JPH0753368A - 白金(ii)抗腫瘍剤の安定化溶液 - Google Patents

白金(ii)抗腫瘍剤の安定化溶液

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JPH0753368A
JPH0753368A JP6215153A JP21515394A JPH0753368A JP H0753368 A JPH0753368 A JP H0753368A JP 6215153 A JP6215153 A JP 6215153A JP 21515394 A JP21515394 A JP 21515394A JP H0753368 A JPH0753368 A JP H0753368A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 カルボプラチン類の溶液安定化を図る。 【構成】 カルボプラチン及び他のマロナト白金(I
I)抗腫瘍剤にpH4−8で安定化量の1,1−シクロ
ブタンジカルボン酸又はその塩を加える。この溶液はま
た空気又は酸素でパージしまた所望により容器上部空間
を空気又は酸素で充填することにより安定化できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は白金(II)抗腫瘍剤の
安定化溶液に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】カルボプラチン、1,1−シ
クロブタンジカルボン酸ジアミン白金(II)、は白色
ないし灰色の結晶粉末である。シスプラチン同様これは
細胞毒性をもっており、卵巣癌を含む哺乳動物の種々の
悪性腫瘍の治療に有効である。Cleare等に対する
米国特許第4,140,707号及び4,657,92
7号にはカルボプラチンその他のマロナト白金化合物と
標準スクリーニング腫瘍、固体サルコマ180の処置で
その使用が開示されている。このグループの化合物はそ
の構造中に−(OOC)−C<結合をもつことから
「マロナト(malonato)」といわれる。
【0003】シスプラチンと異なり、カルボプラチンは
腎性毒性、耳毒性及び神経毒性といったきびしい副作用
は通常生じない。カルボプラチンはアクア化抵抗性があ
り、毒性が低い。これまでに小細胞肝癌、リン状細胞癌
及び精巣癌を含む種々のヒトの癌の治療に用いられてき
た。U.S.Pharmacist,1989年9月
号、62−63頁参照。
【0004】カルボプラチンは通常患者に静脈注射する
前に水、生理食塩水、デキストロース溶液及び/又は他
の稀釈剤で稀釈して用いる凍結乾燥粉末として販売され
る。しかし水に対する溶解度が比較的小さい(室温で1
4mg/ml)ために再構成中のはねかえり現象(スプ
ラッシュバック)等の問題を生ずる。またすべての抗腫
瘍剤同様正常細胞と接触すると望ましくない作用を示し
うる。
【0005】濃縮された即用(ready−to−us
e(RTU))型のカルボプラチン溶液は取扱い及び投
与を促進する上で非常に望ましい。しかしこの化合物は
単純な水溶液の場合即ち水だけと混合した場合長期間保
存に対し物理的安定性を欠くという欠点がある。Nij
kerk等に対する米国特許第5,104,896号で
はこの問題の解決が検討されている。それはカルボプラ
チンを22mg/ml以下と無機緩衝剤0.01−0.
