型体をアミンで化学処理してなる多孔性成型体から構成されることを特徴とする多孔性吸着材を用いる。易加水分解性縮合ポリマーの成型体は難加水分解性ポリマーで被覆処理されてなる複合成型体が好ましい。多孔性成型体は難加水分解性ポリマーで被覆処理されてなる複合多孔性成型体が好ましい。アミンは多価アミンが好ましい。易加水分解性縮合ポリマーはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸又はこれらの混合体が好ましい。難加水分解性ポリマーは芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミド、ポリビニル芳香族化合物又はこれらの混合体が好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は多孔性吸着材、この製造方法及び体外循環カラムに関する。
癌、感染症、アルツハイマー病の克服は現代医学の大きな課題となっている。また、生体には元来病気に対する免疫が備わっているが、薬物投与や過労等の原因で免疫が低下している時に悪性の病原性細菌やウイルスに感染すると、重症化し、敗血症になることがある。抗生物質投与にも拘らず敗血症になった場合、とりわけ、グラム陰性菌による敗血症の場合、エンドトキシン吸着材であるポリミキシンB固定化繊維のカラムで体外循環治療する方法が有効な場合があることが知られている(非特許文献1)。また、免疫が低下していなくても悪性の新型インフルエンザに感染すると、免疫が過剰に反応し、高サイトカイン血症になり死亡することがある。これは血液中のサイトカイン濃度が上昇しすぎるためである。
一方、生体には癌細胞を除く機構が備わっていて癌にならないはずであるが、様々な原因で免疫を妨げる物質や血管新生を促進する蛋白質が癌患者体液中に増加して来る時に癌が発症すると考えられている。免疫を妨げる物質の代表例としてはTGF−β、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−6(IL−6)等の蛋白質が知られている(非特許文献2)。そして、水不溶性担体(ポリスチレン系重合体)に親水性アミン残基を結合してなる免疫抑制蛋白質吸着材を用いると、担癌ラットの血液に含まれる潜在型TGF−βを吸着できることが知られている(特許文献1)。
また、近年、アルツハイマー病のような脳神経疾患が増加しているが、その原因物質としては、以前からのアミロイド蛋白の他に、最近ではS100B蛋白質が注目されている。この他、腫瘍免疫を抑制する細胞としてCD4CD25FoxP3+等の制御性T細胞(非特許文献3)やGr1highCD11bhigh等のミエロイド由来制御性細胞(非特許文献4)等があり、また、インドールアミン2,3デオキシゲナーゼ(IDO)を発現した免疫抑制性の樹状細胞の存在が報告されている(非特許文献5)が、これらの細胞を誘導する物質として、最近、S100A8/A9やHLA−Gといった物質が議論される様になった(非特許文献6)。
そして、このカルシウム結合性蛋白質であるS100A8/A9は、ミエロイド系細胞により産生されるが、炎症時に血液濃度が上昇するので、炎症を抑える働きをしていると考えられる。また、この物質は腫瘍細胞表面にも発現し、免疫細胞を強く抑制し、乳癌細胞や前立腺癌細胞での発現が確認されており、腫瘍の肺転移に強く拘っているらしい(非特許文献6)。また、この物質は、血液中において分子量46kダルトンのへテロ4量体で存在すると考えられている(非特許文献7)。同様なカルシウム結合性蛋白質であるS100Bは、脳のアストロサイトが分泌しているが、脳髄液中の濃度はアルツハイマー病やてんかん等の神経疾患患者で高いことが知られており、病状の悪化度と正の相関があると推察される(非特許文献8)。また、ダウン症やアルツハイマー病の脳にはアミロイドβ蛋白質の沈着が認められているが、S100Bはアミロイド前駆体を増加させることが最近分かった(非特許文献9)。また、メラノーマや脳腫瘍の際にも血液中の濃度が上昇する。
一方、HLA−Gは、妊娠時に胎児組織細胞に発現し、母体免疫の免疫寛容を促進する物質として知られて来たが、腫瘍細胞やミエロイド系細胞に発現し、腫瘍特異的キラー細胞やナチュラルキラー細胞等の腫瘍免疫細胞を強力に不活化することが分かった(非特許文献10)。また、血液に溶けた形でも存在し、神経膠芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、白血病、メラノーマ多発性骨髄腫等で血漿濃度が上昇する。予後と相関することが知られている(非特許文献11)。
従って、これらの物質は直接的又は間接的に症状の悪化を進行させていると考えられ、その濃度を下げることが治療上重要と考えられる。
そして、血液浄化用吸着材として、上記の免疫抑制蛋白質吸着材(特許文献1)や、水不溶性基材(ポリスチレン等)に炭素数総和5〜10の3級アミンに由来する4級アンモニウム化合物が結合された高分子成型品からなる殺細胞活性増強材(特許文献2)、排除限界分子量が5万以上であり、アミノ基を有する多孔質セルロースからなる吸着材(特許文献3)が知られている。
特開2003−111834号公報 特開2009−007282号公報 特開2001−219062号公報
基礎と臨床、1994:28(5):1421-1432 藤原大美著、腫瘍免疫学、89-112頁、中外医学社、1998年 Blood 2006:108:804-811 The Journal of Immunology 2008:181:4666-4675 Journal of Molecular Medicine 2008:86:145-160 Nature Cell Biology 2006:8:1369-1375 Journal of Molecular Biology 2006:359:961-972 Neurobiology of Aging 2001:22:915-922 The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 2007:322:1144-1152 Blood 2008:111:4862-4870 Semin Cancer Biology 2007:17:469-479
免疫抑制蛋白質吸着材(特許文献1)や殺細胞活性増強材(特許文献2)において、特定の蛋白質(たとえば、TGFβ、CD40、CD28)を吸着する具体的なデータが記載されているが、より重要な物質であるS100A8/A9やS100BやHLA−Gについては吸着しないと考えられ、さらにこれらの吸着材は多芯海島構造という非常に特殊な構造を持つ繊維を用いており、これを製造するには高価な製造装置を必要とするという問題がある。
また、多孔質セルロースからなる吸着材(特許文献3)は、高分子量の蛋白質(たとえば、5万ダルトンを超える蛋白質)の吸着能力が著しく低いという問題がある。
本発明の目的は、分子量に関係なく、広範囲の物質を吸着できる多孔性吸着材を簡便に提供することである。
本発明の多孔性吸着材の特徴は、易加水分解性縮合ポリマーの成型体をアミンで化学処理してなる多孔性成型体から構成される点を要旨とする。
