JP2010184926A - 三酸化ヒ素製剤の製造方法および三酸化ヒ素またはメラルソプロールを使用する癌の治療方法 - Google Patents

三酸化ヒ素製剤の製造方法および三酸化ヒ素またはメラルソプロールを使用する癌の治療方法 Download PDF

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Abstract

【課題】種々の白血病、リンパ腫および固形腫瘍を治療するためのヒ素化合物の使用の提供。
【解決手段】治療的に有効な量の三酸化ヒ素を含んで成るヒトにおける急性骨髄性白血病の治療製剤。
【選択図】なし

Description

1.発明の分野
本発明は、白血病、リンパ腫および或る種の他の癌の治療のための方法および組成物に関する。
より詳しくは、本発明は、急性白血病および慢性白血病を治療するための三酸化ヒ素および有機ヒ素化合物の新規用途に関する。
2.発明の背景
2.1.
癌は、主として、ある正常組織に由来する異常細胞の数の増加、これらの異常細胞による隣接組織への浸潤、および局所リンパ節および遠隔部位への悪性細胞のリンパ行性または血行性の広がり(転移)により特徴づけられる。臨床データおよび分子生物学的研究は、癌が、小さな腫瘍発現前変化から始まり或る条件下で新生物へと進行する多段階過程であることを示している。
新生物病変の形成の前に、過形成、異形成および形成異常により例示される前癌性異常細胞増殖が生じる(そのような異常増殖状態の総説として、RobbinsおよびAngell, 1976, Basic Pathology, 第2版, W.B. Saunders Co., Philadelphia, pp.68-79を参照されたい)。新生物病変はクローン的に生成して固形腫瘍にまで増殖し、浸潤、増殖、転移および不均一化の能力を次第に発達させうる(これは特に、新生物細胞が宿主の免疫監視を逃れる条件下で生じる)(Roitt, I., Brostoff, JおよびKale, D., 1993, Immunology, 第3版, Mosby, St. Louis. pps.17.1-17.12)。
白血病は血液形成組織の悪性新生物をいう。悪性状態へのトランスフォーメーションは、典型的には、単一の細胞において2以上の段階を経て生じ、ついで増殖およびクローン的拡大(クローナルエクスパンジョン)が生じる。いくつかの白血病においては、特異的な染色体転座が、一貫した白血病細胞の形態学および特殊な臨床的特徴と共に確認されている(例えば、慢性骨髄性白血病における9番および22番の転座、急性前骨髄球性白血病における15番および17番の転座)。急性白血病では、未分化の細胞集団が、慢性白血病では、より成熟した細胞形態が優勢である。
急性白血病はリンパ芽球(ALL)型および非リンパ芽球(ANLL)型に分類される。それらは更に、FAB(French-American-British)分類に従い又はそれらの分化のタイプおよび程度に従い、それらの形態学的および細胞化学的外観により細分されうる。分類のためには、特異的なB細胞およびT細胞ならびに骨髄性-抗原モノクローナル抗体の使用が最も有用である。ALLは、主に、実験室的な所見および骨髄の検査により確認される小児疾患である。急性骨髄芽球性白血病(AML)としても知られるANLLは、あらゆる年齢で生じ、成人において、より一般的な急性白血病である。それは、通常は原因因子として照射が関連している形態である。
慢性白血病は、リンパ球性(CLL)または骨髄性(CML)として記載される。CLLは、血液、骨髄およびリンパ系器官内の成熟リンパ球の出現により特徴づけられる。CLLの特徴は、持続性の絶対的なリンパ球増加(>5,000/μL)、および骨髄内のリンパ球の増加である。また、ほとんどのCLL患者は、B細胞の特徴を有するリンパ球のクローン的拡大を有する。CLLは、高齢者の疾患である。CMLにおける特徴的な特性は、血液、骨髄、肝臓、脾臓および他の器官における全ての分化段階の顆粒球細胞が優勢なことである。診断時における症候性患者では、全WBC数は、通常、約200,000/μLであるが、1,000,000/μLに達することもある。CMLの診断は、フィラデルフィア染色体の存在のため比較的容易である。
造血器癌のまさにその性質のため、一次治療様式としては全身的化学療法を用いらざるを得ない。特定の白血病の感受性に応じて選択した薬物を、通常、組合せて投与する。白血病細胞の局所的蓄積に対処するために、付加的に放射線療法を用いることができる。手術は、一次治療様式としてはめったに適用しないが、いくつかの合併症の処置において用いることがある。HLAが一致した兄弟からの骨髄移植を適用することもある。
2.2.ヒ素およびその医学的用途
西洋および中国の双方の医学的慣習においては古くから、ヒ素は毒物であると同時に薬物であるとみなされてきた。西洋では19世紀後半に、血液の疾患を治療する試みにおいてヒ素が頻繁に使用された。ファウラー液(+5価の亜ヒ酸カリウムを含有する溶液)で白血病患者を治療すると白血球数が著しく減少したことが、1878年に報告されている(CutlerおよびBradford, Am. J. Med. Sci., 1878年1月, 81-84)。慢性骨髄性白血病(CML)を治療するための緩和剤としてのファウラー液の使用に対する更なる関係についてはForknerおよびScottにより1931年に記載されており(J. Am. Med. Assoc., 1931, iii, 97)、後にStephensおよびLawrenceにより1936年に確認された(Ann. Intern Med. 9, 1488-1502)。しかしながら、ファウラー液の有効化学成分は決定されず、一方、その毒性が著しく認められた。ファウラー液は専ら経口組成物として投与され、白血球のレベルが許容レベルに低下するまで、あるいは毒性(例えば、皮膚角化症および色素沈着過剰)が現れるまで、溶液として白血病患者に投与され、その間、患者には種々の期間の寛解がもたらされた。1960年代においても依然として、CMLを治療するための試みにおいてファウラー液が時々使用されたが、ほとんどのCML患者は、ブスルファンなどの他の化学療法剤および/または放射線療法で治療された(Monfardiniら, Cancer, 1973, 31:492-501)。
逆説的なことであるが、ヒ素に対する曝露の影響の1つとして長い間認められているものは皮膚癌であり、これは、起源が環境的なものであるか医学的なものであるかには無関係である(Hutchinson, 1888, Trans. Path. Soc. Lond., 39:352; Neubauer, 1947, Br. J. Cancer, 1:192)。ファウラー液の長期使用が内部の癌の発生頻度の増加につながりうることを示唆する疫学的データさえあった(Cuzickら, Br. J. Cancer, 1982, 45:904-911; Kasparら, J. Am. Med. Assoc., 1984, 252:3407-3408)。その後、ヒ素が染色体異常、遺伝子増幅、姉妹染色分体交換および細胞トランスフォーメーションを誘発しうるという事実により、ヒ素の発癌性が立証された(例えば、Leeら, 1988, Science, 241:79-81; およびGermolecら, Toxicol. Applied Pharmacol., 1996, 141:308-318を参照されたい)。ヒ素の既知の発癌効果のため、今日の西洋医学におけるヒトでのその唯一の治療用途は、アフリカトリパノソーマ症などの熱帯病の治療におけるものである(有機ヒ素剤メラルソプロール; Goodman & Gliman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第9版, 第66章, 1659-1662, 1997を参照されたい)。
伝統的な中国医学においては、歯骨髄(tooth marrow)疾患、乾癬、梅毒およびリウマチ症を治療するために亜ヒ酸または三酸化ヒ素ペーストが使用されている(Chenら, 1995, Manual of Clinical Drugs, Shanghai, China, Shaghai Institute of Science and Technology, p.830)。1970年代に中国においては、急性前骨髄球性白血病(APL)を治療するために三酸化ヒ素が実験的に適用されていた(Mervis, 1996, Science, 273:578による解説)。最近、三酸化ヒ素の臨床的効力が、難治性APL患者15人中14人において再調査され、この場合、静脈内用量10mg/日での4〜9週間の使用が、骨髄の抑制を伴うことなく完全な形態学的寛解をもたらすと報告された(Shenら, 1997, Blood, 89:3354-3360)。また、三酸化ヒ素は、APL細胞系であるNB4細胞においてin vitroでアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導し、アポトーシスは癌遺伝子bcl-2のダウンレギュレーションとAPL細胞に特有のキメラPML/RARαタンパク質の細胞内再分布とに関連しているらしいことが示された(Chenら, 1996, Blood, 88:1052-1061; Andreら, 1996, Exp. Cell Res. 229:253-260)。ヒ素の生物活性は、ヒ素がPMLの核質画分を核顆粒(nuclear bodies)に導いて分解させうることによるものであると報告されている(Zhuら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci., 94:3978-3983)。
ヒ素は毒物であると同時に発癌剤であることはよく知られているが、医学的治療におけるヒ素の使用に関する多数の報告がある。さらに、多数の異なる型の白血病が存在し、それらのそれぞれは、治療の失敗のリスクを予測させる要因の存在に応じて改変された独特の治療プロトコールを要することが、前記の考察から明らかなはずである。したがって、単独で又は他の既存の薬物と組合せて使用されうる広域スペクトルの抗白血病剤の開発が大いに望まれている。
3.発明の概要