1モルを含みpHを2−6.5に維持したカルボプラチ
ン溶液である。
【0006】Cancev Chemother Ph
armacol.23:197−207(1989)で
A.Bosonquetはカルボプラチンの不安定性を
論じた上水と塩化ナトリウムを用いて安定な溶液をつく
ることを提案している。EPO公開334,551(1
989年9月21日発行)でLevius等はカルボプ
ラチン溶液には塩素イオンを用いるべきでないことを示
唆している(3頁7行)。また彼らは薬剤濃度10−1
5mg/mlのカルボプラチン水溶液はこの薬剤が凍結
乾燥されていずまたその水が塩を含まない場合には安定
であることを開示している(2頁22行)。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は安定なカルボプ
ラチン組成物、その製造法及びこれら組成物と製法に基
づく安定な生成物に関する。本発明者等はカルボプラチ
ン(又はマロナト同種体congener)の安定な
1,1−シクロブタンジカルボン酸(CBDCA)緩衝
溶液が安定剤として次の少なくとも1つを用いることに
よって得られることを見出した: (1)1,1−シクロブタンジカルボン酸(pH4−8
へ)、(2)この溶液を空気又は酸素でパージし、そし
て(3)薬瓶その他の容器の上部空間を空気又は酸素で
覆う。特に好ましい態様では上記(1),(2)及び
(3)のすべてを用いる。生ずる溶液はpHが約4から
約8で、カルボプラチンを約1から約15mg/ml含
み、水を含有するキャリアを含み、50容量%の上部空
間を持つ薬瓶に保存される。この溶液は50℃で少なく
とも4ケ月間化学的及び物理的に安定である。
【0008】本発明の組成物、生成物及び方法は従来技
術に比しいくつかの利点を有する。カルボプラチンの凍
結乾燥物その他の粉末型を用いたときのスプラッシュバ
ック等の問題が本発明の即用(RTU)注射処方の稀釈
性溶液を用いることによって防ぐことができる。本発明
のRTU処方は製造費用が安く、投与前に稀釈以外の追
加の操作を必要としない。
【0009】本発明の新処方の安定性(即ち24℃又は
周囲温度で18ケ月まで安定)は有効期間のチェックや
従来品のような頻繁な廃棄を必要としないことを意味す
る。温度と光感応性についての最小限の注意を払うだけ
で本発明のカルボプラチン溶液は容易に使用しまた維持
できる。これら及び他の作用効果は以下の記載から明ら
かとなろう。特に断らない限りすべての%は全組成物重
量に基づく重量%である。すべての表において「透
明」、「沈澱なし」は同義である。
【0010】活性成分:本発明で用いる活性成分は1以
上のマロナト白金(II)化合物である。「カルボプラ
チン」は明細書全体を通じ、2つの単座配位のアンモニ
ア又はアミンリガンド及び1,1−シクロアルキルジカ
ルボン酸残基をもつ1つの2座配位のマロナトリガンド
を含有するすべての配位化合物を含むものとして用い
る。好ましい化合物は式Iに相当するものである。
【0011】
【式1】
【0012】上記においてR及びR′は独立にH,C
1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C
5−12アリール、C5−12アルカリール、C
5−12アラルキル、C1−6アルコキシアルキルおよ
びC5−12アミノ酸残基から選ばれ、nは2又は3で
あり、Xは環状のC3−6アルキル又はアルケニル基で
ある。R=R′=Hで、n=3で、Xがシクロアルキル
基であることが好ましい。(構造式IIの)カルボプラ
チン及びその異性体及び周知の誘導体を用いることが特
に好ましい。
【0013】
【式2】
【0014】上記において「周知の誘導体」とは溶媒和
物、錯体、水和物、幾何異性体、置換した核をもつ同類
体等を意味する。本発明で用いるシスプラチン及び他の
治療化合物は米国特許第4,140,707号及び4,
657,927号に記載された方法で製造できる。
【0015】一般的な反応スキームは次のとおりであ
る。 シス−〔PtACl〕+2AgNO+2H→シス