本発明の体外循環カラムの特徴は、上記の多孔性吸着材を充填してなる点を要旨とする。
本発明の多孔性吸着材の製造方法の特徴は、易加水分解性縮合ポリマーの成型体をアミンで化学処理して多孔性成型体を得る工程(2)を含む点を要旨とする。
本発明の多孔性吸着材は、分子量に関係なく、広範囲の物質を効果的に吸着できる。
したがって、本発明の多孔性吸着材を用いれば、特定の蛋白質(たとえば、TGFβ、CD40、CD40L、CD28、CD30)しか吸着できないという問題や、高分子量の蛋白質(たとえば、5万ダルトンを超える蛋白質)の吸着能力が著しく低いという問題が生じない。この多孔質吸着材は、薬物等の徐放材としても有用である。
本発明の体外循環カラムは、上記の多孔性吸着材を充填しているため、分子量に関係なく、広範囲の物質を効果的に吸着除去できる。
したがって、本発明の体外循環カラムを用いれば、特定の蛋白質(たとえば、TGFβ、CD40、CD40L、CD28、CD30)しか吸着除去できないという問題や、高分子量の蛋白質(たとえば、5万ダルトンを超える蛋白質)の吸着能力が著しく低いという問題が生じない。
本発明の多孔性吸着材の製造方法によれば、上記の多孔性吸着材を効率的かつ簡便に得ることができる。
易加水分解性縮合ポリマーとは、主鎖にエステル結合(−CO−)又はウレイド結合(−O−CONH−)を含むポリマーであり、かつ、機械的に強い成型品に加工しうるポリマーを意味する。エステル結合又はウレイド結合は温和な条件で加水分解されやすい。
易加水分解性縮合ポリマーとしては、ポリエステル及びポリウレタンが含まれる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン・ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリεカプロラクトン及びポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレン−2,2−イソプロピリデン−1,4−フェニレン){ビスフェノールAのポリカーボネート)等が挙げられる。
ポリウレタンとしては、ポリ(オキシカルボニルイミノ−1,4−フェニレンイミノカルボニルオキシエチレン){p−フェニレンジイソシアナートとエチレングリコールとの縮重合体}、ポリ(オキシカルボニルイミノ−1,4−フェニレンイミノカルボニルオキシヘキサメチレン){p−フェニレンジイソシアナートとヘキサメチレングリコールとの縮重合体}及びポリ(オキシカルボニルイミノ−1,4−フェニレンイミノカルボニル−ポリ(オキシエチレン)){p−フェニレンジイソシアナートとポリエチレングリコール(重合度2〜100)との縮重合体}等が挙げられる。
これらのうち、加水分解性、機械的強度、加工性及び成型品の入手しやすさ等の観点から、ポリエステルが好ましく、さらに好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートである。
易加水分解性縮合ポリマーの重量平均分子量は、成型できる程度であれば特に制限はないが、成形性等の観点から、1万〜100万が好ましく、さらに好ましくは2万〜20万である。
易加水分解性縮合ポリマーの成型体としては、吸着材としての形状(たとえば、粉粒状、繊維状、不織布状、織物状、膜状、中空糸状)・大きさであれば制限ない。
易加水分解性縮合ポリマーの成型体は、難加水分解性ポリマーで被覆処理されていることが好ましい。
難加水分解性ポリマーとは、易加水分解性縮合ポリマーに比較して加水分解を受け難いポリマーであり、かつ、有機溶媒(テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキサイド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等)に可溶なポリマーを意味する。そして、難加水分解性ポリマーとして、ガンマー線滅菌や高圧蒸気滅菌の条件に耐えうるポリマーが好ましく、さらにフイルム形成性を持つポリマーが好ましい。
難加水分解性ポリマーとしては、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド及びポリビニル芳香族化合物が含まれる。
芳香族ポリスルホンとしては、ビスフェノールAとジフェニルスルホンとの重縮合体{−[(p−C)−SO−(p−C)−O−(p−C)−C(CH−(p−C)−O]−}及びポリ(p−フェニレンエーテルスルホン){−[(p−C)−SO−(p−C)−O−(p−C)−O]−}等が挙げられる。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの重縮合体等が挙げられる。
ポリビニル芳香族化合物としては、ポリスチレン及びポリビニルトルエン等が挙げられる。
これらの難加水分解性ポリマーのうち、入手の容易性、加工性、機械的強度等の観点から、芳香族ポリスルホンが好ましい。
難加水分解性ポリマーは、アミンと化学結合を形成する反応性官能基及び/又は吸着特異性に関与するリガンドを持つものが好ましい。
反応性官能基としては、ハロゲノメチル基{クロロメチル基(ClCH−)等}、ハロアセトアミドメチル基{クロロアセトアミドメチル基(ClCHCONHCH−)、ヨードアセトアミドメチル基(ICHCONHCH−)及びブロムアセトアミドメチル基(BrCHCONHCH−)等}、ハロゲノカルボニル基{クロロカルボニル基(ClCO−)等}、1,3−オキソ−2−オキサプロピレン基(−COOCO−)及び炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基{メトキシカルボニル基(CHOCO−)等}等が挙げられる。
これらの反応性官能基のうち、反応性及び化学処理中の安定性のバランス等から、ハロアセトアミドメチル基が好ましく、さらに好ましくはクロロアセトアミドメチル基、ヨードアセトアミドメチル基及びブロムアセトアミドメチル基である。
吸着特異性に関与するリガンドとしては、アミノ基、ポリアミンの反応残基、塩基性環状ペプチドの反応残基及びアミノグリコシド系化合物の反応残基が含まれる。
アミノ基としては、アミノ基(NH−)、炭素数1〜4の第二級アミノ基{N−メチル−アミノ基及びN−ブチル−アミノ基等}、炭素数2〜8の第三級アミノ基{N,N−ジメチルアミノ基及びN−メチル−N−ブチルアミノ基等}、炭素数4〜10の第四級アミノ基{N,N−ジメチル−N−ブチルアンモノ基及びN,N−ジメチル−N−ヘキシルアンモノ基等}等が挙げられる。
ポリアミンの反応残基としては、ポリアルキレンアミン{ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミン等}の残基等が挙げられる。
塩基性環状ペプチドの反応残基としては、ポリミキシンB又はコリスチンの反応残基等が挙げられる。
アミノグリコシド系化合物の反応残基としては、アミカシン、アストロマイシン、イセパマイシン、アルベカシン、トブラマイシン、カナマイシン、ジベカシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン又はベカナマイシンの反応残基等が挙げられる。