患者に対するヒ素の投与の利益およびリスクに関する当技術分野における相反する報告にもかかわらず、出願人らは、三酸化ヒ素および有機ヒ素剤メラルソプロールが、種々の型の白血病、リンパ腫および固形腫瘍の治療における広い適用可能性を有することを見出した。
本明細書に記載の発明は、白血病、リンパ腫または固形腫瘍の治療方法であって、そのような治療を要するヒトに、治療的に有効な非致死量の三酸化ヒ素またはメラルソプロールを投与することを含んでなる方法を含む。前記の発明はまた、白血病(特に、他の形態の治療に難治性である白血病)を治療するための、組合せ療法の使用を含む。
本発明はまた、三酸化ヒ素を含む医薬組成物の製造方法を含む。
本発明では、三酸化ヒ素またはメラルソプロール化合物を、単独で、又は他の既知治療剤(化学療法剤、放射線防護剤(radioprotectant)および放射線療法を含む)と組合せて、あるいは患者のクオリティ・オブ・ライフを改善するための又は白血病、リンパ腫もしくは固形腫瘍を治療するための技術と組合せて使用することができる。該ヒ素化合物は、抗腫瘍剤を含む1以上の既知化学療法剤の投与の前、途中または後に使用することができる。また、該ヒ素化合物は、放射線療法の前、途中または後に使用することができる。
本発明の医薬組成物は、静脈内注射または注入に適した無菌溶液である。もう1つの実施形態において、本発明は、三酸化ヒ素またはメラルソプロールと製薬上許容される賦形剤または担体とを含んでなる経口送達に適した組成物を含む。もう1つの実施形態において、本発明はまた、局所または経皮送達(イオン導入法が含まれるが、これに限定されるものではない)に適した組成物を含む。本発明は、特定の治療方式、医薬組成物およびキットも提供する。
本発明の特定の組成物およびそれらの用途を、以下の節および小節に記載する。
4.発明の詳細な記載
白血病、リンパ腫または固形腫瘍の治療のための方法および組成物を、ここに記載する。本発明は、ヒトにおける急性または慢性白血病、リンパ腫または固形腫瘍の治療方法であって、そのような治療を要するヒトに、治療的に有効な非致死量の1以上のヒ素化合物(例えば、三酸化ヒ素またはメラルソプロール)を投与することを含んでなる方法を提供する。
本発明はまた、他の形態の治療に対して難治性となったヒトにおける白血病の治療方法であって、三酸化ヒ素またはメラルソプロールを、別の化学療法剤(例えば、全trans-レチノイン酸(ATRA))と組合せてヒトに投与することを含んでなる方法を含む。
本発明はまた、三酸化ヒ素を含む医薬組成物の製造方法に関する。本発明の医薬組成物は、減少した毒性、改善された効力、保存および使用中の改善された安定性を示すことが好ましく、該組成物は、生理的に許容されるpHを有することが好ましい。
4.1.ヒ素化合物
本発明で用いる「ヒ素化合物」は、製薬上許容される形態の三酸化ヒ素(AS2O3)またはメラルソプロールを意味する。メラルソプロールは、酸化メラルセンとジメルカプロールとを複合化させることにより合成、又は商業的に購入(Rhone Poulenc Rorer, Collegeville, PAによるArsobal(登録商標))することができる有機ヒ素化合物である。本発明の非医薬的に製剤化された原料はよく知られているため、それらは、当技術分野においてよく知られた化学技術により製造することができる(例えば、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology 第4版. 第3巻, pps. 633-655 John Wiley & Sonsを参照されたい)。
本発明で用いる「治療剤」、「治療方式」、「放射線防護剤」、「化学療法剤」なる語は、癌、ウイルス感染症および他の悪性疾患を治療するための、当業者に公知の通常の薬物および薬物療法(ワクチンを含む)を意味する。「放射線療法」剤は当技術分野においてよく知られている。
本発明では、三酸化ヒ素またはメラルソプロール化合物を、単独で、又は他の公知治療剤(化学療法剤、放射線防護剤および放射線療法を含む)と組合せて、あるいは患者のクオリティ・オブ・ライフを改善するための又は白血病、リンパ腫もしくは固形腫瘍を治療するための技術と組合せて使用することができる。例えば、該ヒ素化合物は、1以上の公知抗腫瘍剤(マスタード化合物、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、メトトレキセート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソール、エトポシド、テミポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、リン酸エストラムスチン、ヒドロキシ尿素、BCNU、プロカルバジン、VM-26、インターフェロンおよび全trans-レチノール酸(ATRA)または他のレチノイドを含むが、これらに限定されるものではない)(例えば、Physician Desk References 1997を参照されたい)の投与の前、途中または後に使用することができる。また、該ヒ素化合物は、放射線療法の前、途中または後に使用することができる。
特定の実施形態においては、本発明のヒ素化合物およびATRAを混合物として投与することができる。好ましい態様においては、該組合せにより治療されるヒトにおけるリンパ腫、白血病または固形腫瘍は、一般的な治療方法に対して難治性であるか、または白血病の再発症例である。
静脈内、皮下、筋肉内および鞘内投与などの非経口投与、経口および鼻腔内投与および吸入を含む(これらに限定されるものではない)適当な任意の投与方法を本発明に従い用いることができる。投与方法は、癌の型および患者の状態に応じて様々なものとなるであろう。
使用する医薬組成物は、無菌の水性または有機性溶液、コロイド懸濁液、カプレット(caplets)、錠剤およびカシェ剤の形態であってもよい。
4.2. 治療方法
本明細書において用いられる「白血病の治療法」という用語は、疾病および疾病に伴う症状が軽減され、減少し、治癒し、または緩解の状態におかれることを意味する。たとえば、本発明の治療法は、治療をおこなったヒトの白血球細胞数を減少させること、またはリンパ球増加を低下させることができる。
本明細書において用いられる「リンパ腫の治療法」という用語は、疾病および疾病に伴う症状が軽減され、減少し、治癒し、または緩解の状態におかれることを意味する。
本明細書において用いられる「固形腫瘍の治療法」という用語は、疾病および固形腫瘍に伴う症状が軽減され、減少し、治癒し、または緩解の状態におかれることを意味する。
さらに、「白血病性浸潤の治療法」という用語は、白血病細胞の循環から他の器官および系への浸潤およびこのような浸潤に伴う症状が、軽減され、減少し、治癒し、または緩解の状態におかれることを意味する。
本明細書において用いられる「難治性」という用語は、一般的に白血病が治療または治癒に対して抵抗性であることを意味する。
本明細書において用いられる「前新生物」細胞とは、正常型から新生物型への過渡期にある細胞、または正常に分化することができなかった細胞を指し、分子生物学の研究によってより一層裏付けられた形態的証拠により、前新形成が複数の段階を経て進行することが示されている。
一つの実施形態において、本発明は、治療上有効であって致死量でない量の三酸化ヒ素またはメラルソプロールをヒトに投与することを含む、ヒトの白血病の治療法を提供する。本発明はまた、他の方法では非常に毒性の高いこれらの化合物のヒトに対する安全性を最大にする、これまで開示されていない体重に基づく用法を提供する。
三酸化ヒ素(As2O3)は、増殖を阻害し、NB4急性前骨髄性白血病細胞にアポトーシスを誘導する。急性前骨髄性白血病(APL)は、核マトリックス関連体上に位置する成長サプレッサーであるPMLと、レチノイン酸(RA)の核受容体であるRARαとの間に、PML/RARα融合タンパク質を生成するt(15;17)転座を伴う。PML/RARαは、優性陰性RARα変異体と同様に、核受容体反応の阻害を通して骨髄の分化を遮断すると提唱されている。さらに、APL細胞において、PML/RARαは、PMLおよび他の核体(NB)抗原を核微少斑上に置換し、その結果、PMLおよび/またはNB機能の消失をもたらすと考えられる。高濃度の三酸化ヒ素がアポトーシスを促進するのに対して、低濃度ではNB4細胞およびAPL患者に由来する細胞に部分的な分化を誘導することが提唱されている。As2O3は、APL細胞においてPML-RARαを特異的に生じさせ、再度核体に配置して分解する能力によって作用すると主張されている(Zhuら、1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:3978-3983)。しかしながら、これらの知見は三酸化ヒ素の使用を白血病のサブセットに限定する傾向がある。Koningら、1997, Blood, 90:562-570を参照されたい。
意外なことに、発明者らは、As2O3およびメラルソプロールはどちらも細胞の増殖を阻害し、PMLおよびPML-RARαに依存しない方法でさまざまな骨髄白血病細胞系にアポトーシスを誘導することができることを発見した。このように、発明者らは以前の知見とは反対に、三酸化ヒ素およびメラルソプロールは新形成をおこす基礎となる分子的なメカニズムに関わらず、どちらも広い範囲の白血病に対して有効であることを発見した。多くの白血病細胞系に対するヒ素化合物の効果の実施例は、第5.1節および第5.2節に記載する。
したがって、本発明のヒ素化合物は下記のようなさまざまな白血病に対して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
急性リンパ芽球性白血病(ALL)
急性リンパ芽球性B細胞白血病
急性リンパ芽球性T細胞白血病
急性骨髄芽球性白血病(AML)
急性前骨髄性白血病(APL)
急性単芽球性白血病
急性赤白血病性白血病
急性骨髄巨核球性白血病
急性骨髄単球性白血病
急性未分化白血病
慢性骨髄性白血病(CML)
慢性リンパ性白血病(CLL)
当業者には、他の白血病も本発明にしたがって治療することができることが理解されるであろう。
別の実施形態において、本発明は、治療上有効であって致死量でない量の三酸化ヒ素またはメラルソプロールをヒトに投与することを含むヒトのリンパ腫の治療法を提供する。本発明の方法によって治療することができるリンパ腫には、高分化型(high grade)リンパ腫、中分化型(intermediate grade)リンパ腫、低分化型(low grade)リンパ腫およびさまざまな下位分類が含まれるが、これらに限定されない。