−〔PtA(HO)〕(NO+2AgCl シス−〔PtA(HO)〕(NO+X(CO
OH)→〔PtA(OOC)−CH〕+2NO
+2HO+2H 上記においてAは1つの2座配位のアミンリガンド又は
2つの単座配位のアミンリガンドであり、Xは上記のと
おりである。
【0016】カルボプラチンの抗癌剤としての有用性は
周知である。 安定系: (1)1,1−シクロブタンジカルボン酸(CBDC
A)及び塩:CBDCAはカルボプラチンを製造する好
ましい方法における試薬である。これはその安定化され
ていない溶液の水溶性成分である。CBDCAの有用な
塩にはアルカリ金属塩がある。ナトリウム塩が好まし
く、特にキャリアが水又は1以上のポリアルキレングリ
コールであるときはナトリウム塩が好ましい。
【0017】CBDCAとそのナトリウム塩はその高い
相溶性の故にカルボプラチン用の緩衝剤として検討され
たことがある。しかしこれらが白金(II)化合物の安
定剤として検討された例はない。好ましい態様の一つに
おいて、この安定剤系は安定剤としてのCBDCAの使
用とpH変性剤としてのそのナトリウム塩の使用を含
む。この酸又は1以上の塩は約0.25から約4mg/
mlの最終CBDCA濃度をpH約4から約8で与える
に十分な量でカルボプラチン又は他のマロナト白金(I
I)化合物の溶液に加えられる。好ましい量は約1から
約2mg/mlである。
【0018】(2)空気又は酸素パージ 空気即ち室温において約78%の窒素と約21%の酸素
のガス状混合物ないし純酸素(O)が用いられる。好
ましいパージ用ガスは酸素である。酸素と空気の混合物
も用いうる。これら混合物の酸素濃度は約25%と約9
5%の間が好ましい。アルゴン等の非窒素性ガスも用い
うる。パージガス中の窒素濃度を約78%より高くする
ことは避けるべきである。「パージ」とは所望のガスを
大気圧下にバブリングその他の手段で溶液に通して最適
量の酸素で液体及び上部空間を飽和することをいう。
【0019】パージ工程の時間は臨界的ではない。しか
し通常薬剤含有溶液を約1から約5時間パージすること
が好ましい。典型的な時間は2時間である。約25−3
0℃の周囲温度又は室温が通常用いられる。パージ技術
を用いる際、容器中の液体が全体容積の50%以下即ち
液体で満たされていない空気酸素容積又は上部空間が容
器の全容積(液体及び気体)の50%以上であることが
(必須ではないが)好ましい。
【0020】(3)上部空間(ヘッドスペース)の空気
又は酸素での充填 容器の上部空間即ち液体容積上の空間を空気又は酸素で
満たすことが別の安定化法である。ここで充填又は覆う
とは薬瓶(バイアル)、ビン又は他の密閉容器の空気又
は酸素で飽和した液体上の空間からすべての周囲又は大
気ガスを押し出す技術を含むものである。その直後に容
器を密閉する。この操作時間は通常約1時間から5時間
である。約2ないし3時間が好ましい。パージ工程で述
べたように、78%より多い窒素を含有するガスの使用
は避けねばならない。
【0021】これらの3つの技術は各々単独でマロナト
結合を融着するカルボプラチン又は他の類似の白金(I
I)薬剤を含む溶液の安定化に用いられる。しかし上記
(1)と(2)を一緒に用いること又は(2)と(3)
を一緒に用いることが好ましい。
【0022】キャリア: 白金(II)化合物の溶媒として用いられるキャリアは
通常水である。純水(たとえば注射用の滅菌水)が好ま
しい。水とある種のポリアルキレングリコール及び糖溶
液等の1以上の補助キャリアとの混合物も用いうる。典
型的には本発明の溶液中の最終の水含量は約0.5から
約99.5%の範囲であり、グリコール等の補助的キャ
リアは全キャリア含量に基づき約10から約90重量%
の濃度で用いられる。
【0023】好ましいグリコールは約300から約90
0の分子量をもつポリアルキレングリコールでC1−6
アルキル基に基づくものである。従ってポリエチレング
リコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレング
リコール等のポリエーテルグリコールが用いうる。ポリ
プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(P
EG−400)がより好ましい。15容量%の水と85
容量%のPEG−400又は85容量%のプロピレング
リコールとの混合物が最も好ましい。
【0024】糖溶液には等張性調節剤として機能するデ
キストロース、サクロース、マンノースその他の糖の製
薬上受け入れられる糖の溶液がある。5%のデキストロ
ース水溶液(「D5W」)は最も好ましい補助キャリア
の1つである。
【0025】本発明の溶液は水性又は非水性濃厚RTU
型のいずれでも供しうる。従って適量の補助キャリアの
使用は任意である。白金化合物の有効性又は安定剤の効
果に悪影響を与えない他のキャリアを上記キャリアの一
部又は全部のかわりに用いうる。
【0026】緩衝剤:本発明で用いる白金(II)化合
物は上記(1),(2)又は(3)の1以上の技術を用
いるため還元分解を受けにくい。しかしこれら溶液の安
定性は、溶液pHを最適範囲に保ちその結果緩衝剤とし
て作用する1以上のpH調節剤の存在により更に高めら
れる。通常溶液のpHは約4と約7の間にあることが好
ましい。カルボプラチン単独の周囲pHは約6.5であ
る。CBDCAを添加するとpHが4以下に低下してし
まう。それ故塩基性緩衝剤又はpH変性剤を用いてpH
を上げる必要がある。
【0027】通常、緩衝剤はカチオン部が製薬上受け入
れられる単純な無機塩基である。ナトリウム、カリウム
及びカルシウムの酸化物及び水酸化物が好ましい。水酸
化ナトリウムが特に好ましい。水酸化ナトリウムその他
の緩衝剤の最適量はCBDCA/白金(II)化合物混
合物を約4から約8、好ましくは約5から約7、最も好
ましくは約5.5から約6.5の安定pHが得られるま
で滴定することにより決めうる。塩基性添加剤とCBD
CAの両者の存在が所望の溶液pHを得るために必要で
あり、CBDCAは緩衝剤と考えられる。しかし、本発
明系におけるCBDCAの主たる機能はカルボプラチン
又は他の白金(II)化合物の安定剤としてのものであ
る。
【0028】投与:本発明の処方が用いられる投与量
は、たとえばPhysician’s Desk Re
ferenceに述べられているサウンドメディカルジ
ャッジその他のガイド原理によって通常求めることがで
きる。通常、本発明の溶液は癌の治療のために動物、好
ましくはヒトに投与される。典型的な投与量は約1から
約200mg/kg/ドースの範囲で、通常周期的に約
1〜約3回投与される。この溶液は静脈注射に適してい
る。即用濃度(RTU)溶液として供給される。これら
の濃縮物は注射前に1から60容量の水その他の適当な
稀釈剤で稀釈されるべきである。注射が好ましい投与法
でだが経口その他の他のルートも用いうる。
【0029】保存:白金(II)抗腫瘍剤の長期安定性
が本発明の第1の目的である。従ってこれらの化合物の
分解を促すことが知られた条件の使用は避けるべきであ
る。過度の光、低いpH(4未満)及び高温は避けるべ
き3つの条件である。本発明の組成物の約60℃までの
温度での安定性につきここで述べる。試料をテストし2
5℃で数週間から1年の期間安定であることがわかっ
た。高いストレスを受けた溶液で見られるわずかな色変
化は通常薬剤力価の安定性や効能の重大な低下を示すも
のではない。しかしにごっていたり沈澱のある溶液の使
用は望ましくない。これらの沈澱粒子は静脈投与を妨害
するおそれがある。
【0030】
【実施例】次の例は本発明を例証するものである。 例1: 水溶液安定性に対する1,1−シクロブタンジ
カルボン酸(CBDCA)濃度の効果 カルボプラチンの安定性に対するCBDCA濃度の効果
を50℃と60℃で調べた。10mg/mLまでのカル
ボプラチン水溶液を8,4,2,1,0.5,0.25
及び0mg/mLのCBDCA濃度でつくった。CBD
CAを含有する各溶液のpHをNaOHで6.0に調節
した。CBDCAなしの各溶液のpHは調節しなかっ
た。カルボプラチンの周囲pHは〜6.1であり、5.