これらのリガンドのうち、難加水分解性ポリマー同士を架橋させる作用により、後加工時の耐熱性、耐溶剤性を高めると共に多孔性を促進するとの観点から、アミノ基を複数個有するもの{ポリアミン(ジエチレントリアミン等)の反応残基及びアミノグリコシド系化合物の反応残基}が好ましい。
難加水分解性ポリマーがアミンと化学結合を形成する反応性官能基及び/又は吸着特異性に関与するリガンドを持つ場合、反応性官能基及びリガンドの数には制限はないが、この結合数は、それぞれ、ビニル芳香族化合物重合体の場合、繰り返し単位あたり、0.1〜1個が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.4であり、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド又はポリイミドの場合、繰り返し単位当たり、0.01〜4が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2である。
アミンと化学結合を形成する反応性官能基及び吸着特異性に関与するリガンドは、直接又は適度の長さのスペーサー官能基を介して、難加水分解性ポリマーに結合するが、反応性官能基及びリガンドが一つのポリマーに結合していてもよいし、また、反応性官能基を有するポリマーとリガンドを持つポリマーとを混合して用いてもよい。
スペーサーとしては、一般式(1)で表されるものが含まれる。

Nz−(CH)n−A−(CH)m−Y (1)
一般式(1)中、Nzはリガンド又は反応性官能基、Aは酸素原子、硫黄原子、窒素原子、−NH−C(=O)−で表される基又はメチレン基、Yは難加水分解性ポリマーの残基(芳香核が好ましい)を表し、nは1〜20の整数、Aが酸素原子、硫黄原子又は窒素原子の場合、mは2〜11の整数、Aが−NH−C(=O)−で表される基の場合、mは1〜5の整数、Aがメチレン基の場合、mは0〜11の整数である。nとmは同一でも異なっていてもよい。
難加水分解性ポリマーの重量平均分子量は、成型できる程度であれば特に制限はないが、成形性等の観点から、ポリビニル芳香族化合物の場合、1万〜500万が好ましく、さらに好ましくは2万〜100万であり、芳香族ポリスルホン、ポリエーテルイミド又はポリイミドの場合、1万〜500万が好ましく、さらに好ましくは2万〜20万である。
易加水分解性縮合ポリマーの成型体を難加水分解性ポリマーで被覆処理するとは、易加水分解性縮合ポリマーの成型体の少なくとも一部(一部又は全部)を難加水分解性ポリマーで被覆できれば被覆処理の方法に制限はないが、難加水分解性ポリマーの有機溶媒溶液を用いて被覆処理することが好ましい。
有機溶媒としては、難加水分解性ポリマーを溶解することができれば制限がないが、非塩素系で発癌性の低い溶媒が好ましく、たとえば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキサイド及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
有機溶媒溶液を用いる場合、難加水分解性ポリマーの濃度は、被覆できれば制限がないが、有機溶媒溶液の重量に基づく難加水分解性ポリマーの含有量が0.1〜40重量%程度が好ましく、さらに好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。
被覆処理としては、ディピング法又は噴霧法等により被覆し、ついで、有機溶媒溶液を用いた場合、有機溶媒を留去して固化することにより達成でき、有機溶媒溶液を用いずに難加水分解性ポリマーを溶融させて被覆する場合、難加水分解性ポリマーを冷却して固化することにより達成できる。
難加水分解性ポリマーの被覆量(重量%)は、易加水分解性ポリマーの重量に基づいて、吸着性等の観点から、0.01〜80が好ましく、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは5〜20である。
易加水分解性縮合ポリマーの成型体を化学処理するのに使用するアミンとしては、アンモニア(NH)、モノアミン及びポリアミンが含まれる。
モノアミンとしては、炭素数2〜10のモノアミンが含まれ、ジメチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジプロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン、メチルヘキシルアミン及びエチルオクチルアミン等が挙げられる。
ポリアミンとしては、炭素数2〜8の(ポリ)アルキレンポリアミンが含まれ、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
これらのアミンのうち、吸着性の観点から、ポリアミンが好ましく、さらに好ましくはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミン、特に好ましくはジエチレントリアミンである。特に、アミノ基を少なくとも3個含むポリアミンを用いると、難加水分解性ポリマーと化学結合したり、吸着特異性に関与するリガンドとして作用できるため好ましい。また、アミンは低分子量であると、化学処理の後除去が容易であるため好ましい。
アミンによる化学処理としては、有機溶媒とアミンとからなる溶液中で、または水及び有機溶媒の混合溶媒とアミンとからなる溶液中で、加水分解性縮合ポリマーを加熱処理することにより達成できる。
アミンによる化学処理では、易加水分解性縮合ポリマーのエステル結合又はウレイド結合がアミノリシスを受けることにより切断され、エステル結合を持つポリマーはアミド結合(R−NHCO−:Rは水素原子又はアミンに由来する有機基)を持つ分解物と水酸基を持つ分解物とに変換され、ウレイド結合を持つポリマーは尿素結合(R−NHCO−NH−:Rは水素原子又はアミンに由来する有機基)を持つ分解物と水酸基を持つ分解物とに変換される。たとえば、ポリエチレンテレフタレート(易加水分解性縮合ポリマー)をジエチレントリアミンで化学処理すると、N−(アミノエチルアミノエチル)イミノカルボニル基(HN−CHCHNHCHCHNHCO−)と、水酸基(HO−)にアミノリシスされる。このアミノリシスにより、易加水分解性縮合ポリマーの成型体の表面を粗面化したり、多孔化したりすることができる。
アミノリシスにより、生成する分解物(オリゴマー等)のうち、分子量の小さなモノは反応溶媒に溶解し、溶解した後に分子オーダーのミクロポアが形成される。
有機溶媒としては、上記と同様のものが含まれるが、ジメチルスルホキサイド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びこれらの水の混合物が好ましく、さらに好ましくはジメチルスルホキサイド及び水の混合物である。