さらに別の実施形態において、本発明は、治療上有効であって致死量でない量の三酸化ヒ素またはメラルソプロールをヒトに投与することを含む、ヒトにおける転移を含む固形腫瘍の治療法を提供する。本発明の方法によって治療することができる固形腫瘍には、消化管、食道、肝臓、胃および結腸、皮膚、脳、骨、乳房、肺、並びに軟組織の癌が含まれるが、これらに限定されない。これらにはさまざまな肉腫、好ましくは前立腺癌が含まれるが、これに限定されない。
さまざまな実施形態において、白血病または腫瘍細胞はヒトの他の器官および系、たとえば、中枢神経系に浸潤している。本発明の方法は、前新生物細胞数の異常な増加が見られるヒトにおいて、前新生物細胞数を減少させるために適用することもできる。
特定の実施形態において、本発明は、治療上有効であって致死量でない量のメラルソプロールをヒトに投与することを含む、ヒトの急性前骨髄性白血病(APL)の治療法を提供する。発明者らは、第5.2節に記載するように、in vitroで細胞毒性を示すメラルソプロールの濃度が、in vivoにおいて容易に達成されることを発見した。
一つの特定の実施例において、本発明は、治療上有効であって致死量でない量の三酸化ヒ素をヒトに投与することを含む、ヒトの慢性骨髄性白血病の治療法を提供する。発明者らは、第5.3節に記載するように、三酸化ヒ素がCML細胞系においてもアポトーシスを誘導することができることを発見した。三酸化ヒ素からなる本発明の医薬品組成物の治療上の利点は、通常Fowler溶液として処方される亜ヒ酸カリウムよりもはるかに優れている。
さらに別の特定の実施形態において、本発明は、治療上有効な量の三酸化ヒ素またはメラルソプロールをヒトに投与することを含む、染色体17上のRARα座の染色体11への転座を伴うヒトの急性前骨髄性白血病(APL)の治療法を提供する。APLの症例の大部分において、染色体17上のRARαは転座して染色体15上に位置するPML遺伝子と融合する。これをt(15;17)と記載する。少数の症例において、RARαは染色体11に転座してそこでPLZF遺伝子と融合する。t(15;17)を有する患者は、全trans-レチノイン酸(ATRA)による治療に対して特有の感受性を有し、完全な緩解の割合が75%から95%となる。t(11;17) (PLZF-RARα)を伴うAPLは、化学療法に対する反応が乏しく、ATRAによる治療に対してほとんどまたは全く反応せず、際だって悪い予後を示すので、これを新APL症候群と定義する。本発明によれば、三酸化ヒ素またはメラルソプロールをAPLのこのような症例を治療するために使用することができる。本発明のヒ素化合物の治療上の利点および投与量をテストするためのt(15;17)およびt(11;17)を伴うAPLのトランスジェニック動物モデルについては下記第5.4節に記載する。
白血病を有するヒトは、抗白血病治療(たとえば、化学療法)を経験したという理由により従来の治療法に対して難治性となることがある。そこで、本発明は、治療上有効であって致死量でない量のヒ素化合物と、もう一つの化学療法剤、たとえば、これらに限定されるものではないが、全trans-レチノイン酸(ATRA)または他のレチノイド、との組み合わせをヒトに投与することを含む、従来の治療に反応しないヒトにおける白血病の治療法を提供する。ヒ素化合物は三酸化ヒ素またはメラルソプロールまたはその薬学的に受容可能な塩のいずれであってもよい。本発明は、レチノイド耐性患者をヒ素化合物により治療することをも包含する。
特定の実施形態において、本発明のヒ素化合物および化学療法剤は、混合物として投与しても継続的に投与してもよい。継続的に投与する場合は、最初に投与された薬物がヒトにおいて抗白血病活性を有している間に次の薬物を投与する限り、ヒ素化合物を化学療法剤の前または後のどちらで投与してもよい。上記組み合わせを送達するために、本明細書に記載されるいずれの投与法を用いてもよい。好ましい態様において、上記組み合わせによって治療されるヒトの白血病は、一般的な治療法に対して難治性である、または白血病の再発の症例である。
4.3. 三酸化ヒ素無菌溶液の製造方法
本発明のヒ素化合物は、白血病、リンパ腫、および固形腫瘍(solid tumor)の治療の目的でヒトに投与するための無菌の医薬製剤に製剤化することができる。本発明の化合物を使用可能な医薬用担体中に製剤化したものからなる組成物を調製し、包装し、白血病、リンパ腫、もしくは固形腫瘍の適応症の治療用である旨表示し、それらの治療に使用することができる。
一態様においては、本発明は治療上有効で非致死量の三酸化ヒ素(As2O3)を含む医薬組成物の製造方法を提供する。三酸化ヒ素(原料)は固体の無機化合物で非常に高純度な形で市販されている。しかし三酸化ヒ素を水性溶液に溶解させることは困難である。さらに、ヒトへ直接注射するために適した医薬組成物として三酸化二ヒ素を剤型化する方法に関する公表された報告は見あたらない。ヒ素は溶液中では+5の原子価状態(5価)もしくは+3の原子価状態(3価)で存在する。例えば、亜ヒ酸カリウム(KAsO2; これはFowler溶液中に存在する)および亜ヒ酸の塩は5価のヒ素を含んでいる。そのうちの一方のヒ素が他方よりも毒性が強いことが知られている。(Goodman & GilmanのThe Pharmacological Basis of Theraeputics, 第9版, 66章, 1660, 1997)。 3価のヒ素を含有する三酸化ヒ素の新鮮な溶液は長期間空気に曝されると徐々に5価に酸化され、5価のヒ素が蓄積されることによってAs2O3溶液の相対毒性は時間と共に変化する。(同上)。 さらに、溶液中のヒ素の総量が時間と共に減少することが観察される。この物質が失われる現象は溶液中のヒ素が次第に室温で気体の化合物である水素化ヒ素(AsH3)に転換されることによって起きる。このことは、注射用剤中の有効成分の濃度が制御できないならば医薬品への応用においては特に問題である。また、水素化ヒ素も毒性があるので溶液から周囲の空気中へ抜け出ることは望ましくない。
本発明者らは実験を行い、上記の溶解性および安定性の問題を克服した三酸化ヒ素の製剤化方法を首尾よく開発した。その方法は、水性溶液中で固体の高純度As2O3をpHが12を超えるような高pHで可溶化することを含む。例えば5Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。可溶化を助け、澄明で均一な溶液を得るために、機械的攪拌および/もしくは温和な加熱を加えることができる。As2O3溶液は固体化合物を一晩溶解させることによっても得ることができる。典型的には1MのAs2O3溶液がこの方法によって得られる。しかしこの溶液は医薬組成物とするには塩基性が強すぎる。
As2O3溶液のpHを調整するためにまずその溶液を水で希釈して、例えば、約1mg/mL, pH12の濃度とする。そのAs2O3溶液を、塩酸(1Mから5M HCl)などの酸で一定に攪拌しつつpHが約8.0から8.5となるまで逆滴定する。高濃度の塩酸はAs2O3溶液中に沈殿を生じさせるので適切でない。次いで、部分的に中和されたAs2O3溶液を、例えばろ過(例えば0.22μmフィルターを通過させて)によって、無菌の液とし、滅菌済のヴァイアル瓶中で保存する。
被験者に直接注射しうる医薬組成物を作るためには、組成物は無菌でなければならず、当業者に既知の標準的な無菌処理技法を用いることができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Scienceを参照せよ。この部分的に中和されたAs2O3溶液はさらに医薬用担体、例えば5%ブドウ糖溶液などで希釈(10-100倍)することによって生理学的pHの近傍に調整することができる。例えば、10mLの部分的に中和されたAs2O3溶液を500mLの5%ブドウ糖溶液中に添加して最終pHを約6.5から7.5とすることができる。本発明のこの方法は溶液中のヒ素の酸化を低減する。本発明の方法で製造された三酸化ヒ素含有の医薬組成物は安定性の向上と長期保存可能であることを示した。
4.4 医薬組成物および投与方法
本発明に従って、ヒ素化合物および生理学的に許容しうる溶剤を経口もしくは非経口投与用として製剤化することができる。
経口投与用には、医薬製剤は液状、例えば、溶液、シロップ、もしくは懸濁液とすることができ、または、水もしくはその他の適切なビヒクルで使用前に再構成して用いる医薬品とすることができる。そのような液状製剤は、製薬上許容しうる添加剤、例えば懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体もしくは水素化食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチンもしくはアラビアゴム)、非水性ビヒクル(例えばアーモンド油、油性エステル、もしくは分画植物油)、および保存剤(例えばメチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)などを用いて従来法で製造することができる。医薬組成物は、例えば、製薬上許容しうる賦形剤、例えば結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増量剤(例えば、乳糖、微結晶性セルロース、もしくはリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、もしくはシリカ)、崩壊剤(例えば、バレイショデンプン、もしくはグリコール酸デンプンナトリウム)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などを用いて従来法で製造した錠剤もしくはカプセル剤の形をとることもできる。錠剤は当業界では良く知られている方法でコーティングすることができる。
吸入による投与用としては、本発明に従って用いられる化合物を、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、もしくはその他の適当なガスを用いて加圧パックもしくはネブライザーからエアロゾルスプレーの形で都合良く送達することができる。加圧エアロゾルの場合には、一定量を送達するためのバルブを備えることによって投与量ユニットを定めることができる。吸入器もしくは通気器で用いるためのカプセルもしくはカートリッジ、例えばゼラチン製のものは、化合物ならびに乳糖もしくはデンプンなどの適当な粉末基材の混合粉末を含有するように製剤化することができる。