5から7.0に変わる。これらの溶液を空気でパージ
(バブリング)し、洗浄したNo.04515/00
Wheaton 6mL薬瓶に、10mLの使いすてシ
リンジとGelman No.4192無菌0.2μm
フィルターを用い濾過して注入した。各薬瓶は3mlの
溶液を含み約50%の空気上部空間を残していた。すべ
ての試験薬瓶をDaikyo No.759フルオロレ
シン被覆ストッパーで栓をしWheaton 20mm
アルミニウム密封部材で密封した。25℃と40℃で長
期安定性試験(8.5ケ月及び9ケ月)を行った。結果
を表に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】 第2表:カルボプラチンの定量分析用HPLC法 カラム:Alltech 10ミクロンNH,4.6
×150mm 検出 :230nm 注入容量:20ml 試料濃度:約1mg/mL 稀釈剤:Milli−Q水 外部標準:約1mg/mLカルボプラチン 温度 :30℃ モービル相:アセトニトリル85%/Milli−Q水
15% 流動速度:2.0mL/分 操作時間:15−18分 典型的保持時間:カルボプラチン10分 試料を60℃で1,2,4及び8週間、50℃で2,
4,8及び16週間保存した。これら試料のデータを第
3表及び第4表に示す。
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】カルボプラチンの10mg/mL水溶液に
極めて少量のCBDCAを加えた場合でも上昇した温度
において溶液(pH約6,〜50%,空気上部空間)の
物理安定性に対し効果を示した。前記表に示したように
CBDCAを添加しない溶液は60℃で4から8週間
後、50℃で16週間後に色がコハク色ないし褐色にな
った。褐色の無定形沈澱が認められた。反対に、CBD
CAを加えた溶液は色がずっと明るく60℃で8週間又
は50℃で16週間沈澱を生じなかった。添加した最低
濃度のCBDCA(0.25mg/mL)でより60℃
での8週間又は50℃での16週間の保存中目視できる
沈澱形成はなかった。
【0043】第3表に示した60℃4及び8週間データ
及び第4表に示した50℃8週間及び16週間データか
ら明らかなように、CBDCA濃度が増加すると色形成
の強さが漸進的に低下する。両温度においてカルボプラ
チンの化学安定性は存在するCBDCA濃度には影響さ
れないようにみえた。第1表に示したようにCBDCA
を加えないカルボプラチン溶液のpHは検討中低下傾向
を示した。しかしCBDCAを含有する溶液のpHは極
めて高い安定性を保持した。これは加えたCBDCAが
(NaOHを用いてpHを調節したことと相まって)緩
衝効果をもつことを示しているといえる。
【0044】例2:(ガスでパージした)溶液安定性に
対する上部空間ガスの性質の効果 カルボプラチンの水溶液の安定性に対する窒素、酸素及
び空気の効果を50℃及び60℃で調べた。カルボプラ
チン溶液はCBDCAを1mg/mL加えた上10mg
/mLで調製した。pHは10N及び1NのNaOHで
6.0に調節した対照溶液は10mg/mL(CBDC
Aを用いず、周囲pH〜6.4)で調製した。次いで酸
素、空気又は窒素を1時間溶液にバブリングして溶液を
ガスで飽和させた。パージした溶液をGelman N
o.4192無菌0.2μmフィルターを用い、洗浄し
たNo.04515/00 Wheaton 6mL薬
瓶(3mL,充填容量50%)に濾過した。充填後、残
った上部空間に各パージガスを充填した。上部空間ガス
の損失又は汚染を防止するため薬瓶を直ちにDaiky
o No.759フルオロレシン被覆栓で栓をした。全
部の薬瓶をWheaton 20mmアルミニウム密封
部材で密封した。試料を60℃で1,2,4及び8週
間、50℃で2,4,8及び16週間保存した。これら
試料のデータを第5表及び第6表に示す。
【0045】
【表11】