アミノリシスにより生成する分解物(オリゴマー等)の有機溶媒への溶解性は、形成されるミクロポアの大きさ(粗面化の度合いを含む)に影響すると考えられ、分子量の大きな分解物を溶解できる有機溶媒を用いると、ミクロポアの大きさが大きくなると共に、その数も多くすることができる。一方、難加水分解性ポリマーの被覆処理を施す場合、難加水分解性ポリマーが溶解し難い有機溶媒を用いることが好ましい。以上の観点から、上記の有機溶媒が好ましい。
水と有機溶媒との混合比率については、易加水分解性縮合ポリマーの成型体を多孔性にすること(易加水分解性縮合ポリマーの成型体の表面のポリマーを加水分解して成型体にミクロポアを形成すること)ができれば制限はないが、混合溶媒の重量に基づく水の含有量が1〜50重量%程度が好ましく、さらに好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは15〜20重量%である。
アミンの濃度は、多孔性の程度(ミクロポアの大きさ、数)に影響を与えるが、化学反応性等の観点から、混合溶液の重量に基づくアミンの含有量が0.1〜20重量%程度が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
化学処理の温度(℃)は、多孔性の程度(ミクロポアの大きさ、数)に影響を与えるが、化学反応性及び吸着材の機械的強度等の観点から、25〜120程度が好ましく、さらに好ましくは50〜110、特に好ましくは70〜105である。
化学処理の時間(時間)は、多孔性の程度(ミクロポアの大きさ、数)に影響を与えるが、化学反応性等の観点から、0.1〜10程度が好ましく、さらに好ましくは0.3〜5、特に好ましくは1〜3である。
化学処理の後、多孔性成型体は、用いた溶媒、水及び/又は他の有機溶媒で洗浄することが好ましい。さらに、溶媒や水、有機溶媒を除去するために乾燥することが好ましい。
アミンによる化学処理を行うと、易加水分解性縮合ポリマーの成型体の表面のポリマーを加水分解して成型体にミクロポアを形成することができる。
アミンの使用量(濃度)が少ないと、易加水分解性縮合ポリマーの分解産物(オリゴマー)の分子量が大きくなるため、形成される孔が大きくなる傾向がある。一方、アミンの使用量(濃度)を多くすると、易加水分解性縮合ポリマーの分解産物(オリゴマー)の分子量が小さくなるため、形成される孔が小さくなる傾向がある。
アミンとしてポリアミンを用いて化学処理すると、易加水分解性縮合ポリマーの成型体にアミノ基を導入することができる。易加水分解性縮合ポリマーの成型体にこのアミノ基が存在すると、難加水分解性ポリマーがアミンと化学結合を形成する反応性官能基を持つ場合、易加水分解性縮合ポリマーと難加水分解性ポリマーとの間に共有結合が形成され、化学的及び物理的により安定になる(耐熱性、耐腐食性、機械特性等にさらに優れる)。
アミン処理の処理条件を穏やかに行うと(アミン濃度1〜2重量%、100〜110℃、0.3〜0.6時間程度)、成型品表面の油剤等の異物が除去されると共に、表面付近の一部がアミノ化される。ついで、アミンと化学結合を形成する反応性官能基を持つ難加水分解性ポリマーで被覆処理すると、易加水分解性縮合ポリマーと難加水分解性ポリマーとの間に共有結合が形成され、化学的及び物理的により安定になる。この後に実施されるアミンによる化学処理によって、化学的及び物理的により安定な多孔性成型体を得ることができる。
難加水分解性ポリマーがアミノ基を持つ場合、このアミノ基が易加水分解性縮合ポリマーのエステル結合又はウレイド結合と化学反応することにより、新たにアミド結合又は尿素結合が形成され、化学的及び物理的により安定になる(耐熱性、耐腐食性、機械特性等にさらに優れる)。
アミンとしてポリアミンを用いて化学処理して、アミノ基をもつ難加水分解性ポリマーで被覆処理すると、本発明の多孔性吸着材は、化学的及び物理的により安定にすることができる(耐熱性、耐腐食性、機械特性等にさらに優れる)。
アミンによる化学処理は、(1)易加水分解性縮合ポリマーの成型体を化学処理して多孔性成型体を得てもよいし、(2)難加水分解性ポリマーで被覆処理されてなる複合成型体を化学処理して多孔性成型体を得てもよく、(3)易加水分解性縮合ポリマーの成型体を化学処理し、次いで難加水分解性ポリマーで被覆処理して複合成型体を得てから、複合成型体をアミンで化学処理して多孔性成型体を得てもよい。これらのうち、(2)及び(3)の方法が好ましく、さらに好ましくは(3)の方法である。
難加水分解性ポリマーによる被覆処理は、(1)易加水分解性縮合ポリマーの成型体を被覆処理してもよいし、(2)アミンで化学処理してなる多孔性成型体を被覆処理してもよく、(3)易加水分解性縮合ポリマーの成型体を被覆処理して複合成型体を得てから、複合成型体をアミンで化学処理して多孔性成型体を得て、さらに多孔性成型体を被覆処理してもよいし、(4)易加水分解性縮合ポリマーの成型体を化学処理し、次いで難加水分解性ポリマーで被覆処理して複合成型体を得てから、複合成型体をアミンで化学処理して多孔性成型体を得て、さらに多孔性成型体を被覆処理してもよい。これらのうち、(2)、(3)及び(4)の方法が好ましく、さらに好ましくは(3)及び(4)の方法、特に好ましくは(4)の方法である。
本発明の多孔性吸着材は、易加水分解性縮合ポリマーの成型体をアミンで化学処理して多孔性成型体を得る工程(1)を含む方法により製造できる。
工程(1)の後に、多孔性成型体を難加水分解性ポリマーで被覆処理して複合多孔性成型体を得る工程(2)を含むことが好ましい。
工程(2)の後に、複合多孔性成型体をアミンで化学処理して多孔性成型体を得る工程(3)を含むことが好ましい。
工程(3)の後に、多孔性成型体を難加水分解性ポリマーで被覆処理して複合多孔性成型体を得る工程(4)を含むことが好ましい。
工程(4)は、易加水分解性縮合ポリマーの成型品の表面のさらなる保護ができる。易加水分解性縮合ポリマーは加水分解され易いので、表面を難加水分解性ポリマーで被覆することにより化学的及び物理的に安定化され、多種の用途(医療用を含む)に適用できる。また、工程(4)で、リガンドを難加水分解性ポリマーを用いた場合、多孔性成型体にリガンドを導入することができ、たとえば、リガンド特有の蛋白質吸着機能や細胞吸着機能や細胞活性化機能が賦与できる。
本発明の多孔性吸着材は、多種の化学物質(気体、液体、固体)を吸着できるが、体液中に含まれる被吸着物質を吸着するための吸着材として適している。特に、被吸着物質が腫瘍増殖促進性蛋白質(S100A8/A9、HLA−G、TGF−β、可溶性CD40、可溶性TNF−R、インターロイキン−6等の免疫抑制作用の強い物質等)、神経病悪化蛋白質(S100B等)又はエンドトキシンである場合に最適である。
本発明の多孔性吸着材は、体外循環カラムに充填して、体外循環カラムとして使用することができる。
このような体外循環は、感染症(ウイルス疾患等)治療用、癌治療用又は脳神経科病(アルツハイマー病等)治療用として適している。
この体外循環カラムを癌治療用に適用した場合、手術療法、放射線療法、抗癌剤療法、活性化白血球療法、ワクチン療法等と併用すれば、これらの治療効果向上に役立ち、特に転移や再発の予防にも役立と考えられる。また、本発明の多孔性吸着材はTNF−αやインターフェロンーγやインターロイキン−6等の炎症性サイトカインを吸着するので、本発明吸着材を充填した体外循環カラムを用いれば、癌患者のQOL向上にも役立つと考えられる。