化合物は注射、例えばボーラス注射もしくは持続輸注による非経口投与用として製剤化することができる。注射用剤型は、例えばアンプルもしくは複数回投与用容器などのユニット投与剤型で、保存剤を添加して製剤化することができる。医薬組成物は油性もしくは水性ビヒクル中で懸濁液、溶液もしくは乳剤の形をとることができ、懸濁剤、安定剤および/もしくは分散剤などの製剤化補助剤を含有することができる。また別に、有効成分を適当なビヒクル、例えば発熱性物質不含の滅菌水で使用前に再構成するための粉末状製剤とすることができる。
本発明はまた、本発明の治療用レジメを実施するためのキットをも提供する。そのようなキットは、治療上有効な量のヒ素化合物が製薬上許容しうる剤型中に含まれている1個以上の容器からなっている。本発明のキットの1ヴァイアル中のヒ素化合物は、製薬上許容しうる溶液中に、例えば、無菌の食塩液、ブドウ糖溶液、もしくはバッファー溶液、またはその他の製薬上許容しうる無菌の液体と組み合わせた形とすることができる。また別に、その複合物を凍結乾燥もしくは乾燥することができる;この場合はキットは任意でさらに容器中に製薬上許容しうる溶液(例えば食塩液、ブドウ糖溶液など)、好ましくは無菌の溶液を含有させて、その複合物を再構成して注射用の溶液を作るようにすることができる。
別の実施形態においては、本発明のキットはさらにその複合物を注射するための注射針もしくは注射筒、好ましくは無菌で包装されているもの、ならびに/または包装済のアルコールパッドからなる。医師もしくは患者によるヒ素化合物の投与のために使用説明書を任意で含ませることができる。
急性もしくは慢性の白血病治療におけるヒ素化合物の治療投与量の程度は治療すべき病状の重篤度および投与経路によって変わる。投与量、およびおそらくは投与頻度も個々の患者の年令、体重、病状および治療に対する反応性によって変わる。通常は、ここに記載した病状に対する三酸化ヒ素の1日投与量の範囲は、体重1kgあたり約0.05から約5mgで、それを何回かに分けて注射、もしくは経口、もしくは局所投与する。好ましい1日総投与量は三酸化ヒ素として約2.5から約40mgである。好ましくは、本発明の三酸化ヒ素剤を連日、最大60日間、もしくは緩解がみられるまで投与し、その後、2ないし10サイクル、各サイクルが約25日間続くようにする。例えば、急性前脊髄球性白血病の患者の体重によっては、三酸化ヒ素の1日投与量として10mg以上もしくは未満を投与することができる。また別に、体重を基礎とする投与量レジメに従って、三酸化ヒ素の10mg未満の1日投与量で治療効果を得ることができる。
固形腫瘍の治療には、好ましい投与量レジメとして、1日あたり体重1kgあたり約0.1から約5mgを5日間静注することが挙げられる。この5日間治療プロトコールは月に1回、腫瘍の増殖が阻害されるかもしくは腫瘍が退縮する徴候を示すまで繰り返される。
メラルソプロール(melarsoprol)について述べれば、ここに述べた病状に対しての1日総投与量は通常は約0.1から約5mg/kg体重を何回かに分けて非経口的、もしくは経口的、もしくは局所的に投与する。好ましい1日総投与量は約0.5から約4mgメラルソプロール/kg体重である。
癌の発症および進行に対する三酸化ヒ素もしくはメラルソプロール療法の有効性は当業界で既知のいかなる方法によってもモニターしうるが、それらの方法として、例えば癌胎児性抗原(CEA)、α-フェトプロテインなどの腫瘍特異的抗原および推定上の生物マーカーのレベル、ならびにCTスキャンおよび/もしくは超音波を用いる形態学的および/もしくは大きさの変化の測定が挙げられるがそれらに限定されない。
所望の血中濃度は、血漿中濃度を確認しつつヒ素化合物の持続輸注によって維持することができる。担当医師は、毒性、または骨髄、肝臓、もしくは腎臓への障害のため、治療を終了させる、中断するもしくはより低い投与量へと治療法を調節する方法、および時期については判っているということは注記すべきである。逆に言えば、担当医師は、臨床での反応が十分ではない(毒性副作用を除いて)場合により高い投与量へと治療法を調節する方法および時期についても判っているということである。
さらにまた、患者に有効量のヒ素化合物を提供するためにいかなる適当な投与経路をも用いることができる。例えば、経口、経皮、イオン導入、非経口(皮下、筋肉内、鞘内など)で行うことができる。投与剤型としては錠剤、トローチ剤、カシェ剤、分散剤、懸濁液、溶液、カプセル剤、パッチ、および類似のものが挙げられる。(Remington's Pharmaceutical Sciencesを参照せよ)。
本発明の医薬組成物は、有効成分としてヒ素化合物、製薬上許容しうるその塩からなり、また製薬上許容しうる担体、および任意でその他の治療成分、例えば全trans-レチノイン酸などを含有させることができる。"製薬上許容しうる塩"とは、製薬上許容しうる、無機および有機酸および塩基を含む無毒の酸及び塩基で調製された塩を意味する。
医薬組成物としては経口、粘膜経路、経皮、イオン導入、注射(皮下、筋肉内、鞘内、および静脈内を含む)の投与に適した組成物があるが、ある与えられた例についての最も適した投与経路は治療しようとする病状の性質および重篤度によって異なる。
組成物の静脈内注射もしくは輸注を行う場合には、使用に適した投与量の範囲は、例えば、1日の総投与量として約1から約40mgの三酸化ヒ素、1日の総投与量として体重1kgあたり約0.001から約10mgの三酸化ヒ素、もしくは1日の総投与量として体重1kgあたり約0.1から約10mgのメラルソプロールである。
さらに、ヒ素の担体は、セルロースアセテート膜などのドラッグデリヴァリーシステムとして用いられる荷電したおよび非荷電のマトリクスを経由して、また抗体もしくは特異的抗原に付着させたfusogenicリポソームなどの標的デリヴァリーシステムを経由して送達することができる。
実際の使用においては、ヒ素化合物は従来の医薬配合技法に従って医薬用担体と密な混合物を作る際の有効成分として組み合わすことができる。その担体は投与法、例えば経口もしくは注射(錠剤、カプセル剤、粉末、静脈内注射もしくは輸注を含む)によって要求される剤型に応じて各種の形態をとることができる。経口投与剤型のための組成物を調製するには通常用いられる医薬用溶媒、例えば、水、グリコール、油脂、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤、および類似のもののいかなる形態のものも用いることができる;経口液状製剤の場合には例えば、懸濁液、溶液、エリキシル、リポソームおよびエアロゾル;デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、および類似のもの、経口固形製剤の場合には例えば粉末、カプセル剤、および錠剤を用いることができる。注射用剤型、例えば静脈注射もしくは輸注のための組成物を製造する際には同様の医薬用媒体、例えば、水、グリコール、油、バッファー、糖、保存剤、および類似のもので当業者には既知のものを用いうる。そのような注射用組成物としては5w/v%のブドウ糖、生理食塩液、もしくはその他の溶液が挙げられるがそれらに限定されない。ヒ素化合物の総投与量を1ヴァイアルの静注用液体で投与することができ、それは例えば約2mLから約2000mLの範囲にある。希釈液の液量は投与しようとする総投与量によって異なる。例えば、1mg/mLの濃度の水溶液10mLで供給される三酸化ヒ素を、10ないし500mLの5%ブドウ糖溶液で希釈して、約10分間から約4時間の範囲の時間をかけて静脈内に輸注される。
白血病、リンパ腫、もしくは固形腫瘍の患者に対する治療コースの例としては三酸化ヒ素水溶液の静脈内輸注を連日、患者の体重1kgあたり三酸化ヒ素として約0.01から1mgを1日投与量として投与することができる。好ましくは、1日あたり体重1kgあたり三酸化ヒ素として約0.15mgの投与を用いる。この治療コースは骨髄に緩解が認められるまで、もしくは副作用が重篤なものとなるまで継続することができる。この治療コースは各コース間に3ないし6週間の間隔を開けて約10か月にわたって10回まで繰り返すことができる。緩解後の治療コースとしては三酸化ヒ素の輸注を1日投与量として患者の体重1kgあたり約0.15mgを連日もしくはウイークデイのみの投与として累計で25日間投与する。
5. 実施例
下記に述べたものは本発明のヒ素化合物の各種白血病の治療における使用の実施例である。これらの実験およびその他の実験から、本発明のヒ素化合物剤型はヒトにおける耐容性が良好であることが示された。例えば、3例のAPL患者に本発明の三酸化ヒ素製剤10mgを1日1回(同じ投与量で)静注した。
5.1. 三酸化ヒ素とメラルソプロールは骨髄性白血病細胞系でアポトーシスを誘導する
As2O3およびメラルソプロールの、APL細胞系のNB4-306(NB4由来のレチノイン酸耐性細胞系だが天然のPML-RARα融合タンパク質はもはや発現しなくなっているもの)、HL-60、KG-1、および骨髄性単球細胞系U937を含む骨髄性白血病細胞系に対する活性を調べた。ヒ素化合物の活性の仲介におけるPMLの役割を調べるために、本発明者らはこれらの薬剤を、細胞中でPML遺伝子が相同組換えによって不活化されているマウス胚性繊維芽細胞(MEFs)および骨髄(BM)前駆細胞を用いて試験した。予期に反して、2つの化合物双方とも試験に供した細胞系の全てで細胞増殖を阻害しアポトーシスを誘導した。メラルソプロールは10-7から10-8モル/Lの範囲で等モル濃度ではAs2O3より強力であった。As2O3はPMLおよびPML-RARαを核体上へ再局在させ、その後にNB4ならびにHL60およびU937細胞系中でPMLの分解が起こる。メラルソプロールは増殖の阻害およびアポトーシスの誘導ではより強力ではあるが、PMLおよび/もしくはPML-RARαの核への局在には影響を及ぼさなかった。その上、As2O3およびメラルソプロールの双方とも同程度にPML+/+およびPML−/−MEFの増殖の阻害およびアポトーシスの誘導を行い、ならびにPML+/+およびPML−/−前駆細胞のBM培養液中でCFU-E(colony forming unit erythroid)およびCFU-GM(colony forming unit granulocyte-monocyte)の形成を阻害した。これらの方法および材料の詳細な説明ならびにこれらの実験結果はWangら, Blood, 1998, 92:1497-1504で提供されている。