【0046】
【表12】
【0047】
【表13】
【0048】第5表及び第6表の結果はカルボプラチン
水溶液の物理及び化学安定性に対し薬瓶上部空間ガスが
顕著な効果をもつことを明瞭に示している。試料の窒素
パージによって酸素のカルボプラチンに対する比を低下
させた場合60℃で1−2週間以内に(第5表)、また
50℃で4−16週間以内に(第6表)沈澱(不溶性分
解/転化生成物)が生ずる。CBDCAを含有する溶液
に対し窒素パージし加温下に保存すると高いカルボプラ
チン力価損失をもたらし、上澄液は(沈澱の結果)無色
で残った。これらは白金酸化物と思われる重質で暗黒色
の沈澱を含んでいた。
【0049】CBDCAを加えず同様に窒素パージ(酸
素なし)した溶液は通常、18ケ月以上より低温(4−
30℃)で保存した溶液中に観察されるオリゴマー混合
物と同定される物質と同様のモルホロジーをもつきれい
な褐色の無定形沈澱をもたらした。第4表に示すように
CBDCAを加えず50℃で16週間保存した窒素パー
ジ(酸素なし)した溶液は白金酸化物及び金属白金特有
の黒色及び銀色沈澱を生じた。50℃及び60℃で、空
気上部空間(CBDCAあり及びなしで薬瓶充填容量〜
50%)をもつカルボプラチン溶液は、対応する窒素パ
ージ(空気なし)した溶液に比し沈澱生成が少なくまた
ずっと高いカルボプラチン力価保持性を示した。また空
気の上部空間をもち1mg/mLのCBDCAを含有す
るカルボプラチン溶液は、CBDCA濃度の効果を検討
した実験でみられたと同じ色の低下及び沈澱の抑制を示
した
【0050】酸素パージ試料は加えたCBDCAの存否
にかかわらず10mg/mLカルボプラチン水溶液の物
理安定性の効果がある。これは60℃8週間及び50℃
16週間でわずかな色形成(即ち麦わら色)及び沈澱形
成の抑制を示している第3表及び第4表のデータで裏付
けられる。カルボプラチンの力価保持性は1mg/mL
のCBDCAの存否いずれの場合も空気パージ溶液と酸
素パージ溶液とで同様である。
【0051】例3:溶液安定性に対する薬瓶充填容量の
効果 カルボプラチン水溶液の安定性に対する薬瓶充填容量
(即ち非充填上部空間)の効果を50℃及び60℃で調
べた。10mg/mLのカルボプラチンの溶液を(それ
ぞれCBDCA1mg/mlを用いて)つくった。pH
を10N及び1NNaOHで6.0に調節した。対照溶
液を10mg/mL(CBDCAなし、周囲pH〜5.
7)でつくった。すべての溶液を1時間空気をパージ
(バブリング)して空気を飽和した。パージ後、溶液を
Gelman No.4192無菌0.2μmフィルタ
ーを用い洗浄したNo.04514/00 Wheat
on 10mL薬瓶(全容量14mL)中に濾過した。
薬瓶充填容量(即ち全液体容量)は2,4,6,8,1
0及び12mlだった。薬瓶をDaikyo No.7
59フルオロレシン被覆栓でとめ、Wheaton 2
0mmアルミニウムシールで密封した。試料を60℃で
1,2,4及び8週間後及び50℃で2,4,8及び1
6週間後に分析した。データを第7表及び第8表に示
す。より長期間の安定性をもつ試料はより低温(4.2
4及び40℃)に置いた。最初の試料及び安定化した試
料を化学的及び物理的に分析した。
【0052】
【表14】
【0053】
【表15】
【0054】
【表16】
【0055】
【表17】
【0056】50℃及び60℃で10mg/mLのカル
ボプラチン水溶液(CBDCAなし、当初周囲pH〜
5.7)中で形成した沈澱の量は10cc薬瓶中に充填
した溶液の容量(最大充填容量〜14mL)に直接関係
した。充填容量が増加すると(相対的に酸素:カルボプ
ラチン比が減少)、色強さ、沈澱量が共に増加した。こ
れはカルボプラチンの安定性が存在する酸素の量(比)
に相関し上部空間ガスの安定性に対する効果を示してい
る。第6表のデータは10−12mLの溶液(CBDC