この体外循環カラムを脳神経科病治療用に適用した場合、本発明の多孔性吸着材はS100B等の神経病悪化物質に対する吸着性を有するため、脳神経疾患治療用して有効に使用できると考えられる。
リガンドとしてポリミキシンBをもつ多孔性吸着材を使用すると、血液中のエンドトキシンに対する吸着性を有し、かつ、炎症性サイトカインに対する吸着性も高いので、グラム陰性菌感染による敗血症や高サイトカイン血症となった感染症の治療用吸着材として使用できる。
本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、吸着性能評価、担癌ラットの調製、ラットの体外循環及び細胞傷害活性評価は、特に記載しない限り以下の方法で行った。また、特記しない限り、%は重量%を意味する。
1.アミノ基の定量
測定試料(検体)0.1gを秤量してから0.1M−ピクリン酸・70%エタノール水溶液10mLに浸し、2時間緩やかに振とうした後、洗浄液の黄色から無色になるまで、70%エタノール水溶液で洗浄した。次に、測定試料(検体)を10〜50mLの1%ジエチルアミン・70%エタノール水溶液に4時間浸し、ピクリン酸を溶出させた後、溶出液の320nmの吸光度からピクリン酸濃度を求め、この濃度を正確な測定試料(検体)の重量で除して1グラム当たりのアミノ基の量(μmol/g)とした。
2.吸着性能評価
(ヒト血清からの吸着試験)
測定試料(多孔性吸着材)50mgに対し2mLのヒトAB型血清(大日本住友製薬(株)から購入)に浸し、37℃で2時間緩やかに振とうした後、測定試料(多孔性吸着材)を除去し、血清中の可溶性CD40(sCD40)及びS100Bをベンダー・メドシステム社のELISAキットで測定した。また、TGF−β1及び可溶性TNF−R1はR and D Systems社のELISAキットで測定した。S100A8/A9はイムノダイアゴノスティックGmbH社のELISAキットで測定した。HLA−Gは文献に基づいてELISAを組み立て測定した。アルブミンはBCG法(Clinical Chemistry 1972: 18: 1537-1538)を用いて測定した。
(ヒト高サイトカイン血清の調製と吸着試験)
直径10cmの培養皿中、1×10個のTHP−1細胞を10mLの完全培地(RPMI1400培地:ウシ胎児血清10%含有、2−メルカプトエタノール50マイクロモル/L含有、ストレプトマイシン50マイクログラム/mL含有、ペニシリン−G50単位/mL含有)に浮遊させ、ホルボール−12−ミリスタート−13−アセタートを3μg/mL濃度になるよう加え、3日間培養してマクロファージに分化させた。次に、メディウムを捨て、ヒトAB型血清を10mL加え、さらに、Ecoli:055:B5のリポポリサッカライドを1μg/mLになるよう加えた。3日間培養して、上清を採取し、0.22μmの膜で滅菌ろ過して、高サイトカイン血清とした。
測定試料(多孔性吸着材)100mgを4mLの高サイトカイン血清(上記で調製したもの)に浸し、37℃で2時間緩やかに振とうした後、測定試料(多孔性吸着材)を除去し、血清中の各サイトカイン濃度をベンダー・メドシステム社のフローサイトミックスを用いて測定した。
3.ラット血清中のサイトカインの定量
ラットインターフェロンーγはRアンドD社のラットインターフェロンーγELISAキットを用いて測定した。
4.担癌ラットの調製
(KDH−8細胞の調製)
4−ジメチルアミノアゾベンゼン誘発肝癌細胞KDH−8{矢野 諭、北海道医誌、68巻5号、654−664(1993)}を完全培地(RPMI1400培地:ウシ胎児血清10%含有、2−メルカプトエタノール50マイクロモル/L含有、ストレプトマイシン50マイクログラム/mL含有、ペニシリン−G50単位/mL含有)中で継代した。使用4日前に新しい150cmの培養フラスコに移して培養し、PBS(−)で剥離して用いた。
(担癌ラットの調製)
癌細胞KDH−8をPBS(−)に浮遊させ、2×10個/mL濃度の液0.5mLを、WKAH/Hkmラット(雄、10−12週令)の背部皮下に接種して、担癌ラット(体重300〜400g)を調製した。
5.ラットの体外循環
(体外循環カラムの調製)
測定試料(多孔性吸着材)0.3gを内径1cm、内容積2mLのポリプロピレン製円筒形カラムに充填し、体外循環カラムを作成した。カラムと回路に70%アルコール水溶液を通液して滅菌した後、体外循環直前にヘパリン添加生理食塩液(20単位/mL)15mLを2mL/分の速度で流して前処理した。
(体外循環)
体重300〜400gの担癌ラットをネンブタールで全身麻酔し、左大腿の動脈と静脈にカニュレーションし、動脈から脱血し、マイクロチューブポンプを用いて、体外循環カラムを通過させ、静脈に返血した。血流速度2mL/分で1時間体外循環した。体外循環中ヘパリンを100単位/時間で持続投与した。
6.細胞傷害活性の測定
(ラット脾細胞)
ラットをネンブタールで麻酔した後、腹部大動脈から失血・屠殺させ、脾臓を採取した。脾臓を完全培地中で細かく砕き、細胞を採取した後、赤血球を除くため低浸透圧液で処理し、赤血球を溶血させた。得られた細胞を完全培地に浮遊させ、脾細胞液とした。
(細胞傷害活性)
(KDH−8細胞の蛍光ラベル)
生細胞の割合が90%以上のKDH−8細胞をPBS(−)中1×10細胞/mL濃度に調整した。この細胞液3mLに9μlの5(6−)カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(NHS−フルオレセイン)のジメチルスルホキシド溶液(5mg/mL)を加え、37℃で15分間温めた。完全培地10mLを加え、反応を停止し、遠心して、細胞ペレットを得た。これを10mLずつの完全培地で3回遠心・洗浄し、最後に完全培地に浮遊させて、1×10細胞/mL濃度とした。
(照射KDH−8細胞の調製)
X線発生装置MBR−1520Rを用い、150cmの培養フラスコ内のKDH−8細胞に10000レントゲンのX線を照射した後、PBS(−)中37℃の炭酸ガスインキュベーター内に30分間置いて細胞を剥離させ、完全培地中に分散して、細胞浮遊液とした。
(フローサイトメーターの測定・解析)
フローサイトメーターはベクトン・ディッキンソン社のFACSCaiberを用いた。FL−1(CFSE)陽性細胞でゲートをかけ、FL−3陽性の沃化プロピジウム染色細胞を死KDH−8細胞とし、FL−3陰性細胞を生KDH−8細胞とした。
[実施例1]
(難加水分解性ポリマー1の調製)
ニトロベンゼン20mL及び硫酸40mLの混合溶液を0℃に冷却後、2.6g(0.02モル)のN−ヒドロキシメチル−2−クロロアセトアミドを0〜10℃の温度で加えて溶解し、この溶液をユーデルポリスルホンP3500のニトロベンゼン溶液(88.4g:0.2モル/1600mL)に良く撹拌しながら加えた。さらに、20℃で2時間撹拌した後、反応混合物を大過剰の冷メタノール中に入れ、ポリマーを沈殿させた。沈殿物をニトロベンゼン臭が無くなるまでメタノールで抽出した後、50℃で乾燥して90.0 gのポリマーを得た。このポリマーを2Lのジメチルホルムアミドに溶解し、大過剰のメタノール中に入れて再沈殿させ、精製して難加水分解性ポリマー1を得た。
このポリマーはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド又はテトラヒドロフランのぞれぞれによく溶解した。
このポリマーをクロロホルムに溶解し、ガラス板の上にキャストして作成したフイルムを赤外線吸収測定し、3290−3310、1670、1528cm−1の吸収からアミド結合の存在を確認した。重水素化クロロホルム溶液のH−NMRスペクトルを測定し、ポリスルホン主鎖のイソプロピリデン基{(CHC=}の水素(6H)に由来ピーク(1.66ppm;シングレット)の面積に対するクロロメチルカルボニルアミノメチル基(ClCHCONHCH−)のアミノメチルのメチレン基の水素(2H)に由来のピーク(4.22ppm)の面積の比率から、アミノメチル基の置換率が10モル%であることを確認した。なお、このアミノメチル基には、クロロメチルカルボニルアミノメチル基及びこの一部(5〜10モル%)が加水分解して生成するアミノメチル(NHCH−)が含まれる(以下、同じである)。
(難加水分解性ポリマー2の調製)
ニトロベンゼン130mL及び硫酸270mLの混合溶液を0℃に冷却後、27.2g(0.25モル)のN−ヒドロキシメチル−2−クロロアセトアミドを0〜10℃の温度で加えて溶解し、この溶液をユーデルポリスルホンP3500のニトロベンゼン溶液(44.2g:0.1モル/500mL)に良く撹拌しながら加えた。さらに、20℃で2時間撹拌した後、反応混合物を大過剰の冷メタノール中に入れ、ポリマーを沈殿させた。沈殿物をニトロベンゼン臭が無くなるまでメタノールで抽出した後、50℃で乾燥して62.0 gのポリマーを得た。このポリマーを1Lのジメチルホルムアミドに溶解し、大過剰のメタノール中に入れて再沈殿させ、精製して難加水分解性ポリマー2を得た。
このポリマーはジメチルホルムアミドやジメチルスルホキサイドに溶解するが、テトラヒドロフランには溶解しなかった。元素分析:N:4.2% Cl:9.3%。
臭化カリウムペレットの赤外線吸収スペクトル(3290−3310、1670、1528cm−1)の吸収からアミド結合の存在を確認した。
このポリマーの重水素化ジメチルスルホキサイド溶液のH−NMRスペクトルから難加水分解性ポリマー1の場合と同様にして、アミノメチル基の置換率が200モル%であることを確認した。
(アミンによる化学処理1)
ポリエチレンテレフタレート繊維不織布(密度48mg/cm;日本バイリーン(株))88.2gを1.4%ジエチレントリアミン・ジメチルスルホキサイド溶液2Lに浸し、105℃で20分間加熱してから、水洗後、50℃で乾燥して87.2gの前処理不織布−1を得た。アミノ基の量は8.8μmol/gであった。
(被覆処理1)
先に調製した難加水分解性ポリマー1の1.6gを400mLのテトラヒドロフランに溶解し、この溶液に先に調製した前処理不織布−1の20gを浸し、24時間静置した後、テトラヒドロフランを蒸発させ、21.6gの一次被覆不織布−1を得た。アミノ基の量は2.0μmol/gであった。
(アミンによる化学処理2)
ジエチレントリアミン25mL、水75mL及びジメチルスルホキサイド400mLからなる溶液に22gの一次被覆不織布−1を浸し、80℃の水浴中で3時間加熱してから、不織布を水洗後、50℃で乾燥して、20.2gの多孔化不織布−1を得た。アミノ基の量は117μmol/gであった。
(被覆処理2)
先に調製した難加水分解性ポリマー2の2gを200mLのジメチルスルホキサイドに溶解し、1%の溶液を得た。この溶液に先に調製した10gの多孔化不織布−1を浸し、50℃で3時間加熱した後、不織布を引き上げ、ジメチルスルホキサイドで3回洗浄して、二次被覆不織布−1を得た。
この二次被覆不織布−1を、ジメチルブチルアミン5gを含む200mLのジメチルスルホキサイドに浸し、50℃のバス中で3時間加熱して、クロロメチルカルボニルアミノメチル基をN,N−ジメチルブチルアンモニオ−メチルカルボニルアミノメチル基に変換した。不織布を取り出して、エタノールで洗浄した後、水洗し、50℃で真空乾燥して、9.2gのジメチルブチルアンモニウム化不織布(本発明の多孔性吸着材−1)を得た。アミノ基の量は132μmol/gであった。
[実施例2]
(被覆処理1)
実施例1で調製した難加水分解性ポリマー1の4gを400mLのテトラヒドロフランに溶解し、この溶液に実施例1で調製した前処理不織布−1の20gを浸し、24時間静置した後、テトラヒドロフランを蒸発させ、24gの一次被覆不織布−2を得た。
(アミンによる化学処理2)
ジエチレントリアミン25mL、水75mL及びジメチルスルホキサイド400mLからなる溶液に20gの一次被覆不織布−1を浸し、80℃の水浴中で3時間加熱してから、不織布を水洗後、50℃で乾燥して、18.5gの多孔化不織布−2を得た。アミノ基の量は114μmol/gであった。
(被覆処理2)
先に調製した難加水分解性ポリマー2の2gを200mLのジメチルスルホキサイドに溶解し、1%の溶液を得た。この溶液に先に調製した10gの多孔化不織布−2を浸し、50℃で3時間加熱した後、不織布を引き上げ、ジメチルスルホキサイドで3回洗浄して二次被覆不織布−2を得た。
この二次被覆不織布−2を、ジメチルブチルアミン5gを含む200mLのジメチルスルホキサイドに浸し、50℃のバス中で3時間加熱して、クロロメチルカルボニルアミノメチル基をN,N−ジメチルブチルアンモニオ−メチルカルボニルアミノメチル基に変換した。不織布を取り出して、エタノールで洗浄した後、水洗し、50℃で真空乾燥して、9.6gのジメチルブチルアンモニウム化不織布(本発明の多孔性吸着材−2)を得た。アミノ基の量は113μmol/gであった。
[実施例3]
(被覆処理2)
実施例1で得られた多孔化不織布−1の10gを、実施例1で調製した難加水分解性ポリマー2の2gを200mLのジメチルスルホキサイドに溶解した溶液中に浸し、50℃で3時間加熱した後、不織布を引き上げ、ジメチルスルホキサイドで3回洗浄して二次被覆不織布−3を得た。
この二次被覆不織布−3を、ジメチルヘキシルアミン5gを含む200mLのジメチルスルホキサイドに浸し、50℃のバス中で3時間加熱して、クロロメチルカルボニルアミノメチル基をN,N−ジメチルヘキシルアンモニオ−メチルカルボニルアミノメチル基に変換した。不織布を取り出して、エタノールで洗浄した後、水洗し、50℃で真空乾燥して、9.2gのジメチルヘキシルアンモニウム化不織布(本発明の多孔性吸着材−3)を得た。アミノ基の量は118μmol/gであった。
[実施例4]
(難加水分解性ポリマー3の調製)