これらの実験結果は、2種のヒ素化合物のこれらの細胞系における細胞傷害作用がPMLもしくはPML-RARα発現に依存する作用機作によって仲介されるものではないことを示している。大多数の細胞系では、メラルソプロールはAs2O3と比較すると細胞増殖の阻害およびアポトーシスの誘導においてやや強力であり、両薬剤の効力は用量依存性であった。以前に報告されたとおり、As2O3は、アポトーシスの引き金を引く一方、NB4細胞においてPMLタンパク質を核体上に再局在させ、PMLおよびPML-RARαの分解を誘導することが確認されている。しかし、同様な効力はPML-RARα融合遺伝子を持たないHL60およびU937細胞でも観察されている。さらに、メラルソプロールは供試した全ての細胞系でPMLおよび/もしくはPML-RARαを変えることなくアポトーシスを誘導した。
As2O3およびメラルソプロールの分化作用はin vitroでは無視できるように見え、PMLおよび/もしくはPML-RARαのいずれかの発現および/もしくは改変に依存しているとは考えられなかった。事実、本発明者らが長期(2週間まで)の培養中に観察した小さな効果は、双方の化合物で供試した全ての細胞系において同程度であった。
また、bcl-2のダウンレギュレーション、それはかねてよりAs2O3のAPLにおける抗白血病効果と関連づけられていたものであるが、それが天然のタンパク質(PML-RARα)が検出されないNB4サブクローン306中でも起こるので、PML-RARαタンパク質の発現に依存しないことも見出されている。最後に、PMLの発現がヒ素化合物の抗白血病効果に必須のものであるか調べるために、双方の薬剤を、野生型PMLが相同組換えによって排除されているマウスから得た胚性繊維芽細胞および骨髄細胞中で調べた。PMLの発現を全く欠いているこれらの細胞では、As2O3およびメラルソプロールの双方とも増殖阻害およびアポトーシス誘導に同程度に有効であり、双方とも正常なCFU-EおよびCFU-GMのコロニー形成に対して同様な効果を示した。さらに野生型とPML−/−細胞との間には相違は観察されなかった。何らかの理論によって限定されないが、これらのデータはこれらのヒ素化合物の抗白血病効果がPMLおよびPML-RARαの双方の発現とは独立に生ずるという理論を強く支持するものである。これらの結果はヒ素化合物が、例えば慢性骨髄性白血病などのPMLタンパク質の変化によって特徴づけられない疾患に用いられてきたという医薬としての歴史と一致するものである。
これらの結果は、As2O3およびメラルソプロールの双方とも骨髄性およびリンパ球性疾患の双方において抗白血病剤として広範囲に有効であることを示している。結論として、これらのデータは、細胞傷害活性がPMLタンパク質によって仲介されるものではなく、従って、PML発現の変化が関連する疾患には限定されないことを示している。このように、本発明のヒ素化合物は、APLに限定されずに、より広範囲の治療上の役割を有する可能性がある。
5.2.白血病が進行した患者に対するメラルソプロールの臨床試験
酸化メラルセンをジメルカプロールと複合させて合成する有機ヒ素剤であるメラルソプロールは、主に、アフリカトリパノソーマ症の治療に使用されてきた。慢性B細胞リンパ球増殖性障害を示す細胞系におけるアポトーシスの誘導に対するメラルソプロールの効果が研究されてきたが、以下にその結果を記載する。
メラルソプロール(Rhone Poulenc Rorer;ペシルバニア州カレッジビルにより供給されるアルソバル(Arsobal)[36mg/mL])を、原料濃度が10-4モル/Lのプロピレングリコールで希釈し、室温で保存した。As23(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を、原料溶液が10-3モル/Lの1.65モル/L水酸化ナトリウム(NaOH)に溶解させた。RPMI1640培地で連続的に希釈(10-6〜10-9モル/L)した。 エプスタイン・バーウイルス(EBV)形質転換B前リンパ性細胞系(JVM−2)、EBV形質転換B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)細胞系(I83CLL)、ならびに一つの非EBV形質転換B−CLL細胞系(WSU−CLL)を標的として使用した。メラルソプロール(10-〜10-モル/L)を用いた用量反応実験を96時間にわたって実施した。
予想外に、本発明者らは、メラルソプロールが、三つの細胞系すべてにおいて、投与量及び時間依存性の生存及び増殖阻害を引き起こすことをみいだした。これとは対照的に、同様の濃度のAs23では、生存率または増殖のいずれにも何の作用も及ぼさなかった。24時間後、メラルソプロール(10-モル/L)で処理した三つの細胞系はすべて、アポトーシスの形態学的特徴を現した。WSU−CLL 183CLL、ならびにJVM−2細胞の、メラルソプロールへの24時間にわたる曝露の後、bcl−2 mRNAの顕著な濃度依存性ダウンレギュレーションが認められた。また、三つの細胞系すべてに、bcl−2タンパク質発現の減少も認められたのに対し、As23は、このパラメータにも何の作用も及ぼさなかった。
上記のin vitroデータが、骨髄性及びリンパ系細胞の両方に対する、また一般に、As23より低い濃度において、メラルソプロールの広域な抗白血病作用を予想外に証明するものと仮定して、再発性、もしくは難治性白血病を患う患者においてメラルソプロールの薬物動態、安全性、ならびに潜在的効力を評価すべく、試験を開始した。
適格患者に次のような治療を施した。1日一回短時間のIV注射を3日間実施し、それを3週間毎週繰り返した。また、応答を示した患者には、さらに3週間同様の治療を追加した。初期投与量は、第1日に1mg/kg、第2日に2mg/kg、第3日に3.6mg/kgとし、それ以降の日はすべて、第3日と同じ投与量とした。平行して行うin vitro試験として、メラルソプロール及びAs23両方に対する新鮮な白血病細胞の培養感受性、ならびに、表面抗原発現、アポトーシス、及びbcl−2発現の連続フローサイトメトリー測定を行った。AMLを有する三人の患者と、CMLを有する一人の患者がこの試験に参加した。
約10mg/mlに感応する高速液体クロマトグラフィーに基づく方法を用いて、予備的薬物動態データから、第1日の1.2ng/mlから第3日の2.4ng/mlまでのCmaxの注射の直後に、最大血漿薬物濃度が得られることがわかる。初期分布期は急性であったのに対し、延長されたT1/2γは、深部区画からのリリースを示していた。濃度x時間曲線下の血漿領域(AUC)は、第1日の0.48ng・時間/mlから第3日の1.48ng・時間/mlまでの投与量に比例した。薬物の検出可能濃度は、最初の投与から1週間後の血漿に認められた。薬物は、比較的よく許容された。悪い作用としては、注射部位の一時的な痛み、軽い嘔気があった。「反応性脳疾患」(場合によっては、CNSトリパノソーマ病の治療中に認められる)の兆候は全く認められなかった。
これらの試験の結果から、メラルソプロールは、無機As23より広い作用を有する可能性があること、また、in vitroで白血病細胞に対して細胞障害性の、従って、治療効果のある濃度が、生体内で容易に達成されることがわかる。
5.3.三酸化ヒ素は、K562慢性骨髄性白血病(CML)細胞に
アポトーシスを誘導する
フィラデルフィア染色体陽性CML細胞系K562を用いて、三酸化ヒ素(As23)が、CMLでアポトーシスを促進するかどうかを決定する。対数増殖期の懸濁培養細胞を、濃度がそれぞれ1x10-5M、5x10-6M、ならびに1x10-6MのAs23に曝露した。細胞のアリコートを72時間に及ぶ工程中、様々な時点で分析し、生存率及びアポトーシスを評価した。生存率は、トリパンブルー排除を用いて測定した。同時に、アポトーシスは、形態学、フローサイメトリー、ならびにDNAゲル電気泳動によって検出した。
濃度が1x10-6Mの三酸化ヒ素は、K562細胞の増殖または生存率に全く作用を及ぼさなかった。細胞の増殖及び生存率に対する最大の作用は、1x10-5MのAs23においてみられた。72時間にわたるAs23への曝露後のK562細胞増殖及び生存率データを表1に記録する。
Figure 2010184926
このヒ素が誘導した生存率の低下が、アポトーシスを示した形跡を分析した。10-5MのAs23で72時間インキュベートしたK562細胞の染色された細胞スピン(cytospin)において、膜の水泡化や核凝縮等のアポトーシスの形態学的特徴が明らかであった。これは、10-5MのAs23に曝露したK562細胞から抽出したDNAのゲル電気泳動により視覚化されるDNAヌクレオソーム内損傷の形跡と相関した。TUNEL法により測定したアポトーシスの定量評価から、6.3%±3.0(対照)の細胞と比較して、72時間において75.6%±8.6(1x10-5M As23)の細胞が、アポトーシスを示すことが明らかになった。10-5MのAs23によるK562細胞の処理によって、ノーザン分析により検出されるp21 mRNAのアップレギュレーションが起こったが、これは、細胞周期のG1期における細胞の分裂停止を意味している。このデータは、CMLに対する治療薬としての三酸化ヒ素を示すものである。
5.4.PML−RARα及びPLZF−RARαトランスジェニックマウスに
おけるレチノイン酸及び三酸化ヒ素(As 2 3 )を用いた治験

急性前骨髄性白血病(APL)は、染色体転座に関連するが、この転座は、17番染色体上のレチノイン酸受容体α(RARα)遺伝子座の、ゲノム中の他の遺伝子座(例えば大部分のAPL症例では、15番染色体に位置するPML遺伝子、ならびに、稀に、11番染色体のPLZF遺伝子)への転座を必ず伴う。t(15;17)を保有する患者は、全トランスレチノイン酸(ATRA)を用いた治療に感応し、75〜95%の完全寛解率が得られる。t(11;17)を伴うAPL(PLZF−RARα)は、ATRAに対する応答が低い。