A添加なし)の高い薬瓶充填容量(低い酸素有効量)は
60℃で8週間後にかなりの力価損失をもたらし、黒色
及び銀色の沈澱(白金の酸化物及び金属白金と思われ
る)を生じたことを示している。
【0057】50℃及び60℃で保存した添加CBDC
Aなしのカルボプラチン溶液はすべての充填容量で沈澱
を生じた(沈澱形成時間は温度が高いか充填容量が大き
いほど早くまた存在する量も多い)。極めて高い充填容
量(即ち10−12mL)の薬瓶を除き、50℃及び6
0℃で形成した沈澱は褐色の無定形型のオリゴマー混合
物が主体だった。分解した多くの試料中に円形のマルタ
クロス(maltese cross)状結晶が観察さ
れた。
【0058】例4:溶液安定性(空気パージ溶液)に対
するpHの効果 10mg/mLのカルボプラチンの水溶液安定性に対す
るpHの効果を50℃及び60℃で調べた。CBDCA
を1mg/mLの温度で各溶液に加えた。溶液のpHを
1N及び10N NaOHを用いて4,5,6,7及び
8に調節した。添加CBDCAなしの溶液についてのp
Hの効果は、カルボプラチンを他の化合物に転換せずに
pHを調節することが困難なので(たとえばHClを加
えるとシスプラチンに転換する)、実験しなかった。各
溶液を1時間空気をバブリングしてパージし、次いでG
elman No.4192の0.2μm無菌フィルタ
ーを用い洗浄したNo.04515/00Wheato
n 6mL薬瓶に濾過した。各薬瓶にカルボプラチン溶
液3mlを充填した8充填容量50%)。薬瓶をDai
kyo No.759フルオロレシン被覆栓でとめ、W
heaton 20mmアルミニウム密封部材で密封し
た。試料を60℃で1,2,4及ひ8週間、50℃で
2,4,8及び16週間保存した。データを第9表に示
す。
【0059】
【表18】
【0060】
【表19】
【0061】添加CBDCA1mg/mLを含むカルボ
プラチンの10mg/mL水溶液(空気上部空間として
薬瓶充填容量〜50%)の化学及び物理安定性に対する
pHの効果を第7表に示す。最初のpH(即ちpH4−
8)とは独立に、60℃で8週間、50℃で16週間全
溶液が透明性と沈澱のない状態を保った。これは物理安
定性に対しCBDCAの添加が有効であることを示して
いる。加温下に保存した溶液の色、最も低い初期pH
(pH4)で最も強かった。初期pH6−7の試料の色
形成が最も小さかった。化学安定性(カルボプラチン力
価保持)はpHが4から8に増加するとわずかに低下し
た(50℃8及び16週のデータと60℃8週のデータ
が最も明瞭である)。初期pH4−7の溶液にとって、
分解した試料のpHは比較的変化しなかった(即ち<
0.5pH単位変化)。これらの予備検討で得た物理及
び化学データから4−7の形成pHが全体の化学及び物
理安定性にとって最適であることが分かる。
【0062】全体の結果:ここに示したデータはCBD
CAと空気又は酸素のパージと容器の上部空間のかなり
の量の空気又は酸素(即ち10容量%から50容量%又
はそれ以上)が満足する化学及び物理安定性をもつ保存
性カルボプラチン溶液をもたらすことを示してる。これ
らの安定性は、溶液が最低限の色形成(一般に、透明、
コハク色、黄色又は緑色)を示しまた固体沈澱を全く又
は殆ど形成しないことによって裏付けられる。水酸化ナ
トリウム、さらに所望によりCBDCAでの緩衝化又は
pH保持は有効である。カルボプラチン濃度の5−40
%のCBDCA濃度は色と沈澱の生成を抑制する。本発
明の範囲を離れることなく当業者は適宜の変形をなしう