ニトロベンゼン60mL及び硫酸120mLの混合溶液を0℃に冷却後、20.5g(0.17モル)のN−ヒドロキシメチル−2−クロロアセトアミドを0〜10℃の温度で加えて溶解し、この溶液をユーデルポリスルホンP3500のニトロベンゼン溶液(66.4g:0.15モル/660mL)に良く撹拌しながら加えた。さらに、20℃で2時間撹拌した後、反応混合物を大過剰の冷メタノール中に入れ、ポリマーを沈殿させた。沈殿物をニトロベンゼン臭が無くなるまでメタノールで抽出した後、50℃で乾燥して87.1 gのポリマーを得た。このポリマーを900mLのジメチルホルムアミドに溶解し、大過剰のメタノール中に入れて再沈殿させ、精製して難加水分解性ポリマー3’を得た。
このポリマーはジメチルホルムアミドやジメチルスルホキサイドに溶解するが、テトラヒドロフランには溶解しなかった。このポリマーの赤外線吸収スペクトルを臭化カリウムペレットで取り、3290−3310、1670、1528cm−1の吸収からアミド結合の存在を確認した。
この難加水分解性ポリマー3’の20gを200mLのジメチルホルムアミドに溶かし、撹拌しながら5gの塩化クロロアセチルを加えてから、室温(約25℃)で2時間撹拌した後、大過剰のメタノールに加え、ポリマーを沈殿させた。クロロメチルカルボニルアミノメチル基の一部が加水分解されて生成したアミノメチル基(NHCH−)にクロロアセチル基を導入し、アミノメチル基をクロロメチルカルボニルアミノメチル基に変換したことにより、ポリマーはテトラヒドロフランに溶解するようになった。そこで得られたポリマーをテトラヒドロフランに溶解し、メタノールで沈殿させて精製し、難加水分解性ポリマー3を得た(収量18.3g)。
クロロホルム溶液から調製したフイルムの赤外線吸収スペクトルから3290−3310、1670、1528cm−1のアミド結合の吸収を確認した。元素分析:N:2.6%、Cl:6.1%、S:6.0%。重水素化ジメチルスルホキサイド溶液のH−NMRスペクトルから実施例1の難加水分解性ポリマー1の場合と同様にして、クロロメチルカルボニルアミノメチル基の置換率が100モル%であることを確認した。
(被覆処理1)
上記で調製した難加水分解性ポリマー3の3gを400mLのテトラヒドロフランに溶解し、この溶液に実施例1で調製した前処理不織布−1の20gを浸し、24時間静置した後、テトラヒドロフランを蒸発させ、23gの一次被覆不織布−3を得た。アミノ基の量は2.9μmol/gであった。
(アミンによる化学処理2)
ジエチレントリアミン15mL、水25mL及びジメチルスルホキサイド360mLからなる溶液に20gの一次被覆不織布−3を浸し、80℃の水浴中で3時間加熱してから、不織布を水洗後、50℃で乾燥して、17.3gの多孔化不織布−3(本発明の多孔性吸着材−4)を得た。アミノ基の量は357μmol/gであった。
[比較例1]
特許文献3に記載された第4級アンモニウム塩基を有するスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる多孔質材料IRA938(オルガノ株式会社)を比較用の吸着材−1とした。
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート繊維不織布(密度48mg/cm;日本バイリーン(株))を比較用の吸着材−2とした。
[比較例3]
ポリエチレンテレフタレート繊維不織布(密度48mg/cm;日本バイリーン(株))10gを0.2モル/L水酸化ナトリウム水溶液1Lに浸し、105℃で30分間加熱してから、水洗いし、50℃で乾燥して、9.7gの比較用の吸着材−3を得た。
<吸着能評価>
ヒトAB型血清(大日本住友製薬(株))を0.22μmのフィルターでろ過することにより不溶物の除去及び滅菌を行なって、精製ヒト血清を得た。
本発明の多孔性吸着材−1〜4及び比較用の吸着材−1〜3のそれぞれ50mgを精製ヒト血清2mLに浸し、37℃で2時間緩やかに振盪した。その後、精製ヒト血清中の各成分の濃度を定量して表1に示した。
アルブミンの濃度低下はいずれも10%以下であった。なお、各成分の初期濃度は、S100Bは33.3pg/mL、S100A8/A9は108.4pg/mL、TGF−β1は8.2ng/mL、sCDは39.2pg/mL、アルブミンは3.3mg/dLであった。
Figure 2010201345


表1から、本発明の多孔性吸着材について、S100B、S100A8/A9、TGF−β1及びsCD40の濃度低下が大きかったが、アルブミンの濃度低下は少なかった。特に実施例1〜3で得た多孔性吸着材についての吸着能が著しく高かった。一方、比較例1〜3の吸着材について、吸着能は著しく低かった。
[実施例5]
(被覆処理2)
実施例4で得られた多孔化不織布−3の10gを、実施例1で調製した難加水分解性ポリマー2の4gを200mLのジメチルスルホキサイドに溶解した溶液中に浸し、50℃で3時間加熱した後、不織布を引き上げ、ジメチルスルホキサイドで2回洗浄した。ついで、この不織布を、ポリミキシンB溶液(ポリミキシンB硫酸塩500mgを200mLのジメチルスルホキサイド溶液に溶解し、これに1N−水酸化ナトリウム1.8mLを加えて均一溶液としたもの)に浸し、40℃のバス中で3時間加熱してから、不織布を取り出し、水洗し、50℃で真空乾燥して、5.0gのポリミキシンB化不織布(リガンドとしてポリミキシンBをもつ本発明の多孔性吸着材−5)を得た。アミノ基の量は413μmol/gであった。
<エンドトキシン吸着能>
本発明の多孔性吸着材−5の0.2gを生理食塩水中に浸し、オートクレーブ滅菌(120℃×20分)した後、注射用生理食塩水で洗浄し、液を搾った後、10ng/mL濃度のエンドトキシン(E.coliO111:B4)含有牛胎児血清15mL中に入れ、1時間震盪した後、溶液のエンドトキシンを和光純薬製のリムラスESテストワコー試薬とトキシノメーターを用いて測定したところ、エンドトキシン濃度が1ng/mLまで低下していた。
一方、比較用の吸着材1〜3について同様に測定したところ、エンドトキシン濃度は10ng/mLのままであり、エンドトキシン吸着は全く認められなかった。
<炎症性サイトカイン吸着能>
高サイトカイン血清2mLに50mgの本発明の多孔性吸着材−5又は比較用の吸着材1〜3のいずれかを入れ、37℃で1時間振盪した後、上清中のサイトカイン濃度を測定し、濃度低下率を求め、表2に示した。アルブミンの濃度低下率はいずれも10%以下であった。
なお、各成分の初期濃度は、TNF−αは1500pg/mL、IL−6は2500pg/mL、IL−1βは200pg/mL、IL−6Rは45ng/mL、TNF−R1は2900pg/mL、アルブミンは3.3mg/dLであった。
Figure 2010201345


<可溶性HLA−G吸着能>
高サイトカイン血清2mLに50mgの本発明の多孔性吸着材−3又は比較用の吸着材1〜3のいずれかを入れ、37℃で1時間振盪した後、上清中の可溶性HLA−G濃度を測定し、450nmでの吸光度の低下率を求め、測定結果を表3に示した。
なお、可溶性HLA−Gの初期期濃度は、15ng/mLであった。
Figure 2010201345



表から可溶性HLA−Gの濃度が半分程度に低下していることが分かる。
<ラット脾細胞の細胞傷害活性の測定:間接法>