APLの治療におけるAs23の効力を試験するために、トランスジェニックマウスで疾病モデルを作製した。トランスジェニックマウスは、骨髄性−前骨髄性特異的ヒトカテプシンG(hCG)ミニ遺伝子の制御下に、PML−RARαまたはPLZF/RARα融合タンパク質を発現させる標準技術により作製した。hCG−PML−RARα及びhCG−PLZF−RARαトランスジェニックマウスは両方共、ヒトに類似したAPLの特徴を有する骨髄性白血病を発現した。
次の治療計画を用いて、上記白血病マウスの治験を開始した。1)ATRA:一日体重1g当たり1.5μgを経口投与する;2)ATRA:一日体重1g当たり6μgを腹腔内投与する。マウスを週1回採血して、応答を評価した。
PML/RARα白血病は、ATRAに良好に応答し、寛解率も高かった(治療計画1で80%)。驚くべきことには、in vitroで、ATRAが、PML−RARα及びPLZF−RARα白血病の両方の骨髄、ならびに、脾臓前駆体アッセイにおいて、分化を誘導し、白血病細胞の増殖及び白血病コロニー形成を阻害した。さらに、ex vivo実験では、PLZF−RARαマウスからの白血病細胞を、ATRAを用いた予めインキュベートした時に受容体のヌードマウスに移植すると、該白血病細胞の腫瘍形成能を失ったのに対し、未処理の細胞は、腫瘍形成性であった。しかし、生体内では、PLZF−RARα白血病は、ATRAに対する応答が低かった(治療計画1で28%)が、ATRAの投与量を増加すると、効果が高まった(治療計画2で50%)。結論として、PLZF−RARαトランスジェニックマウスにおける白血病は、ATRA治療に感応するものの、高いATRA投与量を用いた治療法を必要とする場合もある。これらの試験結果は、t(11;17)を有するAPL患者の治療に直接的な意味を持つものである。
PML−RARα及びPLZF−RARα白血病のいずれにおいても、ATRAは生存を延長するが、寛解して間もなく白血病が再発し、再発した白血病は、続行したATRA治療に対して難治性であった。また、2匹のトランスジェニックマウスモデルを用いて、ATRA耐性のAPL患者、ならびにt(11;17)を伴うAPLの治療のために、As23単独、ならびにATRA+As23の併用の効力ならびに投与量を検定した。一日当たり6μgのAs23の用量、もしくは、一日体重1g当たり6μgのAs23と、1.5または6μgのATRAとを併用した用量を腹腔内に投与する。マウスを週1回採血して、APLの寛解を評価する。
5.5.医薬製剤の製造及び安全性
固体の超純粋三酸化ヒ素(As23)を、5M水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に溶解させた。懸濁液を室温で5分間撹拌すると、透明で均質な溶液が得られた。このAs23溶液(2mL、1.0M)を、500mlエーレンマイヤーフラスコに入った393.6mLのH2Oに添加した。このとき、As23の濃度は、pH=12で1mg/mLであった。250mLエーレンマイヤーフラスコにおいて、H2O(50.74mL)でHCl(49.26mL、37%wt/wt、10/15M)を希釈することにより、5.0MのHCl溶液を調製した。その後、このHCl溶液を、注射器を用いて、排気した空の1000mL容器に移した。上記As23溶液をHCl(0.725mL、5.0M)で逆滴定し、pH8.0とした。ミレックスGS0.22μmフィルター装置を用いて、約10mLの逆滴定As23溶液を濾過した後、これを約30本の減菌排気した滅菌バイアルの各々に添加した。患者の腹腔内に投与する医薬製剤を製造するため、10mLの上記溶液を2本のバイアルから取出し、500mLの5%デキストロース溶液に添加した。尚、この溶液の最終pHは6.5であった。
原子吸光分析により、バルク出発材料の高純度を確認した(表1参照)。4つの中間、もしくは最終段階の溶液の複製サンプルを検定し、合計ヒ素含有量を調べた。検定用のバルク粉末により、出発材料の極めて高い純度を確認した。中間及び最終生成物溶液のヒ素含有量のデータを下の表2に表示する。
下に示すデータによって、時間経過によるヒ素の重量損失の兆候が全く現れないことから、上記溶液が安定していることがわかる。
Figure 2010184926
6.実施例:APL患者の臨床試験
APL患者において、三酸化ヒ素を評価し、この薬物が、細胞分化もしくはアポトーシスのいずれを誘導するかを決定した。従来の様々な治療から再発した12人の患者について、骨髄の寛解が達成されるまで、一日0.06〜0.2mg/kgの投与量の三酸化ヒ素で治療した。免疫表現型についてのフローサイトメトリー、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、PML/RARα発現についての逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)検定、ならびに、アポトーシス関連タンパク質、カスパーゼ1、2及び3のウエスタンブロット発現によって、骨髄単核細胞を連続的に監視した。これらの結果から、低用量の三酸化ヒ素が、APLの再発患者の完全な寛解を誘導するのに非常に有効であることが明らかになった。臨床応答は、白血病細胞における不完全な細胞分化、ならびに、カスパーゼ活性化によるアポトーシスの誘導に関連する。
6.1.方法
臨床プロトコル:適格者の要件には、t(15;17)転座についての細胞遺伝学または蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析、あるいは、PML/RARαについての逆転写酵素ポリメラーゼ反応(RT−PCR)によって確認されるAPLの診断が含まれた。患者は、全トランスレチノイン酸に、細胞障害性薬物の併用を加えた標準的治療から再発した者に限られる。署名済みのインフォームドコンセントを必要とした。また、本センターの組織審査委員会が、プロトコルを審査・承認した。
三酸化ヒ素治療:三酸化ヒ素は、1mg/mlの薬物を含む10mlバイアル中の水溶液として供給した。薬物を、500mlの5%デキストロース溶液でさらに希釈し、一日1回2〜4時間かけて静脈内に注入した。第1患者コホートが、均一投与量として、10または15mg/日のいずれかの投与を受けたが、差し向けられた二人の子供によって、これまで未知だった重量に基づく治療計画(0.15mg/kg/日)の本発明が促されることになった。骨髄の寛解が認められるまで、薬物を毎日投与した。完全な寛解に達した患者は、先に終わったコースから3〜6週間後に、追加の治療コースで治療を受ける資格を有した。後に続くコースは、一般に、毎日もしくは平日のみのスケジュールのいずれかで、累積合計25日間に0.15mg/kg/日の投与量で投与するもので、最大計6コースを約10カ月にわたって実施した。
試験中の監視:凝血障害のある患者には、血小板と新鮮な凍結血漿を輸注し、血小板数とフィブリノーゲンを、標的レベル≧50,000細胞/cu mm及び≧100mg/dLにそれぞれ維持した。血球算定、凝血試験、血清化学プロフィール、尿検査、ならびに心電図を連続的に得た。骨髄吸引及び/またはバイオプシーをベースラインで実施した後、寛解が記録されるまで定期的に実施した。通常の応答基準が認められたが、これには、骨髄≦5%芽細胞、周辺血液白血球≧3,000細胞/cu mm、ならびに血小板≧100,000細胞/cu mmの回復が含まれる。
細胞免疫表現型試験:ヘパリン化骨髄もしくは血液サンプルを採取し、フィコールーハイパック(Ficoll-Hypaque)遠心分離により単核細胞を単離した。フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)を用いた直接免疫蛍光染色、もしくは、フィコエリトリン結合モノクローナル抗体:CD16(Leu 11a)、CD11b、CD33(Leu M9)、HLA−DR、CD45、ならびにCD14(Becton-Dickinson(カリフォルニア州マウンテンビュー)またはImmunotech Immunology(フランス、マルセイユ)のいずれかから購入)により、表面膜抗原を検出した。同時に二つのモノクローナル抗体(CD33−PE/CD11b−FITCと、CD33−PE/CD16−FITCを含む)を用いて、細胞をインキュベートすることにより、二色染色を実施した。同じアイソタイプの無関係なモノクローナル免疫グロブリンを用いた陰性対照を同時に分析した。488nmアルゴンレーザを備えたEPICSプロフィールIIフローサイトメーター(Coulter Electronics)で、フローサイトメトリー分析を実施した。前方及び側方分散細胞パラメータを測定し、CD45/CD14染色と併せて、目的とする集団を同定すると共に、分析ゲートから単核細胞を排除した。マルチパラメータデータ獲得及び表示システム(MDADS、Coulter Electronics)を使用して、データの取得及び分析を行った。
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH):CD33及びCD11bについて免疫蛍光染色を施した選択検体について、FACStar Plusセルソーター(Becton-Dickinson)を用いて、両抗原を同時発現した細胞を分離した。分離した細胞は、37℃で1時間、培地でインキュベートし、低張液0.075M KClで5分間処理し、3:1のメタノール:酢酸固定液に固定した後、空気乾燥させた。特異的PML/RARα転座二色プローブ(Vysis;イリノイ州ダウナーズグローブ)を用いて、間期FISHを実施した。簡単に言うと、スライドを50%ホルムアミド/2xSSC溶液に73℃で5分間浸漬することにより、間期細胞からのDNAを変性し、次に、スライドをアルコールで脱水した後、空気乾燥した。ハイブリダイゼーション混合物中のプローブ混合物を使用し、カバースリップで被覆し、ラバーセメントで密封した。湿性室内で約12〜16時間にわたり、37℃でハイブリダイゼーションを実施した。ハイブリダイゼーションに続いて、スライドガラスを45℃で、50%ホルムアミド/2xSSC溶液で3回10分づつ洗浄した後、さらに45℃で5分間、2xSSC/0.1NP−40溶液で洗浄することにより、未結合のプローブを除去した。次に、スライドガラスを空気乾燥し、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドールで対比染色した後、ガラスカバースリップで覆った。Zeissアクシオスコープに取り付けられた測光(Photoemetrics)Sensysカメラで、間期細胞の蛍光シグナルを分析した。サンプル毎に、少なくとも300個の細胞について分析した。