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ラワン プサンチ アメリカ合衆国ニューヨーク州 13084 ラファイエット ルート20 6842 (72)発明者 ロバート ケイ ペローン アメリカ合衆国ニューヨーク州 13090 リバプール トムウッド ドライブ 7353 (72)発明者 スコット アール ステンバーグ アメリカ合衆国ニューヨーク州 13027 バルドウインズビル バン バレン ロー ド 7215 (72)発明者 シーラム アグハーカー アメリカ合衆国ニューヨーク州 13066 ファイエットビル ウォターフォード ウ ッド ウエー 5104 (72)発明者 ジョセフ ビー ボガーダス アメリカ合衆国ニューヨーク州 13104 マンリウス ペンストック ウエー 8239

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)マロナト白金(II)化合物(カ
    ルボプラチン又はマロナト同種体)の抗腫瘍有効量、
    (b)1,1−シクロブタンジカルボン酸(又は対応す
    るマロナト同種体)又はそのアルカリ金属塩の安定化
    量、(c)pHを約4から約7に保つに十分なpH変性
    剤、及び(d)製薬上受け入れられるキャリアからなる
    ことを特徴とするマロナト白金(II)化合物の安定な
    注射可能組成物。
  2. 【請求項2】 pH変性剤が1,1−シクロブタンジカ
    ルボン酸のナトリウム塩である請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 成分(a)の量が約1から約20mg/
    mlである請求項2記載の組成物。
  4. 【請求項4】 成分(b)の量が0.25から約4mg
    /mlである請求項2記載の組成物。
  5. 【請求項5】 成分(d)が水、C1−6アルキル基を
    含有するポリアルキレングリコール、デキストロース水
    溶液及びそれらの混合物から選ばれる請求項3記載の組
    成物。
  6. 【請求項6】 成分(d)が水である請求項2記載の組
    成物。
  7. 【請求項7】 成分(a)がカルボプラチンである請求
    項5記載の組成物。
  8. 【請求項8】 混合後に溶液を空気又は酸素でパージす
    る請求項1記載の組成物。
  9. 【請求項9】 (1)マロナト白金(II)化合物(カ
    ルボプラチン又はマロナト同種体)の溶液に1,1−シ
    クロブタンジカルボン酸(又は対応するマロナト同種
    体)の安定化量を加え、(2)pHを調節し約4から約
    7に保持することを特徴とするマロナト白金(II)化
    合物溶液の安定化法。
  10. 【請求項10】 用いる1,1−シクロブタンジカルボ
    ン酸又はその塩の量が約0.25から約20mg/ml
    である請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 存在する1,1−シクロブタンジカル
    ボン酸又はその塩の量が約1から約20mg/mlであ
    る請求項9記載の方法。
  12. 【請求項12】 混合後に溶液を空気又は酸素でバージ
    する請求項10記載の方法。
  13. 【請求項13】 50%以上の上部空間をもつ密封容器
    に最終溶液を保存する請求項11記載の方法。
  14. 【請求項14】 容器を密封する前に上部空間を空気又
    は酸素で充填する請求項13記載の方法。
  15. 【請求項15】 引き続く(3)工程として、溶液を空
    気又は酸素でパージする請求項11記載の方法。
  16. 【請求項16】 (1)マロナト白金(II)化合物を
    キャリアに溶解し、pHを約4から約7に調節し、
    (2)工程(1)の生成物を空気又は酸素ガスの少なく
    とも1つでパージし、(3)パージした溶液を、少なく
    とも50容量%が液体では満たされないが、空気又は酸
    素で飽和されるように容器に入れることを特徴とするマ
    ロナト白金(II)化合物の溶液の安定化法。
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