KDH−8細胞接種10日後の担癌ラット3匹に、本発明の多孔性吸着材1を充填した体外循環カラムで体外循環を1時間施行した後、4日後に脾臓を採取した。この脾臓を完全培地中で破砕し、血球細胞を取り出した後、赤血球を溶血させて、完全培地に浮遊させた脾細胞液(2×10個/mL濃度)を調製した。比較として、体外循環治療をしなかった同週令の担癌ラット3匹からも同様にして脾細胞液(2×10個/mL濃度)を調製した。
別に、X線照射したKDH−8細胞の2×10個/mL濃度を調製し、上記脾細胞と1:1で混合し、37℃の炭酸ガスインキュベーター中で3日間培養した。コントロールとしてX線照射したKDH−8細胞の代わりに完全培地を加えたものも同様に培養した。これらの細胞培養液を遠心して培養上清を採取し、その中のインターフェロンーγ濃度を測定した。これらの結果を表4に示した。
Figure 2010201345



この結果から、本発明の多孔性吸着剤1がキラー細胞の誘導に重要な役割を持つインターフェロンーγ産生能を癌細胞特異的に増強させたことが分かる。
<フローサイトメーターによるラット脾細胞の細胞傷害活性の測定>
KDH−8細胞接種7日後の担癌ラット3匹に、本発明の多孔性吸着材−2又は比較用の吸着材2を0.3g充填した体外循環カラムで体外循環を1時間施行した後、7日後に脾臓を採取した。
コントロールとして体外循環をせず、癌細胞を接種して20日後の担癌ラット3匹及び同週令の正常ラット3匹からも同様に脾臓を採取した。これらの脾臓を完全培地中で破砕し、血球細胞を取り出した後、赤血球を溶血させて、完全培地に浮遊させた脾細胞液(2×10個/mL濃度)を調製した。
別にKDH−8細胞をCFSEラベルし、50倍量の上記脾細胞と混合し、37℃の炭酸ガスインキュベーター中で36時間培養した。フローサイトメーターでKDH−8細胞の死亡割合を求め、各脾細胞の殺細胞活性(キラー活性)を求めた。これらの結果を表5に示した。
Figure 2010201345


本発明の多孔性吸着材を用いた体外循環カラムを用いると、比較用の吸着材を用いた循環カラムや無治療担癌群に比較し、殺細胞活性が増強されたことが分かる。正常ラットに比べ、無治療担癌ラットの殺細胞活性が高いのは、常に癌細胞の刺激を受けているため、活性が低いもののキラー細胞が存在するためと考えられる。
<担癌ラットの肺転移モデル>
癌細胞KDH−8の2×10個を0.5mLのPBS(−)に浮遊させ、WKAH/Hkmラット(雄:8週令)の背部皮下に接種し、12匹の担癌ラットを調製した。そして、担癌ラット3匹について14日目にネンブタールでの麻酔下で、腫瘍を切除した後、本発明の多孔性吸着材−1又は比較用の吸着材2を0.3g充填したカラムで体外循環を1時間施行した。体外循環終了時の傷口縫合直後に、尾静脈からPBS(−)0.5mLに浮遊させた2×10個を尾静脈から注入した。
また、体外循環との比較のため、担癌ラット3匹について癌細胞接種後14日目に背部の腫瘍近くの皮膚を3cm切開した後、傷口を縫合し、その後、尾静脈からPBS(−)0.5mLに浮遊させた2×10個のKDH−8液を注入する実験を行なった。さらに残りの3匹については手術及び体外循環を行なわず、14日目の尾静脈からの腫瘍注入だけを行なった。担癌28日目に全てのラットを屠殺した後、背部腫瘍の大きさを測定すると共に、肺を採取し、腫瘍転移の有無を調べた。これらの結果を表6に示した。
但し、表中背部腫瘍体積は、外部から測った長径をLcmと短径をScmとしたときのS×S×L÷2の値を意味する。
Figure 2010201345


この結果から本発明の多孔性吸着材−2を充填したカラムで体外循環すると、肺での腫瘍定着が起こらないことが確かめられ、本発明の多孔性吸着材が肺転移の防止に役立つことが分かった。
以上の評価結果から、本発明の多孔性吸着材は、血液中の腫瘍増殖促進性物質、炎症性サイトカイン、神経病悪化蛋白質及びエンドトキシンに対する吸着性に著しく優れることが確認できた。また、本発明の多孔性吸着材を充填した体外循環カラムを用いて体外循環を行うことにより、担癌状態によって抑制されている宿主免疫細胞の抗原特異的細胞傷害活性を増強できると共に、腫瘍の肺転移の抑制ができることが確認できた。

Claims (16)

  1. 易加水分解性縮合ポリマーの成型体をアミンで化学処理してなる多孔性成型体から構成されることを特徴とする多孔性吸着材。
  2. 易加水分解性縮合ポリマーの成型体が難加水分解性ポリマーで被覆処理されてなる複合成型体である請求項1に記載の多孔性吸着材。
  3. 多孔性成型体が難加水分解性ポリマーで被覆処理されてなる複合多孔性成型体である請求項1又は2に記載の多孔性吸着材。
  4. アミンが多価アミンである請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性吸着材。
  5. 易加水分解性縮合ポリマーがポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸又はこれらの混合体である請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性吸着材。
  6. 難加水分解性ポリマーが芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミド、ポリビニル芳香族化合物又はこれらの混合体である請求項2〜5のいずれかに記載の多孔性吸着材。
  7. 易加水分解性縮合ポリマー及び/又は難加水分解性ポリマーがアミノ基又は環状ペプチドの残基を有する請求項2〜6のいずれかに記載の多孔性吸着材。
  8. 成型品が繊維状、不織布状、膜状、中空糸状又は粉粒状の形状である請求項1〜7のいずれかに記載の多孔性吸着材。
  9. 体液中に含まれる被吸着物質を吸着するための吸着材である請求項1〜8のいずれかに記載の多孔性吸着材。
  10. 被吸着物質が腫瘍増殖促進性蛋白質、神経病悪化蛋白質又はエンドトキシンである請求項9に記載の多孔性吸着材。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載された多孔性吸着材を充填してなることを特徴とする体外循環カラム。
  12. 感染症治療用、癌治療用又は脳神経科病治療用である請求項11に記載の体外循環カラム。
  13. 易加水分解性縮合ポリマーの成型体をアミンで化学処理して多孔性成型体を得る工程(1)を含むことを特徴とする多孔性吸着材の製造方法。
  14. 工程(1)の後に、多孔性成型体を難加水分解性ポリマーで被覆処理して複合多孔性成型体を得る工程(2)を含む請求項13に記載の製造方法。
  15. 工程(2)の後に、複合多孔性成型体をアミンで化学処理して多孔性成型体を得る工程(3)を含む請求項14に記載の製造方法。
  16. 工程(3)の後に、多孔性成型体を難加水分解性ポリマーで被覆処理して複合多孔性成型体を得る工程(4)を含む請求項15に記載の製造方法。
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