ウエスタンブロット分析:50mM Tris-HCl、0.5mM エチレングリコール[ビス]-[アミニオアシル]テトラ酢酸、170mM NaCl、1mM ジチオトレイトール、0.2%NP−40、0.01 U/mLアプロチニン、10μg/mLロイペプチン、10μg/mLペプスタチン、ならびに1μMフェニルメチルスルホニル・フルオリド(すべてSigmaから)を含有するバッファーに細胞を溶解させた。次に、超音波ホモジナイザー(471Cシリーズ、Cole Parmer Instruments;イリノイ州シカゴ)を用いて、この溶解物を超音波処理し、7,500gで遠心分離にかけた(Sorvall Instruments;コネティカット州ニュートン)。BSA基準の595nmで、BioRadタンパク質アッセイキット(Bio-Rad Laboratories、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いて、上記溶解物のタンパク質含有量を測定した。1x濃縮用バッファー(Trisベース0.5M、0.8%SDS)中の10%グリセロール、0.4%SDS、0.3%ブロムフェノールブルー、0.2%ピロニンYと、20%2-メルカプトエタノールを含有するサンプルバッファーを上記細胞溶解物に添加し、これらを95℃で3分間熱変性させた。次に、15μg/タンパク質レーンを、12.5%のポリアクリルアミドを含有するSDS−ポリアクリルアミドゲルに載せ、電気泳動によりサイズ分画した。タンパク質をTras-Blot(登録商標)転写培地(Bio-Rad)上にエレクトロブロッティングし、内部負荷対照としてのPonceau-Sで染色した。カスパーゼ1、カスパーゼ2(両者共、Santa Cruz Biotechnology製;カリフォルニア州サンタクルーズ)、ならびにカスパーゼ3(PharMingen;カリフォルニア州サンジエゴ)を含むウサギ抗ヒトモノクローナル抗体を添加し、ECLTM化学発光検出装置(Amersham;イリノイ州アーリントンハイツ)を用いて、結合抗体を検出した。コンピュータデンシメトリーにより、タンパク質バンドを定量した。
PML/RARαのRT−PCR分析:既述した方法を用いて、RT−PCRを実施した(Millerら、1992年、Proc. Natl. Acad. Sci. 第89号: 第2694〜8頁;Millerら、1993年、Blood、第82号: 第1689〜94頁)。
6.2. 結果
患者: 再発性または難治性のAPLを患った12人の患者を治療した。患者はいずれも、レチノイドおよび細胞傷害薬を用いた広範にわたる前治療を受けた(表3)。2人の患者は、同種異系骨髄移植から再発し、そのうちの1人は、ドナーT細胞の再注入にも失敗した。1人の患者は、慢性腎不全のため、血液透析を継続した。
臨床的効果: 12人の患者のうちの11人は、三酸化ヒ素治療の後、完全に寛解した。血液透析を行った患者は、第1日目に頭蓋内出血を起こし、第5日目に死亡した。効果の現れた患者に対する治療期間の中央値は33日間(範囲、12〜39日間)であり、1日用量の中央値は0.16mg/kg(範囲、0.06〜0.2mg/kg)であり、誘導期間中の累積用量の中央値は360mg(範囲、160〜515mg)であった(表3)。すべての判定基準による完全な寛解が得られたのは、治療開始後の日数の中央値が47日間(範囲、24〜83日間)の時であった。骨髄判定基準による寛解―治療を中止するかを決定する要因―が最初に得られ、通常、それに続いて、末梢血の白血球および血小板の回復が見られた。本研究で使用した用量範囲全体にわたり、有効性または応答時間の差異は明確には現れなかった。2クールの治療の後、試験した11人の患者のうちの8人は、PML/RAR-αに対するRT-PCRアッセイの結果が陽性から陰性に変化した。
完全寛解状態の11人の患者すべてに対して、三酸化ヒ素を用いた寛解後治療を少なくとも1クール実施した。4人、2人、および1人の各患者に対して、それぞれ合計で3クール、4クールおよび5クールの治療を実施した。寛解期間の中央値は、5+ヶ月(範囲、1〜9+ヶ月)である。しかしながら、11人の患者のうちの3人は、2クール目の治療中に再発した。これらの患者はいずれもRT-PCRアッセイの結果が変化しなかったため、それぞれ急速に薬剤耐性を獲得したものと推測された。その後、これらの患者のうちの2人は、進行性白血病が原因で息を引き取った。
有害事象: この研究における患者の臨床状態は非常に多様であった。それは広範にわたる前治療が反映されたものであった。プロトコルでは入院を必要としなかったため、3人の患者に対しては完全に外来患者として誘導治療を完了したが、他の1人の患者だけは静脈カテーテルを取り付けるために入院した。しかしながら、8人の患者は、白血病の合併症のために入院した。このうちの5人は、肺出血、腎不全、敗血症、移植片対宿主疾患、非特異性肺浸潤、または低血圧症などの合併症が原因で、集中治療室への移動、気管内挿管、および補助呼吸が必要であった。1人の患者は、重症代謝性アシドーシス、高カリウム血症、低血圧症、および腎不全の状況下で第二度心臓ブロックが現れた後、永久ペースメーカーの挿入が必要であった。しかしながら、更なる三酸化ヒ素療法で再チャレンジしたにもかかわらず、心臓ブロックは快方に向かった。5人の患者については、重度介入性合併症が現れたため、中央値で2日間(範囲、1〜5日間)にわたり一時的に投薬を中断した。2人の患者は、「レチノイン酸症候群」の症状に類似の症状を呈した。推定に基づいて、この2人をデキサメタゾンで治療したところ、症状が改善した。2人の患者だけは、血小板輸血をまったく必要としなかった。輸血した血小板単位の中央値は61(範囲、0〜586単位)であった。
開始時の全末梢血リンパ球数の中央値は4,700細胞/mm3(範囲、500〜144,000細胞/mm3)であった。6人の患者に白血球増加症(すなわち、≧20,000細胞/mm3)が現れ、その範囲は20,800〜144,200細胞/mm3であった。これらの患者に対しては追加の治療を行わなかったが、いずれの患者も、更なる介入を行うことなく白血球増加症が快復した。
共通した有害反応には、輸血中のめまい、疲労、筋骨格痛、および軽度の高血糖症が含まれていた。3人の患者に異感覚症が現れたが、これは恐らく末梢神経疾患に起因するものと思われる。しかしながら、これらの患者のうちの2人は、補助呼吸が行われている間、長期間にわたり固定されていたものであり、他の患者は、もともと神経疾患の病歴を有するものであった。
免疫表現型の研究: APLは、CD33を発現する細胞によって特性付けられる。CD33は、典型的には始原骨髄性細胞に関連する抗原である。三酸化ヒ素療法により、単独でCD33を発現する細胞の割合が徐々に減少するとともに、成熟骨髄性要素に関連する抗原であるCD11bを発現する細胞の割合が増大した。これらの変化は、APLの寛解を誘発するいずれの薬剤からも予想されるものであったが、三酸化ヒ素は更に、両方の抗原を同時に発現する細胞の発現を誘発した。ほとんどの場合、これらの二重発現性細胞が骨髄性細胞のかなりの部分を占め、この状態は、臨床的判定基準により完全な寛解が得られた後、長期間にわたり持続した。
蛍光in situハイブリダイゼーション分析: 完全寛解状態の初期および後期に患者から採取した骨髄単核細胞をフローサイトメトリーにより選別し、CD33およびCD11bの同時発現について調べた。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析を使用して、寛解初期に300個の細胞を調べた。対照APL細胞と同じように、これらの細胞の大多数はハイブリッドシグナルを呈した。このことから、PML遺伝子とRAR-α遺伝子との間で転座が起こったことおよびこれらのシグナルが新生物クローンに由来することが示唆される。しかしながら、寛解後期に同じパラメータを用いて、再度、同じ患者由来の細胞の選別を行ったところ、蛍光シグナルの正常パターンだけが検出された。従って、これらの細胞は正常な造血前駆細胞から誘導されたものであることが示唆される。
ウェスタンブロット分析: 骨髄単核細胞由来のタンパク質抽出物を、順次、ウェスタンブロット分析により調べた。この分析から、前駆体形態のカスパーゼ2およびカスパーゼ3が、in vivoで三酸化ヒ素治療に応答してアップレギュレートされたことが分かった。更に、この処置により、カスパーゼ1の開裂断片の発現が誘導されたことから、この酵素が活性化されたことが示唆される。また、開裂型のカスパーゼ3の発現が増大することも示唆される。これらの実験で使用された抗体は、開裂型のカスパーゼ2とは反応しない。
6.3 考察
この研究では、わずかな例外を除いて、試験に加わった患者は、複数回の再発を繰り返し、従来型の化学療法、レチノイド、または骨髄移植に耐えた。開始時、この研究の対象となった患者は、呼吸不全、播種性水痘帯状疱疹感染症、空洞性アスペルギルス症、慢性腎不全、および移植片対宿主疾患などの種々の白血病関連合併症を患っていた。更に、12人の患者のうちの5人は、補助呼吸及び補助的な看護のために集中治療室に入れる必要があったが、これらの合併症は、三酸化ヒ素療法に直接関係していなかった。
APLを患っていることが診断で確認された患者は実質的にすべて、レチノイド療法に関連した早期死亡を伴うことなく寛解した。全trans-レチノイン酸処置の場合と比較して症例は少なかったが、三酸化ヒ素により数人の患者で顕著な白血球増加症が誘発された。他の細胞傷害薬を中断したところ、患者が寛解するにつれて白血球増加症は消失した。試験した11人の患者のうちの8人は、初期に3回の再発を起こしたものの、PML/RAR-α(残存疾患の分子マーカー)に対するRT-PCRアッセイは陰性に変化した。この変化は、全trans-レチノイン酸処置を単独で行った後では通常見られない現象である。最終的には、三酸化ヒ素は、0.06〜0.20mg/kgの範囲で少なくとも3倍用量投与した場合に、APLに活性を示す。
全trans-レチノイン酸はAPL細胞の「最終」分化を誘発するが、三酸化ヒ素の細胞分化作用は充分に現れない。ヒ素は、成熟細胞および未成熟細胞の両方の特有な表面抗原(すなわち、それぞれCD11bおよびCD33)を同時に発現する細胞集団を誘導する。誘導初期、これらの誘導細胞では、APLを特性付けるt(15;17)転座が維持される。意外なことに、これらの細胞は、臨床的に完全に寛解しているにもかかわらず、骨髄中に存続する。しかしながら、寛解後期、こうした同時発現細胞は、依然として容易に検出することができるが、in situハイブリダイゼーションでは陽性ではなかった。また、治療中、白血病性細胞の形態学的な外観を識別することは、全trans-レチノイン酸を用いた治療中の場合よりも難しい。実際に、多くの患者に由来する白血病性細胞は、10日間以上にわたり形態学的変化をほとんど示さず、その後、白血病性細胞の割合は徐々に減少した。
「非最終」分化の後、三酸化ヒ素は、アポトーシスを誘発すると思われる。このことは、システインプロテアーゼ(カスパーゼと呼ばれる)の発現およびその不活性前駆体から活性型酵素への変換が増大することと一致する。カスパーゼ経路は、ごく最近、プログラムされた細胞死の重要な経路として特性付けされた。カスパーゼのファミリーは、最初、C. elegansタンパク質ced-3と哺乳類インターロイキンlβ変換酵素(ICE)との相同性から認識され、現在、多数のポリペプチドを切断させる少なくとも10種の異なるタンパク質が含まれる。白血病細胞系において、全trans-レチノイン酸などのいくつかの細胞傷害性薬剤を用いてカスパーゼの活性化を誘発することができる。これらの酵素は広範にわたるタンパク質分解を誘発するので、PML/RAR-αはカスパーゼ基質であると考えられる。
三酸化ヒ素及び全trans-レチノイン酸によって共有される最終的な類似性は、何人かの患者において臨床的耐性が急激に現れることである。再発した2人の患者から採取された白血病細胞は、10-4Mから10-7Mの濃度範囲にわたりin vitroで感受性を保持した。細胞内輸送の低下に基づく相対的ヒ素耐性は、細菌細胞中のarsオペロンによりコードされる膜輸送体のダウンレギュレーションと関連付けて説明された。哺乳類細胞中での耐性についてはそれほどよく特性付けされていないが、膜輸送または流出の変化は恐らく重要な因子であろう。
要約すると、三酸化ヒ素は、広範にわたる従前の治療後に再発したAPL患者において完全な寛解を誘発する。この薬剤は、白血病細胞の部分的で不完全な細胞分化を引き起こした後、カスパーゼの活性化およびアポトーシスの誘発を起こす。
Figure 2010184926
患者すべてに対して、事前に、全trans-レチノイン酸+アントラサイクリン抗生物質+シトシンアラビノシドの1回以上の投与を実施した。*は、レチノイド耐性を有すること(すなわち、再誘導時に応答がなくなるかまたはレチノイドが保持されているにもかかわらず再発が起こること)が判明した患者を示す。†は、早期に死亡した患者を示す。他の治療:aミトキサントロン/エトポシド;b同種異系(allogeneic)骨髄移植;cメトトレキセート/ビンクリスチン/6−メルカプトプリン;d9‐cis-レチノイン酸+M195(抗CD33モノクロナール抗体)。
7. 実施例: リンパ腫における臨床的使用
in vitroにおけるB細胞リンパ球系に対する三酸化ヒ素の抗腫瘍作用の最初の発見に基づいて、本発明者らは、自己骨髄移植などの多数の形態の従来型治療後に再発した中等度の大細胞リンパ腫を有する1人の患者を治療した。三酸化ヒ素治療を開始する前、患者の疾患は急速に進行していたにもかかわらず、三酸化ヒ素を用いた治療により、癌性リンパ節および脾臓のサイズはかなり(>50%)縮小した。これはまた、患者のクオリティ・オブ・ライフの大幅な改善にもつながった。
8. 実施例: 非造血性癌における臨床的使用
また、三酸化ヒ素を用いて、結腸癌の治療を行った。予備試験において、三酸化ヒ素による処置が1回行われた1人の結腸癌患者は、血清CEA(癌胎児性抗原)レベルがかなり低下した。1日あたり体重1kgにつき0.1〜5mgの三酸化ヒ素を静脈内注入により5日間毎日投与した。CEAレベルが19,901 ng/mlから15,266 ng/mlに変化した。すなわち、23%の減少が見られた。周知のように、血清CEAレベルの減少は抗腫瘍応答に関連付けられる。
また、三酸化ヒ素を使用して結腸癌などの他の非造血性癌も治療可能であることが、臨床データから確認できる。
9.実施例:薬物動態学的研究
APL患者および他の血液学的疾患を有する患者においてAs2O3の薬物動態(PK)および生物学的作用を調べるために、用量変化に関するいくつかの研究を行った。APL患者では、免疫表現型を調べるためのフローサイトメトリー、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、ならびにアポトーシス関連タンパク質カスパーゼ1、2、および3のウェスタンブロット発現により、骨髄単核細胞を連続的にモニターした。CD11bおよびCD33を同時発現しかつFISH分析でt(15;17)転座の確認された細胞は、治療の間、徐々に増加し、完全寛解状態の初期にも存続した。As2O3はまた、カスパーゼ2及びカスパーゼ3のプロ酵素のin vivo発現、及びカスパーゼ1及びカスパーゼ3双方の活性化を誘導した。血液および尿のPK分析を行って元素ヒ素(As)含有量を調べたところ、Asは全血の血漿画分および赤血球画分の両方に分布することが分かった。平行な除去(parallel elimination)曲線から、これらの2つのコンパートメント間を自由に行き来できること、およびピーク値から半減期約60分で減衰することが示唆された。第1日目の平均AUCは約400ng・hr/mlであった。投与量の約20%は、最初の24時間以内に尿中に回収された。
次に、1回の治療クールあたり累積で合計25日間、3〜5週間ごと、1日あたり体重1kgにつき0.1〜0.15mgの用量レベルで、毎日静脈内投与するスケジュールを使用し、APL以外の疾患を有する患者で用量変化の研究を開始した。今までに10人の患者を集めた。その内訳は、CLL患者(2人)、AML患者(3人)、リンパ腫患者(4人)、およびCML患者(1人)である。5人の患者は、進行が速いため、初期に研究から除外し、5人の患者について、計画された25日間のクールを実施した。この用量範囲で、この薬剤は充分許容できるものであることが実証された。副作用には、皮膚発疹、注入中のめまい、疲れ、およびEKGのQTcの増大が含まれていた。この進行中の研究の結果から判断して、As2O3を臨床的に使用すると、APLにおいて部分的分化およびアポトーシスが誘発されるが、この薬剤の治療効果はこの疾患に限定されるものではないことが分かる。
本発明の範囲は、本明細書中に記載の特定の実施形態によって限定されるものではない。実際上、本明細書中に記載されているもの以外の本発明の種々の改変は、以上の説明から当業者には自明なものとなるであろう。このような改変は、添付の請求の範囲内に含まれるものとする。
本明細書中には種々の出版物が引用されているが、これらの開示内容はすべて、参照により本明細書に組み入れる。

Claims (18)

  1. 治療的に有効な量の三酸化ヒ素を急性骨髄性白血病のヒトに投与することを含んでなる、ヒトにおける急性骨髄性白血病の治療方法。
  2. 治療的に有効な量の三酸化ヒ素を慢性骨髄性白血病のヒトに投与することを含んでなる、ヒトにおける慢性骨髄性白血病の治療方法。
  3. 治療的に有効な量の三酸化ヒ素を固形癌のヒトに投与することを含んでなる、ヒトにおける固形癌の治療方法。
  4. 該固形癌が消化管、軟組織、食道、肝臓、胃、結腸、肺、皮膚、脳、骨、乳房または前立腺の癌である、請求項3に記載の方法。
  5. ヒトにおける、レチノイドでの治療に対して抵抗性である白血病の治療方法であって、それを要するヒトに、治療的に有効な量の三酸化ヒ素またはメラルソプロールを投与することを含んでなる方法。
  6. ヒトにおける白血病、リンパ腫または固形腫瘍の治療方法であって、それを要するヒトに、治療的に有効な量のメラルソプロールを投与することを含んでなる方法。
  7. 約2.5〜4.5mgの三酸化ヒ素を1日当たりに投与する、請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
  8. 該ヒトの体重1kg当たり約0.15mgの三酸化ヒ素を1日当たりに投与する、請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
  9. 三酸化ヒ素を静脈内注入により投与する、請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
  10. 該ヒトにおいて骨髄の寛解が観察されるまで、三酸化ヒ素の投与を毎日繰返す、請求項1、2または5に記載の方法。
  11. 治療を3〜6週間一時停止し、累積的な合計で25日間、1週間当たり5〜7回、三酸化ヒ素の毎日の投与を再開する工程を、1〜10回繰返すことを更に含む、請求項10に記載の方法。
  12. 全transレチノイン酸も該ヒトに投与する、請求項1、2または5に記載の方法。
  13. 三酸化ヒ素の投与を毎日5日間繰返す、請求項3または4に記載の方法。
  14. 1ヵ月に1回繰返す、請求項13に記載の方法。
  15. 該ヒトの体重1kg当たり約0.5〜5mgのメラルソプロールを1日当たりに投与する、請求項6に記載の方法。
  16. 三酸化ヒ素を含む、ヒトに対する投与に適した無菌医薬組成物の製造方法であって、
    (a)12以上のpHの水溶液中で三酸化ヒ素を可溶化し、
    (b)該三酸化ヒ素溶液を塩酸でpH約8.5に中和し、
    (c)pHを約7に低下させ安定化する医薬担体中で工程(b)からの三酸化ヒ素溶液を希釈し、
    (d)該医薬組成物を滅菌する、
    ことを含んでなる製造方法。
  17. 製薬上許容される担体中に三酸化ヒ素およびデキストロースを含んでなる、ヒトに対する注射に適した無菌医薬組成物。
  18. 1mg/mlの三酸化ヒ素を含む、請求項17に記載の医薬組成物。
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